(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106180
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】穴ピッチ測長補助具
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010346
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆弘
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174EA00
(57)【要約】
【課題】簡易な作業で精度よく穴ピッチを測長可能な穴ピッチ測長補助具を提供する。
【解決手段】長手方向に複数の穴部110が設けられた鉄骨梁100の、複数の穴部110に含まれる2つの規準穴部(前側規準穴部120及び後側規準穴部130)の穴ピッチの測長を補助するための穴ピッチ測長補助具であって、鉄骨梁100に対して所定の相対的な向きで、当該鉄骨梁100に取り付け可能な本体部10と、本体部10に設けられ、前側規準穴部120の中心に対して所定方向にオフセットしたオフセット位置において巻尺M(所定の測定具)が係止可能な被係止部21を有するオフセット部20と、を具備する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に複数の穴部が設けられた長尺部材の、前記複数の穴部に含まれる2つの規準穴部の穴ピッチの測長を補助するための穴ピッチ測長補助具であって、
前記長尺部材に対して所定の相対的な向きで、当該長尺部材に取り付け可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、前記規準穴部の中心に対して所定方向にオフセットしたオフセット位置において所定の測定具が係止可能な被係止部を有するオフセット部と、
を具備する、
穴ピッチ測長補助具。
【請求項2】
前記本体部を前記長尺部材に取り付けるための取付部をさらに具備し、
前記取付部は、
前記本体部に設けられ、前記規準穴部に挿通可能なピンを有する第一ピン部を含み、
前記第一ピン部は、
前記被係止部から前記所定方向に離間した位置に設けられる、
請求項1に記載の穴ピッチ測長補助具。
【請求項3】
前記第一ピン部は、
前記本体部に対して脱着可能に構成され、前記ピンの外径が互いに異なる複数パターンの中から任意に選択された1つが使用される、
請求項2に記載の穴ピッチ測長補助具。
【請求項4】
前記本体部を前記長尺部材に取り付けるための取付部をさらに具備し、
前記取付部は、
前記本体部に設けられ、前記複数の穴部に含まれて前記規準穴部とは異なる他の穴部に挿通可能な第一のピンを有する第二ピン部を含み、
前記第二ピン部の第一のピンが前記他の穴部に挿通されることにより、前記本体部の前記長尺部材に対する相対的な向きが規定される、
請求項1に記載の穴ピッチ測長補助具。
【請求項5】
前記本体部は、
前記長尺部材に取り付けられた状態において、前記長尺部材の長手方向に沿って延びるように形成された長孔を有し、
前記第二ピン部は、
前記長孔に挿通可能な第二のピンを有し、
前記本体部に対して脱着可能に構成されると共に、前記第二ピン部の第二のピンが前記長孔に挿通されることにより当該本体部の前記長手方向に沿った任意の位置に取り付けられる、
請求項4に記載の穴ピッチ測長補助具。
【請求項6】
前記本体部及び前記オフセット部は、2つの前記規準穴部に対応するように一対設けられる、
請求項1から請求項5までの何れか一項に記載の穴ピッチ測長補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の穴部が設けられた長尺部材の穴ピッチの測長を補助するための穴ピッチ測長補助具の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の穴部が設けられた長尺部材を施工する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、長手方向に隣接する一対の鉄骨梁(長尺部材)を互いに接合するための施工方法が開示されている。前記一対の鉄骨梁は、それぞれ長手方向の両端部に複数のボルト孔が形成されており、互いの間に亘るように設けられたプレートをボルト締めすることにより接合される。このような施工方法においては、ボルト孔の穴ピッチが当初予定どおりに設けられる必要があるため、事前に穴ピッチの測長が行われる。
【0004】
ここで、鉄骨梁には、長手方向中途部にリブプレート等の付属品が設けられ、穴ピッチの測長を行う場合に、コンベックスや巻尺等の計測具が干渉する場合がある。このように計測具が干渉されると、測長を行い難く、また測長結果の精度も悪い。
【0005】
これに対して、前記付属品との干渉を回避するため、ボルト孔のセンターをけがきにより位置出し、差金を鉄骨梁の外側へ突出させてシャコ万力で固定し、当該外側に突出した差金に巻尺を引っ掛けることにより測長を行う方法がある。
【0006】
しかし、上述の如き方法においては、差金を正しい位置に固定するための作業が煩雑であり、また差金に引っ掛けた巻尺を張った状態とした場合に、当該差金がずれて正しく測長できない場合があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、簡易な作業で精度よく穴ピッチを測長可能な穴ピッチ測長補助具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、長手方向に複数の穴部が設けられた長尺部材の、前記複数の穴部に含まれる2つの規準穴部の穴ピッチの測長を補助するための穴ピッチ測長補助具であって、前記長尺部材に対して所定の相対的な向きで、当該長尺部材に取り付け可能な本体部と、前記本体部に設けられ、前記規準穴部の中心に対して所定方向にオフセットしたオフセット位置において所定の測定具が係止可能な被係止部を有するオフセット部と、を具備するものである。
【0011】
請求項2においては、前記本体部を前記長尺部材に取り付けるための取付部をさらに具備し、前記取付部は、前記本体部に設けられ、前記規準穴部に挿通可能なピンを有する第一ピン部を含み、前記第一ピン部は、前記被係止部から前記所定方向に離間した位置に設けられるものである。
【0012】
請求項3においては、前記第一ピン部は、前記本体部に対して脱着可能に構成され、前記ピンの外径が互いに異なる複数パターンの中から任意に選択された1つが使用されるものである。
【0013】
請求項4においては、前記本体部を前記長尺部材に取り付けるための取付部をさらに具備し、前記取付部は、前記本体部に設けられ、前記複数の穴部に含まれて前記規準穴部とは異なる他の穴部に挿通可能な第一のピンを有する第二ピン部を含み、前記第二ピン部の第一のピンが前記他の穴部に挿通されることにより、前記本体部の前記長尺部材に対する相対的な向きが規定されるものである。
【0014】
請求項5においては、前記本体部は、前記長尺部材に取り付けられた状態において、前記長尺部材の長手方向に沿って延びるように形成された長孔を有し、前記第二ピン部は、前記長孔に挿通可能な第二のピンを有し、前記本体部に対して脱着可能に構成されると共に、前記第二ピン部の第二のピンが前記長孔に挿通されることにより当該本体部の前記長手方向に沿った任意の位置に取り付けられるものである。
【0015】
請求項6においては、前記本体部及び前記オフセット部は、2つの前記規準穴部に対応するように一対設けられるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
本発明においては、簡易な作業で精度よく穴ピッチを測長できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)本発明の一実施形態に係る測長補助具の本体部及びオフセット部を示した斜視図。(b)同じく、平面図。
【
図2】(a)本発明の一実施形態に係る測長補助具の取付部を示した斜視図。(b)同じく、斜視断面図。(c)同じく、平面図。(d)同じく、側面図。
【
図4】測長補助具の鉄骨梁への取り付け状態を示した分解斜視図。
【
図5】(a)取付部を鉄骨梁へ取り付けた状態を示した斜視図。(b)取付部及び本体部を梁へ取り付けた状態を示した斜視図。
【
図6】測長補助具を用いた穴ピッチの測長の様子を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0020】
以下では、本発明の一実施形態に係る測長補助具1について説明する。なお各図面においては、便宜上、大きさや形状が誇張して示され、また部材の図示が省略される場合がある。
【0021】
図1及び
図2に示す測長補助具1は、作業者による長尺部材の穴ピッチの測長を補助するものである。測長補助具1は、使用される場合、作業者により長尺部材に取り付けられる。以下では、
図7を用いて、まず本実施形態に係る穴ピッチの測長の対象となる長尺部材(以下では「鉄骨梁100」と称する)の構成について簡単に説明する。
【0022】
図7に示した鉄骨梁100は、建物の躯体に使用されるH型鋼である。鉄骨梁100は、ウェブ101及び上下のフランジ102を有する。鉄骨梁100の長手方向(前後方向)の両端部には、穴部110が設けられる。穴部110は、上下のフランジ102を上下方向に貫通する略円形状の開口部である。穴部110は、上下のフランジ102の前後方向の両端部において前後方向及び左右方向に互いに適宜の間隔をあけて複数設けられる。
【0023】
なお、本実施形態において、測長補助具1は、鉄骨梁100の最も前側にある穴部110(以下では「前側規準穴部120」と称する)と最も後側にある穴部110(以下では「後側規準穴部130」と称する)の穴ピッチの測長を補助するものとする。すなわち、本実施形態において穴ピッチとは、前側規準穴部120及び後側規準穴部130の中心間の距離を意味する。
【0024】
測長補助具1は、一対設けられ、鉄骨梁100の前後方向の両端部に取り付けられる(
図6参照)。なお、一対設けられる測長補助具1の構成は互いに同一であるため、以下では特に断りが無ければ、前端部に取り付けられる測長補助具1に着目して説明を行うものとする。測長補助具1は、本体部10、オフセット部20及び取付部30を具備する。
【0025】
図1に示す本体部10は、測長補助具1の主たる構造体である。本体部10は、板面を有する略板状に形成される。なお以下では、説明の便宜上、本体部10は、
図1等に示す向きに(長手方向を前後方向へ向けて)配置されているものとする。本体部10は、平面視で略矩形状に形成される。本体部10は、第一ピン接続孔11及び第二ピン接続長孔12を具備する。
【0026】
第一ピン接続孔11は、後述する第一ピン部40が接続される孔である。第一ピン接続孔11は、本体部10を上下方向に貫通し、平面視で円形状に形成される。第一ピン接続孔11は、本体部10の前側部に形成される。第一ピン接続孔11の中心は、後述するように測長補助具1が鉄骨梁100に取り付けられた場合、平面視で前側規準穴部120の中心と重複する。
【0027】
第二ピン接続長孔12は、後述する第二ピン部50が接続される長孔である。第二ピン接続長孔12は、本体部10を上下方向に貫通し、前後方向に延びるように形成される。第二ピン接続長孔12は、第一ピン接続孔11の後方に形成される。すなわち、第二ピン接続長孔12は、第一ピン接続孔11と左右方向位置が同一に形成される。第二ピン接続長孔12の短手方向の幅(左右方向の幅)は、第一ピン接続孔11の内径と同一に形成される。
【0028】
図1に示すオフセット部20は、本体部10の右端部から右方へ延びた部分である。オフセット部20は、平面視で上底を右方へ向けた略台形状に形成される。オフセット部20は、本体部10と一体的に形成される。オフセット部20は、被係止部21を具備する。
【0029】
被係止部21は、後述するように、計測具が係止される部分である。本実施形態では、被係止部21は、オフセット部20の前端部(前側面)により構成される。被係止部21は、平面視において、本体部10の第二ピン接続長孔12の長手方向に対して直交する方向(左右方向)に延びる直線状に形成される。被係止部21は、第一ピン接続孔11の右方に形成される。被係止部21の前後方向位置は、第一ピン接続孔11の中心の前後方向位置と同一に形成される。すなわち、被係止部21の前後方向位置は、測長補助具1が鉄骨梁100に取り付けられた場合、当該鉄骨梁100の前側規準穴部120の中心の前後方向位置と同一に形成される。
【0030】
こうして、オフセット部20は、鉄骨梁100の前側規準穴部120の中心に対して右方向にオフセットしたオフセット位置(すなわち、平面視において、本体部10の第二ピン接続長孔12や鉄骨梁100の長手方向に対して直交した方向に離れた位置)において、計測具が被係止部21に係止可能に構成される。
【0031】
図2に示す取付部30は、本体部10(測長補助具1)を鉄骨梁100に取り付けるものである。取付部30は、第一ピン部40及び第二ピン部50を具備する。第一ピン部40及び第二ピン部50は、本体部10に対して別体として構成される。第一ピン部40及び第二ピン部50は、本体部10に着脱可能に形成され、測長補助具1を鉄骨梁100に取り付ける場合に、当該本体部10に取り付けられる。なお以下では、説明の便宜上、取付部30は、
図2等に示す向きに配置されているものとする。
【0032】
第一ピン部40は、本体部10の第一ピン接続孔11に接続されるものである。第一ピン部40は、第一平盤部41、第一上側ピン42及び第一下側ピン43を具備する。
【0033】
第一平盤部41は、平盤状に形成される部分である。第一平盤部41は、平面視で正八角形状に形成される。第一平盤部41の外径は、比較的大きく(具体的には、鉄骨梁100の穴部110の内径よりも大きく)形成される。
【0034】
第一上側ピン42は、第一ピン部40の上側に形成される部分である。第一上側ピン42は、略円柱状に形成され、第一平盤部41の上側面の中央から上方へ突出するように設けられる。第一上側ピン42の外径は、第一ピン接続孔11の内径と略同一に形成される。第一上側ピン42の軸心は、第一平盤部41の軸心と重複するように形成される。
【0035】
第一下側ピン43は、第一ピン部40の下側に形成される部分である。第一下側ピン43は、略円柱状に形成され、第一平盤部41の下側面の中央から下方へ突出するように設けられる。第一下側ピン43の外径は、鉄骨梁100の穴部110の内径と略同一に形成される。第一下側ピン43の軸心は、第一平盤部41の軸心と重複するように形成される。
【0036】
このように、第一ピン部40においては、第一平盤部41、第一上側ピン42及び第一下側ピン43が同一軸心上に形成されると共に、これらの軸心(すなわち、第一ピン部40の軸心)が、第一下側ピン43が挿通された鉄骨梁100の穴部110の中心を通るように形成される。
【0037】
第二ピン部50は、本体部10の第二ピン接続長孔12に接続されるものである。本実施形態において第二ピン部50は、第一ピン部40と同様の構成を有する。具体的には、第二ピン部50は、第一ピン部40の第一平盤部41、第一上側ピン42及び第一下側ピン43にそれぞれ対応する、第二円盤部51、第二上側ピン52及び第二下側ピン53を具備する(
図2参照)。
【0038】
なお本実施形態においては、穴ピッチの測長の対象となる梁として鉄骨梁100を例示しているが、測長補助具1は、他の梁の穴ピッチの測長も補助できる。ここで、穴部の内径は梁の種類や用途等によって異なるため、本実施形態に係る第一ピン部40の第一下側ピン43や第二ピン部50の第二下側ピン53の外径と、他の梁の穴部の内径との大きさが大きく異なる場合がある。このような場合、例えば第一ピン部40の第一下側ピン43を他の梁の穴部に挿通しても、第一ピン部40の軸心が他の梁の穴部の中心を通らないこととなる。
【0039】
そこで、取付部30においては、複数パターンの第一ピン部40及び第二ピン部50が準備される。具体的には、第一下側ピン43の外径が互いに異なるような第一ピン部40が複数準備される(例えば
図3に示す第一ピン部40a及び第一ピン部40b参照)。同様に第二下側ピン53の外径が互いに異なるような第二ピン部50が複数準備される(例えば
図3に示す第二ピン部50a及び第二ピン部50b参照)。
【0040】
こうして、複数パターンの中から適宜の第一ピン部40及び第二ピン部50を作業者が選択して使用することによって、他の梁に対して測長補助具1を使用した場合でも、第一ピン部40及び第二ピン部50の軸心を、他の梁の穴部の中心に通らせることができる。なお
図3では2パターンの第一ピン部40及び第二ピン部50を例示したが、3パターン以上設けることもできる。
【0041】
以下では、
図4から
図6を用いて、上述の如く構成された測長補助具1を用いた、作業者による梁の穴ピッチの測長について説明する。なお
図4から
図6においては、測長補助具1が鉄骨梁100の上側のフランジ102の前端部に取り付けられる場面を想定しており、鉄骨梁100の上側のフランジ102以外の他の部材の図示を省略している。
【0042】
図4及び
図5(a)に示すように、まず作業者は、取付部30の第一ピン部40を鉄骨梁100に取り付ける。具体的には、第一ピン部40の第一下側ピン43が、鉄骨梁100の前側規準穴部120に挿通される。第一ピン部40の第一平盤部41の下側面は、鉄骨梁100の上側のフランジ102の上側面と当接される。ここで、上述の如く第一下側ピン43の外径は、鉄骨梁100の穴部110(前側規準穴部120)の内径と略同一に形成される。したがって、第一下側ピン43が前側規準穴部120に挿通されると、当該第一下側ピン43の軸心は平面視で前側規準穴部120の中心と重複する。
【0043】
次に作業者は、取付部30の第二ピン部50を鉄骨梁100に取り付ける。具体的には、第二ピン部50の第二下側ピン53が、前側規準穴部120よりも後方の複数の穴部110から選択された1つの穴部110(以下では「後方穴部121」と称する)に挿通される。作業者は、後方穴部121として、前側規準穴部120と同一の左右方向位置を有する穴部110を選択する。本実施形態においては、前側規準穴部120から2つ後方の穴部110が、後方穴部121として選択される。
【0044】
第二下側ピン53が後方穴部121に挿通されると、第二ピン部50の第二円盤部51の下側面が鉄骨梁100の上側のフランジ102の上側面と当接される。ここで、上述の如く第二下側ピン53の外径は、鉄骨梁100の穴部110(後方穴部121)の内径と略同一に形成される。したがって、第二下側ピン53が後方穴部121に挿通されると、当該第二下側ピン53の軸心は平面視で後方穴部121の中心と重複する。
【0045】
次に作業者は、
図4及び
図5(b)に示すように、本体部10を取付部30(第一ピン部40及び第二ピン部50)に取り付ける。具体的には、本体部10の第一ピン接続孔11が、本体部10に取り付けられた第一ピン部40の第一上側ピン42に上方から挿通される。また本体部10の第二ピン接続長孔12が、本体部10に取り付けられた第二ピン部50の第二上側ピン52に上方から挿通される。
【0046】
ここで、第二ピン部50は、作業者により複数の穴部110から選択されたものである。すなわち、第一ピン部40と第二ピン部50との間の長さは、作業者の後方穴部121の選択に応じて変更されるものであり、事前に設定されるものではない。これに対して、第二ピン部50を受ける第二ピン接続長孔12は、長孔状に形成されるため、第一ピン部40と第二ピン部50との間の長さが変更されようとも、長手方向における適宜の場所において第二ピン部50を受けることができる。これにより、作業者の作業の効率化を図ることができる。
【0047】
こうして、第一ピン部40の第一平盤部41の上側面及び第二ピン部50の第二円盤部51の上側面が、本体部10の下側面と当接されると、本体部10が取付部30に取り付けられる。すなわち、本体部10(測長補助具1)が、取付部30を介して鉄骨梁100に取り付けられる。
【0048】
また本体部10が鉄骨梁100に取り付けられると、当該本体部10の第二ピン接続長孔12の長手方向の向きが、鉄骨梁100の長手方向の向きと同一となるように、当該本体部10の鉄骨梁100に対する相対的な向きが規定される。すなわち、本体部10が鉄骨梁100に取り付けられると、オフセット部20の被係止部21は、右方(第二ピン接続長孔12の長手方向に対して直交する方向)へ延びるように配置される。その結果、被係止部21の先端側(右側)の部分は、前側規準穴部120の中心に対して右方向にオフセットし、平面視において鉄骨梁100の外側に位置することとなる。
【0049】
なお詳細な説明は省略したが、
図6に示すように、鉄骨梁100の後端部においては、前端部に取り付けた状態とは前後方向に向きを反転した状態で、測長補助具1が当該鉄骨梁100に取り付けられる。
【0050】
すなわち、測長補助具1が鉄骨梁100の後端部に取り付けられる場合、第一ピン部40の第一下側ピン43が、鉄骨梁100の後側規準穴部130に挿通される(
図7等参照)。また第二ピン部50の第二下側ピン53は、後側規準穴部130よりも前方の複数の穴部110から選択された1つの穴部110に挿通される。このように、測長補助具1が鉄骨梁100の後端部に取り付けられる場合、本体部10を前後方向に反転させればよいため、鉄骨梁100の前端部及び後端部において同一の本体部10を使用できる(それぞれ別の本体部を準備する必要がない)。
【0051】
こうして、測長補助具1が、鉄骨梁100の前後方向の両端部にそれぞれ取り付けられると、前側の測長補助具1の被係止部21と、後側の測長補助具1の被係止部21と、の間の長さが、前側規準穴部120及び後側規準穴部130の中心間の距離(すなわち、本実施形態において測長の対象となる穴ピッチ)となる。
【0052】
次に作業者は、
図6に示すように、前側の測長補助具1の被係止部21と、後側の測長補助具1の被係止部21と、の間の長さを、所定の計測具(
図6においては、巻尺M)を用いて計測する。その際、作業者は、巻尺Mのフックを前後いずれかの被係止部21(
図6においては、前側の被係止部21)に引っ掛けることにより、単身であっても容易に穴ピッチの測長を行うことができる。
【0053】
このように、本実施形態に係る測長補助具1によれば、例えば差金を正しい位置に固定するための煩雑な作業が生じることがなく、簡易な作業により測長補助具1を鉄骨梁100に取り付けることができる。また測長補助具1は、前後方向に離間した2つのピン部(第一ピン部40及び第二ピン部50)により鉄骨梁100に支持されているため、例えば巻尺Mを張った状態とした場合でも、当該鉄骨梁100に対する相対的な向きが変更されない。よって、例えば鉄骨梁100の長手方向中途部にリブプレート等の付属品が設けられている場合であっても、簡易な作業で精度よく穴ピッチを測長できる。
【0054】
以上の如く、本実施形態に係る測長補助具1においては、
長手方向に複数の穴部110が設けられた鉄骨梁100(長尺部材)の、前記複数の穴部110に含まれる2つの規準穴部(前側規準穴部120及び後側規準穴部130)の穴ピッチの測長を補助するための穴ピッチ測長補助具であって、
前記鉄骨梁100に対して所定の相対的な向きで、当該鉄骨梁100に取り付け可能な本体部10と、
前記本体部10に設けられ、前記前側規準穴部120の中心に対して所定方向(右方向)にオフセットしたオフセット位置において巻尺M(所定の測定具)が係止可能な被係止部21を有するオフセット部20と、
を具備するものである。
【0055】
このような構成により、例えば鉄骨梁100の長手方向中途部にリブプレート等の付属品が設けられている場合であっても、簡易な作業で精度よく穴ピッチを測長できる。
【0056】
また、測長補助具1においては、
前記本体部10を前記鉄骨梁100に取り付けるための取付部30をさらに具備し、
前記取付部30は、
前記本体部10に設けられ、前記前側規準穴部120に挿通可能な第一下側ピン43を有する第一ピン部40を含み、
前記第一ピン部40は、
前記被係止部21から前記所定方向に離間した位置に設けられるものである。
【0057】
このような構成により、前側規準穴部120に第一ピン部40の第一下側ピン43を挿通させることによって、前側規準穴部120の中心を簡易にオフセットすることができる。
【0058】
また、測長補助具1において、
前記第一ピン部40は、
前記本体部10に対して脱着可能に構成され、前記第一下側ピン43の外径が互いに異なる複数パターンの中から任意に選択された1つが使用されるものである。
【0059】
このような構成により、色んな種類の梁に対して測長補助具1を使用できる。
【0060】
また、測長補助具1においては、
前記本体部10を前記鉄骨梁100に取り付けるための取付部30をさらに具備し、
前記取付部30は、
前記本体部10に設けられ、前記複数の穴部110に含まれて前記規準穴部(前側規準穴部120及び後側規準穴部130)とは異なる他の穴部110に挿通可能な第二下側ピン53(第一のピン)を有する第二ピン部50を含み、
前記第二ピン部50の第二下側ピン53(第一のピン)が前記他の穴部110(例えば後方穴部121)に挿通されることにより、前記本体部10の前記鉄骨梁100に対する相対的な向きが規定されるものである。
【0061】
このような構成により、本体部10の鉄骨梁100に対する相対的な向きを容易に規定することができるため、簡易な作業で精度よく穴ピッチを測長できる。
【0062】
また、測長補助具1において、
前記本体部10は、
前記鉄骨梁100に取り付けられた状態において、前記鉄骨梁100の長手方向に沿って延びるように形成された第二ピン接続長孔12(長孔)を有し、
前記第二ピン部50は、
前記第二ピン接続長孔12(長孔)に挿通可能な第二上側ピン52(第二のピン)を有し、
前記本体部10に対して脱着可能に構成されると共に、前記第二ピン部50の第二上側ピン52(第二のピン)が第二ピン接続長孔12に挿通されることにより当該本体部10の前記長手方向に沿った任意の位置に取り付けられるものである。
【0063】
このような構成により、複数の穴部の間隔が異なる複数種類の梁に対して、測長補助具1を容易に取り付けることができる。
【0064】
また、測長補助具1において、
前記本体部10及び前記オフセット部20は、2つの前記規準穴部(前側規準穴部120及び後側規準穴部130)に対応するように一対設けられるものである。
【0065】
このような構成により、簡易な作業で精度よく穴ピッチを測長できる。
【0066】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0067】
例えば本体部10、オフセット部20及び取付部30の形状や大きさは、本実施形態のものに限定されず、任意に変更できる。また取付部30は、本体部10と一体的に(脱着不能に)設けられてもよい。
【0068】
例えば、オフセット部20の被係止部21には、巻尺Mが係止し易いような形状(例えば凹み部)を設けてもよい。またオフセット部20は、第二ピン接続長孔12の長手方向に対して直交する方向に伸び縮みするような構成としてもよい。このような構成にれば、規準穴部が梁の中心側に位置する場合でも、オフセット部20を引き伸ばすことにより穴ピッチの測長が可能となる。
【0069】
また本実施形態では、穴ピッチの測長の対象となる長尺部材として、鉄骨梁を例示したが、これに限定されない。すなわち、穴ピッチの測長の対象となる長尺部材としては、鉄骨梁に限定されず、長尺状の任意の部材を採用できる。例えば、長尺部材は、長手方向中途部において拘束材(コンクリートやモルタルを充填した筒状の鋼板)で挟みこまれたブレース等であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 測長補助具
10 本体部
20 オフセット部
21 被係止部
100 鉄骨梁
110 穴部
120 前側規準穴
130 後側規準穴