(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106152
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】被供給液入り液体収容管
(51)【国際特許分類】
B43K 7/08 20060101AFI20240731BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20240731BHJP
【FI】
B43K7/08 100
C09D11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010300
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】高田 晃児
(72)【発明者】
【氏名】小椋 孝介
(72)【発明者】
【氏名】市川 秀寿
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350NA10
2C350NA11
2C350NC04
2C350NC20
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE23
4J039CA03
4J039CA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、良好な追従性、上向き保管後の安定性、及び耐揮発性を有する、新規な被供給液入り液体収容管を提供する。
【解決手段】本発明の被供給液入り液体収容管100は液体供給部10、及び液体収容部20を有しており、前記液体収容部20に、前記液体供給部10側から、前記液体供給部10に接している被供給液30、及び複数の層で構成されている複層追従体40が、この順で収容されており、前記複層追従体40が、第一の追従体42、及び第二の追従体44を少なくとも含み、前記第一の追従体42が、前記第二の追従体44よりも前記液体供給部10側に存在しており、前記第一の追従体42の離油度が、2.0%以下であり、前記第二の追従体44の離油度が、前記第一の追従体の離油度よりも0.5ポイント~5.0ポイント大きく、前記離油度が、JIS K2220:2013に準拠して測定したものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給部、及び液体収容部を有しており、
前記液体収容部に、前記液体供給部側から、前記液体供給部に接している被供給液、及び複数の層で構成されている複層追従体が、この順で収容されており、
前記複層追従体が、第一の追従体、及び第二の追従体を少なくとも含み、前記第一の追従体が、前記第二の追従体よりも前記液体供給部側に存在しており、
前記第一の追従体の離油度が、2.0%以下であり、
前記第二の追従体の離油度が、前記第一の追従体の離油度よりも大きく、
前記第二の追従体の離油度と前記第一の追従体の離油度との差が、0.5ポイント~5.0ポイントであり、
前記離油度が、JIS K2220:2013に準拠して測定したものである、
被供給液入り液体収容管。
【請求項2】
前記第一の追従体が、前記被供給液に接している、請求項1に記載の被供給液入り液体収容管。
【請求項3】
前記第二の追従体が、前記第一の追従体に接している、請求項1又は2に記載の被供給液入り液体収容管。
【請求項4】
前記複層追従体が、前記第一の追従体及び前記第二の追従体で構成されている、請求項1又は2に記載の被供給液入り液体収容管。
【請求項5】
前記複層追従体を構成する各追従体間の界面が視認可能である、請求項1又は2に記載の被供給液入り液体収容管。
【請求項6】
前記第一の追従体が、第一のベースオイルを含有しており、かつ前記第一のベースオイルが、シリコーン油及びフッ素油から成る群より選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の被供給液入り液体収容管。
【請求項7】
前記第二の追従体が、第二のベースオイルを含有しており、かつ前記第二のベースオイルが、鉱油、合成炭化水素油、エステル油、及びポリグリコール油から成る群より選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の被供給液入り液体収容管。
【請求項8】
前記第二のベースオイルが、ポリオレフィン、流動パラフィン、及び鉱油から成る群より選択される少なくとも一種である、請求項7に記載の被供給液入り液体収容管。
【請求項9】
前記第一の追従体が、シリカ、及び無機塩粒子から成る群より選択される少なくとも一種である第一の増稠剤を更に含有している、請求項1又は2に記載の被供給液入り液体収容管。
【請求項10】
前記第二の追従体が、エラストマーから成る群より選択される少なくとも一種である第二の増稠剤を含有している、請求項1又は2に記載の被供給液入り液体収容管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被供給液入り液体収容管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筆記具用インキ、液体化粧料、液体燃料等の被供給液を供給及び収容するための収容管において、被供給液の蒸発、収容管の内壁への付着等を抑制するため、追従体(フォロワー)が用いられている。この追従体は、被供給液の消費による減少に追従して、被供給液の供給部に向かって移動する。
【0003】
特許文献1では、内径3mm以上の円筒形若しくはそれに準ずる形態のインキ収容管を有する水性ボールペンにおいて、基油の粘度が違うことによって粘性特性の違う2種のゲル状物を併用したインキ追従体が開示されている。
【0004】
特許文献2では、筆記具用油性インキがインキ収容管内に収容され、インキ収容管の一端側のインキ流出部にはペン先が取り付けられており、上記インキ収容管内には上記油性インキと接するようにインキ追従体が収容されている、筆記具が開示されている。このインキ追従体は、油性インキと接する第1層とこの第1層と接する第2層で少なくとも構成されており、上記第1層は水性ゲル状物質、上記第2層は難揮発性又は不揮発性の有機液体である。
【0005】
特許文献3では、比重が0.8~0.9の範囲の炭化水素系有機溶剤より選ばれる1種または2種以上の混合物と、ゲル化剤と、前記炭化水素系有機溶剤に対して実質的に溶解または膨潤しなく、前記炭化水素系有機溶剤よりも比重の小さい粒子とより少なくともなるインキ追従体組成物が開示されている。
【0006】
特許文献4では、少なくとも、ベースオイルと、スチレン構造を含むエラストマー3.5~8質量%とを含むことを特徴とする化粧料塗布具用追従体組成物が開示されている。
【0007】
特許文献5では、筒状の充填室と、該筒状の充填室の先端に装着される塗布部と、該塗布部に直接又は介在部材を介して連通する該筒状の充填室に直接充填される液体化粧料と、該液体化粧料に接し、該液体化粧料の消費による減少に追従して移動し、該液体化粧料の色相とは異なる液体のフォロワーとを設けてなり、該液体化粧料の体積1に対して該フォロワーの体積が0.5以上であることを特徴とする化粧料塗布具が開示されている。
【0008】
特許文献6では、流出口を有する容器本体と、前記容器本体内に設けられた燃料と、前記容器本体内で、前記燃料に対して前記流出口側と反対側で接するように設けられた高粘性液体と、を有することを特徴とする燃料容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6-328890号公報
【特許文献2】特開2001-158869号公報
【特許文献3】特開2005-239918号公報
【特許文献4】特開2017-165670号公報
【特許文献5】特開2016-198395号公報
【特許文献6】特開2004-281340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、良好な追従性、上向き保管後の筆記描線の安定性、及び耐揮発性を有する、新規な被供給液入り液体収容管を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉液体供給部、及び液体収容部を有しており、
前記液体収容部に、前記液体供給部側から、前記液体供給部に接している被供給液、及び複数の層で構成されている複層追従体が、この順で収容されており、
前記複層追従体が、第一の追従体、及び第二の追従体を少なくとも含み、前記第一の追従体が、前記第二の追従体よりも前記液体供給部側に存在しており、
前記第一の追従体の離油度が、2.0%以下であり、
前記第二の追従体の離油度が、前記第一の追従体の離油度よりも大きく、
前記第二の追従体の離油度と前記第一の追従体の離油度との差が、0.5ポイント~5.0ポイントであり、
前記離油度が、JIS K2220:2013に準拠して測定したものである、
被供給液入り液体収容管。
〈態様2〉前記第一の追従体が、前記被供給液に接している、態様1に記載の被供給液入り液体収容管。
〈態様3〉前記第二の追従体が、前記第一の追従体に接している、態様1又は2に記載の被供給液入り液体収容管。
〈態様4〉前記複層追従体が、前記第一の追従体及び前記第二の追従体で構成されている、態様1~3のいずれか一項に記載の被供給液入り液体収容管。
〈態様5〉前記複層追従体を構成する各追従体間の界面が視認可能である、態様1~4のいずれか一項に記載の被供給液入り液体収容管。
〈態様6〉前記第一の追従体が、第一のベースオイルを含有しており、かつ前記第一のベースオイルが、シリコーン油及びフッ素油から成る群より選択される少なくとも一種である、態様1~5のいずれか一項に記載の被供給液入り液体収容管。
〈態様7〉前記第二の追従体が、第二のベースオイルを含有しており、かつ前記第二のベースオイルが、鉱油、合成炭化水素油、エステル油、及びポリグリコール油から成る群より選択される少なくとも一種である、態様1~6のいずれか一項に記載の被供給液入り液体収容管。
〈態様8〉前記第二のベースオイルが、ポリオレフィン、流動パラフィン、及び鉱油から成る群より選択される少なくとも一種である、態様7に記載の被供給液入り液体収容管。
〈態様9〉前記第一の追従体が、シリカ、及び無機塩粒子から成る群より選択される少なくとも一種である第一の増稠剤を更に含有している、態様1~8のいずれか一項に記載の被供給液入り液体収容管。
〈態様10〉前記第二の追従体が、エラストマーから成る群より選択される少なくとも一種である第二の増稠剤を含有している、態様1~9のいずれか一項に記載の被供給液入り液体収容管。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な追従性、上向き保管後の供給安定性、及び耐揮発性を有する、新規な被供給液入り液体収容管を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の被供給液入り液体収容管の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《被供給液入り液体収容管》
本発明の被供給液入り液体収容管100は、
液体供給部10、及び液体収容部20を有しており、
前記液体収容部20に、前記液体供給部10側から、前記液体供給部10に接している被供給液30、及び複数の層で構成されている複層追従体40が、この順で収容されており、
前記複層追従体40が、第一の追従体42、及び第二の追従体44を少なくとも含み、前記第一の追従体42が、前記第二の追従体44よりも前記液体供給部10側に存在しており、
前記第一の追従体42の離油度が、2.0%以下であり、
前記第二の追従体44の離油度が、前記第一の追従体の離油度よりも大きく、
前記第二の追従体の離油度と前記第一の追従体の離油度との差が、0.5ポイント~5.0ポイントであり、
前記離油度が、JIS K2220:2013に準拠して測定したものである。
【0015】
本発明において、「離油度」とは、JIS K2220:2013に準拠して測定したものである。具体的には、離油度は、以下の手順で得ることができる。
1.円錘型金網を有するろ過器に、10gの試料を配置する。
2.このろ過器を重量既知のビーカー中に吊るし、60℃にて恒温槽内に24時間保つ。
3.放冷後、ビーカー中の分離油の質量を測定する。
4.分離油の質量の、試料の質量に対する割合を算出し、これを離油度とする。
【0016】
従来の追従体では、被供給液の消費に伴って追従できる性質である追従性が求められており、そのためには、追従体がスムーズに動くことが求められている。一方、追従体を上向きに保管した後の供給安定性、具体的には被供給液の供給に悪影響を及ぼさないことが求められる場合がある。これらの性能は相反するものであり、これらを両立させるためには、追従体の離油度を精密に制御しつつ、更には追従体の充填長を適切な長さにする必要があり、その結果、追従体としての他の性能、例えば耐衝撃性及び被供給液の耐揮発性等に悪影響が生じることがあった。
【0017】
これに対し、本発明者らは、第一の追従体の離油度と、第二の追従体の離油度との関係を上記のようにすることにより、追従性、筆記描線の安定性、及び耐揮発性が良好にできることを見出した。より具体的には、上記の離油度の関係を満足することにより、
図1に示すように、第一の追従体42の表面には薄い油膜42aが形成される一方で、第二の追従体44の表面にはやや厚い油膜44aが形成されることとなる。
【0018】
これによれば、被供給液が消費される際には、離油度が低い第一の追従体により、良好な被供給液の掻き取り性を提供しつつ、離油度が高い第二の追従体により、被供給液の揮発を抑制することができる。
【0019】
特に、上記の二層構成にすることにより、第二の追従体を厚く設けることができ、その結果、耐衝撃性及び耐揮発性への悪影響を抑制することができる。
【0020】
これに対して、離油度が低い追従体のみを用いる場合、被供給液の良好な掻き取り性を提供できる。しかしながら、被供給液からの成分の揮発を十分に抑制するために必要な厚さで、このような離油度が低い追従体を用いると、追従体の表面の油膜が不十分であることによって、被供給液の消費に伴う追従体の追従性が不十分になることがある。
【0021】
また、離油度が高い追従体のみを用いる場合、被供給液からの成分の揮発を十分に抑制するために必要な厚さで、このような離油度が高い追従体を用いる場合にも、追従体の表面の油膜が十分であることによって、被供給液の消費に伴う追従体の追従性を良好にすることができる。しかしながら、このような離油度が高い追従体のみを用いる場合、追従体の表面の油膜が厚いことによって、被供給液の掻き取り性が劣ることがあり、また油膜の油が被供給液中に混入し、液体供給部に達することによって、筆記描線の安定性が損なわれることがある。
【0022】
本発明の被供給液入り液体収容管においては、第二の追従体の離油度は、第一の追従体の離油度よりも大きく、その差は、0.5ポイント以上、1.0ポイント以上、1.5ポイント以上、又は2.0ポイント以上であることが、追従性の観点から好ましい。この差は、5.0ポイント以下、4.5ポイント以下、4.0ポイント以下、又は3.5ポイント以下であってよい。ここで、本発明において、「ポイント」とは、「%」を単位とする2つの値の差を意味するものであり、これは、「パーセントポイント」とも称されることがある。
【0023】
本発明の被供給液入り液体収容管は、例えば、液体収容部に、被供給液、第一の追従体及び第二の追従体を、この順になるようにして充填し、次いで、第二の追従体から被供給液へと向かう遠心力が印加されるようにして、液体収容管に遠心処理を施すことにより製造することができる。
【0024】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0025】
〈液体供給部及び液体収容部〉
液体供給部は、被供給液を液体収容管の外部に供給するための部材である。液体収容部は、被供給液を収容するための部材である。液体供給部と液体収容部とは、連結されていてよい。
【0026】
液体収容部を構成する材料は、特に限定されず、ポリプロピレン等の樹脂、紙、金属等を用いることができる。また、この材料としては、トウモロコシやサトウキビなどの生物由来の資源を使用したバイオマスプラスチックや、土壌生分解性樹脂や海洋生分解性樹脂を使用した生分解性プラスチックを用いてもよい。
【0027】
例えば、本発明の被供給液入り液体収容管が筆記具用リフィールである場合には、本発明の液体供給部及び液体収容部は、それぞれ、筆記部及びインク収容部であってよく、具体的にはボールペンのペン先(チップ)及びインク収容管であってよい。ここで、インク収容管は、プラスチック製、金属製、又は紙製であってよい。
【0028】
〈被供給液〉
被供給液は、随意の被供給液であってよく、例えばインク、液体燃料、液体化粧品等であってよい。
【0029】
また、インクは、水性インクであってもよく、又は油性インクであってもよく、また、水性インクは、ゲルインクであってもよい。
【0030】
ここで、水性インクは、概して、水及び着色材を少なくとも含有しているインクを指し、油性インクは、有機溶剤及び着色材を少なくとも含有しているインクを指し、ゲルインクは、粘度調整剤を更に含有している水性インクを意味するものである。
【0031】
〈複層追従体〉
複層追従体は、複数の層で構成されている追従体である。複層追従体は、第一の追従体、及び第二の追従体を少なくとも含む。
【0032】
特に、第一のベースオイルがシリコーン油又はフッ素油である場合には、第一の追従体は、被供給液に接していることが、これらの液体収容管の壁面の被供給液の残存を抑制できるという利点、及び被供給液との混合を抑制できるという利点を得る観点から好ましい。
【0033】
第二の追従体は、第一の追従体に接していてよい。
【0034】
中でも、複層追従体は、第一の追従体及び第二の追従体で構成されていてよい。
【0035】
複層追従体を構成する各追従体間の界面は、グラデーションのように明確に視認可能ではなくてもよいが、明確に視認可能であってもよい。また、少なくとも一の追従体が、被供給液に溶解又は溶出しない色材で着色されていてもよい。複数の追従体を着色する場合には、それぞれ異なる色にすることが、デザイン及び視認性の観点から好ましい。明確に視認可能な界面は、例えば、隣接する各追従体を構成するベースオイルを、互いに混和しない組合せにすることにより得ることができる。互いに混和する組合せとしては、例えば同種のベースオイル、ポリグリコール油とエステル油、合成炭化水素油と鉱油、エステル油と鉱油、合成炭化水素油とエステル油等の組合せが挙げられる。一方、互いに混和しない組合せとしては、例えばシリコーン油と鉱油、シリコーン油と合成炭化水素油、シリコーン油とエステル油、シリコーン油とポリグリコール油、シリコーン油とフッ素油、フッ素油と鉱油、フッ素油と合成炭化水素油、フッ素油とエステル油、フッ素油とポリグリコール油等の組合せが挙げられる。
【0036】
(第一の追従体)
第一の追従体は、第二の追従体よりも液体供給部側に存在している追従体である。
【0037】
第一の追従体の離油度は、2.0%以下、1.8%以下、1.6%以下、又は1.5%以下であることが、上向き保管後の筆記描線の安定性の観点から好ましい。この離油度は、0%以上、0.1%以上、0.3%以上、又は0.5%以上であってよい。この離油度は、例えば第一の増稠剤の含有率を増加させることにより、低減させることができる。
【0038】
特に、第一の追従体は、シリコーン油及びフッ素油から成る群より選択される少なくとも一種の第一のベースオイルを含有していることが、液体収容管の壁面の被供給液の残存を抑制する観点、及び被供給液との混合を抑制する観点から好ましい。シリコーン油としては、例えばジメチルシリコーンオイル、及びメチルフェニルシリコーンオイル等を用いることができる。
【0039】
また、第一の追従体は、第一の増稠剤、特にシリカ、及び無機塩粒子から成る群より選択される少なくとも一種の第一の増稠剤を更に含有していてよい。
【0040】
無機塩粒子としては、例えばカオリナイト、スメクタイト、セリサイト、イライト、グローコナイト、クロライト、タルク、ゼオライト等の粘度鉱物、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等の非水溶性金属石鹸を用いることができる。
【0041】
第一の増稠剤の含有率は、第一の追従体の質量に対して、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、又は4質量%以上であってよく、また10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、又は6質量%以下であってよい。
【0042】
第一の追従体は、これを構成する各材料を、加温しながら、プラネタリーミキサー、ロールミル等の混練手段により混錬することにより得ることができる。
【0043】
(第二の追従体)
第二の追従体は、第一の追従体よりも、液体供給部に対して反対側に存在している追従体である。
【0044】
第二の追従体の離油度は、第一の追従体の離油度との上記の差を満足する限り、特に限定されず、例えば1.0%以上、1.5%以上、又は2.0%以上であってよく、また6.5%以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下、4.5%以下、又は4.0%以下であってよい。この離油度は、第二の追従体の含有率を少なくすることにより、増加させることができる。
【0045】
特に、第二の追従体は鉱油、合成炭化水素油、エステル油、及びポリグリコール油から成る群より選択される少なくとも一種の第二のベースオイルを含有していることが、ガスバリア性を得る観点から好ましい。
【0046】
鉱油としては、スピンドル油、ワセリン等を用いることができる。
【0047】
合成炭化水素油としては、ポリブテン等のポリオレフィン、オレフィンオリゴマー、芳香族炭化水素、及び流動パラフィン等を用いることができる。
【0048】
エステル油及びポリグリコール油としては、追従体として一般に用いられるものを用いることができる。
【0049】
第二のベースオイルとしては、中でも、ポリオレフィン、流動パラフィン、及び鉱油を用いることが好ましい。
【0050】
第二の追従体は、第二の増稠剤、特に第一の増稠剤とは異なる第二の増稠剤、中でもエラストマーから成る群より選択される少なくとも一種の第二の増稠剤を更に含有していてよい。
【0051】
エラストマーとしては、例えばエチレン-エチレンブチレン-エチレンブロック共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリウレタン系熱可塑性エラストマー等を用いることができる。
【0052】
第二の増稠剤の含有率は、第二の追従体の質量に対して、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、又は4質量%以上であってよく、また10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、又は6質量%以下であってよい。特に、第一及び第二の追従体がいずれも増稠剤を含有している場合、第二の増稠剤の含有率は、第一の追従体の第一の増稠剤の含有率よりも低いことが、上記の離油度の関係を満足する観点から好ましい。
【0053】
第二の追従体の充填長の、第一の追従体の充填長に対する比は、0.05以上、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.5以上、0.7以上、1.0以上、1.3以上、1.5以上、1.7以上、2.0以上、又は2.3以上であってよく、また15.0以下、14.0以下、13.0以下、12.0以下、11.0以下、10.0以下、9.5以下、9.0以下、8.5以下、8.0以下、7.5以下、7.0以下、6.5以下、6.0以下、5.5以下、4.0以下、3.5以下、3.0以下、又は2.5以下であってよい。中でも、この比は、1.0以上であることが、被供給液の掻き取り性及び耐揮発性を両立させる観点から好ましい。
【0054】
第二の追従体は、第一の追従体に関して挙げた方法により製造することができる。
【0055】
〈他の構成〉
本発明の被供給液入り液体収容管は、随意の他の構成を有していてもよい。他の構成としては、例えばフォロワ棒のように追従体中に埋没させる固体を用いることができる。フォロワ棒は、複層追従体に埋没するように存在していてよい。より具体的には、複数のフォロワ棒が、複層追従体を構成する各追従体にそれぞれ埋没するように存在していてもよく、又は一のフォロワ棒が、複層追従体を貫くようにして埋没していてもよい。
【実施例0056】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0057】
表1に示す種類及び量の第一のベースオイル及び第一の増稠剤を、加温しながら混錬し、次いで、表1の「ロールミルの有無」の欄において「有」と記載しているものについては、ロールミルを用いて更に混錬して、第一の追従体を作製した。
【0058】
また、表1に示す種類及び量の第二のベースオイル及び第二の増稠剤を、プラネタリーミキサーを用いて、加温しながら混錬し、次いで、表1の「ロールミルの有無」の欄において「有」と記載しているものについては、ロールミルを用いて更に混錬して、第二の追従体を作製した。
【0059】
表1に示すベースオイルの詳細は以下のとおりである:
ポリブテンA:ポリブテン015N、日油株式会社
ポリブテンB:ポリブテン30N、日油株式会社
鉱油A:ダイアナプロセスオイル PW-90、出光興産株式会社
鉱油B:ダイアナプロセスオイル PW-90、出光興産株式会社
芳香族:バーレルプロセス油 B-05、松村石油株式会社
パラフィン:バーレルプロセス油 P-2200、松村石油株式会社
シリコーンA:KF-54、信越化学工業株式会社
シリコーンB:KF-96、信越化学工業株式会社
【0060】
表1に示す増稠剤の詳細は以下のとおりである:
エラストマーA:DYNARON 6200P、JSR株式会社
エラストマーB:DYNARON 8300P、JSR株式会社
無機塩:ステアリン酸リチウム
シリカA:AEROSIL R202、Evonik社
シリカB:AEROSIL NY50L、Evonik社
【0061】
表1に示す液体収容管に、被供給液として、表1の「被供給液(インク)」の欄で示すインクを封入し、次いで第一の追従体及び第二の追従体をこの順で封入して、インク入りリフィールを作製した。第一の追従体及び第二の追従体の充填長は、表1に示すとおりである。
【0062】
水性インクは、主溶剤として水を使用し、少なくとも着色剤を含有しているインクを示しており、表1の「被供給液(インク)」の欄では、「水性」と言及している。
【0063】
表1の「被供給液(インク)」の欄において、「ゲル」と言及しているものは、主溶剤として水を使用し、少なくとも着色剤・粘度調整剤を含有しているインクを示している。
【0064】
表1の「被供給液(インク)」の欄において、「油性」と言及しているものは、主溶剤として有機溶剤を使用し、少なくとも着色剤を含有しているインクを示している。
【0065】
表1の「収容管」の欄において、「PP」と言及しているものは、ポリプロピレン製のインク収容部を有するリフィール(内径5mm)を示している。
【0066】
表2の「収容管」の欄において、「金属」と言及しているものは、金属製のインク収容部を有するリフィール(内径5mm)を示している。
【0067】
表2の「収容管」の欄において、「紙」と言及しているものは、基層として紙層を有するインク収容部を有するリフィール(内径5mm)を示している。
【0068】
《評価》
〈追従性〉
作製したインク入りリフィールをISO規格に準拠した筆記用紙に、筆記試験機にてインクが消費されるまで(最大1000m)連続で直径30mmの「らせん筆記」し、得られた描線を確認した。この試験は、筆記荷重100gf、筆記角度60°、筆記速度9.0mm/minの筆記条件で実施した。評価基準は以下のとおりである。
A: カスレのない良好な描線が得られた。
B: 描線の1/4未満にカスレが見られた。
C: 描線の1/4以上にカスレが見られた。
【0069】
〈上向き保管後の筆記描線の安定性〉
作製したインク入りリフィールを、温度0℃~50℃のサイクル温度環境において、ペン先を上斜め45°の状態で90日保管した。このサイクル温度環境は、0℃で12時間放置し、次いで1時間かけて50℃まで加熱し、次いで50℃で12時間放置し、次いで1時間かけて0℃まで冷却することを1サイクルとして、これを90日繰り返すものとした。
【0070】
上記のサイクル温度環境から取り出した後、各リフィールをISO規格に準拠した筆記用紙に、筆記試験機にて100m連続で、直径30mmの「らせん筆記」をし、得られた描線を確認した。この試験は、筆記荷重100gf、筆記角度60°、筆記速度4.5mm/minの筆記条件で実施した。評価基準は以下のとおりである。
A:全体的に描線濃度が均一であった。
B:描線濃度が薄い部分がらせん1丸未満で存在していた。
C:描線濃度が薄い部分がらせん1丸以上存在していた。
【0071】
〈耐揮発性〉
作製したインク入りリフィールを、温度50℃相対湿度30%の環境で3ヶ月間放置し、放置前後の質量変化を確認した。評価基準は以下のとおりである。
A:質量変化が放置前のインクの質量の5質量%以下であった。
C:質量変化が放置前のインクの質量の5質量%超であった。
【0072】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1に示す。
【0073】
【0074】
表1から、離油度が2.0%以下である第一の追従体、及び第一の追従体の離油度よりも0.5ポイント~5.0ポイント大きい離油度を有する第二の追従体を有する実施例のインク入リフィールは、追従性、上向き保管後の筆記描線の安定性、及び耐揮発性のいずれも良好であったことが理解できよう。