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特開2024-106138改質タールの製造方法、製鉄原料用バインダの製造方法、成型体の製造方法、及びフェロコークスの製造方法
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  • 特開-改質タールの製造方法、製鉄原料用バインダの製造方法、成型体の製造方法、及びフェロコークスの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106138
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】改質タールの製造方法、製鉄原料用バインダの製造方法、成型体の製造方法、及びフェロコークスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10C 1/14 20060101AFI20240731BHJP
   C10B 57/06 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
C10C1/14
C10B57/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010274
(22)【出願日】2023-01-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、地球温暖化防止新技術プログラム「環境調和型プロセス技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】和田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】小堀 竜一
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012PA04
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、タールを改質することで、低コストでバインダとして使用可能な改質タールを製造する方法の提供である。
【解決手段】本発明の一態様である改質タールの製造方法は、石炭、鉄鉱石、及び製鉄原料用バインダを含む混合物の成型体の乾留によってフェロコークス及びタールを得る乾留工程と、上記タールを蒸留する蒸留工程とを備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭、鉄鉱石、及び製鉄原料用バインダを含む混合物の成型体の乾留によってフェロコークス及びタールを得る乾留工程と、
上記タールを蒸留する蒸留工程と
を備える改質タールの製造方法。
【請求項2】
上記蒸留工程で、得られる上記改質タールの150℃における粘度を5mPa・s以上139mPa・s以下に調整する請求項1に記載の改質タールの製造方法。
【請求項3】
上記蒸留工程で、上記タールを常圧換算温度320℃以上450℃以下で蒸留する請求項1又は請求項2に記載の改質タールの製造方法。
【請求項4】
石炭、鉄鉱石、及び第一製鉄原料用バインダを含む混合物の第一成型体の乾留によって第一フェロコークス及びタールを得る第一乾留工程と、
上記タールを蒸留して第二製鉄原料用バインダを得る蒸留工程と
を備える製鉄原料用バインダの製造方法。
【請求項5】
石炭、鉄鉱石、及び請求項4に記載の製造方法で得られる第二製鉄原料用バインダの混合によって混合物を得る混合工程と、
上記混合物を第二成型体に成型する成型工程と
を備える成型体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法で得られる第二成型体を乾留して第二フェロコークスを得る第二乾留工程
を備えるフェロコークスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質タールの製造方法、製鉄原料用バインダの製造方法、成型体の製造方法、及びフェロコークスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石を還元して銑鉄を製造する高炉では、還元剤及び熱源(燃料)としてコークスが使用されている。この高炉の操業では、地球温暖化対策としての二酸化炭素排出量削減と、効率化が強く求められている。製造原料面からの高炉操業の効率化として、鉄分を配合したコークス(フェロコークス)を用いることが知られている。高炉では製鉄原料である鉄鉱石とフェロコークスとは、交互に層をなすように配置される。このような層構造とすることで炉内の通気性が確保され、鉄鉱石の還元反応効率が向上する。
【0003】
鉄鉱石やフェロコークスに十分な強度がない場合、操業時に鉄鉱石やフェロコークスの著しい破壊(粉化)が生じ、上記層構造が崩れてしまうため、高炉内の通気性が悪化してしまう。このため、フェロコークスには高い強度が必要とされるが、フェロコークスの原料である石炭と鉄鉱石との間には十分な結合力はないため、フェロコークスを成型するためには製鉄原料用バインダが必要とされる。このような製鉄原料用バインダとして、軟化点が100℃以下の有機バインダを用いたフェロコークス原料成型物(成型体)の製造方法が発案されている(特開2008-56777号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-56777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報所載の有機バインダは比較的高価であり、上記成型体及びこの成型体から製造されるフェロコークスの製造コストがより高くなるおそれがある。低廉なバインダを使用することで、高強度な成型体及びフェロコークスを低コストで製造することが求められている。
【0006】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、タールを改質することで、低コストでバインダとして使用可能な改質タールを製造する方法、及び低コストで結合力が強い製鉄原料用バインダを製造する方法を提供することである。また、本発明の別の目的は、低コストで強度の高い成型体及びフェロコークスを製造する方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様である改質タールの製造方法は、石炭、鉄鉱石、及び製鉄原料用バインダを含む混合物の成型体の乾留によってフェロコークス及びタールを得る乾留工程と、上記タールを蒸留する蒸留工程とを備える。
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の別の一態様である製鉄原料用バインダの製造方法は、石炭、鉄鉱石、及び第一製鉄原料用バインダを含む混合物の第一成型体の乾留によって第一フェロコークス及びタールを得る第一乾留工程と、上記タールを蒸留して第二製鉄原料用バインダを得る蒸留工程とを備える。
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明のさらに別の一態様である成型体の製造方法は、石炭、鉄鉱石、及び上記第二製鉄原料用バインダの混合によって混合物を得る混合工程と、上記混合物を第二成型体に成型する成型工程とを備える。
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明のさらに別の一態様であるフェロコークスの製造方法は、上記第二成型体を乾留して第二フェロコークスを得る第二乾留工程を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の改質タールの製造方法及び製鉄原料用バインダの製造方法は、フェロコークスを得る過程で得られるタールを蒸留して改質することで、バインダとして使用可能な改質タールを低コストで製造することができる。この改質タールは結合力が強いため、特に製鉄原料用バインダとして好適に用いることができる。また、本発明の成型体の製造方法及びフェロコークスの製造方法は、フェロコークスを得る過程で得られるタールを改質した製鉄原料用バインダを用いることで、製造コストが低くかつ強度の高い成型体及びフェロコークス得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る製鉄原料用バインダ(改質タール)、成型体及びフェロコークスの各製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一態様である改質タールの製造方法は、石炭、鉄鉱石、及び製鉄原料用バインダを含む混合物の成型体の乾留によってフェロコークス及びタールを得る乾留工程と、上記タールを蒸留する蒸留工程とを備える。
【0014】
当該製造方法で得られる改質タールは、フェロコークスを製造する過程で得られたタールを用いているため、低コストで製造することができる。また、当該改質タールは、上記タールを蒸留して改質しているため、結合力の強いバインダとして用いることができる。
【0015】
上記蒸留工程で、得られる上記改質タールの粘度を5mPa・s以上139mPa・s以下に調整するとよい。このようにすることで、当該改質タールのバインダとしての強度をより高めることができる。
【0016】
上記蒸留工程で、上記タールを常圧換算温度320℃以上450℃以下で蒸留するとよい。このようにすることで、当該改質タールのバインダとしての強度をさらに高めることができる。
【0017】
本発明の別の一態様である製鉄原料用バインダの製造方法は、石炭、鉄鉱石、及び第一製鉄原料用バインダを含む混合物の第一成型体の乾留によって第一フェロコークス及びタールを得る第一乾留工程と、上記タールを蒸留して第二製鉄原料用バインダを得る蒸留工程とを備える。
【0018】
当該製造方法で得られる製鉄原料用バインダは、フェロコークスを製造する過程で得られたタールを用いているため、低コストで製造することができる。また、当該製鉄原料用バインダは、上記タールを蒸留して改質しているため、石炭と鉄鉱石とを高い強度で結合することができる。
【0019】
本発明のさらに別の一態様である成型体の製造方法は、石炭、鉄鉱石、及び上記第二製鉄原料用バインダの混合によって混合物を得る混合工程と、上記混合物を第二成型体に成型する成型工程とを備える。
【0020】
当該製造方法で得られる成型体は、上記第二製鉄原料用バインダを用いているため、石炭同士、鉄鉱石同士、及び石炭と鉄鉱石とが高密度かつ高強度で結合される。このため、当該成型体は、強度が高く、ハンドリングに優れる。また、当該製造方法は、上記第二製鉄原料用バインダを用いているため、上記第二成型体を低コストで製造することができる。
【0021】
本発明のさらに別の一態様であるフェロコークスの製造方法は、上記第二成型体を乾留して第二フェロコークスを得る第二乾留工程を備える。
【0022】
当該フェロコークスの製造方法は、上記第二成型体を乾留することにより、石炭同士、鉄鉱石同士、及び石炭と鉄鉱石との融着を促進し、高密度かつ高強度の第二フェロコークスを得ることができる。このフェロコークスは高炉内での破壊が抑制されるため、上記第二フェロコークスを用いることで効率的な高炉操業を行うことができる。また、当該製造方法は、上記第二成型体を用いているため、上記第二フェロコークスを低コストで製造することができる。
【0023】
[発明を実施するための形態の詳細]
以下、本発明について詳説する。
【0024】
<製鉄原料用バインダの製造方法>
当該製鉄原料用バインダの製造方法は、石炭、鉄鉱石、及び第一製鉄原料用バインダを含む混合物の第一成型体の乾留によって第一フェロコークス及びタールを得る乾留工程S1と、上記タールを蒸留して第二製鉄原料用バインダを得る蒸留工程S2とを備える(図1のS1及びS2)。上記第二製鉄原料用バインダは、上記第一フェロコークスを製造する過程で得られるタールを蒸留することで改質した改質タールである。
【0025】
すなわち、本発明の一態様に係る当該改質タールの製造方法は、石炭、鉄鉱石、及び第一製鉄原料用バインダを含む混合物の第一成型体の乾留によって第一フェロコークス及びタールを得る乾留工程と、上記タールを蒸留して改質タールを得る蒸留工程とを備える。当該改質タールの製造方法における乾留工程は、当該製鉄原料用バインダの製造方法の乾留工程S1に対応し、当該改質タールの製造方法における蒸留工程は、当該製鉄原料用バインダの製造方法の蒸留工程S2に対応する。当該改質タールは、結合力が強いバインダとして用いることができ、特に、製鉄原料用バインダとして好適である。
【0026】
当該改質タールは、当該製鉄原料用バインダ以外の他のバインダとして用いることもできる。また、当該改質タールは、燃料、ピッチとして炭素材料の原料などとして用いることもできる。
【0027】
〔第一乾留工程〕
上記第一成型体を乾留する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、縦型シャフト炉を用いて炉の上方から上記第一成型体を連続的に装入し、炉内を上から下へ向かって移動する間に乾留する方法等を挙げることができる。
【0028】
第一乾留工程における加熱温度の下限としては、600℃が好ましく、700℃がより好ましい。一方、上記第一乾留工程における加熱温度の上限としては、950℃が好ましく、900℃がより好ましい。上記加熱温度を上記下限以上することで、上記第一製鉄原料用バインダの軟化が促進され、上記第一フェロコークスの強度を向上することができ、上記加熱温度を上記上限以下とすることで、上記炉の耐熱性や燃料消費の観点から製造コストが上昇することを抑制できる。
【0029】
乾留工程における加熱時間の下限としては、5分が好ましく、10分がより好ましい。一方、熱処理工程における加熱時間の上限としては、24時間が好ましく、16時間がより好ましい。上記加熱時間を上記下限以上とすることで、上記石炭の溶融が促進され、上記第一フェロコークスの強度を向上することができ、上記加熱時間を上記上限以下とすることで、燃料消費を抑制して製造コストが上昇することを抑制できる。
【0030】
乾留する雰囲気としては、特に限定されるものではないが、石炭の酸化による劣化を防止するため、非酸化性ガス雰囲気、例えば窒素雰囲気が好ましい。
【0031】
上記タールは、上記第一成型体を乾留する際に発生するガス(蒸気)を冷却することで得られる。
【0032】
〔蒸留工程〕
上記タールを蒸留する方法としては、特に限定されるものではなく、常圧蒸留としてもよいし、減圧蒸留としてもよい。減圧蒸留をする場合の減圧の上限としては、特に限定されるものではなく、例えば、70mmHgとしてもよく、60mmHgとしてもよい。減圧蒸留をする場合の減圧の下限としては、特に限定されるものではなく、可能であれば、2mmHgとしてもよい。
【0033】
上記タールを蒸留して低沸点成分を除去すると、その残差として改質タール(製鉄原料用バインダ)が得られる。
【0034】
上記蒸留工程で、上記タールを常圧換算温度320℃以上450℃以下で蒸留することが好ましい。上記常圧換算温度の下限としては、330℃がより好ましい。上記常圧換算温度の上限としては、390℃がより好ましい。このような温度範囲とすることで、上記第二製鉄原料用バインダを容易に好適な粘度を有するものにすることができる。具体的には、上記常圧換算温度を上記下限以上とすることで、得られる上記第二製鉄原料用バインダ(改質タール)が過剰に低粘度になることによって上記石炭及び上記鉄鉱石(結合する対象物)間の結合力が低下し、後述する第二成型体の強度が低下することを抑制できる。また、上記常圧換算温度を上記上限以下とすることで、上記第二製鉄原料用バインダが過剰に高粘度になることによって上記石炭及び上記鉄鉱石間に浸透し難くなり、上記第二成型体の強度が低下することを抑制できる。
【0035】
上記蒸留工程で、得られる上記第二製鉄原料用バインダ(改質タール)の粘度を5mPa・s以上139mPa・s以下に調整することが好ましい。上記粘度の下限としては、10Pa・sが好ましい。上記粘度の上限としては、100Pa・sが好ましい。上記粘度を上記下限以上とすることで、上記石炭及び上記鉄鉱石間の結合力が低下することを抑制でき、上記粘度を上記上限以下とすることで、上記石炭及び上記鉄鉱石間に浸透し難くなることを抑制できる。なお、「粘度」とは、工業分析(JIS M 8812)により、150℃における粘度をBrookfield型粘度計により測定した値を意味する。
【0036】
<成型体の製造方法>
当該成型体の製造方法は、石炭、鉄鉱石、及び上記第二製鉄原料用バインダの混合によって混合物を得る混合工程S3と、上記混合物を第二成型体に成型する成型工程S4とを備える(図1のS3及びS4)。
【0037】
(石炭)
石炭としては、特に限定されるものではなく、炭素含有率(d.a.f.:dry ash free)が78%未満である石炭化度の低い褐炭から炭素含有率が91%超の石炭化度の高い無煙炭まで、各種公知の石炭を使用できる。中でも、上記第二成型体の強度を確保する観点から、炭素含有率が78%以上91%以下の石炭化度を有する石炭が好ましい。このような石炭としては、瀝青炭及び亜瀝青炭を挙げることができる。なお、「炭素含有率」とは、石炭の水分と灰分とを除いた有機質(C、H、N、S、O)に対する炭素の含有率(質量%)であり、JIS-M8819:1997に準じて測定されるものを意味する。
【0038】
また、上記第二成型体の製造コストを抑制する観点からは、上記石炭は、亜瀝青炭、褐炭等低品位炭や一般炭などの粘結性の低いが安価な劣質炭を含むことが好ましく、特に劣質炭を含むことが好ましい。なお、「劣質炭」とは、炭素含有率が85質量%以下であり、最高流動度の対数値LogMF[logddpm]が1以下の石炭を指す。ここで、「最高流動度MF[ddpm]」は、JIS-M8801:2004に準拠してギーセラープラストメータ法にて測定される値を意味する。
【0039】
上記石炭全体における劣質炭の含有量の下限としては、20質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。一方、上記石炭全体における劣質炭の含有量の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましい。上記石炭全体における劣質炭の含有量を上記下限以上とすることで、劣質炭を使用することによる上記第二成型体の製造コストの低減を図ることができ、上記石炭全体における劣質炭の含有量を上記上限以下とすることで、製造される上記第二成型体の強度を向上することができる。
【0040】
上記石炭は、微細に粉砕された粒子状である。この粒子の粒子径の上限としては、4mmが好ましく、2mmがより好ましい。上記石炭の粒子径が上記上限以下であることで、石炭の粒子間に製鉄原料用バインダを十分に入り込ませることができ、当該成型体の強度を向上することができる。なお、「粒子径」とは、全粒子をJIS-Z8801-1:2006に規定される金属製網篩で篩分けられる粒径であり、例えば、粒径4mm以下とは、JIS Z 8801-1:2006に準拠した目開き4mmの篩を用いて篩下に篩分けられる粒径を意味する。
【0041】
なお、上記石炭は、風乾等により乾燥炭としてもよく、水分を含んだ状態のものを用いてもよい。
【0042】
(鉄鉱石)
上記鉄鉱石としては、特に限定されるものではなく、例えば、赤鉄鉱(ヘマタイト;Fe)、磁鉄鉱(マグネタイト;Fe)、褐鉄鉱(Fe・nHO)、オキシ水酸化鉄(FeOOH)等を挙げることができる。オキシ水酸化鉄を用いる場合は、予め脱水して酸化鉄にして使用することが好ましい。なお、これらの鉄鉱石は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記鉄鉱石は、微細に粉砕された粒子状である。この粒子の質量累計90%の粒子径の上限としては、250μmが好ましく、200μmがより好ましく、150μmがさらに好ましい。上記粒子径を上記上限以下であることで、鉄鉱石の界面に働く応力を抑制し、得られる上記第二成型体の強度が低下することを抑制できる。
【0044】
上記石炭及び上記鉄鉱石の合計質量における上記鉄鉱石の含有量の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。一方、上記石炭及び上記鉄鉱石の合計質量における上記鉄鉱石の含有量の上限としては、40質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。上記石炭及び上記鉄鉱石の合計質量における上記鉄鉱石の含有量を、上記下限以上とすることで、上記鉄鉱石の共存による高炉操業の効率化を図ることができ、上記上限以下とすることで、上記鉄鉱石による反応性向上効果が頭打ちとなることを抑制できる。
【0045】
〔混合工程〕
混合工程では、上記石炭、上記鉄鉱石、及び上記第二製鉄原料用バインダの混合によって混合物を得る。上記混合は、加熱して行うことが好ましい。混合における加熱温度は、上記第二製鉄原料用バインダが溶融する温度域での混合が好ましく、例えば、80℃以上150℃以下とすることが好ましい。混合における雰囲気としは、特に限定されるものではなく、窒素などを用いて不活性雰囲気で混合してもよいし、空気中で混合してもよい。混合する手段(装置)としては、特に限定されるものではなく、既存の手段で混合すればよい。
【0046】
上記混合物における上記第二製鉄原料用バインダの含有量の下限としては、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。一方、上記第二製鉄原料用バインダの含有量の上限としては、15質量%が好ましく、12質量%がより好ましい。上記第二製鉄原料用バインダの含有量を、上記下限以上とすることで上記第二成型体を十分に高強度化及び高密度化にすることができ、上記第二製鉄原料用バインダの含有量を上記上限以下とすることで、上記第二成型体の製造コストを抑制することができる。
【0047】
〔成型工程〕
成型工程では、上記混合物を成型することで、第二成型体を得る。成型方法は、特に限定されるものではなく、例えば平ロールによる双ロール成型機、アーモンド型ポケットを有する双ロール成型機、単軸プレスやローラタイプの成型機、押出し成型機等の成型機を用いる方法が挙げられる。中でも生産性の高い双ロール成型機を用いることが好ましい。
【0048】
成型機による成型時の圧力としては、特に限定されるものではなく、例えば、3t/cm以上5t/cm以下である。このような圧力を付与することで上記第二成型体の高強度化及び高密度化が図れる。
【0049】
また、成型は加熱して行われることが好ましい。成型時の加熱温度は、上記第二製鉄原料用バインダの軟化開始温度以上の温度であることが好ましく、例えば、80℃以上150℃以下である。上記加熱温度を上記第二製鉄原料用バインダの軟化開始温度以上の温度とすることで、上記第二製鉄原料用バインダが軟化し、上記第二成型体の高密度化及び高強度化が促進される。
【0050】
上記第二成型体の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、ブリケット状やペレット状とすることができる。上記第二成型体の平均体積としては、例えば、2mL以上20mL以下とすることができる。
【0051】
上記第二成型体は、上記混合物を成型したものであるので、この第二成型体を乾留することで、鉄鉱石の粒子同士、石炭の粒子同士及び鉄鉱石と石炭との粒子同士が強く結合される。このため、後述する第二フェロコークスの強度を向上することができる。また、上記第二成型体の製鉄原料用バインダである改質タールは、第一フェロコークスを得る際の副産物であるタールから製造されているため、安価である。従って、上記第二成型体を用いることで、強度の高い上記第二フェロコークスを低コストで製造することができる。
【0052】
<フェロコークスの製造方法>
当該フェロコークスの製造方法は、上記第二成型体を乾留して第二フェロコークスを得る第二乾留工程S5を備える(図1のS5)。
【0053】
〔乾留工程〕
上記第二成型体を乾留する方法としては、特に限定されるものではなく、上述の第一乾留工程と同様の手順とすることができる。
【0054】
<利点>
当該改質タールは、フェロコークスの製造過程で副産物として得られるタールを蒸留しているため、低コストで製造することができる。また、当該改質タールは、結合力の強いバインダとして用いることができるため、特に製鉄原料用バインダとして好適である。当該成型体は、当該改質タールを当該製鉄原料用バインダとして用いているため、低コストで高密度かつ高強度に製造することができる。当該フェロコークスは、当該成型体を乾留しているため、低コストで高強度に製造することができる。
【0055】
[その他の実施形態]
以上の実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【実施例0056】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
フェロコークスの製造過程で得たタールを減圧下、常圧換算温度310℃以上450℃以下で単蒸留した。この蒸留で低沸点成分を除去し、蒸留残渣として改質タール(製鉄原料用バインダ)B1~B9を得た。回収した上記改質タールの揮発分(VM)と150℃粘度を測定した。蒸留条件、揮発分及び150℃粘度を表1に示す。VMは、JIS M
8812:2004に準じた方法で測定した。粘度はJIS Z 8803:2011の単一円筒形回転粘度計による測定方法に準じた方法で測定した。
【0058】
【表1】
【0059】
石炭(粒径1mm以下100%)、鉄鉱石(粒径0.25mm以下100%)、アスファルトピッチ(0.5mm以下100%)、及び製鉄原料用バインダB1~B9をそれぞれ64.8:27.8:3.0:4.5の質量比率で配合し、140℃の温度で均一に混合して混合物を得た。比較するための試験例として、上記製鉄原料用バインダに換えて、軟ピッチ(SOP)を混合した比較用混合物も作成した。この比較用混合物の上記製鉄原料用バインダ以外の含有成分、含有比率、及び混合条件は、上記混合物と同一である。
【0060】
上記比較用混合物及び上記混合物を140℃の温度で3t/cmの圧力を付与して直径30mm、高さ10mmの円柱状の成型体を得た(試験例1~10)。試験例1~10の成型体それぞれの一部を、窒素雰囲気、5℃/minで900℃まで昇温し、900℃で一時間保持して乾溜し、試験例1~10のフェロコークスサンプルとした。この成型体及びフェロコークスサンプルの強度を間接引張試験により評価した。上記間接引張試験は、卓上型精密万能試験機(オートグラフ AGS-X:株式会社島津製作所)を用いて成型体及びフェロコークスサンプルの径方向に徐々に圧力を付与し、成型体及びフェロコークスサンプルが破断した時点の圧力から下記式1を用いて引張応力(強度)を算出した。
【0061】
【数1】
【0062】
上記比較用混合物から得た成型体及びフェロコークスサンプルは試験例1、上記混合物から得た成型体及びフェロコークスサンプルは試験例2~10として、上記間接引張試験の結果を表2に示す。試験例2~10の成型体及びフェロコークスサンプル強度の評価は、試験例1に対して90%以上の強度を有するものを「A」とし、90%未満のものを「C」とした。総合評価では、成型体及びフェロコークスサンプル共に試験例1に対して90%以上の強度を有するものを「A」、成型体では試験例1に対して90%以上の強度を有するが、フェロコークスサンプルでは試験例1に対して90%未満の強度であったものを「C」、成型体では試験例1に対して90%未満の強度であったが、フェロコークスサンプルでは試験例1に対して90%以上の強度を有するものを「B」とした。
【0063】
【表2】
【0064】
試験例2で成型体としては強度が高いもののフェロコークスサンプルとしては強度が低い結果となったのは、蒸留工程における常圧換算温度が低いため、製鉄原料用バインダの十分な150℃粘度が得られなかったためと考えられる。試験例9及び試験例10で成型体としては強度が低いもののフェロコークスサンプルとしては強度が高い結果となったのは、蒸留工程における常圧換算温度が高いため、製鉄原料用バインダの150℃粘度が過大になったためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明の改質タール及び製鉄原料用バインダは、低コストで得ることができ、強度の高い成型体及びフェロコークス製造することができるため、効率的な高炉操業に好適に用いられる。
図1