(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106181
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ガス検知装置
(51)【国際特許分類】
G01N 30/08 20060101AFI20240731BHJP
G01N 27/12 20060101ALI20240731BHJP
G01N 30/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
G01N30/08 G
G01N27/12 B
G01N30/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010347
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郡司島 造
(72)【発明者】
【氏名】勝野 高志
(72)【発明者】
【氏名】板倉 敏和
(72)【発明者】
【氏名】川端 久美子
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046BG01
(57)【要約】
【課題】気体試料中の目的ガス成分を検知可能なガス検知装置を提供する。
【解決手段】ガス検知装置は、目的ガス成分を濃縮可能な濃縮部と、目的ガス成分の濃度を測定可能な検知部と、を備える。ガス検知装置は、パージガスを検知部へ導入可能な第1ガス経路と、濃縮部から検知部へ至る第2ガス経路と、を備える。ガス検知装置は、第1および第2ガス経路上のガス流量を調整可能な、第1および第2流量調整部を備える。ガス検知装置は、第1および第2流量調整部を独立に制御可能な制御部を備える。制御部は、パージガスが検知部へ流入するとともに、第2ガス経路が遮断されている第1の状態と、第1ガス経路が遮断されているとともに、濃縮部から出力された濃縮ガスが検知部へ流入する第2の状態と、の間で切り替える。制御部は、第1から第2の状態への切り替え時に、パージガスおよび濃縮ガスの検知部への合計流入量を一定に制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体試料中の目的ガス成分を濃縮して放出可能な濃縮部と、
前記目的ガス成分の濃度を測定可能な検知部と、
前記目的ガス成分を含まないパージガスを前記検知部へ導入可能な第1ガス経路と、
前記濃縮部から前記検知部へ至る第2ガス経路と、
前記第1ガス経路上のガス流量を調整可能な第1流量調整部と、
前記第2ガス経路上のガス流量を調整可能な第2流量調整部と、
前記第1流量調整部および前記第2流量調整部の動作を互いに独立に制御可能な制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1ガス経路を介して前記パージガスが前記検知部へ流入しているとともに、前記第2ガス経路が遮断されている第1の状態と、
前記第1ガス経路が遮断されているとともに、前記第2ガス経路を介して前記濃縮部から出力された濃縮ガスが前記検知部へ流入している第2の状態と、
の間で切り替えることが可能に構成されており、
前記制御部は、前記第1の状態から前記第2の状態への切り替え時において、前記パージガスの前記検知部への流入量と前記濃縮ガスの前記検知部への流入量との合計が一定となるように制御する、
ガス検知装置。
【請求項2】
前記ガス検知装置は、前記検知部に流れる全ガス流量を測定可能な流量測定部をさらに備えており、
前記制御部は、前記流量測定部の測定結果に基づいて、前記パージガスの前記検知部への流入量と前記濃縮ガスの前記検知部への流入量との合計が一定となるように制御する、請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の状態から前記第2の状態への切り替え時において、前記パージガスの流入量を連続的または段階的に減少させるとともに、前記濃縮ガスの流入量を連続的または段階的に増加させる、請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項4】
第1流量調整部は、前記第1ガス経路上に配置されている第1ポンプを備えており、
第2流量調整部は、前記第2ガス経路上に配置されている第2ポンプを備えており、
前記制御部は、前記第1の状態から前記第2の状態への切り替え時において、前記第1ポンプの流量を減少させるとともに前記第2ポンプの流量を増加させる、請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項5】
第1流量調整部は、前記第1ガス経路上に配置されている第1バルブを備えており、
第2流量調整部は、前記第2ガス経路上に配置されている第2バルブを備えており、
前記制御部は、前記第1の状態から前記第2の状態への切り替え時において、前記第1バルブの開度を減少させるとともに前記第2バルブの開度を増加させる、請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項6】
前記濃縮部は、濃縮部入口と、前記検知部と接続されている濃縮部出口と、を備えており、
前記ガス検知装置は、
前記濃縮部出口と前記濃縮部入口とを接続する第3ガス経路と、
前記第3ガス経路上に配置されている第3バルブと、
をさらに備えており、
前記制御部は、前記第1の状態において前記第3バルブを開状態に制御し、前記第2の状態において前記第3バルブを閉状態に制御する、請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項7】
前記濃縮部は、前記検知部と接続されている濃縮部出口を備えており、
前記ガス検知装置は、
前記濃縮部を含んでいないループ経路によって構成されている第1閉経路と、
前記濃縮部出口と前記第1閉経路との接続経路上に配置されている第4バルブと、
前記第1閉経路と前記検知部との接続経路上に配置されている第5バルブと、
を備えており、
前記制御部は、
前記第1の状態において、前記第5バルブを閉状態に維持しながら、前記第4バルブを所定時間開状態にした後に閉状態に遷移させ、
前記第2の状態において、前記第5バルブを閉状態から開状態に遷移させる、請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項8】
前記検知部は、前記パージガスおよび前記濃縮ガスが流入する検知部入口と、前記検知部入口から流入したガスが排出される検知部出口と、を備えており、
前記ガス検知装置は、
前記検知部出口とガスを外部へ排気する排出口とを接続する第4ガス経路と、
前記検知部出口と前記検知部入口とを接続する第5ガス経路と、
前記第4ガス経路上に配置されている第6バルブと、
前記第5ガス経路上に配置されている第7バルブと、
をさらに備えており、
前記制御部は、
前記第1の状態において、前記第6バルブを開状態にするとともに前記第7バルブを閉状態にし、
前記第2の状態において、前記第6バルブを閉状態にするとともに前記第7バルブを開状態にする、請求項1に記載のガス検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、気体試料中のガス成分を検知することが可能なガス検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ppbオーダの低濃度ガスを高感度で検出する手法が提案されている。具体的には、濃縮部でガスを濃縮し、高濃度化した濃縮ガスを検知部へ送り、検知部で目的ガス成分の濃度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、濃縮ガスが濃縮部から検知部に送られる際に、検知部のガス流が止まった状態から急に流れ始める。すなわち、目的ガス成分の濃度の検出開始時に、検知部のガス流量が変動する。流量変動によるノイズ成分が目的ガス成分の濃度の測定値に重畳してしまうため、低濃度ガスを高精度で測定することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する一実施形態のガス検知装置は、気体試料中の目的ガス成分を濃縮して放出可能な濃縮部を備える。ガス検知装置は、目的ガス成分の濃度を測定可能な検知部を備える。ガス検知装置は、目的ガス成分を含まないパージガスを検知部へ導入可能な第1ガス経路と、濃縮部から検知部へ至る第2ガス経路と、を備える。ガス検知装置は、第1ガス経路上のガス流量を調整可能な第1流量調整部と、第2ガス経路上のガス流量を調整可能な第2流量調整部と、を備える。ガス検知装置は、第1流量調整部および第2流量調整部の動作を互いに独立に制御可能な制御部を備える。制御部は、第1ガス経路を介してパージガスが検知部へ流入しているとともに、第2ガス経路が遮断されている第1の状態と、第1ガス経路が遮断されているとともに、第2ガス経路を介して濃縮部から出力された濃縮ガスが検知部へ流入している第2の状態と、の間で切り替えることが可能に構成されている。制御部は、第1の状態から第2の状態への切り替え時において、パージガスの検知部への流入量と濃縮ガスの検知部への流入量との合計が一定となるように制御する。
【0006】
上記の構造では、濃縮ガスが濃縮部から検知部に送られる前後において、検知部のガス流の流量を一定に維持することができる。目的ガス成分の濃度測定における、流量変動によるノイズ成分を抑制できる。低濃度ガスを高精度で測定することが可能となる。
【0007】
ガス検知装置は、検知部に流れる全ガス流量を測定可能な流量測定部をさらに備えていてもよい。制御部は、流量測定部の測定結果に基づいて、パージガスの検知部への流入量と濃縮ガスの検知部への流入量との合計が一定となるように制御してもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0008】
制御部は、第1の状態から第2の状態への切り替え時において、パージガスの流入量を連続的または段階的に減少させるとともに、濃縮ガスの流入量を連続的または段階的に増加させてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0009】
第1流量調整部は、第1ガス経路上に配置されている第1ポンプを備えていてもよい。第2流量調整部は、第2ガス経路上に配置されている第2ポンプを備えていてもよい。制御部は、第1の状態から第2の状態への切り替え時において、第1ポンプの流量を減少させるとともに第2ポンプの流量を増加させてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0010】
第1流量調整部は、第1ガス経路上に配置されている第1バルブを備えていてもよい。第2流量調整部は、第2ガス経路上に配置されている第2バルブを備えていてもよい。制御部は、第1の状態から第2の状態への切り替え時において、第1バルブの開度を減少させるとともに第2バルブの開度を増加させてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0011】
濃縮部は、濃縮部入口と、検知部と接続されている濃縮部出口と、を備えていてもよい。ガス検知装置は、濃縮部出口と濃縮部入口とを接続する第3ガス経路と、第3ガス経路上に配置されている第3バルブと、をさらに備えていてもよい。制御部は、第1の状態において第3バルブを開状態に制御し、第2の状態において第3バルブを閉状態に制御してもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0012】
濃縮部は、検知部と接続されている濃縮部出口を備えていてもよい。ガス検知装置は、濃縮部を含んでいないループ経路によって構成されている第1閉経路と、濃縮部出口と第1閉経路との接続経路上に配置されている第4バルブと、第1閉経路と検知部との接続経路上に配置されている第5バルブと、を備えていてもよい。制御部は、第1の状態において、第5バルブを閉状態に維持しながら、第4バルブを所定時間開状態にした後に閉状態に遷移させてもよい。制御部は、第2の状態において、第5バルブを閉状態から開状態に遷移させてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0013】
検知部は、パージガスおよび濃縮ガスが流入する検知部入口と、検知部入口から流入したガスが排出される検知部出口と、を備えていてもよい。ガス検知装置は、検知部出口とガスを外部へ排気する排出口とを接続する第4ガス経路と、検知部出口と検知部入口とを接続する第5ガス経路と、第4ガス経路上に配置されている第6バルブと、第5ガス経路上に配置されている第7バルブと、をさらに備えていてもよい。制御部は、第1の状態において、第6バルブを開状態にするとともに第7バルブを閉状態にしてもよい。制御部は、第2の状態において、第6バルブを閉状態にするとともに第7バルブを開状態にしてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1のガス検出システム1の概略ブロック図である。
【
図2】ガス検出システム1の動作を説明するタイミングチャートである。
【
図6】実施例2のガス検出システム201の概略ブロック図である。
【
図7】ガス検出システム201の動作を説明するタイミングチャートである。
【
図8】実施例3のガス検出システム301の概略ブロック図である。
【
図9】ガス検出システム301の動作概略図である。
【
図10】ガス検出システム301の動作概略図である。
【
図11】ガス検出システム301の動作概略図である。
【
図12】実施例4のガス検出システム401の概略ブロック図である。
【
図13】ガス検出システム401の動作概略図である。
【
図14】ガス検出システム401の動作概略図である。
【
図15】ガス検出システム401の動作概略図である。
【
図16】ガス検出システム401の動作概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0015】
(ガス検出システム1の構成)
図1に、実施例1のガス検出システム1の概略ブロック図を示す。
図1では、信号の流れを点線で記載している。ガス検出システム1は、ガス検知装置2、試料ガス容器3、を備えている。試料ガス容器3は、試料ガスを保持するための容器である。試料ガス容器3は、例えば樹脂フィルム製のパックであってもよい。また試料ガス容器の代わりに直接目的ガスを取り込んでも良い。
【0016】
ガス検知装置2は、濃縮器C1、センサS1、バルブV1、V2、Va、第1ポンプP1、第2ポンプP2、配管R1、配管R2、第1流量調整部F1、第2流量調整部F2、制御部10、算出部11、を主に備えている。濃縮器C1は、吸着材AD1およびヒータHE1を備えている。吸着材AD1は、試料ガス中の目的ガス成分を吸着可能であるとともに、ヒータHE1によって所定温度以上に加熱されることで吸着した目的ガス成分を脱離可能である。これにより、目的ガス成分を濃縮して放出可能とされている。吸着材AD1の材料としては、メソポーラス材料(例:メソポーラスシリカ、メソポーラス有機シリカ、メソポーラスカーボン等)、金属有機構造体(MOF:Metal-Organic Framework)、ゼオライト、活性炭等のミクロポーラス材料、を用いることができる。
【0017】
センサS1は、濃縮器C1から脱離した目的ガス成分の濃度を測定可能なセンサである。センサS1は、目的ガス成分の吸着により抵抗、容量、共振周波数、応力等が変化するタイプを用いることができる。
【0018】
配管R1は、大気吸入口AiとセンサS1の入口S1iとを接続している。大気吸入口Aiは、大気を吸入する部位である。大気は、目的ガス成分を含まないパージガスとして機能する。すなわち配管R1は、パージガスをセンサS1へ導入可能な経路である。第1流量調整部F1は、後述する第1ガス経路GP1上に配置されており、第1ガス経路GP1上のパージガスの流量を調整可能な機構である。第1流量調整部F1の内容は、様々であってよい。本実施例では、第1流量調整部F1は、第1ポンプP1およびバルブV1を備えている。
【0019】
濃縮器C1の入口C1iには、配管R0によって試料ガス容器3が接続されている。濃縮器C1の出口C1oは、配管R2によって、センサS1の入口S1iに接続されている。後述するように、出口C1oからは、濃縮ガスが出力される。すなわち配管R2は、濃縮ガスをセンサS1へ導入可能な経路である。第2流量調整部F2は、後述する第2ガス経路GP2上に配置されており、第2ガス経路GP2上のガス流量を調整可能な機構である。第2流量調整部F2の内容は、様々であってよい。本実施例では、第2流量調整部F2は、第2ポンプP2およびバルブV2を備えている。
【0020】
センサS1の出口S1oには、大気排出口Ao1が接続されている。大気排出口Ao1は、センサS1内部を通過したガスを大気中へ排出する部位である。また、濃縮器C1の出口C1oとバルブV2との接続経路間には、バルブVaを介して大気排出口Ao2が接続されている。大気排出口Ao2は、ガスを外部へ排出する部位である。
【0021】
制御部10は、第1流量調整部F1および第2流量調整部F2の動作を互いに独立に制御可能な部位である。具体的には、制御部10は、バルブV1、V2、Vaの開度を制御するとともに、第1ポンプP1および第2ポンプP2の動作を制御する。算出部11は、試料ガス中の目的ガス成分の濃度を算出する装置である。算出部11には、センサS1の出力値OVが入力される。算出部11は、出力値OVに基づいて、目的ガス成分濃度を算出する。算出部11は、例えばPCなどであってもよい。
【0022】
(ガス検出システム1のガス検出動作)
図2のタイミングチャートおよび
図3~
図5の動作概略図を用いて、ガス検出動作を説明する。なお
図3~
図5の動作概略図では、形成されているガス経路を実線で示し、形成されていないガス経路を破線で示している。また、開状態のバルブを白抜きで示すとともに、閉状態のバルブを黒塗りで示している。また、動作中状態のポンプおよびヒータを白抜きで示すとともに、停止状態のポンプおよびヒータを黒塗りで示している。
【0023】
図2の期間T1では、吸着ステップが行われる。具体的には、時刻t0において制御部10は、バルブV1およびVaを開状態にするとともに、バルブV2を閉状態にする(
図3参照)。これにより、第1ガス経路GP1が形成されているとともに、第2ガス経路GP2が遮断されている、第1の状態となる。第1ガス経路GP1は、大気を供給する大気吸入口Aiを、センサS1に接続している経路である。第1ポンプP1を動作させることで、大気吸入口Aiから大気排出口Ao1まで大気が強制的に流れる。第1ガス経路GP1を介してパージガス(大気)がセンサS1へ流入する。パージガスのセンサS1への流入量IF1は、一定値CVである。また、第2ガス経路GP2は、濃縮器C1からセンサS1へ至る経路である。第2ガス経路GP2は、バルブV2で遮断されている。よって、濃縮器C1から出力される濃縮ガスの、センサS1への流入量IF2は、ゼロである。従って、流入量IF1とIF2との合計流入量TFは、一定値CVとなる。
【0024】
また、試料ガス容器3から濃縮器C1を介して大気排出口Ao2へ至る、ガス経路GPaが形成される。ガス経路GPaは、気体試料を濃縮器C1に供給する試料供給流路である。第2ポンプP2を動作させることで、試料ガス容器3から濃縮器C1を介して大気排出口Ao2まで、試料ガスが強制的に流れる。吸着材AD1の表面を試料ガスに暴露することで、目的ガス成分を選択的に吸着させることができる。
【0025】
図2の期間T2では、離脱ステップが行われる。具体的には、時刻t1において制御部10は、バルブV1を開状態に維持しながら、バルブVaを閉状態に遷移させる。また第2ポンプP2を停止する。これにより、ガス経路GPaが遮断される(
図4参照)。なお、期間T2においても、第1の状態(第1ガス経路GP1が形成されているとともに、第2ガス経路GP2が遮断されている状態)は、維持されている。
【0026】
また、ヒータHE1をオンにし、吸着材AD1の加熱を開始する。吸着材AD1が所定温度以上に加熱されると、目的ガス成分が吸着材AD1から離脱する。離脱した目的ガス成分は、濃縮器C1内に充満する。
【0027】
図2の期間T3では、測定ステップが行われる。具体的には、時刻t2において制御部10は、バルブV1を閉状態に遷移させるとともに、バルブV2を開状態に遷移させる。また、第1ポンプP1を停止させるとともに、第2ポンプP2を動作開始させる。これにより、第1ガス経路GP1が遮断されているとともに、第2ガス経路GP2が形成されている、第2の状態となる(
図5参照)。このとき、濃縮器C1の不図示の吸入口から、N
2などのキャリアガスを供給してもよい。
【0028】
時刻t2における、第1の状態から第2の状態への切り替え時の動作を説明する。時刻t2において、パージガスの流入量IF1は、一定値CVからゼロに瞬時に切り替わる(領域A1参照)。また、濃縮ガスの流入量IF2は、ゼロから一定値CVに瞬時に切り替わる(領域A2参照)。従って、流入量IF1とIF2との合計流入量TFは、時刻t2の前後において一定値CVとなる(矢印Y1および領域A3参照)。
【0029】
濃縮器C1内に充満していた目的ガス成分は、第2ガス経路GP2を介してセンサS1へ運ばれ、センサS1で検知される。センサS1を通過した目的ガス成分は、大気排出口Ao1を介して大気中に排出される。
図2に示すように、センサS1の出力値OVは、時刻t2の経過直後から、測定期間MTの間だけ変化する。これは、濃縮された目的ガス成分を含むガスのかたまりが、測定期間MTの間だけセンサS1を通過するためである。 そして算出部11は、出力値OVのピーク値PVを用いて、目的ガス成分濃度を算出する。
【0030】
(課題および効果)
比較例として、配管R1を備えない、従来構造を説明する。従来構造では、測定ステップが開始される時刻t2以前は、センサS1には、いずれのガスも流入しない。そして時刻t2において、濃縮器C1からセンサS1への濃縮ガスの流入が開始される。従って時刻t2において、センサS1のガス流が、止まった状態から急に流れ始める。すると、センサS1の出力値OV_Cが、変動期間FTの間ドリフトしてしまう(
図2、点線参照)。これは、ガス流量の変動に起因して、センサS1にかかる圧力が変動したり、センサS1周囲の雰囲気とセンサS1間の平衡状態が変化するためである。
【0031】
一般に、変動期間FTは、前述した測定期間MTよりも十分に長い。例えば、変動期間FTが30分であり、測定期間MTが1分などである。また一般に、ドリフト量DVは、ピーク値PVよりも大きい。そして測定期間MTと変動期間FTの開始タイミング(時刻t2)が重複するため、目的ガス成分の濃度の測定値(ピーク値PV)が、流量変動によるノイズ成分(ドリフト量DV)に埋もれてしまう。そのため、目的ガス成分の濃度を正確に測定するのが困難であった。
【0032】
本実施例の技術では、濃縮ガスが濃縮器C1からセンサS1に送られる時刻t2の前後において、センサS1へのガスの流入量を一定に維持することができる(領域A3参照)。流量変動によるノイズ成分(ドリフト量DV)の発生を抑制することができる。従って、目的ガス成分の濃度を正確に測定することが可能となる。
ガス検知装置202は、バルブV1およびV2に代えて、マスフローコントローラ(MFC)211および212を備えている。MFC211および212は、内部に不図示のコントロールバルブを備えている。そしてガスの質量流量の計測値に基づいて、コントロールバルブの開度を調整する。またガス検知装置202は、出口S1oと大気排出口Ao1との接続経路上に、流量センサS200をさらに備えている。流量センサS200は、センサS1に流れる全ガス流量をリアルタイムで測定可能な部位である。流量センサS200の測定結果は、制御部10に入力される。
切り替え期間STにおける流入量IF1およびIF2の変化は、連続的な態様に限られない。例えば、20%ずつ5回に分けて変化させるなど、段階的に変化させてもよい。また、流量センサS200を備えなくてもよい。