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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106221
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240731BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20240731BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010427
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 佑貴
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BB05
5H740BB09
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM11
5H740MM12
5H770AA04
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770GA17
5H770HA03X
5H770JA06X
5H770LA02X
5H770LA08X
(57)【要約】
【課題】回生電流の分流を抑制して逆電圧の発生を防止する。
【解決手段】半導体装置1は、出力回路20aおよびスイッチ素子sw1を備える。出力回路20aは、スイッチ素子sw1a、センススイッチ素子sw2aおよび分流遮断回路22aを含む。上アーム側のスイッチ素子sw1がターンオンからターンオフになった場合、負荷Lの回生動作により負荷Lからは回生電流IFが流れる。出力回路20aには、センススイッチ素子sw2a内のセンスMOSFET1a2の低電位側に分流遮断回路22aが設けられている。このため、負荷Lの回生動作時に発生する回生電流IFのセンススイッチ素子sw2aへの分流が、分流遮断回路22aによって遮断される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下アーム側制御回路によってスイッチング制御され、負荷に電力を供給する下アーム側スイッチ素子と、前記下アーム側制御回路によってスイッチング制御され、前記下アーム側スイッチ素子に流れる電流をモニタする下アーム側電流モニタ素子と、前記下アーム側電流モニタ素子の低電位側端子に電気的に接続された下アーム側分流遮断回路と、を含む下アーム側出力回路を含む下アーム回路と、
前記下アーム側スイッチ素子と直列に接続された上アーム側スイッチ素子とを備え、
前記下アーム側分流遮断回路は、前記上アーム側スイッチ素子がターンオンからターンオフした場合に前記上アーム側スイッチ素子と前記下アーム側スイッチ素子との接続点と前記下アーム側スイッチ素子の低電位側端子と接続される前記負荷から流れる回生電流が前記下アーム側電流モニタ素子に分流することを遮断する、
半導体装置。
【請求項2】
前記下アーム回路は、前記下アーム側電流モニタ素子から出力されるセンス電流を電圧信号に変換するセンス抵抗をさらに備える、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記下アーム回路は、前記下アーム側制御回路をさらに備え、
前記下アーム側制御回路は、前記電圧信号と閾値電圧との比較により、前記下アーム側スイッチ素子の電流状態を検出する電流検出回路とをさらに含む、
請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記下アーム側電流モニタ素子の電流検出用端子と前記センス抵抗の高電位側端子との間に、前記下アーム側分流遮断回路が設けられる、請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記下アーム側スイッチ素子の低電位側端子と前記センス抵抗の低電位側端子との間に、前記下アーム側分流遮断回路が設けられる、請求項3記載の半導体装置。
【請求項6】
前記上アーム側スイッチ素子は、内蔵ダイオードが付属される上アーム側メインMOSFETであり、前記下アーム側スイッチ素子は、第1の内蔵ダイオードが付属される下アーム側メインMOSFETであり、前記下アーム側電流モニタ素子は、第2の内蔵ダイオードが付属されるセンスMOSFETであり、前記下アーム側分流遮断回路は、ダイオードであって、
前記下アーム側メインMOSFETのドレインは、前記第1の内蔵ダイオードのカソード、前記センスMOSFETのドレイン、前記第2の内蔵ダイオードのカソードおよび前記接続点に接続され、前記接続点は、前記上アーム側メインMOSFETのソースに接続され、
前記ダイオードのアノードは、前記センスMOSFETのソースおよび前記第2の内蔵ダイオードのアノードに接続され、
前記ダイオードのカソードは、前記センス抵抗の一端および前記電流検出回路の入力端に接続され、
前記センス抵抗の他端は、前記下アーム側メインMOSFETのソース、前記第1の内蔵ダイオードのアノードに接続される、
請求項4記載の半導体装置。
【請求項7】
前記上アーム側スイッチ素子は、内蔵ダイオードが付属される上アーム側メインMOSFETであり、前記下アーム側スイッチ素子は、第1の内蔵ダイオードが付属される下アーム側メインMOSFETであり、前記下アーム側電流モニタ素子は、第2の内蔵ダイオードが付属されるセンスMOSFETであり、前記下アーム側分流遮断回路は、ダイオードであって、
前記下アーム側メインMOSFETのドレインは、前記第1の内蔵ダイオードのカソード、前記センスMOSFETのドレイン、前記第2の内蔵ダイオードのカソードおよび前記接続点に接続され、前記接続点は、前記上アーム側メインMOSFETのソースに接続され、
前記センス抵抗の一端は、前記電流検出回路の入力端、前記センスMOSFETのソースおよび前記第2の内蔵ダイオードのアノードに接続され、
前記ダイオードのアノードは、前記センス抵抗の他端に接続され、
前記ダイオードのカソードは、前記下アーム側メインMOSFETのソース、前記第1の内蔵ダイオードのアノードに接続される、
請求項5記載の半導体装置。
【請求項8】
前記電流検出回路は、前記センスMOSFETから出力される前記センス電流が前記センス抵抗を流れることで生じる電圧降下にもとづく前記電圧信号に対し、前記電圧信号が前記閾値電圧以上の場合に前記下アーム側メインMOSFETが過電流状態であることを検出し、
前記下アーム側制御回路は、前記過電流状態を認識すると、前記下アーム側メインMOSFETの駆動を停止する、
請求項6記載の半導体装置。
【請求項9】
前記電流検出回路は、前記センスMOSFETから出力される前記センス電流が前記センス抵抗を流れることで生じる電圧降下と、前記センス電流が前記ダイオードを流れることで生じる順方向電圧降下とにもとづく前記電圧信号に対し、前記電圧信号が前記閾値電圧以上の場合に前記下アーム側メインMOSFETが過電流状態であることを検出し、
前記下アーム側制御回路は、前記過電流状態を認識すると、前記下アーム側メインMOSFETの駆動を停止する、
請求項7記載の半導体装置。
【請求項10】
前記下アーム側出力回路は、前記センス抵抗をさらに含む、
請求項2記載の半導体装置。
【請求項11】
前記下アーム側制御回路は、前記センス抵抗をさらに含む、
請求項3記載の半導体装置。
【請求項12】
前記下アーム側制御回路は、前記下アーム側分流遮断回路をさらに含む、
請求項11記載の半導体装置。
【請求項13】
前記下アーム側分流遮断回路は、前記下アーム側出力回路のプリント基板上に設けられ、または前記下アーム側制御回路の内部に設けられる、請求項1記載の半導体装置。
【請求項14】
上アーム側制御回路によってスイッチング制御され、負荷に電力を供給する上アーム側スイッチ素子と、前記上アーム側制御回路によってスイッチング制御され、前記上アーム側スイッチ素子に流れる電流をモニタする上アーム側電流モニタ素子と、前記上アーム側電流モニタ素子の低電位側端子に電気的に接続された上アーム側分流遮断回路と、を含む上アーム側出力回路を含む上アーム回路と、
前記上アーム側スイッチ素子と直列に接続された下アーム側スイッチ素子とを備え、
前記上アーム側分流遮断回路は、前記下アーム側スイッチ素子がターンオンからターンオフした場合に前記下アーム側スイッチ素子と前記上アーム側スイッチ素子との接続点と前記上アーム側スイッチ素子の低電位側端子と接続される前記負荷から流れる回生電流が前記上アーム側制御回路に分流することを遮断する、
半導体装置。
【請求項15】
前記上アーム回路は、前記上アーム側電流モニタ素子から出力されるセンス電流を電圧信号に変換するセンス抵抗をさらに備える、
請求項14記載の半導体装置。
【請求項16】
前記上アーム回路は、前記上アーム側制御回路をさらに備え、
前記上アーム側制御回路は、前記電圧信号と閾値電圧との比較により、前記上アーム側スイッチ素子の電流状態を検出する電流検出回路とをさらに含む、
請求項15記載の半導体装置。
【請求項17】
前記上アーム側電流モニタ素子の電流検出用端子と前記センス抵抗の高電位側端子との間に、前記上アーム側分流遮断回路が設けられる、請求項16記載の半導体装置。
【請求項18】
前記上アーム側スイッチ素子の低電位側端子と前記センス抵抗の低電位側端子との間に、前記上アーム側分流遮断回路が設けられる、請求項16記載の半導体装置。
【請求項19】
前記下アーム側スイッチ素子は、内蔵ダイオードが付属される下アーム側メインMOSFETであり、前記上アーム側スイッチ素子は、第1の内蔵ダイオードが付属される上アーム側メインMOSFETであり、前記上アーム側電流モニタ素子は、第2の内蔵ダイオードが付属されるセンスMOSFETであり、前記上アーム側分流遮断回路は、ダイオードであって、
前記上アーム側メインMOSFETのドレインは、前記第1の内蔵ダイオードのカソード、前記センスMOSFETのドレインおよび前記第2の内蔵ダイオードのカソードおよび前記負荷の一端に接続され、
前記ダイオードのアノードは、前記センスMOSFETのソースおよび前記第2の内蔵ダイオードのアノードに接続され、
前記ダイオードのカソードは、前記センス抵抗の一端および前記電流検出回路の入力端に接続され、
前記センス抵抗の他端は、前記上アーム側メインMOSFETのソース、前記第1の内蔵ダイオードのアノード、および前記接続点を介して前記負荷の他端に接続され、前記接続点は、前記下アーム側メインMOSFETのカソードに接続される、
請求項17記載の半導体装置。
【請求項20】
前記上アーム側スイッチ素子は、内蔵ダイオードが付属される上アーム側メインMOSFETであり、前記下アーム側スイッチ素子は、第1の内蔵ダイオードが付属される下アーム側メインMOSFETであり、前記上アーム側電流モニタ素子は、第2の内蔵ダイオードが付属されるセンスMOSFETであり、前記上アーム側分流遮断回路は、ダイオードであって、
前記上アーム側メインMOSFETのドレインは、前記第1の内蔵ダイオードのカソード、前記センスMOSFETのドレイン、前記第2の内蔵ダイオードのカソードおよび前記負荷の一端に接続され、
前記センス抵抗の一端は、前記電流検出回路の入力端、前記センスMOSFETのソースおよび前記第2の内蔵ダイオードのアノードに接続され、
前記ダイオードのアノードは、前記センス抵抗の他端に接続され、
前記ダイオードのカソードは、前記上アーム側メインMOSFETのソース、前記第1の内蔵ダイオードのアノード、および前記接続点を介して前記負荷の他端に接続され、前記接続点は、前記下アーム側メインMOSFETのドレインに接続される、
請求項18記載の半導体装置。
【請求項21】
前記電流検出回路は、前記センスMOSFETから出力される前記センス電流が前記センス抵抗を流れることで生じる電圧降下にもとづく前記電圧信号に対し、前記電圧信号が前記閾値電圧以上の場合に前記上アーム側メインMOSFETが過電流状態であることを検出し、
前記上アーム側制御回路は、前記過電流状態を認識すると、前記上アーム側メインMOSFETの駆動を停止する、
請求項19記載の半導体装置。
【請求項22】
前記電流検出回路は、前記センスMOSFETから出力される前記センス電流が前記センス抵抗を流れることで生じる電圧降下と、前記センス電流が前記ダイオードを流れることで生じる順方向電圧降下とにもとづく前記電圧信号に対し、前記電圧信号が前記閾値電圧以上の場合に前記上アーム側メインMOSFETが過電流状態であることを検出し、
前記上アーム側制御回路は、前記過電流状態を認識すると、前記上アーム側メインMOSFETの駆動を停止する、
請求項20記載の半導体装置。
【請求項23】
前記上アーム側出力回路は、前記センス抵抗をさらに含む、
請求項15記載の半導体装置。
【請求項24】
前記上アーム側制御回路は、前記センス抵抗をさらに含む、
請求項16記載の半導体装置。
【請求項25】
前記上アーム側制御回路は、前記上アーム側分流遮断回路をさらに含む、
請求項24記載の半導体装置。
【請求項26】
前記上アーム側分流遮断回路は、前記上アーム側出力回路のプリント基板上に設けられ、または前記上アーム側制御回路の内部に設けられる、請求項14記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置のパワーモジュールには、Si(シリコン)素子のIGBT(Si-IGBT:Silicon-Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられてきたが、近年では、Si素子のIGBTの代わりに、SiC(シリコンカーバイド)素子のMOSFET(SiC-MOSFET:Silicon carbide-Metal Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を使用する動きが活発化している。
【0003】
このようなSiC-MOSFETは、IGBTに比べて、絶縁破壊電界強度が高いことから高耐圧であり、また不純物濃度をより高く、活性層をより薄くすることができる。このため、高効率かつ高速スイッチング動作が可能であり、電力発生損失の低減化が期待できる。
【0004】
一方、メインスイッチにSiC-MOSFETを用いた半導体装置は、例えば、モータ等の負荷に電力を供給する3相インバータ等の電力変換装置に応用されている。また、負荷が短絡状態になると通常動作時以上の過大な電流が流れてメインスイッチおよび周辺回路の故障を引き起こす可能性がある。このため、半導体装置の故障耐性設計の1つとして、過電流を検出するためにセンススイッチが設けられている。
【0005】
関連技術としては、例えば、逆方向過電流検出回路が逆方向過電流を検出した場合に、メインスイッチング素子およびセンススイッチング素子をオンするように制御する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5717915号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SiC-MOSFETを用いたスイッチ素子には内蔵ダイオードが付属されている。このようなSiC-MOSFETをメインスイッチおよびセンススイッチに使用した半導体装置では、負荷に回生電流が生じた場合、メインスイッチおよびセンススイッチを駆動する制御ICに対し、回生電流の一部が制御ICの内部へ分流してしまい、制御IC内に逆電圧が発生するという問題がある。
【0008】
図16は回生電流の分流による逆電圧の発生を説明するための図である。半導体装置100は、上アーム回路114、下アーム回路124および負荷Lを備え、ノードnを介して接続される。下アーム回路124は、出力回路120および制御IC121を備え、出力回路120は、メインスイッチsw1b、センススイッチsw2bを含む。なお、上アーム回路114も下アーム回路124と同様の構成素子を含む。
【0009】
負荷Lを作動するメインスイッチsw1bは、メインMOSFET1b1を有し、さらにメインMOSFET1b1に対して逆並列に接続される内蔵ダイオードDb1が付属されている。同様に、センス電流を検出するセンススイッチsw2bは、センスMOSFET1b2を有し、さらにセンスMOSFET1b2に対して逆並列に接続される内蔵ダイオードDb2が付属されている。なお、メインMOSFET1b1およびセンスMOSFET1b2には、SiC-MOSFETが使用される。
【0010】
出力回路120において、メインMOSFET1b1のドレインは、内蔵ダイオードDb1のカソード、センスMOSFET1b2のドレイン、内蔵ダイオードDb2のカソードおよびノードnに接続される。ノードnは、上アーム回路114内のスイッチ素子(図示せず)の電流出力端子および負荷Lの一端に接続される。
【0011】
メインMOSFET1b1のゲートは、センスMOSFET1b2のゲートおよび制御IC121の出力端子OUTに接続される。センスMOSFET1b2のソースは、内蔵ダイオードDb2のアノードに接続され、さらに制御IC121の入力端子INを介してセンス抵抗Rsの一端に接続される。センス抵抗Rsの他端は、メインMOSFET1b1のソース、内蔵ダイオードDb1のアノードおよび負荷Lの他端に接続される。
【0012】
ここで、メインスイッチsw1bおよびセンススイッチsw2bは、制御IC121の出力端子OUTから出力される駆動信号dsによってスイッチング駆動される。さらに、制御IC121は、センススイッチsw2bから流れるセンス電流Isを入力端子INで受けて、センス抵抗Rsによって電圧信号に変換する。そして、電圧信号にもとづいて、後段の処理部でメインスイッチsw1bに生じうる過電流の検出を行う。
【0013】
このような構成において、上アーム回路114の出力回路内に配置されるスイッチ素子(図示せず)がターンオンからターンオフになった場合、負荷Lの回生動作により負荷Lには回生電流IFが発生する。また、回生電流IFは、センススイッチsw2bに付属している内蔵ダイオードDb2を介して一部が分流する。スイッチ素子にIGBTを使用している場合、IGBTは内蔵ダイオードを有していないため、内蔵ダイオードを介して回生電流IFが分流することはない。
【0014】
しかし、半導体装置100の構成では、メインスイッチsw1bと同様に、センススイッチsw2bにもMOSFETを使用しているため、センススイッチsw2bに付属している内蔵ダイオードDb2を介して、回生動作時に発生した回生電流IFの一部が分流することになる。
【0015】
この場合、図16に示すように、センスMOSFET1b2を駆動する制御IC121の内部に対しても回生電流IFの一部の分流電流I0が入力するため、制御IC121の内部に逆電圧VRが発生してしまう。制御IC121の逆耐圧は低いため、逆電圧VRが発生すると、制御IC121が故障するという危険性がある。
【0016】
なお、上記では、下アーム回路124の出力回路120に含まれる制御IC121の逆電圧の発生について説明したが、上アーム回路114の出力回路に含まれる制御ICにおいても同様に、回生電流の分流による逆電圧の発生の可能性がある。
【0017】
1つの側面では、本発明は、回生電流の分流を抑制して逆電圧の発生を防止した半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、半導体装置が提供される。半導体装置は、下アーム側出力回路、上アーム側スイッチ素子を備える。下アーム側出力回路は、下アーム側スイッチ素子と、下アーム側スイッチ素子に流れる電流をモニタする下アーム側電流モニタ素子と、下アーム側分流遮断回路とを含む。下アーム側スイッチ素子と下アーム側電流モニタ素子は、下アーム側制御回路によって制御され、下アーム側分流遮断回路は下アーム側電流モニタ素子の低電位側と電気的に接続される。上アーム側スイッチ素子は下アーム側スイッチ素子と直列に接続される。負荷は、上アーム側スイッチ素子と下アーム側スイッチ素子との接続点と下アーム側スイッチ素子の低電位側とに接続される。また、下アーム側分流遮断回路は、上アーム側スイッチ素子がターンオンからターンオフした場合に負荷から流れる回生電流が下アーム側電流モニタ素子に分流することを遮断する下アーム側分流遮断回路を含む。
【0019】
また、上記課題を解決するために、半導体装置が提供される。半導体装置は、上アーム側出力回路を備える。上アーム側出力回路は、上アーム側スイッチ素子と、上アーム側スイッチ素子に流れる電流をモニタする上アーム側電流モニタ素子と、上アーム側分流遮断回路とを含む。上アーム側スイッチ素子と上アーム側電流モニタ素子は、上アーム側制御回路によって制御され、上アーム側分流遮断回路は上アーム側電流モニタ素子の低電位側と電気的に接続される。下アーム側スイッチ素子は上アーム側スイッチ素子と直列に接続される。負荷は、上アーム側スイッチ素子と下アーム側スイッチ素子との接続点と上アーム側スイッチ素子の低電位側とに接続される。また、上アーム側分流遮断回路は、下アーム側スイッチ素子がターンオンからターンオフした場合に負荷から流れる回生電流が上アーム側電流モニタ素子に分流することを遮断する上アーム側分流遮断回路を含む。
【発明の効果】
【0020】
1側面によれば、回生電流の分流を抑制して逆電圧の発生を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】半導体装置の一例を説明するための図である。
図2】半導体装置の構成の一例を示す図である。
図3】半導体装置の構成の一例を示す図である。
図4】半導体装置の構成の一例を示す図である。
図5】半導体装置の構成の一例を示す図である。
図6】電流検出回路の構成の一例を示す図である。
図7】半導体装置の構成の一例を示す図である。
図8】半導体装置の構成の一例を示す図である。
図9】半導体装置の構成の一例を示す図である。
図10】半導体装置の構成の一例を示す図である。
図11】電流検出回路の構成の一例を示す図である。
図12】メイン電流と回生電流との関係を示す図である。
図13】逆流防止用ダイオードが非設置の場合の回生電流と逆電圧との関係を示す図である。
図14】逆流防止用ダイオードを設置した場合の回生電流と逆電圧との関係を示す図である。
図15】電力変換装置の構成の一例を示す図である。
図16】回生電流の分流による逆電圧の発生を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において実質的に同一の機能を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。
【0023】
図1は半導体装置の一例を説明するための図である。半導体装置1は、上アーム回路14、下アーム回路24および負荷Lを備える。上アーム回路14は、出力回路10a(上アーム側出力回路)および制御IC11a(上アーム側制御回路)を備え、下アーム回路14は出力回路20a(下アーム側出力回路)および制御IC21a(下アーム側制御回路)を備える。また、ノードnを介して、上アーム回路14が上アーム側に、下アーム回路24が下アーム側に接続される。
【0024】
出力回路10aは、スイッチ素子sw1(上アーム側スイッチ素子)を含む。出力回路20aは、スイッチ素子sw1a(下アーム側スイッチ素子)、センススイッチ素子sw2a(下アーム側電流モニタ素子)および分流遮断回路22aを含む。また、制御IC21aは、センス抵抗Rsおよび電流検出回路21a1を含む。
【0025】
負荷Lを作動するスイッチ素子sw1aは、メインMOSFET1a1を有し、さらにメインMOSFET1a1に対して逆並列に接続される内蔵ダイオードDa1が付属されている。同様に、センス電流を検出するセンススイッチ素子sw2aは、センスMOSFET1a2を有し、さらにセンスMOSFET1a2に対して逆並列に接続される内蔵ダイオードDa2が付属されている。なお、メインMOSFET1a1およびセンスMOSFET1a2に使用されるMOSFETは、SiC-MOSFETである。
【0026】
出力回路20aにおいて、メインMOSFET1a1のドレインは、内蔵ダイオードDa1のカソード、センスMOSFET1a2のドレイン、内蔵ダイオードDa2のカソードおよびノードnに接続される。ノードnは、スイッチ素子sw1の電流出力端子(低電位側端子)および負荷Lの一端(高電位側端子)に接続される。
【0027】
メインMOSFET1a1のゲートは、センスMOSFET1a2のゲートおよび制御IC21aの出力端子OUTに接続される。センスMOSFET1a2のソース(低電位側端子)は、内蔵ダイオードDa2のアノードおよび分流遮断回路22aの一方の端子に接続される。分流遮断回路22aの他方の端子は、制御IC21aの入力端子INを介して、電流検出回路21a1の入力端およびセンス抵抗Rsの一端に接続される。センス抵抗Rsの他端は、メインMOSFET1a1のソース、内蔵ダイオードDa1のアノードおよび負荷Lの他端に接続される。
【0028】
ここで、メインMOSFET1a1およびセンスMOSFET1a2は、制御IC21aの出力端子OUTから出力される駆動信号dsによってスイッチング駆動される。さらに、制御IC21aは、センスMOSFET1a2から流れるセンス電流Isを入力端子INで受けて、センス電流検出用のセンス抵抗Rsによって電圧信号に変換する。そして、電流検出回路21a1は、電圧信号にもとづいて、メインMOSFET1a1に生じうる過電流の検出を行う。
【0029】
このような構成において、上アーム側の出力回路10a内に配置されるスイッチ素子sw1がターンオンからターンオフになった場合、負荷Lの回生動作により負荷Lには回生電流IFが発生する。
【0030】
この場合、出力回路20aには、センスMOSFET1a2とセンス抵抗Rsとの間に分流遮断回路22aが設けられている。このため、負荷Lの回生動作時に発生する回生電流IFのセンスMOSFET1a2への分流が、分流遮断回路22aによって遮断される。
【0031】
このため、回生電流IFの分流が起こらず、正規のルート(負荷Lから内蔵ダイオードDa1の順方向に向かう流れ)のみで回生電流IFを流すことができるため、回生電流IFの分流による逆電圧の発生を防止することができるため、逆電圧の制御IC21aへの印加を防止することが可能になる。
【0032】
次に半導体装置1の具体例の構成および動作について以降詳しく説明する。なお、以降の説明において、MOSFETはSiC-MOSFETが使用されるものとする。
図2は半導体装置の構成の一例を示す図である。半導体装置1-1は、上アーム回路14、下アーム回路24、負荷L、コンデンサC1(極性付)、コンデンサC2および電源部VDCを備え、ノードnを介して、上アーム回路14が上アーム側に、下アーム回路24が下アーム側に配置して接続される。また、負荷Lは、例えば、誘導性負荷である。負荷Lの一端はノードnに接続され、負荷Lの他端は電源部VDCの負極側端子に接続される。
【0033】
上アーム回路14は、出力回路10および制御IC13を備え、出力回路10は、メインスイッチsw11、センススイッチsw12および逆流防止用ダイオードD1を含む。逆流防止用ダイオードD1は上アーム側分流遮断回路に対応する。メインスイッチsw11は、メインMOSFET11を有し、さらにメインMOSFET11に対して逆並列に接続される内蔵ダイオードD11が付属されている。
【0034】
同様に、センス電流を検出するセンススイッチsw12は、センスMOSFET12を有し、さらにセンスMOSFET12に対して逆並列に接続される内蔵ダイオードD12が付属されている。また、制御IC13は、センス抵抗Rs1および電流検出回路3aを含む。
【0035】
下アーム回路24は、出力回路20および制御IC23を備え、出力回路20は、メインスイッチsw21、センススイッチsw22および逆流防止用ダイオードD2を含む。逆流防止用ダイオードD2は下アーム側分流遮断回路に対応する。メインスイッチsw21は、メインMOSFET21を有し、さらにメインMOSFET21に対して逆並列に接続される内蔵ダイオードD21が付属されている。
【0036】
同様に、センス電流を検出するセンススイッチsw22は、センスMOSFET22を有し、さらにセンスMOSFET22に対して逆並列に接続される内蔵ダイオードD22が付属されている。また、制御IC23は、センス抵抗Rs2および電流検出回路3bを含む。
【0037】
各構成素子の接続関係について、電源部VDCの正極側端子は、コンデンサC1の一端、コンデンサC2の一端、メインMOSFET11のドレイン、内蔵ダイオードD11のカソード、センスMOSFET12のドレイン、内蔵ダイオードD12のカソードに接続される。
【0038】
メインMOSFET11のゲートは、センスMOSFET12のゲートおよび制御IC13の出力端子OUTに接続される。センスMOSFET12のソースは、内蔵ダイオードD12のアノードおよび逆流防止用ダイオードD1のアノードに接続される。
【0039】
逆流防止用ダイオードD1のカソードは、制御IC13の入力端子INを介してセンス抵抗Rs1の一端および電流検出回路3aの入力端に接続される。センス抵抗Rs1の他端は、ノードnを介して、メインMOSFET21のドレイン、内蔵ダイオードD21のカソード、センスMOSFET22のドレイン、内蔵ダイオードD22のカソードおよび負荷Lの一端に接続される。
【0040】
メインMOSFET21のゲートは、センスMOSFET22のゲートおよび制御IC23の出力端子OUTに接続される。センスMOSFET22のソースは、内蔵ダイオードD22のアノードおよび逆流防止用ダイオードD2のアノードに接続される。
【0041】
逆流防止用ダイオードD2のカソードは、制御IC23の入力端子INを介してセンス抵抗Rs2の一端および電流検出回路3bの入力端に接続される。電源部VDCの負極側端子は、コンデンサC1の他端、コンデンサC2の他端、センス抵抗Rs2の他端、メインMOSFET21のソース、内蔵ダイオードD21のアノードおよび負荷Lの他端に接続される。
【0042】
ここで、上アーム回路14において、メインスイッチsw11およびセンススイッチsw12は、制御IC13の出力端子OUTから出力される駆動信号ds1によってスイッチング駆動される。
【0043】
さらに、制御IC13は、センススイッチsw12から流れるセンス電流Is1を入力端子INで受けて、センス電流検出用のセンス抵抗Rs1によって電圧信号に変換する。そして、電圧信号にもとづいて、電流検出回路3aでメインスイッチsw11に生じうる過電流の検出を行う。
【0044】
また、下アーム回路24において、メインスイッチsw21およびセンススイッチsw22は、制御IC23の出力端子OUTから出力される駆動信号ds2によってスイッチング駆動される。
【0045】
さらに、制御IC23は、センススイッチsw22から流れるセンス電流Is2を入力端子INで受けて、センス電流検出用のセンス抵抗Rs2によって電圧信号に変換する。そして、電圧信号にもとづいて、電流検出回路3bでメインスイッチsw21に生じうる過電流の検出を行う。
【0046】
このような構成において、上アーム回路14の出力回路10内に配置されるメインスイッチsw11がターンオンからターンオフになった場合、負荷Lの回生動作により負荷Lには回生電流IFが発生する。
【0047】
この場合、下アーム回路24の出力回路20には、センスMOSFET22とセンス抵抗Rs2との間に逆流防止用ダイオードD2が設けられている。このため、負荷Lの回生動作時に発生する回生電流IFのセンスMOSFET22側への分流が、逆流防止用ダイオードD2によって遮断される。このため、回生電流IFの分流が起こらず、回生電流IFの分流による逆電圧の発生を防止することができるため、逆電圧の制御IC23への印加を防止することが可能になる。
【0048】
図3は半導体装置の構成の一例を示す図である。半導体装置1-2は、上アーム回路14、下アーム回路24、負荷L、コンデンサC1(極性付)、コンデンサC2および電源部VDCを備え、ノードnを介して、上アーム回路14が上アーム側に、下アーム回路24が下アーム側に配置して接続される。なお、負荷Lの一端は電源部VDCの正極側端子に接続され、負荷Lの他端はノードnに接続される。その他の接続関係は図2と同じである。
【0049】
このような構成において、下アーム側の出力回路20内に配置されるメインスイッチsw21がターンオンからターンオフになった場合、負荷Lの回生動作により負荷Lには回生電流IFが発生する。
【0050】
この場合、出力回路10には、センスMOSFET12とセンス抵抗Rs1との間に逆流防止用ダイオードD1が設けられている。このため、負荷Lの回生動作時に発生する回生電流IFのセンスMOSFET12側への分流が、逆流防止用ダイオードD1によって遮断される。このため、回生電流IFの分流が起こらず、回生電流IFの分流による逆電圧の発生を防止することができるため、逆電圧の制御IC13への印加を防止することが可能になる。
【0051】
図4図5は半導体装置の構成の一例を示す図である。図2図3に示した半導体装置1-1、1-2では、逆流防止用ダイオードD1は、制御IC13外の上アーム回路14のプリント基板上に設けられ、逆流防止用ダイオードD2は、制御IC23外の下アーム回路24のプリント基板上に設けられている。
【0052】
これに対し、図4図5に示す半導体装置1-1a、1-2aでは、制御IC13aは、センス抵抗Rs1、電流検出回路3aおよび逆流防止用ダイオードD1を含み、制御IC23aは、センス抵抗Rs2、電流検出回路3bおよび逆流防止用ダイオードD2を含む。
【0053】
このように、逆流防止用ダイオードを制御IC内に設けて集積化することもできる。このような構成にすることで、上アーム回路14、下アーム回路24のプリント基板上の回路実装規模を低減化することが可能になる。
【0054】
図6は電流検出回路の構成の一例を示す図である。制御IC13、23それぞれに含まれる電流検出回路3a、3bを総称して電流検出回路3とし、センス抵抗Rs1、Rs2を総称してセンス抵抗Rsとする。
【0055】
電流検出回路3は、コンパレータcmp1を含む。コンパレータcmp1の非反転入力端子(+)にはセンス抵抗Rsの一端が接続され、コンパレータcmp1の反転入力端子(-)には閾値電圧Vocが印加される。センス抵抗Rsの他端は、GNDに接続される。
【0056】
ここで、駆動信号にもとづいて、メインMOSFETがターンオンする場合、センスMOSFETもターンオンして、センスMOSFETのソースからセンス電流Isが出力される。また、センスMOSFETから出力されるセンス電流Isがセンス抵抗Rsを流れることで電圧降下が生じ、このときの電圧信号Vs(=Rs×Is)が電流検出回路3に入力される。
【0057】
電流検出回路3のコンパレータcmp1は、電圧信号Vsと閾値電圧Vocとの比較を行い、メインMOSFETが過電流状態であるか否かを検出する。電圧信号Vsが閾値電圧Voc以上の場合(Voc≦Vs)、コンパレータcmp1はHレベルの過電流検出信号s1を出力する。制御ICは、過電流検出信号s1を認識すると、メインMOSFETの駆動を停止させる。
【0058】
図7は半導体装置の構成の一例を示す図である。半導体装置1-1bは、上アーム回路14、下アーム回路24、負荷L、コンデンサC1(極性付)、コンデンサC2および電源部VDCを備え、ノードnを介して、上アーム回路14が上アーム側に、下アーム回路24が下アーム側に配置して接続される。負荷Lの一端はノードnに接続され、負荷Lの他端は電源部VDCの負極側端子に接続される。
【0059】
また、逆流防止用ダイオードD1は、センス抵抗Rs1と、メインスイッチsw11の電流出力端子との間に設けられ、逆流防止用ダイオードD2は、センス抵抗Rs2と、メインスイッチsw21の電流出力端子との間に設けられる。
【0060】
すなわち、逆流防止用ダイオードD1のアノードは、センス抵抗Rs1の他端に接続され、逆流防止用ダイオードD1のカソードは、メインMOSFET11のソースおよび内蔵ダイオードD11のアノードに接続され、さらにノードnを介して負荷Lの一端に接続される。
【0061】
一方、逆流防止用ダイオードD2のアノードは、センス抵抗Rs2の他端に接続され、逆流防止用ダイオードD2のカソードは、メインMOSFET21のソース、内蔵ダイオードD21のアノードおよび負荷Lの他端に接続される。その他の接続関係は、図2と同様である。
【0062】
このような構成において、上アーム回路14の出力回路10内に配置されるメインスイッチsw11がターンオンからターンオフになった場合、負荷Lの回生動作により負荷Lには回生電流IFが発生する。
【0063】
この場合、下アーム回路24の出力回路20には、センス抵抗Rs2と、メインスイッチsw21の電流出力端子との間に逆流防止用ダイオードD2が設けられている。このため、負荷Lの回生動作時に発生する回生電流IFのセンススイッチsw12側への分流が、逆流防止用ダイオードD2によって遮断される。このため、回生電流IFの分流が起こらず、回生電流IFの分流による制御IC23への逆電圧の印加を防止することが可能になる。
【0064】
図8は半導体装置の構成の一例を示す図である。半導体装置1-2bは、上アーム回路14、下アーム回路24、負荷L、コンデンサC1(極性付)、コンデンサC2および電源部VDCを備え、ノードnを介して、上アーム回路14が上アーム側に、下アーム回路24が下アーム側に配置して接続される。なお、負荷Lの一端は電源部VDCの正極側端子に接続され、負荷Lの他端はノードnに接続される。その他の接続関係は図7と同じである。
【0065】
このような構成において、下アーム回路24の出力回路20内に配置されるメインスイッチsw21がターンオンからターンオフになった場合、負荷Lの回生動作により負荷Lには回生電流IFが発生する。
【0066】
この場合、上アーム回路14の出力回路10には、センス抵抗Rs1と、メインスイッチsw11の電流出力端子との間に逆流防止用ダイオードD1が設けられている。このため、負荷Lの回生動作時に発生する回生電流IFのセンススイッチsw12側への分流が、逆流防止用ダイオードD1によって遮断される。このため、回生電流IFの分流が起こらず、回生電流IFの分流による制御IC13への逆電圧の発生を防止することが可能になる。
【0067】
図9図10は半導体装置の構成の一例を示す図である。図7図8に示した半導体装置1-1b、1-2bでは、逆流防止用ダイオードD1は、制御IC13外の上アーム回路14のプリント基板上に設けられ、逆流防止用ダイオードD2は、制御IC23外の下アーム回路24のプリント基板上に設けられている。
【0068】
これに対し、図9図10に示す半導体装置1-1c、1-2cでは、制御IC13cは、センス抵抗Rs1、電流検出回路3aおよび逆流防止用ダイオードD1を含み、制御IC23cは、センス抵抗Rs2、電流検出回路3bおよび逆流防止用ダイオードD2を含む。
【0069】
このように、逆流防止用ダイオードを制御IC内に設けて集積化することもできる。このような構成にすることで、上アーム回路14、下アーム回路24のプリント基板上の回路実装規模を低減化することが可能になる。
【0070】
図11は電流検出回路の構成の一例を示す図である。電流検出回路3は、コンパレータcmp1を含む。コンパレータcmp1の非反転入力端子(+)にはセンス抵抗Rsの一端が接続され、コンパレータcmp1の反転入力端子(-)には閾値電圧Voc1が印加されている。センス抵抗Rsの他端は、逆流防止用ダイオードD0のアノードが接続され、逆流防止用ダイオードD0のカソードは、GNDに接続される。
【0071】
ここで、駆動信号にもとづいて、メインMOSFETがターンオンする場合、センスMOSFETもターンオンして、センスMOSFETのセンスソースからセンス電流Isが出力される。また、センスMOSFETから出力されるセンス電流Isがセンス抵抗Rsおよび逆流防止用ダイオードD0を流れる。
【0072】
このとき、センス電流Isがセンス抵抗Rsを流れることによる電圧降下(Rs×Is)と、センス電流Isが逆流防止用ダイオードD0を流れることによる順方向電圧降下(Vf)との総和の電圧降下が生じる。したがって、コンパレータcmp1には、電圧信号Vs1(=Rs×Is+Vf)が入力される。
【0073】
電流検出回路3のコンパレータcmp1は、電圧信号Vs1と閾値電圧Voc1との比較を行い、メインMOSFETが過電流状態であるか否かを検出する。電圧信号Vs1が閾値電圧Voc1以上の場合(Voc1≦Vs1)、コンパレータcmp1はHレベルの過電流検出信号s1を出力する。制御ICは、過電流検出信号s1を認識すると、メインMOSFETの駆動を停止させる。
【0074】
次に図12から図14を用いてシミュレーション結果について説明する。図12はメイン電流と回生電流との関係を示す図である。縦軸は電流、横軸は時間である。
〔時刻t1〕上アームのメインMOSFET11がオンする。このとき、メインMOSFET11のメイン電流(ドレイン電流)idが流れ始め、メイン電流idが上昇する。
【0075】
〔時刻t2〕上アームのメインMOSFET11がオフする。このとき、メインMOSFET11のメイン電流idが下降していきメイン電流idが流れなくなる。また、メインMOSFET11がオンからオフすることによって負荷Lが回生動作を行い、回生電流IFが流れ始め、回生電流IFが上昇する。
【0076】
〔時刻t2~時刻t3〕時刻t2のメインMOSFET11のオフから時刻t3のメインMOSFET11がオンするまで、時刻t2から時刻t3の間の時間帯において、負荷Lが回生動作を行い、回生電流IFが流れる。
【0077】
〔時刻t3〕上アームのメインMOSFET11がオンする。このとき、メインMOSFET11のメイン電流idが流れ始め、メイン電流idが上昇する。また、回生電流IFは流れなくなる。
【0078】
〔時刻t4〕上アームのメインMOSFET11がオフする。このとき、メインMOSFET11のメイン電流idが下降していきメイン電流idが流れなくなる。また、メインMOSFET11がオンからオフすることによって負荷Lが回生動作を行い、回生電流IFが流れ始め、回生電流IFが上昇する。なお、回生電流IFの電流量は、メイン電流idの電流量に比例して大きくなる。
【0079】
図13は逆流防止用ダイオードが非設置の場合の回生電流と逆電圧との関係を示す図である。縦軸は電流または電圧であり、横軸は時間である。
〔時刻t11〕上アームのメインMOSFET11がオンする。
【0080】
〔時刻t12〕上アームのメインMOSFET11がオフする。メインMOSFET11がオンからオフすることによって負荷Lが回生動作を行い、回生電流IFが流れ始め、回生電流IFが上昇する。また、回生電流IFの一部が制御ICに分流するため制御IC内に逆電圧VRが発生する。図13の例ではおよそ2.6Vの逆電圧VRが制御IC内に発生している。
【0081】
〔時刻t12~時刻t13〕時刻t12のメインMOSFET11のオフから時刻t13のメインMOSFETがオンするまで、時刻t12から時刻t13の間の時間帯において回生電流IFが流れる。したがって、この時間帯の間、制御ICに逆電圧VRが生じることになる。
【0082】
〔時刻t13〕上アームのメインMOSFET11がオンする。回生動作が停止し、回生電流IFが流れなくなる。したがって、逆電圧VRの発生も停止する。
〔時刻t14〕上アームのメインMOSFET11がオフする。メインMOSFET11がオンからオフすることによって負荷Lが回生動作を行い、回生電流IFが流れ始め、回生電流IFが上昇する。また、回生電流の一部が制御ICに分流するため制御IC内に再び逆電圧VRが発生する。
【0083】
図14は逆流防止用ダイオードを設置した場合の回生電流と逆電圧との関係を示す図である。縦軸は電流または電圧であり、横軸は時間である。
〔時刻t21〕上アームのメインMOSFET11がオンする。
【0084】
〔時刻t22〕上アームのメインMOSFET11がオフする。メインMOSFET11がオンからオフすることによって負荷Lが回生動作を行い、回生電流IFが流れ始め、回生電流IFが上昇する。また、逆流防止用ダイオードによって、制御ICに向かう回生電流IFの分流が遮断されるため制御IC内に逆電圧VRが発生しない。
【0085】
〔時刻t22~時刻t23〕時刻t22のメインMOSFET11のオフから時刻t23のメインMOSFET11がオンするまで、時刻t22から時刻t23の間の時間帯において回生電流IFが流れるが、逆流防止用ダイオードによって、制御ICに向かう回生電流の分流が遮断され、制御IC内に逆電圧VRが発生しない。
【0086】
〔時刻t23〕上アームのメインMOSFET11がオンする。回生動作が停止し、回生電流IFが流れなくなる。
〔時刻t24〕上アームのメインMOSFET11がオフする。メインMOSFET11がオンからオフすることによって負荷Lが回生動作を行い、回生電流IFが流れ始め、回生電流IFが上昇するが、逆流防止用ダイオードによって、制御ICに向かう回生電流の分流が遮断されるため、制御IC内に逆電圧VRが発生しない。このように、本発明の構成では、逆電圧VRの発生を防止することができる。
【0087】
次に本発明の半導体装置を適用した電力変換装置について説明する。図15は電力変換装置の構成の一例を示す図である。電力変換装置4は、上アーム側にU相、V相、W相のそれぞれに配置されたスイッチ素子sw41、sw42、sw43と、下アーム側にX相、Y相、Z相のそれぞれに配置されたスイッチ素子sw44、sw45、sw46とを備える。
【0088】
さらに、電力変換装置4は、交流電源VAC、整流装置47、平滑コンデンサC0、制御装置40および負荷Mを備える。整流装置47は、交流電源VACから出力された交流電圧を直流電圧VDC0に変換する。
【0089】
一方、スイッチ素子sw41とスイッチ素子sw44との接続点であるノードn1に繋がる配線4aと、スイッチ素子sw42とスイッチ素子sw45との接続点であるノードn2に繋がる配線4bと、スイッチ素子sw43とスイッチ素子sw46との接続点であるノードn3に繋がる配線4cとから電力が負荷Mへ供給される。
【0090】
U相のスイッチ素子sw41は、メインMOSFET4uと内蔵ダイオードDuを含み、V相のスイッチ素子sw42は、メインMOSFET4vと内蔵ダイオードDvを含み、W相のスイッチ素子sw43は、メインMOSFET4wと内蔵ダイオードDwを含む。
【0091】
X相のスイッチ素子sw44は、メインMOSFET4xと内蔵ダイオードDxを含み、Y相のスイッチ素子sw45は、メインMOSFET4yと内蔵ダイオードDyを含み、Z相のスイッチ素子sw46は、メインMOSFET4zと内蔵ダイオードDzを含む。
【0092】
また、スイッチ素子sw41、sw42、sw43それぞれに対して、駆動制御等を行う制御回路41、42、43が配置され、スイッチ素子sw44、sw45、sw46のそれぞれに対して、駆動制御等を行う制御回路44、45、46が配置される。さらに、制御回路41~46を一括制御する制御装置40が配置される。なお、制御回路41、42、43は、例えば、上アーム回路14の構成(メインスイッチsw11を除く)および機能を有し、制御回路44、45、46は、例えば、下アーム回路24(メインスイッチsw21を除く)の構成および機能を有する。
【0093】
各構成素子の接続関係において、整流装置47の正極側端子は、平滑コンデンサC0の一端、メインMOSFET4uのドレイン、内蔵ダイオードDuのカソード、メインMOSFET4vのドレイン、内蔵ダイオードDvのカソード、メインMOSFET4wのドレインおよび内蔵ダイオードDwのカソードに接続される。
【0094】
整流装置47の負極側端子は、平滑コンデンサC0の他端、メインMOSFET4xのソース、内蔵ダイオードDxのアノード、メインMOSFET4yのソース、内蔵ダイオードDyのアノード、メインMOSFET4zのソースおよび内蔵ダイオードDzのアノードに接続される。
【0095】
メインMOSFET4uのゲートは、制御回路41に接続され、内蔵ダイオードDuのアノードは、メインMOSFET4uのソース、制御回路41およびノードn1に接続される。ノードn1は、負荷M、メインMOSFET4xのドレインおよび内蔵ダイオードDxのカソードに接続される。
【0096】
メインMOSFET4vのゲートは、制御回路42に接続され、内蔵ダイオードDvのアノードは、メインMOSFET4vのソース、制御回路42およびノードn2に接続される。ノードn2は、負荷M、メインMOSFET4yのドレインおよび内蔵ダイオードDyのカソードに接続される。
【0097】
メインMOSFET4wのゲートは、制御回路43に接続され、内蔵ダイオードDwのアノードは、メインMOSFET4wのソース、制御回路43およびノードn3に接続される。ノードn3は、負荷M、メインMOSFET4zのドレインおよび内蔵ダイオードDzのカソードに接続される。
【0098】
なお、制御装置40は、制御信号Vin-uによって制御回路41を制御し、制御信号Vin-vによって制御回路42を制御し、制御信号Vin-wによって制御回路43を制御する。同様に、制御装置40は、制御信号Vin-xによって制御回路44を制御し、制御信号Vin-yによって制御回路45を制御し、制御信号Vin-zによって制御回路46を制御する。
【0099】
以上説明したように、本発明によれば、分流遮断回路を備える構成としたので、負荷の回生動作時に生じる回生電流が制御ICに分流することを抑制することができる。これにより、分流電流による制御ICの発熱を抑え、逆電圧の発生による制御ICの故障を防止することが可能になる。
【0100】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 半導体装置
10a 出力回路(上アーム側出力回路)
11a 制御IC(上アーム側制御回路)
14 上アーム回路
sw1 スイッチ素子(上アーム側スイッチ素子)
20a 出力回路(下アーム側出力回路)
21a 制御IC(下アーム側制御回路)
21a1 電流検出回路
22a 分流遮断回路(下アーム側分流遮断回路)
24 下アーム回路
sw1a スイッチ素子(下アーム側スイッチ素子)
sw2a センススイッチ素子(下アーム側電流モニタ素子)
1a1 メインMOSFET
Da1、Da2 内蔵ダイオード
1a2 センスMOSFET
Rs センス抵抗
L 負荷
n 接続点(ノード)
ds 駆動信号
Is センス電流
IF 回生電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16