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特開2024-106196液体状アニオン性凝集剤、液体状アニオン性凝集剤の製造方法、多糖類を含有するアニオン性凝集剤の保存方法、及び処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106196
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】液体状アニオン性凝集剤、液体状アニオン性凝集剤の製造方法、多糖類を含有するアニオン性凝集剤の保存方法、及び処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20240731BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20240731BHJP
   C02F 1/56 20230101ALI20240731BHJP
   C02F 11/148 20190101ALI20240731BHJP
【FI】
B01D21/01 110
B01D21/01 101A
C02F1/52 Z ZAB
C02F1/56 Z
C02F11/148
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010377
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000193508
【氏名又は名称】水道機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】卯松 幸樹
【テーマコード(参考)】
4D015
4D059
【Fターム(参考)】
4D015BA02
4D015BA08
4D015BA11
4D015BB12
4D015CA01
4D015CA10
4D015CA11
4D015CA14
4D015DA04
4D015DA13
4D015DA16
4D015DA17
4D015DA19
4D015DA22
4D015DA24
4D015DA40
4D015DB14
4D015DB15
4D015DB31
4D015DB32
4D015DB33
4D015DC02
4D015EA04
4D015EA32
4D015EA39
4D059AA03
4D059BE55
4D059BE57
4D059BE59
4D059DA01
4D059DA05
4D059DA09
4D059DA16
4D059DA23
4D059DA24
4D059DB16
4D059DB18
4D059DB19
4D059DB20
4D059DB25
4D059DB26
4D059DB29
4D059EB11
(57)【要約】
【課題】ポリアクリルアミド系の凝集剤の使用を避けることができ、液体状のまま処理性能を保ち、長期間保存することが可能であり、給粉機や高分子凝集剤の溶解装置といった設備が無いところでも使用することができる液体状アニオン性凝集剤及びその製造方法、多糖類を含有するアニオン性凝集剤の保存方法、並びに液体状アニオン性凝集剤を用いた処理方法の提供。
【解決手段】多糖類と、無機電解質とを含む液体状アニオン性凝集剤であって、前記多糖類におけるキサンタンガムの割合が5質量%以上であり、前記無機電解質の濃度が、0.05mol/L以上6.2mol/L未満である液体状アニオン性凝集剤である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類と、無機電解質とを含む液体状アニオン性凝集剤であって、
前記多糖類におけるキサンタンガムの割合が5質量%以上であり、
前記無機電解質の濃度が、0.05mol/L以上6.2mol/L未満であることを特徴とする液体状アニオン性凝集剤。
【請求項2】
前記多糖類が、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、ジェランガム、及びタマリンドガムからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の液体状アニオン性凝集剤。
【請求項3】
前記無機電解質が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1から2のいずれかに記載の液体状アニオン性凝集剤。
【請求項4】
前記多糖類の濃度が、0.01~1質量%である請求項1から2のいずれかに記載の液体状アニオン性凝集剤。
【請求項5】
水浄化剤である請求項1から2のいずれかに記載の液体状アニオン性凝集剤。
【請求項6】
多糖類と、無機電解質とを含む液体状アニオン性凝集剤の製造方法であって、
前記多糖類と、前記無機電解質とを含有する溶液を調製することを含み、
前記多糖類におけるキサンタンガムの割合が5質量%以上であり、
前記無機電解質の濃度が、0.05mol/L以上6.2mol/L未満であることを特徴とする液体状アニオン性凝集剤の製造方法。
【請求項7】
多糖類を含有するアニオン性凝集剤の保存方法であって、
前記多糖類を含有するアニオン性凝集剤と、無機電解質とを含有する溶液を調製することを含み、
前記多糖類におけるキサンタンガムの割合が5質量%以上であり、
前記無機電解質の濃度が、0.05mol/L以上6.2mol/L未満であることを特徴とする多糖類を含有するアニオン性凝集剤の保存方法。
【請求項8】
請求項1から2のいずれかに記載の液体状アニオン性凝集剤を被処理物に添加し、前記被処理物を処理することを含むことを特徴とする処理方法。
【請求項9】
更に、無機凝集剤及びカチオン性凝集剤の少なくともいずれかを前記被処理物に添加する請求項8に記載の処理方法。
【請求項10】
前記被処理物が、浄水処理のろ過池の洗浄排水、汚泥、及び工場排水からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項8に記載の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体状アニオン性凝集剤、液体状アニオン性凝集剤の製造方法、多糖類を含有するアニオン性凝集剤の保存方法、及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市下水、農業集落排水、工場排水などから発生する廃水、土木・建築濁水、河川水、池水といった濁水は、鉱物質系微細粒子といった無機物を含有しており、このような汚水を処理する方法として、無機凝集剤及び有機合成高分子凝集剤を、単独で使用して又は併用して、被処理水中の無機物を凝集させて分離する方法が用いられている。
【0003】
この方法の一例では、スラリー状の被処理水に、無機凝集剤と有機合成高分子凝集剤を添加して固形分を凝集沈降させ、沈降させた凝集物と上澄み水とを分離する。
また、この方法の他の一例では、凝集混和槽において、被処理水に無機凝集剤を添加し、被処理水中の懸濁物質を取り込んだ微細凝集フロック(マイクロフロック)を形成する。次に、マイクロフロックを含む被処理水をフロック形成槽に移した後、フロック形成槽において、被処理水に有機合成高分子凝集剤を添加し、マイクロフロックの形成を促進させる。
【0004】
これらの方法において、通常、無機凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム(以下、「PAC」と称することがある。)、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄などが使用されている。有機合成高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミドの部分加水分解物などが使用されている。
【0005】
しかし、ポリアクリルアミド系の凝集剤は、残留するアクリルアミドモノマーの毒性の問題から、自然界で使用することは好ましくない。特に、湖沼のような閉鎖系水域や、下流に上水道の取り入れ口のあるような河川でのポリアクリルアミド系の凝集剤の使用は、できるだけ避けることが望ましい。
【0006】
これまでに、ポリアクリルアミド系の凝集剤の使用を避ける技術として、例えば、ガラクトマンナンと、前記ガラクトマンナン以外の多糖類とを含有し、所定の嵩密度、粒子径D50及びD10を有するアニオン性凝集剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-054992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の技術によれば、ポリアクリルアミド系の凝集剤を用いない場合でも凝集性能に優れるアニオン性凝集剤を提供することができる。一方で、例えば、浄水場ではPAC単体での排水処理が主流となっているため、給粉機や高分子凝集剤の溶解装置などが無いことが多く、そのような設備が無くても使用することができるアニオン性凝集剤の提供が求められている。また、給粉機や高分子凝集剤の溶解装置などが無い場合には、アニオン性凝集剤を液体状の製品として提供することが考えられるが、乾燥している粉体と比較して、製品の保存性が懸念される。
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ポリアクリルアミド系の凝集剤の使用を避けることができ、液体状のまま処理性能を保ち、長期間保存することが可能であり、給粉機や高分子凝集剤の溶解装置といった設備が無いところでも使用することができる液体状アニオン性凝集剤及びその製造方法、多糖類を含有するアニオン性凝集剤の保存方法、並びに液体状アニオン性凝集剤を用いた処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、多糖類におけるキサンタンガムの割合を5質量%以上とし、無機電解質の濃度を、0.05mol/L以上6.2mol/L未満とした液体状アニオン性凝集剤とすることにより、ポリアクリルアミド系の高分子凝集剤を用いない場合でも優れた処理性能を有し、液体状のまま処理性能を保ち、長期間保存することが可能であり、給粉機や高分子凝集剤の溶解装置といった設備が無いところでも使用することができることを知見した。
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 多糖類と、無機電解質とを含む液体状アニオン性凝集剤であって、
前記多糖類におけるキサンタンガムの割合が5質量%以上であり、
前記無機電解質の濃度が、0.05mol/L以上6.2mol/L未満であることを特徴とする液体状アニオン性凝集剤である。
<2> 前記多糖類が、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、ジェランガム、及びタマリンドガムからなる群から選択される少なくとも1種を含む前記<1>に記載の液体状アニオン性凝集剤である。
<3> 前記無機電解質が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む前記<1>から<2>のいずれかに記載の液体状アニオン性凝集剤である。
<4> 前記多糖類の濃度が、0.01~1質量%である前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体状アニオン性凝集剤である。
<5> 水浄化剤である前記<1>から<4>のいずれかに記載の液体状アニオン性凝集剤である。
<6> 多糖類と、無機電解質とを含む液体状アニオン性凝集剤の製造方法であって、
前記多糖類と、前記無機電解質とを含有する溶液を調製することを含み、
前記多糖類におけるキサンタンガムの割合が5質量%以上であり、
前記無機電解質の濃度が、0.05mol/L以上6.2mol/L未満であることを特徴とする液体状アニオン性凝集剤の製造方法である。
<7> 多糖類を含有するアニオン性凝集剤の保存方法であって、
前記多糖類を含有するアニオン性凝集剤と、無機電解質とを含有する溶液を調製することを含み、
前記多糖類におけるキサンタンガムの割合が5質量%以上であり、
前記無機電解質の濃度が、0.05mol/L以上6.2mol/L未満であることを特徴とする多糖類を含有するアニオン性凝集剤の保存方法である。
<8> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の液体状アニオン性凝集剤を被処理物に添加し、前記被処理物を処理することを含むことを特徴とする処理方法である。
<9> 更に、無機凝集剤及びカチオン性凝集剤の少なくともいずれかを前記被処理物に添加する前記<8>に記載の処理方法である。
<10> 前記被処理物が、浄水処理のろ過池の洗浄排水、汚泥、及び工場排水からなる群から選択される少なくとも1種を含む前記<8>から<9>のいずれかに記載の処理方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、ポリアクリルアミド系の凝集剤の使用を避けることができ、液体状のまま処理性能を保ち、長期間保存することが可能であり、給粉機や高分子凝集剤の溶解装置といった設備が無いところでも使用することができる液体状アニオン性凝集剤及びその製造方法、多糖類を含有するアニオン性凝集剤の保存方法、並びに液体状アニオン性凝集剤を用いた処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明による浄水処理の一例を説明するための図である。
図2図2は、本発明による排水及び汚泥処理の一例を説明するための図である。
図3図3は、本発明による工場排水処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(液体状アニオン性凝集剤)
本発明の液体状アニオン性凝集剤(以下、「凝集剤」と称することもある。)は、多糖類と、無機電解質とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0015】
<多糖類>
前記液体状アニオン性凝集剤は、前記多糖類として、キサンタンガムを少なくとも含み、必要に応じて更にキサンタンガム以外の多糖類を含む。
【0016】
-キサンタンガム-
前記キサンタンガムは、グルコース2分子、マンノース2分子、グルクロン酸の繰り返し単位からなる。前記キサンタンガムには、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩も含まれる。前記キサンタンガムは、一般的に、トウモロコシなどの澱粉を細菌Xanthomonas campestrisにより発酵させて作られる。
【0017】
前記キサンタンガムは、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0018】
前記多糖類におけるキサンタンガムの割合としては、5質量%以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記キサンタンガムの割合が5質量%未満であると、保存中に多糖類が熱変性してしまうことがある。一方、前記好ましい範囲内であると、保存後の処理性能がより優れた液体状アニオン性凝集剤とすることができる点で、有利である。なお、前記多糖類は、キサンタンガムのみからなるものであってもよい。
【0019】
-キサンタンガム以外の多糖類-
前記キサンタンガム以外の多糖類としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、ジェランガム、タマリンドガム(「タマリンドシードガム」と称することもある。)、フェヌグリークガム、タラガム、ローカストビーンガムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記キサンタンガム以外の多糖類の中でも、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、ジェランガム、及びタマリンドガムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0020】
前記キサンタンガム以外の多糖類は、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0021】
前記多糖類におけるキサンタンガム以外の多糖類の割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0022】
前記多糖類の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
前記多糖類の液体状アニオン性凝集剤における濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01~1質量%であることが好ましく、0.03~0.2質量%であることがより好ましく、0.05~0.1質量%であることが特に好ましい。前記好ましい範囲内であると、液中分散性および凝集剤供給効率の点で、有利である。
【0024】
<無機電解質>
前記無機電解質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機電解質の中でも、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが、保存後の処理性能がより優れる点で、好ましい。
【0025】
前記無機電解質は、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0026】
前記無機電解質の液体状アニオン性凝集剤における濃度としては、0.05mol/L以上6.2mol/L未満であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記無機電解質の液体状アニオン性凝集剤における濃度が、0.05mol/L未満であると保存中における多糖類の熱変性を抑制することができないことがあり、6.2mol/Lを超えると無機電解質が液体中に析出してしまうことがある。一方、前記好ましい範囲内であると、保存後の処理性能がより優れた液体状アニオン性凝集剤とすることができる点で、有利である。前記無機電解質の液体状アニオン性凝集剤における濃度は、日本水道協会規格に記載の水質基準項目などを考慮して、0.05mol/L以上6.2mol/L未満の範囲内で適宜調整することができる。
【0027】
<比>
前記多糖類の濃度(質量%)(A)と、前記無機電解質の濃度(mol/L)(B)との比(B/A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05~600が好ましく、0.25~13がより好ましい。前記比(B/A)が好ましい範囲外であると、電解質成分の析出や、多糖類成分のゲル化が発生することがある。一方、前記好ましい範囲内であると、保存後の処理性能がより優れた液体状アニオン性凝集剤とすることができる点で、有利である。
【0028】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,3-ブタンジオールやフェノキシエタノールなどの防腐・防菌剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
前記その他の成分の液体状アニオン性凝集剤における濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記液体状アニオン性凝集剤は、前記その他の成分を含まないものであってもよい。
【0029】
前記液体状アニオン性凝集剤における溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水とアルコールの混合溶媒、水と酸の混合溶媒、水と塩基の混合溶媒などが挙げられる。
【0030】
<導電率>
前記液体状アニオン性凝集剤の導電率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記多糖類を0.2質量%の濃度で含有する液体状アニオン性凝集剤とした場合の導電率としては、300~20,000mS/mとすることができる。
前記導電率は、25℃における導電率のことをいい、導電率計を用いて測定することができる。
【0031】
<粘度>
前記液体状アニオン性凝集剤の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記多糖類を0.2質量%の濃度で含有する液体状アニオン性凝集剤とした場合の粘度としては、10~300mPa・sとすることができる。
前記粘度は、25℃においてB型粘度計(ブルックフィールド形回転粘度計)(回転速度:30rpm)を用いて測定される粘度でのことをいう。
【0032】
前記液体状アニオン性凝集剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する本発明の液体状アニオン性凝集剤の製造方法により製造することができる。
【0033】
前記液体状アニオン性凝集剤は、ポリアクリルアミド系の凝集剤の使用を避けることができ、液体状のまま処理性能を保ち、保存時の気温上昇などによる処理性能の悪化も抑制することができ、長期間保存することが可能である。また、給粉機や高分子凝集剤の溶解装置といった設備が無いところでも使用することができる。更に、豪雨時などの急激な濁度上昇が発生した際の対応も容易となる。
そのため、前記液体状アニオン性凝集剤は、ノニオン性またはアニオン性高分子凝集剤を使用する排水処理(例えば、汚濁物質としてフッ素、浮遊物質(SS)、重金属、シアン、リン等を含む工場排水処理等)を含む水の浄化処理に用いる水浄化剤として、好適に用いることができる。また、汚泥を脱水し濃縮するために用いられる汚泥の濃縮剤としても用いることができる。
【0034】
(液体状アニオン性凝集剤の製造方法)
本発明の液体状アニオン性凝集剤の製造方法は、本発明の前記液体状アニオン性凝集剤を製造する方法である。
前記液体状アニオン性凝集剤の製造方法は、溶液調製工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0035】
<溶液調製工程>
前記溶液調製工程は、多糖類と、無機電解質とを含有する溶液を調製し、多糖類と、無機電解質とを含む液体状アニオン性凝集剤を得る工程である。
【0036】
-多糖類-
前記多糖類の種類及び液体状アニオン性凝集剤における濃度は、上記した本発明の液体状アニオン性凝集剤の<多糖類>の項目に記載したものと同様である。
【0037】
-無機電解質-
前記無機電解質の種類及び液体状アニオン性凝集剤における濃度は、上記した本発明の液体状アニオン性凝集剤の<無機電解質>の項目に記載したものと同様である。
【0038】
-比-
前記多糖類の濃度(質量%)(A)と、前記無機電解質の濃度(mol/L)(B)との比(B/A)は、上記した本発明の液体状アニオン性凝集剤の<比>の項目に記載したものと同様である。
【0039】
-その他の成分-
前記その他の成分の種類及び液体状アニオン性凝集剤における濃度は、上記した本発明の液体状アニオン性凝集剤の<その他の成分>の項目に記載したものと同様である。
【0040】
-溶媒-
前記溶液の調製に用いる溶媒は、上記した本発明の液体状アニオン性凝集剤の<溶媒>の項目に記載したものと同様である。
【0041】
前記多糖類と、無機電解質とを含有する溶液を調製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記溶媒に前記多糖類を任意の濃度で溶解させ、多糖類含有溶液を作製し、別途、前記溶媒に前記無機電解質を任意の濃度で溶解させ、無機電解質含有溶液を作製し、次いで、前記多糖類含有溶液と前記無機電解質含有溶液とを混合し、前記多糖類及び前記無機電解質を所望の濃度で含む液体状アニオン性凝集剤とする方法が挙げられる。
また、作製した多糖類含有溶液に無機電解質を溶解させたり、作製した無機電解質含有溶液に多糖類を溶解させたりして、液体状アニオン性凝集剤を調製することもできる。
なお、前記その他の成分は、別途その他の成分含有溶液を調製して、多糖類含有溶液及び無機電解質含有溶液の少なくともいずれかと混合したり、多糖類含有溶液及び無機電解質含有溶液の少なくともいずれかにその他の成分を溶解させたりして配合することができる。
【0042】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0043】
(多糖類を含有するアニオン性凝集剤の保存方法)
本発明の多糖類を含有するアニオン性凝集剤の保存方法は、溶液調製工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0044】
<溶液調製工程>
前記溶液調製工程は、多糖類を含有するアニオン性凝集剤と、無機電解質とを含有する溶液を調製する工程である。
【0045】
-多糖類を含有するアニオン性凝集剤-
前記多糖類を含有するアニオン性凝集剤としては、前記多糖類におけるキサンタンガムの割合が5質量%以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記多糖類の種類としては、上記した本発明の液体状アニオン性凝集剤の<多糖類>の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
【0046】
前記多糖類を含有するアニオン性凝集剤の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉末、粒子等の固体状、液体状などが挙げられる。
【0047】
前記多糖類を含有するアニオン性凝集剤と、無機電解質とを含有する溶液における多糖類の濃度としては、上記した本発明の液体状アニオン性凝集剤の<多糖類>の項目に記載したものと同様である。
【0048】
-無機電解質-
前記無機電解質の種類及び前記多糖類を含有するアニオン性凝集剤と、無機電解質とを含有する溶液における濃度は、上記した本発明の液体状アニオン性凝集剤の<無機電解質>の項目に記載したものと同様である。
【0049】
-比-
前記多糖類を含有するアニオン性凝集剤と、無機電解質とを含有する溶液における、前記多糖類の濃度(質量%)(A)と、前記無機電解質の濃度(mol/L)(B)との比(B/A)は、上記した本発明の液体状アニオン性凝集剤の<比>の項目に記載したものと同様である。
【0050】
-その他の成分-
前記その他の成分の種類及び前記多糖類を含有するアニオン性凝集剤と、無機電解質とを含有する溶液における濃度は、上記した本発明の液体状アニオン性凝集剤の<その他の成分>の項目に記載したものと同様である。
【0051】
-溶媒-
前記溶液の調製に用いる溶媒は、上記した本発明の液体状アニオン性凝集剤の<溶媒>の項目に記載したものと同様である。
【0052】
前記多糖類を含有するアニオン性凝集剤と、無機電解質とを含有する溶液を調製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した本発明の液体状アニオン性凝集剤の製造方法における溶液調製工程と同様にして行うことができる。
【0053】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0054】
前記保存方法によれば、多糖類を含有するアニオン性凝集剤を、液体状のまま処理性能を保ち、保存時の気温上昇などによる処理性能の悪化も抑制することができ、長期間保存することが可能である。
【0055】
(処理方法)
本発明の処理方法は、本発明の液体状アニオン性凝集剤を被処理物に添加し、前記被処理物を処理する方法である。
前記処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水浄化処理、汚泥の濃縮処理などが挙げられる。
【0056】
前記処理方法は、更に、無機凝集剤及びカチオン性凝集剤の少なくともいずれかを前記被処理物に添加する処理方法であることが好ましい。無機凝集剤及びカチオン性凝集剤は、いずれか一方を使用してもよいし、両者を併用してもよい。
前記液体状アニオン性凝集剤と前記無機凝集剤とを組み合わせることにより、前記液体状アニオン性凝集剤単体の使用よりも水を含む前記被処理物の粘度を高粘度化できる結果、凝集効果が高まり、水浄化処理、汚泥の濃縮処理などの処理効果が高くなる。
前記液体状アニオン性凝集剤と前記カチオン性凝集剤とを組み合わせることにより、前記液体状アニオン性凝集剤単体の使用よりも水を含む前記被処理物の粘度を高粘度化できる結果、凝集効果が高まり、水浄化処理、汚泥の濃縮処理などの処理効果が高くなる。
【0057】
前記処理方法は、前記液体状アニオン性凝集剤と、前記無機凝集剤及び前記カチオン性凝集剤の少なくともいずれかとを前記被処理物に同時に添加する処理方法であってもよい。
また、前記処理方法は、前記液体状アニオン性凝集剤を前記被処理物に添加した後に、前記無機凝集剤及び前記カチオン性凝集剤の少なくともいずれかを前記被処理物に添加する処理方法であってもよい。
また、前記処理方法は、前記無機凝集剤及び前記カチオン性凝集剤の少なくともいずれかを前記被処理物に添加した後に、前記液体状アニオン性凝集剤を前記被処理物に添加する処理方法であってもよい。
これらの中でも、一般的に懸濁粒子表面はマイナスに帯電しているためカチオン性凝集剤を投入することによって懸濁粒子同士を結合させ、その後液体状アニオン性凝集剤を投入することで架橋作用により大きなフロックが形成される点から、前記無機凝集剤及び前記カチオン性凝集剤の少なくともいずれかを前記被処理物に添加した後に、前記液体状アニオン性凝集剤を前記被処理物に添加する処理方法であることが、好ましい。
【0058】
前記無機凝集剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム系無機凝集剤、鉄系無機凝集剤、消石灰などが挙げられる。
前記アルミニウム系無機凝集剤としては、例えば、前記ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸アルミニウムなどが挙げられる。
前記鉄系無機凝集剤としては、例えば、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、ポリ硫酸鉄(III)、ポリシリカ鉄、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)などが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
前記カチオン性凝集剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カチオン性多糖類、前記カチオン性多糖類以外のカチオン性有機凝集剤などが挙げられる。
前記カチオン性多糖類としては、例えば、キトサン、オリゴグルコサミン(キトサンオリゴ糖)、カチオン化澱粉、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガムなどが挙げられる。
前記カチオン性有機凝集剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアミジン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
前記処理方法に用いる前記液体状アニオン性凝集剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1Lの前記被処理物に対して、前記液体状アニオン性凝集剤に含まれる多糖類の乾燥質量に換算して、0.01mg以上50mg以下であってもよいし、0.05mg以上20mg以下であってもよい。
前記処理方法に用いる前記無機凝集剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1Lの前記被処理物に対して、1mg以上200mg以下であってもよいし、10mg以上50mg以下であってもよい。
前記処理方法に用いる前記カチオン性凝集剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1Lの前記被処理物に対して、1mg以上500mg以下であってもよいし、10mg以上50mg以下であってもよい。
【0061】
前記処理方法に、前記液体状アニオン性凝集剤(X)と、前記無機凝集剤及び前記カチオン性凝集剤の少なくともいずれか(Y)とを用いる場合、前記処理方法に用いる前記液体状アニオン性凝集剤(X)と、前記無機凝集剤及び前記カチオン性凝集剤の少なくともいずれか(Y)との質量比率〔(X)/(Y)〕としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.005以上10以下であってもよいし、0.05以上1以下であってもよいし、0.1以上0.5以下であってもよい。なお、前記液体状アニオン性凝集剤(X)の質量は、前記液体状アニオン性凝集剤に含まれる多糖類の乾燥質量に換算した値のことをいう。
【0062】
前記処理方法においては、例えば、前記被処理物が、被処理水であり、前記被処理水に、前記液体状アニオン性凝集剤を添加し、前記被処理水を浄化する。この処理方法においては、上水道用、工場等の用水用などの多様な用途の水処理を行うことができる。
【0063】
前記処理方法においては、例えば、前記被処理物が、浄水処理のろ過池の洗浄排水を含む被処理物であり、前記被処理物に、前記液体状アニオン性凝集剤を添加し、前記被処理物を浄化する。なお、前記被処理物は、浄水処理のろ過池の洗浄排水のみからなるものであってもよい。
【0064】
前記処理方法においては、例えば、前記被処理物が、汚泥を含む被処理物であり、前記液体状アニオン性凝集剤を前記被処理物に添加し、前記被処理物を脱水し濃縮する。なお、前記被処理物は、汚泥のみからなるものであってもよい。
【0065】
前記処理方法においては、例えば、前記被処理物が、工場排水を含む被処理物であり、前記液体状アニオン性凝集剤を前記被処理物に添加し、前記被処理物から汚濁物質を除去する。なお、前記被処理物は、工場排水のみからなるものであってもよい。
前記汚濁物質としては、例えば、フッ素、浮遊物質(SS)、重金属、シアン、リンなどが挙げられる。
【0066】
前記処理方法に用いる浄水処理設備としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、横流式沈殿設備を有する浄水施設、高速凝集沈殿設備を有する浄水設備などが挙げられる。
前記高速凝集沈殿設備としては、例えば、スラリー循環型、スラッジ・ブランケット型などが挙げられる。
【0067】
前記処理方法に用いる浄水場の排水処理設備としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重力濃縮、機械脱水、天日乾燥などが挙げられる。
【0068】
以下、図を用いて本発明の処理方法の一例を説明する。
図1は、横流式沈殿設備を有する浄水施設を例として図示するフロー図である。
懸濁物質を含有する原水(被処理水)は、原水導入管を通り、必要であれば着水井1(着水池)を経て凝集混和槽2(混和池)に送られる。凝集混和槽2には、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等の無機凝集剤、又はキトサン、カチオン化澱粉等のカチオン性凝集剤が注入され、急速撹拌により原水中の懸濁物質を取り込んだ微細凝集フロック(マイクロフロック)が形成される。無機凝集剤の注入量は原水の水質にもよるが、例えば、10mg/L~500mg/Lの範囲である。
マイクロフロックを含む原水は、その後、フロック形成槽3(形成池)で緩速撹拌され、原水中のマイクロフロックが更に成長する。この際、マイクロフロックを含む原水がフロック形成槽3に流入する前後に、マイクロフロックを含む原水に本発明の液体状アニオン性凝集剤を添加する。本発明の液体状アニオン性凝集剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、原水1リットル当たり、前記液体状アニオン性凝集剤に含まれる多糖類の乾燥質量に換算して、0.01~20mgや、0.05~10mgの範囲が挙げられる。
本発明の液体状アニオン性凝集剤を添加しながら、又は添加した後に緩速撹拌し、フロックを成長させる。緩速撹拌の撹拌速度(回転数)は、例えばG値(単位時間単位体積あたりの仕事量Pから被処理水の粘性係数μを除した値の平方根、日本水道協会水道施設設計指針2000、P188)が無機凝集剤添加時の急速撹拌よりも低エネルギーになるよう設定し、フロックを成長させる。
フロックの成長により、沈殿池4での固液分離性が向上するだけではなく、微細なフロックも成長したフロックに取り込まれるので、凝集沈殿処理水の懸濁物質(Suspended solid、以下「SS」と称することもある。)や濁度が低下し、後段のろ過処理の負担も軽減する。
フロックを成長させた後の原水は、沈殿池4へ送られ、成長した凝集フロックを重力で沈降分離させ、懸濁物質が除去された凝集沈殿処理水は砂ろ過池5に通水されて、濁質や微細なフロックが除去される。砂ろ過池5のろ材は特に限定されないが、珪砂やアンスラサイトが最も一般的で、珪砂だけの場合や、珪砂とアンスラサイトをろ過材に使用する複層ろ過などがある。
砂ろ過池5から配水池6へ送られる際に塩素が投入され、配水池6において塩素殺菌が行われ、配水池6を出た被処理水は水道水として利用される。
【0069】
図2に、図1の砂ろ過池の洗浄排水や凝集沈殿処理で発生する浄水汚泥を処理するフローを示す。
砂ろ過池5の洗浄排水は、排水池7で固液分離されて、汚泥部分は排泥池8に、越流水は返流水として、上述した浄水施設の着水井1に返送される。上述した浄水施設の沈殿池4又は他の施設の凝集沈殿処理で発生する浄水汚泥は、排泥池8を経由して濃縮槽9で濃縮される。濃縮された浄水汚泥は脱水される。濃縮槽9の越流水は返流水として、着水井1に返送される。
このように、排水池7や濃縮槽9で処理済みの排水処理水は浄水施設の水道原水が流入する着水井1に戻されて、水道水や用水の原料になる。他方、排水処理で発生する固形物(汚泥)は、機械脱水機10や天日乾燥床11により水分が除去される。得られた脱水ケーキや乾燥物は、土壌改良材などとして有効利用が可能である。なお、機械脱水では薬品を注入しない無薬注が基本であり、加圧脱水式(フィルタープレス型)脱水機が主流である。
図2では、砂ろ過池5の洗浄排水が排水池7へ流入する前後で、洗浄排水に本発明の液体状アニオン性凝集剤を添加する。洗浄排水中の懸濁物質(SS)は液体状アニオン性凝集剤の添加により凝集が促進されるので、排水池7での固液分離性が向上し、排水池7からの越流水、即ち返流水のSS濃度が低下して、返流水によるSS負荷が低減される。従って、返流先(浄水施設)の凝集工程では、無機凝集剤の削減が可能になり、また、沈殿池4での固液分離性も向上する。
また、沈殿池4から排泥される汚泥は通常固形分濃度が薄いので、濃縮槽9流入前の洗浄汚泥に対して本発明の液体状アニオン性凝集剤を添加し、洗浄汚泥を濃縮してもよい。濃縮槽9における濃縮方法は、例えば、重力濃縮、ベルト濃縮などが挙げられる。
【0070】
図3に、汚濁物質としてのフッ素を含有する工場排水のフッ素の処理例のフローを示す。以下の処理例は、カルシウムとアルミニウムとを併用した高度処理法である。カルシウムのみの処理の場合、フッ素濃度を8ppm以下にすることは難しいが、以下の高度処理法では、フッ素濃度を1ppm以下にすることも可能である。
まず、原水(フッ素を含有する工場排水)を、第一反応槽51に投入する。そして、第一反応槽51にフッ素と反応する第1無機凝集剤〔Ca(OH)、CaClなど〕と、pH調整剤(例えば、硫酸、水酸化ナトリウムなど)とを投入し、pHを調整しつつ、撹拌を行い、フッ素の無機塩(例えば、フッ化カルシウム)を析出させる。そして、それを第一凝集槽52に移動させ、第一凝集槽52に、本発明の液体状アニオン性凝集剤を投入し、撹拌を行い、フッ素の無機塩の析出物を凝集させる。次に、凝集物を含む原水を第一次沈殿槽53に移動し、静置して、生成した凝集物を第一次沈殿槽53において沈殿させる。
次に、第一次沈殿槽53内の上澄み液を第二反応槽54に移動させる。そして、第二反応槽54に、残留するフッ素と反応する第2無機凝集剤〔PAC、硫酸バンドなど〕と、pH調整剤(例えば、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウムなど)とを投入し、pHを調整しつつ、撹拌を行い、フッ素の無機塩(例えば、AlF)を析出させる。そして、それを第二凝集槽55に移動させ、第二凝集槽55に、本発明の液体状アニオン性凝集剤を投入し、撹拌を行い、フッ素の無機塩の析出物を凝集させる。次に、凝集物を含む原水を第二次沈殿槽56に移動し、静置して、生成した凝集物を第二次沈殿槽56において沈殿させる。
第二次沈殿槽56内の上澄みが、処理水となる。
一方、第一次沈殿槽53、及び第二次沈殿槽56内の沈殿物は、汚泥濃縮槽57に送られ、重力濃縮、ベルト濃縮などの濃縮方法により濃縮される。濃縮物は、加圧脱水式(フィルタープレス型)脱水機などの機械脱水機58に送られ、脱水されて脱水ケーキとなる。
【実施例0071】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
純水中に、キサンタンガム粉末(商品名:ケルザン、CPケルコ社製)とグアーガム粉末(商品名:グリンステッドグアー175、ダニスコ社製)とを両者の質量比が80:20となるように溶解させ、多糖類含有溶液とした。なお、多糖類含有溶液における多糖類の溶解濃度は、1質量%以下とした。
また、純水中に、塩化ナトリウム粉末を溶解させ、無機電解質含有溶液とした。なお、無機電解質含有溶液における塩化ナトリウムの溶解濃度は、6.2mol/L未満とした。
前記多糖類含有溶液と、前記無機電解質含有溶液とを混合し、多糖類の溶解濃度が0.2質量%であり、無機電解質の溶解濃度が0.05mol/Lである液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0073】
(実施例2)
液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.1mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0074】
(実施例3)
液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.5mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0075】
(実施例4)
液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を1.7mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0076】
(実施例5)
液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を2.2mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0077】
(実施例6)
液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を2.6mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0078】
(実施例7)
多糖類としてキサンタンガムのみを用い、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.1mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0079】
(実施例8)
キサンタンガムとグアーガムとの質量比を50:50とし、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.5mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0080】
(実施例9)
キサンタンガムとグアーガムとの質量比を20:80とし、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.5mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0081】
(実施例10)
キサンタンガムとグアーガムとの質量比を10:90とし、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.5mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0082】
(実施例11)
キサンタンガムとグアーガムとの質量比を5:95とし、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.5mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0083】
(比較例1)
多糖類としてキサンタンガムのみを用い、無機電解質を用いなかった以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0084】
(比較例2)
多糖類としてグアーガムのみを用い、無機電解質を用いなかった以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0085】
(比較例3)
多糖類としてグアーガムのみを用い、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.1mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0086】
(比較例4)
無機電解質を用いなかった以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0087】
(比較例5)
液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.0005mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0088】
(比較例6)
液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.005mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0089】
(比較例7)
液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を6.2mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0090】
(実施例12)
無機電解質を塩化カリウムとし、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を1.7mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0091】
(実施例13)
無機電解質を塩化カルシウムとし、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を1.7mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0092】
(実施例14)
無機電解質を塩化マグネシウムとし、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を1.7mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0093】
(比較例8)
多糖類としてアルギン酸ナトリウムのみを用い、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.5mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0094】
(比較例9)
多糖類としてカラギーナンのみを用い、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.5mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0095】
(比較例10)
多糖類としてペクチンのみを用い、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.5mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0096】
(比較例11)
多糖類としてカルボキシメチルセルロースのみを用い、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.5mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0097】
(比較例12)
多糖類としてジェランガムのみを用い、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.5mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0098】
(比較例13)
多糖類としてタマリンドガムのみを用い、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.5mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0099】
(実施例15)
液体状アニオン性凝集剤における多糖類の溶解濃度を0.1質量%とし、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.85mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0100】
(実施例16)
液体状アニオン性凝集剤における多糖類の溶解濃度を0.3質量%とし、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.85mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0101】
(実施例17)
液体状アニオン性凝集剤における多糖類の溶解濃度を0.5質量%とし、液体状アニオン性凝集剤における無機電解質の溶解濃度を0.85mol/Lとした以外は、実施例1と同様にして液体状アニオン性凝集剤を得た。
【0102】
(評価)
<保存方法など>
実施例1~17及び比較例1~13で製造した液体状アニオン性凝集剤は、500mLのポリプロピレン製容器に入れ、40℃又は60℃のオーブンで保存した。
なお、後述の各種の評価では、液体状アニオン性凝集剤をオーブンから取り出し、液温を常温(25℃)に戻してから使用した。
【0103】
<導電率>
実施例1~17及び比較例1~13で製造した液体状アニオン性凝集剤の導電率を、導電率計(卓上型F-70(堀場製作所製))にて測定した。
【0104】
<粘度>
実施例1~17及び比較例1~13で製造した液体状アニオン性凝集剤の粘度を、B型粘度計(回転速度:30rpm)にて測定した。
【0105】
<濁度>
液体状アニオン性凝集剤を用いた水浄化性能について以下の方法で評価を行った。
1質量%のカオリン懸濁液500mLをビーカーにとり、撹拌しながら10質量%のポリ塩化アルミニウム(PAC)(PAC250A(商品名)、多木化学社製)溶液を100ppm加え撹拌した後、5質量%の水酸化ナトリウム溶液により、pHを7.0±0.2に調整した。
次いで、実施例1~17及び比較例1~13で製造した液体状アニオン性凝集剤を4.0ppm加え撹拌した後に、150rpmで2分間急速撹拌した。撹拌を停止し、静置させ、凝集沈殿させた。
撹拌停止10分間後の上澄みを20mLサンプリングし、上澄みの濁度を測定した。上澄みの濁度の測定は、JIS K 0101:1998(工業用水試験方法 9.2 透過光濁度)に準じ、分光光度計HACH社製DR 3900を用いた。
【0106】
-処理性-
得られた濁度の結果から、下記の評価基準により、液体状アニオン性凝集剤の処理性を評価した。なお、液体状アニオン性凝集剤を用いなかった場合(PACのみで処理した場合)の濁度は、15度であった。
○ : 濁度の値が、2.0度未満である。
△ : 濁度の値が、2.0度以上3.0度未満である。
× : 濁度の値が、3.0度以上である。
【0107】
<溶解性>
下記の評価基準により、液体状アニオン性凝集剤の溶解性を評価した。
○ : 液体状アニオン性凝集剤に、未溶解物の残存が目視で確認されない。
× : 液体状アニオン性凝集剤に、未溶解物の残存が目視で確認される。
【0108】
製造した後(保存する前)(初期)の実施例1~11及び比較例1~7の液体状アニオン性凝集剤の評価結果を下記の表1~3に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
保存後の実施例1~11及び比較例1~6の液体状アニオン性凝集剤の評価結果を下記の表4~8に示す。
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】
【0115】
【表6】
【0116】
【表7】
【0117】
【表8】
【0118】
製造した後(保存する前)(初期)の実施例12~14の液体状アニオン性凝集剤の評価結果を下記の表9に示す。
【0119】
【表9】
【0120】
保存後の実施例12~14の液体状アニオン性凝集剤の評価結果を下記の表10に示す。
【0121】
【表10】
【0122】
製造した後(保存する前)(初期)の比較例8~13の液体状アニオン性凝集剤の評価結果を下記の表11に示す。
【0123】
【表11】
【0124】
製造した後(保存する前)(初期)の実施例15~17の液体状アニオン性凝集剤の評価結果を下記の表12に示す。
【0125】
【表12】
【0126】
保存後の実施例15~17の液体状アニオン性凝集剤の評価結果を下記の表13に示す。
【0127】
【表13】
【0128】
上記した表1~13中、多糖類の項目における「%」は、多糖類における各成分の割合を表し、多糖類の項目における「(A)溶解濃度」は、液体状アニオン性凝集剤における多糖類を合計した濃度を表す。
【0129】
以上のように、本発明によれば、ポリアクリルアミド系の凝集剤の使用を避けることができ、液体状のまま処理性能を保ち、長期間保存することが可能であり、給粉機や高分子凝集剤の溶解装置といった設備が無いところでも使用することができる液体状アニオン性凝集剤を提供することができる。
【符号の説明】
【0130】
1 着水井
2 凝集混和槽
3 フロック形成槽
4 沈殿池
5 砂ろ過池
6 配水池
7 排水池
8 排泥池
9 濃縮槽
10 機械脱水機
11 天日乾燥床
51 第一反応槽
52 第一凝集槽
53 第一次沈殿槽
54 第二反応槽
55 第二凝集槽
56 第二次沈殿槽
57 汚泥濃縮槽
58 機械脱水機
図1
図2
図3