(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106155
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/18 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
H05K3/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010304
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立花 翔太
(72)【発明者】
【氏名】内川 稜太
(72)【発明者】
【氏名】井戸 健太
(72)【発明者】
【氏名】今村 陽
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA17
5E343BB24
5E343CC48
5E343CC62
5E343DD25
5E343DD43
5E343EE42
5E343ER02
5E343ER16
5E343ER18
5E343FF30
5E343GG13
(57)【要約】
【課題】吸着テーブルでの導体層の吸着を利用して、導体層の形成過程で電解銅めっき層の表面に形成された凸部による配線間のショートの発生を有効に防止することにある。
【解決手段】プリント配線板の製造方法であって、絶縁層上にシード層と電解銅めっき層とを順次に積層して、回路パターンを持つ導体層を備えるプリント配線板を形成することと、吸着テーブル上に前記導体層を吸着することと、前記吸着テーブル上に前記導体層を吸着する吸着圧力で、前記吸着テーブルの平坦な吸着面により、前記導体層に形成された凸部を全体的に平坦に押し潰すことと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層上にシード層と電解銅めっき層とを順次に積層して、回路パターンを持つ導体層を備えるプリント配線板を形成することと、
吸着テーブル上に前記導体層を吸着することと、
前記吸着テーブル上に前記導体層を吸着する吸着圧力で、前記吸着テーブルの平坦な吸着面により、前記導体層に形成された凸部を全体的に平坦に押し潰すことと、
を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記吸着テーブルは、AOIにより前記プリント配線板を検査する際に前記導体層を吸着するものである、請求項1記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記吸着圧力は、3kPa以上で、かつ30kPa以下である、請求項1記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板を製造する際に、回路パターンを持つ導体層を絶縁層上に電解銅めっきを用いて形成することが、例えば特許文献1で知られている。
【0003】
この特許文献1記載のプリント配線板の製造方法ではセミアディティブ法が適用され、まず、絶縁層の表面が粗化処理され、次いで、粗化処理された絶縁層の表面に無電解銅めっきでシード層が形成される。次に、シード層の表面に、回路パターンに対応した開口を有するめっきレジスト層が形成され、次いで、めっきレジスト層の開口から露出するシード層の部分上に電解銅めっき層が形成される。
【0004】
次に、めっきレジスト層が除去され、次いで、めっきレジスト層で覆われて電解銅めっき層が形成されていないシード層の部分がエッチングで除去されて、絶縁層上に残ったシード層および電解銅めっき層により、回路パターンを持つ導体層が形成される。
【0005】
このようにして絶縁層上に導体層が形成されたプリント配線板は通常、その後に自動光学検査装置(AOI)により導体層の回路パターン等の不具合の有無を検査される。そして回路パターン等に不具合のないプリント配線板は次工程に送られて、同様のプリント配線板をさらに積層され、あるいは電子部品等を実装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来のプリント配線板の製造方法では、導体層の形成過程で電解銅めっき層の表面に、周囲から隆起した「ブツ」と呼ばれる小さな凸部が形成されることがある。この凸部は、展延性が高く比較的柔らかい金属である銅で形成されているため次工程でのプリント配線板のさらなる積層等で潰れ易く、その潰れ方が平坦でない場合は、回路パターンの配線からはみ出した部分が配線間のショートを生じさせる可能性がある。
【0008】
ところで、上記AOIによる回路パターン等の不具合の有無の検査の際には、吸着テーブル上に導体層が吸着された状態で、プリント配線板が光学的に検査される。
【0009】
本発明の目的は、このような吸着テーブルでの導体層の吸着を利用して、導体層の形成過程で電解銅めっき層の表面に形成された凸部による配線間のショートの発生を有効に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のプリント配線板の製造方法は、
絶縁層上にシード層と電解銅めっき層とを順次に積層して、回路パターンを持つ導体層を備えるプリント配線板を形成することと、
吸着テーブル上に前記導体層を吸着することと、
前記吸着テーブル上に前記導体層を吸着する吸着圧力で、前記吸着テーブルの平坦な吸着面により、前記導体層に形成された凸部を全体的に平坦に押し潰すことと、
を含むことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)~(d)は、本発明のプリント配線板の製造方法の一実施形態における製造工程を模式的に示す説明図である。
【
図2】(a)および(b)は、上記実施形態のプリント配線板の製造方法での押し潰し後の実際の配線パターンの平面視および拡大断面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のプリント配線板の製造方法の一実施形態が図面に基づいて説明される。
図1(a)~
図1(d)は、本発明のプリント配線板の製造方法の一実施形態における製造工程を模式的に示す説明図である。この実施形態のプリント配線板の製造方法では、先ず、
図1(a)に示すように、回路パターンを持つ導体層1を絶縁層2上に備えるプリント配線板3が形成される。
【0013】
このプリント配線板3の形成は、例えばセミアディティブ法を用いて行うことができ、その際、先ず、例えば多数の無機粒子を含有するフィルム状のエポキシ樹脂等からなる絶縁層2の表面が、例えば過マンガン酸カリウム溶液で粗化処理されて粗面とされる。次いで、絶縁層2の粗面とされた表面上に例えば銅合金のスパッタリングでシード層が形成され、次いで、そのシード層の表面上に例えばドライフィルムレジストが積層される。
【0014】
そして、そのドライフィルムレジストが露光およびエッチングされることで、回路パターンに対応した開口を有するめっきレジスト層が形成され、次いで、めっきレジスト層の開口から露出するシード層の部分上に電解銅めっき層が形成される。次に、めっきレジスト層が除去され、次いで、めっきレジスト層で覆われて電解銅めっき層が形成されていないシード層の部分がエッチングで除去されて、絶縁層2上に残ったシード層および電解銅めっき層により、回路パターンを持つ導体層1が形成される。
【0015】
このようにして形成されたプリント配線板3の、絶縁層2上の導体層1を構成する電解銅めっき層の表面には、微小な異物や気泡の混入等により、周囲から隆起した「ブツ」と呼ばれる小さな凸部1aが形成されることがある。
【0016】
次に、このプリント配線板3が通常の自動光学検査装置(AOI)により導体層1の回路パターン等の不具合の有無を光学的に検査される。このAOIによる検査の際には、プリント配線板3が、
図1(b)に示すように、AOIが備える吸着テーブル4の、検査対象を吸着固定する吸着面である平坦な上面4aの上方に、導体層1をその吸着テーブル4の上面4aに向けて配置される。
【0017】
次に、吸着テーブル4がその上面4aに開いた図示しない多数の孔から周囲の空気を吸い込むことで、その上面4aに吸着圧力が生じる。この吸着圧力で、
図1(c)に示すように、プリント配線板3の導体層1が吸着テーブル4の平坦な上面4aに吸着されて、プリント配線板3が吸着テーブル4の上面4a上に固定される。
【0018】
この導体層1の吸着の際に、
図1(c)に示すように、吸着テーブル4はその上面4aの吸着圧力で、導体層1を構成する電解銅めっき層の表面に一つまたは複数形成された小さな凸部1aの各々を、吸着テーブル4の平坦な上面4aにより、全体的に平坦に押し潰す。なお、電解銅めっき層を形成する銅は、展延性が高く、比較的柔らかい金属であるため、吸着テーブル4の上面4aの吸着圧力で比較的容易に押し潰される。
【0019】
この吸着圧力は、3kPa未満であると所定領域当たりの凸部1aの数が比較的多い場合に各凸部1aを十分に押しつぶすことができず、また30kPaを超えると吸着圧力が必要以上に高くなるので、3kPa以上で、かつ30kPa以下であると好ましい。
【0020】
上記AOIは、このようにして吸着テーブル4の上面4a上に吸着固定したプリント配線板3の回路パターン等の不具合の有無を光学的に検査し、回路パターン等に不具合のないプリント配線板3は次工程に送られて、同様のプリント配線板をさらに積層され、あるいは電子部品等を実装される。
【0021】
この次工程に送られるプリント配線板3は、
図1(d)に示すように、導体層1を構成する電解銅めっき層の表面に一つまたは複数形成された小さな凸部1aの各々が、全体的に平坦に押し潰されて周囲に実質上均一に広がった状態となっている。
【0022】
図2(a)および
図2(b)は、上記実施形態のプリント配線板の製造方法での凸部1aの押し潰し後の実際の導体層1の配線パターンの平面視および拡大断面を示す写真である。
【0023】
図2(a)では、円形の導体パッド同士を繋ぐ配線の付け根部にあった凸部1aが平坦に押し潰されて周囲に均一に僅かに広がり、両隣の導体パッドとの間に十分な隙間が空いている状態が見られる。また
図2(b)では、凸部1aの押し潰し後の配線パターンの断面が見られ、その断面では、例えば導体層1のめっき厚Tが15μmの場合に、押し潰された凸部1aの厚みCが5μmであり、配線からはみ出した凸部1aの幅Pが7μmであって、凸部1aと隣の配線との間に十分な隙間が空いている状態が見られる。
【0024】
それゆえ、この実施形態のプリント配線板の製造方法によれば、次工程でのプリント配線板のさらなる積層等をされても、回路パターンの配線からはみ出した部分が配線間のショートを生じさせることが殆どもしくは全くなくなり、プリント配線板の不具合の発生が低減される。
【0025】
なお、導体層1の吸着により凸部1aを押し潰す吸着テーブル4は、上記AOIに備えられ、プリント配線板3の検査の際に用いられるものに限られず、例えばプリント配線板の形成工程から次の工程へプリント配線板を搬送する装置に備えられるものでもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 導体層
1a 凸部
2 絶縁層
3 プリント配線板
4 吸着テーブル
4a 上面