(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106178
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20240731BHJP
H02K 3/38 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H02K3/04 J
H02K3/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010343
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄己
(72)【発明者】
【氏名】土方 大樹
【テーマコード(参考)】
5H603
5H604
【Fターム(参考)】
5H603AA03
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA10
5H603CB11
5H603CC11
5H603CC17
5H603CE02
5H603CE09
5H603EE09
5H603FA04
5H604AA05
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604DB15
5H604PB02
5H604PC00
(57)【要約】
【課題】部品点数の増加を抑え、渡り線の振動を抑制すること。
【解決手段】モータは、ステータコア4と、ステータコア4の周方向に配置された複数のスロット9と、スロット9に配置されたコイル5と、複数のコイル5を接続する渡り線55と、コイル5のコイルエンド部52において、コイルエンド部52と渡り線55とを絶縁する絶縁紙20と、を備え、渡り線55は、絶縁紙20上に位置する部分において、他の部分より表面積が大きく形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、
前記ステータコアの周方向に配置された複数のスロットと、
前記スロットに配置されたコイルと、
複数の前記コイルを接続する渡り線と、
前記コイルのコイルエンド部において、前記コイルエンド部と前記渡り線とを絶縁する絶縁部材と、
を備え、
前記渡り線は、前記絶縁紙上に位置する部分において、他の部分より表面積が大きく形成されている、
モータ。
【請求項2】
前記渡り線は、前記絶縁紙上に位置する部分に、孔部を有する、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記渡り線は、前記絶縁紙上に位置する部分において、軸方向の断面が前記絶縁紙に近づくにつれて小さくなるように形成されている、
請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
前記渡り線は、前記絶縁紙上に位置する部分に、幅方向の端部に凹凸が形成されている、
請求項1に記載のモータ。
【請求項5】
前記渡り線は、前記絶縁紙上に位置する部分に、物理的もしくは化学的な処理による表面の凹凸が形成されている、
請求項1に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機ステータにおいて、渡り線に関し接合強度を確保し、振動を抑制する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、渡り線とインシュレータとの間を柔軟に固定する柔軟固定部材が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、すべてのスロットに柔軟固定部材を配置するので、部品点数が増加し、組立工数も増加する。
【0005】
本開示は、部品点数の増加を抑え、渡り線の振動を抑制したモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、ステータコアと、前記ステータコアの周方向に配置された複数のスロットと、前記スロットに配置されたコイルと、複数の前記コイルを接続する渡り線と、前記コイルのコイルエンド部において、前記コイルエンド部と前記渡り線とを絶縁する絶縁部材と、を備え、前記渡り線は、前記絶縁紙上に位置する部分において、他の部分より表面積が大きく形成されているモータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、部品点数の増加を抑え、渡り線の振動を抑制したモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係るモータを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態に係るステータコア及びコイルを模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、コイルエンド部を模式的に示す概略図である。
【
図5】
図5は、コイルエンド部を模式的に示す概略図である。
【
図7】
図7は、コイルエンド部を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[実施形態]
<モータ>
図1は、実施形態に係るモータ1を模式的に示す図である。実施形態において、モータ1は、3相のスイッチトリラクタンスモータである。モータ1は、円筒形状のステータ2と、ステータ2の内側に配置されたロータ3とを備える。ステータ2は、円筒形状のステータコア4と、ステータコア4に支持されるコイル5とを有する。ステータ2の内周面とロータ3の外周面とは間隔を空けて対向する。ロータ3は、ステータコア4に対向する。ロータ3は、回転軸AXを中心に回転する。ロータ3の回転軸AXとステータ2の中心軸とは同一である。ロータ3は、シャフト8を介して対象物Eに接続される。対象物Eは、例えば、建設機械の一種であるハイブリッドショベルに搭載されるエンジンである。モータ1は、エンジンによって駆動される発電機として機能する。
【0011】
以下の説明において、回転軸AXと平行な方向を軸方向という。軸方向における一方側を軸方向一方側といい、軸方向一方側の反対側を軸方向他方側という。また、回転軸AXの周囲を周回する方向を周方向という。周方向おける回転方向の一方側を周方向一方側といい、周方向一方側の反対側を周方向他方側という。さらに、回転軸AXの放射方向を径方向という。径方向において中心軸AXから離れる方向側を径方向外側といい、径方向外側の反対側を径方向内側という。
【0012】
ロータ3は、ステータコア4と対向可能に配置される。ロータ3は、ロータホルダ6と、ロータホルダ6に保持されるロータコア7とを有する。ロータホルダ6は、非磁性体で形成される。ロータコア7は、磁性体で形成される。
【0013】
ステータコア4は、コイル5を収容するスロット9を有する。スロット9は、ステータコア4の内周面から径方向外側に凹んだ凹部である。スロット9は、ステータコア4の内周面において周方向に複数配置される。スロット9は、軸方向に延在する。スロット9は、ステータコア4の内周面に配置されている。スロット9は、軸方向一方側及び軸方向他方側と、径方向内側とに向かって開口している。
【0014】
ステータコア4は、周方向において隣接するスロット9の間に配置された、複数のティース10を有する。ティース10は、ステータコア4におけるコイル5が巻回される部分である。ティース10は、コイル5を支持する。ティース10は、コイル5の開口に挿入される。
【0015】
<コイル>
図2は、第一実施形態に係るステータコア及びコイルを模式的に示す平面図である。
図3は、
図2の部分拡大図である。
【0016】
コイル5は、ティース10の周囲に配置される。コイル5は、ティース10に支持される。コイル5は、開口を有する。コイル5の開口に、ティース10が挿入される。
【0017】
コイル5は、コイル本体部51とコイルエンド部52とコイルエンド部53とを含む。コイル5のうちスロット10に収容される部分がコイル本体部51である。コイル5のうちステータコア4から軸方向一方側に突出する部分がコイルエンド部52である。コイル5のうちステータコア4から軸方向他方側に突出する部分がコイルエンド部53である。
【0018】
コイルエンド部52から周方向他方側に延びる部分が渡り線55である。渡り線55は、コイルエンド部52のロータ側から引き出されている。渡り線55は、端子部56に向かうにつれて、バックヨーク側に向かって配置されている。渡り線55は、コイルエンド部52より軸方向一方側に位置する。渡り線55は、周方向に隣接する同じ相の接続対象のコイル5の端子部58まで到達する長さを有する。端子部56は、接続対象のコイル5の端子部58と接続される。渡り線55の先端部には、端子部56が配置されている。
【0019】
コイルエンド部52から周方向一方側に延びる部分が渡り線57である。渡り線57は、コイルエンド部52のバックヨーク側から引き出されている。渡り線57の先端部には、端子部58が配置されている。渡り線57は、コイルエンド部52より軸方向一方側に位置する。
【0020】
コイル5は、例えば、平角線、丸線、又は、板状のセグメント導体等の線状又は帯状の導体により構成される。コイル5は、螺旋状に配置された導体により構成される。コイル5は、1本の導体を螺旋状に巻き付けて構成されてもよいし、複数の導体を螺旋状に接続して構成されてもよい。コイル5の巻付け方法及び接続方法は限定されない。
【0021】
コイル5は、スロット9に集中巻で配置される。コイル5は、一部がスロット9に収容されて、ティース10によって支持される。
【0022】
コイル5は、A相コイル(第1相コイル)5Aと、B相コイル(第2相コイル)5Bと、C相コイル(第3相コイル)5Cとを含む。A相コイル5AとB相コイル5BとC相コイル5Cとの区別を特に要しない場合、コイル5として記載する。
【0023】
周方向において、A相コイル5AとB相コイル5Bとは隣接する。周方向において、B相コイル5BとC相コイル5Cとは隣接する。周方向において、C相コイル5CとA相コイル5Aとは隣接する。A相コイル5Aの周方向一方側の隣にB相コイル5Bが配置される。B相コイル5Bの周方向一方側の隣にC相コイル5Cが配置される。C相コイル5Cの周方向一方側の隣にA相コイル5Aが配置される。
【0024】
渡り線55は、絶縁部材の一例である絶縁紙20の上に配置される。絶縁部材は、例えば、樹脂板でもよい。絶縁部材は、例えば、絶縁被膜を有するコイルエンド52でもよい。
【0025】
図4は、コイルエンド部を模式的に示す概略図である。渡り線55は、絶縁紙20上に位置する部分に孔部551が形成されている。
図4に示す孔部551は、渡り線55が延びる方向に沿って長手方向が配置された長孔である。孔部551は、長孔に限定されない。孔部551は、丸孔、矩形の孔等任意の形状でよい。孔部551の数は限定されない。孔部551は、例えば、複数の丸孔によって形成されていてもよい。
図4に示す渡り線55では、孔部551にワニス等の流動性固定材が含侵する。これにより、ワニスによって渡り線55が絶縁紙20に固定される。
【0026】
絶縁紙20は、電気絶縁性を有するシート状の材料で構成されている。絶縁紙20は、コイル5を絶縁する。より詳しくは、絶縁紙20は、コイル本体部5と、周方向に隣接する他のコイル5とを絶縁する。絶縁紙20は、コイル5のコイルエンド部52と、コイルエンド部52と異なる相の渡り線55とを絶縁する。実施形態では、絶縁紙20の形状は限定されない。
【0027】
<作用>
絶縁紙20によるコイル5の絶縁について説明する。A相コイル5Aを支持するティース10の周方向の他方に隣接して、B相コイル5Bを支持するティース10が位置する。B相コイル5Bを支持するティース10の周方向の他方に隣接して、C相コイル5Cを支持するティース10が位置する。このように、A相コイル5AとB相コイル5BとC相コイル5Cとは、周方向に順番に並んでいる。ここでは、A相コイル5Aを例にして説明するが、B相コイル5B及びC相コイル5Cについても略同様に絶縁されている。
【0028】
一例として、A相コイル5Aを支持するティース10に注目して説明する。A相コイル5Aの渡り線55Aと、B相コイル5Bの渡り線55Bとは、絶縁紙20の曲げ部24によって絶縁されている。B相コイル5Bの渡り線55Bと、C相コイル5Cの渡り線55Cとは、径方向に間隔を空けることによって絶縁されている。A相コイル5Aのコイルエンド部52Aと、B相コイル5Bの渡り線55B及びC相コイル5Cの渡り線55Cとは、絶縁紙20の壁部22によって絶縁されている。
【0029】
<効果>
以上説明したように、実施形態では、コイル5の渡り線55は、絶縁紙20上に位置する部分において、他の部分より表面積が大きく形成されている。実施形態によれば、ワニス等によって絶縁紙20と渡り線55とを固定する際に、渡り線55とワニスとの接触面積を増やすことができる。実施形態によれば、渡り線55と絶縁紙20とをより強固に固定することができる。これにより、本実施形態は、渡り線55の振動を抑えることができる。本実施形態は、部品点数の増加を抑え、渡り線55の振動を抑制することができる。なお、渡り線55を固定する相手部材は、実施形態のような絶縁紙20のみに限らず、他の部材、例えば絶縁被膜を有するコイルエンド52でも良い。
【0030】
実施形態では、コイル5の渡り線55は、絶縁紙20上に位置する部分に、他の部分より表面積が大きい部分が形成されている。実施形態によれば、渡り線55の長手方向の途中において、絶縁紙20と固定しやすい部分が設けられる。実施形態によれば、渡り線55の振動の腹となる部分を、絶縁紙20に固定しやすくすることができる。
【0031】
実施形態では、コイル5の渡り線55は、絶縁紙20上に位置する部分に、孔部551を有する。実施形態によれば、ワニス等によって絶縁紙20と渡り線55とを固定する際に、孔部551にワニス等が侵入するので、渡り線55と絶縁紙20とをより強固に固定することができる。
【0032】
[変形例1]
図5は、コイルエンド部を模式的に示す概略図である。
図6は、
図5の断面図である。
図5に示す渡り線55は、軸方向の断面が台形状である。断面形状の台形は、絶縁紙20と接触する側が短辺であり、絶縁紙20を離間した側が長辺である。
図5、
図6に示す形状では、長辺と短辺との間にワニス等が含侵する。これにより、ワニスによって渡り線55が絶縁紙20に固定される。渡り線55の振動が抑えられる。
【0033】
<効果>
変形例では、コイル5の渡り線55は、絶縁紙20上に位置する部分において、軸方向の断面が絶縁紙に近づくにつれて小さくなるように形成されている。実施形態によれば、ワニス等によって絶縁紙20と渡り線55とを固定する際に、渡り線55の側面と絶縁紙20との間にワニス等が侵入するので、渡り線55と絶縁紙20とをより強固に固定することができる。
【0034】
[変形例2]
図7は、コイルエンド部を模式的に示す概略図である。
図7に示す渡り線55は、渡り線55の幅方向の端部に凹凸が形成されている。
図7に示す例では、渡り線55は、長手方向に沿って間隔を空けて配置された凸部552を有する。
図7に示す例では、形状では、凸部552同士の間の凹部にワニス等が含侵する。これにより、ワニスによって渡り線55が絶縁紙20に固定される。渡り線55の振動が抑えられる。
【0035】
<効果>
変形例では、コイル5の渡り線55は、絶縁紙20上に位置する部分に、幅方向の端部に凸部552が形成されている。実施形態によれば、ワニス等によって絶縁紙20と渡り線55とを固定する際に、渡り線55の側面の凹凸にワニス等が侵入するので、渡り線55と絶縁紙20とをより強固に固定することができる。
【0036】
上述の実施形態において、ロータ3がステータコア4の内側(内周側)に配置され、モータ1がインナロータ側モータであることとした。ロータ3はステータコア4に対向する位置に配置されていればよい。モータ1は、ロータ3がステータコア4の外周側に配置されるアウタロータ型モータでもよいし、ロータ3がステータコア4の内周側及び外周側の両方に配置されるデュアルロータ型モータでもよいし、ロータ3がステータコア4の軸方向側に配置されるアキシャルギャップ型モータでもよい。
【0037】
[変形例3]
変形例では、コイル5の渡り線55は、絶縁紙20上に位置する部分に、物理的又は化学的な表面処理による表面の凹凸が形成され、他の部分より表面積が大きく形成されている。例えば、ブラスト処理などの表面処理を渡り線部55のみ、又は、渡り線部55の絶縁紙20と接する部分のみに施す。
【0038】
<効果>
変形例では、変形例によれば、固着力を増加することができる。
【0039】
なお、上述の実施形態においては、モータ1がスイッチトリラクタンスモータであることとした。モータ1はシンクロナスリラクタンスモータ(Synchronous Reluctance Motor)でもよいし、フラックススイッチングモータ(Flux Switching Motor)でもよいし、永久磁石モータ(Permanent Magnet Motor)でもよいし、誘導モータ(Induction Motor)でもよいし、アキシャルギャップモータでもよいし、リニアアクチュエータでもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…モータ、2…ステータ、3…ロータ、4…ステータコア、5…コイル、5A…A相コイル、5B…B相コイル、5C…C相コイル、5U…U相コイル(第1相コイル)、5V…V相コイル(第2相コイル)、5W…W相コイル(第3相コイル)、6…ロータホルダ、7…ロータコア、8…シャフト、9…スロット、10…ティース、20…絶縁紙(絶縁部材)、…開口、51…コイル本体部、52…コイルエンド部、53…コイルエンド部、55…渡り線、56…端子部、57…渡り線、58…端子部、AX…回転軸、E…対象物。