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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106217
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】モータの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/098 20160101AFI20240731BHJP
   H02P 21/00 20160101ALI20240731BHJP
【FI】
H02P25/098
H02P21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010414
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【弁理士】
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】吉▲崎▼ 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智幸
(72)【発明者】
【氏名】尾田 善彦
(72)【発明者】
【氏名】千葉 明
(72)【発明者】
【氏名】蔡 一飛
【テーマコード(参考)】
5H501
5H505
【Fターム(参考)】
5H501BB05
5H501DD04
5H501DD09
5H501HB08
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501JJ17
5H501KK05
5H505BB04
5H505DD03
5H505DD08
5H505DD11
5H505EE41
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505JJ17
5H505KK05
(57)【要約】
【課題】モータの振動騒音を低減できるモータの制御方法を提供する。
【解決手段】固定子30と回転子40とを備えるモータ20の制御方法は、固定子30の鉄心の磁歪による振動が小さくなるように、固定子30の鉄心の磁歪に基づいて固定子30の鉄心に印加する駆動電流の電流波形を決定する駆動電流決定ステップと、駆動電流決定ステップで決定した駆動電流を固定子30の鉄心に印加する駆動電流印加ステップとを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と回転子とを備えるモータの制御方法であって、
前記固定子の鉄心の磁歪による振動が小さくなるように、前記固定子の鉄心の磁歪に基づいて前記固定子の鉄心に印加する駆動電流の電流波形を決定する駆動電流決定ステップと、
前記駆動電流決定ステップで決定した前記駆動電流を前記固定子の鉄心に印加する駆動電流印加ステップと
を含む、モータの制御方法。
【請求項2】
前記駆動電流決定ステップは、
前記駆動電流の複数の電流波形を仮定する波形仮定ステップと、
仮定した各電流波形を前記駆動電流として前記固定子の鉄心に印加したときに前記固定子の鉄心に生じる磁束密度の時間変化を前記各電流波形について算出する磁束密度算出ステップと、
前記固定子の鉄心に生じる磁束密度の時間変化に基づいて磁歪による前記固定子の鉄心全体の変形量である磁歪変形量の時間変化を前記各電流波形について算出する磁歪変形量算出ステップと、
前記各電流波形について算出した前記固定子の鉄心全体の磁歪変形量の時間変化の振幅が、磁歪に基づかずに決定した電流波形について算出した前記固定子の鉄心全体の変形量の時間変化の振幅に基づいて設定される判定閾値未満になるときの電流波形を、前記固定子の鉄心に印加する駆動電流として決定する波形決定ステップと
を含む、請求項1に記載のモータの制御方法。
【請求項3】
前記波形仮定ステップにおいて、前記回転子に作用するトルクが所定の大きさになるように前記電流波形を仮定する、請求項2に記載のモータの制御方法。
【請求項4】
前記磁束密度算出ステップにおいて、前記固定子の鉄心に円周方向に沿って設定された複数の要素のそれぞれにおける磁束密度の時間変化を算出し、
前記磁歪変形量算出ステップにおいて、前記複数の要素のそれぞれにおける磁束密度の時間変化に基づいて前記複数の要素のそれぞれの磁歪変形量の時間変化を算出し、前記複数の要素のそれぞれの磁歪変形量の時間変化の総和を、前記固定子の鉄心全体の磁歪変形量の時間変化として算出する、
請求項2に記載のモータの制御方法。
【請求項5】
前記波形仮定ステップにおいて、前記駆動電流として2相以上の電流を仮定し、
前記磁束密度算出ステップにおいて、前記駆動電流の各相の電流について磁束密度の時間変化を算出し、
前記磁歪変形量算出ステップにおいて、前記駆動電流の各相の電流について前記固定子の鉄心全体の変形量の時間変化を算出する、
請求項2に記載のモータの制御方法。
【請求項6】
前記2相以上の電流のそれぞれが流れる期間の半分以上の期間は、他の相の電流が流れる期間と重なっている、請求項5に記載のモータの制御方法。
【請求項7】
前記駆動電流の各相の電流波形の形状が同一であり、前記駆動電流の各相の電流の位相が異なる、請求項5又は6に記載のモータの制御方法。
【請求項8】
前記駆動電流決定ステップは、前記固定子に作用する電磁力による前記固定子の鉄心の変形量である電磁力変形量の時間変化を算出する電磁力変形量算出ステップを更に含み、
前記波形決定ステップにおいて、前記固定子の鉄心全体の磁歪変形量と前記固定子の鉄心の電磁力変形量とを合わせた合計変形量の時間変化の振幅が最小になるときの電流波形を、前記固定子の鉄心に印加する駆動電流として決定する、
請求項2から6までのいずれか一項に記載のモータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラジアル方向の不平衡電磁力をキャンセルすることによって振動騒音を低減する永久磁石式回転電機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-134788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータの振動騒音のさらなる低減が求められる。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、モータの振動騒音を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一実施形態に係るモータの制御方法は、
固定子と回転子とを備えるモータの制御方法であって、
前記固定子の鉄心の磁歪による振動が小さくなるように、前記固定子の鉄心の磁歪に基づいて前記固定子の鉄心に印加する駆動電流の電流波形を決定する駆動電流決定ステップと、
前記駆動電流決定ステップで決定した前記駆動電流を前記固定子の鉄心に印加する駆動電流印加ステップと
を含む。
【0007】
(2)上記(1)に記載のモータの制御方法において、
前記駆動電流決定ステップは、
前記駆動電流の複数の電流波形を仮定する波形仮定ステップと、
仮定した各電流波形を前記駆動電流として前記固定子の鉄心に印加したときに前記固定子の鉄心に生じる磁束密度の時間変化を前記各電流波形について算出する磁束密度算出ステップと、
前記固定子の鉄心に生じる磁束密度の時間変化に基づいて磁歪による前記固定子の鉄心全体の変形量である磁歪変形量の時間変化を前記各電流波形について算出する磁歪変形量算出ステップと、
前記各電流波形について算出した前記固定子の鉄心全体の磁歪変形量の時間変化の振幅が、磁歪に基づかずに決定した電流波形について算出した前記固定子の鉄心全体の変形量の時間変化の振幅に基づいて設定される判定閾値未満になるときの電流波形を、前記固定子の鉄心に印加する駆動電流として決定する波形決定ステップと
を含んでよい。
【0008】
(3)上記(2)に記載のモータの制御方法の前記波形仮定ステップにおいて、前記回転子に作用するトルクが所定の大きさになるように前記電流波形が仮定されてよい。
【0009】
(4)上記(2)又は(3)に記載のモータの制御方法の前記磁束密度算出ステップにおいて、前記固定子の鉄心に円周方向に沿って設定された複数の要素のそれぞれにおける磁束密度の時間変化が算出されてよい。前記磁歪変形量算出ステップにおいて、前記複数の要素のそれぞれにおける磁束密度の時間変化に基づいて前記複数の要素のそれぞれの磁歪変形量の時間変化が算出されてよい。前記複数の要素のそれぞれの磁歪変形量の時間変化の総和が、前記固定子の鉄心全体の磁歪変形量の時間変化として算出されてよい。
【0010】
(5)上記(2)から(4)までのいずれか1つに記載のモータの制御方法の前記波形仮定ステップにおいて、前記駆動電流として2相以上の電流が仮定されてよい。前記磁束密度算出ステップにおいて、前記駆動電流の各相の電流について磁束密度の時間変化が算出されてよい。前記磁歪変形量算出ステップにおいて、前記駆動電流の各相の電流について前記固定子の鉄心全体の変形量の時間変化が算出されてよい。
【0011】
(6)上記(5)に記載のモータの制御方法において、前記2相以上の電流のそれぞれが流れる期間の半分以上の期間は、他の相の電流が流れる期間と重なっていてよい。
【0012】
(7)上記(5)又は(6)に記載のモータの制御方法において、前記駆動電流の各相の電流波形の形状が同一であってよい。前記駆動電流の各相の電流の位相が異なってよい。
【0013】
(8)上記(2)から(7)までのいずれか1つに記載のモータの制御方法において、前記駆動電流決定ステップは、前記固定子に作用する電磁力による前記固定子の鉄心の変形量である電磁力変形量の時間変化を算出する電磁力変形量算出ステップを更に含んでよい。前記波形決定ステップにおいて、前記固定子の鉄心全体の磁歪変形量と前記固定子の鉄心の電磁力変形量とを合わせた合計変形量の時間変化の振幅が最小になるときの電流波形が、前記固定子の鉄心に印加する駆動電流として決定されてよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係るモータの制御方法によれば、モータの振動騒音が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】消磁状態で磁歪変形していない磁性体の模式図である。
図1B】励磁状態で磁歪変形している磁性体の模式図である。
図2】円環状のヨークの磁歪変形を説明する図である。
図3】本開示の一実施形態に係るモータの制御システムの構成例を示すブロック図である。
図4】本開示の一実施形態に係るモータの鉄心の1/6部分モデルの一例を示す平面図である。
図5】本開示の一実施形態に係るモータの制御方法の手順例を示すフローチャートである。
図6】磁歪変形を考慮してモータの駆動電流を決定する手順例を示すフローチャートである。
図7】モータの固定子の磁束密度の接線方向成分の分布を有限要素解析によって計算した結果の一例を示す図である。
図8】機械角と磁束密度の接線方向成分の絶対値との関係の一例を示すグラフである。
図9】磁束密度と磁歪変形率との関係の一例を示すグラフである。
図10】機械角と接線方向の磁歪変形率との関係の一例を示すグラフである。
図11】第1実施例に係るスイッチドリラクタンスモータの鉄心の1/6部分モデルの一例を示す斜視図である。
図12A】第1比較例においてモータの鉄心に印加する駆動電流の電流波形を示すグラフである。
図12B図12Aの電流波形を印加したときのモータの鉄心の磁歪変形和の時間変化を示すグラフである。
図13A】第1実施例においてモータの鉄心に印加する駆動電流の電流波形を示すグラフである。
図13B図13Aの電流波形を印加したときのモータの鉄心の磁歪変形和の時間変化を示すグラフである。
図14】比較例及び第1実施例のそれぞれのモータの鉄心の3次の磁歪変形による各部の変位を表すコンター図である。
図15】比較例及び第1実施例のそれぞれのモータの鉄心の6次の磁歪変形による各部の変位を表すコンター図である。
図16】比較例及び第1実施例のそれぞれのモータの鉄心の磁歪変形による音圧レベルを表すグラフである。
図17】第2実施例に係る永久磁石同期モータの鉄心の1/6部分モデルの一例を示す斜視図である。
図18】比較例及び第2実施例においてモータの鉄心に印加するd軸電流の電流波形を示すグラフである。
図19図18のd軸電流を印加したときのモータの鉄心の磁歪変形和の時間変化を示すグラフである。
図20】比較例及び第2実施例のそれぞれのモータの鉄心の6次の磁歪変形による各部の変位を表すコンター図である。
図21】比較例及び第2実施例のそれぞれのモータの鉄心の磁歪変形による音圧レベルを表すグラフである。
図22】他の実施形態に係る駆動電流決定方法の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示に係るモータの制御方法の実施形態が図面に基づいて説明される。各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための装置又は方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
(モータの制御方法の概要)
自動車用モータ又は産業用モータの特性として、高効率かつ高出力であることだけでなく、振動騒音が小さいことが求められる。例えば、電気自動車等に用いられる大径かつ大出力のモータにおいて、モータの駆動時の振動騒音を低減することが求められる。
【0018】
振動騒音の原因として、モータ内部で発生する電磁力がモータの部品に作用することによって生じる部品の振動が知られている。電磁力による部品の振動を低減するための方法として、例えば、モータの各部に作用する電磁力の和をフラットにする(時間変化を小さくする)方法、又は、高調波電流を注入することによって電磁力の脈動を低減する方法等の電磁力を適切に制御する方法が考えられる。
【0019】
一方で、モータの鉄心は磁歪特性を有する。鉄心の磁歪特性によって生じる磁歪変形がモータの振動騒音の原因の一つとなる。磁歪変形は、図1A及び図1Bに例示されるように、励磁された鉄心が磁区の移動によって伸びる現象である。図1Aに示されるように鉄心の中の各磁区の磁束の向きが揃っていない状態(消磁状態)に比べて、図1Bに示されるように各磁区の磁束の向きが揃っている状態(励磁状態)において、磁束の方向に沿って鉄心の長さがdからd+Δdに伸びている。鉄心の磁歪による変形量は、鉄心に印加される磁束密度の大きさに応じて定まる。モータは、鉄心を含む固定子と、回転子とを備える。つまり、モータの固定子の少なくとも一部がモータの鉄心に対応する。固定子及び回転子は、円環状のヨークを有する。図2に例示されるように、モータの固定子の円環状のヨークを円周方向に沿って通る磁束は、円環状のヨークに円周方向の磁歪を発生させ、円環状のヨークが半径方向の外側に向けて膨張するようにヨークを変形させる。ヨークの形状が円環状でない場合、ヨークの接線方向に沿って通る磁束がヨークに接線方向の磁歪を発生させ、ヨークが外側に向けて膨張するようにヨークを変形させる。
【0020】
モータ内部でモータを駆動するために印加される磁束密度が周期的に変化する場合、円環状のヨークは、磁歪に起因する変形によって膨張と収縮とを繰り返して周期的に変形して振動する。円環状のヨークの振動モードはモード0である。
【0021】
言い換えれば、モータ内部における磁束密度の周期的な変化が加振源となる。固定子のヨークの共振周波数と加振源の周波数(磁束密度の周波数)とが一致する場合、固定子のヨークが共振して大きく振動し、大きい振動騒音を発生させる。例えば、自動車用のモータを高出力にするために外径が大きい固定子が用いられる場合、鉄心を構成する固定子のヨークのモード0の共振周波数が低くなることによって、固定子のヨークのモード0の共振周波数とモータを駆動するために印加される磁束密度の周波数との差が小さくなり、固定子のヨークが共振しやすくなることで固定子のヨークの振動騒音が大きくなることが問題となっている。また、鉄損が少ないアモルファス金属を材料とする鉄心、又は、高磁束密度のパーメンジュール鉄心は、非常に大きい磁歪特性を有する。大きい磁歪特性を有する鉄心の磁歪変形によって生じる振動騒音は、電磁力によって生じる振動騒音に対して無視できない程度に大きくなることも問題となる。
【0022】
以上述べてきたように、磁歪特性がモータの振動騒音に与える影響が無視できなくなってきている。本開示は、モータの磁歪変形による振動を低減することによってモータの駆動時の振動騒音を低減できるようにモータを制御する方法を提案する。
【0023】
(制御システム1の構成例)
図3に例示されるように、一実施形態に係る制御システム1は、制御装置10と、モータ20とを備える。制御装置10は、モータ20の駆動時の振動騒音を低減できるようにモータ20を制御する。
【0024】
<制御装置10>
制御装置10は、制御部12と、記憶部14と、インタフェース16とを備える。
【0025】
制御部12は、モータ20の固定子30(図4参照)の少なくとも一部である鉄心を励磁してモータ20を駆動させるために固定子30の各極34(図4参照)のコイル36(図4参照)に印加する駆動電流又は駆動電圧の信号を生成する。制御部12は、インタフェース16からモータ20に対して、モータ20の鉄心を励磁してモータ20を駆動させるためにコイル36に印加する駆動電流又は駆動電圧の信号そのものを出力してよい。制御システム1がモータ20の鉄心を励磁する励磁装置を更に備える場合、制御部12は、制御部12が生成した駆動電流又は駆動電圧の信号に応じた電流又は電圧を励磁装置がコイル36に印加するように励磁装置を制御する情報をインタフェース16から出力してもよい。
【0026】
制御部12は、モータ20の鉄心に印加する駆動電流又は駆動電圧の信号を生成する機能等の制御装置10の種々の機能を制御及び管理するように構成される。制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の少なくとも1つのプロセッサを含んで構成されてよい。制御部12は、1つのプロセッサだけで構成されてよいし、複数のプロセッサで構成されてよい。制御部12を構成するプロセッサは、記憶部14に格納されたプログラムを読み込んで実行することによって、制御装置10の機能を実現してよい。
【0027】
記憶部14は、各種の情報又はデータ等を格納する。記憶部14は、例えば制御部12において実行されるプログラム、又は、制御部12において実行される処理で用いられるデータ若しくは処理の結果等を格納してよい。また、記憶部14は、制御部12のワークメモリとして機能してよい。記憶部14は、例えば半導体メモリ等を含んで構成されてよいがこれに限定されない。例えば、記憶部14は、制御部12として用いられるプロセッサの内部メモリとして構成されてもよいし、制御部12からアクセス可能なハードディスクドライブ(HDD)として構成されてもよい。記憶部14は、非一時的な読み取り可能媒体として構成されてもよい。記憶部14は、制御部12と一体に構成されてもよいし、制御部12と別体として構成されてもよい。
【0028】
インタフェース16は、モータ20の固定子30の各極34のコイル36に印加される駆動電流又は駆動電圧の信号そのものをコイル36に対して出力できるように、コイル36に電気的に接続する端子として構成されてよい。
【0029】
インタフェース16は、制御部12が生成した駆動電流又は駆動電圧の信号に応じた電流又は電圧を励磁装置がコイル36に印加するように励磁装置を制御する情報を、励磁装置に対して送信する通信インタフェースを含んで構成されてよい。通信インタフェースは、有線又は無線によって励磁装置と通信するように構成されてよい。
【0030】
通信インタフェースは、励磁装置に限られず、他の種々の装置と有線又は無線によって通信するように構成されてよい。通信インタフェースは、例えば外部の管理装置と通信するように構成されてよい。制御部12は、外部の管理装置から、モータ20の鉄心に印加する駆動電流又は駆動電圧の信号を生成するために必要なデータ又は情報を取得してよい。制御部12は、モータ20の鉄心に印加する駆動電流又は駆動電圧の信号を生成した結果を、外部の管理装置に出力してもよい。通信インタフェースは、種々の通信規格に対応するように構成されてよい。
【0031】
インタフェース16は、表示デバイスを含んで構成されてよい。表示デバイスは、文字、図形、又は画像等の視覚情報を出力することによってユーザに情報を通知してよい。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイ等の種々のディスプレイを含んでよい。制御部12は、モータ20の鉄心に印加する駆動電流又は駆動電圧の信号を生成した結果を表示デバイスに表示させてよい。
【0032】
インタフェース16は、ユーザからの入力を受け付ける入力デバイスを含んで構成されてよい。入力デバイスは、例えば、キーボード又は物理キーを含んでもよいし、タッチパネル若しくはタッチセンサ又はマウス等のポインティングデバイスを含んでもよい。入力デバイスは、これらの例に限られず、他の種々のデバイスを含んでもよい。制御部12は、入力デバイスによってユーザから入力されたデータ又は情報を、モータ20の鉄心に印加する駆動電流又は駆動電圧の信号を生成するために必要なデータ又は情報として取得してよい。
【0033】
<モータ20>
図4に例示されるように、モータ20は、固定子30と回転子40とを備える。図4において、モータ20は、1/6部分モデルとして表されている。固定子30は、円環状のヨーク32と極34とを有する。極34は、円環状のヨーク32から円環の内側に向けて突出する。回転子40は、円環状のヨーク42と極44とを有する。極44は、円環状のヨーク42から円環の外側に向けて突出する。回転子40のヨーク42は、固定子30のヨーク32の内側に位置する。固定子30の極34は、内側の回転子40に向けて突出する。また、回転子40の極44は、外側の固定子30に向けて突出する。固定子30の極34と回転子40の極44とが互いに対向する。
【0034】
固定子30は、ヨーク32と極34とで構成される鉄心に回転磁界を発生させてトルクを連続的に発生させるために極34の突出方向を軸として巻き回されているコイル36を更に備えてよい。コイル36に励磁電流が流れることによって極34に磁束が生じる。極34に生じた磁束は、固定子30のヨーク32及び極34と、回転子40のヨーク42及び極44と、極34と極44との間の空隙とによって構成される磁気回路を通る。磁束が固定子30及び回転子40を通ることによって、鉄心が励磁される。
【0035】
モータ20において、固定子30の各極34がコイル36に流れる駆動電流で励磁されることによって、回転子40の極44に対して作用する電磁力(極44を引き付ける磁力)が生じる。回転子40の極44に対して作用する電磁力のうち、ヨーク42の接線方向(回転子40が回転する方向)の成分が回転子40にトルクを生じさせる。モータ20は、駆動時に、回転子40において生じるトルクを出力する。
【0036】
本実施形態に係るモータ20は、18-12極のスイッチドリラクタンスモータ(Switched Reluctance Motor;SRM)であるとする。本実施形態に係るモータ20において、固定子30は18個の極34を有する。回転子40は12個の極44を有する。本実施形態に係るモータ20は、固定子30の隣接する3個の極34のそれぞれに巻き回されているコイルに120度ごとに位相をずらした3相の駆動電流を印加して、回転子40にトルクを生じさせるとする。駆動電流の位相は、電気角とも称される。一方で、モータ20の回転軸の周りの回転角度(回転子40の回転角度)は、機械角とも称される。360度の電気角は、1周期分の駆動電流が流れる期間に対応する。各コイルに1周期分の駆動電流が流れたときに、本実施形態に係るモータ20(18-12極のSRM)の回転子40は、固定子30の3個の極34の分だけ(60度だけ)回転する。つまり、電気角が360度進んだときに機械角は60度進む。駆動電流の相の数は、3相に限られない。駆動電流の相の数は、モータ20の構成に応じて、1相であってもよいし2相であってもよいし4相以上であってもよい。リラクタンスモータにおいて、鉄心の磁気抵抗が小さくなる方向に、トルクが発生する。言い換えれば、固定子30の極34から回転子40の極44に至る磁気回路の長さ(固定子30の極34と回転子40の極44とを通る磁力線の長さ)が最短になるように回転子40を回転させる方向に、トルクが発生する。回転子40の回転角度(機械角)に応じて、駆動電流の位相(電気角)を変化させることによって、回転子40に連続的にトルクが発生する。
【0037】
(制御システム1の動作例)
以下、本実施形態に係る制御システム1の動作例が説明される。
【0038】
制御装置10の制御部12は、固定子30のヨーク32の中をヨーク32の接線方向に通る磁束によって発生するヨーク32の接線方向の磁歪変形量の時間変化を低減させることによって、固定子30の振動を低減させる。ヨーク32が円環状である場合、ヨーク32の接線方向は、ヨーク32の円周方向とも称される。
【0039】
制御部12は、固定子30の極34を励磁する駆動電流又は駆動電圧の信号を仮定し、仮定した信号を固定子30の極34に印加したときの固定子30のヨーク32の接線方向の磁歪変形量の時間変化を算出する。制御部12は、固定子30のヨーク32の接線方向の磁歪変形量の時間変化が小さくなるように、駆動電流又は駆動電圧の信号を仮定する。制御部12は、固定子30のヨーク32の接線方向の磁歪変形量の時間変化の振幅が判定閾値未満になるように、駆動電流又は駆動電圧の信号を決定してよい。制御部12は、磁歪に基づかずに決定した駆動電流又は駆動電圧の信号を固定子30の極34に印加したときの固定子30のヨーク32の接線方向の変形量の時間変化の振幅に基づいて、判定閾値を設定してよい。つまり、制御部12は、磁歪に基づかずに決定した電流波形について算出した固定子30の鉄心全体の変形量の時間変化の振幅に基づいて、判定閾値を設定してよい。制御部12は、例えば、磁歪に基づかずに決定した電流波形について算出した前記固定子の鉄心全体の変形量の時間変化の振幅の半分を、判定閾値に設定してもよい。制御部12は、例えば、磁歪に基づかずに決定した電流波形について算出した前記固定子の鉄心全体の変形量の時間変化の振幅そのものを、判定閾値に設定してもよい。制御部12は、固定子30のヨーク32の接線方向の磁歪変形量の時間変化の振幅が極小又は最小になるように、駆動電流又は駆動電圧の信号を決定してよい。
【0040】
制御部12は、決定した駆動電流又は駆動電圧の信号を固定子30の極34に巻き回されたコイル36に印加することによって極34に磁束を生じさせ、モータ20の鉄心を励磁する。制御部12は、モータ20の鉄心を励磁することによって回転子40にトルクを生じさせてモータ20を駆動できる。
【0041】
極34に生じる磁束は、極34に巻き回されているコイル36に流れる駆動電流の大きさに比例する。したがって、制御部12は、駆動電流を制御することによって極34に生じる磁束を制御できる。以下、制御部12が駆動電流の信号を決定し、決定した駆動電流をモータ20の鉄心に印加することによってモータ20を駆動する手順例が説明される。なお、制御部12は、コイル36のインダクタンスを考慮してコイル36に印加する駆動電圧を決定することによって、コイル36に流れる駆動電流の大きさを制御してもよい。したがって、以下説明される手順例において、制御部12が駆動電流の代わりに駆動電圧の信号を決定してもよい。
【0042】
制御部12が実行する、モータ20の制御方法は、図5のフローチャートに例示されるように、制御部12が駆動電流を決定するステップS1と、制御部12がモータ20の鉄心に駆動電流を印加して励磁するステップS2とを含むとする。ステップS1は、駆動電流決定ステップとも称される。ステップS2は、駆動電流印加ステップとも称される。制御部12は、ステップS1の手順において駆動電流の代わりに駆動電圧を決定し、ステップS2の手順においてモータ20の鉄心に駆動電圧を印加してもよい。
【0043】
制御部12が駆動電流を決定するステップS1は、図6のフローチャートに例示される手順を含む駆動電流決定方法として実行されてよい。モータ20の制御方法又は駆動電流決定方法は、制御部12を構成するプロセッサに実行させる、モータ20の制御プログラム又は駆動電流決定プログラムとして実現されてもよい。モータ20の制御プログラム又は駆動電流決定プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。以下、図6のフローチャートに例示される手順に基づいて制御部12の動作が説明される。
【0044】
<電流波形の仮定>
制御部12は、モータ20の固定子30の磁歪変形量を算出するために用いる、固定子30の極34のコイル36に印加する駆動電流の電流波形を仮定する(ステップS11)。ステップS11は、波形仮定ステップとも称される。上述したように、本実施形態に係るモータ20は、固定子30の隣接する3個の極34のそれぞれのコイル36に対して、電気角を120度ずつずらした3相の駆動電流を印加することによって回転子40にトルクを生じさせる。3相の駆動電流は、A相、B相及びC相の駆動電流として区別されてよい。制御部12は、A相、B相及びC相のそれぞれの駆動電流の電流波形を仮定する。本実施形態において、制御部12は、A相、B相及びC相のそれぞれの駆動電流の電流波形として同一の電流波形を仮定する。制御部12は、A相、B相及びC相のそれぞれの駆動電流の電流波形を、後述する実施例で用いられる電流波形(例えば図13Aのグラフのi、i及びi)のように仮定してよい。制御部12は、モータ20の回転子40に作用するトルクが所定の大きさになるように電流波形を仮定してよい。制御部12は、モータ20の構成に応じて、1相の電流波形を仮定してよいし、2相以上の任意の相数の電流波形を仮定してもよい。
【0045】
<磁束密度の時間変化の算出>
制御部12は、仮定した電流波形を固定子30の各極34のコイル36に駆動電流として印加したときにモータ20の鉄心に生じる磁束密度の時間変化を算出する(ステップS12)。ステップS12は、磁束密度算出ステップとも称される。具体的に、制御部12は、図4の部分モデルに有限要素解析を適用することによって、ステップS11の手順で仮定した電流波形をコイル36に駆動電流として印加したときに固定子30に生じる磁束について、固定子30の中に生じる磁束密度を計算する。有限要素解析のために、例えば、JMAG(登録商標)、又は、Ansys Maxwell(登録商標)等の種々の有限要素解析ソフトウェアが用いられてよい。制御部12は、固定子30の部分モデルの中に有限要素解析のための複数の要素を設定する。固定子30の部分モデルに設定された各要素の接線方向の位置は、機械角θをパラメータとして特定される。制御部12は、固定子30の部分モデルの中に設定した複数の要素に有限要素解析を適用し、ステップS11の手順で仮定した電流波形の電気角と各相の電流値とを一定間隔で掃引することによって、固定子30の各要素における磁束密度の接線方向成分の絶対値|B(θ)|を算出する。
【0046】
図7に示されるように、有限要素解析による磁束密度の算出結果の一例として、ある時刻における固定子30の中の磁束密度の接線方向成分の絶対値の大きさの分布がグレースケールで表される。図7において、固定子30の中に設定された各要素における磁束密度の接線方向成分の絶対値の大きさが各要素に対応する画素の濃淡によって表されている。磁束密度の接線方向成分の絶対値が大きい要素に対応する画素は黒に近い色で表されている。逆に、磁束密度の接線方向成分の絶対値が小さい要素に対応する画素は白に近い色で表されている。固定子30の3つの極34は、A相の駆動電流を印加する極34Aと、B相の駆動電流を印加する極34Bと、C相の駆動電流を印加する極34Cとを含むとする。A相、B相及びC相のそれぞれの駆動電流の電気角がずれていることによって、ヨーク32のうち、極34A、極34B及び極34Cのそれぞれに隣接する部分の磁束密度の接線方向成分の大きさが互いに異なっている。
【0047】
制御部12は、仮定した電流波形を1周期分だけコイル36に流したときの各時刻における固定子30の中の磁束密度を算出する。制御部12は、各時刻における磁束密度を算出することによって、磁束密度の時間変化を算出できる。制御部12は、磁束密度を算出する各時刻の間隔を適宜設定してよい。
【0048】
<磁歪変形量の時間変化への変換>
制御部12は、仮定した電流波形を駆動電流として印加したときにモータ20の鉄心に生じる磁束密度の時間変化を、鉄心の磁歪変形量の時間変化に変換する(ステップS13)。ステップS13は、磁歪変形量算出ステップとも称される。制御部12は、各時刻において固定子30の中の磁束密度を計算した結果を各時刻における固定子30のヨーク32の接線方向の磁歪変形量に変換することによって、鉄心(固定子30)に生じる磁束密度の時間変化を鉄心(固定子30)の磁歪変形量の時間変化に変換できる。
【0049】
ある時刻における接線方向の磁束密度分布の一例が図8にグラフとして示される。図8のグラフにおいて、横軸は機械角θによって表される固定子30の中の接線方向の位置に対応する。縦軸は接線方向の各位置における磁束密度の接線方向成分の絶対値|B(θ)|に対応する。制御部12は、固定子30の磁歪特性に基づいて、ステップS12の手順で算出した、固定子30の接線方向の各位置における磁束密度の接線方向成分の絶対値|B(θ)|を、固定子30の接線方向の各位置における磁歪変形量λ(θ)に変換する。制御部12は、固定子30の磁歪特性として、例えば図9にグラフとして例示される磁歪量λと磁束密度Bとの関係を特定するλ-B線図を用いてよい。図9において、横軸は磁束密度Bに対応する。磁束密度Bの単位はT(テスラ)である。縦軸は磁歪変形量λに対応する。磁歪変形量λの単位はppm(百万分率)である。
【0050】
λ-B線図は、例えば、磁歪変形の解析対象とするモータ20の固定子30の材料を用いて磁歪を実測したデータに基づいて生成されてよい。λ-B線図は、固定子30を3Hzの低周波で励磁することによって測定したデータに基づいて生成されてもよい。λ-B線図は、図9に例示されるグラフよりも複雑な蝶々形のグラフとして表されるように生成されてもよい。制御部12は、磁歪量λと磁束密度Bとの種々の関係を用いて、磁束密度の接線方向成分の絶対値|B(θ)|の分布を磁歪分布λ(θ)に変換してよい。
【0051】
図8に例示される磁束密度の接線方向成分の絶対値を図9に例示されるλ-B線図を用いて変換した場合の、固定子30の接線方向の各位置における磁歪変形量λ(θ)が図10にグラフとして示される。図10のグラフにおいて、横軸は機械角θによって表される固定子30の接線方向の位置に対応する。機械角の単位はdeg(度)である。縦軸は固定子30の接線方向の各位置における接線方向の磁歪変形量λ(θ)に対応する。接線方向の磁歪変形量λの単位はppm(百万分率)である。
【0052】
<磁歪変形和の算出>
制御部12は、仮定した電流波形を駆動電流として印加したときのモータ20の鉄心の磁歪変形和の時間変化を算出する(ステップS14)。ステップS14は、磁歪変形和算出ステップとも称される。モータ20の鉄心の磁歪変形和は、モータ20の固定子30の接線方向の各位置における接線方向の磁歪変形量λ(θ)を固定子30の接線方向に沿って足し合わせた値である。言い換えれば、制御部12は、磁歪変形量算出ステップにおいて算出した、モータ20の固定子30に設定した複数の要素のそれぞれの磁歪変形量の時間変化の総和を、固定子30の鉄心全体の磁歪変形量(磁歪変形和)の時間変化として算出する。
【0053】
具体的に、制御部12は、ステップS13の手順で算出した、固定子30の接線方向の各位置における接線方向の磁歪変形量λ(θ)を固定子30の接線方向に沿って(円周に沿って)積分することによって、ある電気角θにおける磁歪変形和を算出する。ある電気角θにおける磁歪変形和は、各相の励磁電流i,i,i、及び、電気角θに依存するので、Λ(i,i,i,θ)と表される。磁歪変形和の時間変化は、電気角θの変化に応じた磁歪変形和の変化を意味する。つまり、磁歪変形和の時間変化は、電気角θを変化させたときのΛ(i,i,i,θ)の値の変化として表される。
【0054】
<磁歪変形和に基づく駆動電流の決定>
制御部12は、磁歪変形和の時間変化の振幅が条件を満たすか判定する(ステップS15)。制御部12は、磁歪変形和の時間変化の振幅が条件を満たす場合(ステップS15:YES)、条件を満たした電流波形を、実際にモータ20の固定子30に印加する駆動電流として決定する(ステップS16)。ステップS16は、波形決定ステップとも称される。制御部12は、磁歪変形和の時間変化の振幅が満たすべき条件として、以下に説明するように、モータ20の鉄心の磁歪振動による騒音を低減できる条件を設定してよい。
【0055】
モータ20の鉄心の磁歪振動による騒音は、モータ20の鉄心の磁歪振動の振幅に応じて大きくなる。モータ20の鉄心の磁歪振動の振幅は、モータ20の鉄心の磁歪変形和が周期的に変化するときの変化幅(磁歪変形和の時間変化の振幅)に対応する。したがって、制御部12は、モータ20の鉄心の磁歪振動による騒音を低減できる条件として、モータ20の鉄心の磁歪変形和の時間変化の振幅が小さくなる条件を設定してよい。
【0056】
制御部12は、例えば、ステップS11からステップS14までの手順を実行することによって算出した磁歪変形和の時間変化の振幅が所定値未満になる場合に、ステップS11の手順で仮定した電流波形が条件を満たしていると判定し、その電流波形を実際にモータ20の固定子30に印加する駆動電流として決定してよい。
【0057】
制御部12は、例えば、ステップS11からステップS14までの手順を複数回にわたって繰り返し実行して、仮定した複数の電流波形のそれぞれに対応する磁歪変形和の時間変化の振幅を算出してよい。制御部12は、仮定した複数の電流波形のそれぞれに対応する磁歪変形和の時間変化の振幅のうち、最小の振幅に対応する電流波形が条件を満たしていると判定し、その電流波形を実際にモータ20の固定子30に印加する駆動電流として決定してもよい。
【0058】
制御部12は、磁歪変形和の時間変化の振幅が条件を満たさない場合(ステップS15:NO)、ステップS11の手順に戻り、新たに電流波形を仮定して算出した磁歪変形和の時間変化の振幅が条件を満たすまで、ステップS11からS15までの手順を繰り返す。
【0059】
制御部12は、ステップS16の手順の実行後、図6のフローチャートの手順の実行を終了する。制御部12は、図6のフローチャートの手順を実行することによって決定した駆動電流を、上述した図5のフローチャートのステップS2の励磁電流の印加手順に適用することによって、モータ20を駆動する。
【0060】
<小括>
以上述べてきたように、制御部12は、磁歪変形和をほぼ一定とするための電流を求めるためにモータ20の駆動条件と磁歪変形和との関係を把握する。駆動条件は、仮定した駆動電流の各相の電流波形を含む。電流波形は、電気角と各電気角における電流値とによって特定される。制御部12は、一定範囲内で有限個の駆動条件と磁歪変形量との関係を表すデータを用いて、磁歪変形量の時間変化の振幅が小さくなるように各電気角における駆動電流の電流値を調節した駆動電流を決定できる。制御部12は、決定した駆動電流をモータ20の鉄心に印加することによって、モータ20の鉄心の磁歪振動を低減し、磁歪振動による騒音を低減できる。
【0061】
(実施例)
以下、モータ20のモデル解析の実施例が説明される。
【0062】
<第1実施例>
第1実施例として、スイッチドリラクタンスモータ(SRM)の駆動電流を決定するためのモデル解析が検証される。図11に、第1実施例に係るモータ20の駆動電流の決定方法の検証に使用するモータ20(SRM)の1/6部分モデルが示される。モータ20は、固定子30と回転子40とを備える。固定子30は、ヨーク32と、極34A、34B及び34Cと、コイル36A、36B及び36Cとを備える。ヨーク32は、円環状に構成されている。極34A、34B及び34Cのそれぞれは、ヨーク32から円環の内側に向けて突出している。コイル36A、36B及び36Cのそれぞれは、極34A、34B及び34Cに巻き回されている。回転子40は、ヨーク42と、極44とを備える。ヨーク42は、ヨーク32よりも小さい半径を有する円環状に構成されている。極44は、ヨーク42から円環の外側に向けて突出している。
【0063】
検証の対象とするモータ20(SRM)は、ハイブリッド自動車の発電機として設計されているとする。固定子30の極34A、34B及び34Cの材料は、アモルファス金属2605SA1であるとする。極34A、34B及び34Cのそれぞれの、厚み(コア積厚)は50mmであるとする。ヨーク32の外径は190mmであるとする。
【0064】
図11の部分モデルのコイル36A、36B及び36Cのそれぞれに、比較例に係る方形電流波形として図12Aに示される電流波形が印加される。図12Aのグラフにおいて、横軸は電気角である。電気角の単位はdeg(度)である。縦軸は各電気角においてコイル36A、36B及び36Cのそれぞれに流れる励磁電流の値である。励磁電流の単位はA(アンペア)である。コイル36A、36B及び36Cに印加される電流は、それぞれi、i及びiと表される。
【0065】
比較例に係る方形電流波形が部分モデルに印加された場合に、その方形電流波形に対応した固定子30のヨーク32の接線方向(円周方向)の磁歪変形和が算出される。比較例に係る方形電流波形に対応したヨーク32の接線方向(円周方向)の磁歪変形和の時間変化の波形が図12Bのグラフとして示される。図12Bのグラフにおいて、横軸は電気角である。電気角の単位はdeg(度)である。縦軸は各電気角におけるヨーク32の接線方向(円周方向)の磁歪変形和である。磁歪変形和の単位はppm(百万分率)である。図12Bに示されるように、比較例に係る方形電流波形が部分モデルに印加された場合の磁歪変形和の時間変化の振幅は10.6ppmであった。
【0066】
一方で、図11の部分モデルのコイル36A、36B及び36Cのそれぞれに、第1実施例に係る電流波形として図13Aに示される電流波形が印加される。図13Aのグラフにおいて、横軸は電気角である。電気角の単位はdeg(度)である。縦軸は各電気角においてコイル36A、36B及び36Cのそれぞれに流れる励磁電流の値である。励磁電流の単位はA(アンペア)である。コイル36A、36B及び36Cに印加される電流は、それぞれi、i及びiと表される。第1実施例に係る電流波形は、上述してきた実施形態で説明された駆動電流決定方法を用いて決定されている。
【0067】
第1実施例に係る電流波形が部分モデルに印加された場合に、その電流波形に対応した固定子30のヨーク32の接線方向(円周方向)の磁歪変形和が算出される。第1実施例に係る電流波形に対応したヨーク32の接線方向(円周方向)の磁歪変形和の時間変化の波形が図13Bのグラフとして示される。図13Bのグラフにおいて、横軸は電気角である。電気角の単位はdeg(度)である。縦軸は各電気角におけるヨーク32の接線方向(円周方向)の磁歪変形和である。磁歪変形和の単位はppm(百万分率)である。図13Bに示されるように、第1実施例に係る電流波形が部分モデルに印加された場合の磁歪変形和の時間変化の振幅は0.8ppmであった。
【0068】
以上説明してきた結果によれば、第1実施例に係る電流波形を印加した場合の磁歪変形和の時間変化の振幅は、比較例に係る方形電流波形を印加した場合の磁歪変形和の時間変化の振幅よりも大幅に小さくなった。具体的には、第1実施例に係る電流波形を印加した場合の磁歪振動の振幅は、比較例に係る方形電流波形を印加した場合の磁歪振動の振幅に対して1/10以下にまで低減された。また、各相の電流と電気角の掃引間隔を狭くすることによって、励磁のために印加する電流波形が更に微調整されてよい。電流波形の微調整によって、磁歪変形量の時間変動の振幅が更に低減される。
【0069】
検証の対象としているSRMにおいて、3の倍数次が主要な騒音成分である。したがって、騒音抑制の観点で、3の倍数次の振動成分を低減することが優先される。そこで、比較例に係る方形電流波形を印加してモータ20を駆動した場合と、第1実施例に係る電流波形を印加してモータ20を駆動した場合とで、固定子30の磁歪振動の3次成分及び6次成分の変形量が比較される。
【0070】
図14に示されるように、固定子30の磁歪振動の3次成分が、比較例に係る方形電流波形を印加した場合と、第1実施例に係る電流波形を印加した場合とで比較される。比較例に係る方形電流波形を印加した場合の固定子30の各部の変位量は約1μmである。一方で、第1実施例(本実施例)に係る電流波形を印加した場合の固定子30の各部の変位量は0μmに近い。
【0071】
図15に示されるように、固定子30の磁歪振動の6次成分が、比較例に係る方形電流波形を印加した場合と、第1実施例に係る電流波形を印加した場合とで比較される。比較例に係る方形電流波形を印加した場合の固定子30の各部の変位量は約2μmである。一方で、第1実施例(本実施例)に係る電流波形を印加した場合の固定子30の各部の変位量は0μmに近い。
【0072】
図14及び図15に示される結果によれば、振動の3次成分及び6次成分による変形が第1実施例に係る電流波形を採用することによって著しく低減されることが確認された。
【0073】
図16に、比較例に係る方形電流波形を印加してモータ20を駆動した場合と、第1実施例(本実施例)に係る電流波形を印加してモータ20を駆動した場合とにおける、モータ20から発生する振動騒音の音圧レベル解析値が示される。図16において、横軸は周波数成分の次数を表す。縦軸は各次数における音圧レベルを表す。音圧レベルの単位はdB(デシベル)である。本実施例における振動騒音の3次成分の音圧レベルは、比較例の音圧レベルよりも16dB減少している。本実施例における振動騒音の6次成分の音圧レベルは、比較例の音圧レベルよりも20dB減少している。本実施例における振動騒音の9次成分の音圧レベルは、比較例の音圧レベルよりも14dB減少している。本実施例における振動騒音の12次成分の音圧レベルは、比較例の音圧レベルよりも17dB減少している。
【0074】
以上述べてきたように、駆動電流決定方法を実行することによって決定した、第1実施例に係る電流波形を印加してモータ20を駆動した場合の振動騒音は、方形電流波形を印加した場合の振動騒音よりも低減する。
【0075】
比較例において用いられている方形電流波形は、他の相とほとんど重なっていない。一方で、第1実施例において用いられている3相の電流波形i、i及びiのそれぞれは、図13Aに示されるように、電流が流れる期間の半分以上の期間において、他の相の電流が流れる期間が重なっている。また、3相の電流波形i、i及びiのそれぞれは、各電流波形の形状が同一であり、かつ、各相の位相だけが異なるように構成されている。
【0076】
<第2実施例>
上述してきた駆動電流決定方法は、永久磁石同期モータ(Permanent Magnet Synchronous Motor;PMSM)にも適用される。そこで第2実施例として、PMSMの駆動電流を決定するためのモデル解析が検証される。図17に、第2実施例に係るモータ20の駆動電流の決定方法の検証に使用するモータ20(PMSM)の1/8部分モデルが示される。モータ20は、固定子30と回転子40とを備える。固定子30は、ヨーク32と、極34と、コイル36とを備える。ヨーク32は、円環状に構成されている。極34は、ヨーク32から円環の内側に向けて突出している。コイル36は、極34に巻き回されている。回転子40は、ヨーク42と、極44と、永久磁石46とを備える。ヨーク42は、ヨーク32よりも小さい半径を有する円環状に構成されている。極44は、ヨーク42から円環の外側に向けて突出している。永久磁石46は、極44に磁束を生じさせる。PMSMにおいて、固定子30の各極34がコイル36に流れる駆動電流で励磁されることによって、永久磁石46によって磁束が生じている回転子40の極44との間に電磁力(極44を引き付けたり極44と反発したりする磁力)が生じる。回転子40の極44に対して作用する電磁力のうち、ヨーク42の接線方向(回転子40が回転する方向)の成分が回転子40にトルクを生じさせる。
【0077】
検証の対象とするモータ20(PMSM)は、ハイブリッド自動車の発電機として設計されている。ただし、本発明により得られる効果はハイブリッド自動車用途あるいは発電(回生)用途に制限されず、発明の要件を満たせば駆動(力行)でもその効果を得られる。固定子30の極34の材料は、アモルファス金属2605SA1であるとする。極34の、厚み(コア積厚)は60mmであるとする。ヨーク32の外径は190mmであるとする。
【0078】
PMSMの制御はSRMと異なる。PMSMに対して入力される駆動電流は、3相の電流波形ではなく、d軸電流、q軸電流及び零相電流である。d軸電流、q軸電流及び零相電流は、各電流の周波数成分及び位相を含むベクトル制御の変数として表される。図17の部分モデルのコイル36に、比較例に係るd軸電流、及び、第2実施例(本実施例)に係るd軸電流として、図18のグラフに示されるd軸電流が印加される。図18のグラフにおいて、横軸は電気角である。電気角の単位はdeg(度)である。縦軸は各電気角においてコイル36に流れるd軸電流の値である。d軸電流の単位はA(アンペア)である。比較例に係るd軸電流は、-66Aの直流電流である。第2実施例に係るd軸電流は、主要な振動成分である6次成分を抑制するために、振幅が17.5Aであり、かつ、位相が70degである6次の電流を-66Aの直流電流に重畳した電流である。第2実施例に係るd軸電流は、上述してきた実施形態で説明された駆動電流決定方法を用いて決定されている。なお、q軸電流は、比較例及び第2実施例の両方において直流電流であるとする。
【0079】
比較例及び第2実施例のそれぞれに係るd軸電流が部分モデルに印加された場合に、それぞれのd軸電流に対応した固定子30のヨーク32の接線方向(円周方向)の磁歪変形和が算出される。比較例及び第2実施例(本実施例)のそれぞれに係るd軸電流に対応したヨーク32の接線方向(円周方向)の磁歪変形和の時間変化の波形が図19のグラフとして示される。図19のグラフにおいて、横軸は電気角である。電気角の単位はdeg(度)である。縦軸は各電気角におけるヨーク32の接線方向(円周方向)の磁歪変形和である。磁歪変形和の単位はppm(百万分率)である。
【0080】
図19に示されるように、比較例に係るd軸電流が部分モデルに印加された場合の磁歪変形和の時間変化の振幅は0.8ppmであった。一方で、第2実施例(本実施例)に係るd軸電流が部分モデルに印加された場合の磁歪変形和の時間変化の振幅は0.1ppmであった。つまり、d軸電流として6次の高調波を重畳した電流を印加した場合の磁歪変形和の時間変化の振幅は、d軸電流及びq軸電流として直流電流を印加した場合の磁歪変形和の時間変化の振幅よりも小さくなることが確認された。
【0081】
検証の対象としているPMSMにおいて、6次の振動成分が主要な騒音成分である。したがって、騒音抑制の観点で、6次の振動成分を低減することが優先される。そこで、比較例に係るd軸電流を印加してモータ20を駆動した場合と、第2実施例に係るd軸電流を印加してモータ20を駆動した場合とで、固定子30の磁歪振動の6次成分の変形量が比較される。
【0082】
図20に示されるように、比較例に係るd軸電流を印加した場合の固定子30の各部の変位量は約0.4μmである。一方で、第2実施例(本実施例)に係るd軸電流を印加した場合の固定子30の各部の変位量は0μmに近い。図20に示される結果によれば、振動の6次成分による変形が第2実施例に係るd軸電流を採用することによって著しく低減されることが確認された。
【0083】
図21に、比較例に係るd軸電流を印加してモータ20を駆動した場合と、第2実施例(本実施例)に係るd軸電流を印加してモータ20を駆動した場合とにおける、モータ20から発生する振動騒音の音圧レベル解析値が示される。図21において、横軸は周波数成分の次数を表す。縦軸は各次数における音圧レベルを表す。音圧レベルの単位はdB(デシベル)である。本実施例における振動騒音の6次成分の音圧レベルは、比較例の音圧レベルよりも19dB減少している。一方で、本実施例において印加したd軸電流に6次の電流成分が重畳されているものの12次の電流成分が重畳されていないので、振動騒音の12次成分の音圧レベルは、あまり減少していない。
【0084】
以上述べてきたように、駆動電流決定方法を実行することによって決定した、第2実施例に係るd軸電流を印加してモータ20を駆動した場合の振動騒音は、比較例に係る直流のd軸電流を印加した場合の振動騒音よりも低減する。
【0085】
第2実施例に係るd軸電流として6次の電流成分を重畳した電流が用いられている。抑制したい振動成分に応じて、d軸電流として12次又は18次等の種々の次数の電流成分を重畳した電流が用いられてもよい。
【0086】
(他の実施形態)
以下、他の実施形態に係る駆動電流決定方法の例が説明される。
【0087】
モータ20において、固定子30と回転子40との間に作用する電磁力は、固定子30の接線方向(円周方向)だけでなく、固定子30と回転子40とが引っ張り合ったり反発し合ったりすることによって接線方向に直交する方向(半径方向)にも作用する。固定子30の接線方向に作用する電磁力は、モータ20のトルクの出力に寄与する。一方で、固定子30の接線方向に交差する方向に作用する電磁力は、モータ20のトルクの出力に寄与せず、むしろ固定子30を変形させることによって振動騒音を生じさせる。そこで、制御部12は、磁歪変形量だけでなく電磁力変形量も考慮してモータ20の駆動電流を決定してよい。電磁力変形量は、固定子30に作用する電磁力と固定子30の特性(例えばヤング率等)とに基づいて定まる。
【0088】
制御部12は、磁歪変形量だけでなく電磁力変形量も考慮してモータ20の駆動電流を決定するために、図22のフローチャートに例示される手順を含む駆動電流決定方法を実行してよい。
【0089】
制御部12は、モータ20の固定子30の磁歪変形量を算出するために用いる、固定子30の極34のコイル36に印加する駆動電流の電流波形を仮定する(ステップS21)。制御部12は、仮定した電流波形を固定子30の各極34のコイル36に駆動電流として印加したときにモータ20の鉄心に生じる磁束密度の時間変化を算出する(ステップS22)。制御部12は、仮定した電流波形を駆動電流として印加したときにモータ20の鉄心に生じる磁束密度の時間変化を、鉄心の磁歪変形量の時間変化に変換する(ステップS23)。制御部12は、仮定した電流波形を駆動電流として印加したときのモータ20の鉄心の磁歪変形和の時間変化を算出する(ステップS24)。制御部12は、ステップS21からS24までの各手順を、図6のフローチャートのステップS11からS14までの各手順と同様に実行してよい。
【0090】
制御部12は、ステップS22の手順で算出した、モータ20の鉄心に生じる磁束密度の時間変化を、固定子30の電磁力変形量の時間変化に変換する(ステップS25)。ステップS25は、電磁力変形量算出ステップとも称される。具体的に、制御部12は、各時刻において鉄心の中の磁束密度を計算した結果を、各時刻における固定子30と回転子40との間に作用する電磁力による固定子30の電磁力変形量に変換することによって、鉄心(固定子30)に生じる磁束密度の時間変化を、鉄心(固定子30)の電磁力変形量の時間変化に変換できる。
【0091】
制御部12は、ステップS24の手順で算出したモータ20の鉄心の磁歪変形和の時間変化と、ステップS25の手順で算出したモータ20の鉄心の電磁力変形量の時間変化とを足し合わせた合計変形量の時間変化を算出する(ステップS26)。制御部12は、固定子30の接線方向の磁歪変形和を、固定子30の接線方向に交差する方向の変形量に変換して固定子30の電磁力変形量と足し合わせてよい。
【0092】
制御部12は、合計変形量の時間変化の振幅が条件を満たすか判定する(ステップS27)。制御部12は、合計変形量の時間変化の振幅が条件を満たす場合(ステップS27:YES)、条件を満たした電流波形を、実際にモータ20の固定子30に印加する駆動電流として決定する(ステップS28)。制御部12は、合計変形量の時間変化の振幅が満たすべき条件として、以下に説明するように、モータ20の鉄心の変形振動による騒音を低減できる条件を設定してよい。
【0093】
モータ20の鉄心の変形振動による騒音は、モータ20の鉄心の合計変形量の振幅に応じて大きくなる。したがって、制御部12は、モータ20の鉄心の変形振動による騒音を低減できる条件として、モータ20の鉄心の合計変形量の時間変化の振幅が小さくなる条件を設定してよい。
【0094】
制御部12は、例えば、ステップS21からステップS26までの手順を実行することによって算出した合計変形量の時間変化の振幅が所定値未満になる場合に、ステップS21の手順で仮定した電流波形が条件を満たしていると判定し、その電流波形を実際にモータ20の固定子30に印加する駆動電流として決定してよい。
【0095】
制御部12は、例えば、ステップS21からステップS26までの手順を複数回にわたって繰り返し実行して、仮定した複数の電流波形のそれぞれに対応する合計変形量の時間変化の振幅を算出してよい。制御部12は、仮定した複数の電流波形のそれぞれに対応する合計変形量の時間変化の振幅のうち、最小の振幅に対応する電流波形が条件を満たしていると判定し、その電流波形を実際にモータ20の固定子30に印加する駆動電流として決定してもよい。
【0096】
制御部12は、合計変形量の時間変化の振幅が条件を満たさない場合(ステップS27:NO)、ステップS21の手順に戻り、新たに電流波形を仮定して算出した合計変形量の時間変化の振幅が条件を満たすまで、ステップS21からS26までの手順を繰り返す。
【0097】
制御部12は、ステップS28の手順の実行後、図22のフローチャートの手順の実行を終了する。制御部12は、図22のフローチャートの手順を実行することによって決定した駆動電流を、上述した図5のフローチャートのステップS2の励磁電流の印加手順に適用することによって、モータ20を駆動する。
【0098】
以上述べてきたように、他の実施形態に係る駆動電流決定ステップは、モータ20の固定子30に作用する電磁力による固定子30の鉄心の変形量である電磁力変形量の時間変化を算出する電磁力変形量算出ステップを更に含む。また、制御部12は、波形決定ステップにおいて、固定子30の鉄心全体の磁歪変形量(磁歪変形和)と固定子30の鉄心の電磁力変形量とを合わせた合計変形量の時間変化の振幅が最小になるときの電流波形を、固定子30の鉄心に印加する駆動電流として決定してよい。
【0099】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0100】
1 制御システム
10 制御装置(12:制御部、14:記憶部、16:インタフェース)
20 モータ
30 固定子(32:ヨーク、34、34A~C:極、36、36A~C:コイル)
40 回転子(42:ヨーク、44:極、46:永久磁石)
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22