(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106215
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】保温具用排気口
(51)【国際特許分類】
A41D 1/00 20180101AFI20240731BHJP
A41D 27/28 20060101ALI20240731BHJP
A41D 1/02 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A41D1/00 D
A41D27/28 B
A41D1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010410
(22)【出願日】2023-01-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 展示会名 アウトドア/アスレチック総合展示会 展示日 令和4年12月5日
(71)【出願人】
【識別番号】594137960
【氏名又は名称】株式会社ゴールドウイン
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】松山 航大
(72)【発明者】
【氏名】金田 次弘
(72)【発明者】
【氏名】原 直生
【テーマコード(参考)】
3B030
3B031
3B035
【Fターム(参考)】
3B030AA01
3B030AB05
3B030AB12
3B031AA08
3B031AB01
3B031AB06
3B031AB13
3B031AC01
3B031AC13
3B031AE07
3B031AE09
3B035AA01
3B035AB01
3B035AB03
3B035AB09
3B035AB11
3B035AD07
(57)【要約】
【課題】空気を確実に密閉しかつ空気を抜く際は効率よく排気することができ、使用感も良好な保温具用排気口を提供する。
【解決手段】空気を充填する空気収容空間22aの、表生地18又は裏生地16の開口部30に、筒布38を備える。筒布38は、筒体の一方の開口である先端部38fが開口部30の外側に位置し、先端部38fとは反対側の基端部38eは、開口部30の内側の空気収容空間22aに位置する。筒布38は、平坦に潰され、筒体の挿通方向に対して略直角な畳み位置に沿って複数回折りながら巻いて、開口部30の中に収納する。筒布38の内側面は、密着性を有する。空気収容空間22aには、保温性を有する中綿部材24が密閉して入れられ、筒布38の基端部38eは、通気性生地の筒奥布52で塞がれている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏生地と表生地が連結されて袋状とした内側空間の全部または一部に、空気を充填する空気収容空間を有した保温具に取り付けられる保温具用排気口において、
前記空気収容空間に位置する前記表生地又は前記裏生地に形成された開口部に筒布を備え、
前記筒布は、筒体の一方の開口である先端部が前記開口部の外側に位置し、前記先端部とは反対側の基端部は、前記開口部の内側に位置し前記空気収容空間と外気とに連通し、平坦に潰されて前記開口部の中に収納可能であることを特徴とする保温具用排気口。
【請求項2】
前記筒布は、筒体の挿通方向に対して略直角な畳み位置に沿って複数回折りながら巻いて、前記開口部の中に収納される請求項1記載の保温具用排気口。
【請求項3】
前記筒布の内側面は、密着性を有している請求項2記載の保温具用排気口。
【請求項4】
前記空気収容空間には保温性を有する中綿部材が密閉して入れられ、
前記筒布の前記基端部は、通気性生地の筒奥布で塞がれ、前記筒奥布により前記空気収容空間に入れられた前記中綿部材が前記筒布から出ることを防いでいる請求項1又は2記載の保温具用排気口。
【請求項5】
前記開口部の縁部には係止部材が設けられ、前記筒布を収納して前記開口部を開閉可能に閉鎖する請求項2又は3記載の保温具用排気口。
【請求項6】
前記筒布は、一枚の生地からなり、前記生地が挿通方向に沿う一対の折線で平坦に潰され、互いに重ねられた一対の側縁部が、前記一対の折線の間に位置し、接着のりで互いに接着されている請求項2又は3記載の保温具用排気口。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、寒冷地等で使用する保温具に設けられる保温具用排気口に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防寒用に使用する保温具には、表地と裏地の間に断熱材が入れられたものがある。また、表地と裏地の間に空気を入れて膨らませ、高い保温性を得るものもある。例えば、特許文献1の衣服は、空気封入可能な空気袋と、衣服の内側に首周りを覆う空気袋を収納し被覆する収納部と、空気ポンプと、空気送りパイプと、バルブが設けられている。この衣服は、空気ポンプにより空気袋に空気を入れて膨らませ、衣服の襟と首の隙間を無くし、遮蔽する。これにより、外部からの空気の流入を防ぎ、保温性を保つことができる。しかし、構造が複雑であり、また空気ポンプと空気送りパイプ、バルブが立体形状であることから着用感が良くないという問題もある。さらに、空気袋から迅速に排気することができず、空気袋を使用しない場合や収納時の取扱性が良くないものである。
【0003】
そこで、簡単な構造で、空気取入口と空気注入弁が設けられたものもある。特許文献2の衣類とその製造方法は、通気性のない生地で作られた表地と、同様に通気性のない生地で作られた裏地と、表地と裏地の周縁部及びその内側を気密に接着する所定パターンの接着部と、表地と裏地と接着部で囲まれた空気室と、表地または裏地に設けられ外気を表地と裏地の間の空気室に取り入れる空気取入口と、空気取入口と空気室を連通する空気注入弁が設けられている。空気注入弁は、表地と裏地を接着部で接着して作られた細い流路である。表地と裏地の一方には、空気室内の空気を抜く減圧弁が設けられている。この衣類は、空気取入口から空気を入れ、空気注入弁の流路を通過して、空気室に入れる。空気室に空気がある程度充満すると、保温性が高い衣服となる。着用しない時は、減圧弁から空気室の空気を抜いて、表地と裏地を折り畳んでコンパクトに収納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-2503号公報
【特許文献2】特開2005―264393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2の場合、空気注入弁は表地と裏地を接着部で接着して作られた細い流路であり、平坦なため着用感は良好であるが気密性が十分ではない。さらに、空気室内の空気を抜く減圧弁は、平坦にすることは考えられておらず、減圧弁が着用者に違和感を与える恐れがある。
【0006】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、空気を確実に密閉しかつ空気を抜く際は効率よく排気することができ、使用感も良好な保温具用排気口を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、裏生地と表生地が連結されて袋状とした内側空間の全部または一部が、空気を充填する空気収容空間である保温具に取り付けられる保温具用排気口において、前記空気収容空間に位置する前記表生地又は前記裏生地に形成された開口部に筒布を備え、前記筒布は、筒体の一方の開口である先端部が前記開口部の外側に位置し、前記先端部とは反対側の基端部は、前記開口部の内側に位置し前記空気収容空間と外気とに連通し、平坦に潰されて前記開口部の中に収納可能な保温具用排気口である。
【0008】
前記筒布は、筒体の挿通方向に対して略直角な畳み位置に沿って複数回折りながら巻いてコンパクトにして、前記開口部の中に収納される。前記筒布の内側面は、密着性を有していると良い。
【0009】
前記空気収容空間には保温性を有する中綿部材が密閉して入れられ、前記筒布の前記基端部は、通気性生地の筒奥布で塞がれ、前記筒奥布により前記空気収容空間に入れられた前記中綿部材が前記筒布から出ることを防いでいるものである。
【0010】
前記開口部の縁部には係止部材が設けられ、前記筒布を収納して前記開口部を開閉可能に閉鎖する。前記筒布は、一枚の生地からなり、前記生地が挿通方向に沿う一対の折線で平坦に潰され、互いに重ねられた一対の側縁部が、前記一対の折線の間に位置し、接着のりで互いに接着されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の保温具用排気口は、表生地と裏生地の間に空気を出し入れして保温性を調節する保温具に取り付けられ、空気を確実に密閉しなおかつ空気を抜く際は効率よく排気することができる。平坦な構造であり、使用者に違和感を与えることが無く、使用感が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の一実施形態の保温具用排気口を取り付けた保温具であるジャケットの、空気を抜いた状態を示す正面図(a)と空気を入れた状態を示す正面図(b)である。
【
図2】この実施形態の保温具用排気口の筒布を収納した状態を示す正面図(a)と、筒布を引き出した状態を示す正面図(b)である。
【
図3】この実施形態の保温具用排気口の筒布の斜視図である。
【
図4】この実施形態の保温具用排気口の部分破断斜視図である。
【
図5】この実施形態の保温具用排気口を取り付けた試験用の袋の空気を抜いた状態を示す正面図(a)と、空気を入れた状態を示す正面図(b)と、筒布を引き出す途中の状態を示す正面図(c)と、筒布を引き出して空気を抜く状態を示す正面図(d)と斜視図(e)である。
【
図6】この実施形態の保温具用排気口を取り付けた保温具の保温性の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1~
図5はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の保温具用排気口10は、寒冷地等で使用する保温具に設けられ、ここではジャケット12に取り付けられている。
図1は、ジャケット12の正面図であり、着用者の上半身を覆う前身頃、後見頃、袖部等のパーツが縫い合わされて形成され、前身頃の中心には、着脱の際に開閉するファスナ14が設けられている。ジャケット12は、着用者の身体側に位置する裏生地16と、身体とは反対側に位置する表生地18が積層して設けられている。裏生地16と表生地18は、低通気または無通気生地で作られている。
【0014】
裏生地16と表生地18は、裏面同士が向かい合うように重ねられ、裏生地16と表生地18が連結されて袋状とした内側空間22が形成されている。裏生地16と表生地18の連結方法は、ここでは縫い目20で縫い合わせる。縫い目20には、図示しない気密シートが貼られ、気密性を有している。縫い目20は、ジャケット12を着用した時に、着用者の上下方向に所定間隔を開けて略水平に、前身頃、後見頃、袖部に設けられている。縫い目20で縫い合わせる方法以外に接着でも良く、接着の場合は、気密シートは不要である。裏生地16と表生地18、また裏生地16と表生地18の連結方法は、空気の圧力に対して連結強度が保てる資材と縫製仕様を選定する。接着の場合は、接着剥離しにくい資材を採用する。内側空間22には、保温性を有する中綿部材24が密閉して入れられ、中綿部材24は、例えばダウンである。
【0015】
ジャケット12の内側空間22は、空気を追加することができる空気収容空間22aであり、空気収容空間22aどうしが互いに通気可能に連続している。例えば、空気収容空間22aを区切る縫い目20の一部が途切れて、互いに通気可能となる。ジャケット12の着用者の左胸には、裏生地16に注入口26が設けられている。注入口26は例えば、合成樹脂製の給気バルブが設けられている。注入口26は、給気のみが可能で排気不能なバルブであり、空気収容空間22aと外気を連通可能にしている。ジャケット12の着用者の左腹部の、裾に近いところには、保温具用排気口10が設けられている。保温具用排気口10は、後述するように、空気収容空間22aと外気を開閉可能に連通している。
【0016】
ジャケット12は、保温具用排気口10を閉じた状態で、注入口26から図示しないポンプ等で空気収容空間22aに空気を入れると、
図1(b)に示すように、ジャケット12全体が膨らみ、中綿部材24に空気を含ませて、断熱性を高めることができる。保温具用排気口10を閉じた状態とすることで、空気が漏れることが無く、気圧が高い状態を維持する。保温具用排気口10を開いてジャケット12を押しつぶすと、空気収容空間22a内の空気が排気され、
図1(a)に示すように、ジャケット12全体の厚みが薄くなり、断熱性が低下する。従って、ジャケット12は、外気温や運動のしやすさに合わせて、空気収容空間22aの断熱性と厚みを変更することができる。
【0017】
次に、保温具用排気口10について
図2~
図4に基づいて説明する。裏生地16に、保温具用排気口10を設けるために、矩形に切除した開口部30が形成され、開口部30は、着用者の身体の縦方向に交差する方向に長く形成されている。開口部30には、裏生地16と同じ生地で作られた玉縁布32が設けられている。玉縁布32の中央には、係止部材であるスナップボタン34の凸部材34aが取り付けられている。玉縁布32の下端部32aは、開口部30の下端部30aに縫い付けられておらず、出入口36となる。
【0018】
開口部30には、保温具用排気口10を形成する筒布38が設けられ、筒布38は、裏生地16と同じ生地で作られている。筒布38は、
図3に示すように、一枚の生地を、挿通方向に沿う一対の折線38bで折り、挿通方向に沿う一対の側縁部38aが互いに重ねられ、接着のり41で接着され、筒体が形成され、筒体が平坦に潰されている。平坦に潰された内側面38cには、密着性を付与するために滑り止め接着シート等の密着性シート40が貼り付けられている。密着性シート40は、例えばシリコンシート製である。互いに重ねられた一対の側縁部38aは、一対の折線38bのほぼ中間、つまり筒布38の幅の中間に位置している。筒布38の挿通方向の長さは、開口部30の着用者の身体の縦方向長さの4~5倍程度である。
【0019】
筒布38は、出入口36を通過して開口部30に挿通して取り付けられ、平坦に潰された面が裏生地16に対して平行であり、筒布38の筒体の一方の開口である先端部38fは開口部30の外側に位置し、先端部38fとは反対側の基端部38eは、開口部30の内側で空気収容空間22aの中に位置する。空気収容空間22aは、保温具用排気口10の筒布38を介して外気と連通する。筒布38の挿通方向は、着用者の身体の縦方向に沿うものであり、開口部30の下端部30aに対して略直角となる。筒布38の外側面38dには、開口部30側に、裏生地16と同じ布地で作られた補強布46が筒布38を一周して設けられている。筒布38は、筒体の挿通方向に対して略直角に複数回折りながら巻いてコンパクトにして、出入口36を通過して開口部30の中に収納可能である。ここでは、3つの折り畳み位置48で3回折って、収納する。筒布38の畳み位置48の折り方は、筒布38の先端部38fを、裏生地16から離れる方向に折り返す。筒布38の側縁部38aは、筒布38が開口部30から下方に向かって延出した時に、裏生地16側に位置する。
【0020】
空気収容空間22aの中に位置する筒布38の基端部38eは、メッシュ等の通気性生地の筒奥布52に連続して塞がれている。筒奥布52は袋状に形成され、空気収容空間22aに入れられた中綿部材24が、筒布38から外に出ることを防いでいる。
【0021】
開口部30の下端部30aには、帯状の舌片44が設けられ、舌片44の先端にはスナップボタン34の凹部材34bが取り付けられている。筒布38を開口部30に入れた時に、舌片44で玉縁布32を覆って、舌片44の凹部材34bと、玉縁布32の凸部材34aを係止させてスナップボタン34をとめ、出入口36を開閉可能に閉鎖し、筒布38を収納する。保温具用排気口10の外観は、玉縁布32を有しスナップボタン34で開閉可能なポケット状となる。
【0022】
ジャケット12の空気収容空間22aに空気を入れる時は、
図2(a)に示すように、筒布38を折り畳み位置48で3回折って、出入口36の中に収納し、スナップボタン34をとめる。筒布38は筒体で平坦に畳まれ、密着性シート40どうしが互いに対面し、互いに密着し、空気は筒布38の内側を通ることができず、通気が遮断され、閉鎖される。空気収容空間22aから空気が漏れることが無く、気圧が高い状態を維持する。
【0023】
ジャケット12の空気収容空間22aの空気を抜くときは、
図2(b)に示すように、スナップボタン34を外し、出入口36を開口させ、中に収容されている筒布38を引き出し、畳み位置48の折れ目を開き、延出させる。空気収容空間22aが筒布38を介して外気と連通し、通気が可能となる。この状態でジャケット12を押しつぶすと、空気収容空間22a内の空気が筒布38から外へ排気される。
【0024】
次に、保温具用排気口10の詳しい構造と製造工程について
図4に基づいて説明する。
図4は保温具用排気口10の部分破断斜視図である。まず、筒体にした筒布38の内側面38cに、筒体の密着性シート40を接着する。密着性シート40は、筒布38の先端部38fに達し、反対の基端部38eからは少し離れた位置まで設けられ、基端部38eには達していない。
【0025】
次に、筒布38の外側に筒体の補強布46を接着する。補強布46の挿通方向の長さは筒布38の半分程度である。裏生地16に開口部30を設け、開口部30に、玉縁布32と、接続布50を縫い付ける。接続布50は、低通気または無通気生地で作られ、開口部30の下端部30aに、玉縁布32の裏側に重ねて取り付ける。
【0026】
次に、筒布38を裏生地16に接続するために、筒体の補強布46の端部を、玉縁布32の下端部32aとは反対側の上端部32b又は接続布50の上端部に縫い合わせる。筒布38の、玉縁布32の裏側に位置する基端部38eに、通気生地で作られた筒体の筒奥布52を縫い付ける。筒奥布52は、少し大きくカットされ、タックが寄せられている。そして、基端部38eを挟む様に、接着シート54を接着し、密閉する。
【0027】
さらに筒奥布52に帯状の連結布56を縫い付け、連結布56を裏生地16の内側に接着する。連結布56は、低通気または無通気生地で作られている。これで、保温具用排気口10が完成する。
【0028】
この実施形態のジャケット12の使用方法について
図1、及び
図5の試験用の袋の例に基づいて説明する。
図5(a)に示すように、通常は保温具用排気口10を閉じる。この状態から、
図5(b)に示すように、空気収容空間22aに、
図1のジャケット12の注入口26等から空気を充填し、空気収容空間22aの厚みを膨らませ、中綿部材24に空気を含ませると、
図1(b)に示すようにジャケット12が厚くなり、断熱性が高いジャケット12となる。この時、保温具用排気口10は閉じているため、空気収容空間22aの空気が漏れない。
【0029】
外気温や運動のしやすさに合わせて、空気収容空間22aの空気を減らす場合やジャケット12を収納する場合、
図5(c)に示すように、スナップボタン34を外し、出入口36を開口させ、中に収容されている筒布38を引き出し、畳み位置48の折れ目を開く。
図5(d)(e)に示すように、筒布38のすべての折れ目を開いて延出させると、密着性シート40の密着が弱くなり、空気収容空間22a内の空気が筒布38を介して外気と連通する。
【0030】
この状態でジャケット12を押しつぶすと、空気収容空間22a内の空気が筒布38を通過して排気される。ジャケット12は
図1(a)に示すように薄くなり、断熱性能が低くなり、体積も小さくなる。空気量が所望の少量になった時は、再び保温具用排気口10を閉じる。着用しない時も、保温具用排気口10から空気収容空間22aの空気を抜いて、ジャケット12の裏生地16と表生地18の間隔を薄くして、コンパクトに収納する。ジャケット12を畳みながら排気しても良く、裾の近傍に保温具用排気口10が設けているため、畳みながら排気する好適な位置である。
【0031】
この実施形態の保温具用排気口10によれば、表生地18と裏生地16の間に空気を出し入れして保温性を調節する保温具の、空気を確実に密閉しなおかつ空気を抜く際は効率よく排気することができる。排気する筒布38が大きく、平坦な構造であり、効率よく排気可能で、着用者には違和感を与えることが無く着用感が良好である。筒布38を折り畳むと通気が遮断され、筒布38を引き出して延出すると通気が可能となり、切り替え作業が容易である。筒布38は、側縁部38aどうしを接着のり41により幅の中心で剥ぎ合わせて作られ、厚みの段差が生じることを極力避け、段差から空気流入することを防ぐことができる。空気収容空間22aどうしは縫い目20で区切られているため、通気は確保されているが、中綿部材24が移動することが無く、型崩れする恐れがない。筒布38の基端部38eには袋状のメッシュ生地等の通気性の筒奥布52が設けられているため、空気収容空間22aに入れられた中綿部材24が、筒布38から出ることが無い。
【0032】
なお、この発明の保温具用排気口は上記実施の形態に限定されるものではなく、製造工程の順番は、上記実施形態と異なるものでも良く、補強布や接続布、連結布等の構造や取り付け位置等は、これ以外でも良い。裏生地と表生地を縫い合わせる縫い目の位置や数、空気収容空間の形状等、自由に変更可能である。
【0033】
保温具用排気口を設ける位置は、上記実施形態のように着用者の左腹部の裾に近いところの他、上記以外の位置でも良い。しかし、ジャケットを畳みながら排気し且つ着用時の不快感を抑えるため、裾や襟先や袖口等の端部位が好適な位置である。保温具用排気口を閉鎖する手段は、舌片とスナップボタンによるもの以外でも良く、釦、ベルクロ(登録商標)、ホック、ファスナー、磁石等自由に選択可能である。筒布を収容する際に折り畳む回数は、上記以外の回数でも良く、要求される気密性に依るが、実用性を考慮すると2~4回が適当である。筒布の形状は自由であるが、空気の流入を防ぐため、長方形又は先細形状が好適である。筒布は、一枚の生地を、側縁部どうしを接着のりにより幅の中間で剥ぎ合わせて作られているが、これ以外でも良い。
【0034】
保温具用排気口を取り付ける保温具は、ジャケットに限らず、ズボンや寝袋、掛け布団、テント内で使用し地面の冷気を遮断するインフレーターマット等、色々な保温機能製品に使用することができる。中綿部材は、ダウン以外でも良く、合成繊維や木綿等自由に選択可能であり、中綿部材がない空気収容空間の排気口に適用してもよい。
【実施例0035】
本願発明品である保温具用排気口を取り付けた保温具について、空気量比較での保温性試験を行った。試料は、中綿部材が入れられた空気収容空間に、空気を入れたものである。中綿部材は綿である。比較には、上記と同じ中綿部材が入れられた空気収容空間に、空気を入れないものを用いた。試験結果を
図6に示す。
【0036】
この結果から、本願発明品である保温具用排気口を取り付けた保温具は、綿だけのものよりも、綿に空気を入れたものが、高い保温性を持つことが分かった。相対比較すると、綿に空気を入れたものを100%とした時、綿だけのものは70%であった。これにより、空気をいれることにより暖かさが30%アップすることが分かった。