(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106141
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】吊り金具
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20240731BHJP
E04G 1/14 20060101ALI20240731BHJP
E04G 7/32 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
E04G21/16
E04G1/14 303A
E04G7/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010277
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】関山 正勝
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲郎
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174CA03
2E174CA12
2E174CA38
2E174EA03
(57)【要約】
【課題】吊り作業時に少なくとも吊り金具の変形や破損が生じにくい吊り金具を提供すること。
【解決手段】吊り対象を構成する支柱Aへと取り付けて使用する吊り金具であって、フランジBを収容可能な導入口11を設けた本体部10と、本体部10の内部を上下移動可能に構成しフランジBの収容時にフランジBに設けた係合孔Cへと挿入可能な係合部20と、本体部10に回動自在に取り付けたシャックル30とを少なくとも具備し、本体部10でのシャックル30の回動位置を、導入口11よりも下方に位置させることで、導入口11の開きを防止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設足場や支保工などの仮設構造物を構成し、側面から伸びた少なくとも1つのフランジを含む支柱へと取り付けて使用する吊り金具であって、
前記フランジを収容可能な導入口を設けた、本体部と、
前記本体部の内部を上下移動可能に構成し、前記フランジの収容時に、当該フランジに設けた係合孔へと挿入可能な、係合部と、
前記本体部に回動自在に取り付けた、シャックルと、を少なくとも具備し、
前記本体部での前記シャックルの回動位置が、前記導入口よりも下方に位置してあることを特徴とする、
吊り金具。
【請求項2】
前記本体部に、
前記フランジの収容時に、収容した前記フランジ以外のフランジの底面を支持可能な、支持部を設けたことを特徴とする、
請求項1に記載の吊り金具。
【請求項3】
前記支持部に、
前記フランジの収容時に、収容した前記フランジ以外のフランジに設けた係合孔へと係止可能な爪部を設けたことを特徴とする、
請求項2に記載の吊り金具。
【請求項4】
前記本体部に、
前記シャックルの回動範囲を規制する、規制部を設けたことを特徴とする、
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の吊り金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設足場や支保工などの仮設構造物を構成する支柱に取り付けて、仮設構造物の吊り作業に使用可能な吊り金具に関する。
【背景技術】
【0002】
仮設足場などの仮設構造物を構築または解体する際の方法として、以下の方法が知られている。
(1)大組み工法
予め地上で部分的に組み立てた仮設構造物の一部(以下「仮設ブロック」)をクレーン等で吊り上げて、既設の仮設ブロックに連結して仮設構造物を完成する方法。
(2)大払し工法
仮設構造物を、仮設ブロック毎にクレーン等で地上に吊り降ろして撤去したのち、地上で仮設ブロックを解体する方法。
【0003】
これらの方法を実施する際には、仮設構造物をクレーン等で吊り上げるための玉掛けが必要となるため、仮設構造物を構成する支柱のフランジに連結して使用可能な吊り金具が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この大組み工法および大払し工法では、以下に記載する問題のうち、少なくとも何れか一つの問題を有する。
(1)吊り金具について
吊り作業時に、吊り金具の変形や破損(以下「変形等」ともいう。)が生じてしまう場合がある。これは、吊り金具の本体部をフランジの導入口を境界として上側と下側とに区画・定義した場合に、吊り位置を上側の本体部に設けているときに、吊り作業中に、下側の本体部に対し上側の本体部が開くように作用してしまうことが原因と考えられる。
(2)フランジについて
吊り作業時に、フランジの変形や破損等が生じてしまう場合がある。これは、例えば、支柱から平面視して十字状に張り出す4箇所のフランジのうち何れか1つのフランジに吊り金具を連結した場合、連結したフランジのみに、吊り荷重が集中してしまうことが原因と考えられる。
【0006】
よって、本発明は、少なくとも吊り作業時に吊り金具の変形や破損が生じにくい手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべくなされた本願発明は、仮設足場や支保工などの仮設構造物を構成し、側面から伸びた少なくとも1つのフランジを含む支柱へと取り付けて使用する吊り金具であって、前記フランジを収容可能な導入口を設けた、本体部と、前記本体部の内部を上下移動可能に構成し、前記フランジの収容時に、当該フランジに設けた係合孔へと挿入可能な、係合部と、前記本体部に回動自在に取り付けた、シャックルと、を少なくとも具備し、前記本体部での前記シャックルの回動位置が、前記導入口よりも下方に位置してあることを特徴とする。
また、本願発明は、前記本体部に、前記フランジの収容時に、収容した前記フランジ以外のフランジの底面を支持可能な、支持部を設けてもよい。
また、本願発明は、前記支持部に、前記フランジの収容時に、収容した前記フランジ以外のフランジに設けた係合孔へと係止可能な爪部を設けてもよい。
また、本願発明は、前記本体部に、前記シャックルの回動範囲を規制する、規制部を設けてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)本体部でのシャックルの回動位置を、フランジを収容する導入口よりも下方に位置させたことにより、吊り作業時に、フランジの導入口を境界として区画された上側の本体部と下側の本体部が離隔するように作用することが無くなり、導入口の開きが生じず、吊り金具の変形や破損を軽減することができる。
(2)本体部に設けた支持部でもって、フランジを収容したフランジ以外のフランジの底面を支持することで、吊り作業時に吊り金具とフランジとの接触面積をより広く確保することができ、局所的な荷重集中を避けることで、フランジの変形や破損を軽減することができる。
(3)爪部を、係止した係合孔の内壁に接触させることで、吊り対象の荷重が1つのフランジに集中しないようにすることで、フランジの変形や破損を軽減することができる。
(4)本体部に設けた規制部でもって、シャックルの回動範囲を規制することで、シャックルと支柱との衝突による破損の恐れを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】吊り金具を支柱に取り付けた状態を示す概略側面図。
【
図3】吊り金具を支柱に取り付けた状態を示す概略部分平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例0011】
<1>全体構成(
図1)
本発明に係る吊り金具は、大組み工法および大払し工法による仮設構造物を少なくとも含む吊り対象の吊り上げまたは吊り降ろしの際に、吊り対象に含まれる支柱Aへと取り付けて使用する金具である。
【0012】
<1.1>支柱の構成(
図1,
図3)
本発明に係る吊り金具を取り付ける支柱Aは、水平材や筋交いなどを接続するためのフランジBを、少なくとも一箇所以上設けた構成とする。
本発明において、支柱Aの断面形状およびフランジBの形状は特段限定しない。
本実施例に示す支柱Aは、
図3に示すように、平面視して支柱Aの側面から十字状に張り出すように四箇所のフランジB1~B4を設けている。
各フランジB1~B4には、水平材や筋交い等の端部に設けた連結具との連結を可能とするための係合孔C1~C4を設けている。
【0013】
<1.2>吊り金具の構成(
図1)
本発明に係る吊り金具は、本体部10、係合部20およびシャックル30、を少なくとも具備し、その他任意に、支持部40および規制部50を具備して構成することができる。
以下、各部の詳細について説明する。なお、今後特段の明記が無い場合、
図1における紙面上下方向を上下方向、紙面左右方向を前後方向、紙面奥行き方向を幅方向(左右方向)として説明する。
【0014】
<2>本体部(
図1,
図2)
本体部10は、吊り金具の本体部分に相当する部位である。
図1および
図2に示すように、本体部10は、フランジBを上下方向に挟むように収容可能な導入口11と、シャックル30を回動自在に取り付けるためのピン32を挿入するために、前後方向に貫通した貫通孔12とを設ける。
さらに、本体部10の内部には、係合部20を上下方向に移動可能な状態で収容する収容空間13を設ける。
【0015】
<2.1>本体部の形状(
図2)
本発明において、本体部10の形状は特段限定せず、種々の形状を採用することができる。
本実施例では、
図2に示すように、本体部10を、上前壁14、下前壁15、一対の側壁16(16a,16b)、後壁17で構成して上下を解放した略矩形状の筒構造としつつ、上前壁14と下前壁15の間に導入口11を設けた構成としている(
図2)。
【0016】
<2.2>導入口(
図1,
図2)
導入口11は、支柱AのフランジBを収容するための部位である。
導入口11は、本体部10に設けた収容空間13と連通するように、使用時における支柱Aとの対向面側から切り欠くように設けている。
本実施例では、
図1および
図2に示すように、本体部10を構成する前壁部分を上下に分割(上前壁14,下前壁15)するように切り欠いて、本体部10内部の収容空間13に連通させた箇所を導入口11としている。
当該構造とすることにより、収容したフランジBに設けてある係合孔Cに係合部20を嵌合することができる。
【0017】
<2.2.1>導入口の形状(
図1)
本発明において、導入口11の形状は特段限定せず、種々の形状を採用することができる。
本実施例では、
図1に示すように、導入口11の開口側の幅をやや広く確保することによって、フランジBを水平方向からやや傾斜させた方向からも差し入れることを可能としている。その結果、フランジBの収容動作を行う際に、後述する爪部41の存在が作業の障害になりにくい。
【0018】
<2.3>貫通孔(
図2)
貫通孔12は、シャックル30のピン32を取り付けるための部位である。
本発明では、貫通孔12を導入口11よりも下方に設けておくものとする。この理由は後述する。
【0019】
<3>係合部(
図2)
係合部20は、吊り金具をフランジBに固定するための部位である。
係合部20は、本体部10に設けた収容空間13を上下に相対移動可能な状態で、本体部10に部分的に収容されている。
【0020】
<3.1>係合部の形状(
図2)
本発明において、係合部20の形状は特段限定せず、種々の形状を採用することができる。
本実施例では、
図2に示すように、係合部20を、下方に二叉分岐させた形状を呈しており、上端側に設けた頭部21と、一方の分岐側に相当しフランジBの係合孔Cに挿入可能な挿入部22と、他方の分岐側に相当し、挿入部22を係合孔Cから離脱させる際にハンマー等の打突箇所として機能する、打突部23とで構成している。
【0021】
<3.2>挿入部(
図2)
挿入部22は、フランジBの係合孔Cに挿入するための部位である。
本発明において、挿入部22の形状は特段限定せず、種々の形状を採用することができる。
本実施例では、挿入部22と係合孔Cとの間をクサビ緊結可能な構造としている。
【0022】
<3.3>打突部(
図2)
打突部23は、その先端を支柱Aの対向面側に折曲させておくことで、打突面積の確保と、係合部20が上方へ移動する際に、後述するシャックル30のピン32に折曲端を干渉させることで、本体部10からの係合部20の抜け出しを防止する効果を両立している。
【0023】
<4>シャックル(
図1)
シャックル30は、クレーン等による玉掛けを行うための部位である。
本発明において、シャックル30の形状は特段限定せず、種々の形状を採用することができる。
本実施例では、シャックル30を、U字状の係留部31と、前記貫通孔12に挿通して、係留部31の解放側を閉じる配置するピン32と、ピン32の両端に設けたネジ溝に締結するナット33によって構成し、ピン32の長手方向を回動軸として、シャックル30を回動させることができる。
前述した通り、ピン32を挿通する貫通孔12は、導入口11よりも下方の位置に設けてあるため、回動軸も導入口11よりも下方の位置におかれることになる。
【0024】
<5>支持部(
図1~
図3)
支持部40は、フランジBの収容時に、導入口11に収容したフランジB以外のフランジBの底面を支持するための部位である。
支持部40は、導入口11よりも下方の位置から、本体部10の支柱A側の対向面から前方向に張り出すように設けることで、導入口11に収容したフランジB以外のフランジBの底面を支持するよう構成する。
本発明において、支持部40の形状は特段限定せず、種々の形状を採用することができる。
本実施例では、
図3に示すように、本体部10を構成する一対の側壁16a、16bのそれぞれについて、下前壁15へと接続する箇所から分岐する態様で前方に伸びつつ、かつ支柱Aを幅方向で挟み込み可能に程度に拡幅した状態を呈する一対の支持部40a,40bを設けている。
当該構成により、各支持部40a,40bの上縁のうち少なくとも一部が、導入口11に収容したフランジ(第1のフランジB1)以外のフランジ(第2のフランジB2,第3のフランジB3)の底面と接触可能な状態となっている。
【0025】
<5.1>爪部(
図1~
図3)
本発明では、支持部40に、導入口11へとフランジBを収容した際に、収容したフランジB以外のフランジBに設けた係合孔Cへと係止可能な爪部41を設けておいても良い。
本実施例では、各支持部40a、40bのそれぞれについて、解放端側の上部を突出させてなる爪部41a,41bを設けており、第1のフランジB1を導入口11に収容した状態で、爪部41aが、第2のフランジB2の係合孔C2に係止し(
図1)、爪部41bが、第3のフランジB3の係合孔C3に係止することになる(
図2)。
当該構成により、本発明に係る吊り金具を支柱Aに取り付けた状態で吊り作業を行った際に、爪部41a,41bを、係止した係合孔C2,C3の内壁に接触させることで、吊り対象の荷重が1つのフランジBに集中しないようにすることができる。
【0026】
<6>規制部(
図1)
規制部50は、シャックル30の回動範囲を規制するための部位である。
規制部50は、本体部10を構成する一対の側壁16a,16bにそれぞれ設け、
図1において時計回りの回転を規制する規制部50aと、反時計回りの回転を規制する規制部50bを設けている。
当該構成により、シャックル30と支柱Aとの衝突による破損の恐れを回避することができる。