(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106189
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】靴用充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240731BHJP
A43B 3/38 20220101ALI20240731BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240731BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20240731BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240731BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H02J7/00 301D
A43B3/38
H02J50/10
H02J50/80
H02J7/02 J
H02J7/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010359
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 由起夫
(72)【発明者】
【氏名】須山 大樹
【テーマコード(参考)】
4F050
5G503
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA36
4F050DA29
4F050GA30
4F050JA30
5G503AA04
5G503BA02
5G503CA08
5G503EA05
5G503GB08
5G503GD04
(57)【要約】
【課題】運転者が着用する靴が備える蓄電池に対して適切に充電を行うことを可能にした靴用充電システムを提供する。
【解決手段】車両2内のフットレスト3に配置され、フットレスト3に近接する運転者の靴10が備える蓄電池23に対して充電を行う第1ワイヤレス充電器4と、車両2のブレーキペダル12及びアクセルペダル5の少なくとも一方に配置され、ブレーキペダル12又はアクセルペダル5に近接する運転者の靴10が備える蓄電池23に対して充電を行う第2ワイヤレス充電器6と、を有するように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内のフットレストに配置され、前記フットレストに近接する運転者の靴が備える第1蓄電池に対して充電を行う第1ワイヤレス充電器と、
車両のブレーキペダル及びアクセルペダルの少なくとも一方に配置され、ブレーキペダル又はアクセルペダルに近接する運転者の靴が備える第2蓄電池に対して充電を行う第2ワイヤレス充電器と、を有する靴用充電システム。
【請求項2】
前記第1蓄電池の充電率と前記第2蓄電池の充電率の差が小さくなるように充電を行う請求項1に記載の靴用充電システム。
【請求項3】
前記第1蓄電池の充電率を特定する情報と前記第2蓄電池の充電率を特定する情報とを取得する充電率取得手段と、
前記第1ワイヤレス充電器と前記第2ワイヤレス充電器の出力を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記充電率取得手段により取得された情報に基づいて、前記第1蓄電池の充電率と前記第2蓄電池の充電率の差が小さくなるように前記第1ワイヤレス充電器と前記第2ワイヤレス充電器の出力を制御する請求項2に記載の靴用充電システム。
【請求項4】
車両内に前記靴が備える靴側通信モジュールと通信可能な通信モジュールを有し、
前記充電率取得手段は、前記靴から前記靴側通信モジュールを介して送信された前記第1蓄電池の充電率を特定する情報と前記第2蓄電池の充電率を特定する情報を前記通信モジュールで受信することにより取得する請求項3に記載の靴用充電システム。
【請求項5】
前記第1ワイヤレス充電器及び前記第2ワイヤレス充電器は、電磁誘導方式の充電器であって、
前記充電率取得手段は、
前記第1蓄電池に充電を行っている状態での前記第1ワイヤレス充電器の回路に印加する電圧と流れる電流を計測するとともに、計測した電圧及び電流から前記第1蓄電池の電圧を推定し、更に推定した前記第1蓄電池の電圧から前記第1蓄電池の充電率を取得し、
前記第2蓄電池に充電を行っている状態での前記第2ワイヤレス充電器の回路に印加する電圧と流れる電流を計測するとともに、計測した電圧及び電流から前記第2蓄電池の電圧を推定し、更に推定した前記第2蓄電池の電圧から前記第2蓄電池の充電率を取得する請求項3に記載の靴用充電システム。
【請求項6】
車両内に前記第1ワイヤレス充電器及び前記第2ワイヤレス充電器に夫々電力を供給する電源を備え、
一の前記電源に対して前記第1ワイヤレス充電器と前記第2ワイヤレス充電器とを並列接続することで前記第1蓄電池の充電率と前記第2蓄電池の充電率の差が小さくなるように充電を行う請求項2に記載の靴用充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴が備える蓄電池に対する充電を行う靴用充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より着用者が靴を履いて歩行する場合に歩行者の歩行をアシストする機能を有する靴について知られている。また、歩行のアシスト機能以外に例えば位置情報を検出する機能、スマートフォンなどの通信端末と通信する機能、発光する機能、足を加温する機能などを有する靴について知られている。これらの各種機能を実現するためには、靴に対して電気で駆動するモータ、ポンプ、発光手段、ヒータ、GPS、通信装置等を配置する一方で、その電源としてニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの蓄電池についても配置する必要がある。
【0003】
また、そのような靴が備える蓄電池を充電する手段として例えば特開2018-131153号公報には、車両のフロアマットに対して送電コイルを設置して電流を流す一方で、乗員が靴を履いた状態でフロアマットの指定の場所に靴を置くと、靴の受電コイルに誘導電流が発生し、その結果、ヒータ部が加熱され靴を履いた乗員の足を温める一方で、ヒータ部で生じた余剰電力を充電器に充電する技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-131153号公報(段落0023-0026)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1のようなワイヤレスの充電システムにおいて蓄電池の充電を適切に行う際には、充電対象となる物を予め決められた充電位置に正確に位置させる(電磁誘導方式であれば送電コイルと受電コイルの軸方向の位置を合わせる)ことが重要となる。特に、靴については右足の靴と左足の靴に夫々蓄電池を備えているので、両足の靴の充電を行う為には右足の靴と左足の靴の2つの靴を夫々充電位置に正確に位置させる必要がある。
【0006】
しかしながら、運転者については少なくともアクセルペダルとブレーキペダルを足で操作しなければならず、アクセルペダルとブレーキペダルを操作する足をフロアマットの決められた位置に固定し続けることはできない。その結果、運転者が着用する靴が備える蓄電池に対して適切に充電を行うことができない問題があった。
【0007】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、運転者が着用する靴が備える蓄電池に対して適切に充電を行うことを可能にした靴用充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本発明に係る靴用充電システムは、車両内のフットレストに配置され、前記フットレストに近接する運転者の靴が備える第1蓄電池に対して充電を行う第1ワイヤレス充電器と、車両のブレーキペダル及びアクセルペダルの少なくとも一方に配置され、ブレーキペダル又はアクセルペダルに近接する運転者の靴が備える第2蓄電池に対して充電を行う第2ワイヤレス充電器と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
前記構成を有する本発明に係る靴用充電システムは、車両内のフットレストと、車両のブレーキペダル及びアクセルペダルの少なくとも一方とに夫々ワイヤレス充電器を配置することで、運転者が着用する左右の靴が備えるそれぞれの蓄電池に対して適切に充電を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る靴用充電システムの概略構成図である。
【
図2】特に車両内のアクセルペダル付近を示した図である。
【
図3】アクセルペダルに運転者の右足が置かれて第2ワイヤレス充電器により右足の靴の充電が行われている状態を示した図である。
【
図4】第1実施形態に係る充電制御処理プログラムのフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る充電制御処理プログラムのフローチャートである。
【
図6】第3実施形態に係る靴用充電システムの回路図である。
【
図7】第3実施形態に係る靴用充電システムで充電を行った場合のSOC値の推移を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る靴用充電システムを具体化した第1乃至第3実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
[第1実施形態]
先ず、第1実施形態に係る靴用充電システム1の概略構成について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は第1実施形態に係る靴用充電システム1の概略構成図である。
図2は特に車両内のアクセルペダル付近を示した図である。尚、以下の説明では右ハンドル車を例に挙げて説明するが、左ハンドル車であっても運転席の位置が異なるだけで基本的に同一の構成を有するものとする。
【0013】
図1に示すように靴用充電システム1は、車両2内のフットレスト3に配置された第1ワイヤレス充電器4と、車両2のアクセルペダル5に配置された第2ワイヤレス充電器6と、第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6を制御する充電器制御部7と、車両2に搭載された車載バッテリ8と、車両2の乗員(以下では特に運転者とする)9が着用する靴10と通信を行う為の車両通信モジュール11と、を基本的に有する。
【0014】
先ず、第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6について以下説明する。ここで、
図2に示すように第1ワイヤレス充電器4は、運転席の足元にあって運転中に乗員9の左足が置かれるフットレスト3に配置される。尚、充電効率を高くするため(送電コイルと受電コイルの位置を近づけるため)に、できる限りフットレスト3の上面に近い位置であって、一般的に左足が位置する可能性が最も高いと予想される位置(例えばフットレスト3の中央付近)に第1ワイヤレス充電器4を配置する。一方、第2ワイヤレス充電器6は、同じく運転席の足元にあって運転中に乗員9の右足が置かれることの多いアクセルペダル5に配置される。具体的にはアクセルペダル5の裏側に配置する。尚、アクセルペダル5は磁場を遮断する虞のない材料を用いる。例えば非磁性材料とする。
【0015】
また、第1実施形態では第2ワイヤレス充電器6をアクセルペダル5に配置することとするが、アクセルペダル5ではなくブレーキペダル12に配置しても良い。更に、アクセルペダル5とブレーキペダル12の両方に夫々配置するようにしても良い。
【0016】
次に、
図3を用いて第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6とそれらの充電器によって充電対象となる靴10の構造についてより詳細に説明する。尚、
図3は特にアクセルペダル5に乗員9の右足が置かれて第2ワイヤレス充電器6により右足の靴10の充電が行われている状態を示している。
図3は第2ワイヤレス充電器6を示しているが、第1ワイヤレス充電器4についても設置される位置が異なるだけで基本的に同一構造を有する。また、
図3は右足の靴10のみを示すが、左足の靴10についても左右対称で同一の構造を有するものとする。
【0017】
ここで、第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6は、電磁誘導方式を採用したワイヤレス充電器であり、内部には送電コイル15と車載バッテリ8の直流電流を交流に変換するインバータ回路16とを有する。尚、第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6の出力(W)は充電器制御部7によって制御可能となっている。具体的には、車載バッテリ8から送電コイル15に流れる電流の量について制御することで充電器の出力を変更することが可能である。
【0018】
そして、送電コイル15にインバータ回路16によって交流に変換された電流が流れると、磁界が発生し、靴10側の受電コイル21がその磁界を受けることで交流が発生し、電力が伝送される。尚、受電コイル21で発生した交流は同じく靴10が備える静流回路22によって直流に変換され、靴10が備える蓄電池23に流れることで蓄電池23が充電される。基本的にはフットレスト3に配置された第1ワイヤレス充電器4によってフットレスト3に近接する左足の靴10が備える蓄電池23(第1蓄電池)が充電され、アクセルペダル5に配置された第2ワイヤレス充電器6によってアクセルペダル5に近接する右足の靴10が備える蓄電池23(第2蓄電池)が充電される。但し、第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6による充電は送電コイル15と受電コイル21が互いに接近した状態でないと適切に行うことができないので、例えば左足がフットレスト3以外の位置にある状態では左足の靴10が備える蓄電池23の充電は困難である。一方、右足がアクセルペダル5から離れた状態では右足の靴10が備える蓄電池23の充電は困難である。
【0019】
従って、乗員9の右足と左足の位置が固定されないことによって、右足の靴10の蓄電池23と左足の靴10の蓄電池23との間で充電率(SOC値)が大きく異なってしまう問題が生じるが、第1実施形態の靴用充電システム1では後述のように充電器制御部7が右足の靴10の蓄電池23と左足の靴10の蓄電池23の充電量を取得して充電率(SOC値)の差が小さくなるように第1ワイヤレス充電器4と第2ワイヤレス充電器6の出力を調整することによりこの問題を解決する。
【0020】
尚、受電コイル21、静流回路22、蓄電池23は例えば靴10のソールの内部に空間を設けて配置することとするが、ソールと中敷き(インソール)との間に配置するようにしても良い。また、靴10は車両2と通信を行う為の靴側通信モジュール24についても備えている。
【0021】
尚、図示は省略するが靴10は着用者が靴を履いて歩行する場合に歩行者の歩行をアシストする機能を備えており、蓄電池23を電源として上記アシスト機能を行う為のソレノイド、電動モータ、ポンプなどのアクチュエータを駆動する。また、蓄電池23は靴側通信モジュール24の電源としても用いられる。更に、発光手段、ヒータ、GPS等を靴10に設けても良く、蓄電池23はそれらの電源として利用することも可能である。
【0022】
一方、
図1に示す充電器制御部7は、靴用充電システム1において特に前述の第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6の制御を行う制御ユニット(MCU、MPU等)であり、演算装置及び制御装置としてのCPU、並びにCPUが各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるRAM、制御用のプログラム等が記録されたROM、ROMから読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ等の内部記憶装置を備えている。尚、充電器制御部7は車両に搭載されたナビゲーション装置の制御部、或いは車両制御ECUの一部であっても良い。
【0023】
第1実施形態では充電器制御部7は、車載バッテリ8から第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6が備える送電コイル15に流れる電流の量について制御することにより、第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6の出力(W)を制御する。尚、充電器制御部7は第1ワイヤレス充電器4と第2ワイヤレス充電器6について個別に出力を調整可能であり、例えば5W、7.5W、10W、15W、0W(充電停止)のいずれかに調整可能とする。
【0024】
また、車載バッテリ8は、車両2の車内の電装品やシステム電源に使われる電源として用いられる蓄電池であり、鉛蓄電池、リチウムイオン電池或いはニッケル水素電池等が該当する。尚、車両2はガソリン車であっても良いし、モータのみを駆動源とする電気自動車であっても良いし、モータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両であっても良い。尚、車両2が電気自動車やハイブリッド車両である場合には、車載バッテリ8は駆動源であるモータに対して電力を供給する駆動用のバッテリとしても良い。
【0025】
一方、車両通信モジュール11は、例えばBluetooth(登録商標)による無線通信を行う為のモジュールである。そして、車両2は、車両通信モジュール11を介してBluetoothによる無線通信により通信可能距離内にある靴10やその他の機器との間で通信を行う。特に第1実施形態では左右の靴10が夫々備える靴側通信モジュール24との間で通信を行うことにより右足の靴10の蓄電池23の充電率(SOC値)と左足の靴10の蓄電池23の充電率(SOC値)をそれぞれ取得可能となっている。尚、通信手段としてはBluetooth以外の通信手段を用いても良い。
【0026】
続いて、前記構成を有する第1実施形態に係る靴用充電システム1において実行する充電制御処理プログラムについて
図4に基づき説明する。
図4は第1実施形態に係る充電制御処理プログラムのフローチャートである。ここで、充電制御処理プログラムは、車両2のACC電源(accessory power supply)がONされた後に実行され、第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6による靴10の蓄電池23に対する充電制御を実施するプログラムである。また、以下の
図4にフローチャートで示されるプログラムは、充電器制御部7が備えているメモリ等に記憶されており、CPU等の演算処理装置により実行される。
【0027】
先ず、ステップ(以下、Sと略記する)1において充電器制御部7は、車両通信モジュール11を動作し、Bluetooth等の通信手段によって車両の乗員が着用する靴10との間で通信可能な状態に接続する。特に、右足の靴10と左足の靴10のそれぞれと通信可能な状態に接続する。尚、靴10が備える靴側通信モジュール24と通信を行う際に必要な識別情報(例えばアドレス等)についてはメモリに記憶されている。
【0028】
続いて、S2において充電器制御部7は、通信可能に接続された左右の靴10から右足の靴10の蓄電池23の充電率(以下、右足SOCという)と左足の靴10の蓄電池23(以下、左足蓄電池という)の充電率(以下、左足SOCという)をそれぞれ識別して取得する。尚、充電率(SOC値)は蓄電池23の満充電に対する残エネルギ量の割合を示す。
【0029】
次に、S3において充電器制御部7は、前記S2で取得した右足SOCと左足SOCとの差が閾値以上か否かを判定する。尚、閾値は例えば10%とするが、その値は適宜変更可能であり、5%や20%としても良い。
【0030】
そして、右足SOCと左足SOCとの差が閾値未満であると判定された場合(S3:NO)には通常の充電制御を行う(S4)。前述したように第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6は電磁誘導方式を採用しており、予め決められた出力(例えば15W)に第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6の充電出力を設定する。その結果、フットレスト3に配置された第1ワイヤレス充電器4によってフットレスト3に近接する左足の靴10が備える蓄電池23が充電され、アクセルペダル5に配置された第2ワイヤレス充電器6によってアクセルペダル5に近接する右足の靴10が備える蓄電池23が充電される。尚、蓄電池23が満充電になったと判定された後には充電を終了する。
【0031】
一方、右足SOCと左足SOCとの差が閾値以上であると判定された場合(S3:YES)にはS5へと移行する。S5では充電器制御部7は、右足SOCと左足SOCの差が小さくなるように充電器の出力を制御して充電を行う。具体的には、例えば右足SOCが左足SOCに比べて少なければ、右足の靴10が備える蓄電池23を充電する第2ワイヤレス充電器6の出力は通常の出力を維持する一方で、左足の靴10が備える蓄電池23を充電する第1ワイヤレス充電器4の出力を通常の出力よりも下げる或いは充電を停止する。一方、左足SOCが右足SOCに比べて少なければ、左足の靴10が備える蓄電池23を充電する第1ワイヤレス充電器4の出力は通常の出力を維持する一方で、右足の靴10が備える蓄電池23を充電する第2ワイヤレス充電器6の出力を通常の出力よりも下げる或いは充電を停止する。
【0032】
尚、充電器制御部7は第1ワイヤレス充電器4と第2ワイヤレス充電器6について個別に出力を調整可能であり、例えば通常の出力を15Wとした場合には、0W(充電停止)、5W、7.5W、10Wのいずれかに出力を下げることが可能である。調整する出力については右足SOCと左足SOCとの差に基づいて設定するのが望ましく、右足SOCと左足SOCとの差が大きい状況ほど出力が小さくなる(左右の出力の差を大きくする)ように制御するのが望ましい。また、上記案ではSOC値の多い蓄電池23を充電する充電器の出力を通常の出力よりも下げることで右足SOCと左足SOCとの差を小さくしているが、逆にSOC値の少ない蓄電池23を充電する充電器の出力を通常の出力よりも上げることで右足SOCと左足SOCとの差を小さくしても良い。
【0033】
尚、S2以降の処理については一定時間間隔で繰り返し行うようにする。その結果、右足SOCと左足SOCとの差が閾値以上である場合には、右足SOCと左足SOCとの差が閾値未満となるまで前記S5による第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6の出力制御が行われることとなり、右足SOCと左足SOCとの差が閾値未満となった後は通常の充電制御が行われることとなる。尚、第1実施形態では右足の靴10が備える蓄電池23と左足の靴10が備える蓄電池23の一方が充電可能な状態になかったとしても(例えば、左足の靴10はフットレスト3に置かれているが、右足の靴10がアクセルペダルに置かれていない場合)、通信により右足SOCと左足SOCを取得できるので、充電可能な方の靴10のみを対象として上記充電制御処理プログラムによる充電が可能となっている。
【0034】
以上詳細に説明した通り、第1実施形態に係る靴用充電システム1によれば、車両2内のフットレスト3に配置され、フットレスト3に近接する乗員9の靴10が備える蓄電池23に対して充電を行う第1ワイヤレス充電器4と、車両2のブレーキペダル12及びアクセルペダル5の少なくとも一方に配置され、ブレーキペダル12又はアクセルペダル5に近接する乗員9の靴10が備える蓄電池23に対して充電を行う第2ワイヤレス充電器6と、を有するので、乗員9が着用する左右の靴10が備えるそれぞれの蓄電池23に対して適切に充電を行うことが可能となる。
また、右足の靴10が備える蓄電池23の充電率と左足の靴10が備える蓄電池23の充電率の差が小さくなるように充電を行う(S4)ので、乗員9の右足と左足の位置が固定されないことによって、右足の靴10の蓄電池23と左足の靴10の蓄電池23との間で充電率に大きな差が生じてしまったとしても、それを修正することが可能となる。
また、充電器制御部7は右足の靴10が備える蓄電池23の充電率を特定する情報と左足の靴10が備える蓄電池23の充電率を特定する情報とを取得し(S2)、第1ワイヤレス充電器4と第2ワイヤレス充電器6の出力を制御することで、右足の靴10が備える蓄電池23の充電率と左足の靴10が備える蓄電池23の充電率の差が小さくなるように修正することが可能となる。
また、車両2内に靴が備える靴側通信モジュール24と通信可能な車両通信モジュール11を有し、充電器制御部7は、靴10から靴側通信モジュール24を介して送信された右足の靴10が備える蓄電池23の充電率を特定する情報と左足の靴10が備える蓄電池23の充電率を特定する情報とを取得し(S2)、第1ワイヤレス充電器4と第2ワイヤレス充電器6の出力を制御することで、右足の靴10が備える蓄電池23の充電率と左足の靴10が備える蓄電池23の充電率の差が小さくなるように修正することが可能となる。
【0035】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る靴用充電システムについて
図5に基づいて説明する。尚、以下の説明において上記
図1乃至
図4の第1実施形態に係る靴用充電システム1の構成と同一符号は、前記第1実施形態に係る靴用充電システム1等の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0036】
この第2実施形態に係る靴用充電システムの概略構成は、第1実施形態に係る靴用充電システム1とほぼ同じ構成である。また、各種制御処理も第1実施形態に係る靴用充電システム1とほぼ同じ制御処理である。
ただし、第1実施形態に係る靴用充電システム1が、車両2内に靴10が備える靴側通信モジュール24と通信可能な車両通信モジュール11を有し、充電器制御部7は靴10側と通信を行うことによって右足SOCと左足SOCを靴から直接取得するのに対して、第2実施形態に係る靴用充電システムは、右足SOCと左足SOCを靴から取得するのではなく第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6の回路に印加する電圧と流れる電流を計測することによって、右足SOCと左足SOCを推測する点で異なる。尚、第2実施形態の靴用充電システムでは、車両通信モジュール11や靴側通信モジュール24については必ずしも必要ではない。
【0037】
以下に第2実施形態に係る靴用充電システムにおいて実行する充電制御処理プログラムについて
図5に基づき説明する。
図5は第2実施形態に係る充電制御処理プログラムのフローチャートである。ここで、充電制御処理プログラムは、車両2のACC電源(accessory power supply)がONされた後に実行され、第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6による靴10の蓄電池23に対する充電制御を実施するプログラムである。また、以下の
図5にフローチャートで示されるプログラムは、充電器制御部7が備えているメモリ等に記憶されており、CPUにより実行される。
【0038】
先ず、S11において充電器制御部7は、靴10が備える蓄電池23に充電を行っている状態での第1ワイヤレス充電器4の回路に印加する電圧と流れる電流を計測する。同じく靴10が備える蓄電池23に充電を行っている状態での第2ワイヤレス充電器6の回路に印加する電圧と流れる電流についても計測する。尚、第2実施形態では靴10が備える蓄電池23に充電を行っていない状態では右足SOCと左足SOCを推測することができないので、第1ワイヤレス充電器4と第2ワイヤレス充電器がいずれも靴10が備える蓄電池23の充電を行っている状態であることを前提とする。
【0039】
次に、S12において充電器制御部7は、前記S11で計測した第1ワイヤレス充電器4の回路の電圧及び電流から、第1ワイヤレス充電器4で充電を行っている左足の靴10が備える蓄電池23の電圧を推定する。具体的には以下の式(1)により推定する。
V1=VL-R×I1・・・・(1)
ここで、V1は第1ワイヤレス充電器4の回路に印加する電圧、I1は第1ワイヤレス充電器4の回路に流れる電流、Rは充電器或いは蓄電池固有の値、VLが左足の靴10が備える蓄電池23の電圧である。
【0040】
同じく、前記S12において充電器制御部7は、前記S11で計測した第2ワイヤレス充電器6の回路の電圧及び電流から、第2ワイヤレス充電器6で充電を行っている右足の靴10が備える蓄電池23の電圧を推定する。具体的には以下の式(2)により推定する。
V2=VR-R×I2・・・・(2)
ここで、V2は第2ワイヤレス充電器6の回路に印加する電圧、I2は第2ワイヤレス充電器6の回路に流れる電流、Rは充電器或いは蓄電池固有の値、VRが右足の靴10が備える蓄電池23の電圧である。
【0041】
続いて、S13において充電器制御部7は、前記S12で推定した左足の靴10が備える蓄電池23の電圧VLから左足SOCを推測する。尚、蓄電池23の電圧からSOC値を特定する方法としては、両者の相関関係から特定するOCV法が一般的に知られている。但し、OCV法以外に電流積算法を用いてSOC値を特定しても良い。同様にして、前記S12で推定した右足の靴10が備える蓄電池23の電圧VRから右足SOCについても推測する。
【0042】
その後、S14において充電器制御部7は、前記S13で推測された右足SOCと左足SOCとの差が閾値以上か否かを判定する。S14以降の処理については第1実施形態の充電制御処理プログラム(
図4)のS3以降と同様の処理であるので説明は省略する。
【0043】
尚、S11以降の処理については一定時間間隔で繰り返し行うようにする。その結果、右足SOCと左足SOCとの差が閾値以上である場合には、右足SOCと左足SOCとの差が閾値未満となるまでS16による第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6の出力制御が行われることとなり、右足SOCと左足SOCとの差が閾値未満となった後は通常の充電制御が行われることとなる。
【0044】
以上詳細に説明した通り、第2実施形態に係る靴用充電システムによれば、車両2内のフットレスト3に配置され、フットレスト3に近接する乗員9の靴10が備える蓄電池23に対して充電を行う第1ワイヤレス充電器4と、車両2のブレーキペダル12及びアクセルペダル5の少なくとも一方に配置され、ブレーキペダル12又はアクセルペダル5に近接する乗員9の靴10が備える蓄電池23に対して充電を行う第2ワイヤレス充電器6と、を有するので、乗員9が着用する左右の靴10が備えるそれぞれの蓄電池23に対して適切に充電を行うことが可能となる。
また、右足の靴10が備える蓄電池23の充電率と左足の靴10が備える蓄電池23の充電率の差が小さくなるように充電を行う(S15)ので、乗員9の右足と左足の位置が固定されないことによって、右足の靴10の蓄電池23と左足の靴10の蓄電池23との間で充電率に大きな差が生じてしまったとしても、それを修正することが可能となる。
また、充電器制御部7は右足の靴10が備える蓄電池23の充電率を特定する情報と左足の靴10が備える蓄電池23の充電率を特定する情報とを取得し(S11~S13)、第1ワイヤレス充電器4と第2ワイヤレス充電器6の出力を制御することで、右足の靴10が備える蓄電池23の充電率と左足の靴10が備える蓄電池23の充電率の差が小さくなるように修正することが可能となる。
また、第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6は電磁誘導方式の充電器であって、蓄電池23に充電を行っている状態での第1ワイヤレス充電器4の回路に印加する電圧と流れる電流を計測するとともに、計測した電圧及び電流から蓄電池23の電圧を推定し(S12)、更に推定した蓄電池23の電圧から左足の靴10が備える蓄電池23の充電率を取得し(S13)、同じく蓄電池23に充電を行っている状態での第2ワイヤレス充電器6の回路に印加する電圧と流れる電流を計測するとともに、計測した電圧及び電流から蓄電池23の電圧を推定し(S12)、更に推定した蓄電池23の電圧から右足の靴10が備える蓄電池23の充電率を取得し(S13)、取得した充電率に基づいて第1ワイヤレス充電器4と第2ワイヤレス充電器6の出力を制御することで、右足の靴10が備える蓄電池23の充電率と左足の靴10が備える蓄電池23の充電率の差が小さくなるように修正することが可能となる。
【0045】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る靴用充電システムについて
図6及び
図7に基づいて説明する。尚、以下の説明において上記
図1乃至
図4の第1実施形態に係る靴用充電システム1の構成と同一符号は、前記第1実施形態に係る靴用充電システム1等の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0046】
この第3実施形態に係る靴用充電システムの概略構成は、第1実施形態に係る靴用充電システム1とほぼ同じ構成である。また、各種制御処理も第1実施形態に係る靴用充電システム1とほぼ同じ制御処理である。
ただし、第1実施形態に係る靴用充電システム1が、制御ユニットである充電器制御部7が第1ワイヤレス充電器4と第2ワイヤレス充電器6の出力を制御することで左右の靴の蓄電池の充電率の差が小さくなるように充電を行うのに対して、第3実施形態に係る靴用充電システムは、制御ユニットによる制御を行うのではなく一の車載バッテリ8に対して第1ワイヤレス充電器4と第2ワイヤレス充電器6とを並列につなぐことで第1ワイヤレス充電器4と第2ワイヤレス充電器6の出力を調整し、左右の靴の蓄電池の充電率の差が小さくなるように充電を行う点で異なる。尚、第3実施形態の靴用充電システムでは、充電器制御部7、車両通信モジュール11、靴側通信モジュール24については必ずしも必要ではない。
【0047】
図6は第3実施形態に係る靴用充電システムの簡略化した回路図を示す。
図6に示すように第3実施形態に係る靴用充電システムでは、一の車載バッテリ8に対して第1ワイヤレス充電器4と第2ワイヤレス充電器6とを並列に接続している。その結果、右足SOCと左足SOCの差が小さくなるように充電器の出力が自動で調整されて充電が行われる。具体的には、各充電器が並列に接続されているので第1ワイヤレス充電器4の回路に印加される電圧V
1と第2ワイヤレス充電器6の回路に印加される電圧V
2は常に同じ値となるが、第1ワイヤレス充電器4の回路に流れる電流I
1と第2ワイヤレス充電器6の回路に流れる電流I
2については異なる値となり得る。
【0048】
ここで、充電対象となる蓄電池23のSOC値が高くなる(蓄電池23の電圧V
L又はV
Rが高くなる)ほど、その蓄電池23を充電するためのワイヤレス充電器の回路に流れる電流が小さくなることから充電器の出力も下がることとなる。即ち左足SOCが満充電に近づくほど、左足の靴10が備える蓄電池23を充電する第1ワイヤレス充電器4の回路に流れる電流I
1が少なくなり出力は徐々に低下する。一方、右足SOCが満充電に近づくほど、右足の靴10が備える蓄電池23を充電する第2ワイヤレス充電器6の回路に流れる電流I
2が少なくなり出力は徐々に低下する。その結果、
図7に示すように充電を開始する時点の初期状態において右足SOCと左足SOCの差が大きかったとしても、充電率の高い方よりも少ない方が単位時間当たりの充電量は逆に多くなるので、第1実施形態のような制御ユニットによる出力制御を行わなくとも充電を継続するに従って満充電に近づきつつ徐々に互いの差は小さくなることとなる。
【0049】
但し、第3実施形態に係る靴用充電システム1では、
図7に示すように左右の靴の蓄電池の充電率の差が小さくなるように充電を行う為には、第1実施形態とは異なり少なくとも右足の靴10が備える蓄電池23と左足の靴10が備える蓄電池23とを同時に充電する必要がある。
【0050】
以上詳細に説明した通り、第3実施形態に係る靴用充電システムによれば、車両2内のフットレスト3に配置され、フットレスト3に近接する乗員9の靴10が備える蓄電池23に対して充電を行う第1ワイヤレス充電器4と、車両2のブレーキペダル12及びアクセルペダル5の少なくとも一方に配置され、ブレーキペダル12又はアクセルペダル5に近接する乗員9の靴10が備える蓄電池23に対して充電を行う第2ワイヤレス充電器6と、を有するので、乗員9が着用する左右の靴10が備えるそれぞれの蓄電池23に対して適切に充電を行うことが可能となる。
また、右足の靴10が備える蓄電池23の充電率と左足の靴10が備える蓄電池23の充電率の差が小さくなるように充電を行うので、乗員9の右足と左足の位置が固定されないことによって、右足の靴10の蓄電池23と左足の靴10の蓄電池23との間で充電率に大きな差が生じてしまったとしても、それを修正することが可能となる。
また、車両内に第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6に夫々電力を供給する車載バッテリ8を備え、一の車載バッテリ8に対して第1ワイヤレス充電器4と第2ワイヤレス充電器6とを並列接続することで、右足の靴10が備える蓄電池23の充電率と左足の靴10が備える蓄電池23の充電率の差が小さくなるように自動で修正することが可能となる。
【0051】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば第1乃至第3実施形態では第2ワイヤレス充電器6をアクセルペダル5に配置しているが、ブレーキペダル12に配置しても良い。また、アクセルペダル5とブレーキペダル12の両方に配置しても良い。
【0052】
また、第1乃至第3実施形態では第1ワイヤレス充電器4及び第2ワイヤレス充電器6は電磁誘導方式のワイヤレス充電器としているが、電磁誘導方式以外としても良い。例えば、電界結合方式、電磁波方式などがある。
【0053】
また、上述した第1実施形態の靴用充電システム、第2実施形態の靴用充電システム及び第3実施形態の靴用充電システムについては組み合わせて実施することも可能である。例えば、
図6に示すような回路を備えた靴用充電システムにおいて
図4或いは
図5に示す充電制御処理プログラムを実行することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…靴用充電システム、2…車両、3…フットレスト、4…第1ワイヤレス充電器、5…アクセルペダル、6…第2ワイヤレス充電器、7…充電器制御部、8…車載バッテリ、9…乗員(運転者)、10…靴、11…車両通信モジュール、12…ブレーキペダル、23…靴が備える蓄電池