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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010615
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】頭蓋形状矯正用ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
A61F5/01 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112060
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】518194246
【氏名又は名称】株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(74)【代理人】
【識別番号】100210675
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 潤
(72)【発明者】
【氏名】大野 秀晃
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB20
4C098BC02
(57)【要約】
【課題】ヘルメット治療を開始したばかりの乳幼児であっても、頭蓋形状矯正用ヘルメットが意図せずに頭蓋部分から外れることを防止することが可能な、頭蓋形状矯正用ヘルメットを提供する。
【解決手段】頭蓋部分を覆うように構成された外側シェルと、外側シェルの内表面側の少なくとも一部に設けられ、装着者の頭蓋方向に突出した肉厚化部材と、を有する、頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭蓋部分を覆うように構成された外側シェルと、
前記外側シェルの内表面側の少なくとも一部に設けられ、装着者の頭蓋方向に突出した肉厚化部材と、
を有する、頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項2】
前記肉厚化部材が、前記装着者の前額部の少なくとも一部に対応する位置および/または後頸部の少なくとも一部に対応する位置に設けられる、請求項1に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項3】
前記外側シェルの内表面の少なくとも一部に配設される内側ライナーを備える、請求項1または2に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項4】
前記肉厚化部材が、前記内側ライナー部材に着脱可能に設置される、請求項3に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項5】
前記肉厚化部材が、前記外側シェルに着脱可能に設置される、請求項1または請求項3のいずれかの請求項に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項6】
前記肉厚化部材が、複数の部材から成る、請求項1に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項7】
前記肉厚化部材が、前記外側シェルの内表面に沿って略円弧状に湾曲した部分を有する、略楕円体状乃至略直方体状の形状である、請求項1に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項8】
前記肉厚化部材が、合成樹脂製である、請求項1に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項9】
前記外側シェルの両側頭部にスリットが設けられる、請求項1に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項10】
前記スリットが両側頭部の上縁から下縁まで延伸されることにより、前記外側シェルが前側シェルおよび後側シェルに分割されてなる、請求項9に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項11】
前記外側シェルが、メッシュ構造である、請求項1に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項12】
前記外側シェルの周縁部の厚みが、他の部分の厚みより厚く構成される、請求項1に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項13】
外側シェルを有する頭蓋形状矯正用ヘルメットの内表面側に設置される肉厚化部材であって、前記外側シェルの内表面に沿って略円弧状に湾曲した部分を有する、略楕円体状乃至略直方体状の形状である、肉厚化部材。
【請求項14】
頭蓋形状矯正用ヘルメットの前額部および/または後頸部の内表面側に設置される、請求項13に記載の肉厚化部材。
【請求項15】
合成樹脂製である、請求項13又は14に記載の肉厚化部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間、特に乳幼児の頭蓋部分の形状を矯正するために用いられるヘルメットに関する。そして特には、その内表面に設けられた、ヘルメットの内側に突出する肉厚化部材により、ヘルメットの内表面と頭蓋部分との距離を小さくするように構成されたヘルメットに関する。そして更には、この肉厚化部材が、ヘルメット内表面との間で着脱可能に構成されているヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の乳幼児、特に生後3カ月程度を経過した乳児には、頭蓋部分の形状が歪む、いわゆる斜頭症、長頭症または短頭症などの症状が現れることがある。例えば斜頭症では、乳児の頭部を上方から見た際に、頭蓋が斜めに歪んで片側に傾斜し、左右非対称になる。長頭症または短頭症では、頭蓋の前後方向の寸法が長くまたは短く変形する。そして、これらのような状態を放置して歪みが進行すると、耳の位置や顔面が変形した状態で固定されてしまう。
【0003】
このようなことから、症状に応じて、特許文献1および2に例示されるような頭蓋形状矯正用ヘルメットを乳児の頭部に被嵌させて、その状態で日常生活を送る、という治療方法(以下「ヘルメット治療」ともいう。)が採用されることがある。この治療方法により、歪んだ頭蓋の形状を、徐々に正常に戻すことが可能になる。
【0004】
頭蓋形状矯正用ヘルメットは、現在の頭蓋部分の形状と矯正後に想定される形状とを考慮して、治療の対象となる乳児個々の頭蓋部分に合わせて作成される。即ち、頭蓋形状矯正用ヘルメットは、いわゆるオーダーメイドにより作成される。その作成前には治療対象の乳児の頭蓋部分を周知の三次元スキャン方式によりスキャンし、その形状に関する詳細なデータを入手する。そして、得られたデータに基づき、3Dプリンタにより頭蓋形状矯正用ヘルメットを作成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6833240号
【特許文献2】特許第6333514号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヘルメット治療は、睡眠中も含めて一日のほとんどの時間(例えば、1日20時間以上)、治療対象となる乳児の頭蓋に頭蓋形状矯正用ヘルメットを被嵌した状態で行われることがある。そして、特許文献1および2に開示されている頭蓋形状矯正用ヘルメットを用いたヘルメット治療により、一定程度の治療効果を得られていた。
【0007】
しかしながら、本発明者らは、特許文献1および2に開示されている頭蓋形状矯正用ヘルメットでは、特にヘルメット治療を開始して間もない乳幼児において、意図せずに頭蓋形状矯正用ヘルメットが外れてしまうという課題を新たに見出した。ヘルメット治療中に頭蓋形状矯正用ヘルメットが度々外れると、その都度、介助者、多くは治療対象となる乳児の保護者、がヘルメットの被嵌をやり直すことになり、たいへん煩雑であり、このような不具合を避けるためには介助者が常に治療対象の乳児に気を配る必要がある。頭蓋形状矯正用ヘルメットが外れたことに気付くのが遅れると、再度の被嵌まで長い時間がかかる。そして、治療の観点からは、本来であれば、継続して被嵌していることが望ましい頭蓋形状矯正用ヘルメットが度々外れることで、治療の効果が限定され、それにより、治療の期間が当初の想定より不要に長くなる場合がある。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたもので、ヘルメット治療を開始したばかりの乳幼児であっても、頭蓋形状矯正用ヘルメットが意図せずに頭蓋部分から外れることを防止することが可能な、頭蓋形状矯正用ヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一日のうちのほとんどの時間において頭蓋形状矯正用ヘルメットを被嵌しているため、生活に伴う体の動きにより、頭蓋形状矯正用ヘルメットは常に振動していると考えられる。特に乳児の場合は、瞬間的に体が大きく動くことがあり、頭蓋形状矯正用ヘルメットの振動も同様に大きくなることが想定される。また、頭蓋形状矯正用ヘルメットの内表面と頭蓋部分とは、それぞれ単一な平面ではなく、曲面で構成されているため、ヘルメット治療を開始して間もない乳幼児においては、振動によるずれも大きくなり易いと考えられる。本発明者らは、このようなヘルメット治療特有の状況に着目し、鋭意検討を進め、後述する発明を完成するに至った。
【0010】
上述した課題を解決するために構成した本発明の第一の態様は、頭蓋部分を覆うように構成された外側シェルと、外側シェルの内表面側の少なくとも一部に設けられ、装着者の頭蓋方向に突出した肉厚化部材とを有する、頭蓋形状矯正用ヘルメットである。このように構成された態様により、頭蓋形状矯正用ヘルメットの内表面と、治療対象となる形状を有する頭蓋部分との間の距離を小さくし、頭蓋形状矯正用ヘルメットが意図せずに頭蓋部分から外れることを防止することが可能となる。
【0011】
また、本発明の第二の態様は、肉厚化部材が、装着者の前額部の少なくとも一部に対応する位置および/または後頸部の少なくとも一部に対応する位置に設けられる、頭蓋形状矯正用ヘルメットである。装着者の前額部の少なくとも一部に対応する位置および/または後頸部の少なくとも一部に対応する位置に肉厚化部材を設けることで、頭蓋形状矯正用ヘルメットの内表面と、治療対象となる形状を有する頭蓋部分との間の距離をより適切なものとすることが可能となる。
【0012】
また、本発明の第二の態様は、第一または第二の態様のヘルメットにおいて、外側シェルの内表面の少なくとも一部に配設される内側ライナーを備える、頭蓋形状矯正用ヘルメットである。このように構成された態様により、頭蓋形状矯正用ヘルメットの装着感が向上するとともに、頭蓋形状矯正用ヘルメットの内表面と、治療対象となる形状を有する頭蓋部分との間の距理をより適切なものとすることが可能となる。
【0013】
また、本発明の第四の態様は、第三の態様のヘルメットにおいて、肉厚化部材が、内側ライナー部材に着脱可能に設置される、頭蓋形状矯正用ヘルメットである。このように構成された態様により、治療の進捗や治療対象の頭蓋形状などをより適切に勘案して、頭蓋形状矯正用ヘルメットを構成できる。
【0014】
また、本発明の第五の態様は、第一または第三の態様のヘルメットにおいて、肉厚化部材が、外側シェルに着脱可能に設置される、頭蓋形状矯正用ヘルメットである。このように構成された態様により、治療の進捗や治療対象の頭蓋形状などをより適切に勘案して、頭蓋形状矯正用ヘルメットを構成できる。
【0015】
また、本発明の第六の態様は、第一の態様のヘルメットにおいて、肉厚化部材が、複数の部材から成る、頭蓋形状矯正用ヘルメットである。このように構成された態様により、治療の進捗や治療対象の頭蓋形状などをより適切に勘案して、頭蓋形状矯正用ヘルメットを構成できる。
【0016】
また、本発明の第七の態様は、第一の態様のヘルメットにおいて、肉厚化部材が、外側シェルの内表面に沿って略円弧状に湾曲した部分を有する、略楕円体状乃至略直方体状の形状である、頭蓋形状矯正用ヘルメットである。このように構成された態様により、頭蓋形状矯正用ヘルメットの内表面と、治療対象となる形状を有する頭蓋部分との間の距離をより適切なものとすることが可能となる。
【0017】
また、本発明の第八の態様は、第一の態様のヘルメットにおいて、肉厚化部材が、合成樹脂製である、頭蓋形状矯正用ヘルメットである。このように構成された態様により、頭蓋形状矯正用ヘルメットの内表面と、治療対象となる形状を有する頭蓋部分との間の距離をより適切なものとすることが可能となる。
【0018】
また、本発明の第九の態様は、第一の態様のヘルメットにおいて、外側シェルの両側頭部にスリットが設けられる、頭蓋形状矯正用ヘルメットである。このように構成された態様により、頭蓋部分の成長や治療の進捗に応じて、頭蓋形状矯正用ヘルメットの形状を適切なものとすることが容易となる。
【0019】
また、本発明の第十の態様は、第九の態様のヘルメットにおいて、スリットが両側頭部の上縁から下縁まで延伸されることにより、外側シェルが前側シェルおよび後側シェルに分割されてなる、頭蓋形状矯正用ヘルメットである。このように構成された態様により、頭蓋部分の成長や治療の進捗に応じて、頭蓋形状矯正用ヘルメットの形状を適切なものとすることが容易となる。
【0020】
また、本発明の第十一の態様は、第一の態様のヘルメットにおいて、外側シェルが、メッシュ構造である、頭蓋形状矯正用ヘルメットである。このように構成された態様により、ヘルメット内外間の通気性が良好となり、治療対象の乳児の汗の放散や、頭蓋形状矯正用ヘルメット内部で発生する熱の放熱などの点でも優れたものとすることができる。
【0021】
また、本発明の第十二の態様は、第一の態様のヘルメットにおいて、外側シェルの周縁部の厚みが、他の部分の厚みより厚く構成される、頭蓋形状矯正用ヘルメットである。このように構成された態様により、周縁部の厚さが他の部分よりも大きいものとなり、頭蓋形状矯正用ヘルメットとしての機械的な強度を向上させることが可能となる。
【0022】
また、本発明の第十三の態様は、外側シェルを有する頭蓋形状矯正用ヘルメットの前額部および/または後頸部の内表面側に設置される肉厚化部材であって、外側シェルの内表面に沿って略円弧状に湾曲した部分を有する、略楕円体状乃至略直方体状の形状である、肉厚化部材である。このように構成された態様により、頭蓋形状矯正用ヘルメットの内表面と、治療対象となる形状を有する頭蓋部分との間の距離をより適切なものとすることが可能となる。
【0023】
また、本発明の第十四の態様は、第十三の肉厚化部材において、外側シェルを有する頭蓋形状矯正用ヘルメットの前額部および/または後頸部の内表面側に設置される、肉厚化部材である。このように構成することにより、頭蓋形状矯正用ヘルメットの内表面と、治療対象となる形状を有する頭蓋部分との間の距離をより適切なものとすることが可能となる。
【0024】
また、本発明の第十五の態様は、第十三又は第十四の肉厚化部材において、合成樹脂製である肉厚化部材である。このように構成することにより、頭蓋形状矯正用ヘルメットの内表面と、治療対象となる形状を有する頭蓋部分との間の距離をより適切なものとすることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る頭蓋形状矯正用ヘルメットによれば、その内表面と、治療対象となる形状を有する頭蓋部分との間の距離を小さくし、意図せずに頭蓋形状矯正用ヘルメットが頭蓋部分から外れることを防止することができる。
【0026】
また本発明に係る頭蓋形状矯正用ヘルメットの一態様によれば、内表面から頭蓋部分に向けて突出した部材を着脱可能に構成している。このことから、治療の進捗に応じて、該部材を適宜取り外す、また再装着することが可能となり、効果的な治療を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明に係る頭蓋形状矯正用ヘルメットの一実施態様における全体を概略的に示す図である。
図2図2は、内側ライナーを備える本発明に係る頭蓋形状矯正用ヘルメットの一実施態様を示す正面図である。
図3図3は、本発明に係るヘルメットの内表面に設置されるアタッチメントの一実施態様を示す斜視図である。
図4図4は、本発明に係る頭蓋形状矯正用ヘルメットの別の実施態様を示す図である。
図5図5は、本発明に係る頭蓋形状矯正用ヘルメットの別の実施態様を示す図である。
図6図6は、本発明に係る頭蓋形状矯正用ヘルメットの更に別の実施態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本明細書に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメットの実施態様についてより詳細に説明するが、本発明を何ら限定することを意図するものではない。
【0029】
図1は、本願発明に係る頭蓋形状矯正用ヘルメットの一実施態様を示す図である。図1に示す頭蓋形状矯正用ヘルメット1は、外側シェル100の内表面側に、装着者の頭蓋方向に突出した肉厚化部材(アタッチメント10aおよび10b)を備えている。アタッチメント10aは、装着者の前額部に対応する位置に設けられている。アタッチメント10bは、装着者の後頸部に対応する位置に設けられている。
【0030】
図1に示す実施態様では肉厚化部材(アタッチメント10aおよび10b)が装着者の前額部および後頸部に対応する位置に設けられているが、肉厚化部材は、本発明の目的を達成できる限り、これらの位置に限定されるものではない。肉厚化部材が設けられる位置は、例えば、前額部に対応する位置、後頸部に対応する位置、側頭部の一方または両方に対応する位置、後頭部に対応する位置、またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。肉厚化部材が設けられる位置は、好ましくは、前額部に対応する位置および/または後頸部に対応する位置、あるいは両側頭部に対応する位置であり、より好ましくは、前額部に対応する位置および/または後頸部に対応する位置である。本発明者らの長年にわたる頭蓋形状矯正用ヘルメットの開発経験等から、肉厚化部材を前額部に対応する位置および/または後頸部に対応する位置に設けることで、頭蓋形状矯正用ヘルメットと装着者の頭蓋とのずれをより抑制することができうる。肉厚化部材は、対向する位置(例えば、前額部に対応する位置と後頸部に対応する位置、あるいは左側頭部に対応する位置と右側頭部に対応する位置など)に設けることで、頭蓋形状矯正用ヘルメットの不要な振動をより抑制することが期待される。
【0031】
外側シェル100の前方両側面には、鉛直方向に一対の補強部300が設けられている。補強部300が設けられることで、その結果として構成される湾曲部分に乳児の耳が挿入されて、頭蓋形状矯正用ヘルメット1と頭蓋部分との位置関係が概ね固定されてもよい。
【0032】
外側シェルは、合成樹脂製であってもよい。合成樹脂としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネイト、ポリエステル、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブチレン、ABS樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂の等が挙げられる。外側シェルは、粉末焼結積層造形法による成形の容易さや、強度および硬度の点から、ポリアミド、特にポリアミド12が好ましい。また成型後の外側シェル100のショアD硬度は、例えば約70~約85、特には約75~約80であることが好ましい。
【0033】
本発明の頭蓋形状矯正ヘルメットの外側シェル100は、矯正すべき変形頭蓋の外形に基づいて、3Dプリンタによる製造方法によって成形してもよい。矯正すべき変形頭蓋の外形は、それ自体は周知の三次元スキャン様式によって、確定することができる。また、好適な例示である粉末焼結積層造形法自体は、公知の造形法であるため、その詳細な説明は本明細書においては省略する。
【0034】
肉厚化部材(アタッチメント)は、本発明の目的を達成することができる限り、その形状、材質等は任意のものを選択することができる。例えば肉厚化部材(アタッチメント)が前額部に対応する位置および後頸部に対応する位置に設けられる場合、前額部に対応する位置に設けられる肉厚化部材と、後頸部に対応する位置に設けられる肉厚化部材は、別物であってもよいし、同じものであってもよい。
【0035】
肉厚化部材の形状としては、これらに限定されるものではないが、例えば、略円柱状、略楕円柱状、略三角柱状、略立方体状、略直方体状、略円錐形状、略三角錐状などが挙げられる。内部に流体(空気、液体等)を流入・流出させることにより、このような形状に膨張・収縮可能なものであってもよい。
【0036】
肉厚化部材の厚さは、治療対象となる乳児の頭蓋の形状、後述する内側ライナーの有無、頭蓋形状矯正用ヘルメットと治療対象となる乳児の頭蓋の形状との距離等を考慮して、適宜調整することができる。
【0037】
肉厚化部材の材質としては、本発明の目的を達成することができる限り特段限定されるものではないが、例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネイト、ポリエステル、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブチレン、ABS樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、発泡合成樹脂(発泡ポリウレタン、発泡ナイロン等)等の合成樹脂、ゴム等の弾性部材、等が挙げられる。肉厚化部材は、外側シェルおよび/または後述する内側ライナーと同じ材質を採用してもよい。
【0038】
外側シェルと肉厚化部材との結合は、任意の方法を選択することができ、例えば、接着剤、両面接着テープ、面ファスナーを介した結合等が挙げられる。肉厚化部材は、好ましくは、両面接着テープ、面ファスナー等を介して外側シェルに着脱可能に設置される。
【0039】
肉厚化部材は、選択する材質、形状等に応じて、任意の方法で製造することができる。例えば、肉厚化部材の材質として、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネイト、ポリエステル、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の合成樹脂を選択する場合、3Dプリンタによる製造方法(例えば、粉末焼結積層造形法)によって製造してもよい。
【0040】
図2は、本発明に係る頭蓋形状矯正用ヘルメットの一実施態様を示す図である。図2に示す実施態様では、外側シェル100の内表面に内側ライナー200が設けられている。肉厚化部材(アタッチメント10a、10b)は、内側ライナーに接している。内側ライナー200は、外側シェル100の内表面に、その内表面の形状に従って、配設されてもよい。この内側ライナー200は、外側シェル100と、治療対象となる乳児の頭蓋部分の皮膚との間のいわゆる緩衝材として作用してもよい。これにより、外側シェル100から皮膚を保護すると共に、乳児の汗を吸収し、かつ発散する機能を有してもよい。
【0041】
内側ライナー200を、外側シェル100の内表面に配設する際の位置は、図2に示すように、内表面の略全面にするようにしても良いし、内表面の適切な位置に選択的に配設しても良い。内側ライナー200は、肉厚化部材(アタッチメント)を配設した際の、外側シェル100の内表面から頭蓋部分までの距離や、頭蓋表面に対する弾性などを考慮して、肉厚化部材(アタッチメント)を配設する部分にのみ配設しても良い。一例としては、乳児の前額部および後頸部に選択的に配設してもよい。更には、外側シェル100の内表面全面に内側ライナー200を配設したうえで、適切な位置にのみ、内側ライナーを重ねることで、厚さを増加させても良い。
【0042】
図2の実施態様では、肉厚化部材(アタッチメント10aおよび10b)は、前額部に対応する位置と後頸部に対応する位置との二か所に分離して設けられている。しかし、肉厚化部材は、この形態には限られず、例えば頭蓋部分を取り囲むように前側シェルから後側シェルにわたって一体に設けるようにしても良い。アタッチメントを比較的大きい部材(例えば、乳幼児の口に入らない程度以上の大きさの部材)として構成することで、乳児が誤って口に入れるような事故も回避することができる。更に、肉厚化部材(アタッチメント)の数も、図2のように一か所に一つのものとして構成する必要はなく、治療対象となる頭蓋部分の形状等を勘案して、複数の部材からなる構成にしても良い。
【0043】
内側ライナー200の配設は、任意の方法を選択することが可能であり、これらに限定されるものではないが、例えば、接着剤等により外側シェル100の内表面との間で着脱不可なように配設してもよいし、両面接着テープ、面ファスナー等により、外側シェル100の内表面との間で着脱自在に配設してもよい。内側ライナー200を外側シェル100と着脱自在に配設することで、治療対象の乳児の発汗による汚染や、頭蓋の成長により、内側ライナー100を交換、除去することが可能になる。
【0044】
図2に示す実施態様では、肉厚化部材が内側ライナーの外面に設置されている。しかし、肉厚化部材は、内側ライナーの内面(すなわち、内側ライナーと外側シェルの間)に設置されていてもよい。この場合、肉厚化部材は、内側ライナーに結合していてもよいし、外側シェルに結合していてもよいし、内側ライナーと外側シェルの両方に結合していてもよい。あるいは、肉厚化部材は、内側ライナーと外側シェルのいずれにも結合しておらず、単に内側ライナーと外側シェルの間に挟まっていてもよい。
【0045】
内側ライナーの材質は、特段限定されるものではないが、例えば、発泡合成樹脂、好ましくは発泡ポリウレタン、発泡ナイロン、より好ましくは連続気孔発泡ポリウレタン(例えば、商品名「メモリーフォームCF-45」)などが挙げられる。
【0046】
内側ライナーの厚さは、これらに限定されるものではないが、例えば、約1~約50mm、好ましくは約3~約40mm、より好ましくは約6~約20mmである。また、内側ライナー200は、約15%以下のボール反発弾性を有するように構成してもよい。
【0047】
図3は、本発明に係る頭蓋形状矯正用ヘルメットの内面に配設される肉厚化部材(アタッチメント)の一実施態様を示す図である。肉厚化部材(アタッチメント10aまたは10b)は、図3に示す実施態様では、外側シェルの内表面に沿って配設できるように、略円弧状に湾曲した部分を有し、全体がほぼ楕円体状または直方体状の形状を有している、両面接着テープなどにより、内側ライナー200および/または外側シェル100の内表面に取り付けられる。これにより、頭蓋形状矯正用ヘルメット1と、治療対象となる乳児の頭蓋部分との間の距離を調整して、頭蓋形状矯正用ヘルメットの不要な振動を抑制し、治療中に、ヘルメットが頭蓋部分から外れることを防止するものである。取り付ける位置としては、乳児の前額部に対応する位置および後頸部に対応する位置が好適である。また、複数箇所に取り付ける場合には、形状は同じものでも良いし、異なるものでも良い。治療開始時点での頭蓋部分の形状や、想定される治療経過などを勘案して取り付け場所を決定するのが望ましい。また、取り付けの態様としては、外側シェル100の内面にそのまま沿った態様を基本とするが、これには限定されない。頭蓋形状矯正用ヘルメット1と頭蓋部分との位置関係ができるだけ安定するように、取り付けの態様を決定するのが望ましい。
【0048】
図4は、本願発明に係る、頭蓋形状矯正用ヘルメットの更に別の実施態様を示す図である。この実施態様においては、外側シェル100が、頭蓋部分の前後方向に二分割され、前側シェル100aと後側シェル100bとで構成される。そして、それぞれの端部の対応する部分に、従来から公知の方法で、図示しない凸部結合部と凹部結合部とが設けられ、それらが係合する形で全体として外側シェル100が構成される。
【0049】
また、図4の実施態様では、外側シェルの前側シェル100a、後側シェル100bのそれぞれには、鉛直方向ほぼ同位置に連結用リブ20が設けられ、その間を連結部材30で連結する。図4には一方のみが示されているが、図示されない反対側にも同様に連結用リブ20と、連結部材30とが設けられる。連結用リブ20の周辺部分には、このように連結部材30が挿入されるときの張力や、前側シェル100aと後側シェル100bとを近接させるための応力も作用する。このことから、連結用リブ20の近辺は、外側シェル100の他の部分に比較して厚さが大きくなるように構成し、機械的な強度を大きくすることが望ましい。なお、連結用リブ20の近辺だけではなく、外側シェル100の外周は、周縁補強部50として他の部分よりも肉厚に構成することも可能である。これにより、頭蓋形状矯正用ヘルメット1全体としての機械的な強度が向上している。
【0050】
このように構成された図4に示す実施態様では、結合部材30の前後方向の長さを調整して、前側シェル100aと後側シェル100bとの間を多少離間させるようにすることが可能となる。結合部材30には、従って、長手方向にある程度伸縮するような材料を用いることが望ましい。これにより、治療対象となる乳児の頭蓋の成長に応じて、外側シェル10の内径を大きくさせることも可能となる。なお、前側シェル100aと後側シェル100bとの間には、図示の通りにスリット15を設けることも可能である。これにより、頭蓋部分の成長に応じて、スリット15を適宜開き、前側シェル100aと後側シェル100bとの位置関係を調整することが容易となる。図4に示す実施態様では、スリット15が両側頭部の上縁から下縁まで延伸されている。これにより、外側シェルは、前側シェル100aと後側シェル100bに分割可能となる。
【0051】
更に図4に示す実施態様では、外側シェル100の表面がメッシュ構造40となるよう構成されている。これにより、頭蓋形状矯正用ヘルメット内外間の通気性が良好となり、治療対象の乳児の汗の放散や、頭蓋形状矯正用ヘルメット内部で発生する熱の放熱などの点でも優れている。そして、メッシュ構造を採用しているため、使用する材料の使用量を削減でき、本体を軽量化でき、価格の低減も可能となる。また、メッシュ構造に材料の樹脂を成形することで、樹脂の配向が分散されるため、機械的な強度の点でも優れている。成形のための合成樹脂素材としては、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネイト等が使用可能であるが、粉末焼結積層造形法による成形の容易さや、強度および硬度の点からポリアミド、特にポリアミド12が望ましい。また成型後の外側シェル100のショアD硬度は、例えば約70~約85、特には約75~約80となることが望ましい。
【0052】
図5は、本願発明に係る、頭蓋形状矯正用ヘルメットの別の実施態様を示す図である。この実施態様においては、図4に示す、外側シェル100の表面上に設けられたメッシュ構造40に替えて、複数の通気孔22が設けられている。このような構成を採用することにより、乳児の汗の放散や、頭蓋形状矯正用ヘルメット内部で派生する熱の放熱などが、より効果的に行える。なお、図5に示すように、このように設けられた通気孔22の一部を、連結用リブ20として使用することも可能である。
【0053】
図6は、本願発明に係る、頭蓋形状矯正用ヘルメットの更に別の実施態様を示す正面図である。この実施態様においては、図1に示すような、前額部および後頸部に対応する位置に設けられた肉厚化部材(アタッチメント)10aおよび10bに変えて、側頭部の双方に対応する位置に肉厚化部材10c、10dが設けられている。このように構成することでも、ヘルメットの装着者の頭蓋部分と外側シェルの間の空隙を狭めることができ、頭蓋部分とヘルメットの間のずれを効果的に抑制することが期待される。
【0054】
あるいは、本願発明に係るさらに別の実施態様では、前額部および後頸部に対応する位置に設けられた肉厚化部材(アタッチメント)10aおよび10bに加えて、側頭部の双方に対応する位置にも肉厚化部材10c、10dが設けられていてもよい。このように構成することでも、ヘルメットの装着者の頭蓋部分と外側シェルの間の空隙を更に狭めることができ、頭蓋部分とヘルメットの間のずれをより効果的に抑制することが期待される。また、このように、3カ所以上の複数箇所に肉厚化部材を設けるように構成することで、治療対象となる頭頭蓋部分の形状を充分に考慮してヘルメットを作成することができる。例えば、頭蓋部分の形状を勘案して、前額部および右側頭部に対応する部分のみに、肉厚化部材を設ける等、柔軟な対応が可能となる。更に、このように複数箇所に肉厚化部材を配置することで、それぞれの部材の大きさを小さくして効率良く配置することができる。このことにより、部材の材料を少なくして、ヘルメットの製造コストの削減や軽量化を図ることも可能である。なお、側頭部に設けられる肉厚化部材10c、10dは、図6に示す位置に限定されるものではなく、例えば補強部300に対応する部分に設けられても良い。
【0055】
以上、本願発明に係る頭蓋形状矯正用ヘルメットの実施態様について説明したが、これらの実施態様は、例示に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変、変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0056】
1:頭部形状矯正用ヘルメット
10a、10b、10c、10d:アタッチメント
15:スリット
20:連結用リブ
30:連結部材
40:メッシュ構造
50:周縁補強部
100:外側シェル
200:ライナー
300:補強部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭蓋部分を覆うように構成された外側シェルと、
前記外側シェルの内表面側の少なくとも一部に設けられ、装着者の頭蓋方向に突出した肉厚化部材であって
前記肉厚化部材が、前記外側シェルの内表面に沿って治療対象となる形状を有する頭蓋部分との間の距離を適切に保つように略円弧状に湾曲した部分を有する、
頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項2】
前記肉厚化部材が、前記装着者の前額部の少なくとも一部に対応する位置および/または後頸部の少なくとも一部に対応する位置に設けられる、請求項1に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項3】
前記外側シェルの内表面の少なくとも一部に配設される内側ライナーを備える、請求項1または2に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項4】
前記肉厚化部材が、前記内側ライナー部材に着脱可能に設置される、請求項3に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項5】
前記肉厚化部材が、前記外側シェルに着脱可能に設置される、請求項1に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項6】
前記肉厚化部材が、複数の部材から成る、請求項1に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項7】
前記肉厚化部材が、合成樹脂製である、請求項1に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項8】
前記外側シェルの両側頭部にスリットが設けられる、請求項1に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項9】
前記スリットが両側頭部の上縁から下縁まで延伸されることにより、前記外側シェルが前側シェルおよび後側シェルに分割されてなる、請求項98に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項10】
前記外側シェルが、メッシュ構造である、請求項1に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項11】
前記外側シェルの周縁部の厚みが、他の部分の厚みより厚く構成される、請求項1に記載の頭蓋形状矯正用ヘルメット。
【請求項12】
外側シェルを有する頭蓋形状矯正用ヘルメットの内表面側に設置される肉厚化部材であって、前記外側シェルの内表面に沿って治療対象となる形状を有する頭蓋部分との間の距離を適切に保つように略円弧状に湾曲した部分を有する、略楕円体状乃至略直方体状の形状である、肉厚化部材。
【請求項13】
頭蓋形状矯正用ヘルメットの前額部および/または後頸部の内表面側に設置される、請求項12に記載の肉厚化部材。
【請求項14】
合成樹脂製である、請求項12又は13に記載の肉厚化部材。