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特開2024-106224有機性排水の有機物に関する水質指標の測定方法及び測定装置、並びに有機性排水の処理方法及び処理システム
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  • 特開-有機性排水の有機物に関する水質指標の測定方法及び測定装置、並びに有機性排水の処理方法及び処理システム 図1
  • 特開-有機性排水の有機物に関する水質指標の測定方法及び測定装置、並びに有機性排水の処理方法及び処理システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106224
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】有機性排水の有機物に関する水質指標の測定方法及び測定装置、並びに有機性排水の処理方法及び処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20240731BHJP
   C02F 3/34 20230101ALI20240731BHJP
   C02F 3/12 20230101ALI20240731BHJP
【FI】
C02F1/00 V
C02F1/00 W
C02F3/34 101C
C02F3/12 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010433
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼時 元汰
(72)【発明者】
【氏名】蒲池 一将
(72)【発明者】
【氏名】出本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】若菜 正宏
(72)【発明者】
【氏名】阿部 翔
【テーマコード(参考)】
4D028
4D040
【Fターム(参考)】
4D028BD06
4D028CA09
4D028CC01
4D028CD00
4D028CE00
4D040BB05
4D040BB57
4D040BB93
(57)【要約】
【課題】色度の高い有機性排水の有機物に関する水質指標の簡便な測定方法を提供する。
【解決手段】有機性排水をサンプリングする工程1と、工程1でサンプリングされた有機性排水の色度を測定する工程2と、色度の測定結果に基づき、工程1でサンプリングされた有機性排水、又は工程1を再度実施することでサンプリングされた有機性排水の色度を予め定めた基準を満たすように低減する工程3と、色度が低減された有機性排水の有機物に関する水質指標を光学式センサーで測定する工程4と、を含む有機性排水の有機物に関する水質指標の測定方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性排水をサンプリングする工程1と、
工程1でサンプリングされた有機性排水の色度を測定する工程2と、
工程2における色度の測定結果に基づき、工程1でサンプリングされた有機性排水、又は工程1を再度実施することでサンプリングされた有機性排水の色度を予め定めた基準を満たすように低減する工程3と、
工程3によって色度が低減された有機性排水の有機物に関する水質指標を光学式センサーで測定する工程4と、
を含む有機性排水の有機物に関する水質指標の測定方法。
【請求項2】
前記予め定めた基準は、JIS K0102-1:2021に規定される白金・コバルトによる色度が400度以下である請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
色度の低減方法が希釈である請求項1に記載の測定方法。
【請求項4】
工程4で測定された前記水質指標と、希釈倍率に基づき、希釈前の有機性排水の有機物に関する水質指標を求めることを更に含む請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
光学式センサーで測定される有機物に関する水質指標が、BOD、COD、及びTOCから選択される一種又は二種以上である請求項1に記載の測定方法。
【請求項6】
工程1でサンプリングされる有機性排水は、JIS K0102-1:2021に規定される白金・コバルトによる色度が500度以上である請求項1に記載の測定方法。
【請求項7】
工程2における色度を、透過光測定法を用いた光学式センサーで測定する請求項1に記載の測定方法。
【請求項8】
工程1でサンプリングされる有機性排水が、生物処理前、生物処理中又は生物処理後の有機性排水である請求項1に記載の測定方法。
【請求項9】
工程1でサンプリングされる有機性排水が、希釈処理を受ける予定の有機性排水である請求項1に記載の測定方法。
【請求項10】
工程1でサンプリングされる有機性排水が、し尿処理場で処理前の有機性排水、し尿処理場で処理後の有機性排水、又は、し尿処理場で処理中の有機性排水である請求項1に記載の測定方法。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の測定方法によって測定された前記有機性排水の有機物に関する水質指標と、放流水の目標とされる有機物に関する水質指標とに少なくとも基づき、前記有機性排水の下水道放流時の希釈水量を演算する工程と、
希釈水量を演算する前記工程よって演算された希釈水量の希釈水を、希釈水供給ラインを通じて放流予定の前記有機性排水に供給する工程と、
を含む有機性排水の処理方法。
【請求項12】
請求項1~10の何れか一項に記載の測定方法によって測定された前記有機性排水の有機物に関する水質指標に少なくとも基づいて、前記有機性排水の嫌気性生物処理を行う場合の脱窒槽へのBOD源添加量を演算する工程と、
BOD源添加量を演算する前記工程によって演算された添加量のBOD源を脱窒槽へ添加して前記有機性排水を嫌気性生物処理する工程と、
を含む有機性排水の処理方法。
【請求項13】
請求項1~10の何れか一項に記載の測定方法によって測定された前記有機性排水の有機物に関する水質指標に少なくとも基づいて、前記有機性排水の好気性生物処理を行う場合の好気槽の曝気風量を演算する工程と、
曝気風量を演算する前記工程によって演算された曝気風量で前記有機性排水を好気槽で好気性生物処理する工程と、
を含む有機性排水の処理方法。
【請求項14】
有機性排水の色度及び有機物に関する水質指標を測定可能な光学式センサーと、
前記有機性排水のサンプルを前記センサーに導くための第一導管と、
前記有機性排水のサンプルを、第一導管を通じて前記センサーに定量供給可能なポンプと、
前記センサーによる色度の測定結果と、前記センサーに定量供給される前記有機性排水のサンプルの量に基づき、前記有機性排水のサンプルの色度が予め定めた基準を満たすのに必要な希釈倍率及び希釈水量を演算可能な第一演算手段と、
希釈水を前記センサーに導くための第二導管と、
第一演算手段により演算された希釈水量の希釈水を、第二導管を通じて前記センサーに供給可能な希釈水ポンプと、
前記センサーにより測定された希釈後の前記有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標と、上記希釈倍率とに基づいて、希釈前の前記有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標を演算可能な第二演算手段と、
を備える有機性排水の有機物に関する水質指標の測定装置。
【請求項15】
有機性排水の色度を測定可能な光学式センサーAと、
有機性排水の有機物に関する水質指標を測定可能な光学式センサーBと、
前記有機性排水のサンプルを前記センサーAに導くための第一導管Aと、
前記有機性排水のサンプルを前記センサーBに導くための第一導管Bと、
前記有機性排水のサンプルを、第一導管Aを通じて前記センサーAに定量供給可能なポンプAと、
前記有機性排水のサンプルを、第一導管Bを通じて前記センサーBに定量供給可能なポンプBと、
前記センサーAによる色度の測定結果と、前記センサーBに定量供給される前記有機性排水のサンプルの量に基づき、前記有機性排水のサンプルの色度が予め定めた基準を満たすのに必要な希釈倍率及び希釈水量を演算可能な第一演算手段と、
希釈水を前記センサーBに導くための第二導管と、
第一演算手段により演算された希釈水量の希釈水を、第二導管を通じて前記センサーBに供給可能な希釈水ポンプと、
前記センサーBにより測定された希釈後の前記有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標と、上記希釈倍率とに基づいて、希釈前の前記有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標を演算可能な第二演算手段と、
を備える有機性排水の有機物に関する水質指標の測定装置。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の測定装置と、
前記測定装置によって演算された希釈前の前記有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標と、放流水の目標とされる有機物に関する水質指標とに少なくとも基づき、前記有機性排水の下水道放流時の希釈水量を演算可能な第三演算手段と、
第三演算手段により演算された希釈水量の希釈水を、希釈水供給ラインを通じて放流予定の前記有機性排水に供給可能な希釈水ポンプと、
を備える有機性排水の処理システム。
【請求項17】
請求項14又は15に記載の測定装置と、
前記有機性排水を嫌気性生物処理可能な脱窒槽と、
前記測定装置によって演算された希釈前の前記有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標に少なくとも基づいて、前記有機性排水の嫌気性生物処理を行う場合の脱窒槽へのBOD源添加量を演算可能な第四演算手段と、
第四演算手段で演算された添加量のBOD源を脱窒槽へ供給可能なBOD源ポンプと、
を備える有機性排水の処理システム。
【請求項18】
請求項14又は15に記載の測定装置と、
前記有機性排水を好気性生物処理可能な好気槽と、
前記測定装置によって演算された希釈前の前記有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標に少なくとも基づいて、前記好気槽の曝気風量を演算可能な第五演算手段と、
第五演算手段で演算された曝気風量を好気槽に供給可能な送風機と、
を備える有機性排水の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水の有機物に関する水質指標の測定方法及び測定装置に関する。また、本発明は、有機性排水の処理方法及び処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
し尿処理場で発生する汚泥の脱水分離液は窒素及びりんを多く含むため放流可能な水質まで希釈される。希釈のみでは放流水質を満たすことが出来ない場合は、好気性処理や硝化・脱窒処理が行われる。
【0003】
脱水分離液は脱水機を運転している時間帯と運転していない時間帯で水質が異なるため、放流に必要な希釈水量、好気性処理のための曝気風量、及び脱窒に必要なBOD源添加量は異なる。そのため、脱水分離液の水質をモニタリングして上記の制御因子を制御することで、省エネルギー化及びランニングコストの低下が期待できる。
【0004】
ところで、紫外線は排水のBODが大きい程吸光されるようになる。そこで、この性質を利用した排水のBOD測定方法が知られている。しかしながら、紫外線吸光度を用いたBODの測定方法では、排水中のBODが高く、紫外線吸光度が高い場合、紫外線吸光度とBODとの関係に良好な直線性が得られなくなるため、原排水を直接測ることができず自動化ができないという問題があった。
【0005】
このような問題に対して、特開平7-191015号公報においては、乳業排水のような高濃度の排水のBODを、BODと紫外線吸光度との間の直線性を利用して完全に自動にかつ精度を良好に保って測定することができるBOD測定装置が提案されている。このBOD測定装置は、予め定められた希釈倍率に基づき原排水と希釈水を混合し、所定の希釈倍率の希釈原排水を得る自動希釈手段と、該自動希釈手段より得られた希釈原排水が導かれ該希釈原排水の紫外線吸光度を測定して吸光度信号を出力する紫外線吸光度測定手段と、前記自動希釈手段で使用する希釈倍率を格納する希釈倍率格納手段と、前記紫外線吸光度測定手段から吸光度信号を入力し、該入力した吸光度信号に基づいて前記希釈原排水の吸光度が予め定めた吸光度設定条件にあてはまるかどうかを判定する吸光度判定手段と、該吸光度判定手段による判定の結果、吸光度が吸光度設定条件にあてはまらないとき、前記希釈倍率格納手段に格納している希釈倍率を変更する希釈倍率変更手段と、前記吸光度判定手段による判定の結果、吸光度が吸光度設定条件にあてはまるとき、前記紫外線吸光度測定手段により測定した吸光度と前記希釈倍率とに基づいて演算して前記原排水のBODを求めるBOD演算手段とを備えることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-191015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のBOD測定装置では、最初に原排水を予め定められた希釈倍率で自動希釈手段によって希釈することが要求される。しかしながら、し尿処理場で発生する汚泥の脱水分離液のように、水質が時間帯で変化する場合には、予め定められた希釈倍率による希釈が適切ではないケースが生じやすいため、適切な希釈倍率を変更する手間が頻繁に発生する。
【0008】
また、特許文献1に記載のBOD測定装置では、紫外線吸光度により希釈原排水の吸光度が予め定めた吸光度設定条件にあてはまるかどうかを判定することが要求される。しかしながら、本発明者の検討結果によると、紫外線吸光度を用いたBODの測定方法は、BOD濃度のみならず、色度の影響を受けやすい。そのため、し尿処理場で発生する汚泥の脱水分離液を、紫外線吸光度を用いたBOD測定方法で分析すると、紫外線吸光度がBODと直線的な関係にあり、BODが測定可能なBOD範囲内であっても、手分析値との相関性が得られないことがあり、測定精度が十分とは言えなかった。
【0009】
脱水分離液の水質のモニタリングは、貯留槽で十分な滞留時間を設けられる場合、測定時間が長いTOC計等の他の分析機器を用いて行うこともできる。しかしながら、有機物に関する水質指標を極めて短い時間で測定できる光学式センサーを用いることで貯留槽を小型化でき、実質なしにもできることが望ましい。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一実施形態において、色度の高い有機性排水の有機物に関する水質指標の簡便な測定方法を提供することを課題とする。本発明は別の一実施形態において、当該測定方法を利用した有機性排水の処理方法を提供することを課題とする。本発明は更に別の一実施形態において、色度の高い有機性排水の有機物に関する水質指標の簡便な測定装置を提供することを課題とする。本発明は更に別の一実施形態において、当該測定装置を備える有機性排水の処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、色度の高い有機性排水に対しては、色度を低減した後に、有機性排水の有機物に関する水質指標を光学式センサーで測定することで、有機性排水の有機物に関する水質指標を精度良く簡便に測定可能であることを見出した。本発明は当該知見に基づき完成したものであり、以下に例示される。
【0012】
[態様1]
有機性排水をサンプリングする工程1と、
工程1でサンプリングされた有機性排水の色度を測定する工程2と、
工程2における色度の測定結果に基づき、工程1でサンプリングされた有機性排水、又は工程1を再度実施することでサンプリングされた有機性排水の色度を予め定めた基準を満たすように低減する工程3と、
工程3によって色度が低減された有機性排水の有機物に関する水質指標を光学式センサーで測定する工程4と、
を含む有機性排水の有機物に関する水質指標の測定方法。
[態様2]
前記予め定めた基準は、JIS K0102-1:2021に規定される白金・コバルトによる色度が400度以下である態様1に記載の測定方法。
[態様3]
色度の低減方法が希釈である態様1又は2に記載の測定方法。
[態様4]
工程4で測定された前記水質指標と、希釈倍率に基づき、希釈前の有機性排水の有機物に関する水質指標を求めることを更に含む態様1~3の何れかに記載の測定方法。
[態様5]
光学式センサーで測定される有機物に関する水質指標が、BOD、COD、及びTOCから選択される一種又は二種以上である態様1~4の何れかに記載の測定方法。
[態様6]
工程1でサンプリングされる有機性排水は、JIS K0102-1:2021に規定される白金・コバルトによる色度が500度以上である態様1~5の何れかに記載の測定方法。
[態様7]
工程2における色度を、透過光測定法を用いた光学式センサーで測定する態様1~6の何れかに記載の測定方法。
[態様8]
工程1でサンプリングされる有機性排水が、生物処理前、生物処理中又は生物処理後の有機性排水である態様1~7の何れかに記載の測定方法。
[態様9]
工程1でサンプリングされる有機性排水が、希釈処理を受ける予定の有機性排水である態様1~8の何れかに記載の測定方法。
[態様10]
工程1でサンプリングされる有機性排水が、し尿処理場で処理前の有機性排水、し尿処理場で処理後の有機性排水、又は、し尿処理場で処理中の有機性排水である態様1~9の何れかに記載の測定方法。
[態様11]
態様1~10の何れか一項に記載の測定方法によって測定された前記有機性排水の有機物に関する水質指標と、放流水の目標とされる有機物に関する水質指標とに少なくとも基づき、前記有機性排水の下水道放流時の希釈水量を演算する工程と、
希釈水量を演算する前記工程よって演算された希釈水量の希釈水を、希釈水供給ラインを通じて放流予定の前記有機性排水に供給する工程と、
を含む有機性排水の処理方法。
[態様12]
態様1~10の何れか一項に記載の測定方法によって測定された前記有機性排水の有機物に関する水質指標に少なくとも基づいて、前記有機性排水の嫌気性生物処理を行う場合の脱窒槽へのBOD源添加量を演算する工程と、
BOD源添加量を演算する前記工程によって演算された添加量のBOD源を脱窒槽へ添加して前記有機性排水を嫌気性生物処理する工程と、
を含む有機性排水の処理方法。
[態様13]
態様1~10の何れか一項に記載の測定方法によって測定された前記有機性排水の有機物に関する水質指標に少なくとも基づいて、前記有機性排水の好気性生物処理を行う場合の好気槽の曝気風量を演算する工程と、
曝気風量を演算する前記工程によって演算された曝気風量で前記有機性排水を好気槽で好気性生物処理する工程と、
を含む有機性排水の処理方法。
[態様14]
有機性排水の色度及び有機物に関する水質指標を測定可能な光学式センサーと、
前記有機性排水のサンプルを前記センサーに導くための第一導管と、
前記有機性排水のサンプルを、第一導管を通じて前記センサーに定量供給可能なポンプと、
前記センサーによる色度の測定結果と、前記センサーに定量供給される前記有機性排水のサンプルの量に基づき、前記有機性排水のサンプルの色度が予め定めた基準を満たすのに必要な希釈倍率及び希釈水量を演算可能な第一演算手段と、
希釈水を前記センサーに導くための第二導管と、
第一演算手段により演算された希釈水量の希釈水を、第二導管を通じて前記センサーに供給可能な希釈水ポンプと、
前記センサーにより測定された希釈後の前記有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標と、上記希釈倍率とに基づいて、希釈前の前記有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標を演算可能な第二演算手段と、
を備える有機性排水の有機物に関する水質指標の測定装置。
[態様15]
有機性排水の色度を測定可能な光学式センサーAと、
有機性排水の有機物に関する水質指標を測定可能な光学式センサーBと、
前記有機性排水のサンプルを前記センサーAに導くための第一導管Aと、
前記有機性排水のサンプルを前記センサーBに導くための第一導管Bと、
前記有機性排水のサンプルを、第一導管Aを通じて前記センサーAに定量供給可能なポンプAと、
前記有機性排水のサンプルを、第一導管Bを通じて前記センサーBに定量供給可能なポンプBと、
前記センサーAによる色度の測定結果と、前記センサーBに定量供給される前記有機性排水のサンプルの量に基づき、前記有機性排水のサンプルの色度が予め定めた基準を満たすのに必要な希釈倍率及び希釈水量を演算可能な第一演算手段と、
希釈水を前記センサーBに導くための第二導管と、
第一演算手段により演算された希釈水量の希釈水を、第二導管を通じて前記センサーBに供給可能な希釈水ポンプと、
前記センサーBにより測定された希釈後の前記有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標と、上記希釈倍率とに基づいて、希釈前の前記有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標を演算可能な第二演算手段と、
を備える有機性排水の有機物に関する水質指標の測定装置。
[態様16]
態様14又は15に記載の測定装置と、
前記測定装置によって演算された希釈前の前記有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標と、放流水の目標とされる有機物に関する水質指標とに少なくとも基づき、前記有機性排水の下水道放流時の希釈水量を演算可能な第三演算手段と、
第三演算手段により演算された希釈水量の希釈水を、希釈水供給ラインを通じて放流予定の前記有機性排水に供給可能な希釈水ポンプと、
を備える有機性排水の処理システム。
[態様17]
態様14又は15に記載の測定装置と、
前記有機性排水を嫌気性生物処理可能な脱窒槽と、
前記測定装置によって演算された希釈前の前記有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標に少なくとも基づいて、前記有機性排水の嫌気性生物処理を行う場合の脱窒槽へのBOD源添加量を演算可能な第四演算手段と、
第四演算手段で演算された添加量のBOD源を脱窒槽へ供給可能なBOD源ポンプと、
を備える有機性排水の処理システム。
[態様18]
態様14又は15に記載の測定装置と、
前記有機性排水を好気性生物処理可能な好気槽と、
前記測定装置によって演算された希釈前の前記有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標に少なくとも基づいて、前記好気槽の曝気風量を演算可能な第五演算手段と、
第五演算手段で演算された曝気風量を好気槽に供給可能な送風機と、
を備える有機性排水の処理システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、色度の高い有機性排水の有機物に関する水質指標を簡便に精度良く測定可能である。このため、例えば、し尿処理場で発生する汚泥の脱水分離液の有機物に関する水質をモニタリングすることができる。また、水質のモニタリング結果に基づき、放流に必要な希釈水量、好気性処理のための曝気風量、及び脱窒に必要なBOD源添加量を最適量に制御することで、し尿処理場の省エネルギー化、ランニングコストの低下、及び薬品コストの低下が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係る有機性排水の処理システムを用いた処理フローの一例である。
図2】本発明の第二実施形態に係る有機性排水の処理システムを用いた処理フローの一例である。
図3】本発明の第一実施形態に係る有機性排水の処理システムを用いた処理フローの別例である。
図4】本発明の第二実施形態に係る有機性排水の処理システムを用いた処理フローの別例である。
図5】し尿処理場(X)の脱水分離液に対する、光学式センサーにより測定した色度とCOD値の関係を示すグラフである。
図6】し尿処理場(A)の脱水分離液を対象として、JIS K0102-1:2021に準拠して測定したBOD値と光学式センサーにより測定したBOD値について、無希釈で測定した場合と、井水により5倍希釈して測定した場合のそれぞれの相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1.有機性排水の有機物に関する水質指標の測定方法>
本発明の一実施形態に係る水質指標の測定方法は、
有機性排水をサンプリングする工程1と、
工程1でサンプリングされた有機性排水の色度を測定する工程2と、
工程2における色度の測定結果に基づき、工程1でサンプリングされた有機性排水、又は工程1を再度実施することでサンプリングされた有機性排水の色度を予め定めた基準を満たすように低減する工程3と、
工程3によって色度が低減された有機性排水の有機物に関する水質指標を光学式センサーで測定する工程4と、
を含む。
【0016】
(工程1)
工程1では有機性排水をサンプリングする。サンプリング対象となる有機性排水としては、限定的ではないが、色度が高い有機性排水に好適に適用できる。色度が高い有機性排水は、例えば、し尿処理場、下水処理場、飲料・食品工場排水、繊維工場排水等の生物処理を伴う排水処理施設に流入又は発生し得る。一例において、工程1でサンプリングされる有機性排水は、生物処理前、生物処理中又は生物処理後の有機性排水である。別の一例において、工程1でサンプリングされる有機性排水は、希釈処理を受ける予定の有機性排水である。更に別の一例において、工程1でサンプリングされる有機性排水は、し尿処理場で処理前の有機性排水(し尿処理場への流入水(し尿、浄化槽汚泥など)と同じ意味である。)、し尿処理場で処理後の有機性排水(し尿処理場からの放流水と同じ意味である。)、又は、し尿処理場で処理中の有機性排水(し尿処理場で処理の途中にある有機性排水を意味し、脱水分離液、生物処理水、高次処理水等が挙げられる。)である。
【0017】
し尿処理場での脱水分離液とは、し尿の夾雑物をスクリーンで除去し、スクリュープレス等により脱水を行った後の水を指す。し尿処理場での生物処理水とは、脱水分離液に対して、曝気を行い微生物によって有機分・窒素分を除去した処理水を指す。し尿処理場での高次処理水とは、生物処理水に対して、更に膜分離、活性炭吸着処理等を行って浄化した後の水を指す。
【0018】
有機性排水の色度が高くなるほど、光学式センサーで有機物に関する水質指標(例:BOD、COD、及びTOC)を測定したときの測定値の、JIS K0102-1:2021に準拠して当該水質指標を手分析したときの測定値に対する相関性が低下し、分析精度が低下しやすくなるため、本実施形態に係る分析方法を実施する意義が大きくなる。具体的には、本発明の一実施形態に係る水質指標の測定方法は、JIS K0102-1:2021に規定される白金・コバルトによる色度が500度以上の有機性排水に好適に適用でき、当該色度が600度以上の有機性排水により好適に適用でき、当該色度が700度以上の有機性排水に更により好適に適用できる。本発明の一実施形態に係る水質指標の測定方法が適用できる有機性排水の当該色度の上限は特に設定されないが、有機性排水の当該色度は、2000度以下であるのが一般的であり、1000度以下であるのが典型的であり、800度以下であるのがより典型的である。
【0019】
サンプリングの方法には特に制限はなく、公知の任意の手段でサンプリングすればよい。人手で所要量を容器に採取してもよいが、ポンプ等を利用した自動サンプラーで定量採取することが好ましい。特に、有機性排水のサンプルをポンプで吸い上げて色度を測定可能な光学式センサーに定量供給する方法が好ましい実施態様として挙げられる。
【0020】
(工程2)
工程2では、工程1でサンプリングされた有機性排水の色度を測定する。色度とは、試料の呈する淡黄色から黄褐色の色を対象として目視によって識別できる程度を数値で表したものである。公定法としては透過光測定法、比色法、刺激値及び色度座標を用いる方法、並びに、三波長を用いる方法があり、何れの方法で測定しても良い。
透過光測定法では、JIS K0102-1:2021に規定される白金・コバルトによる色度を採用し、下水試験法に基づき、波長390nm付近の吸光度を測定し、色度標準液により作成した検量線より求める。本発明において吸光度を測定する波長は、390nmが標準的であるが、必ずしもこれに限られず、380nmから470nmまで、より典型的には385nmから420nmまでの何れかの可視光領域の波長の吸光度を測定してもよい。透過光測定法を採用した色度は、市販の光学式センサーを用いることで簡便に測定できる。色度を自動で測定可能な光学式センサーが市販されているのでそれを利用することが好ましい。
比色法は、JIS K0102-1:2021の10.3に規定されている。白金・コバルトによる色度を採用し、白金・コバルト色素標準液と試料の目視による比較を行い、色度を決定する。
刺激値及び色度座標を用いる方法は、JIS K0102-1:2021の10.2に規定されている。刺激値と色度座標を用いる方法は、水を対照液として波長400~700nmの所定の波長における試料についての透過パーセントを測定し、試料の色を刺激値Y、及び色度座標x、yで表示する。色度座標の刺激値Yと無色C間の距離が遠いほど色度が高いと判断される。
三波長を用いる方法は、JIS K0102-1:2021の10.4に規定されている。三波長を用いる方法では、試料をメンブレンフィルターでろ過し、波長436nm、525nm及び620nmで吸光度を測定し、それぞれの吸収係数を算出し、それぞれ求めた吸収係数で色を表示する。吸収係数が高いほど色度が高いと判断される。
【0021】
(工程3)
先述したように、有機性排水の色度が高くなるほど、光学式センサーで有機物に関する水質指標を測定したときの測定値の、JIS K0102-1:2021に準拠して当該水質指標を手分析したときの測定値に対する相関性が低下し、分析精度が低下しやすくなる。そこで、工程3では、工程2における色度の測定結果に基づき、工程1でサンプリングされた有機性排水、又は工程1を再度実施することでサンプリングされた有機性排水の色度を予め定めた基準を満たすように低減する。
【0022】
上記の予め定めた基準は、上記相関性が十分に高い色度とすることが望ましい。具体的には、一例において、JIS K0102-1:2021に規定される白金・コバルトによる色度が400度以下であることを予め定めた基準とすることができ、好ましくは当該色度が300度以下であることを予め定めた基準とすることができる。当該色度の下限は特段設定されないが、予め定めた基準が低すぎるとかえって光学式センサーによる有機物に関する水質指標の測定精度が低下するおそれがあり、また、色度を低下させるための手間が増える(希釈の場合は希釈水の量が増加する。)。そこで、一例において、JIS K0102-1:2021に規定される白金・コバルトによる色度が400度以下10度以上であることを予め定めた基準とすることができ、好ましくは当該色度が300度以下20度以上であることを予め定めた基準とすることができ、より好ましくは当該色度が160度以下90度以上であることを予め定めた基準とすることができる。
【0023】
有機性排水の色度を低減する方法としては、希釈、凝集沈殿、凝集ろ過、活性炭による吸着、オゾン処理等が挙げられるが、簡便性、正確性の観点から希釈が好ましい。希釈することで、BODを下げることもできる。光学式センサーで有機物に関する水質指標を精度よく測定する上では、有機性排水中のJIS K0102-1:2021に準拠して測定されるBODが800mg/L以下、好ましくは500mg/L以下である。従って、色度条件に加えて、有機性排水中の当該BODが上記範囲に入るように希釈することを条件としてもよい。
【0024】
希釈によって、有機性排水の色度を予め定めた基準に低減する場合の希釈水量の演算方法を例示的に説明する。サンプリングされた有機性排水の白金・コバルト色度がs度であり、サンプリングされた有機性排水の量がt(L)であり、目標とされる白金・コバルト色度がu度であるとすると、希釈水量v(L)は、例えば、v=t×(s/u-1)によって演算される。この場合、希釈倍率は、(t+v)/tで表される。
【0025】
工程3で色度の低減対象となる有機性排水は、工程1でサンプリングされ、工程2で色度が測定された有機性排水とすることができる。また、工程1でサンプリングされた有機性排水の全部に対して、工程2で色度を測定する必要はないので、工程1でサンプリングされた有機性排水のうち、工程2で色度を測定していない有機性排水の部分を工程3の対象とすることもできる。従って、工程3は、工程1でサンプリングされた有機性排水の一部又は全部に対して実施することができる。
【0026】
別法として、工程1を再度実施することでサンプリングされた有機性排水に対して工程3を実施することもできる。色度の測定方法によっては、工程1でサンプリングされる有機性排水の量が少なく(20mL以下など)、工程3のために残すことが難しい場合もある。そのような場合は再度サンプリングすることが望ましい。但し、工程1を再度実施するときは、1回目の工程1を実施したときと実質的に有機性排水の水質に変化がないことが望まれる。従って、2回目の工程1を終了するのは、1回目の工程1の終了時から5分以内であることが好ましく、1分以内であることがより好ましい。異なるポンプを用いて2回目の工程1を1回目の工程1と同時に実施してもよい。
【0027】
(工程4)
工程4では、工程3によって色度が低減された有機性排水の有機物に関する水質指標を光学式センサーで測定する。工程3を実施することにより、サンプリングされた有機性排水の色度が予め定めた基準を満たすように低減されているので、光学式センサーで有機物に関する水質指標を測定したときの測定値の、JIS K0102-1:2021に準拠して当該水質指標を手分析したときの測定値に対する相関性は高い。よって、色度が低減された有機性排水の有機物に関する水質指標を光学式センサーで測定することで、分析精度の良い測定値が得られる。
【0028】
なお、光学式センサーで有機物に関する水質指標を測定する場合、紫外線領域における吸光度に基づいて水質指標が測定されるのが通常であり、250nm付近の波長の吸光度を基準にすることが多い(例:JIS K0807:1997)。一方、光学式センサーで色度を測定する場合、可視光領域における吸光度に基づいて色度が測定される。このため、有機物に関する水質指標及び色度は、共に光学式センサーで測定可能であるが、吸光度を測定する波長が異なる点に注意すべきである。
【0029】
光学式センサーで有機物に関する水質指標を測定する方法としては、試料に対する紫外線領域の所定の波長の吸光度を測定し、検量線法(絶対検量線法、内標準法、又は標準添加法)を利用して、BOD、COD、及びTOC等の水質指標を求める方法が挙げられる。JIS K0102-1:2021「工場排水試験方法」による手分析法で求められる水質指標と相関性がある光学式センサーを採用することが好ましい。有機物に関する水質指標を自動で測定可能な光学式センサーが市販されているのでそれを利用すればよい。
【0030】
有機性排水の色度を低減する方法として希釈を採用した場合、工程4で測定された水質指標と、希釈倍率に基づき、希釈前の有機性排水の有機物に関する水質指標を求めることができる。例えば、工程4で測定されたBODが100mg/Lであり、希釈倍率が2である場合は、希釈前のBODは100×2=200(mg/L)と算出される。このように、本実施形態に係る測定方法によれば、色度の高い有機性排水であっても、精度良く有機性排水の有機物に関する水質指標を求めることが可能となる。
【0031】
<2.有機性排水の処理方法>
上述した本発明の一実施形態に係る測定方法により測定された有機性排水の有機物に関する水質指標に基づき、当該有機性排水に対して行う種々の排水処理の条件を定めることができる。例示的には、放流に必要な希釈水量、好気性処理のための曝気風量、及び脱窒に必要なBOD源添加量を定めることが可能である。
【0032】
従って、本発明は一実施形態において、
上述した本発明の一実施形態に係る測定方法によって測定された有機性排水の有機物に関する水質指標と、放流水の目標とされる有機物に関する水質指標とに少なくとも基づき、有機性排水の下水道放流時の希釈水量を演算する工程と、
希釈水量を演算する前記工程よって演算された希釈水量の希釈水を、希釈水供給ラインを通じて放流予定の有機性排水に供給する工程と、
を含む有機性排水の処理方法が提供される。
希釈水量を演算する工程では、更に有機性排水の放流予定量に基づいてもよい。
【0033】
有機性排水の下水道放流時の希釈水量を演算する方法を例示的に説明する。有機性排水の有機物に関する水質指標(ここでは、BOD)がa(mg/L)であり、放流予定量(希釈水を含む)がb(L)であり、放流水中の目標とされるBODがc(mg/L)であるとすると、希釈水量d(L)は、例えば、d=b×(1-c/a)によって演算される。放流水の目標とされる有機物に関する水質指標は一種類ではなくてもよく、複数種類存在してもよい。その場合は、放流水がすべての水質指標を達成するのに必要な希釈水量を演算すればよい。
【0034】
また、本発明は別の一実施形態において、
上述した本発明の一実施形態に係る測定方法によって測定された有機性排水の有機物に関する水質指標に少なくとも基づいて、有機性排水の嫌気性生物処理を行う場合の脱窒槽へのBOD源添加量を演算する工程と、
BOD源添加量を演算する前記工程によって演算された添加量のBOD源を脱窒槽へ添加して有機性排水を嫌気性生物処理する工程と、
を含む有機性排水の処理方法が提供される。
【0035】
脱窒槽を利用する生物処理の方法としては、限定的ではないが、循環式硝化脱窒法、ステップ式硝化脱窒法、直接脱水(前脱水)型脱窒素処理方式などの硝化脱窒法が挙げられる。脱窒槽へ添加するBOD源としては、限定的ではないが、メタノールや原水の一部、有機性廃棄物等の水素供与体が用いられる。
【0036】
有機性排水の嫌気性生物処理を行う場合の脱窒槽へのBOD源添加量を演算する方法を例示的に説明する。一般に脱窒に必要なBODは硝酸態窒素(N)の2~3倍のBODである。そのため、メタノール添加後のBOD/N質量比が3程度になることが望ましい。脱窒槽流入水(有機性排水)のBODをi(mg/L)、脱窒槽流入水(有機性排水)の硝酸態窒素濃度をn(mg/L)、処理水量をQ(L)とすると、メタノール添加量m(mg)はm=Q(3n-i)によって演算される。
【0037】
また、本発明は更に別の一実施形態において、
上述した本発明の一実施形態に係る測定方法によって測定された有機性排水の有機物に関する水質指標に少なくとも基づいて、有機性排水の好気性生物処理を行う場合の好気槽の曝気風量を演算する工程と、
曝気風量を演算する前記工程によって演算された曝気風量で有機性排水を好気槽で好気性生物処理する工程と、
を含む有機性排水の処理方法が提供される。
【0038】
生物処理する際に曝気を伴う好気槽としては、限定的ではないが、硝化槽、活性汚泥槽が挙げられる。
【0039】
有機性排水の好気性生物処理を行う場合の好気槽の曝気風量を演算する方法を例示的に説明する。好気性処理に必要な酸素量は、BODの酸化に必要な酸素量O1、内生呼吸に必要な酸素量O2、硝化反応に必要な酸素量O3の総和である。O1は除去BOD量をLr(kg/day)、活性汚泥の増殖に用いられる割合をa(kgO2/kgBOD)として、O1=a・Lr、O2は活性汚泥の内生呼吸に利用される割合をb(day-1)、槽内の汚泥濃度(MLSS)をX(kg)としO2=b・X、O3はアンモニアの硝化プロセスNH4+2O2→NO3 -+2H2O+2H+より、アンモニア性窒素1kgの硝化に4.6kgの酸素が必要であることから除去すべきアンモニア態窒素量をN(kg/day)として、O3=4.6Nである。空気中の酸素量を23%としたとき、必要空気量G(kg/day)はG=4.35(O1+O2+O3)=4.35(a・Lr+b・X+4.6N)と演算される。
【0040】
本発明の一実施形態に係る測定方法によって測定された有機性排水の有機物に関する水質指標は、脱窒槽の他、嫌気処理槽、メタン発酵槽、生物脱臭槽、コンポスト発酵槽などBOD源の供給が必要な槽のBOD源添加量を演算する際にも適宜使用可能である。演算された添加量のBOD源は各槽に添加することができる。
【0041】
<3.有機性排水の有機物に関する水質指標の測定装置>
図1には、本発明の第一実施形態に係る有機性排水の処理システムを用いた処理フローの一例が示されている。図2には、本発明の第二実施形態に係る有機性排水の処理システムを用いた処理フローの一例が示されている。第一実施形態及び第二実施形態に係る有機性排水の処理システムは何れも、本発明の一実施形態に係る有機性排水の有機物に関する水質指標の測定装置100を備える。測定装置100は上述した本発明の一実施形態に係る測定方法を実施するのに好適に利用できる。
【0042】
図1及び図2に示す測定装置100は、
有機性排水の色度及び有機物に関する水質指標を測定可能な光学式センサー101と、
有機性排水のサンプルを前記センサー101に導くための第一導管102と、
有機性排水のサンプルを、第一導管102を通じて前記センサー101に定量供給可能なポンプ103と、
前記センサー101による色度の測定結果と、前記センサー101に定量供給される有機性排水のサンプルの量に基づき、有機性排水のサンプルの色度が予め定めた基準を満たすのに必要な希釈倍率及び希釈水量を演算可能な第一演算手段111と、
希釈水を前記センサー101に導くための第二導管104と、
第一演算手段111により演算された希釈水量の希釈水を、第二導管104を通じて前記センサー101に供給可能な希釈水ポンプ105と、
前記センサー101により測定された希釈後の有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標と、上記希釈倍率とに基づいて、希釈前の有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標を演算可能な第二演算手段112と、
を備える。
【0043】
有機性排水のサンプルを採取する場所は先述した通り、特段の制約はない。水質の測定を希望する任意の場所で採取すればよい。第一実施形態(図1)及び第二実施形態(図2)に係る有機性排水の処理システムにおいては、脱水分離液の水質を測定することを目的としており、脱水分離液の貯槽300から流出する脱水分離液の送液ライン301の途中で有機性排水のサンプルを採取する。
【0044】
有機性排水の色度及び有機物に関する水質指標を測定可能な光学式センサー101は、市販品を使用することができる。先述したように、有機性排水の色度及び有機物に関する水質指標は、吸光度を測定する波長領域が異なるため、紫外線領域及び可視光領域を含む広範囲の波長で吸光度を測定可能な光学式センサー、とりわけ紫外線領域及び可視光領域を含む広範囲の波長で吸光スペクトルを測定可能な光学式センサーが好適に使用される。そのような光学式センサーの例としては、S::CAN社製スぺクトロライザ(spectro::lyserTM)、WTW社製CarboVisTMが挙げられる。
【0045】
第一演算手段111及び第二演算手段112は、光学式センサー101に内蔵された又は外部接続された制御部110を有することができる。制御部110は、入力された命令、指示及びデータや、制御部110に接続された記憶装置120に格納されたデータ等を基にプログラムに従って演算処理を実行する装置及び回路等を指す。第一演算手段111及び第二演算手段112を含む制御部110の各種機能は、例えば中央処理装置(CPU)等の制御・演算装置にて実現可能である。
記憶装置120は各種データ、オペレーティングシステム(OS)及び各種の演算処理を実行するためのプログラム等を記憶する装置及び回路等を指し、例えば、主に半導体メモリが用いられる一次記憶装置、主にハードディスクドライブや半導体ディスクが用いられる二次記憶装置(補助記憶装置)等、公知の記憶装置を用いることができる。
ディスプレイ等の出力装置130を制御部110に無線又は有線で通信可能に接続し、第一演算手段111及び第二演算手段112による演算結果を、出力装置130で出力できるように測定装置100を構成してもよい。
【0046】
一実施形態において、制御部110は、入力装置140を有することができる。入力装置140はデータ又は命令を制御部110に与えるためのインターフェースであり、キーボード、テンキー、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル、リーダー(OCR)、入力画面、マイク等の音声入力インターフェース等を採用可能である。
一実施形態において、制御部110は光学式センサー101に無線又は有線で通信可能に接続されており、入力装置140を介して、又は、記憶装置120に格納されたプログラムに基づき、起動、停止、測定条件の変更といった光学式センサー101の操作を行うことができる。
一実施形態において、制御部110はポンプ103に無線又は有線で通信可能に接続されており、入力装置140を介して、又は、記憶装置120に格納されたプログラムに基づき、起動、供給量変更、停止といったポンプ103の操作を行うことができる。
一実施形態において、制御部110は希釈水ポンプ105に無線又は有線で通信可能に接続されており、入力装置140を介して、又は、記憶装置120に格納されたプログラムに基づき、起動、希釈水量変更、停止といった希釈水ポンプ105の操作を行うことができる。特に、制御部110は第一演算手段111より演算された希釈水量を希釈水ポンプ105が所定のタイミングで供給できるように制御可能である。
【0047】
希釈水ポンプ105を介して光学式センサー101に供給する希釈水としては、純水、水道水、井水、工業用水といった清水(色度が実質的に0)が望ましいが、色度が実質的に0であれば、排水処理施設からの放流水でもよい。光学式センサー101に流入した有機性排水のサンプル及び希釈水は、使用後に、戻り配管106を介して有機性排水のサンプリング場所に返送することができる。
【0048】
図1及び図2に示す測定装置100の操作方法の一例を説明する。まず、制御部110からの指令に基づき、ポンプ103を起動し、所定量の有機性排水をサンプリングする。サンプリングされた有機性排水は光学式センサー101のセル内に供給される。次いで、制御部110からの指令に基づき、光学式センサー101はセル内に供給された有機性排水の色度を測定する。測定結果は記憶装置120に格納される。また、測定結果は出力装置130に出力してもよい。色度の測定後、光学式センサー101のセル内の有機性排水は、制御部110からの指令に基づき、戻り配管106を通じて排出される。
【0049】
制御部110の第一演算手段111は、センサー101による色度の測定結果と、センサー101に定量供給される有機性排水のサンプルの量に基づき、有機性排水のサンプルの色度が予め定めた基準を満たすのに必要な希釈倍率及び希釈水量を演算する。次いで、制御部110からの指令に基づき、希釈水ポンプ105を起動し、第一演算手段111により演算された希釈水量の希釈水を、第二導管104を通じてセンサー101のセル内に供給する。また、制御部110からの指令に基づき、ポンプ103を起動し、所定量の有機性排水を再度サンプリングする。再度サンプリングされた有機性排水はセンサー101のセル内に供給される。最初にサンプリングした量が十分な場合は、これを用いることで、再度のサンプリングを省略することもできる。希釈水と有機性排水は別々にセンサー101に供給され、センサー101の内部で混合されるように構成してもよい。また、希釈水と有機性排水をセンサー101の外部で予め混合した上で、希釈後の有機性排水がセンサー101に供給されるように構成してもよい。
【0050】
次いで、制御部110からの指令に基づき、センサー101はセル内に供給された希釈後の有機性排水の有機物に関する水質指標を測定する。測定結果は記憶装置120に格納してもよい。また、測定結果は出力装置130に出力してもよい。第二演算手段112は、センサー101により測定された希釈後の有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標と、上記希釈倍率とに基づいて、希釈前の有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標を演算する。演算結果は記憶装置120に格納してもよい。また、演算結果は出力装置130に出力してもよい。有機物に関する水質指標の測定後、光学式センサー101のセル内の希釈後の有機性排水は、制御部110からの指令に基づき、戻り配管106を通じて排出される。
【0051】
図1及び図2に示す測定装置100においては、有機性排水の色度及び有機物に関する水質指標の両者を測定可能な光学式センサーを用いていた。しかしながら、有機性排水の色度及び有機物に関する水質指標を別々の光学式センサーで測定することも可能である。図3及び図4には、図1及び図2に示す処理システムにおける測定装置100の光学式センサー101を、そのような光学式センサー101A、101Bに置き換えた場合の測定装置100の構成がそれぞれ模式的に示されている。
【0052】
図3及び図4に示す測定装置100は、
有機性排水の色度を測定可能な光学式センサーA(101A)と、
有機性排水の有機物に関する水質指標を測定可能な光学式センサーB(101B)と、
有機性排水のサンプルを前記センサーA(101A)に導くための第一導管A(102A)と、
有機性排水のサンプルを前記センサーB(101B)に導くための第一導管B(102B)と、
有機性排水のサンプルを、第一導管A(102A)を通じて前記センサーA(101A)に定量供給可能なポンプA(103A)と、
前記有機性排水のサンプルを、第一導管B(102B)を通じて前記センサーB(101B)に定量供給可能なポンプB(103B)と、
前記センサーA(101A)による色度の測定結果と、前記センサーB(101B)に定量供給される有機性排水のサンプルの量に基づき、有機性排水のサンプルの色度が予め定めた基準を満たすのに必要な希釈倍率及び希釈水量を演算可能な第一演算手段111と、
希釈水を前記センサーB(101B)に導くための第二導管104と、
第一演算手段111により演算された希釈水量の希釈水を、第二導管104を通じて前記センサーB(101B)に供給可能な希釈水ポンプ105と、
前記センサーB(101B)により測定された希釈後の有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標と、上記希釈倍率とに基づいて、希釈前の有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標を演算可能な第二演算手段112と、
を備える。
【0053】
有機性排水の色度を測定可能な光学式センサーA(101A)と、有機性排水の有機物に関する水質指標を測定可能な光学式センサーB(101B)はそれぞれ市販の製品を使用可能である。センサーAとしては、紫外線領域の波長で吸光度を測定可能な光学式センサー、とりわけ紫外線領域の波長で吸光スペクトルを測定可能な光学式センサーが好適に使用される。センサーBとしては、可視光領域の波長で吸光度を測定可能な光学式センサー、とりわけ可視光領域の波長で吸光スペクトルを測定可能な光学式センサーが好適に使用される。
【0054】
図3及び図4に示す測定装置100の操作方法の一例を説明する。まず、制御部110からの指令に基づき、ポンプA(103A)を起動し、所定量の有機性排水をサンプリングする。サンプリングされた有機性排水は光学式センサーA(101A)のセル内に供給される。次いで、制御部110からの指令に基づき、光学式センサーA(101A)はセル内に供給された有機性排水の色度を測定する。測定結果は記憶装置120に格納される。また、測定結果は出力装置130に出力してもよい。色度の測定後、光学式センサーA(101A)のセル内の有機性排水は、制御部110からの指令に基づき、戻り配管106Aを通じて排出される。
【0055】
制御部110の第一演算手段111は、センサーA(101A)による色度の測定結果と、センサーB(101B)に定量供給される有機性排水のサンプルの量に基づき、有機性排水のサンプルの色度が予め定めた基準を満たすのに必要な希釈倍率及び希釈水量を演算する。次いで、制御部110からの指令に基づき、希釈水ポンプ105を起動し、第一演算手段111により演算された希釈水量の希釈水を、第二導管104を通じてセンサーB(101B)のセル内に供給する。また、制御部110からの指令に基づき、ポンプB(103B)を起動し、所定量の有機性排水を再度サンプリングする。再度サンプリングされた有機性排水はセンサーB(101B)のセル内に供給される。希釈水と有機性排水は別々にセンサーB(101B)に供給され、センサーB(101B)の内部で混合されるように構成してもよい。また、希釈水と有機性排水をセンサーB(101B)の外部で予め混合した上で、希釈後の有機性排水がセンサーB(101B)に供給されるように構成してもよい。
【0056】
次いで、制御部110からの指令に基づき、センサーB(101B)はセル内に供給された希釈後の有機性排水の有機物に関する水質指標を測定する。測定結果は記憶装置120に格納される。また、測定結果は出力装置130に出力してもよい。第二演算手段112は、センサーB(101B)により測定された希釈後の有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標と、上記希釈倍率とに基づいて、希釈前の有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標を演算する。演算結果は記憶装置120に格納してもよい。また、演算結果は出力装置130に出力してもよい。有機物に関する水質指標の測定後、光学式センサーB(101B)のセル内の希釈後の有機性排水は、制御部110からの指令に基づき、戻り配管106Bを通じて排出される。
【0057】
<4.有機性排水の処理システム>
図1及び図3を参照すると、第一実施形態に係る有機性排水の処理システムは、上述した測定装置100の構成要素に加え、
測定装置100によって演算された希釈前の有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標と、放流水の目標とされる有機物に関する水質指標とに少なくとも基づき、有機性排水の下水道放流時の希釈水量を演算可能な第三演算手段113と、
第三演算手段113により演算された希釈水量の希釈水を、希釈水供給ライン150を通じて放流予定の有機性排水に供給可能な希釈水ポンプ151と、
を備える。
第三演算手段113は、更に有機性排水の放流予定量に基づき希釈水量を演算可能に構成してもよい。
【0058】
図2及び図4を参照すると、第二実施形態に係る有機性排水の処理システムは、上述した測定装置100の構成要素に加え、
有機性排水を嫌気性生物処理可能な脱窒槽400と、
測定装置100によって演算された希釈前の有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標に少なくとも基づいて、脱窒槽400へのBOD源添加量を演算可能な第四演算手段114と、
第四演算手段114で演算された添加量のBOD源を供給可能なBOD源ポンプ402と、を備える。
【0059】
第二実施形態に係る有機性排水の処理システムは、脱窒槽400及び第四演算手段114に加えて、又は、これらに代えて、
有機性排水を好気性生物処理可能な好気槽(ここでは硝化槽)500と、
測定装置100によって演算された希釈前の有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標に少なくとも基づいて、好気槽(ここでは硝化槽)500の曝気風量を演算可能な第五演算手段115と、
第五演算手段115で演算された曝気風量を好気槽500に供給可能な送風機502と、
を備える。
【0060】
第一実施形態及び第二実施形態に係る有機性排水の処理システムは、し尿、浄化槽汚泥等を固液分離するための脱水機200と、脱水機200から流出する脱水分離液を貯留する脱水分離液の貯槽300を有することができる。脱水機200の上流側には、ドラムスクリーン、スクリュープレスといった固液分離機(図示せず)を更に有してもよいし、その他の槽や排水処理機器(図示せず)を有していてもよい。
【0061】
脱水分離液の貯槽300の下流側においては、図1及び図3に示す第一実施形態に係る有機性排水の処理システムのように、下水放流前に希釈水ポンプ151から希釈水供給ライン150を通じて希釈水を供給可能である。第三演算手段113は、測定装置100によって演算された希釈前の有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標と、放流水の目標とされる有機物に関する水質指標とに少なくとも基づき、有機性排水の下水道放流時の希釈水量を演算可能である。希釈水量は、更に有機性排水の放流予定量に基づいて演算してもよい。
【0062】
第一実施形態に係る有機性排水の処理システムにおいて、第三演算手段113は、測定装置100の制御部110が有していてもよいし、これとは別に用意された制御部(図示せず)が有していてもよい。第三演算手段113を含む制御部の各種機能は、例えば中央処理装置(CPU)等の制御・演算装置にて実現可能である。第三演算手段113による演算結果は、測定装置100のディスプレイ等の出力装置130で出力できるようにしてもよいし、これとは別に用意された出力装置(図示せず)で出力できるように処理システムを構成することもできる。また、第三演算手段113による演算を行うのに必要な記憶装置についても、測定装置100の記憶装置120を利用してもよいし、これとは別に用意された記憶装置(図示せず)を利用してもよい。
【0063】
第一実施形態に係る有機性排水の処理システムにおいて、測定装置100の制御部110(又はこれとは別に用意された制御部)は、希釈水ポンプ151に無線又は有線で通信可能に接続されており、入力装置140(又はこれとは別に用意された入力装置)を介して、又は、測定装置100の記憶装置120(又はこれとは別に用意された記憶装置)に格納されたプログラムに基づき、起動、希釈水量変更、停止といった希釈水ポンプ151の操作を行うことができる。特に、測定装置100の制御部110(又はこれとは別に用意された制御部)は、第三演算手段113より演算された希釈水量を希釈水ポンプ151が所定のタイミングで供給できるように制御可能である。
【0064】
また、脱水分離液の貯槽300の下流側においては、図2及び図4に示す第二実施形態に係る有機性排水の処理システムのように、下水放流前に硝化脱窒設備を配置することができる。第二実施形態は、脱水分離液が高濃度のアンモニア性窒素を含有するときに有利である。第二実施形態に係る有機性排水の処理システムは、硝化脱窒設備として、脱窒槽400及び硝化槽500を備える。硝化槽500からの硝化液は脱窒槽400に循環ライン501を通じて返送してもよい。脱窒槽400及び硝化槽500の下流側に更に第二脱窒槽600及び第二硝化槽700を設けてもよい。図示しないが、第二硝化槽700の下流には更に凝集沈殿槽、オゾン処理設備、砂ろ過設備等を設けてもよい。
【0065】
脱窒槽400には、BOD源ポンプ402からBOD源供給ライン404を通じてBOD源を添加することができる。BOD源は脱窒槽400に直接添加する場合のみならず、硝化液の循環ライン501等に添加することで脱窒槽400に間接的に添加してもよい。第四演算手段114は、測定装置100によって演算された希釈前の有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標に少なくとも基づいて、脱窒槽400へのBOD源添加量を演算可能である。
【0066】
硝化槽500には、送風機502から空気供給ライン504を通じて曝気用の空気を供給することができる。第五演算手段115は、測定装置100によって演算された希釈前の有機性排水のサンプルの有機物に関する水質指標に少なくとも基づいて、好気槽(ここでは硝化槽)500の曝気風量を演算可能である。
【0067】
第二実施形態に係る有機性排水の処理システムにおいて、第四演算手段114は、測定装置100の制御部110が有していてもよいし、これとは別に用意された制御部(図示せず)が有していてもよい。第四演算手段114を含む制御部の各種機能は、例えば中央処理装置(CPU)等の制御・演算装置にて実現可能である。第四演算手段114による演算結果は、測定装置100のディスプレイ等の出力装置130で出力できるようにしてもよいし、これとは別に用意された出力装置(図示せず)で出力できるように処理システムを構成することもできる。また、第四演算手段114による演算を行うのに必要な記憶装置についても、測定装置100の記憶装置120を利用してもよいし、これとは別に用意された記憶装置(図示せず)を利用してもよい。
【0068】
第二実施形態に係る有機性排水の処理システムにおいて、測定装置100の制御部110(又はこれとは別に用意された制御部)は、BOD源ポンプ402に無線又は有線で通信可能に接続されており、入力装置140(又はこれとは別に用意された入力装置)を介して、又は、測定装置100の記憶装置120(又はこれとは別に用意された記憶装置)に格納されたプログラムに基づき、起動、BOD源添加量変更、停止といったBOD源ポンプ402の操作を行うことができる。特に、測定装置100の制御部110(又はこれとは別に用意された制御部)は、第四演算手段114より演算された添加量のBOD源をBOD源ポンプ402が所定のタイミングで供給できるように制御可能である。
【0069】
第二実施形態に係る有機性排水の処理システムにおいて、第五演算手段115は、測定装置100の制御部110が有していてもよいし、これとは別に用意された制御部(図示せず)が有していてもよい。第五演算手段115を含む制御部の各種機能は、例えば中央処理装置(CPU)等の制御・演算装置にて実現可能である。第五演算手段115による演算結果は、測定装置100のディスプレイ等の出力装置130で出力できるようにしてもよいし、これとは別に用意された出力装置(図示せず)で出力できるように処理システムを構成することもできる。また、第五演算手段115による演算を行うのに必要な記憶装置についても、測定装置100の記憶装置120を利用してもよいし、これとは別に用意された記憶装置(図示せず)を利用してもよい。
【0070】
第二実施形態に係る有機性排水の処理システムにおいて、測定装置100の制御部110(又はこれとは別に用意された制御部)は、送風機502に無線又は有線で通信可能に接続されており、入力装置140(又はこれとは別に用意された入力装置)を介して、又は、測定装置100の記憶装置120(又はこれとは別に用意された記憶装置)に格納されたプログラムに基づき、起動、曝気風量変更、停止といった送風機502の操作を行うことができる。特に、測定装置100の制御部110(又はこれとは別に用意された制御部)は、第五演算手段115より演算された曝気風量を送風機502が所定のタイミングで供給できるように制御可能である。
【実施例0071】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0072】
(試験1.色度がCODの光学式センサーに与える影響)
国内のとあるし尿処理場(X)における脱水分離液を対象として試験を行った。このし尿処理場(X)の脱水分離液は時間帯によって色度が変動することが分かっている。そこで、種々の時間帯で脱水分離液をサンプリングして、無希釈で、透過光測定法に基づく色度及び吸光法に基づくCODCrを光学式センサー(S::CAN社製spectro::lyserTM)により測定した。ここで、光学式センサーにより透過光測定法に基づく色度を求めるための吸光度を測定する波長は390nmとした。光学式センサーにより吸光法に基づくCODCrを求めるための吸光度を測定する波長は250nmとした。また、CODCrはJIS K0102-1:2021に準拠して酸性法でも測定した。結果を図5に示す。
【0073】
図5より、色度が高くなるにつれて、光学式センサーでCODを測定したときの測定値が、JIS K0102-1:2021に準拠して当該水質指標を手分析したときの測定値と乖離しやすく、両者の相関性が低下することが理解できる。逆に言えば、色度が低くなるにつれて、両者の相関性が向上することが理解できる。具体的には色度は400度以下、好ましくは300度以下のときに両者が高い相関性をもつ。よって、色度が高い脱水分離液は色度を低下させることで、光学式センサーで精度良くCODを測定できる。
【0074】
(試験2.色度がBODの光学式センサーに与える影響)
国内の別のし尿処理場(A)における脱水分離液を対象として試験を行った。種々の時間帯で脱水分離液をサンプリングし、無希釈及び井水により5倍希釈して、吸光法に基づくBODを光学式センサー(WTW社製CarboVisTM)により測定した。また、JIS K0102-1:2021に準拠した希釈法でもBODを測定した。ここで、光学式センサーにより吸光法に基づくBODを求めるための吸光度を測定する波長は250nmとした。結果を図6に示す。なお、無希釈における脱水分離液の透過光測定法に基づく色度は、500~800程度であった。また、サンプリングしたいずれの脱水分離液も、BODは光学式センサーの測定範囲内に収まっていた。
【0075】
図6より、無希釈の場合は決定係数R2=0.24であり、光学式センサーによるBOD測定値とJIS K0102-1:2021に準拠した希釈法によるBOD測定値の相関性は低かった。一方、5倍希釈の場合は決定係数R2=0.93であり、両者に高い相関性が得られた。また、無希釈の分離液を5Aろ紙でろ過した場合にも両者の相関が得られないことから、濁度は影響しておらず、色度が原因であることが考えられた。
【0076】
上記と同様の試験を希釈倍率を変えて行ったところ、2倍希釈の場合は決定係数R2=0.4であり、3倍希釈の場合は決定係数R2=0.7であり、10倍希釈の場合は決定係数R2=0.5であった。
【0077】
(試験3.色度がBODの光学式センサーに与える影響)
国内の別のし尿処理場(B)における脱水分離液を対象として試験を行った。種々の時間帯で脱水分離液をサンプリングし、無希釈で、吸光法に基づくBODを光学式センサー(WTW社製CarboVisTM)により測定した。また、JIS K0102-1:2021に準拠した希釈法でもBODを測定した。ここで、光学式センサーにより吸光法に基づくBODを求めるための吸光度を測定する波長は250nmとした。なお、無希釈における脱水分離液の透過光測定法に基づく色度は、200~400程度であった。また、サンプリングしたいずれの脱水分離液も、BODは光学式センサーの測定範囲内に収まっていた。
試験の結果、光学式センサーによるBOD測定値とJIS K0102-1:2021に準拠した希釈法によるBOD測定値の相関性は、決定係数R2=0.91であり、高いことが分かった。し尿処理場(B)の脱水分離液について、無希釈であっても、光学式センサーによるBOD測定値とJIS K0102-1:2021に準拠した希釈法によるBOD測定値の相関性が高かったのは、色度が低かったことが原因だと考えられる。
【0078】
(試験4.色度がBODの光学式センサーに与える影響)
国内のとある下水処理場(C)における初沈越流水を対象として試験を行った。種々の時間帯で初沈越流水をサンプリングし、無希釈で、吸光法に基づくBODを光学式センサー(S::CAN社製spectro::lyserTM)により測定した。また、JIS K0102-1:2021に準拠した希釈法でもBODを測定した。ここで、光学式センサーにより吸光法に基づくBODを求めるための吸光度を測定する波長は250nmとした。なお、無希釈における初沈越流水の透過光測定法に基づく色度は、BODの値によらず100~300程度であった。また、サンプリングしたいずれの初沈越流水も、BODは光学式センサーの測定範囲内に収まっていた。
試験の結果、光学式センサーによるBOD測定値とJIS K0102-1:2021に準拠した希釈法によるBOD測定値の相関性は、決定係数R2=0.92であり、高いことが分かった。下水処理場(C)の初沈越流水について、無希釈であっても、光学式センサーによるBOD測定値とJIS K0102-1:2021に準拠した希釈法によるBOD測定値の相関性が高かったのは、色度が低かったことが原因だと考えられる。
【符号の説明】
【0079】
100 :測定装置
101 :光学式センサー
101A:光学式センサー(色度用)
101B:光学式センサー(有機物に関する水質指標用)
102 :第一導管
102A:第一導管A
102B:第一導管B
103 :ポンプ
103A:ポンプA
103B:ポンプB
104 :第二導管
105 :希釈水ポンプ
106 :戻り配管
106A:戻り配管A
106B:戻り配管B
110 :制御部
111 :第一演算手段
112 :第二演算手段
113 :第三演算手段
114 :第四演算手段
115 :第五演算手段
120 :記憶装置
130 :出力装置
140 :入力装置
150 :希釈水供給ライン
151 :希釈水ポンプ
200 :脱水機
300 :脱水分離液の貯槽
301 :送液ライン
400 :脱窒槽
402 :BOD源ポンプ
404 :BOD源供給ライン
500 :好気槽(硝化槽)
501 :循環ライン
502 :送風機
504 :空気供給ライン
600 :第二脱窒槽
700 :第二硝化槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6