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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106159
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ドーリー及び車両牽引方法
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/10 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
B62B3/10 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010310
(22)【出願日】2023-01-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】523029803
【氏名又は名称】株式会社小泉自動車
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】小泉 伸行
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA19
3D050BB01
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050GG01
3D050KK11
(57)【要約】
【課題】交通事故等によりタイヤを破損して走行不能となったトラブル車両を牽引する際、軽量かつ簡便な構成により、牽引時のバウンドや横振動による不安定な応力作用が車体に与える影響を抑制し、トラブル車両を安全かつ確実に牽引することができるドーリー、及び、当該ドーリーを用いた車両牽引方法を提供する。
【解決手段】
車体フレーム81を挟持する万力部11と、前記万力部11の下方に配設され被牽引車80を前後方向へ牽引可能な台車部12と、を備えたドーリー10を用いて、被牽引車80の破損したタイヤ85A近傍の車体フレーム81を挟持し、ワイヤロープ90にて前記ドーリー10を直接牽引することにより、前記被牽引車80を牽引する。万力部11によって、ドーリー10が被牽引車80に強固に固定されるため、渡り板や凸凹のある路面等でも車体がバウンドなどの影響を受けにくく、安定した牽引作業が可能となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被牽引車の破損したタイヤ近傍の車体フレームを挟持して、前記被牽引車を牽引するために用いられるドーリーであって、
前記車体フレームを挟持する挟持部を備えた万力部、及び、前記万力部の下方に配設され、前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な台車部を備え、
前記挟持部の前記車体フレームを挟持する位置が、前後方向に延びる前記台車部の中心軸よりも車幅方向の外側に配置されることを特徴とするドーリー。
【請求項2】
前記万力部は、前記台車部に着脱自在に装着される台座部を備え、
前記台座部の着脱部の中心軸は、前記台車部の前記中心軸と略一致することを特徴とする請求項1に記載のドーリー。
【請求項3】
前記台車部に装着する前記台座部の高さを調整することで、前記挟持部の高さ位置が調整されることを特徴とする請求項2に記載のドーリー。
【請求項4】
前記台車部は、一対の前輪と一対の後輪とを有し、前記台車部の車幅方向の外側に位置する前記前輪及び前記後輪は、前記被牽引車の前記車体フレームと面一またはその内側に位置することを特徴とする請求項1に記載のドーリー。
【請求項5】
前記前輪及び前記後輪は、前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な固定輪であることを特徴とする請求項4に記載のドーリー。
【請求項6】
前記台車部の前記中心軸上には前記被牽引車を牽引するためのフック止め部が形成されることを特徴とする請求項1に記載のドーリー。
【請求項7】
タイヤを破損して走行不能となった被牽引車を牽引するための車両牽引方法であって、
万力部、及び、前記万力部の下方に配設され前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な台車部を備えたドーリーを用いて、前記被牽引車の破損したタイヤ近傍の車体フレームを前記万力部にて挟持し、
ワイヤロープにて前記ドーリーを直接牽引することにより、前記被牽引車を牽引することを特徴とする車両牽引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通事故等により、タイヤを破損して走行不能な状態になったトラブル車両を、搬送車両の荷台へと牽引するために用いるドーリー及び車両牽引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事故や故障等により走行不能となったトラブル車両は、交通安全上の面から現場から緊急搬送を要する。ロードサービス事業者は、レッカー車等の搬送車両で現場に駆け付け、こうしたトラブル車両の搬送を行う。一般に、タイヤがパンク、脱離等により破損することで、走行不能となったトラブル車両については、レッカー車に搭載されたクレーンを用いて車体を引き上げて、車体に傷が付かないように、レッカー車の荷台に積載する。
【0003】
しかしながら、高まる緊急搬送需要に対して、クレーンを搭載したレッカー車を現場に手配できないケースが増加しており、クレーンを装備していない搬送車両でも、安全かつ確実にトラブル車両を荷台に積載することが課題となっていた。
【0004】
この課題に対して、クレーンを用いることなくトラブル車両を搬送車両に積載するための補助装置として、図13に示すように、その上面に、破損したタイヤ85Aを載置可能な載置部を設けたドーリー100が用いられている。ドーリー100を搬送車両に積載して現場に駆け付け、トラブル車両をジャッキアップして破損したタイヤ85Aを地面から浮かせ、ドーリー100上面の積載部に当該破損したタイヤ85Aを載置する。そして、搬送車両に渡り板を設置のうえ、搬送車両に備えたワイヤロープを巻取ることにより、トラブル車両を牽引して搬送車両荷台に搭載させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5-65742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のドーリー100では、破損したタイヤ85Aがドーリー100に固定されていないため、渡り板や凸凹のある路面等では、車体がバウンドや横振動の影響を受けやすく、牽引時の作業安定性を欠いていた。また、従来のドーリー100は、破損したタイヤ85Aの載置スペースを確保すべく、必然的にタイヤ幅より大型に設計する必要があり、ドーリー100自体が重量化して取り扱いにくいといった問題があった。また、そもそもタイヤが車輪ごと脱離したトラブル車両には、従来のドーリー100は使用できないといった問題もあった。タイヤ車輪が外れた車両は、重心が不安定なので、いかに安定して積載車に積載するかが課題である。
【0007】
本発明は、交通事故等によりタイヤを破損して走行不能となったトラブル車両を牽引する際に、軽量かつ簡便な構成により、牽引時のバウンドや横振動による不安定な応力作用が車体に与える影響を抑制し、トラブル車両を安全かつ確実に牽引するためのドーリー及び車両牽引方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のドーリーは、被牽引車の破損したタイヤ近傍の車体フレームを挟持して、前記被牽引車を牽引するために用いられるドーリーであって、前記車体フレームを挟持する挟持部を備えた万力部、及び、前記万力部の下方に配設され、前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な台車部を備え、前記挟持部の前記車体フレームを挟持する位置が、前後方向に延びる前記台車部の中心軸よりも車幅方向の外側に配置されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のドーリーでは、前記万力部は、前記台車部に着脱自在に装着される台座部を備え、前記台座部の着脱部の中心軸は、前記台車部の前記中心軸と略一致することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のドーリーでは、前記台車部に装着する前記台座部の高さを調整することで、前記挟持部の高さ位置が調整されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のドーリーでは、前記台車部は、一対の前輪と一対の後輪とを有し、前記台車部の車幅方向の外側に位置する前記前輪及び前記後輪は、前記被牽引車の前記車体フレームと面一またはその内側に位置することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のドーリーでは、前記前輪及び前記後輪は、前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な固定輪であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のドーリーでは、前記台車部の前記中心軸上には前記被牽引車を牽引するためのフック止め部が形成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の車両牽引方法は、タイヤを破損して走行不能となった被牽引車を牽引するための車両牽引方法であって、万力部、及び、前記万力部の下方に配設され前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な台車部を備えたドーリーを用いて、前記被牽引車の破損したタイヤ近傍の車体フレームを前記万力部にて挟持し、ワイヤロープにて前記ドーリーを直接牽引することにより、前記被牽引車を牽引することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のドーリーによれば、万力部によって、ドーリー本体が車体フレームに固定されるため、渡り板や凸凹のある路面等でも車体がバウンドなどの影響を受けにくく、安定した牽引作業が可能となる。また、タイヤが車輪ごと脱離したトラブル車両にも使用することができる。また、従来のドーリーのようにタイヤの載置スペースを確保する必要がないため、ドーリーの小型化、軽量化が可能である。また、前記挟持部の前記車体フレームを挟持する位置が、前後方向に延びる前記台車部の中心軸よりも車幅方向の外側に配置されるため、ドーリー本体が車体フレームからはみ出しにくい設計が可能となる。また、車幅方向の内側の車輪と外側の車輪にかかる荷重バランスが安定し、牽引作業の安定性が向上する。
【0016】
また、本発明のドーリーによれば、前記台座部の着脱部の中心軸が前記台車部の前記中心軸と略一致するため、前記台車部にかかる荷重バランスが安定する。
【0017】
また、本発明のドーリーによれば、前記台車部に装着する前記台座部の高さを調整することで、前記挟持部の高さ位置が調整されるため、事故現場にて被牽引車の車種に応じて適切な高さに調節することができる。
【0018】
また、本発明のドーリーによれば、一対の前輪と一対の後輪とを有し、前記台車部の車幅方向の外側に位置する前記前輪及び前記後輪は、前記被牽引車の前記車体フレームと面一またはその内側に位置することで、牽引作業時に周囲と衝突しにくくなり、牽引作業時の作業者の注意負担を軽減することができる。
【0019】
また、本発明のドーリーによれば、前記前輪及び前記後輪に固定輪を用いることにより、前後方向に安定して牽引することが可能となり、牽引操作性が向上する。
【0020】
また、本発明のドーリーによれば、前記台車部の前記中心軸上に前記被牽引車を牽引するためのフック止め部を形成することにより、ワイヤロープを前記フック止め部にて係止することが可能となり、牽引操作性が向上する。
【0021】
また、本発明の車両牽引方法によれば、ワイヤロープでドーリーを直接牽引することにより、万力部で挟持している部分にかかる応力を軽減し、車体フレームの変形を防止することができる。従来は、被牽引車のセンターフレームにワイヤロープ末端に設けたフックをひっかけて、ウインチで前記ワイヤロープを巻き取ることにより、被牽引車の車体自体を引っ張っていた。このため、牽引作業時に被牽引車の車体が振動すると、万力部で挟持している部分に応力集中して、車体フレームが変形することがあった。本発明の車両牽引方法によれば、被牽引車のセンターフレームではなく、ドーリーを直接牽引することにより、ドーリーの前後移動に附随して、被牽引車の破損していない3本のタイヤが前後移動するので、万力部で挟持している箇所に車体の振動による応力が集中しにくくなるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態であるドーリーの使用状態を説明する右側面図である。
図2】本発明の一実施形態であるドーリーを説明する右側面図である。
図3】本発明の一実施形態であるドーリーを説明する平面図である。
図4】本発明の一実施形態であるドーリーを説明する背面図である。
図5】本発明の他の実施形態であるドーリーを説明する背面図である。
図6】本発明の他の実施形態であるドーリーを説明する平面図である。
図7】本発明の一実施形態であるドーリーの使用状態を説明する下面図である。
図8】本発明の一実施形態であるドーリーの使用状態を説明する断面図である。
図9】本発明の一実施形態であるドーリーの使用状態を説明する断面図である。
図10】本発明の他の実施形態であるドーリーの使用状態を説明する断面図である。
図11】本発明の一実施形態である車両牽引方法を説明する下面図である。
図12】本発明の他の実施形態で車両牽引方法を説明する下面図である。
図13】従来技術のドーリーの使用状態を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係るドーリー10を図面に基づき詳細に説明する。以下の説明に於いては前後上下左右の各方向を用いるが、左右とは被牽引車80を後方から見た場合の左右である。更に、以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るドーリー10の使用状態の一例を示す右側面図である。図1において、被牽引車80の右側前輪が破損したタイヤ85Aに該当する。
【0025】
被牽引車80は、例えば乗用車であり、通常の乗用車には、各タイヤ85のボディ中央部よりの車体フレーム81の車底部端に、パンタグラフジャッキでジャッキアップするためのジャッキアップポイント82が設けられている。被牽引車80の車種にもよるが、車体フレーム81のジャッキアップポイント82の位置は、プレスラインの切り欠きや、ボディの側面やドアの下部(スカート)に逆三角形のマーク等の目印で表示されている。前記ジャッキアップポイント82は十分な強度で設計されているので、牽引時の車体フレーム81の変形を防止するためには、前記ジャッキアップポイント82の位置の車体フレーム81にドーリー10を装着するとよい。
【0026】
図1の例では、前輪タイヤを破損しているため、被牽引車80の前方をジャッキアップして車体フレーム81を持ち上げ、ドーリー10上面の万力部11で破損したタイヤ85A近傍のジャッキアップポイント82の車体フレーム81を挟持する。尚、後輪タイヤを破損した場合は、被牽引車80の後方をジャッキアップして車体フレーム81を持ち上げ、ドーリー10を後輪のタイヤ近傍のジャッキアップポイント82の車体フレーム81に装着する。
【0027】
図2は、本発明の実施形態に係るドーリー10の右側面図であり、図3は、ドーリー10の平面図であり、図4は、ドーリー10の背面図である。ドーリー10は、車体フレーム81を挟持する万力部11と、前記万力部11の下方に配設された台車部12を有している。
【0028】
前記万力部11は、車底部端の車体フレーム81を挟むことで、被牽引車80の車体フレーム81に固定されるパーツである。この機能を果たすことができれば、万力部11の形状や構成に制約はなく、添付図面で示される構成や形状に限られないが、以下の説明では、図2乃至図4に示される万力部11を一つの例として説明する。
【0029】
図2及び図4に示す如く、万力部11は、台車部12上に配設される台座部20と、前記台座部20上に配設され前記車体フレーム81を挟持する挟持部21とを備えている。
【0030】
図3及び図4に示すように、挟持部21は、台座部20に固定された固定顎21Aと、スライド顎21Bとからなる。固定顎21Aには、2本のボルト23が溶接等によって水平方向に平行に固定され、前記2本のボルト23が、スライド顎21Bに形成された2つのスライド孔24のそれぞれを貫通している。
【0031】
前記2本のボルト23の先端にはそれぞれ調整ナット25が組付けられる。ユーザーが電動ドライバー等を用いて当該調整ナット25を回転することで、固定顎21Aの挟持面22Aとスライド顎21Bの挟持面22B間との距離を調整することができる。上記挟持面22A、22Bは、車体フレーム81を挟持する際に、車体フレーム81との接触面となる。図4に示すように、固定顎21Aに対して横方向から補強するための支持部材26を設けてもよい。
【0032】
本発明においては、車体フレーム81の変形を防止するため、図5に示すように、固定顎21Aとスライド顎21Bにそれぞれ断面L字型の傷防止用アタッチメント28を設置してもよい。傷防止用アタッチメント28は、固定顎21A及びスライド顎21Bより硬度の低い金属からなり、例えばアルミ製のL字アングルを用いることが好ましい。
【0033】
図3及び図4に示すように、台車部12は、その上面に前記万力部11を配設するための台座30と、前記台座30の右左の側壁のそれぞれに固定されたフレーム31、31と、前記2つのフレーム31の前後に回転可能に支持されるシャフト32、32と、前記シャフト32に取り付けられた一対の前輪33と一対の後輪34とからなる。前記台車部12は、自走は不能であるが、前記被牽引車80の破損したタイヤ85Aの近傍の車体フレーム81に前記万力部11を介して固定されることで、前記破損したタイヤ85Aの代わりとなって、前記被牽引車80を牽引可能とする。
【0034】
図2乃至図4に示す前輪33及び後輪34は、固定輪である。固定輪を用いることにより、前後方向に安定して牽引することができる。自在輪を用いると前後方向に安定して直進しにくくなるため、自在輪へ設計変更する場合は、前輪33のみを自在輪とし、後輪34は固定輪とすることが好ましい。
【0035】
前輪33及び後輪34の材質としては、適度な自己潤滑性および硬度を有する樹脂、例えば、MCナイロン(モノマーキャストナイロン)、ポリアセタール、フッ素樹脂、超高分子量ポリエチレン等を用いることができる。前輪33及び後輪34の材質に自己潤滑性を有する樹脂を用いることで、ドーリー10に横方向の過度の応力がかかった時に前輪33及び後輪34が地面を滑る。これにより、被牽引車80の車体フレーム81にかかる負荷を逃がし、車体フレーム81の変形を抑制することができる。ウレタンやゴム等の弾性樹脂からなる材質は、地面をグリップして滑らないので、被牽引車80の車体フレーム81に負荷をかけるという点で好ましくない。
【0036】
搬送中、搬送車両の荷台上で被牽引車80の動きを抑制するため、本発明のドーリー10にロック機構を設けてもよい。例えば、図6に示す如く、前後方向に延びる前記台車部の中心軸よりも車幅方向の外側に配置される前輪33及び/又は後輪34の側面に貫通孔33A、34Aを形成し、前記フレーム31の側面にピン止め孔31A、31Aを形成する。被牽引車80の荷台に被牽引車80を積載した後、前記貫通孔33A、34Aにピン33B、34Bを挿入し、前記ピン33B、34Bの先端部を前記ピン止め孔31Aに係止することにより、ロック機構とすることができる。
【0037】
図3及び図4に示す如く、台車部12は、左右対称形状であり、前記台車部12の中心軸L1上には、台座30から前方に延びるフック止め部35A、及び、台座30から後方に延びるフック止め部35Bが形成されている。台車部12の前方向および後方向にそれぞれフック止め部35A、35Bを形成することにより、前後どちらの方向からも牽引可能としている。
【0038】
図4に示す如く、前記万力部11の台座部20は、下方へと延びる2つの着脱部27A、27Bが形成されている。台座部20の着脱部27A、27Bの中心軸L´は、前記台車部12の中心軸L1と略一致するよう設計されており、前記着脱部27A、27Bが台車部12の台座30を挟み込むように装着される。着脱部27A、27Bには取付孔が設けられ、ネジ28、28で台車部12の台座30に対して着脱可能に組付けられる。
【0039】
本発明では、交換パーツとして、台座部20の高さhの異なる万力部11を2種以上搬送車両に用意しておいてもよい。車体フレーム81を万力部11で挟持する際、図1に示す如く、被牽引車80の車体フレーム81がわずかに持ち上げられた状態とすることで車体フレーム81へかかる応力負荷を軽減することができる。台座部20の高さhの異なる複数の万力部11を搬送車両に用意しておけば、事故現場にて被牽引車80の車種に応じて適切な高さの万力部11を選択し交換することができる。また、図示しないが、前記着脱部27A、27Bの高さ方向に複数のピン止め孔を形成し、前記着脱部27A、27Bを台車部12の台座30に対して、ピンにて高さ調節可能に支持する機構としてもよい。
【0040】
図3及び図4に示すように、前記万力部11の固定顎21Aが車体フレーム81と接する挟持面22Aを、前後方向に延びる前記台車部12の中心軸L1よりも、車幅方向の外側に配置する。前記挟持面22Aを前記中心軸L1からずらすことにより、被牽引車80に対する台車部12の位置が車幅方向の内側にずれるため、車体フレーム81からのはみ出し幅を減少させることができる。車体フレーム81から外側にはみ出した前記前輪33及び前記後輪34は、牽引作業時に周囲と衝突しやすいが、前記挟持面22Aを前記中心軸L1からずらすことにより、牽引作業時の作業者の注意負担を軽減することができる。
【0041】
前記挟持面22Aの前記中心軸L1からのずれ幅については、ドーリー10を装着する被牽引車80の車種にもよるが、一般的には、ドーリー10の車幅W1に対して、中心軸L1と挟持面22Aとの距離W2を、W1:W2=1:0.1~0.3の範囲で設計することが好ましい。
【0042】
次に、図7乃至図9を用いて、ドーリー10の被牽引車80への装着位置について説明する。図7は、ドーリー10を配設した被牽引車80の下面図であり、図8図7に示すA-A線方向の断面図であり、図9図7に示すB-B線方向の断面図である。
【0043】
ドーリー10を被牽引車80に装着する際、図8に示す如く、万力部11の挟持面22Aを、前後方向に延びる前記台車部12の中心軸L1よりも被牽引車80の車幅方向の外側となるよう配置する。図8の例では破損したタイヤ85Aが右側タイヤであるため、挟持面22Aは中心軸L1よりも被牽引車80の車幅方向の右側になるよう配置する。尚、図示はしないが、破損したタイヤが左側タイヤである場合は、挟持面22Aは中心軸L1よりも被牽引車80の車幅方向の左側に配置されることになる。
【0044】
図9に示す如く、ドーリー10を被牽引車80に装着した状態では、被牽引車80のボディ中央部側、すなわち台車部12の車幅方向の内側(図8では左側)に位置する前記前輪33及び前記後輪34の方に、台車部12の車幅方向の外側に位置する前記前輪33及び前記後輪34よりも大きな荷重がかかる。万力部11の挟持面22Aを、前記台車部12の中心軸L1よりも、被牽引車80の車幅方向の外側(図8では右側)に配置することで、内側の前輪33及び後輪34と、外側の前輪33及び後輪34とにかかる荷重バランスが安定し、作業安定性が向上する。
【0045】
図10に示す如く、前記挟持面22Aを前記台車部12の中心軸L1と略一致する状態では、内側の前輪33及び後輪34が沈んで、外側の前輪33及び後輪34が浮きやすくなり、特に斜め方向に牽引する際にバランスが崩れやすくなる傾向がある。最も荷重バランスが安定するのは、図8及び図9に示す如く、前記台車部12の中心軸L1が、タイヤ85Aの中心線L2と略一致となる位置である。
【0046】
従来のドーリーは、破損したタイヤ85Aを載置するためのスペースを確保するため、破損したタイヤ85Aの横幅W3より幅広に設計する必要があった。本発明ではその必要がないため、ドーリー10の小型化および軽量化が可能であり、図7に示す如く、ドーリー10の車幅W1を、被牽引車80の破損したタイヤ85Aの横幅W3と略同一の幅に設計することができる。ドーリー10の車幅W1は、破損したタイヤ85Aの幅W3の0.8~1.3倍の範囲で設計するとよい。ドーリー10の車幅W1が破損したタイヤ85Aの幅W3の0.8倍未満の場合には、牽引時の安定性を欠くことがあるので好ましくない。また、台車部12の車幅W1が破損したタイヤ85Aの幅W3の1.3倍より広い場合には、被牽引車80の前記車体フレーム81からドーリー10がはみ出すことがあるため、好ましくない。図8に示す如く、台車部12の車幅方向の外側に位置する前記前輪33及び前記後輪34が、前記被牽引車80の前記車体フレーム81(図中のL3)と面一またはその内側に位置するよう設計することが好ましい。
【0047】
次に、図11及び図12を用いて、本発明のドーリー10を用いた車両牽引方法について説明する。図11は、本発明の車両牽引方法の一例を示す下面図であり、図12は、他の車両牽引方法の一例を示す下面図である。
【0048】
本発明の車両牽引方法によれば、図11に示す如く、被牽引車80を牽引する際、ドーリー10の進行方向側のフック止め部(前方方向のフック止め部35A(図3参照))にワイヤロープ90のフック91をひっかけ、ウインチでワイヤロープ90を巻き取ることにより、ドーリー10自体を直接牽引する。ドーリー10を直接牽引することにより、ドーリー10の前進または後進に附随して、被牽引車80の破損していない3本のタイヤが、作業者のハンドル操作により自在に移動するので、万力部11で挟持している箇所に車体の振動による応力が集中しにくくなる。
【0049】
ドーリー10の前輪33及び後輪34は固定輪であり、前進または後進のみ走行可能である。ワイヤロープ90の引張力をF、ワイヤロープ90でドーリー10を牽引する角度θとしたとき、固定輪である前記前輪33及び前記後輪34には、横方向、すなわち、車幅方向の内側に向かってFsinθの引張力がかかる。このため、ドーリー10が内側に傾き、車幅方向の外側の前輪33及び後輪34が浮く傾向がある。本発明のドーリー10は、前記万力部11の挟持面22Aを中心軸L1よりも車幅方向の外側に配置することにより、車幅方向の外側の前輪33及び後輪34が浮くことを抑制している。
【0050】
図12に示す如く、被牽引車80のセンターフレーム86にワイヤロープ90末端のフック91を連結して、被牽引車80の車体自体を引っ張ることも可能であるが、この場合、連結箇所がドーリー10の引張力F´の支点となる。ドーリー10の引張角度をθとすると、θ<θとなり、車幅方向の内側に向かってかかる引張力F´sinθも必然的に大きくなる。このため、ドーリー10が内側へ傾く傾向がより顕著となり、ドーリー10を直接牽引する場合(図11)と比較して、牽引操作性が悪くなる。
【0051】
以上、実施形態を例示して本発明のドーリー10及び車両牽引方法について説明したが、本発明の構成をこれらに限定するものではない。例えば、台車部12は、前記被牽引車80を前後方向へ牽引することができれば、その形状や構成に制約はなく、上述の構成にさらに補助輪を設ける等、適宜設計変更可能である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10、100 ドーリー
11 万力部
12 台車部
20 台座部
21 挟持部
21A 固定顎
21B スライド顎
22A、22B 挟持面
23 ボルト
24 スライド孔
25 調整ナット
26 支持部材
27A、27B 着脱部
28 傷防止用アタッチメント
30 台座
31 フレーム
31A ピン止め孔
32 シャフト
33 前輪
33A 貫通孔
33B ピン
34 後輪
34A 貫通孔
34B ピン
35A、35B フック止め部
80 被牽引車
81 車体フレーム
82 ジャッキアップポイント
85 タイヤ
85A 破損したタイヤ
86 センターフレーム
90 ワイヤロープ
91 フック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被牽引車の破損した個々のタイヤ近傍の車体フレームを挟持して、前記破損したタイヤの代わりに前記被牽引車の車輪として前記被牽引車を牽引するために用いられるドーリーであって、
前記車体フレームを挟持する挟持部を備えた万力部、及び、前記万力部の下方に配設され、前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な台車部を備え、
前記挟持部の前記車体フレームを挟持する位置が、前後方向に延びる前記台車部の中心軸よりも車幅方向の外側の片側に配置されることを特徴とするドーリー。
【請求項2】
前記万力部は、前記台車部に着脱自在に装着される台座部を備え、
前記台座部の着脱部の中心軸は、前記台車部の前記中心軸と略一致することを特徴とする請求項1に記載のドーリー。
【請求項3】
前記台車部に装着する前記台座部の高さを調整することで、前記挟持部の高さ位置が調整されることを特徴とする請求項2に記載のドーリー。
【請求項4】
前記台車部は、一対の前輪と一対の後輪とを有し、前記台車部の車幅方向の外側に位置する前記前輪及び前記後輪は、前記被牽引車の前記車体フレームと面一またはその内側に位置することを特徴とする請求項1に記載のドーリー。
【請求項5】
前記前輪及び前記後輪は、前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な固定輪であることを特徴とする請求項4に記載のドーリー。
【請求項6】
前記台車部の前記中心軸上には前記被牽引車を牽引するためのフック止め部が形成されることを特徴とする請求項1に記載のドーリー。
【請求項7】
タイヤを破損して走行不能となった被牽引車を牽引するための車両牽引方法であって、
万力部、及び、前記万力部の下方に配設され前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な台車部を備えた前記ドーリーを用いて、前記被牽引車の破損したタイヤ近傍の車体フレームを、前記台車部の中心軸よりも車幅方向の外側の片側で前記万力部にて挟持し、
ワイヤロープにて前記ドーリーを直接牽引することにより、前記被牽引車を牽引することを特徴とする車両牽引方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明のドーリーは、被牽引車の破損した個々のタイヤ近傍の車体フレームを挟持して、前記破損したタイヤの代わりに前記被牽引車の車輪として前記被牽引車を牽引するために用いられるドーリーであって、前記車体フレームを挟持する挟持部を備えた万力部、及び、前記万力部の下方に配設され、前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な台車部を備え、前記挟持部の前記車体フレームを挟持する位置が、前後方向に延びる前記台車部の中心軸よりも車幅方向の外側の片側に配置されることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明の車両牽引方法は、タイヤを破損して走行不能となった被牽引車を牽引するための車両牽引方法であって、万力部、及び、前記万力部の下方に配設され前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な台車部を備えた前記ドーリーを用いて、前記被牽引車の破損したタイヤ近傍の車体フレームを、前記台車部の中心軸よりも車幅方向の外側の片側で前記万力部にて挟持し、ワイヤロープにて前記ドーリーを直接牽引することにより、前記被牽引車を牽引することを特徴とする。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被牽引車の破損した個々のタイヤ近傍の車体フレームを挟持して、前記破損したタイヤの代わりに前記被牽引車の車輪として前記被牽引車を牽引するために用いられるドーリーであって、
前記車体フレームを挟持する挟持部を備えた万力部、及び、前記万力部の下方に配設され、前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な台車部を備え、
前記挟持部の前記車体フレームを挟持する位置が、前後方向に延びる前記台車部の中心軸よりも車幅方向の外側の片側に配置され
前記万力部は、前記台車部に着脱自在に装着される台座部を備え、
前記台座部の着脱部の中心軸は、前記台車部の前記中心軸と略一致することを特徴とするドーリー。
【請求項2】
前記台車部に装着する前記台座部の高さを調整することで、前記挟持部の高さ位置が調整されることを特徴とする請求項に記載のドーリー。
【請求項3】
前記台車部は、一対の前輪と一対の後輪とを有し、前記台車部の車幅方向の外側に位置する前記前輪及び前記後輪は、前記被牽引車の前記車体フレームと面一またはその内側に位置することを特徴とする請求項1に記載のドーリー。
【請求項4】
前記前輪及び前記後輪は、前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な固定輪であることを特徴とする請求項に記載のドーリー。
【請求項5】
前記台車部の前記中心軸上には前記被牽引車を牽引するためのフック止め部が形成されることを特徴とする請求項1に記載のドーリー。
【請求項6】
タイヤを破損して走行不能となった被牽引車を牽引するための車両牽引方法であって、
万力部、及び、前記万力部の下方に配設され前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な台車部を備えてなり、前記万力部が、前記台車部に着脱自在に装着される台座部を備え、かつ、前記台座部の着脱部の中心軸が、前記台車部の中心軸と略一致するドーリーを用いて、前記被牽引車の破損したタイヤ近傍の車体フレームを、前記台車部の前記中心軸よりも車幅方向の外側の片側で前記万力部にて挟持し、
ワイヤロープにて前記ドーリーを直接牽引することにより、前記被牽引車を牽引することを特徴とする車両牽引方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明のドーリーは、被牽引車の破損した個々のタイヤ近傍の車体フレームを挟持して、前記破損したタイヤの代わりに前記被牽引車の車輪として前記被牽引車を牽引するために用いられるドーリーであって、前記車体フレームを挟持する挟持部を備えた万力部、及び、前記万力部の下方に配設され、前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な台車部を備え、前記挟持部の前記車体フレームを挟持する位置が、前後方向に延びる前記台車部の中心軸よりも車幅方向の外側の片側に配置され、前記万力部は、前記台車部に着脱自在に装着される台座部を備え、前記台座部の着脱部の中心軸は、前記台車部の前記中心軸と略一致することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明の車両牽引方法は、タイヤを破損して走行不能となった被牽引車を牽引するための車両牽引方法であって、万力部、及び、前記万力部の下方に配設され前記被牽引車を前後方向へ牽引可能な台車部を備えてなり、前記万力部が、前記台車部に着脱自在に装着される台座部を備え、かつ、前記台座部の着脱部の中心軸が、前記台車部の中心軸と略一致するドーリーを用いて、前記被牽引車の破損したタイヤ近傍の車体フレームを、前記台車部の前記中心軸よりも車幅方向の外側の片側で前記万力部にて挟持し、ワイヤロープにて前記ドーリーを直接牽引することにより、前記被牽引車を牽引することを特徴とする。