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  • 特開-三次元造形用樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106219
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】三次元造形用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/129 20170101AFI20240731BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240731BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240731BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240731BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B29C64/129
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y80/00
C08G59/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010419
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】渡部 功治
(72)【発明者】
【氏名】渡海 達也
【テーマコード(参考)】
4F213
4J036
【Fターム(参考)】
4F213AA43
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL06
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL24
4F213WL43
4J036AD08
4J036AJ01
4J036AJ05
4J036AJ10
4J036DB28
4J036EA02
4J036EA03
4J036FA10
4J036GA03
4J036HA02
4J036JA15
(57)【要約】
【課題】低粘度でありながら、高い引張強度・衝撃強度、硬度および破断伸びを有する三次元造形物を得ることができる三次元造形用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】カチオン重合性成分と、ラジカル重合性成分と、カチオン光開始剤と、ラジカル光開始剤とを含み、カチオン重合性成分としてポリアルキレングリコールグリシジルエーテルを含む2種以上の成分、および/または、ラジカル重合性成分としてポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを含む2種以上の成分、を含有する、三次元造形用樹脂組成物に関する。
【選択図】なし


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性成分と、ラジカル重合性成分と、カチオン光開始剤と、ラジカル光開始剤とを含み、
カチオン重合性成分としてポリアルキレングリコールグリシジルエーテルを含む2種以上の成分、および/または、ラジカル重合性成分としてポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを含む2種以上の成分、を含有する、三次元造形用樹脂組成物。
【請求項2】
ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルまたはポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの含有量は、樹脂組成物中0.1~30質量%である請求項1に記載の三次元造形用樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルとポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの合計含有量は、樹脂組成物中0.1~30質量%である請求項2に記載の三次元造形用樹脂組成物。
【請求項4】
ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルのTgが30℃以下である請求項1または2に記載の三次元造形用樹脂組成物。
【請求項5】
ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルのアルキレン部位の炭素数が2~6である請求項1または2に記載の三次元造形用樹脂組成物。
【請求項6】
ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルの重量平均分子量が10~10,000である請求項1または2に記載の三次元造形用樹脂組成物。
【請求項7】
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのTgが30℃以下である請求項1または2に記載の三次元造形用樹脂組成物。
【請求項8】
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのアルキレン部位の炭素数が2~6である請求項1または2に記載の三次元造形用樹脂組成物。
【請求項9】
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの重量平均分子量が10~10,000である請求項1または2に記載の三次元造形用樹脂組成物。
【請求項10】
30℃における粘度が1000mPa・s以下である請求項1または2に記載の三次元造形用樹脂組成物。
【請求項11】
405nm以下のトップ照射波長を用いるSLA装置に用いるための請求項1または2に記載の三次元造形用樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1または2に記載の三次元造形用樹脂組成物を硬化して得られる三次元造形物であって、
引張破断強度が25MPa以上、アイゾット強度が20J/m以上、および、ショアD硬度が60以上である三次元造形物。
【請求項13】
さらに、引張破断点伸びが15%以上である、請求項12に記載の三次元造形物。
【請求項14】
歯科アライナー成形型に使用される請求項12に記載の三次元造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形用樹脂組成物、および、該組成物を光硬化させた三次元造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元光造形方法として、SLA方式(ステレオリソグラフィー)とDLP方式(デジタルライトプロセッシング)という方法がある。昨今、大型造形可能な大型SLA装置を取り扱う装置メーカーが増えてきており、徐々に市場規模が拡大している。大型化に伴い試作案件から量産への適用が注目されているが、従来の材料では強度面が不足しており量産への適応は難しいという課題が存在する。
【0003】
ゴムやシリコーンなどのフィラーを配合して、靭性や強度を改善することも考えられる。しかし、粘度が上昇し、三次元光造形に適さないという課題が生じる。
【0004】
特許文献1には、カチオン重合性成分、ラジカル重合性成分および相分離靭性化剤を含む付加造形用放射線硬化性組成物が開示されている。しかしながら、得られた三次元造形物の高い引張強度・衝撃強度や硬度、破断伸びの両立は充分ではなく、特に大型のSLA方式に適用することは容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2019-513842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低粘度でありながら、高い引張強度・衝撃強度、硬度および破断伸びを有する三次元造形物を得ることができる三次元造形用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討したところ、カチオン重合性成分またはラジカル重合性成分として、特定の成分を含む2種の成分を併用することにより、低粘度でありながら、高い引張強度・衝撃強度、硬度および破断伸びを有する三次元造形物を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明(1)は、カチオン重合性成分と、ラジカル重合性成分と、カチオン光開始剤と、ラジカル光開始剤とを含み、
カチオン重合性成分としてポリアルキレングリコールグリシジルエーテルを含む2種以上の成分、および/または、ラジカル重合性成分としてポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを含む2種以上の成分、を含有する、三次元造形用樹脂組成物である。
【0009】
本発明(2)は、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルまたはポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの含有量は、樹脂組成物中0.1~30質量%である本発明(1)に記載の三次元造形用樹脂組成物である。
【0010】
本発明(3)は、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルとポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの合計含有量は、樹脂組成物中0.1~30質量%である本発明(2)に記載の三次元造形用樹脂組成物である。
【0011】
本発明(4)は、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルのTgが30℃以下である本発明(1)~(3)のいずれかに記載の三次元造形用樹脂組成物である。
【0012】
本発明(5)は、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルのアルキレン部位の炭素数が2~6である本発明(1)~(4)のいずれかに記載の三次元造形用樹脂組成物である。
【0013】
本発明(6)は、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルの重量平均分子量が10~10,000である本発明(1)~(5)のいずれかに記載の三次元造形用樹脂組成物である。
【0014】
本発明(7)は、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのTgが30℃以下である本発明(1)~(6)のいずれかにに記載の三次元造形用樹脂組成物である。
【0015】
本発明(8)は、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのアルキレン部位の炭素数が2~6である本発明(1)~(7)のいずれかに記載の三次元造形用樹脂組成物である。
【0016】
本発明(9)は、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの重量平均分子量が10~10,000である本発明(1)~(8)のいずれかに記載の三次元造形用樹脂組成物である。
【0017】
本発明(10)は、30℃における粘度が1000mPa・s以下である本発明(1)~(9)のいずれかに記載の三次元造形用樹脂組成物である。
【0018】
本発明(11)は、405nm以下のトップ照射波長を用いるSLA装置に用いるための本発明(1)~(10)のいずれかに記載の三次元造形用樹脂組成物である。
【0019】
本発明(12)は、本発明(1)~(11)のいずれかに記載の三次元造形用樹脂組成物を硬化して得られる三次元造形物であって、引張破断強度が25MPa以上、アイゾット強度が20J/m以上、および、ショアD硬度が60以上である三次元造形物である。
【0020】
本発明(13)は、さらに、引張破断点伸びが15%以上である、本発明(12)に記載の三次元造形物である。
【0021】
本発明(14)は、歯科アライナー成形型に使用され本発明(12)または(13)に記載の三次元造形物である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の三次元造形用樹脂組成物は、低粘度でありながら、ポリアミド(ポリアミド11やポリアミド12)に近い伸びと強度を有する三次元造形物を得ることができ、特にSLA方式の三次元光造形装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る三次元造形用樹脂組成物を用いて、光造形により三次元造形物を形成する工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<<三次元造形用樹脂組成物>>
本発明の三次元造形用樹脂組成物は、カチオン重合性成分と、ラジカル重合性成分と、カチオン光開始剤と、ラジカル光開始剤とを含み、カチオン重合性成分としてポリアルキレングリコールグリシジルエーテルを含む2種以上の成分、および/または、ラジカル重合性成分としてポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを含む2種以上の成分、を含有することを特徴とする。ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルまたはポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを含有すると、架橋の進行に伴い、ポリアルキレングリコールの部位が相分離して、靭性を発現し、破断強度も向上するものと考えられる。
【0025】
<カチオン重合性成分>
カチオン重合性成分とは、光照射により発生したイオンなどの作用により硬化または重合可能な光硬化性モノマーが挙げられる。光硬化性モノマーとしては、重合性の官能基を有するモノマーが好ましい。光硬化性モノマーにおける重合性官能基の個数は、1~10個が好ましく、1~5個がより好ましい。重合性官能基としては、エポキシ基、ビニルエーテル基などの重合性炭素-炭素不飽和結合を有する基などが挙げられる。より具体的には、例えば、エポキシ系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、環状エーテル系モノマーなどのカチオン重合性モノマーなどが挙げられる。なかでも、反応速度の点で、エポキシ系モノマー、環状エーテル系モノマーが好ましい。
【0026】
エポキシ系モノマーとしては、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物を挙げることができる。エポキシ系モノマーは、例えば、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどのポリアルキレングリコールグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エポキシシクロヘキサン環または2,3-エポキシプロピロキシ基を含む化合物、リモネンジオキサイドなどが挙げられる。
【0027】
ビニルエーテル系モノマーとしては、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
環状エーテル系モノマーとしては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、ビス[(3-エチルー3-オキセタニル)メチル]イソフタレート、4,4-ビス[(3-エチルー3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニルなどが挙げられる。
【0029】
ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルのTgは特に限定されないが、30℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。Tgが30℃を超えると、耐衝撃性が不足する傾向がある。ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルのアルキレン部位の炭素数は特に限定されないが、2~6が好ましい。炭素数が7以上では、樹脂組成物中での溶解性が低下する傾向がある。ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルの重量平均分子量は特に限定されないが、10~10,000が好ましく、100~5,000がより好ましい。重量平均分子量が10,000を超えると、樹脂組成物中での溶解性が低下する傾向がある。
【0030】
カチオン重合性成分として、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルを使用する場合、その含有量は、樹脂組成物中0.1~30質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、3~20質量%がさらに好ましい。0.1質量%未満では、破断伸度が不足する傾向となり、30質量%を超えると、弾性率が低下する傾向がある。
【0031】
カチオン重合性成分の含有量は、樹脂組成物中、1~99質量%が好ましく、10~90質量%がより好ましいく、50~80質量%がさらに好ましい。
【0032】
<ラジカル重合性成分>
ラジカル重合性成分とは、光照射により発生したラジカルなどの作用により硬化または重合可能な光硬化性モノマーが挙げられる。光硬化性モノマーとしては、重合性の官能基を有するモノマーが好ましい。光硬化性モノマーにおける重合性官能基の個数は、1~10個が好ましく、1~5個がより好ましい。重合性官能基としては、ビニル基、アリル基などの重合性炭素-炭素不飽和結合を有する基などが挙げられる。より具体的には、例えば、(メタ)アクリル系モノマーなどのラジカル重合性モノマーが挙げられる。
【0033】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが挙げられる。たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸エチルカルビトール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエーテル、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド、スチレン、イタコン酸メチル、イタコン酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、3-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリジノンなどが挙げられる。ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0034】
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのTgは特に限定されないが、30℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。Tgが30℃を超えると、耐衝撃性が不足する傾向がある。ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのアルキレン部位の炭素数は特に限定されないが、2~6が好ましい。炭素数が7以上では、樹脂組成物中での溶解性が低下する傾向がある。ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの重量平均分子量は特に限定されないが、10~10,000が好ましく、100~5,000がより好ましい。重量平均分子量が10,000を超えると、樹脂組成物中での溶解性が低下する傾向がある。
【0035】
ラジカル重合性成分として、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを使用する場合、その含有量は樹脂組成物中0.1~30質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、3~20質量%がさらに好ましい。
【0036】
ラジカル重合性成分の含有量は、樹脂組成物中、1~99質量%が好ましく、10~90質量%がより好ましく、10~40質量%がさらに好ましい。
【0037】
カチオン重合性成分であるポリアルキレングリコールグリシジルエーテルと、ラジカル重合性成分であるポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを併用する場合、両者の合計含有量は、樹脂組成物中0.1~30質量%が好ましい。
【0038】
<カチオン光開始剤>
カチオン光開始剤は、光の作用により活性化してよりカチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合反応を開始させるものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのアニオンとの芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩などのオニウム塩が挙げられる。
【0039】
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウム、ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4′-ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド、ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4′-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド、ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4′-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド、ビスヘキサフルオロホスフェート、7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン、ヘキサフルオロアンチモネート、7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-フェニルカルボニル-4′-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド、ヘキサフルオロホスフェート、4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4′-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド、ヘキサフルオロアンチモネート、4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4′-ジ(p-トルイル)スルホニオ-ジフェニルスルフィド、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0040】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0041】
これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、硬化速度の観点から、アニオンがリン原子を含むものではないことが好ましく、例えば、トリフェニルスルホニウム、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好適である。
【0042】
カチオン光重合開始剤の添加量は、カチオン重合性成分100重量部に対して0.01~10重量部が好ましく、0.1~5重量部がより好ましい。0.01重量部未満では、硬化不良となる傾向となり、10重量部を超えると、貯蔵安定性の不良や吸収による硬化不良となる傾向がある。
【0043】
<ラジカル光開始剤>
ラジカル光開始剤は、光の作用により活性化してラジカルを発生し、反応性モノマーの重合を開始させる。ラジカル光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤などが挙げられる。
【0044】
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンなどが挙げられる。
【0045】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0046】
ラジカル光重合開始剤の添加量は、ラジカル重合性成分100重量部に対して0.01~10重量部が好ましく、0.1~5重量部がより好ましい。0.01重量部未満では、硬化不良となる傾向となり、10重量部を超えると、貯蔵安定性の不良や吸収による硬化不良となる傾向がある。
【0047】
本発明の三次元造形用樹脂組成物は、フィラーなどを含有してもよい。
【0048】
フィラーは、特に限定されないが、無機フィラー、架橋構造を有する有機フィラーなどが挙げられる。無機フィラーの材質の具体例として、特に限定されるものではないが、例えば、コロイダルシリカ、中空シリカ、フュームドシリカ等のシリカ及びチタニア、ジルコニア等の金属酸化物の他、熱可塑性又は熱硬化性のアクリル樹脂をシリカで被覆したコアシェル型のアクリル-シリカ複合体、メラミン樹脂をシリカで被覆したコアシェル型のメラミン-シリカ複合体、シリカを熱可塑性又は熱硬化性のアクリル樹脂で被覆したコアシェル型のアクリル-シリカ複合体、シリカをメラミン樹脂で被覆したコアシェル型のメラミン-シリカ複合体、熱可塑性又は熱硬化性のアクリル樹脂により小さなシリカを担持させたアクリル-シリカ複合体のような有機無機複合体等が挙げられる。有機フィラーの材質の具体例としては、特に限定されるものではないが、例えばフッ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタンゴム等が挙げられる。
【0049】
<添加剤>
本発明の三次元造形用樹脂組成物は、重合禁止剤、連鎖移動剤、ワックス粒子、染料、紫外線増感剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料、界面活性剤などの公知の添加剤を含むことができる。
【0050】
重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、tert-ブチル-ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、4-メチルキノリン、フェノチアジン、2,6-ジイソブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、アンモニウム-N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム等が挙げられる。重合禁止剤の配合量は、全樹脂組成物中0.001~1.0質量%が好ましく、0.01~0.3質量%がより好ましい。
【0051】
連鎖移動剤を配合することにより、反応性モノマーの重合度(反応性モノマーからなるポリマーの分子量)を制御することができる。連鎖移動剤としては、例えば、ポリオール、水、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等のチオール基含有化合物等が挙げられる。連鎖移動剤の配合量は、全樹脂組成物中0.00001~10質量%が好ましく、0.0001~1質量%がより好ましい。ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0052】
本発明の三次元造形用樹脂組成物は、室温で液状であることが好ましい。室温で液状であることで、3Dプリンタなどを用いて容易に光造形することができる。本発明の三次元造形用樹脂組成物の30℃における粘度は1000mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましく、300mPa・s以下がさらに好ましい。なお、樹脂組成物の粘度は、コーンプレート型のE型粘度計を用いて、20rpmの回転速度で測定することができる。
【0053】
本発明の三次元造形用樹脂組成物は、様々な造形方法により、二次元や三次元などの造形物(またはパターン)を形成することができ、特に、光造形に適している。三次元造形用樹脂組成物は、室温で液状であるため、例えば、バット方式の光造形に用いてもよく、インクジェット式の光造形に用いてもよい。特に405nm以下のトップ照射波長を用いるステレオリソグラフィー(SLA)装置に好適に適用することができる。
【0054】
<<三次元造形物>>
本発明の三次元造形物は、前記三次元造形用樹脂組成物を硬化して得られる三次元造形物であって、引張破断強度が25MPa以上、アイゾット強度が20J/m以上、および、ショアD硬度が60以上であることを特徴とする。
【0055】
本発明の三次元光造形物の引張破断強度は特に限定されないが、25MPa以上が好ましく、30MPa以上がより好ましく、40MPa以上がさらに好ましい。25MPa未満では、強度が不十分である。引張破断伸びは特に限定されないが、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、25%以上がさらに好ましい。15%未満では、靭性が不十分である。ここで、引張破断強度および引張破断伸びは、ASTM D638に準拠して測定する。
【0056】
本発明の三次元光造形物のアイゾット衝撃強度は特に限定されないが、20J/m以上が好ましく、30J/m以上がより好ましく、40J/m以上がさらに好ましい。20J/m未満では、強度が不十分である。ここで、アイゾット衝撃強度は、ASTM D256に準拠して測定する。
【0057】
本発明の三次元光造形物のショアD硬度は特に限定されないが、30以上が好ましく、45以上がより好ましく、60以上がさらに好ましい。30未満では、強度が不十分となる傾向がある。ここで、ショアD硬度は、タイプDデュロメータを用い、JIS K7215:1986に準拠して測定する。
【0058】
本発明の三次元光造形物は、SLA装置、特に405nm以下のトップ照射波長を用いるSLAに最適に適用できる。
【0059】
本発明の三次元光造形物のtanδの主ピーク温度は特に限定されないが、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。40℃未満では、耐熱性が不十分となる。tanδは、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定されるTgである。硬化物を低温側から高温側(例えば、-100℃から+200℃)まで昇温しながら測定することができる。ピークが複数存在する場合には、大きい方のピーク(主ピーク)のピーク温度とする。
【0060】
本発明の三次元光造形物は、様々な用途に使用可能であるが、歯科アライナー成形型、樹脂型、プラスチック射出成型物代替用途などに使用することができる。
【0061】
本発明の三次元造形用樹脂組成物を用いて、以下に示す方法により、本発明の三次元光造形物を作製することができる。
(1)本発明の三次元造形用樹脂組成物からなる第1液膜を形成し、第1液膜を硬化させて第1パターンを形成する工程、および、
(2)第1パターンに接するように、本発明の三次元造形用樹脂組成物からなる第2液膜を形成し、第2液膜を硬化させて第2パターンを積層し、三次元造形物を形成する工程
を含む。
【0062】
以下に、図1を参照しながら、バット式の光造形の手順について説明する。図1は、樹脂槽(バット)を備える光造形装置(パターニング装置)を用いて三次元造形物を形成する場合の一例である。図示例では、吊り下げ方式の造形について示したが、三次元造形用樹脂組成物を用いて三次元光造形することができる方法であれば特に制限されない。また、光照射(露光)の方式についても特に制限されず、点露光でも、面露光でもよい。
【0063】
光造形装置1は、パターン形成面2aを備えるプラットフォーム2と、三次元造形用樹脂組成物5を収容した樹脂槽3と、面露光方式の光源としてのプロジェクタ4とを備える。
【0064】
(1)第1液膜を形成し、硬化させて第1パターンを形成する工程
工程(1)では、(a)に示すように、まず、樹脂槽3に収容された三次元造形用樹脂組成物5に、プラットフォーム2のパターン形成面2aを、プロジェクタ4(樹脂槽3の底面)に向けた状態で浸漬させる。このときに、パターン形成面2aとプロジェクタ4(または樹脂槽3の底面)との間に液膜7a(液膜a)が形成されるように、パターン形成面2a(またはプラットフォーム2)の高さを調整する。次いで、(b)に示すように、プロジェクタ4から液膜7aに向けて、光Lを照射(面露光)することで、液膜7aを光硬化させて第1パターン8a(パターンa)を形成する。
【0065】
光造形装置1では、樹脂槽3が、三次元造形用樹脂組成物5の供給ユニットとしての役割を有する。液膜に光源から光が照射されるように、樹脂槽3の少なくとも、液膜とプロジェクタ4との間に存在する部分(図1では底面)は露光波長に対して透明であることが望ましい。プラットフォーム2の形状、材質、およびサイズなどは特に制限されない。
【0066】
液膜aを形成した後、光源から液膜aに向かって光照射することにより、液膜aを光硬化させる。光照射は、公知の方法で行うことができる。露光方式は、特に制限されず、点露光でも面露光でもよい。光源としては、光硬化に使用される公知の光源が使用できる。点露光方式の場合には、例えば、プロッター式、ガルバノレーザ(またはガルバノスキャナ)方式、SLA(ステレオリソグラフィー)方式などが挙げられる。露光波長は、三次元造形用樹脂組成物の構成成分(特に、光重合開始剤の種類)に応じて適宜選択できる。
【0067】
(2)第1パターンに接するように、第2液膜を形成し、第2液膜を硬化させて第2パターンを積層し、三次元造形物を作製する工程
工程(2)では、工程(1)で得られたパターンaと、光源との間に、三次元造形用樹脂組成物5を供給して、液膜7b(液膜b)を形成する。つまり、パターン形成面に形成されたパターンa上に液膜bを形成する。三次元造形用樹脂組成物5の供給は、工程(1)と同様である。
【0068】
例えば、図1の(c)に示すように、第1パターン8a(二次元パターンa)を形成した後、第1パターン形成面2aをプラットフォーム2ごと上昇させてもよい。そして、第1パターン8aと樹脂槽3の底面との間に三次元造形用樹脂組成物5を供給することにより、液膜7b(液膜b)を形成することができる。
【0069】
形成した液膜bに対して、光源から露光して、液膜bを光硬化させ、第1パターンaに別のパターン(液膜bの光硬化により得られるパターンb)を積層する。このようにパターンが厚み方向に積層されることで、三次元造形パターンを形成することができる。
【0070】
例えば、図1の(d)に示すように、第1パターン8a(パターンa)と樹脂槽3の底面との間に形成された液膜7b(液膜b)に、プロジェクタ4から露光して、液膜7bを光硬化させる。この光硬化により、液膜7bが第2パターン8b(パターンb)に変換される。このようにして、第1パターン8aに第2パターン8bを積層することができる。光源や露光波長などは、工程(1)についての記載を参照できる。
【0071】
工程(2)は複数回繰り返すことができる。繰り返すことにより、複数のパターンbが厚み方向に積層されることになり、さらに立体的な造形パターンが得られる。繰り返し回数は、所望する三次元造形物(三次元造形パターン)の形状やサイズなどに応じて適宜決定できる。
【0072】
例えば、図1の(e)に示すように、パターン形成面2a上に第1パターン8a(パターンa)および第2パターン8b(パターンb)が積層された状態のプラットフォーム2を上昇させる。このとき、第2パターン8bと樹脂槽3の底面との間に液膜7b(液膜b)が形成される。そして、図1の(f)に示すように、プロジェクタ4から液膜7bに対して露光し、液膜7bを光硬化させる。これにより、第1パターン8b上に別のパターン8b(パターンb)が形成される。そして、(e)と(f)とを交互に繰り返すことで、複数のパターン8b(二次元パターンb)を積層させることができる。
【0073】
工程(2)は、さらに、第1パターンおよび第2パターンを、溶剤で洗浄する工程を含むことが好ましい。得られた三次元造形パターンには、未硬化の三次元造形用樹脂組成物が付着しているため、該組成物を取り除くために行われる。具体的な溶剤としては、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどが挙げられる。
【0074】
得られた三次元造形パターンには、必要に応じて、後硬化を施してもよい。後硬化は、パターンに光照射することで行うことができる。光照射の条件は、三次元造形用樹脂組成物の種類や得られたパターンの硬化の程度などに応じて適宜調節できる。後硬化は、パターンの一部に対して行ってもよく、全体に対して行ってもよい。
【実施例0075】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0076】
以下に、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
【0077】
<<カチオン重合性成分>>
ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(アルキレン部位の炭素数:4、アルキレン部位の繰り返し単位数:9、重量平均分子量:780、Tg:-69℃)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱ケミカル株式会社製JER828)
水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製EX-252)
3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製セロキサイド2021P)
リモネンジオキシド(SYMRISE社製)
3―エチルー3-ヒドロキシメチルオキセタン(UBE株式会社製株式会社製ETERNACOLL EHO)
【0078】
<<ラジカル重合性成分>>
ポリアルキレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製A-PTMG65、アルキレン部位の炭素数:4、アルキレン部位の繰り返し単位数:9、重量平均分子量:774、Tg:-48℃)
ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学工業株式会社製A-9550)
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製IRR214-K)
トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリアクリレート(MIWON社製M370)
ビスフェノールAエチレンオキサイド4モル変性ジアクリレート(MIWON社製M240)
【0079】
<<カチオン光開始剤>>
芳香族スルホニウム塩(サンアプロ株式会社製CPI-101A)
【0080】
<<ラジカル光開始剤>>
1-ベンゾイル-1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM Resin社製Omnirad 184)
【0081】
<<連鎖移動剤>>
蒸留水
ポリオキシエチレン-ビスフェノールAエーテル(日油株式会社製DA-700)
ポリプロピレングリコール(三洋化成工業株式会社製PP-400、重量平均分子量400)
ポリテトラメチレングリコール(三菱ケミカル株式会社製PTMG650、重量平均分子量650)
【0082】
<<コアシェル粒子分散体>>
シリコーン系ポリマー ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂分散体(カネカ株式会社製MX-962)
【0083】
実施例1~6および比較例1
表1に示す配合量(重量比)で、各成分を混合した。攪拌しながら80℃のオーブンで加熱して、固形成分を溶解させることにより均一な液状の樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物を用いて以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0084】
<粘度>
コーンプレート型のE型粘度計(TVE-20H、東機産業株式会社)を用いて、30℃にて20rpmの回転速度で光硬化性樹脂組成物の粘度を測定した。
【0085】
<ショアD硬度>
SLA方式の3Dプリンタ(Lite100、Union Tech社製)を用いて、ピッチ100μmの条件で短冊状のサンプル(縦35mm×横20mm×厚み(高さ)6mm)を作製した。タイプDデュロメータを用い、JIS K7215:1986に準拠して、ショアD硬度を測定した。
【0086】
<引張破断強度と引張破断伸度>
SLA方式の3Dプリンタ(Lite100、Union Tech社製)を用いて、ピッチ100μmの条件で試験片を作製した。この試験片を用いて、既述の条件下、ASTM D638に準拠して引張破断強度(MPa)および引張破断伸度(%)を測定した。
【0087】
<ガラス転移温度Tg>
樹脂組成物約1gをガラス板に挟み、UV照射装置(株式会社アイテックシステム製)を用い、40mW/cmで60秒ごとに照射して、厚みが約1mmの片面に硬化物を形成したガラス板を作製した。得られたガラス板について、DVA-2000(アイティー計測制御株式会社製)を用いて、周波数1Hz、5℃/minの昇温速度で、-100℃から100℃まで昇温した。そして、tanδがトップピークとなる温度を樹脂組成物の硬化物のTgとして求めた。なお、tanδが極大となるピークが複数ある場合には、より大きいピークのピーク温度(マトリックスとなるポリマーのTg)を採用した。
【0088】
<アイゾット衝撃強度>
SLA方式の3Dプリンタ(Lite100、Union Tech社製)を用いて、ピッチ100μmの条件で試験片を作製した。この試験片を用いて、既述の条件下、ASTM D256に準拠してアイゾット衝撃強度(J/m)を測定した。
【0089】
【表1】
【0090】
ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを含有しない組成物から作製した比較例1の造形物では、硬度と破断強度は高くなったが、アイゾット衝撃強度が低くなった。一方、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルまたはポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含有する組成物から作製した実施例1~6の造形物では、アイゾット衝撃強度、破断強度、破断伸度のいずれも高い値となった。
【符号の説明】
【0091】
1:光造形装置
2:プラットフォーム
2a:パターン形成面
3:樹脂槽
4:プロジェクタ
5:三次元造形用樹脂組成物
6:離型剤層
7a:液膜a
7b:液膜b
8a:第1パターンa
8b:第2パターンb
L:光
図1