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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106211
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/14 301
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010405
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁田 昇
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG44
2C057AG55
2C057AR14
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】圧電アクチュエーターが与える力で撓み易い金属箔貼り樹脂フィルムで形成した振動板を備える液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】実施形態の液体吐出ヘッドは、圧力室、振動板、圧電アクチュエーター、及び支柱を備える。圧力室は、液体を吐出するノズルと連通する。振動板は、前記圧力室の隔壁の一部を構成する。振動板は、金属箔貼り樹脂フィルムで形成する。圧電アクチュエーターは、前記振動板に力を与える。支柱は、前記圧電アクチュエーターが力を与える面と同一面で前記振動板を支える。前記金属箔は、前記振動板が前記圧電アクチュエーターに接する部分と前記支柱とに接する部分にあり、前記圧電アクチュエーターと前記支柱の間の部分には無い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルと連通する圧力室と、
金属箔貼り樹脂フィルムで形成した、前記圧力室の隔壁の一部を構成する振動板と、
前記振動板に力を与える圧電アクチュエーターと、
前記圧電アクチュエーターが力を与える面と同一面で前記振動板を支える支柱と、を備え、
前記金属箔は、前記振動板が前記圧電アクチュエーターに接する部分と前記支柱に接する部分とにあり、前記圧電アクチュエーターと前記支柱の間の部分には無いことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記金属箔を介して前記圧電アクチュエーターに電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記金属箔は、前記圧電アクチュエーターのコモン端子を共通接続する共通電極に接続していることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記金属箔は、複数の前記圧電アクチュエーターを配列する領域を囲うように形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記樹脂フィルムは、複数の前記圧電アクチュエーターを配列する領域で薄肉に形成していることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
所定量の液体を所定の位置に供給する液体吐出ヘッドが知られている。液体吐出ヘッドは、例えばインクジェットプリンタ、3Dプリンタ、分注装置などに搭載する。インクジェットプリンタは、インクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体の表面に画像等を形成する。3Dプリンタは、造形材の液滴を造形材吐出ヘッドから吐出し、硬化させて、三次元造形物を形成する。分注装置は、試料の液滴を吐出して複数の容器等へ所定量供給する。
【0003】
液体吐出ヘッドは、液体を吐出するチャネルを複数有している。各チャネルは、液体を吐出するノズル、ノズルに連通する圧力室、圧力室の隔壁の一部を構成する振動板、及び振動板に力を与えて圧力室の容積を変える圧電アクチュエーターを備える。液体吐出ヘッドは、複数のチャネルの中から液体を吐出するチャネルを選択し、圧電アクチュエーターに駆動信号を与えて駆動させる。圧電アクチュエーターで振動板に力を与えると、液体で満たされている圧力室の容積が変わり、ノズルから液体が吐出する。しかしながら、このような構成の液体吐出ヘッドは、振動板が撓み難い構造であると、液体を吐出する効率が悪くなる。また、振動板とは別に、圧電アクチュエーターに駆動信号を与える電極が別途必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-150808号公報
【特許文献2】特開2000-158650号公報
【特許文献3】特開2000-094682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、圧電アクチュエーターから与える力で撓み易い金属箔貼り樹脂フィルムで形成した振動板を備える液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の液体吐出ヘッドは、圧力室、振動板、圧電アクチュエーター、及び支柱を備える。圧力室は、液体を吐出するノズルと連通する。振動板は、前記圧力室の隔壁の一部を構成する。振動板は、金属箔貼り樹脂フィルムで形成する。圧電アクチュエーターは、前記振動板に力を与える。支柱は、前記圧電アクチュエーターが力を与える面と同一面で前記振動板を支える。前記金属箔は、前記振動板が前記圧電アクチュエーターに接する部分と前記支柱に接する部分とにあり、前記圧電アクチュエーターと前記支柱の間の部分には無い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に従うインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタの全体構成図である。
図2】上記インクジェットヘッドの斜視図である。
図3】上記インクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した断面図である。
図4】上記インクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した断面図である。
図5】上記インクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した平面図である。
図6】上記ヘッド部の圧電アクチュエーターの斜視図である。
図7】上記ヘッド部のフレキシブルプリント配線板の平面図と断面図である。
図8】上記ヘッド部の振動板の平面図と断面図である。
図9】上記インクジェットヘッドの制御系の回路図である。
図10】上記インクジェットヘッドの圧電アクチュエーターに与える駆動波形である。
図11】上記圧電アクチュエーターの動作の説明図である。
図12】第2実施形態に従うインクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した断面図である。
図13】上記ヘッド部の振動板の平面図と断面図である。
図14】上記ヘッド部の圧電アクチュエーターの斜視図である。
図15】第2実施形態の変形例に従うインクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した断面図である。
図16】上記ヘッド部のフレキシブルプリント配線板の平面図と断面図である。
図17】上記ヘッド部の振動板の平面図と断面図である。
図18】第3実施形態に従うインクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した断面図である。
図19】上記ヘッド部の圧電アクチュエーターの斜視図である。
図20】上記ヘッド部の振動板の平面図と断面図である。
図21】第4実施形態に従うインクジェットヘッドの圧電アクチュエーターの斜視図である。
図22】上記ヘッド部の振動板の平面図と断面図である。
図23】第4実施形態の変形例に従うインクジェットヘッドのヘッド部の振動板の平面図と断面図である。
図24】第5実施形態に従うインクジェットヘッドの圧電アクチュエーターの斜視図である。
図25】上記ヘッド部の振動板の平面図と断面図である。
図26】上記ヘッド部のフレキシブルプリント配線板の平面図と断面図である。
図27】上記ヘッド部の振動板の変形例の平面図と断面図である。
図28】上記ヘッド部の振動板の変形例の平面図と断面図である。
図29】上記ヘッド部の振動板の変形例の平面図と断面図である。
図30】第6実施形態に従うインクジェットヘッドの圧電アクチュエーターの斜視図である。
図31】上記インクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した断面図である。
図32】上記ヘッド部の振動板の平面図と断面図である。
図33】上記ヘッド部のフレキシブルプリント配線板の平面図と断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に従う液体吐出ヘッドについて、添付図面を参照しながら詳述する。なお、各図において、同一構成は同一の符号を付している。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態の液体吐出ヘッドを搭載した画像形成装置の一例として、記録媒体に画像を印刷するインクジェットプリンタ10を説明する。図1は、インクジェットプリンタ10の概略構成を示す。インクジェットプリンタ10は、筐体11の内部に、記録媒体の一例であるシートSを収納するカセット12、シートSの上流搬送路13、カセット12内から取り出したシートSを搬送する搬送ベルト14、搬送ベルト14上のシートSに向けてインクの液滴を吐出する複数のインクジェットヘッド100~103、シートSの下流搬送路15、排出トレイ16、及び制御基板17を配置する。ユーザーインターフェイスである操作部18は、筐体11の上部側に配置する。
【0010】
シートSに印刷する画像データは、例えば外部接続機器であるコンピュータ200で生成する。コンピュータ200で生成した画像データは、ケーブル201、コネクタ202,203を通してインクジェットプリンタ10の制御基板17に送る。
【0011】
ピックアップローラ204は、カセット12からシートSを一枚ずつ上流搬送路13へ供給する。上流搬送路13は、送りローラ対131、132と、シート案内板133、134で構成する。シートSは、上流搬送路13を経由して、搬送ベルト14の上面に送る。図中の矢印104は、カセット12から搬送ベルト14へのシートSの搬送経路を示す。
【0012】
搬送ベルト14は、表面に多数の貫通孔を形成した網状の無端ベルトである。駆動ローラ141、従動ローラ142,143の3本のローラは、搬送ベルト14を回転自在に支持する。モータ205は、駆動ローラ141を回転することによって搬送ベルト14を回転させる。モータ205は、駆動装置の一例である。図中105は、搬送ベルト14の回転方向を示す。搬送ベルト14の裏面側に、負圧容器206を配置する。負圧容器206は、減圧用のファン207と連結する。ファン207は、形成する気流によって負圧容器206内を負圧にし、搬送ベルト14の上面にシートSを吸着保持させる。図中106は、気流の流れを示す。
【0013】
液体吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッド100~103は、搬送ベルト14上に吸着保持したシートSに対して、例えば1mmの僅かな隙間を介して対向するように配置する。インクジェットヘッド100~103は、シートSに向けてインクの液滴を夫々吐出する。インクジェットヘッド100~103は、下方をシートSが通過する際に画像を印刷する。各インクジェットヘッド100~103は、吐出するインクの色が異なることを除けば、同じ構造である。インクの色は、例えば、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラックである。
【0014】
インクジェットヘッド100~103は、夫々、インク流路311~314を介してインクタンク315~318及びインク供給圧力調整装置321~324と連結する。各インクタンク315~318は、各インクジェットヘッド100~103の上方に配置する。待機時に、インクジェットヘッド100~103のノズル24(図2参照)からインクが漏れ出ないように、各インク供給圧力調整装置321~324は、各インクジェットヘッド100~103内を大気圧に対して負圧、例えば-1.2kPaに調整している。画像形成時、各インクタンク315~318のインクは、インク供給圧力調整装置321~324によって各インクジェットヘッド100~103に供給する。
【0015】
画像形成後、搬送ベルト14から下流搬送路15へシートSを送る。下流搬送路15は、送りローラ対151,152,153,154と、シートSの搬送経路を規定するシート案内板155,156で構成する。シートSは、下流搬送路15を経由し、排出口157から排出トレイ16へ送る。図中矢印107は、シートSの搬送経路を示す。
【0016】
続いて、インクジェットヘッド100~103の構成について説明する。以下は、図2図11を参照しながら、インクジェットヘッド100について説明しているが、インクジェットヘッド101~103もインクジェットヘッド100と同じ構造である。
【0017】
図2に示すように、インクジェットヘッド100は、液体吐出部の一例であるヘッド部2を備える。ヘッド部2は、フレキシブルプリント配線板21と接続する。フレキシブルプリント配線板21は、中継基板の一例であるプリント基板22と接続する。さらにヘッド部2は、詳しくは後述する振動板5の電極の引出し部51が外に延びている。
【0018】
ヘッド部2は、ノズル部の一例であるノズルプレート23を備える。インクを吐出する各チャネルのノズル24は、ノズルプレート23の第1の方向の例えばX方向に沿って配列する。ノズル密度は、例えば150~1200dpiの範囲内に設定する。ノズル24は、一列に限らず、複数列であってもよい。インクは、インク流路311を介してヘッド部2に供給する。インク流路311は、図1のインク供給圧力調整装置321と接続する。ヘッド部2の内部構造は後述する。
【0019】
フレキシブルプリント配線板21は、例えばポリイミドフィルムなどの樹脂フィルムを用いたフレキシブルなプリント配線基板(FPC(Flexible Printed Circuits))である。フレキシブルプリント配線板21は、ドライバチップである駆動用のIC(Integrated Circuit)3を搭載している(以下、駆動ICと称す)。プリント基板22は、ガラス繊維入りのエポキシ樹脂層と銅配線層を多重に積層した硬質のスルーホール基板である。制御部としての駆動IC3は、インクジェットプリンタ10の制御基板17からプリント基板22を介して送られてくるプリントデータを一時的に格納し、所定のタイミングでインクを吐出するよう各チャネルに駆動信号を与える。
【0020】
図3図5は、ヘッド部2の部分断面図である。図4は、図3のA-Aの断面図であり、図5は、図3のB-Bの断面図である。ノズルプレート23は、圧力室基板4の一面に接合する。ノズルプレート23は、例えばポリイミドなどの樹脂又はステンレスなどの金属で形成した矩形状のプレートである。
【0021】
振動板5は、ノズルプレート23とは反対側の圧力室基板4の一面に接合する。振動板5は、金属箔貼り樹脂フィルム52で形成する。樹脂フィルム52は、例えばポリイミドフィルムである。振動板5の好ましい一例は、フレキシブルプリント配線板(FPC(Flexible Printed Circuits))である。金属箔貼り樹脂フィルム52は、それ自体が外力を加えたときに変形する可撓性を有するが、圧電アクチュエーター6の周辺の変形する部分の厚みをその外側部分の厚みよりも薄く形成することで更に撓み易くしている。電極53は、所定の形状にパターニングした金属箔によって樹脂フィルム52上に形成している。金属箔は、例えば銅箔である。電極53は共通電極である。
【0022】
圧力室42は、圧力室基板4に形成する。複数の圧力室42は、各ノズル24の位置に配列して、ノズル24とそれぞれ連通させている。圧力室基板4は、例えばステンレスなどの金属で形成する。圧力室42は、一例として、第2の方向の例えばZ方向に貫通する矩形状の開口を圧力室基板4に形成し、両側の開口をノズルプレート23と振動板5でそれぞれ塞ぐことによって形成する。すなわち、振動板5は、複数の圧力室42が共用し、複数の圧力室42のそれぞれの隔壁の一部を構成している(図4参照)。
【0023】
圧力室42は、狭窄部を有するガイド流路43と連通し、さらに振動板5を貫通する開口穴であるインク供給口44を介してインク供給マニホールド45に連通する。ガイド流路43は、圧力室42ごとに、圧力室基板4の振動板5側の一面に第3の方向の例えばY方向に溝状に形成する。インク供給マニホールド45は、振動板5の一面に接合したフレーム46内に形成する。インク供給マニホールド45は、X方向に延び、各チャネルのインク供給口44及びガイド流路43を介して、各チャネルの圧力室42とそれぞれ連通する。共通インク室としてのインク供給マニホールド45は、インク流路311と連通する(図1図2参照)。
【0024】
各チャネルの圧電アクチュエーター6は、振動板5を挟んで圧力室42と対向する位置に配列している。支柱60は、隣り合う圧電アクチュエーター6の間に配置する(図4参照)。圧電アクチュエーター6及び支柱60は、Z方向における振動板5とは反対側の一面を支持部材47に接合することによって固定している。圧電アクチュエーター6と振動板5、及び支柱60と振動板5は、接着剤で夫々接合する。フレーム46も接着剤で振動板5と接合する。接着剤は、例えば熱硬化性エポキシ樹脂である。
【0025】
圧電アクチュエーター6は、例えばピエゾ素子などの圧電体61、第1の内部電極62、及び第2の内部電極63を交互に層状に積層して形成した積層型圧電アクチュエーターである(特に図3参照)。各圧電体61は、分極方向が例えばZ方向において互いに逆向きに配置し、d33モードで変形させる。第1の内部電極62と第2の内部電極63は、圧電体61の主面にそれぞれ形成した導電膜である。第1の内部電極62は、それぞれY方向における圧電アクチュエーター6の一方の端面まで形成し、この端面に形成した第1の外部電極64に接続する。第2の内部電極63は、それぞれY方向における圧電アクチュエーター6の他方の端面まで形成し、この端面に形成した第2の外部電極65に接続する。第2の外部電極65は、振動板5と対向する圧電アクチュエーター6のZ方向の端面にまで形成する(図3図6参照)。図6は、圧電アクチュエーター6及び支柱60を振動板5側からみた斜視図である。
【0026】
ダミー層68は、圧電体61と同材料である。但し、ダミー層68は、内部電極を設けず、電界が印加されないので変形しない。ダミー層68は、圧電アクチュエーター6を支持部材47に固定するベースとなり(図4参照)、あるいは組立中や組立後の精度を出すために研磨する研磨代となる。特に図4図6に示すように、第2の外部電極65は、ダミー層68の一面にも形成し、各圧電アクチュエーター6の第2の外部電極65同士をつないで共通電極とする。
【0027】
複数の圧電体61を積層した圧電アクチュエーター6は、一例として、薄板状に加工した各圧電体61の主面に第1の内部電極62と第2の内部電極63をそれぞれ成膜する。そして圧電体61同士を積層し焼成して一体にする。その後、第1の外部電極64と第2の外部電極65を成膜する。その後、圧電体61を着分極する。圧電体61は、チタン酸ジルコン酸鉛 (PZT)などの鉛含有圧電材料、或いはニオブ酸ナトリウムカリウムなどの鉛非含有圧電材料で形成する。第1の内部電極62と第2の内部電極63は、銀パラジウムなどの焼成可能な導電性材料で成膜する。第1の外部電極64と第2の外部電極65は、メッキ法やスパッタ法など既知の方法で、Ni、Cr、Auなどで成膜する。
【0028】
各圧電アクチュエーター6の第1の外部電極64は、フレキシブルプリント配線板21の個別電極66にそれぞれ接続する(図3参照)。フレキシブルプリント配線板21は、基材となる樹脂フィルム26,個別電極66,絶縁フィルム27,接着剤28によって構成する。樹脂フィルム26は、例えばポリイミドフィルムである。個別電極66は、例えば銅箔などの金属箔で樹脂フィルム26上に形成する。絶縁フィルム27は、第1の外部電極64と接続する部分を除いて個別電極66を被覆する。絶縁フィルム27は、接着剤28で固定する。絶縁フィルム27と接着剤28に代えて金属箔を形成した樹脂フィルム26上に樹脂を塗布することによって絶縁層を形成してもよい。
【0029】
フレキシブルプリント配線板21は、個別電極66が第1の外部電極64と接触するように配置し、例えばNCF(Non-Conductive Film)などによって固定する。或いはハンダなどによって固定してもよい。NCFはACF(Anisotropic Conductive Film)から導電粒子を取り除いたものであって、それ自体は絶縁体だが第1の外部電極64と個別電極66を接触させつつ熱硬化することによって第1の外部電極64と個別電極66を導通させる。
【0030】
図7は、フレキシブルプリント配線板21の一例を示す。図7の平面図と断面図に示すように、個別電極66は、樹脂フィルム26上に圧電アクチュエーター6の数だけを同じピッチで並列に形成している。各個別電極66は、各チャネルの圧電アクチュエーター6の中心線上に位置するように夫々配置する。個別電極66の幅は、圧電アクチュエーター6の第1の外部電極64の幅よりも小さくするのが好ましい。ヘッドの組み立て時において、要求される位置合わせ精度を緩和できるからである。但し、個別電極66の厚みは、圧電アクチュエーター6の第1の外部電極64の厚みよりも大きくして配線抵抗を少なくする。第1の外部電極64と個別電極66の接続点が、圧電アクチュエーター6に駆動信号を与える個別端子である。
【0031】
圧電アクチュエーター6の振動板5と対向する面に形成した第2の外部電極65は、振動板5の樹脂フィルム52上に形成した電極54と接続する(図3図4参照)。電極54は、振動板5に形成した共通電極53の一部である。すなわち第2の外部電極65と電極54の接続点が、圧電アクチュエーター6に共通電位を与えるコモン端子である。第2の外部電極65と電極54は、例えばNCF(Non-Conductive Film)などによって固定する。銀ペーストなどを用いて電気的接続を保ちつつ固定してもよい。その際、例えば熱処理によって圧電体61が脱分極するなら、第1の内部電極62と第2の内部電極63間に分極電圧を与えて再分極すればよい。
【0032】
振動板5側の共通電極53は、例えばポリイミドフィルムにアディティブ法で銅箔などの金属層を析出させる、または接着剤レスの銅貼りポリイミドフィルム(2層CCL)の銅箔をエッチングする、あるいは2層CCL上のエッチングで形成した銅箔パターンに更に金属を析出させる、などによって形成する。図8は、振動板5の一例を示す。図8の平面図と断面図に示すように、各第2の外部電極65と接続する電極54は、例えば樹脂フィルム52の先端側で露出している部分をパターニングして形成している。共通電極53の基端側は、開口穴であるインク供給口44の部分を除いて、樹脂フィルム52上に面積を広く形成し、樹脂フィルム材55で被覆している。樹脂フィルム材55は、接着剤56で固定する。インク供給口44の部分は、共通電極53の開口穴をインク供給口44よりも大きくし、樹脂フィルム52と樹脂フィルム材55の間を接着剤57で封止する。
【0033】
各圧電アクチュエーター6に接続する共通電極53の各電極54は、例えば圧電アクチュエーター6の中心線上に位置するように配列する。電極54の幅は、圧電アクチュエーター6の第2の外部電極65の幅よりも小さくするのが好ましい。ヘッドの組み立て時において、要求される位置合わせ精度を緩和できるからである。但し、電極54の厚みを、圧電アクチュエーター6の第2の外部電極65の厚みよりも大きくして配線抵抗を少なくする。共通電極53は、振動板5内で電極54を互いに電気的に接続している。これによって圧電アクチュエーター6の第2の外部電極65に至る共通インピーダンスを低く抑え、電気的なクロストークを防ぐ。同様に支柱60と対向する位置にも電極54を形成する。支柱60は、電極54の部分を介して振動板5を支える。支柱60が支える振動板5の一面は、圧電アクチュエーター6が振動板5に対して力を与える一面と同じ面である。特に図4に示すように、電極54は、振動板5が圧電アクチュエーター6に接する部分と支柱60に接する部分にあり、圧電アクチュエーター6と支柱60の間の部分には無い。
【0034】
電極54を形成する側の樹脂フィルム52の一面は、凹状に形成して、その外側周辺よりも厚みが薄い領域58を設けている。圧電アクチュエーター6及び支柱60は、この薄厚の領域58内に配列する。この薄厚の領域58のうち圧電アクチュエーター6と支柱60の間に跨る部分、すなわち図11に示した撓み部500が、圧電アクチュエーター6からの力で変形することによって薄厚の領域58が変位し、実質的な振動板として機能する。薄厚にした領域58の厚みは、例えば4μmである。その外側の厚みは、例えば8μmである。電極54の厚みは、例えば4μmである。薄厚にする領域58は、一例として、樹脂フィルム52の表面をアルカリエッチングして形成してもよく、或いは、薄い樹脂フィルムと該当部分に穴を開けた樹脂フィルムとを積層して形成してもよい。共通電極53(電極54を含む)は、一例として、凹状の領域58を形成した後に金属箔を所定の形状にプリントして形成する。その後、樹脂フィルム材55を接着剤56で接合し、さらに接着剤57でインク供給口44の部分を封止する。薄厚にする領域58は、図8では圧電アクチュエーター6と接する面側を薄くしているが、その反対面、すなわち圧力室42に面する側を薄く形成してもよい。但し、アルカリエッチング等により薄厚化すると化学的に不安定になり耐インク性が低下する恐れがあるので図8のように圧電アクチュエーター6側を薄厚化する方が望ましい。また、振動板5の圧電アクチュエーター6と対する部分及び支柱60と対する部分は変形しないのでこれらの部分は必ずしも薄厚化せずに厚いまま残してもよい。
【0035】
さらに共通電極53は、樹脂フィルム52の薄厚にした領域58を囲うようにも形成する。樹脂フィルム52の厚みを薄くすると、圧電アクチュエーター6から力を受けたときに撓み易くなり、圧電アクチュエーター6の周囲の部分(例えば圧電アクチュエーター6と支柱60の間に跨る撓み部500など)が圧電アクチュエーター6の動きを妨げることが抑えられる。これは良い効果である。一方で、薄厚にした分、部品としての強度が落ちるため、振動板5の部品としての取り扱いが困難になる。そこで、薄厚にした領域58を囲うように共通電極53を形成する。金属箔は、樹脂フィルム52よりも強度が高いので、枠状に形成した共通電極53によって、振動板5の強度を確保する。しかもこの枠状にした部分に跨る様に電極54を配列しているので、電極54が梁の役割を兼ねてさらに強度が増す。金属箔による電極54は、給電用の電極として利用せずに、振動板5の部品としての取り扱いを容易にするためだけの目的で設け、圧電アクチュエーター6への給電は例えば従来通りの方法を採用しても構わない。
【0036】
振動板5の引出し部51は、ヘッド部2の外にケーブル状に延びている。引出し部51は、その先に給電部(不図示)を有する。一例として、引出し部51をプリント基板22に接続し、プリント基板22を介して引出し部51に給電する。引出し部51となる部分は、共通電極53が樹脂フィルム52と樹脂フィルム材55とで挟まれた構造となっている。樹脂フィルム52と樹脂フィルム材55は、いずれも振動板5の薄厚にした領域58以上の厚さで、望ましくは共通電極53である金属箔を挟む部分は互いに同じ厚さにする。この同じ厚さとは、基材側の樹脂フィルム52は2層金属箔貼り樹脂フィルムなので接着層を含まない厚さであり、被覆する側の樹脂フィルム材55は接着剤57の層を含む厚さである。このように共通電極53である金属箔を挟む樹脂フィルム材52,55を同じ厚さにすることによって、引出し部51を屈曲したときの中立面が金属箔のある場所と一致し、その結果、引き出し部51が屈曲に対して強くなる。
【0037】
特に図4に示すように、支柱60は、各チャネルの圧電アクチュエーター6の間に溝69を介して配置する。駆動用の圧電アクチュエーター6および支柱60とするダミーの圧電アクチュエーターは、共通の圧電体61、第1の内部電極62、第2の内部電極63、第1の外部電極64、及び第2の外部電極65を用いて一括で形成し、溝69を形成することで個々の圧電アクチュエーター6と支柱60に分ける。支柱60は、隣接する圧力室42間の隔壁40にあたる位置に配置する。これにより振動板5は、支柱60と隔壁40に挟持され、その位置が固定される。振動板5の支柱60と圧電アクチュエーター6の間に跨る部分が、圧電アクチュエーター6が変位したときの撓み部500となる(図11)。支柱60は、圧電アクチュエーター6と同様に圧電体61等で形成するのに代えて、別の部材で形成してもよい。例えば支持部材47と一体的に支柱を形成してもよい。
【0038】
図9は、インクジェットヘッド100の制御系の回路図である。図9に示すように、圧電アクチュエーター6は、第1の外部電極64を個別電極66に接続し、個別電極66を介して駆動IC3の出力端子に接続する。第2の外部電極65は、電極54を介して振動板5内の共通電極53に接続し、引出し部51内の共通電極53を介して共通電位に接続する。
【0039】
各圧電アクチュエーター6からの個別電極66は、駆動IC3の各チャネルの駆動ドライバD(すなわち、駆動回路)の出力端子にそれぞれ接続する。駆動IC3は、圧電アクチュエーター6に与える駆動電圧V1の電源7及び駆動電圧V2の電源70を接続する。電源7及び電源70は、正極を駆動IC3に接続し、負極をグランド(GND)に接続する。駆動IC3は、インクジェットプリンタ10の制御部である制御基板17(図1参照)から送られてくるプリントデータの信号線と接続する。プリントデータは、制御信号の一例である。各圧電アクチュエーター6のコモン端子からの共通電極53は、グランド(GND)に接続する。
【0040】
続いて、図10及び図11を参照しながらインク吐出動作について説明する。駆動IC3の各駆動ドライバDは、駆動電圧V1,V2及びグランド(GND)を使って、各圧電アクチュエーター6の個別端子に駆動波形を与える。電圧V1は例えば20Vである。電圧V2は例えば10Vである。グランド(GND)は例えば0Vである。どの圧電アクチュエーター6を駆動させるかは、例えばプリントデータに基づく。図10は、圧電アクチュエーター6に与える駆動波形の一例である。
【0041】
図10に示すように、コモン端子にクランド電位を与えている圧電アクチュエーター6を駆動させる場合、個別端子に電圧V2を与えて待機状態とする。電圧V2を与えると、圧電体61の分極軸の向きに電界が印加され、図11(a)に示すように、圧電アクチュエーター6が積層方向(Z方向)に伸長して圧力室42の容積が縮小した状態になる。これはインク吐出のタイミングに先立って行っておく。その後、インクの吐出タイミング(図10の時刻t1)で最初に個別端子の電位をグランド(GND)に下げることで、図11(b)に示すように、伸長していた圧電アクチュエーター6が元に戻り、すなわち相対的に収縮し、圧力室42の容積が相対的に拡張する。圧力室42の容積が拡張した分、ガイド流路43を介して圧力室42内にインクが流れ込む。そして例えばヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間経過後、図10の時刻t2において個別端子に電圧V2を与えると、図11(c)に示すように、圧電アクチュエーター6が積層方向(Z方向)に伸長して相対的に圧力室42の容積が縮小することでノズル24からインクの液滴Rが吐出する。そして例えばヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間経過後、図10の時刻t3において個別端子に電圧V1を与え、所定時間後の時刻t4で電圧V2に戻す。その際の圧電アクチュエーター6の伸長(図11(d))と復帰(図11(a))によって圧力室42の容積を縮小、復帰させ、この動作によって残留振動を減衰させる。このように圧電アクチュエーター6の積層方向の縦振動に合わせて圧力室42の容積が変わり、インクを吐出することができる。
【0042】
図11(a)~(d)に模式的に示したように、圧電アクチュエーター6が積層方向(Z方向)に変形すると、振動板5は、特に溝69に対応する部位にある撓み部500が変形する。例えばノズル密度が300dpiの場合、圧力室42のピッチは169μmである。圧力室42の幅は約80μm、圧電アクチュエーター6の幅は約40μm、溝69の幅は20μmである。振動板5は、金属箔貼り樹脂フィルム52で形成し、さらに薄厚の領域58を設けているので、圧電アクチュエーター6から支柱60までの空間(溝69)の撓み部500の撓み変形を妨げにくい。しかも圧電アクチュエーター6は、電極54を介して振動板5に力を与えるので、圧電アクチュエーター6から受ける力が振動板5に伝わりやすい。その結果、撓み難い振動板に比べて、インクを吐出する効率が向上する。さらに、振動板5は、金属箔貼り樹脂フィルム52を用いたことで安価に制作できる。また電極54が振動板5と一体になっているので狭幅になりがちなフレキシブルプリント基板21を経由する代わりに別経路で給電することで共通電極53の抵抗を下げることができ、電気的クロストークを防ぎ、印字品質を向上させることができる。
【0043】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に従うインクジェットヘッド100について、図12図17を参照しながら説明する。第2実施形態に従うインクジェットヘッド100は、振動板5の構造が異なることを除けば、第1実施形態と同様である。従って、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付すことによって詳細な説明は省略する。
【0044】
第2実施形態の振動板5は、図12に示すように、Y方向において第1実施形態とは反対側に引出し部51を設けている。図13は、振動板5の一例を示す。図13の平面図と断面図に示すように、引出し部51は、インク供給口44とは反対側に設けている。従って、圧力室42とフレーム46との間には、共通電極53,樹脂フィルム材55及び接着剤56は無く、樹脂フィルム52だけで仕切っている。そのため、インク供給口44を避けるように共通電極53をパターニングしなくて済む。
【0045】
第2実施形態の変形例として、フレキシブルプリント配線板21を共通電極53の配線引き出しに使用し、振動板5を個別電極66の引き出しに使用するようにしてもよい。この場合、図14に示すように、各チャネルの圧電アクチュエーター6は、第1の外部電極64同士を接続し、第2の外部電極65はチャネル毎に切り離す。図14は、圧電アクチュエーター6及び支柱60を振動板5側からみた斜視図である。第1の外部電極64同士は、ダミー層68の領域を利用して接続する。すなわち、第1の外部電極64を圧電アクチュエーター6側の共通電極とする。
【0046】
図15は、ヘッド部2の断面を示し、図16は、共通電極を引き出すフレキシブルプリント配線板21の一例を示す。図16の平面図と断面図に示すように、フレキシブルプリント配線板21側の共通電極53は、樹脂フィルム26上に形成する。共通電極53は、各圧電アクチュエーター6の第1の外部電極64と接続できるように、樹脂フィルム26の先端側で露出させて電極54の部分を形成している。共通電極53の基端側は、樹脂フィルム26上に面積を広く形成し、樹脂フィルム材55で被覆している。樹脂フィルム材55は、接着剤56で固定する。
【0047】
図17は、個別電極を引き出す振動板5の一例を示す。図17の平面図と断面図に示すように、振動板5は、薄厚の領域58を形成した樹脂フィルム52上に個別電極66を形成する。そして引出し部51を樹脂フィルム材55で被覆する。樹脂フィルム材55は、接着剤56で固定する。個別電極66は、樹脂フィルム52上に圧電アクチュエーター6の数だけ同じピッチで並列に形成する。各個別電極66は、各チャネルの圧電アクチュエーター6の中心線上に位置するように夫々配置する。また支柱60の中心線上には島状の電極601を配置する。個別電極66及び島状の電極601の幅は、第2の外部電極65の幅よりも小さくするのが好ましい。但し、個別電極66の厚みは、第2の外部電極65の厚みよりも大きくする。
【0048】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に従うインクジェットヘッド100について、図18図20を参照しながら説明する。第3実施形態に従うインクジェットヘッド100は、フレキシブルプリント配線板21を省略し、共通電極と個別電極の両方の引き出しを振動板5で行うようにしたことを除けば、第2実施形態と同様である。従って、第2実施形態と同様の構成については、同じ符号を付すことによって詳細な説明は省略する。この実施形態では圧電アクチュエーター6への配線経路が全て振動板5と一体になっているので配線電極を別途形成するのを省略できる。
【0049】
図18及び図19に示すように、各チャネルの圧電アクチュエーター6及び支柱60は、振動板5と対向する面にX方向に溝59を形成し、溝59の部分を隔てて同一面に第1の外部電極64と第2の外部電極65の両方を形成している。すなわち第1の外部電極64と第2の外部電極65の分離部を形成している。溝59を形成する代わりにパターニングによって第1の外部電極64と第2の外部電極65を分離してもよい。さらに、図19に示すように、各圧電アクチュエーター6の第1の外部電極64同士は、ダミー層68の領域を利用して互いに接続し、共通電極とする。一方、第2の外部電極65は、チャネル毎に切り離す。図19は、圧電アクチュエーター6及び支柱60を振動板5側からみた斜視図である。
【0050】
図20は、振動板5の一例を示す。図20の平面図と断面図に示すように、薄厚の領域58を形成した樹脂フィルム52上に共通電極53と個別電極66の両方を形成する。各第1の外部電極64と接続する電極54は、領域58の縁に圧電アクチュエーター6の配列方向に沿って形成した共通電極53から夫々形成する。共通電極53の引き出しは、圧電アクチュエーター6の配列方向に形成した共通電極53の両端を、電極54よりも大きい幅で引出し部51に向けて引き出すことによって行う。
【0051】
一方、個別電極66は、コの字状に形成した共通電極53の内側の領域に、圧電アクチュエーター6の数だけ同じピッチで並列に形成する。各電極54及び各個別電極66は、各チャネルの圧電アクチュエーター6の中心線上に位置するように夫々配置する。但し、個別電極66と電極54の先端部同士は、圧電アクチュエーター6上の第1の外部電極64と第2の外部電極65の分離部に合わせて間をあける。各電極54及び各個別電極66の幅は、第2の外部電極65及び第1の外部電極64の幅よりも小さくするのが好ましい。但し、各電極54及び各個別電極66の厚みは、第2の外部電極65及び第1の外部電極64の幅個別電極66の厚みよりも大きくする。振動板5は、圧電アクチュエーター6と接続する部分を除いて、樹脂フィルム材55で被覆する。
【0052】
続いて、第4実施形態に従うインクジェットヘッド100について、図21図23を参照しながら説明する。第4実施形態は、第3実施形態に対して、圧電アクチュエーター6毎に共通電極と個別電極を分割しないで、圧電アクチュエーター6の配列方向の両端に位置する例えば支柱60を共通電極の引き出しに利用する。そのため、図21に示すように、圧電アクチュエーター6の配列方向の両端に、積層電極の内部構造を変えた支柱600を設ける。支柱600は、第1の内部電極62と第2の内部電極63を、第1の外部電極64と第2の外部電極65に跨るように形成する。すなわち、支柱600の第1の外部電極64と第2の外部電極65を電気的に接続する。そして、各圧電アクチュエーター6の第1の外部電極64同士を、ダミー層68の領域を利用して互いに接続し、さらに支柱600の第1の外部電極64とも接続して、共通電極とする。各圧電アクチュエーター6の第2の外部電極65は、チャネル毎に切り離すが、前述のとおり支柱600の第2の外部電極65は、共通電極とつながっている。
【0053】
図22は、振動板5の一例を示す。図22の平面図と断面図に示すように、振動板5は、薄厚の領域58を形成した樹脂フィルム52上に共通電極53と個別電極66の両方を形成する。支柱600の第2の外部電極65と接続する共通電極53は、樹脂フィルム52の両側に、引出し部51に向けて2本形成する。個別電極66は、2本の共通電極53の内側の領域に、圧電アクチュエーター6の数だけ同じピッチで並列に形成する。共通電極53の幅は、個別電極66の幅よりも大きい。各個別電極66は、各チャネルの圧電アクチュエーター6の中心線上に位置するように夫々配置する。第4実施形態の変形例として、端部だけでなく他の支柱60も支柱600に替えてよい。さらに全ての支柱60を支柱600に替えてもよい。すなわち、圧電アクチュエーター6と支柱600を交互に配置してもよい。端部以外の支柱600への配線は、図23のようにして個別電極66を引き出す方向の反対側から回り込ませる。樹脂フィルム52上の銅配線は、圧電アクチュエーター6上の配線と比べて厚く安定に形成し易いので、多くの支柱60を共通電極として利用することによって、共通電極の抵抗を下げ、その結果、電気的なクロストークを防ぎ、インク吐出を安定化させ印字品質を向上できる。
【0054】
(第5実施形態)
続いて、第5実施形態に従うインクジェットヘッド100について、図24図29を参照しながら説明する。第5実施形態に従うインクジェットヘッド100は、第4実施形態で説明した圧電アクチュエーター6の配列方向の両端に位置する例えば支柱60を共通電極の引き出しに利用する形態を、第2実施形態に適用した実施形態である。従って、第3実施形態及び第2実施形態と同様の構成については、同じ符号を付すことによって詳細な説明は省略する。
【0055】
図24に示すように、圧電アクチュエーター6の配列方向の両端に、積層電極の内部構造を変えた支柱600を設ける。支柱600は、第1の内部電極62と第2の内部電極63を、第1の外部電極64と第2の外部電極65に跨るように形成する。すなわち、支柱600の第1の外部電極64と第2の外部電極65を電気的に接続する。各圧電アクチュエーター6は、第2の外部電極65同士を、ダミー層68の領域を利用して互いに接続し、さらに支柱600の第1の外部電極64とも接続して、共通電極としている。各圧電アクチュエーター6の第1の外部電極64は、チャネル毎に切り離すが、支柱600の第1の外部電極64は、共通電極とつながっている。
【0056】
図25は、振動板5の一例を示す。図25の平面図と断面図に示すように、振動板5は、薄厚の領域58を形成した樹脂フィルム52上に共通電極53を形成する。支柱600の第2の外部電極65と接続する共通電極53は、樹脂フィルム52の両側に、引出し部51に向けて2本形成し、さらに引出し部51で互いに接続する。樹脂フィルム52上には、共通電極53とは別に、島状の電極50を形成する。島状の電極50は、圧電アクチュエーター6の振動板5と対向する面の中央及び支柱60の振動板5と対向する面の中央に位置するように配置する。島状の電極50は、電圧の印加には利用せず、圧電アクチュエーター6からの力を受けるのに使用する。
【0057】
図26は、フレキシブルプリント配線板21の一例を示す。図26の平面図と断面図に示すように、個別電極66は、樹脂フィルム26上に圧電アクチュエーターの数だけを同じピッチで並列に形成している。各個別電極66は、各チャネルの圧電アクチュエーター6の中心線上に位置するように夫々配置する。個別電極66の幅は、圧電アクチュエーター6の第1の外部電極64の幅よりも小さくするのが好ましい。但し、個別電極66の厚みは、圧電アクチュエーター6の第1の外部電極64の厚みよりも大きくしている。
【0058】
第5実施形態の変形例として、図27に振動板5の一例を示す。図27の平面図と断面図に示すように、図25における圧電アクチュエーター6と接する島状の電極50は、共通電極53に接続してもよい。すなわち、薄厚の領域58を囲うように共通電極53を形成し、電極50を接続する。これにより、共通電極53の共通抵抗を下げることができる。さらに、詳しくは上述の理由により、薄厚の領域58の強度を高めることができる。別の変形例として、支柱600を端部だけでなく他の支柱60も支柱600に替えてよい。さらに全ての支柱60を支柱600に替えてもよい。すなわち、圧電アクチュエーター6と支柱600を交互に配置してもよい。図28の振動板5のように、圧電アクチュエーター6に接する島状の電極50は島状のまま残し、支柱600に接する電極を共通電極に接続してもよい。図29のように圧電アクチュエーター6に接する電極と支柱600に接する電極の両方を共通電極に接続してもよい。この場合も共通電極として利用する部分を増すことによって共通電極の抵抗を下げ、その結果、電気的なクロストークを防ぎ、インク吐出を安定化させ印字品質を向上できる。
【0059】
(第6実施形態)
続いて、第6実施形態に従うインクジェットヘッド100について、図30図33を参照しながら説明する。第6実施形態に従うインクジェットヘッド100は、共通電極と個別電極の両方をフレキシブルプリント配線板21に接続する。そして、振動板5からは電圧の印加に使用する電極は引き出さず、振動板5に形成した電極は圧電アクチュエーター6からの力を受けると共に、共通抵抗を下げ電気的クロストークを低減するのに使用する。また振動板5を補強して振動板5の部品としての取り扱いを容易にする。
【0060】
図30に示すように、圧電アクチュエーター6の配列方向の両端に、積層電極の内部構造を変えた支柱600を設ける。支柱600は、第1の内部電極62と第2の内部電極63を、第1の外部電極64と第2の外部電極65に跨るように形成する。すなわち、支柱600の第1の外部電極64と第2の外部電極65を電気的に接続する。各圧電アクチュエーター6は、第2の外部電極65同士を、ダミー層68の領域を利用して互いに接続し、さらに支柱600の第2の外部電極65とも接続して、共通電極としている。各圧電アクチュエーター6の第1の外部電極64は、チャネル毎に切り離すが、支柱600の第1の外部電極64は、共通電極とつながっている。図31はヘッド部2の断面図である。
【0061】
図32は、振動板5の一例を示す。図32の平面図と断面図に示すように、振動板5は、薄厚の領域58を囲うように電極8を形成し、さらに電極81を接続する。電極81は、圧電アクチュエーター6の振動板5と対向する面の中心線上及び支柱60の振動板5と対向する面の中心線上に位置するように配置する。電極81は、圧電アクチュエーター6からの力を受けるのに使用する。さらに、電極81同士を枠状の電極8で接続することで共通抵抗を下げる。支柱600を端部だけでなく他の支柱60も支柱600に替えてよい。すなわち、圧電アクチュエーター6と支柱600を交互に配置してもよい。
【0062】
図33は、フレキシブルプリント配線板21の一例を示す。図33の平面図と断面図に示すように、フレキシブルプリント配線板21は、樹脂フィルム26上に共通電極53と個別電極66の両方を形成する。支柱600の第2の外部電極65と接続する共通電極53は、樹脂フィルム26の両側に形成する。個別電極66は、2本の共通電極53の内側の領域に、圧電アクチュエーター6の数だけ同じピッチで並列に形成する。
【0063】
この実施形態では振動板5に引出し部51が無く、かつ振動板5の面積が小さいので、薄厚部である薄厚の領域58を設けず、代わりに振動板5の樹脂フィルム52を全面に亘って薄く形成してもよい。樹脂フィルム52の全面が薄くても電極8が振動板5の部品としての取り扱いを容易にする。部品状態の振動板5をさらに補強するために撓み部500を除く他の場所に電極8を拡張してもよい。
【0064】
以上説明したように、上述の実施形態によれば、圧電アクチュエーター6から与える力で撓み易い金属箔貼り樹脂フィルム52で形成した振動板5を備えたインクジェットヘッド100を提供することが可能である。上述の構成の積層型圧電アクチュエーターは、Z方向の変形量が大きいので、この実施形態による効果は大きい。
【0065】
なお、圧電アクチュエーター6は、複数の圧電体61を積層した積層型に限らない。圧電体61が単一層の圧電アクチュエーターであってもよい。また、駆動電圧を印加したときの圧電アクチュエーターの動作は、縦振動に限らない。さらに、ドロップオンデマンド・ピエゾ方式に限らず、コンティニアス方式に適用してもよい。
【0066】
上述の実施形態では、インクジェットプリンタ10のインクジェットヘッド100を液体吐出ヘッドの一例として説明したが、液体吐出ヘッドは、3Dプリンタの造形材吐出ヘッド、分注装置の試料吐出ヘッドであってもよい。
【0067】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
10 インクジェットプリンタ
100~103 インクジェットヘッド
2 ヘッド部
24 ノズル
3 駆動IC
5 振動板
51 引出し部
52 樹脂フィルム
53 共通電極
54 電極
6 圧電アクチュエーター
60 支柱
600 支柱
D 駆動ドライバ(駆動回路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図19
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図28
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図30
図31
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図33