(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106175
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】建物環境制御システム、建物環境制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/10 20230101AFI20240731BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20240731BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20240731BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20240731BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20240731BHJP
F24F 120/00 20180101ALN20240731BHJP
【FI】
G06Q10/10
F24F11/46
F24F11/54
F24F11/64
F24F11/89
F24F120:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010338
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 千怜
(72)【発明者】
【氏名】福光 超
(72)【発明者】
【氏名】中満 達也
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 康佑
【テーマコード(参考)】
3L260
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
3L260BA41
3L260CA05
3L260CA07
3L260EA19
3L260GA20
5L010AA11
5L049AA11
(57)【要約】
【課題】フリーアドレスオフィスにより運用される建物における省エネルギー性を高める。
【解決手段】本発明の建物環境制御システムは、複数の領域に分割された建物の前記領域の環境を制御する建物環境制御システムであって、前記領域ごとの利用計画を算定する計画算定部と、利用者ごとの前記領域の利用状況に基づいて定められた前記利用者の行動特性モデルと前記利用計画とに基づいて、前記利用者が利用する領域を割り当てる利用者配置部と、前記利用計画を用いてと前記領域の利用状況と、前記領域ごとに設けられた設備ごとに前記設備の稼働状況を調整する設備制御部と、を備えることを特徴とする建物環境制御システムである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の領域に分割された建物の前記領域の環境を制御する建物環境制御システムであって、
前記領域ごとの利用計画を算定する計画算定部と、
利用者ごとの前記領域の利用状況に基づいて定められた前記利用者の行動特性モデルと前記利用計画とに基づいて、前記利用者が利用する領域を割り当てる利用者配置部と、
前記利用計画を用いて、前記領域ごとに設けられた設備ごとに前記設備の稼働状況を調整する設備制御部と、
を備えることを特徴とする建物環境制御システム。
【請求項2】
前記利用者の行動特性モデルは、
前記割り当てられた領域内で作業を実施する傾向の人か否かを識別可能に形成されている、
請求項1に記載の建物環境制御システム。
【請求項3】
前記利用者配置部は、
前記利用者の行動特性モデルに基づいて前記割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的低いと識別された人に対して、第1領域と第2領域の何れかにおいて作業を行う際に見込まれる前記第1領域と前記第2領域の各領域の特徴を通知して、
前記利用者の行動特性モデルに基づいて前記割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的高いと識別された人に対して、前記見込まれる前記第1領域と前記第2領域の各領域の特徴を通知しない、
請求項1に記載の建物環境制御システム。
【請求項4】
前記利用者配置部は、
前記利用者の行動特性モデルに基づいて前記割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的高いと識別された人に対して、前記見込まれる前記第1領域と前記第2領域の各領域の特徴を通知せずに、前記第1領域を割り当てるよう通知をする、
請求項3に記載の建物環境制御システム。
【請求項5】
前記設備制御部は、
前記第1領域において前記作業を行ううえでより好適な環境を提供するように前記第1領域の前記設備の稼働状況を調整し、
前記第2領域において前記作業を行ううえで前記第1領域よりも適さない環境を提供するように前記第2領域の前記設備の稼働状況を調整する、
請求項3又は請求項4に記載の建物環境制御システム。
【請求項6】
前記設備制御部は、
前記第1領域において、前記第2領域よりも良好な省エネ特性が得られるように前記設備の稼働状況を調整する、
請求項3又は請求項4に記載の建物環境制御システム。
【請求項7】
前記設備制御部は、
前記利用計画と前記領域の利用状況とに基づいて、前記領域ごとに設けられた設備ごとに前記設備の稼働状況を調整する、
請求項1に記載の建物環境制御システム。
【請求項8】
前記利用者ごとの前記領域の利用状況に基づいて前記利用者の行動特性モデルを生成する行動特性モデル生成部
を備える請求項1に記載の建物環境制御システム。
【請求項9】
前記領域の利用状況の識別に、利用当日の曜日、天候、時間帯、季節、周囲の人の密集度のうちの何れかの情報を用いる
を備える請求項1に記載の建物環境制御システム。
【請求項10】
前記利用者配置部は、
前記利用者を再配置する際に、前記利用者の行動特性モデルに基づいて、前記割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的低いと識別された人達が利用している領域側に、前記割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的高いと識別された人達を誘導する、
請求項1に記載の建物環境制御システム。
【請求項11】
複数の領域に分割された建物の前記領域の環境を制御する建物環境制御システムの建物環境制御方法であって、
前記領域ごとの利用計画を算定するステップと、
利用者ごとの前記領域の利用状況に基づいて定められた前記利用者の行動特性モデルと前記利用計画とに基づいて、前記利用者が利用する領域を割り当てるステップと、
前記利用計画を用いて、前記領域ごとに設けられた設備ごとに前記設備の稼働状況を調整するステップと、
を含むことを特徴とする建物環境制御方法。
【請求項12】
複数の領域に分割された建物の前記領域の環境を制御する建物環境制御システムのコンピュータに、
前記領域ごとの利用計画を算定するステップと、
利用者ごとの前記領域の利用状況に基づいて定められた前記利用者の行動特性モデルと前記利用計画とに基づいて、前記利用者が利用する領域を割り当てるステップと、
前記利用計画を用いて、前記領域ごとに設けられた設備ごとに前記設備の稼働状況を調整するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の室内環境を制御する建物環境制御システム、建物環境制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に設備が消費する電力量を低減して、省エネルギー性を高めることが要求されている。オフィスとして利用される建物では、空調設備や照明設備が集中制御されている場合が多い。このようなオフィスについても、省エネルギー性を高めることが要求されることに変わりがないが、上記の集中制御だけでは省エネルギー性を高めることが難しく、他の制御を組み合わせる場合があった。
例えば、オフィスの利用形態に、利用者が利用する位置を自由に決定できるフリーアドレスオフィスを適用して、オフィスを利用する利用者の利便性を高める利用形態がある(特許文献1参照。)この特許文献1によれば、フリーアドレスオフィスにより運用される建物において、利用者が利用するエリアを適宜割り当てて、オフィスの省エネルギー性を高めるための施策が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、利用者を割り当てるエリアを調整しても、利用者の中にはその割り当て通りに利用しない人がいる。このような場合には、上記のような省エネルギー性を高めることに対する課題に対して、期待通りの効果を得ることが困難な場合があった。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、フリーアドレスオフィスにより運用される建物における省エネルギー性を高めることができる、建物環境制御システム、建物環境制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の建物環境制御システムは、複数の領域に分割された建物の前記領域の環境を制御する建物環境制御システムであって、前記領域ごとの利用計画を算定する計画算定部と、利用者ごとの前記領域の利用状況に基づいて定められた前記利用者の行動特性モデルと前記利用計画とに基づいて、前記利用者が利用する領域を割り当てる利用者配置部と、前記利用計画を用いてと前記領域の利用状況と、前記領域ごとに設けられた設備ごとに前記設備の稼働状況を調整する設備制御部と、を備えることを特徴とする建物環境制御システムである。
【0007】
また、上記建物環境制御システムにおいて、前記利用者の行動特性モデルは、前記割り当てられた領域内で作業を実施する傾向の人か否かを識別可能に形成されている。
【0008】
また、上記建物環境制御システムにおいて、前記利用者配置部は、前記利用者の行動特性モデルに基づいて前記割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的低いと識別された人に対して、第1領域と第2領域の何れかにおいて作業を行う際に見込まれる前記第1領域と前記第2領域の各領域の特徴を通知して、前記利用者の行動特性モデルに基づいて前記割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的高いと識別された人に対して、前記見込まれる前記第1領域と前記第2領域の各領域の特徴を通知しない。
【0009】
前記利用者配置部は、前記利用者の行動特性モデルに基づいて前記割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的高いと識別された人に対して、前記見込まれる前記第1領域と前記第2領域の各領域の特徴を通知せずに、前記第1領域を割り当てるよう通知をする。
【0010】
また、上記建物環境制御システムにおいて、前記設備制御部は、前記第1領域において前記作業を行ううえでより好適な環境を提供するように前記第1領域の前記設備の稼働状況を調整し、前記第2領域において前記作業を行ううえで前記第1領域よりも適さない環境を提供するように前記第2領域の前記設備の稼働状況を調整する。
【0011】
また、上記建物環境制御システムにおいて、前記設備制御部は、前記第1領域において、前記第2領域よりも良好な省エネ特性が得られるように前記設備の稼働状況を調整する。
【0012】
また、上記建物環境制御システムにおいて、前記設備制御部は、前記利用計画と前記領域の利用状況とに基づいて、前記領域ごとに設けられた設備ごとに前記設備の稼働状況を調整する。
【0013】
また、上記建物環境制御システムは、前記利用者ごとの前記領域の利用状況に基づいて前記利用者の行動特性モデルを生成する行動特性モデル生成部を備える。
【0014】
また、上記建物環境制御システムにおいて、前記領域の利用状況の識別に、利用当日の曜日、天候、時間帯、季節、周囲の人の密集度のうちの何れかの情報を用いる。
【0015】
また、上記建物環境制御システムにおいて、前記利用者配置部は、前記利用者を再配置する際に、前記利用者の行動特性モデルに基づいて、前記割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的低いと識別された人達が利用している領域側に、前記割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的高いと識別された人達を誘導する。
【0016】
また、他の態様は、複数の領域に分割された建物の前記領域の環境を制御する建物環境制御システムの建物環境制御方法であって、前記領域ごとの利用計画を算定するステップと、利用者ごとの前記領域の利用状況に基づいて定められた前記利用者の行動特性モデルと前記利用計画とに基づいて、前記利用者が利用する領域を割り当てるステップと、前記利用計画を用いて、前記領域ごとに設けられた設備ごとに前記設備の稼働状況を調整するステップと、を含むことを特徴とする建物環境制御方法である。
【0017】
また、他の態様は、複数の領域に分割された建物の前記領域の環境を制御する建物環境制御システムのコンピュータに、前記領域ごとの利用計画を算定するステップと、利用者ごとの前記領域の利用状況に基づいて定められた前記利用者の行動特性モデルと前記利用計画とに基づいて、前記利用者が利用する領域を割り当てるステップと、前記利用計画を用いて、前記領域ごとに設けられた設備ごとに前記設備の稼働状況を調整するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フリーアドレスオフィスにより運用される建物において、割り当て通りに利用しない利用者がいる場合の省エネルギー性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】本発明の実施形態に係わる建物環境制御システム1の動作の概要を示す説明図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係わる建物環境制御システム1の動作の概要を示す説明図である。
【
図1C】本発明の実施形態に係わる建物環境制御システム1の動作の概要を示す説明図である。
【
図2】第1の実施形態の建物環境制御システム1の構成例を示すブロック図である。
【
図3C】利用者情報190の例を示す説明図である。
【
図4】1つのエリアに複数の空調設備等が設備される例を示す説明図である。
【
図5】建第1の実施形態の建物環境制御システム1における情報の流れを示す説明図である。
【
図6】実施形態の第1段階に実施される分析処理のフローチャートである。
【
図7】実施形態の第2段階に実施される割り当て処理のフローチャートである。
【
図8】第2の実施形態の建物環境制御システム1Aの構成例を示すブロック図である。
【
図9】第2の実施形態の建物環境制御システム1Aにおける情報の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0021】
[概要]
本実施形態の建物環境制御システムは、フリーアドレスオフィスにより運用される建物に適用される。上記建物は、オフィスワークのための場所(以下、「ワークプレイス」とも記載)が複数のエリアに区分されている。建物環境制御システムは、位置検知技術を用いて各エリアに所在する利用者を検知する。建物環境制御システムは、各エリアにおける利用者の所在状況の検知結果に基づいて、各エリアの空調設備及び照明設備の省エネルギー性を高めるのに適した利用者の配置パターンを算定する。建物環境制御システムは、算定した配置パターンに従って利用者をそれぞれのエリアに誘導する。
【0022】
図1Aから
図1Cは、本発明の実施形態に係わる建物環境制御システム1の動作の概要を示す説明図である。
図1Aは、算定した配置パターンに従って利用者をそれぞれのエリアに誘導する前の状態を示し、
図1Bは、利用者をそれぞれのエリアに誘導した後の状態を示している。
この
図1Aから
図1Cに示す例において、建物2は、ワークプレイスがフリーアドレスオフィスにより運用されるオフィスビル等である。そのワークプレイスが、Aエリア11、Bエリア12、Cエリア13、Dエリア14の4つのエリアに区分されている。
そして、説明を簡単にするために、エリア12、13、14のそれぞれは、面積が同じであり、各エリアの利用者の収容可能人数も同じであるとする。エリア11は、エリア12、13、14よりも面積が広く、エリア11の利用者の収容可能人数もエリア12、13、14よりも多い。例えば、エリア12、13、14の各エリアの収容可能人数の上限を6人とする。本実施形態では、エリア12、13、14の各エリアに割り当てる人数を控えて、各エリアの収容可能人数の上限にならないように割り当てることとする。
【0023】
後述するように、エリア11、12、13、14の各エリアには、空調設備及び照明設備がそれぞれ設けられている。例えば、各エリアの容積、設備の仕様などによって、各エリアの空調負荷に影響がある。このような各エリアの中では、容積が比較的大きくなるエリア11の空調負荷は比較的大きくなり、容積が比較的小さくなるエリア12、13、14の空調負荷は比較的小さくなる。
一般に、空調負荷が比較的大きなエリアは、全領域を最適な状態に調整することが難しく、利用者によって不快に感じる場合がある。空調負荷が比較的小さなエリアは、その全領域を最適な状態に調整することが容易である。そのため、空調負荷が比較的小さなエリアの利用者は、比較的快適に利用できる。上記の場合、エリア12、13、14は、エリア11よりも快適な環境で作業することができるものとする。
【0024】
なお、対象となるエリアの数は、2つ以上の任意の数であってもよく、また、対象となるエリアは、複数階に渡って配置されていてもよい。また、各エリアの面積及び収容可能人数は、互いに異なっていてもよい。
また、以下の説明において、「Aエリア11」を「エリア11」と記載することがあり、「Bエリア12」を「エリア12」と記載することがあり、「Cエリア13」を「エリア13」と記載することがあり、「Dエリア14」を「エリア14」と記載することがある。
【0025】
比較例として
図1Aに示す利用者の誘導を行わない状態では、利用者U21からU32と利用者U41からU57とがエリア11、12、13、14のそれぞれのエリアに分かれて所在し、エリア11、12、13、14の全エリアの空調設備及び照明設備(不図示)が全てON(稼動状態)にする必要がある。
これに対し
図1Bに、利用者の誘導を推奨する状態を示す。この利用者の割り付け案では、利用者U21からU32がエリア12、13、14のそれぞれのエリアに割り付けられ、利用者U41からU57がエリア11に割り付けられる。これにより、エリア11、12、13、14のうち、エリア12、13、14の空調設備及び照明設備(不図示)をON(稼動状態)に、エリア11の一部の空調設備及び照明設備(不図示)をON(稼動状態)にする。ただし、エリア11の残りの空調設備及び照明設備(不図示)をOFF(非稼動状態)にできることを見込む。
ところが、割り付け案に従わない利用者U22、U26などがいると、
図1Bに示す通りの割り付けができなくなり、空調設備及び照明設備(不図示)をOFF(非稼動状態)になることを見込んでいたエリアの設備を稼働させることが必要になることがある(
図1C参照)。
図1Cに示す状況は、エリア12に割り付けられていた利用者U22がエリア11に移動して、エリア13に割り付けられていた利用者U26がエリア11に移動している。その結果、エリア12とエリア13に空席が生じて、その逆にエリア11の2つの空席が利用されることになっている。利用者U22と利用者U26の移動が当初から予測できていたならば、エリア12とエリア13に空席が生じることがなかったと、見込まれる。
実施形態の建物環境制御システム1は、
図1Cに示したような他のエリアへの移動を少なくするように各利用者に対するレコメンドを最適化するように構成されている。以下、これについて順に説明する。
【0026】
(建物環境制御システム1の構成例)
図2は、第1の実施形態の建物環境制御システム1の構成例を示すブロック図である。建物環境制御システム1は、建物2内のエリア11、12、13、14の各エリアに配置される各設備と、環境制御サーバ100とを含んでいる。
なお、
図2に示す例において、建物2は、エリア11、12、13、14の4つのエリアをワークプレイスとして有している。このエリアの数を、2つ以上の任意の数にしてもよく、また、エリア11、12、13、14は、同一の階であることに制限はなく、複数階に渡って所在してもよい。
【0027】
建物環境制御システム1において、建物2内のエリア11、12、13、14の各エリアには、無線LAN用のアクセスポイント(AP)61L、62L、63L、64Lがそれぞれ配置されている。AP61L、62L、63L、64Lは、例えば利用者の携帯端末50と通信可能である。以下の説明において、AP61L、62L、63L、64Lの何れかを示す場合、全てを示す場合、或いは、無線LANのアクセスポイントを総称する場合に、「AP60L」と記載することがある。
また、エリア11、12、13、14の各エリアには、それぞれのエリアにおける温度(或いは温度及び湿度)を調節する空調設備71、72、73、74が配置されている。また、エリア11、12、13、14の各エリアには、それぞれのエリアの照明設備81、82、83、84が配置されている。また、エリア11、12、13、14の各エリアには、それぞれのエリアにおける温度等を監視する環境センサ91、92、93、94と、が配置されている。
さらに本実施形態のエリア11、12、13、14の各エリアには、利用者の携帯端末50が受信して利用可能な電波ビーコンを送信するビーコン局61B、62B、63B、64Bがそれぞれ配置されている。
【0028】
建物2内に所在する利用者U20のそれぞれは、スマートフォン等の携帯端末50を所持している。例えば、この携帯端末50には、AP60Lを用いて環境制御サーバ100と通信することと、ビーコン局61B、62B、63B、64Bなどが送信する電波ビーコンを検出することに対応する処理が規定されているアプリケーションソフトウェアが予めインストールされている。携帯端末50は、電波ビーコンの受信に応じて上記のアプリケーションソフトウェアの処理により、自身の携帯端末ID(識別情報)と、受信した電波ビーコンに含まれるビーコン局のID(識別情報)と、を環境制御サーバ100に送信する。
【0029】
ビーコン局61B、62B、63B、64Bのそれぞれは、ビーコン局自身のID情報を含む電波ビーコンを携帯端末50に向けてブロードキャストする。例えば、Aエリア11に設置されたビーコン局61Bから発信される電波ビーコンをAエリア11に所在する利用者U20の携帯端末50が受信した場合、他のビーコン局から発信される電波ビーコンを受信する場合よりも受信感度レベルが高くなる。Bエリア12に設置されたビーコン局62B、Cエリア13のビーコン局63B、及びDエリア14のビーコン局64Bについても同様である。
【0030】
携帯端末50は、例えばビーコン局61Bから電波ビーコンを受信すると、「ビーコン局61BのID情報」と、「ビーコン局61Bのビーコンの受信信号強度(RSSI)」と、「携帯端末50の自身のID情報」とを、AP61Lを介して環境制御サーバ100に送信する。
【0031】
環境制御サーバ100は、携帯端末50から受信した「ビーコン局61BのID情報」と、「ビーコン局61Bのビーコンの受信信号強度(RSSI)」と、「携帯端末50のID情報」とに基づいて、エリア11、12、13、14の各エリアにおける利用者U20の所在状況を検知する。携帯端末50は、ビーコン局61以外のビーコン局からのビーコンを受信した場合、「当該ビーコン局のID情報」と、「当該ビーコン局のビーコンの受信信号強度(RSSI)」と、「携帯端末50のID情報」とを環境制御サーバ100に送信する。
エリア12、13、14の各エリアのビーコン局62、63、64についても同様である。なお、所在状況の検出アルゴリズムは、上記に例示したものに制限されず、他の方法を利用してもよい。
【0032】
これにより、環境制御サーバ100は、利用者U20がエリア11、12、13、14の何れのエリアに所在しているかを検知する。環境制御サーバ100は、利用者U20の位置検知の情報に基づいて、エリア11、12、13、14の各エリアにおける、エリアごとの利用者U20の所在状況と、人数との情報を「利用状況」の情報とを取得する。
なお、以下の説明において、ビーコン局61B、62B、63B、64Bの何れかを示す場合、全てを示す場合、或いは、ビーコン局を総称する場合に、「ビーコン局60B」と記載することがある。
また、環境制御サーバ100は、上記のエリア11、12、13、14の何れかのエリアをさらに複数の小領域に細分化し、この各小領域のそれぞれにビーコン局60Bを配置し、各小領域をエリア区分の単位として、利用者U20の位置を検知することができる。この、小領域をエリア区分の単位として、利用者U20の位置を検知する例については、後述する。
【0033】
また、本実施形態の建物環境制御システム1において、携帯端末50は、環境制御サーバ100との間でデータの送受信を行う場合、電気通信事業者の携帯基地局(不図示)の電波を介して、通信を行うようにしてもよい。或いは、携帯端末50は、環境制御サーバ100との間の通信を、無線LANのAP60Lを介して行うようにしてもよい。
【0034】
また、以下の説明において、エリア11、12、13、14の何れかを示す場合、或いは、全てを示す場合に、「エリア10」と記載することがある。また、空調設備71、72、73、74の何れかを示す場合、或いは、全てを示す場合に、「空調設備70」と記載することがある。また、照明設備81、82、83、84の何れかを示す場合、或いは、全てを示す場合に、「照明設備80」と記載することがある。また、環境センサ91、92、93、94の何れかを示す場合、或いは、全てを示す場合に、「環境センサ90」と記載することがある。
【0035】
環境制御サーバ100は、計画算定部110と、利用者情報処理部120と、利用者配置部130と、設備制御部140と、入出力部150と、記憶部160と、を備えている。
入出力部150は、液晶表示ディスプレイ等の表示装置と、マウスやキーボード等の入力装置と、を備えている。入出力部150の入力装置は、例えば、環境制御サーバ100が利用者U20のエリア移動の誘導処理を実行する際に必要となるデータの入力に使用される。環境制御サーバ100は、入力装置から入力されたデータを、記憶部160に記憶する。また、入出力部150の表示装置は、各エリア10に所在する利用者U20の所在状況の情報や、空調設備70及び照明設備80のON、OFF(稼動状態)の情報や、エリア10内の温度、湿度等の環境検知情報を表示する。
【0036】
計画算定部110は、各エリア10の空調設備70及び照明設備80を稼働状態の情報を空調設備70及び照明設備80からそれぞれ受信して、各エリア10の利用状況の情報を利用者情報処理部120から受信する。計画算定部110は、各エリア10の情報に基づいて、空調設備70及び照明設備80の省エネルギー性を高めるように、エリア10ごとの利用計画111を算定する。例えば、エリア10ごとに、省エネルギー性を示す指標が予め付与されている。
例えば、計画算定部110は、利用計画111として、空調設備70及び照明設備80の省エネルギー性を高めるように、エリア10ごとへの利用者U20の配置パターン(実施配置パターン)と、空調設備70及び照明設備80のON、OFF計画(運転、停止計画)を算定する。
【0037】
利用者情報処理部120は、利用者ごとの行動履歴に基づいて、利用者ごとに利用者行動特性モデルを生成する。例えば、利用者情報処理部120は、各エリア10の利用状況の情報を、携帯端末50、設備制御部140などから受信して、全利用者の各エリア10の利用状況を示す利用状況301を生成する。例えば、利用者情報処理部120は、エリア外利用申告情報322を携帯端末50から受信する。この場合、利用者情報処理部120は、利用計画111と、利用状況301と、エリア外利用申告情報322とに基づいて、利用者ごとの利用者行動特性モデルを生成する。例えば、利用者行動特性モデルを生成するタイミングを、予め定めておくとよい。利用者情報処理部120は、そのタイミングに利用者ごとの利用者行動特性モデルを生成して、利用者配置部130に提供する。利用者行動特性モデルの生成に関するより具体的な一例を後述する。
【0038】
利用者配置部130は、各エリア10の利用状況と、計画算定部110により算定された利用計画111と、予め定められた評価指標131と、のうちの少なくとも1の情報に基づいて、実際に利用者U20を各エリア10に割り当てる実施計画132を作成する。
例えば、この評価指標131は、稼働させる空調設備70及び照明設備80設備が消費するエネルギーが低減するにつれ評価値が高まるように設定される。これに代えて、評価指標131は、エリア10を移動する利用者U20の人数が少なくなるにつれ評価値が高まるように設定されていてもよい。或いは、評価指標131は、利用者U20が利用するエリア10の快適性が高まるにつれ評価値が高まるように設定されていてもよい。
また、利用者配置部130は、作成された実施計画132を利用者情報処理部120に出力する。この実施計画132には、実際に利用者U20を誘導する際に使用される実施配置パターンの情報が含まれる。また、利用者配置部130は、実施計画132に基づいて、空調設備70及び照明設備80の設備運転実施計画を作成し、この設備運転実施計画の情報を出力する。
【0039】
設備制御部140は、利用者配置部130から受け取った設備運転実施計画の情報に基づいて、エリア10ごとに設けられた空調設備70及び照明設備80のON、OFF(稼働状態)を調整する。この設備制御部140は、エリア10の環境センサ90から受け取った環境検知信号に基づいて、エリア10内の空調温度や明るさ等が所定の目標値になるように、空調設備70及び照明設備80の運転状態をフィードバック制御する。
【0040】
記憶部160には、建物2の建物属性情報170と、建物2の設備情報180と、この建物2を利用する利用者U20の利用者情報190とが記憶される。
建物属性情報170は、建物2におけるオフィスのレイアウト情報等を含む情報である。このレイアウト情報には、ワークプレイスにおけるエリア11、12、13、14の区分情報や、エリア11、12、13、14の各エリアの面積、収容可能人数、方位、窓の位置、各エリアのスコア値などの情報が含まれる。なお、エリア11、12、13、14の各エリアの収容可能人数は、例えば、各エリア10の面積と、各エリア10に設備される空調設備70の空調能力により設定される。各エリアのスコア値は、そのエリアを利用した場合の効果を評価するための指標値の一例である。
【0041】
設備情報180は、エリア11、12、13、14のそれぞれに設備された空調設備70や、照明設備80や、ビーコン局60Bや、環境センサ90等の設備情報である。
図3Aと
図3Bを参照して、設備情報180の例を説明する。
図3Aと
図3Bは、設備情報180の例を示す説明図である。例えば、
図3Aに示すように、設備情報180は、空調設備71、72、73、74などの空調設備の設備名、ID情報(空調設備ID)、最大消費電力(空調能力)の情報等を、エリア11、12、13、14のそれぞれに対応付けて記憶する。設備情報180は、例えば、記憶部160に割り当てられる。
また、
図3Bに示すように、設備情報180は、さらにビーコン局61B、62B、63B、64Bなどのビーコン局60BのID情報(ビーコン局ID)、照明設備80のID情報(照明設備ID)、環境センサ90のID情報(環境センサID)等を、エリア11、12、13、14のそれぞれに対応付けて記憶する。
【0042】
図3Cを参照して、利用者情報190の例を説明する。
図3Cは、利用者情報190の例を示す説明図である。
この利用者情報190は、携帯端末50と、携帯端末50を利用する利用者に関する情報である。利用者情報190は、例えば、記憶部160に割り当てられる。例えば、
図3Cに示すように、利用者情報190は、利用者U20の「利用者ID」と、利用者U20が所持する携帯端末50の「携帯端末ID」と、利用者U20の「氏名」と、利用者U20の「行動特性」と、「行動履歴」と、「特徴量」とを、利用者U20の「利用者ID」に関連付けして記憶する。
【0043】
なお、前述の
図2に示す例において、ビーコン局60Bと、空調設備70と、照明設備80とのそれぞれは、エリア11、12、13、14のそれぞれのエリアごとに1つずつ示されているが、空調設備や照明設備をタスク制御に切り換えられるように、1つのエリア10に複数台のビーコン局60Bと、複数台の空調設備70と、複数台の照明設備80と、複数台の環境センサ90とを夫々設ける場合がある。
【0044】
図4は、1つのエリアに複数の空調設備等が設備される例を示す説明図である。同図に示す一例は、エリア11がさらに3つの小領域11A、11B、11Cに細分化された場合を示すものである。小領域11Aには、ビーコン局61Baと、空調設備71aと、照明設備81aと、環境センサ91aとが設備されている。また、小領域11Bには、ビーコン局61Bbと、空調設備71bと、照明設備81bと、環境センサ91bとが設備されている。また、小領域11Cには、ビーコン局61Bcと、空調設備71cと、照明設備81cと、環境センサ91cとが設備されている。
【0045】
そして、ビーコン局61Baから発信される電波ビーコンは、携帯端末50が小領域11Aに所在する場合に、十分な受信信号強度で受信でき、受信信号強度に基づいた判定により、他のビーコン局からの信号(電波ビーコン)と区別できる。また、ビーコン局61Bbから発信される電波ビーコンは、携帯端末50が小領域11Bに所在する場合に、十分な受信信号強度で受信でき、受信信号強度に基づいた判定により、他のビーコン局からの信号(電波ビーコン)と区別できる。また、ビーコン局61Bcから発信される電波ビーコンは、携帯端末50が小領域11Cに所在する場合に、十分な受信信号強度で受信でき、受信信号強度に基づいた判定を行う際にビーコン局60Bの識別情報を用いることにより、他のビーコン局からの信号(電波ビーコン)と区別できる。
このように、1つのエリア11を複数の小領域11A、11B、11Cに細分化することにより、環境制御サーバ100は、エリア11に所在する利用者U20の位置を、より細分化された狭い範囲で検知することができる。また、環境制御サーバ100は、エリア11における利用者U20の所在位置に応じて、空調設備71a、71b、71cと照明設備81a、81b、81cとをタスク制御することができる。
【0046】
また、
図5は、建物環境制御システム1における情報の流れを示す説明図である。以下、
図5を参照して、建物環境制御システム1の各部に係る情報の流れについて説明する。
【0047】
図5において、環境制御サーバ100の利用者情報処理部120は、各エリア10の利用者U20の携帯端末50から、利用者U20がエリア11、12、13、14の何れのエリアに所在するかの位置検知情報300を受信する。或いは、例えば、
図4に示すように1つのエリア11に複数のビーコン局61a、61b、61cが配置されている場合、利用者情報処理部120は、利用者U20が1つのエリア11の小領域11A、11B、11Cの何れの領域に所在するかの位置検知情報300を受信する。他のエリア12から14のそれぞれに、複数のビーコン局60Bが配置されている場合も同様である。
利用者情報処理部120は、利用者U20の位置検知情報300に基づいて、各エリア10における利用者U20の利用状況を検知する。例えば、利用者情報処理部120は、各エリア10における利用者U20の所在状況や、各エリア10に所在する人数等の情報を、利用状況301として、環境制御サーバ100の計画算定部110と、利用者配置部130と、に供給する。
【0048】
計画算定部110は、利用者情報処理部120から、各エリア10の利用状況301を取得する。計画算定部110は、各エリア10の利用状況301に基づいて、空調設備70及び照明設備80の省エネルギー性を高めるように、各エリア10の利用計画111を算定する。例えば、計画算定部110は、省エネルギー性について評価可能な一般的な算定基準を用いて、利用計画111として、空調設備70及び照明設備80の消費エネルギーを最小化するのに適した利用者U20の配置パターン112を算定する。計画算定部110は、算定した利用計画111の情報を、利用者情報処理部120と、利用者配置部130に供給する。
なお、各エリア10の利用計画111として、予め定められた基本利用計画を利用してもよい。また、利用者U20の配置パターン112として、予め定められた基本配置パターンを利用しても良い。
【0049】
利用者情報処理部120は、利用計画111に基づいて、利用者U20に利用を推奨するエリアの情報を提供し、利用者U20の利用実績に関する情報を収集する。例えば、利用者情報処理部120は、携帯端末50に、利用を推奨するエリアの情報(推奨エリア321と呼ぶ。)を送信することにより、利用者U20に利用を推奨するエリアの情報を提供する。
【0050】
利用者U20は、携帯端末50に表示された推奨エリア321を確認して、そのエリア内で作業を行うことを、このエリア内を利用する際の基本ルールとする。ただし、利用者U20は、利用が推奨されているエリア外で作業を行う場合には、推奨エリア外で作業を行うことを、携帯端末50を用いて申請するとよい。
【0051】
より具体的には、利用者情報処理部120は、例えば、推奨エリア提供部121と、収集部122と、行動特性モデル生成部123と、を備える。
【0052】
推奨エリア提供部121は、利用計画111に基づいて、利用者U20の携帯端末50に、その利用者U20に対して利用を推奨するエリアの情報(推奨エリア)321を送信する。
【0053】
収集部122は、携帯端末50から、各利用者U20の利用実績に関する情報(位置情報など)を収集し、これをまとめて利用状況301を生成する。収集部122は、携帯端末50から、エリア外で作業を行うことの申告情報(エリア外利用申告情報)322を収集する。これにより、収集部122は、客観的な情報として利用状況301を取得し、主観的な情報としてエリア外利用申告情報322を収集し、それぞれを利用可能にする。
【0054】
行動特性モデル生成部123は、利用状況301のうちから抽出した、利用者U20のエリアの利用状況に基づいて各利用者U20の行動特性モデルを利用者U20ごとに生成する。
例えば、行動特性モデル生成部123は、利用計画111による利用者の配置と、利用状況301から検出される利用者U20の位置情報との違いを検出し、各利用者U20が推奨エリアを利用していたか否かに基づいた利用者U20の行動特性モデルを生成する。なお、行動特性モデル生成部123は、利用者U20の行動特性モデルの生成にあたり、エリア外利用申告情報322を併用してもよい。
【0055】
利用者配置部130は、利用者情報処理部120から取得した利用状況301と、計画算定部110から取得した利用計画111と、予め定めた評価指標131により算出される評価値と、に基づいて、実際に実施する実施計画132を作成する。また、利用者配置部130は、作成した実施計画132に基づいて、利用者U20を各エリア10に配置する実施配置パターン340を作成し、この実施配置パターン340を利用者情報処理部120に供給する。
利用者情報処理部120は、利用者配置部130から取得した実施配置パターン340に基づいて、推奨エリア321を生成し、この推奨エリア321を、移動対象となる利用者U20の携帯端末50に送信する。
【0056】
また、利用者配置部130は、実施計画132に基づいて、空調設備70及び照明設備80の設備運転実施計画350を作成し、この設備運転実施計画350を、設備制御部140に供給する。設備制御部140は、利用者配置部130から取得した設備運転実施計画350と、各エリア10内の環境センサ90から取得する環境検知情報360とに基づいて、空調設備70及び照明設備80の制御信号351を生成し、空調設備70及び照明設備80の運転状態を制御する。
なお、設備制御部140は、上記の各種情報から各エリア10の状況を判定して、各エリアの空調設備70及び照明設備80を、下記のように制御する。
(1)設備制御部140は、利用者U20がいなくなったエリア10の空調設備70の稼働を停止させて、照明設備80を消灯させる。
(2)設備制御部140は、利用者U20が集中するエリア10の空調設備70の稼働を、当該エリアの利用人数に応じて調整し、照明設備80を点灯状態にする。
(3)設備制御部140は、一部の利用者U20が利用しているエリア10の空調設備70と照明設備80をタスク制御で稼働させて、同エリアの利用者U20が所在する範囲の環境が所望の状態になるように制御する。
【0057】
このような、建物環境制御システム1は、各利用者U20に公平に快適な環境で作業できるように、エリア12、13、14の利用を許可する人を管理する。より具体的には、建物環境制御システム1は、予め定められた割り当て規則に則って、各利用者U20にエリア12、13、14の利用の機会を与えるとよい。このように、限られた人が利用できるエリア12、13、14であるが、利用者U20の中には、エリア12、13、14に割り当てられた機会を利用しない傾向の人がいる。
【0058】
例えば、標準的な温度感覚で快適とされる温度に対し、冷え性などの理由で、寒さを感じする人がいる。限られた広さのエリアの中で作業することに対して、開放的な広いエリアで作業することをよしとする人がいる。仲の良い人のそばで、作業のチームが集まって、などの理由で、限られた広さのエリアに、入りきれない人数で作業することを欲する人がいる。
【0059】
このような傾向の利用者U20に、エリア12、13、14の利用の機会を与えたとしても、エリア12、13、14が結局利用されないで、その席が終日、空席になることがあり得る。
【0060】
そこで、本実施形態では、上記の傾向を有する利用者U20を特定して、その利用者U20が望むエリアを割り当てることにした。これについて、より具体的に説明する。
【0061】
本実施形態では、各利用者U20の傾向に即した割り当てを実現するための処理についての説明を簡単にするため、各利用者U20の傾向を分析する第1段階と、第1段階の分析の結果を割り当て処理に反映する第2段階とを設ける。
【0062】
(利用者の傾向を分析する第1段階)
図6を参照して、実施形態の第1段階に実施される分析処理について説明する。
図6は、実施形態の第1段階に実施される分析処理のフローチャートである。
【0063】
計画算定部110は、各エリアの特性を決定する(SA11)。例えば、建物負荷は、上記の「各エリアの特性」の一例である。建物負荷は、建物の構造と方向、配置されている設備、季節、曜日、時間帯、天候などにより予め定めることができる。
【0064】
利用者配置部130は、各エリアの特性に基づいて、一般に好適な環境と識別されるエリアを推奨するように構成されている。利用者配置部130は、特定の利用者U20を優先的に上記エリアに割り当てて(SA12)、この割り当てた結果を、その特定の利用者U20に通知する。利用者配置部130は、例えば、この通知を、利用者U20の携帯端末50に夫々通知してもよく、建物の入口、廊下などの共通エリアに設けたサイネージ端末に表示してもよく、各利用者U20が参照可能な情報提供装置をネットワーク上に設けて、そこから配信してもよい。
【0065】
利用者情報処理部120の収集部122は、各利用者U20の位置を識別する(SA13)。
例えば、携帯端末50は、建物内に配置されたビーコン局60Bからの電波(無線ビーコン)を受けて、この無線ビーコンを検出する。収集部122は、携帯端末50からこの検出の結果を取得して、利用者U20がそのビーコン局60Bに接近していることを検出できる。なお、各利用者U20の位置の識別の手法は、これに制限されることなく、その他の既知の手法を適宜適用してよい。
【0066】
利用者配置部130は、各利用者U20が利用中のエリアについて、その利用者U20に割り当てられたエリア(推奨エリアという。)か否かを識別する(SA14)。
【0067】
各利用者U20が利用中のエリアが推奨エリアであると識別された場合、利用者配置部130は、推奨エリアを利用していることを示す指標値を所定量増やす(SA15)。
【0068】
各利用者U20が利用中のエリアが推奨エリアであると識別されなかった場合、利用者配置部130は、推奨エリアを利用していることを示す指標値を所定量減らす(SA16)。
【0069】
利用者配置部130は、このステップSA14からステップSA16の処理を、所定のタイミングに実施するとよい。例えば、1日の中で予め定められた特定の時刻であってもよく、1日の中で複数回になるように予め定められたタイミングであってもよい。
【0070】
又は、特定の時刻ではなく、利用者U20がオフィスに出社した時刻を基準に定めたタイミングであってもよい。この場合、所定のエリアに到達して作業を開始した後になるように定めた時刻であるとよい。その結果、各利用者U20の利用状況を検出するタイミングが不ぞろいになるが、利用の傾向を収集するうえで大きな影響はない。
【0071】
処理の説明に戻る。利用者配置部130は、解析のタイミングであるか否かを識別して(SA17)、解析のタイミングであると識別されない場合には、処理をステップSA19に進める。
【0072】
解析のタイミングであると識別された場合、利用者配置部130は、利用者U20ごとに、推奨されたエリアを利用する傾向を有する人か否か識別する(SA18)。
【0073】
ステップSA18の処理を終えると、設備制御部140は、利用者U20が不在のエリアの設備の稼働を停止する(SA19)。
上記の各処理を実施することにより、第1段階に実施される分析処理を終える。
【0074】
(分析の結果を割り当て処理に反映する第2段階)
次に、
図7を参照して、第1段階の分析の結果を割り当て処理に反映する第2段階の処理について説明する。
図7は、実施形態の第2段階に実施される割り当て処理のフローチャートである。
【0075】
計画算定部110は、エリアの特性を決定する(SA21)。エリアの特性に係る情報を変更せずに利用する場合には、このステップSA21の処理を省略してもよい。
【0076】
利用者情報処理部120は、割り当て処理の対象の利用者U20を識別する(SA23)。
【0077】
利用者配置部130は、識別の結果に基づいて、利用者U20に対する誘導制御が有効な特徴を有する人か否かを識別する(SA24)。「利用者U20の誘導制御が有効な人か否か」の識別に、前述の第1段階の処理の結果を適用するとよい。
【0078】
ステップSA24において誘導制御が有効な人であると識別した場合、利用者配置部130は、快適性が比較高いと評価される第1領域にスペースがなく、かつ快適性が比較的低いと評価される第2領域にスペースがあるか否かを識別する(SA25)。
【0079】
ステップSA25の識別の結果が否定的であった場合には、利用者配置部130は、推奨エリアとして第1領域(エリア1)を提示する(SA26)。
【0080】
ステップSA24において誘導制御が有効な人でないと識別した場合、又はステップSA25の識別の結果が肯定的であった場合には、利用者配置部130は、推奨エリアとして第2領域(エリア2)を提示する(SA27)。
【0081】
ステップSA27の処理を終えて、設備制御部140は、利用者U20が不在のエリアの設備の稼働を停止して(SA28)、利用者U20がいるエリアの設備の稼働を継続する。
【0082】
上記の各処理を実施することにより、第2段階に実施される割り当て処理を終える。
【0083】
(利用者の行動特性の分析方法)
次に、利用者の行動特性の分析方法の一例について説明する。
【0084】
上記のように、環境制御サーバ100の利用者情報処理部120は、各利用者U20の行動特性が、下記の条件に対する依存性があるか否かを分析する。例えば、その条件に、曜日、天候、時間帯、季節、周囲の人の密集度などの何れかを含む。上記の条件による分類によって、利用者U20が選択するエリア(席)を変える傾向(座る箇所のパターン)の有無を識別する。
【0085】
その傾向が識別された場合に、利用者情報処理部120は、利用者U20の行動特性として追加する。これにより、利用者情報処理部120は、利用者U20の行動特性に沿ったエリア(レコメンドエリアと呼ぶ。)をレコメンドできる。
【0086】
上記のように、領域の利用状況の識別に、利用当日の曜日、天候、時間帯、季節、周囲の人の密集度のうちの何れかの情報を用いることにより、これらの条件に関する利用者U20の行動特性の傾向を見出すことができる。
【0087】
上記の結果を利用して、行動特性モデル生成部123は、利用者U20ごとの領域の利用状況に基づいて利用者U20の行動特性モデルを生成するとよい。
【0088】
より具体的な一例を挙げるとすれば、ある利用者U20の行動履歴から、「水曜日には、標準的なレコメンドエリアで作業する人だが、金曜日には標準的なレコメンドエリアで作業しない人」という特徴が抽出されたとする。この場合には、利用者情報処理部120は、上記の利用者U20を下記のように判定する。
・水曜日の処理において:標準的なレコメンドエリアを利用する可能性が高い人(日)と判定する。
・金曜日の処理において:標準的なレコメンドエリアを利用する可能性が低い人(日)と判定する。
このような傾向が、利用者U20の行動特性モデルに追加される。他の条件に付いても同様である。
【0089】
例えば、レコメンドエリア内で作業を実施する傾向の高い人か否かを識別する方法として、下記を適用してもよい。
【0090】
レコメンドエリア内で、所定の時間以上作業していること、又は所定の頻度以上検出されること、を判断基準に用いて判断する。
例えば、判断基準として、以下のものなどが挙げられる。
・所定時間(例えば30分)以上の作業を行っていると検出される場合。
・1日に所定の回数(例えば3回)以上の回数で検出される場合。
・勤務時間の所定の割合(例えば1/3)以上の作業を行っていると検出される場合。
・ある週に出社した日の中で所定の割合(例えば1/2)以上の作業を行っていると検出されていて、かつ検出されているその日に所定回数(例えば2回)以上の回数で検出される場合。
上記は、一例であり、適宜変更、追加が可能であり、複数の条件を組み合わせることも可能である。
【0091】
利用者配置部130は、利用者U20の行動特性モデルに基づいて割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的低いと識別された人に対して、第1領域と第2領域において作業を行う際に見込まれる第1領域と第2領域の各領域の特徴を通知して、利用者U20の行動特性モデルに基づいて、割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的高いと識別された人に対して、見込まれる第1領域と第2領域の各領域の特徴を通知しないとよい。
例えば、利用者配置部130は、全利用者U20に対して、割り当てに従う傾向が強い人か否かによらずに第1領域に割り当てて、全利用者U20にこれを通知する。」利用者配置部130は、全利用者U20又は全利用者U20のうち「割り当てに従わない人」に対して、「第2領域に関する悪い情報」を提供する。
【0092】
以下、幾つかのシナリオを例示して、説明を補足する。
【0093】
シナリオ1:
例えば「割り当てに従わない利用者U20」は、自身が利用したい領域を合理的に判断できる人であると仮定する。
これにより、「割り当てに従わない利用者U20」であっても、提供された情報から作業環境としての適否を合理的に判断することが期待できる。このとき、割り当てに従わない利用者U20に対して、第2領域に関する悪い情報を提供されていれば、これに接した利用者U20は、この情報から想定される環境を連想して、作業に利用する領域を選択する。その結果、この利用者U20が、標準的な選択をするとすれば、一般的に良好な環境が見かまれる領域を選択するはずである。これにより、利用者U20の合理的な判断の結果から、推奨する領域に利用者U20が集まることが期待できる。又は集まる確率が高まることが期待できる。このように、割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的低いと識別された人が、良好な環境で作業を行うことを期待した行動をとることにより、建物環境制御システム1が所望する第1領域への集約率が高まり、全体としてその省エネルギー性を高めることが期待できる。
【0094】
シナリオ2:
例えば「割り当てに従わない利用者U20」は、シナリオ1と同様に、自身が利用したい領域を合理的に判断できる人であると仮定する。
「割り当てに従う利用者U20には第1領域に割り当て」たことを通知して、「割り当てに従わない利用者U20には第1領域に割り当て」たことを通知しない。
これに代わり「割り当てに従わない利用者U20」に対しては、第2領域に関する悪い情報を提供するとよい。
上記のシナリオ2の場合、上記のシナリオ1に比べると、期待することを敢えて提示しないことになる。さらに、例えば「割り当てに従わない利用者U20」に第2領域に関する悪い情報を提供することで、自発的な行動を期待するレコメンドになることが期待できる。
【0095】
そして、設備制御部140は、第1領域において作業を行ううえでより好適な環境を提供するように第1領域の設備の稼働状況を調整する。そして、設備制御部140は、第2領域において作業を行ううえで第1領域よりも適さない環境を提供するように第2領域の設備の稼働状況を調整するとよい。さらに、設備制御部140は、第1領域において、第2領域よりも良好な省エネ特性が得られるように設備の稼働状況を調整するとよい。また、設備制御部140は、利用計画と領域の利用状況とに基づいて、領域ごとに設けられた設備ごとに設備の稼働状況を調整するとよい。
【0096】
上記の実施形態によれば、建物環境制御システム1は、複数の領域に分割された建物の前記領域の環境を制御する。
建物環境制御システム1の計画算定部110は、領域ごとの利用計画を算定する。
利用者情報処理部120の利用者配置部130は、利用者U20ごとの前記領域の利用状況に基づいて定められた前記利用者U20の行動特性モデルと前記利用計画とに基づいて、前記利用者U20が利用する領域を割り当てる。
そして、設備制御部140は、利用計画を用いて、前記領域ごとに設けられた設備ごとに前記設備の稼働状況を調整する。
これにより、建物環境制御システム1は、フリーアドレスオフィスにより運用される建物において、割り当て通りに利用しない利用者がいる場合であっても、その省エネルギー性を高めることができる。
【0097】
なお、利用者U20の行動特性モデルは、割り当てられた領域内で作業を実施する傾向の人か否かを識別可能に形成されているとよい。これにより、利用者U20の行動特性モデルを用いて、割り当てられた領域内で作業を実施する傾向の人か否かを識別可能になる。
【0098】
(第1の実施形態の変形例)
上記の第1の実施形態では、利用者U20ごとにエリアの割り当てを決める事例について説明した。これに代えて、本変形例では、作業に利用するエリアを途中で移動してもらう場合に適用可能な事例について説明する。
この事例の場合、複数の利用者に移動してもらうことが必要になることが多い。
そこで、このような場合に、各利用者U20の行動特性に基づいて、レコメンドに応じて移動する利用者U20の一群に割り当てるエリアを調整することで、全体として利用されるエリアを集中させることを見込む。
【0099】
例えば、上記の第1段階の処理によって、施設を利用する各利用者U20の行動特性に関する情報を集めて、標準的なレコメンドエリアを利用する可能性(レコメンド率という。)の高い人か否かにグループ分けする。
そして、レコメンド率の高い人達に利用してもらうためのエリアを、レコメンド率の低い人達が利用している箇所に寄せて配置する。
【0100】
比較例として、以下のシナリオが想定される。
すでに「レコメンド率の高い人達の利用者U20」が所望の領域(領域A)を利用し始めていて、そのあとに、「レコメンド率の低い人達の利用者U20」が利用を開始したとする。このとき、「レコメンド率の低い人達の利用者U20」に領域Aを薦めても、領域Bを利用ことが比較的高い確率であることが期待できる。
上記の比較例によれば、この時点で領域Aと領域Bの両方が利用される状態になっている。このような場合、利用されない領域がなくなり、その領域の設備の稼働を停止できないことになる。
【0101】
そこで、本変形例では、1日の中で各領域の利用状況が変化することが見込まれる場合には、利用者配置部130は、1日のなかで数回領域の再割り当てを実施するとよい。例えば時間帯に合わせて、利用者U20のエリアを再配置することにより、利用者U20に割り当てる位置を再定義できる。
これによれば、利用を開始する時刻と終了する時刻が夫々不ぞろいの場合であっても、利用中の利用者U20に割り当てる位置を1日の中で適宜見直すことにより、分散している利用者U20を、所望の領域に誘導して集約できる。
例えば、「レコメンド率の高い人達の利用者U20」の第2陣が到着して、夫々利用を開始する段階で、「レコメンド率の低い人達側へ高い人達の利用者U20を誘導する」とよい。この場合は、誘導先の領域を利用することになる確率が比較的高く見込める一例である。
【0102】
また、利用者配置部130は、上記の再配置を一定時間経過後に実施して、その際に「レコメンド率の高い人達をレコメンド率の低い人達の利用者U20側の領域に再誘導するようリコメンドする」とよい。
例えば、利用者配置部130は、利用者U20を再配置する際に、利用者U20の行動特性モデルに基づいて、割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的低いと識別された人達が利用している領域側に、割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的高いと識別された人達を誘導することにより、分散した利用者U20を、所望の領域又は範囲内に集約できる。
【0103】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。以下の説明では、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0104】
図8は、第2の実施形態の建物環境制御システム1Aの構成例を示すブロック図である。
【0105】
建物環境制御システム1Aは、前述の建物環境制御システム1(
図2)に対し、環境制御サーバ100とビーコン局61B、62B、63B、64Bとに代えて、環境制御サーバ100Aとカメラ41、42、43、44とを備える点が異なる。
【0106】
環境制御サーバ100Aは、前述の環境制御サーバ100の利用者情報処理部120に代えて、利用者情報処理部120Aを備える。
【0107】
例えば、カメラ41、42、43、44は、エリア内の状況を監視可能な撮像装置である。カメラ41、42、43、44の夫々が、固定焦点の光学系、撮像部、画像処理部、通信処理部などを備える。
【0108】
例えば、カメラ41、42、43、44の夫々が、各エリアの天井、梁、壁、柱などに配置され、固定されている。カメラ41、42、43、44の夫々が、固定雲台に配置されていてもよく、これに代えて旋回台に搭載されていてもよい。
【0109】
その光学系による撮像範囲は例えば広角又は標準が好適であるがこれに限らない。撮像部は、光学系の焦点により規定される撮像範囲に存在する利用者U20を撮像して、個体識別可能な画像情報を生成する。通信処理部は、上記の画像情報及び画像情報から抽出された情報などを環境制御サーバ100Aに送る。通信処理部が無線LANによる通信が可能であれば、カメラ41、42、43、44は、夫々無線LANのAP60Lを介して通信するとよい。
【0110】
画像処理部は、撮像部によって生成された画像情報を所定のフィルタ処理、圧縮処理のアルゴリズムに基づいて、情報を圧縮する。この圧縮後の画像情報は通信処理部を経て外部に出力される。このフィルタ処理、圧縮処理のアルゴリズムには、既知の演算手法等を適用してよい。
【0111】
画像処理部は、撮像部によって生成された画像情報又は所定のフィルタ処理後の画像情報に基づいて、被写体に含まれる利用者U20を個体識別する。この個体識別処理のアルゴリズムには、既知の演算手法等を適用してよい。この個体識別は、利用者U20の顔情報、骨格などの容姿情報などから抽出された各利用者U20の特徴量に基づいて実施される。
各利用者U20の特徴量を示す基準データは、環境制御サーバ100Aからカメラ41、42、43、44に予め通知される。カメラ41、42、43、44は、この各利用者U20の特徴量を示す基準データを用いて、撮像部によって生成された画像情報の中から各利用者U20の特徴量を示す領域を検出する。これにより検出された領域に対応する利用者U20は、そのカメラ41、42、43、44の撮像範囲内に存在すると判断してよい。
この検出アルゴリズムには、既知の手法を適用してよい。なお、カメラ41、42、43、44から被写体までの距離が変わることによって、撮像された画像内の被写体の像の大きさが異なるものになる。上記の各利用者U20の特徴量を示す基準データを用いた個体識別には、被写体までの距離の影響を軽減する手法を適用することが望ましい。例えば、各利用者U20の特徴量を示す基準データには、目、鼻、口、顔の輪郭の大きさと相対位置、これらの比率を示すデータなどが含まれていてもよい。
【0112】
上記のカメラ41、42、43、44を用いる場合、カメラ41、42、43、44は、画像情報とその付帯情報とを環境制御サーバ100Aに送る。その付帯情報には、画像の撮像時刻、画像から抽出された利用者U20の識別情報(利用者識別情報302)などが含まれる。
【0113】
図9は、第2の実施形態の建物環境制御システム1Aにおける情報の流れを示す説明図である。
利用者情報処理部120Aの収集部122は、利用者識別情報302を取得する。
収集部122は、カメラ41、42、43、44から、画像から抽出された利用者U20の識別情報(利用者識別情報302)を収集し、これをまとめて利用状況301を生成する。収集部122は、利用者識別情報302を、前述の位置検知情報として利用する。なお、収集部122は、携帯端末50から、エリア外で作業を行うことの申告情報(エリア外利用申告情報)322を収集してもよい。これにより、収集部122は、客観的な情報として利用者識別情報302に基づく利用状況301を取得し、主観的な情報としてエリア外利用申告情報322を収集し、それぞれを利用可能にする。
【0114】
利用状況301を用いた各種処理は、前述の第1の実施形態を参照するとよい。
【0115】
なお、上記の説明では、カメラ41、42、43、44と環境制御サーバ100Aとの間の通信回線として、無線LANの回線を利用する形態を例示したが、これに制限されずLANなどの有線通信回線を利用するとよい。利用する通信回線の帯域などにより、カメラ41、42、43、44による画像圧縮処理を省略してもよい。
【0116】
なお、上記は利用者U20の個体識別を、各カメラ41、42、43、44が実施する場合の一例である。これに代えて、撮像範囲内の利用者U20の所在及び人数を、各カメラ41、42、43、44が検出するものとしてもよい。この場合、個体識別の結果を得ることができないが、そのエリアで作業をしている利用者20の密度を得ることができる。
【0117】
上記のように、個体識別用の検出系にビーコン局61B、62B、63B、64Bに代わるカメラ41、42、43、44を用いる場合であっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0118】
上記の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0119】
(第2の実施形態の変形例)
上記の第2の実施形態では、カメラ41、42、43、44によって検出された利用者U20の位置に基づいてエリアの割り当てを決める事例について説明した。これに代えて、又は加えて、本変形例では、無線LANのAP60Lが出力する信号を利用して利用者U20の位置を特定する場合に適用可能な事例について説明する。
この事例の場合、無線LANのAP60Lからの信号に含まれる識別情報又は認証用情報を用いることで、AP60Lからの信号の受信信号強度を利用する場合に比べて識別率が高まる。
【0120】
カメラ41、42、43、44が画像情報などの通信に利用する無線LANのAP60Lを、携帯端末50の位置の検出に利用することにより、設備の増加を抑制しつつ、位置の検出手段を確保できる。
【0121】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の建物環境制御システム1は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、上記実施形態の建物環境制御システム1では、利用者U20の携帯端末50を用いて、利用者U20の所在するエリア10を検知する例について説明したが、携帯端末50は、モバイル端末として機能できるPC(パーソナルコンピュータ)であってもよい。
【0122】
また、建物環境制御システム1は、人の密集を避ける傾向がある人には、密にならないエリア(個室、小部屋など)へ誘導するようにしてもよい。
【0123】
以上説明した実施形態は、下記の態様に適用してよい。
【0124】
(1)本実施形態の建物環境制御システム1は、複数の領域(エリア10)に分割された建物のエリア10の環境を制御する。建物環境制御システム1は、エリア10ごとの利用計画111を算定する計画算定部110と、利用者ごとのエリア10の利用状況に基づいて定められた利用者U20の行動特性モデルと利用計画111とに基づいて、利用者U20が利用する領域を割り当てる利用者配置部130と、利用計画111を用いて、エリア10ごとに設けられた設備ごとに前記設備の稼働状況を調整する設備制御部140と、を備える。
(2)上記(1)の建物環境制御システム1において、利用者U20の行動特性モデルは、割り当てられたエリア10内で作業を実施する傾向の人か否かを識別可能に形成されているとよい。
(3)上記(1)の建物環境制御システム1において、利用者配置部130は、利用者U20の行動特性モデルに基づいて、割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的低いと識別された人に対して、第1領域と前記第2領域において作業を行う際に見込まれる第1領域と第2領域の各領域の特徴を通知して、利用者U20の行動特性モデルに基づいて、割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的高いと識別された人に対して、見込まれる第1領域と第2領域の各領域の特徴を通知しないとよい。
(4)上記(1)の建物環境制御システム1において、利用者配置部130は、利用者の行動特性モデルに基づいて、割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的高いと識別された人に対して、前記見込まれる前記第1領域と前記第2領域の各領域の特徴を通知せずに、第1領域を割り当てるよう通知をするとよい。
(5)上記(3)又は(4)の建物環境制御システム1において、設備制御部140は、第1領域において前記作業を行ううえでより好適な環境を提供するように第1領域の前記設備の稼働状況を調整し、第2領域において前記作業を行ううえで第1領域よりも適さない環境を提供するように第2領域の前記設備の稼働状況を調整するとよい。
(6)上記(3)から(5)の建物環境制御システム1において、設備制御部140は、第1領域において、第2領域よりも良好な省エネ特性が得られるように設備の稼働状況を調整するとよい。
(7)上記(1)から(6)の建物環境制御システム1において、設備制御部140は、利用計画111とエリア10の利用状況とに基づいて、エリア10ごとに設けられた設備ごとに前記設備の稼働状況を調整するとよい。
(8)上記(1)から(7)の建物環境制御システム1は、利用者U20ごとのエリア10の利用状況に基づいて利用者U20の行動特性モデルを生成する行動特性モデル生成部123を備えるとよい。
(9)上記(1)から(8)の建物環境制御システム1は、エリア10の利用状況の識別に、利用当日の曜日、天候、時間帯、季節、周囲の人の密集度のうちの何れかの情報を用いるとよい。
これにより、本実施形態の建物環境制御システム1は、省エネルギー性を高めるとともに、利用者の希望に沿うように環境を制御することができる。
(10)上記(1)から(9)の建物環境制御システム1において、前記利用者配置部は、前記利用者を再配置する際に、前記利用者の行動特性モデルに基づいて、前記割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的低いと識別された人達が利用している領域側に、前記割り当てられた領域内で作業を実施する傾向が比較的高いと識別された人達を誘導するとよい。
【符号の説明】
【0125】
1・・・建物環境制御システム、2・・・建物、
10・・・エリア(領域)、10A,10B,10C・・・小領域、
11・・・Aエリア(領域)、
11A,11B,11C・・・小領域、
12・・・Bエリア(領域)、13・・・Cエリア(領域)、
14・・・Dエリア(領域)、
20,21~33・・・利用者、50・・・携帯端末、
60B,61B~64B,61Ba,61Bb,61Bc・・・ビーコン局、
60L,61L~64L・・・アクセスポイント(AP)、
70,71~74・・・空調設備、
70a,70b,70c,71a,71b,71c・・・空調設備、
80,81~84,81a,81b,81c・・・照明設備、
90,91~94・・・環境センサ、
90a,90b,90c,91a,91b,91c・・・環境センサ、
100・・・環境制御サーバ、110・・・計画算定部、
111・・・利用計画、112・・・配置パターン、
120・・・利用者情報処理部、121・・・推奨エリア提供部、122・・・収集部、123・・・行動特性モデル生成部、
130・・・利用者配置部、131・・・評価指標、132・・・実施計画、
140・・・設備制御部。