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特開2024-106236熱間圧延鋼板製造装置、熱間圧延鋼板製造方法および熱間圧延鋼板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106236
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】熱間圧延鋼板製造装置、熱間圧延鋼板製造方法および熱間圧延鋼板
(51)【国際特許分類】
   B21B 45/02 20060101AFI20240731BHJP
   B21B 37/74 20060101ALI20240731BHJP
   C21D 11/00 20060101ALI20240731BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20240731BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B21B45/02 320R
B21B45/02 320S
B21B37/74 A
C21D11/00 104
C21D9/46 S
C22C38/00 301W
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010462
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】橘 久好
(72)【発明者】
【氏名】上杉 哲平
(72)【発明者】
【氏名】赤池 潤一郎
【テーマコード(参考)】
4E124
4K037
4K038
【Fターム(参考)】
4E124BB02
4E124BB06
4E124BB07
4E124BB08
4E124EE01
4E124EE14
4E124FF01
4E124GG10
4K037EA06
4K037EA07
4K037FD00
4K037FD06
4K037FE00
4K037JA10
4K038AA01
4K038BA01
4K038CA01
4K038CA03
4K038DA01
4K038EA01
4K038FA02
(57)【要約】
【課題】熱間圧延される高炭素鋼材の冷却工程の制御を、より簡単かつ適切に行うことができるようにする。
【解決手段】仕上圧延機と、冷却装置と、制御装置と、巻取機と、を有し、制御装置は、仕上圧延機と冷却装置の入口との間に設置された温度計によって測定された温度に基づいて、熱間圧延鋼板の所定位置における温度と熱間圧延鋼板の所定位置における変態率とを算出する算出部と、算出された熱間圧延鋼板の所定位置における温度と、予め設定された閾値である温度閾値とを比較する温度比較部と、算出された熱間圧延鋼板の所定位置における変態率と、予め設定された閾値である変態率閾値とを比較する変態率比較部と、温度比較部による比較結果と変態率比較部による比較結果を参照して、冷却装置が有し熱間圧延鋼板に水を吐出する複数のノズルの開閉を操作する操作部とを有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炭素鋼から熱間圧延鋼板を製造する熱間圧延鋼板製造装置であって、
前記高炭素鋼を熱間圧延し前記熱間圧延鋼板とする仕上圧延機と、
前記仕上圧延機から搬出される前記熱間圧延鋼板を冷却する冷却装置と、
前記冷却装置を操作する制御装置と、
前記冷却装置から搬出される前記熱間圧延鋼板を巻き取る巻取機と、
を有し、
前記制御装置は、
前記仕上圧延機と前記冷却装置の入口との間に設置された温度計によって測定された温度に基づいて、前記熱間圧延鋼板の所定位置における温度と前記熱間圧延鋼板の所定位置における変態率とを算出する算出部と、
前記算出された前記熱間圧延鋼板の所定位置における温度と、予め設定された閾値である温度閾値とを比較する温度比較部と、
前記算出された前記熱間圧延鋼板の所定位置における変態率と、予め設定された閾値である変態率閾値とを比較する変態率比較部と、
前記温度比較部による比較結果と前記変態率比較部による比較結果を参照して、前記冷却装置が有し前記熱間圧延鋼板に水を吐出する複数のノズルの開閉を操作する操作部と、
を有する、熱間圧延鋼板製造装置。
【請求項2】
前記冷却装置は、前記熱間圧延鋼板の搬送方向に沿って複数の区間に区分され、
前記算出部は、前記複数の区間の各区間の出口における前記熱間圧延鋼板の温度と変態率とを算出する、請求項1に記載の熱間圧延鋼板製造装置。
【請求項3】
前記算出部は、
前記区間の入口における前記熱間圧延鋼板の温度に基づいて、前記区間の温度降下量を演算し、前記温度降下量と、前記区間の入口における前記熱間圧延鋼板の変態に起因する変態発熱量とに基づいて、前記区間の出口における前記熱間圧延鋼板の温度を算出する第1算出部と、
TTT線図を参照し、前記区間の入口における前記熱間圧延鋼板の温度と変態率とに基づいて、前記区間の出口における前記熱間圧延鋼板の変態率と、前記区間の出口における前記熱間圧延鋼板の変態に起因する変態発熱量とを算出する第2算出部と、
を有し、
前記複数の区間のうち、前記熱間圧延鋼板が最初に通過する区間においては、前記区間の入口における前記熱間圧延鋼板の変態率および前記変態発熱量が初期値として与えられる、請求項2に記載の熱間圧延鋼板製造装置。
【請求項4】
前記操作部は、
前記複数のノズルを、順番に開放する処理を実行し、
前記算出部は、前記ノズルが開放される都度、前記熱間圧延鋼板の所定位置における温度および変態率を算出する、請求項1に記載の熱間圧延鋼板製造装置。
【請求項5】
前記温度比較部は、
前記冷却装置内の複数の位置における前記熱間圧延鋼板の温度と前記温度閾値とを比較し、
前記変態率比較部は、
前記冷却装置の出口における前記熱間圧延鋼板の変態率と前記変態率閾値とを比較する、請求項4に記載の熱間圧延鋼板製造装置。
【請求項6】
前記操作部は、
前記温度比較部による比較結果が、前記温度閾値未満を示すものであるか、または、前記変態率比較部による比較結果が、前記変態率閾値以上を示すものである場合、前記ノズルを順番に開放する処理を停止する、請求項5に記載の熱間圧延鋼板製造装置。
【請求項7】
前記操作部は、
前記温度比較部による比較結果を参照した後、前記変態率比較部による比較結果を参照する、請求項6に記載の熱間圧延鋼板製造装置。
【請求項8】
前記高炭素鋼の炭素含有量は、0.3%乃至0.9%である、請求項1に記載の熱間圧延鋼板製造装置。
【請求項9】
高炭素鋼から熱間圧延鋼板を製造する熱間圧延鋼板製造方法であって、
前記高炭素鋼を熱間圧延し前記熱間圧延鋼板とする仕上圧延機と、
前記仕上圧延機から搬出される前記熱間圧延鋼板を冷却する冷却装置と、
前記冷却装置を操作する制御装置と、
前記冷却装置から搬出される前記熱間圧延鋼板を巻き取る巻取機と、
を有する熱間圧延鋼板製造装置を用い、
前記制御装置を用いて、
前記仕上圧延機と前記冷却装置の入口との間に設置された温度計によって測定された温度に基づいて、前記熱間圧延鋼板の所定位置における温度と前記熱間圧延鋼板の所定位置における変態率とを算出する算出ステップと、
前記算出された前記熱間圧延鋼板の所定位置における温度と、予め設定された閾値である温度閾値とを比較する温度比較ステップと、
前記算出された前記熱間圧延鋼板の所定位置における変態率と、予め設定された閾値である変態率閾値とを比較する変態率比較ステップと、
前記温度比較ステップによる比較結果と前記変態率比較ステップによる比較結果とに基づいて、前記冷却装置が有し前記熱間圧延鋼板に水を吐出する複数のノズルの開閉を操作する操作ステップと、
を有する、熱間圧延鋼板製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の熱間圧延鋼板製造方法により製造された熱間圧延鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延鋼板製造装置、熱間圧延鋼板製造方法および熱間圧延鋼板に関し、熱間圧延される高炭素鋼材の冷却工程の制御を、より簡単かつ適切に行うことができるようにする熱間圧延鋼板製造装置、熱間圧延鋼板製造方法および熱間圧延鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
熱延された鋼板は、仕上圧延機より巻取機に至る間に設けられた冷却装置によって所定の温度まで冷却されたのち巻取られる。中炭素鋼材および高炭素鋼材では、冷却中に発生する変態潜熱の熱量が大きく、冷却中であっても鋼板温度が上昇することが多い。
【0003】
高炭素鋼材(炭素含有量0.3~0.9%)の熱延において、熱延の冷却工程で冷却が不足した場合は、巻取り後のコイルが重力に負けて変形する、巻取り後の「コイル潰れ」が生じる。また、熱延の冷却工程で過剰に冷却した場合は、「鋼板割れ」が生じる。
【0004】
「コイル潰れ」は、冷却工程での冷却が不足し、鋼板の変態の進行が不十分な状態で巻き取られることにより発生する。すなわち、巻取後に未変態相の変態が進行することによって発熱、膨張が生じて巻緩みが生じることにより「コイル潰れ」が発生する。
【0005】
一方で、巻取り前に変態を充分に進行させるために過剰な冷却を行うと、低温域まで鋼板が冷却されて延性が低い硬質相(主にベイナイト)が生成されることにより「鋼板割れ」が発生する。
【0006】
従来の技術では、コイル潰れや鋼板割れの発生を回避するため、熱延の冷却工程においては、主に巻取温度を所定の温度に近づけるような冷却の制御が行われていた。例えば、巻取温度の目標値を設定し、目標値に近づけるように冷却の設定を選択することが考えられる。冷却は、通常、鋼板に冷却水をかけることにより行われ、冷却水量を選択する設定が行われる。例えば、3種類(弱冷/中冷/強冷)の設定の中から選択することができる。
【0007】
高炭素鋼材では、相変態時の発熱(変態発熱)が顕著であるため、冷却中にも鋼板温度が上昇することがある。このような現象に対し、変態発熱を予測し、巻取温度を精度良く算出する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、過去のデータから、巻取位置で変態が完了する中間温度を導出し、この中間温度を目標として冷却装置を操作する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
さらに、冷却装置内に変態率の検出装置を複数設置し、検出値が目標に達した場合に、その検出装置よりも下流側の水冷装置をオフにすることで変態率を制御する技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
また、鋼板温度の計算値と実績値の差が小さくなるような修正手段を持つ変態率計算モデルを用いて冷却温度の調整を行う技術も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008-161924
【特許文献2】特開2008―18459
【特許文献3】平2-55613
【特許文献4】特開2013-766
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、高炭素鋼材では、相変態時の発熱(変態発熱)が顕著であるため、鋼板の品質を高く維持するためには、冷却中の鋼板温度だけでなく、巻取時の変態率を適切に維持する必要がある。
【0013】
ところが、巻取温度の目標値を設定して冷却の制御を行っても、変態を適切に進行させることができないことがある。例えば、3種類の設定の中からいずれかを選択し、巻取温度を所定の温度に近づけるように冷却の制御を行ったとしても、冷却中の鋼板温度と巻取時の変態率とを適切に維持することができない。
【0014】
このような状況下では、適切な冷却条件を満たすためには、試行錯誤繰り返すことで巻取温度の目標値を求める必要があるが、冷却中に仕上出側温度や圧延速度は刻々と変化するため、常に目標値を修正し続けなければならず、負担が大きくなる。
【0015】
特許文献1、特許文献2および特許文献4の技術は、いずれも目標温度に近づけるように冷却装置を操作するものであり、高炭素鋼材の製造においては、より簡単かつ適切な制御が望まれる。
【0016】
また、特許文献3に示されるような変態率の検出装置は、理論上は可能であっても、実際の製造現場で使用可能な装置の開発が困難である。
【0017】
本発明の一態様は、熱間圧延される高炭素鋼材の冷却工程の制御を、より簡単かつ適切に行うことができるようにする技術を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決すべく、本発明の一態様に係る制御装置は、高炭素鋼から熱間圧延鋼板を製造する熱間圧延鋼板製造装置であって、前記高炭素鋼を熱間圧延し前記熱間圧延鋼板とする仕上圧延機と、前記仕上圧延機から搬出される前記熱間圧延鋼板を冷却する冷却装置と、前記冷却装置を操作する制御装置と、前記冷却装置から搬出される前記熱間圧延鋼板を巻き取る巻取機と、を有し、前記制御装置は、前記仕上圧延機と前記冷却装置の入口との間に設置された温度計によって測定された温度に基づいて、前記熱間圧延鋼板の所定位置における温度と前記熱間圧延鋼板の所定位置における変態率とを算出する算出部と、前記算出された前記熱間圧延鋼板の所定位置における温度と、予め設定された閾値である温度閾値とを比較する温度比較部と、前記算出された前記熱間圧延鋼板の所定位置における変態率と、予め設定された閾値である変態率閾値とを比較する変態率比較部と、前記温度比較部による比較結果と前記変態率比較部による比較結果を参照して、前記冷却装置が有し前記熱間圧延鋼板に水を吐出する複数のノズルの開閉を操作する操作部と、を有する。
【0019】
上記課題を解決すべく、本発明の一態様に係る制御方法は、高炭素鋼から熱間圧延鋼板を製造する熱間圧延鋼板製造方法であって、前記高炭素鋼を熱間圧延し前記熱間圧延鋼板とする仕上圧延機と、前記仕上圧延機から搬出される前記熱間圧延鋼板を冷却する冷却装置と、前記冷却装置を操作する制御装置と、前記冷却装置から搬出される前記圧延鋼板を巻き取る巻取機と、を有する熱間圧延鋼板製造装置を用い、前記制御装置を用いて、前記仕上圧延機と前記冷却装置の入口との間に設置された温度計によって測定された温度に基づいて、前記熱間圧延鋼板の所定位置における温度と前記熱間圧延鋼板の所定位置における変態率とを算出する算出ステップと、前記算出された前記熱間圧延鋼板の所定位置における温度と、予め設定された閾値である温度閾値とを比較する温度比較ステップと、前記算出された前記熱間圧延鋼板の所定位置における変態率と、予め設定された閾値である変態率閾値とを比較する変態率比較ステップと、前記温度比較ステップによる比較結果と前記変態率比較ステップによる比較結果とに基づいて、前記冷却装置が有し前記熱間圧延鋼板に水を吐出する複数のノズルの開閉を操作する操作ステップと、を有する。
【0020】
本発明の各態様は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記システムが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることによりシステムをコンピュータにて実現させるプログラム、および、それを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、熱間圧延される高炭素鋼材の冷却工程の制御を、より簡単かつ適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】高炭素鋼材の冷却時の温度変化を、他の鋼材の温度変化と比較した例を示す図である。
図2】熱間圧延鋼板製造装置の製造ラインを模式的に示す図である。
図3図2の製造ライン上での鋼板の温度、並びに、変態率および発熱量を説明する図である。
図4】実際の高炭素鋼材の熱間圧延において計測される温度変化の例を説明する図である。
図5図4に示される各グラフに係る鋼板の各位置における温度および変態率の変化を、変態開始時刻および変態終了時刻とともに説明する図である。
図6図4および図5に示される各グラフに係る鋼板の所定位置における温度および変態率の変化を説明する図である。
図7】第一実施形態に係る熱間圧延鋼板製造装置の例を示す図である。
図8図7の制御装置の機能的構成例を示すブロック図である。
図9】TTT線図の例を示す図である。
図10】冷却装置制御処理の流れの例を説明するフローチャートである。
図11】ゾーン別温度・変態率計算処理の流れの例を説明するフローチャートである。
図12】従来技術による制御を行った場合の鋼板温度および変態率の変化の例を説明する図である。
図13】従来技術による制御を行った場合の鋼板温度および変態率の変化の別の例を説明する図である。
図14】従来技術による制御を行った場合の鋼板温度および変態率の変化のさらに別の例を説明する図である。
図15】第一実施形態による制御を行った場合の鋼板温度および変態率の変化の例を説明する図である。
図16】第一実施形態による制御を行った場合の鋼板温度および変態率の変化の別の例を説明する図である。
図17】制御装置として用いられるコンピュータの物理的構成を例示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。最初に高炭素鋼材の熱間圧延について説明する。
【0024】
なお、本明細書においては、炭素含有量が0.3%以上、0.9%以下である鋼材を、高炭素鋼または高炭素鋼材と称している。また、以下では、高炭素鋼または高炭素鋼材を、単に鋼材や鋼板と称する場合がある。
【0025】
熱間圧延された高炭素鋼材は、面心立方格子(γ相)の結晶構造であるが、冷却中に体心立方格子(α相)の結晶構造に変化し(変態、相変態と称する)、その際に変態潜熱が顕著に発生し、体積も増加する。なお、α相の中には、フェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトと呼ばれる金属組織が存在する。
【0026】
図1は、高炭素鋼材の冷却時の温度変化を、他の鋼材の温度変化と比較した例を示す図である。図1の横軸は、経過時間を示し、縦軸は鋼材の温度を示している。図中の実線および一点鎖線によって、約800度に熱せられた鋼材を真空中に置いた場合の、時間の経過に伴う鋼材の温度の変化が示されている。
【0027】
図中の実線は、高炭素鋼材であるSKS5の冷却中の温度変化を示しており、一点鎖線は、冷却中に変態しない鋼材の温度変化を示している。同図の実線で示されるように、鋼材の温度は、約50秒経過後、約70秒経過時までの間はほとんど低下しておらず、約70秒経過後、約80秒経過時までの間はむしろ上昇している。
【0028】
このように、高炭素鋼材は、変態時の発熱(変態発熱)が顕著であるため、鋼材の温度は、冷却中に常に単調に低下するものではなく、一時的に上昇することがある。すなわち、図中の一点鎖線で示される冷却中に変態しない鋼材の温度変化とは異なり、高炭素鋼材は、図中の実線の曲線における矢印で示される部分で、特徴的な温度変化となる。
【0029】
図2図3とを参照して、より詳細に説明する。図2は、熱間圧延鋼板製造装置の製造ラインを模式的に示す図である。図2の例では、高炭素鋼から熱間圧延鋼板を製造する製造ライン20aが、仕上圧延機21a、冷却装置22a、巻取機23aを備えており、鋼材が、紙面左側から右側へと搬送される。すなわち、仕上圧延機21aから送り出される鋼板は、高温に熱せられており、冷却装置22aで冷却されてから巻取機23aによって巻き取られる。なお、冷却装置22aは、鋼板の搬送方向において、複数の区間に分割されており、図2では分割された各区間が矩形によって示されている。
【0030】
図2において、頂点が下向きの三角形(FT、MT、CT)は、鋼板の上面または表面の温度を計測する温度計を示している。また、頂点が上向きの三角形は、鋼板の下面または裏面の温度を計測する温度計を示している。
【0031】
図3は、図2の製造ライン20a上での鋼板の温度、並びに、変態率および発熱量を説明する図である。
【0032】
図3の左上側には、炭素含有量が0.36%の高炭素鋼の鋼板の温度の変化を示すグラフが示されている。このグラフの横軸は時間を示し、縦軸は温度を示している。このグラフにおいては、鋼板の一点が図2の各温度計に対応する位置を通過したときの温度計測値がプロットされている。すなわち、図3の左上側のグラフには、鋼板の表面、裏面及び中心の各点が、各温度計の位置を通過したときの鋼板温度の計算値が、折れ線で示されている。
【0033】
図3の右上側には、炭素含有量が0.06%であり、前述の高炭素鋼と同じ板厚の低炭素鋼の鋼板の温度の変化を示すグラフが示されている。このグラフにおいてもやはり、横軸は時間を示し、縦軸は温度を示しており、鋼板の一点が図2の各温度計に対応する位置を通過したときの温度計測値が示されている。すなわち、図3の右上側のグラフには、鋼板の表面、裏面及び中心の各点が、各温度計の位置を通過したときの鋼板温度の計算値が、折れ線で示されている。
【0034】
図3の左上側および右上側のグラフに示されるように、経過時間0秒において温度計FTに対応する位置を通過する鋼板上の一点は、約4秒経過後に温度計MTに対応する位置を通過し、約16秒経過後に温度計CTに対応する位置を通過する。この期間において鋼板は、冷却装置22a内で冷却されている。なお、高炭素鋼の鋼板は、仕上圧延機の圧延速度が、低炭素鋼の鋼板よりも約6%程度速く設定されるため、温度計FTに対応する位置を通過した後、約15秒経過後に温度計CTに対応する位置を通過する。
【0035】
図3の右上側のグラフに示されるように、低炭素鋼の鋼板の中心温度は、時間の経過にともなってほぼ単調に低下していく。一方、図3の左上側のグラフに示されるように、高炭素鋼の鋼板の中心温度は、約4秒経過後、約12秒経過時までゆるやかに上昇している。
【0036】
図3の左下側には、高炭素鋼の鋼板の変態率の計算値と発熱量の計算値の変化を示すグラフが示されている。このグラフは、横軸が経過時間を示し、縦軸が変態率と発熱量を示している。このグラフに示されるように、高炭素鋼の鋼板の変態率は、鋼板が温度計FTに対応する位置を通過した後約4秒が経過するまでは0%であり、鋼板は変態しない。その後、時間の経過に伴ってほぼ単調に変態が進行し、鋼板が温度計FTに対応する位置を通過した後約14秒が経過したときに変態が終了する(変態率が100%になる)。また、約4秒経過後から約14秒経過時までの間は発熱量が変化するが、それ以外の期間では発熱量はほぼ0である。すなわち、変態が進行している間は、鋼板は発熱するため、図3の左上側のグラフに示されるように、高炭素鋼の鋼板の温度は、一時的に上昇することになる。
【0037】
このように、高炭素鋼材を熱間圧延すると、冷却装置内で冷却中であるにもかかわらず、鋼板の温度が上昇する性質を有する。高炭素鋼材は、このような性質を有しているため、例えば、鋼板をゆっくりと冷却すると、巻取り後に変態が進行して鋼板が発熱し、「コイル潰れ」が発生する。一方で、巻取り前に変態を充分に進行させるため急速な冷却を行うと、低温域まで鋼板が冷却されて延性が低い硬質相(主にベイナイト)が生成されることにより「鋼板割れ」が発生する。
【0038】
図4は、実際の高炭素鋼材の熱間圧延において計測される温度変化の例を説明する図である。この例では、鋼種規格がS70Cであり、炭素含有量が0.67%である高炭素鋼材の冷却状態について説明する。
【0039】
図4の最も上に示されるグラフは、熱間圧延された高炭素鋼板の各位置の仕上出側温度および巻取温度を示している。ここで、仕上出側は、仕上圧延機21aの出口を意味し、仕上出側温度は、仕上圧延機21aの出口における鋼板の温度であって、図2の温度計FTで計測される温度である。巻取温度は、巻取機23aによって巻き取られるときの鋼板の温度であって、図2の温度計CTで計測される温度である。
【0040】
このグラフにおいて、横軸は鋼板先端からの距離によって表される、鋼板の位置を示している。例えば、鋼板の搬送方向を長手方向とした場合、鋼板の長手方向における位置を先端(0m)からの距離(m)によって表している。なお、図4の例では、鋼板の長手方向の全長は、約850mとなる。縦軸は、鋼板の温度を示しており、1目盛りが50℃に対応する。
【0041】
このグラフに示されるように、仕上出側温度は、鋼板の位置による変化が比較的少ない。一方、巻取温度は、鋼板先端からの距離が約350mの位置を境に大きく変化している。すなわち、鋼板先端からの距離が0mから約350mまでの位置と、先端からの距離が約350mを超える位置とでは、巻取温度に約50℃もの差が生じている。
【0042】
図中には、比較のため、変態発熱なし(見掛け比熱)の場合の温度変化を示す曲線も示されている。変態発熱なし(見掛け比熱)の場合の温度変化は、仕上出側温度に基づく計算により得られたものであり、鋼板の変態発熱がないものとして計算された温度である。
【0043】
図4の中央のグラフは、鋼板の各位置における冷却装置の通過に要した時間(冷却装置通過時間)と、鋼板の各位置が冷却装置を通過する際の開放ノズル数(鋼板の各位置が通過した開放ノズルの数を累積した数)を示している。このグラフにおいて、横軸は鋼板先端からの距離を表し、鋼板の位置を示している。縦軸は、冷却装置の通過に要した時間および冷却装置内の開放ノズル数を示している。なお、冷却装置の内部には複数の冷却用のノズルが設けられており、例えば、ノズルから水を吐出して鋼板を冷却する。ノズルは、通常閉止されており、開放されると水を噴射するように構成されている。
【0044】
このグラフに示されるように、鋼板先端からの距離が増加するに従って、冷却装置通過時間が短くなっている。すなわち、鋼板先端からの距離が約0mの位置では、冷却装置通過時間が約12秒であったが、鋼板先端からの距離が約800mの位置では、冷却装置通過時間が約9秒になっている。
【0045】
また、鋼板先端からの距離が約0m~約600mの位置が冷却装置を通過する際の開放ノズル数は、その後徐々に増えて、鋼板先端からの距離が約800mの位置が冷却装置を通過する際には約6割増加している。すなわち、鋼板の冷却装置通過時間の減少に伴って、冷却力を増加させる制御がなされている。
【0046】
図4の最も下に示されるグラフは、鋼板の昇温量の変化を示している。このグラフにおいて、横軸は鋼板先端からの距離を表し、鋼板の位置を示している。縦軸は鋼板の発熱昇温度を表している。このグラフに示されるように、鋼板先端からの距離が0mから約350mまでの位置では、発熱昇温度が約80℃であるが、その後発熱昇温度が徐々に減少し、鋼板先端からの距離が約500mを超える位置では、発熱昇温度が約0℃になっている。
【0047】
図5は、図4に示される各グラフに係る鋼板の各位置における温度および変態率の変化を、変態開始時刻および変態終了時刻とともに説明する図である。なお、図5における変態開始時刻および変態終了時刻は、TTT線図を参照して求めるものとする。
【0048】
図5の最も上に示されるグラフは、横軸が経過時間を表し、縦軸が鋼板の温度と変態率を表し、鋼板先端からの距離が約200mの位置の温度の変態率の変化を示している。このグラフに示されるように、当該位置の温度が変態開始温度に到達するのは約4秒経過時であり、変態終了温度になるのは約11秒経過時である。変態率は、約8秒経過時から急上昇し、巻取温度計測時の変態率は約60%である。
【0049】
図5の中央に示されるグラフは、横軸が経過時間を表し、縦軸が鋼板の温度と変態率を表し、鋼板先端からの距離が約400mの位置の温度の変態率の変化を示している。このグラフに示されるように、当該位置の温度が変態開始温度に到達するのは約5秒経過時であり、変態終了温度になるのは約9秒経過時である。変態率は、約8秒経過時から上昇しているが、巻取温度計測時の変態率は約10%である。
【0050】
図5の最も下に示されるグラフは、横軸が経過時間を表し、縦軸が鋼板の温度と変態率を表し、鋼板先端からの距離が約750mの位置の温度の変態率の変化を示している。このグラフに示されるように、当該位置の温度が変態開始温度に到達するのは約6秒経過時であり、変態終了温度になるのは約8秒経過時である。変態率は、巻取温度計測時までほぼ0%である。
【0051】
図5の各グラフから分かる通り、鋼板先端からの距離が長くなるほど、巻取時の変態率が低い。これは、鋼板先端からの距離が長くなるほど、鋼板の搬送速度が高くなるので、冷却装置内で鋼板が冷却される時間が短くなり、冷却装置内で鋼板の変態の進行が充分に進まないためと考えられる。
【0052】
このような高炭素鋼材の熱間圧延においては、従来のように、巻取り時の鋼板温度を目標温度とするように冷却装置を操作するだけでは、製造された鋼板の品質を高く維持することはできない。高炭素鋼材の熱間圧延では、一例として、冷却中の鋼板の最低温度が550℃以上であり巻取時の変態率が70%以上となるように、仕上圧延後の鋼板の冷却を行う必要がある。
【0053】
従来行われていた冷却装置の制御では、例えば、巻取温度の目標値を設定し、目標値に近づけるように冷却の設定を選択することが考えられる。例えば、冷却水量を選択することにより、3種類(弱冷却/中冷却/強冷却)の設定の中から選択することができる。
【0054】
図6は、鋼板の所定位置における温度および変態率の変化を説明する図である。
【0055】
図6の上側に示されるグラフは、横軸が経過時間を表し、縦軸が鋼板温度を表し、冷却装置内での鋼板温度の変化を示している。すなわち、仕上出側温度が約830℃の鋼板を、巻取温度が620℃になるように冷却する場合であって、弱冷却、中冷却および強冷却の設定によってそれぞれ冷却したときの温度の変化が示されている。このグラフから分かる通り、強冷却の設定によって鋼板を冷却すると、約4秒経過後から約7秒経過時までの間鋼板温度が550℃を下回ることになる。このような冷却を行うと、「鋼板割れ」が発生し得る。
【0056】
図6の下側に示されるグラフは、横軸が経過時間を表し、縦軸が変態率を表し、冷却装置内での鋼板の変態率の変化を示している。すなわち、弱冷却、中冷却および強冷却の設定によって冷却したときの変態率の変化が示されている。ここで、強冷却は、冷却装置内のノズルを最大60%開放して鋼板を冷却するものであり、中冷却は、冷却装置内のノズルを最大23%開放して鋼板を冷却するものである。弱冷却は、冷却装置内のノズルを最大10%開放して、鋼板を冷却するものである。
【0057】
このグラフから分かる通り、中冷却または弱冷却の設定によって鋼板を冷却すると、巻取時の変態率が70%を下回ることになる。このような冷却を行うと、「コイル潰れ」が発生し得る。
【0058】
このように、巻取温度の目標値を設定して冷却の制御を行う従来の方式では、冷却中の鋼板温度と巻取時の変態率とを適切に維持することができない。
【0059】
<第一実施形態>
(熱間圧延鋼板製造装置の構成)
図7は、第一実施形態に係る熱間圧延鋼板製造装置の例を示す図である。同図に示される熱間圧延鋼板製造装置1は、製造ライン20を有しており、製造ライン20の冷却装置22を制御する制御装置51を備えている。
【0060】
製造ライン20において、鋼材が熱間圧延されてコイル状に巻き取られる。図7の例では、製造ライン20は、仕上圧延機21、冷却装置22、巻取機23を備えており、鋼材は、紙面左側から右側へと、圧延及び冷却をされながら搬送される。
【0061】
仕上圧延機21は、高炭素鋼を熱間圧延し前記熱間圧延鋼板とする圧延機である。より具体的には、仕上圧延機21は、上下に対となるローラが配置されて構成され、図示しない加熱炉で加熱され、図示しない複数の粗圧延機で圧延された鋼板について、ローラにより圧延を行い、圧延された鋼板を搬送テーブル上に送り出す(搬出する)。仕上圧延機21から搬出された鋼板は、搬送テーブル上を図中左から右に向かって搬送され、巻取機23によって巻き取られる。仕上圧延機21と巻取機23との間には、冷却装置22が設けられている。冷却装置22は、搬送テーブル上を搬送される鋼板を冷却する。図7において、冷却装置22の左端部を入口と称し、右端部を出口と称することにする。冷却装置22は、例えば、鋼板の搬送方向の長さが100mある。
【0062】
冷却装置22は、仕上圧延機21から搬出される熱間圧延鋼板を冷却する装置である。より具体的には、冷却装置22は、内部(上下の冷却装置の間)を鋼板が通過できるように構成されており、内部に複数の冷却用のノズルが設けられ、ノズルのうちの所定の数(後述する制御装置で数を変更することが可能)のノズルを開放することで、開放したノズルから水を吐出することができるように構成されている。そして、冷却装置22は、鋼板が内部を通過している間に、開放するノズルの数を適宜変えながら、開放したノズルから水を吐出して鋼板を冷却する。ノズルは、通常閉止されており、開放されると水を噴射するように構成されている。例えば、制御装置51から出力される信号によって、ノズルの開閉の操作が行われる。
【0063】
開放されるノズルの数が多いほど、冷却装置22内での鋼板に対する吐水量が多くなるので、冷却力が強くなる。その反対に、開放されるノズルの数が少ないほど、冷却装置22内での鋼板に対する吐水量が少なくなるので、冷却力が弱くなる。詳細は後述するが、制御装置51は、冷却中の鋼板の最低温度が閾値(温度閾値)以上であり、巻取時の変態率が閾値(変態率閾値)以上となるように、冷却装置の冷却力を制御する。
【0064】
なお、冷却装置22は、鋼板の搬送方向に沿って複数の区間に分割されており、各区間はゾーンと称される。例えば、図7の左側からゾーン1、ゾーン2、ゾーン3、・・・ゾーンnに分割され、仕上圧延機21から搬出された鋼板は、最初に冷却装置22のゾーン1を通過し、その後ゾーン1,2,3,・・・を通過して、ゾーンnを通過した後、巻取機23に到達する。すなわち、ゾーン1は、冷却装置22の入口に配置され、ゾーンnは冷却装置の出口に配置される。
【0065】
また、冷却装置22には、制御装置51が接続されている。
【0066】
制御装置51は、冷却装置22を操作する機能を持った機能部である。制御装置51には、熱間圧延鋼板製造装置1によって製造される熱間圧延鋼板の特性などを表す情報として鋼板情報が入力される。鋼板情報は、例えば、鋼板の密度、板厚などを示す情報である。なお、制御装置51の詳細については後述する。
【0067】
巻取機23は、冷却装置22から搬出される熱間圧延鋼板を巻き取る装置である。具体的には、巻取機23は、所定の板厚に薄く引き伸ばされた鋼板を、コイル状に巻き取る。そして、コイル状に巻かれた鋼板を、コイルの状態のまま取り外し、出荷できるようになっている。
【0068】
仕上圧延機21と冷却装置22との間には、搬送速度計31が設けられている。搬送速度計31は、搬送テーブル上を移動する鋼板の速度を計測し、計測した速度を示す情報を制御装置51に供給する。
【0069】
また、仕上圧延機21と冷却装置22との間には、仕上出側温度計32が設けられている。仕上出側温度計32は、自身が取り付けられた位置における鋼板の温度を計測し、計測した温度を示す情報を制御装置51に供給する。
【0070】
さらに、冷却装置22と巻取機23との間には、巻取温度計33が設けられている。巻取温度計33は、自身が取り付けられた位置における鋼板の温度を計測する。巻取温度計33は、計測した温度を示す情報を制御装置51に供給してもよいし、他の装置などに供給してもよい。
【0071】
なお、図7に示される熱間圧延鋼板製造装置1は、主に、高炭素鋼の熱間圧延鋼板を製造するものであるが、熱間圧延鋼板製造装置1によって製造される熱間圧延鋼板は、これに限られるものではない。
【0072】
(制御装置の構成)
図8は、図7の制御装置51の機能的構成例を示すブロック図である。この例では、制御装置51は、熱間圧延鋼板の所定位置における温度および変態率を算出する算出部61を備えている。
【0073】
なお、算出部61は、仕上圧延機21と冷却装置22の入口との間に設置された仕上出側温度計32によって測定された温度に基づいて、熱間圧延鋼板の所定位置における温度と熱間圧延鋼板の当該所定位置における変態率を算出する。また、算出部61は、複数のゾーンの各ゾーンの出口における熱間圧延鋼板の温度と変態率とを算出する。
【0074】
温度比較部62は、算出された熱間圧延鋼板の所定位置における温度と、予め設定された閾値である温度閾値とを比較する。
【0075】
変態率比較部63は、算出された熱間圧延鋼板の所定位置における変態率と、予め設定された閾値である変態率閾値とを比較する。
【0076】
操作部64は、温度比較部62による比較結果と変態率比較部63による比較結果を参照して、冷却装置22が有し熱間圧延鋼板に水を吐出する複数のノズルの開閉を操作する。操作部64は、例えば、ノズルの開閉などを指令する制御信号を出力することにより、複数のノズルの開閉を操作する。
【0077】
(算出部の構成および機能)
算出部61は、温度算出部81、変態率・発熱量算出部82およびTTT線図テーブル83を有している。
【0078】
温度算出部81は、区間の入り口における熱間圧延鋼板の温度に基づいて、区間の温度降下量を演算し、温度降下量と、区間の入口における熱間圧延鋼板の変態に起因する変態発熱量とに基づいて、区間の出口における熱間圧延鋼板の温度を算出する。温度算出部81が温度下降量を算出する際に用いるモデルを式(1)、式(2)および式(3)に示す。
【0079】
【数1】
・・・(1)
【0080】
【数2】
・・・(2)
【0081】
【数3】
・・・(3)
ここで、iは、対象ゾーンを示す添え字を表し、
Δθ(i)は温度降下量(℃)であり,
θ(i)はゾーン入側温度(℃)であり、
θは水温(℃)であり、
θは気温(℃)であり、
Δt(i)はゾーン通過時間(hr)であり、
α(i)は上熱伝達率(kcal/m/hr/℃)であり、
αL(i)は上熱伝達率および下熱伝達率(kcal/m/hr/℃)であり、
(i)はゾーン比熱(kcal/kg/℃)であり、
ρは密度(kg/m3)であり、
hは板厚(m)であり、
εは輻射率(-)であり、
σはステファンボルツマン定数であり,
θは273.15℃であり、
αは対流熱伝達率(kcal/m2/hr/℃)であり、
(i)はゾーン入側変態発熱量(kcal/m/hr)であり、
Wはゾーン水量密度(m/m/min)であり、
,a,a,およびaは定数である。
【0082】
なお、水温は、ノズルから吐出される水の水温であり、気温は、熱間圧延鋼板製造装置1が設置されている場所の気温であり、それぞれ冷却装置内の図示せぬ温度計により計測されて制御装置51に供給されるものとする。また、ゾーン通過時間は、搬送速度系により測定される搬送速度に基づいて特定されるものとする。
【0083】
例えば、iが1である場合、すなわち、仕上圧延機21から搬出された鋼板が最初に通過するゾーン1の温度下降量を計算する際には、ゾーン入側温度は仕上出側温度計32で計測された温度により擬制され、ゾーン入側変態発熱量の初期値が0として与えられる。このように、熱間圧延鋼板が最初に通過する区間においては、ゾーンの入口における熱間圧延鋼板の変態発熱量が初期値として与えられる。
【0084】
なお、搬送される鋼板があるゾーンを通過する場合、当該ゾーンに入るときの位置を「ゾーン入側」と称し、当該ゾーンから出るときの位置を「ゾーン出側」と称している。すなわち、「ゾーン入側」は、各ゾーン(または区間)の入口であって、各ゾーンの鋼板の搬送方向における端部であって、図7における左側の端部を意味する。「ゾーン出側」は、各ゾーン(または区間)の出口であって、各ゾーンの鋼板の搬送方向における端部であって、図7における右側の端部を意味する。
【0085】
そして、式(1)で算出された温度降下量を、ゾーン1のゾーン入側温度から差し引くことにより、ゾーン1のゾーン出側温度が求められる。ゾーン1のゾーン出側温度は、ゾーン2のゾーン入側温度として擬制される。例えば、冷却装置22にn個のゾーンがある場合、温度算出部81は、このようにして、ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3、・・・ゾーンnのそれぞれのゾーン出側温度を算出する。
【0086】
変態率・発熱量算出部82は、TTT線図を参照し、区間の入口における熱間圧延鋼板の温度と変態率とに基づいて、区間の出口における熱間圧延鋼板の変態率と、区間の出口における熱間圧延鋼板の変態に起因する変態発熱量を算出する。変態率・発熱量算出部82が変態率および変態発熱量を算出する際に用いるモデルを式(4)乃至式(10)に示す。
【0087】
【数4】
・・・(4)
【0088】
【数5】
・・・(5)
【0089】
【数6】
・・・(6)
【0090】
【数7】
・・・(7)
【0091】
【数8】
・・・(8)
【0092】
【数9】
・・・(9)
【0093】
【数10】
・・・(10)
ここで、iは、対象ゾーンを示す添え字を表し、
θ(i)はゾーン入側温度(℃)であり、
(i)はθ(i)での変態開始時間(s)であり、
(i)はθ(i)での変態終了時間(s)であり、
ξは変態開始時の変態率であり、
ξは変態終了時の変態率であり、
ξ(i)はゾーン入側変態率であり、
ξ(i+1)はゾーン出側変態率であり、
t(i)はξ(i)に一致する変態速度式から算出される経過時間(s)であり、
Δt(i)はゾーン通過時間(s)であり、
(i+1)はゾーン出側変態発熱量(kcal/m/hr)であり、
αは変態潜熱(kcal/kg)である。
【0094】
ここでは、変態開始時の変態率は0.01であり、変態終了時の変態率は0.99であるものとする。
【0095】
例えば、iが1である場合、すなわち、仕上圧延機21から搬出された鋼板が最初に通過するゾーン1のゾーン出側変態率およびゾーン出側変態発熱量を計算する際には、ゾーン入側温度は仕上出側温度計32で計測された温度により擬制され、ゾーン入側変態率の初期値が0として与えられる。そして式(9)で算出されたゾーン1のゾーン出側変態率は、ゾーン2のゾーン入側変態率として擬制される。このように、熱間圧延鋼板が最初に通過する区間においては、区間の入口における熱間圧延鋼板の変態率が初期値として与えられる。また、式(10)で算出されたゾーン1のゾーン出側変態発熱量は、ゾーン2のゾーン入側変態発熱量として擬制されて式(1)の演算に用いられる。
【0096】
また、変態開始時間および変態終了時間は、TTT線図(等温変態線図とも称される)を参照して求められる。高炭素鋼材の熱間圧延鋼板を冷却する際には、高炭素鋼材の変態に係るTTT線図が用いられ、算出部61のTTT線図テーブル83に記憶されている。
【0097】
図9は、TTT線図の例を示す図である。同図の横軸は時間を表し、縦軸は温度を表し、鋼板を冷却したときに維持した温度において変態が開始するまでの時間および変態が終了するまでの時間が2つの曲線によって示されている。例えば、TTT線図の2つの曲線上をプロットした座標によって構成されるテーブルが、図8に示されるように、TTT線図テーブル83として算出部61に記憶されている。
【0098】
なお、例えば、文献等に掲載されているTTT曲線図によって等温変態挙動が把握される鋼材の組成と、冷却される高炭素鋼材の熱間圧延鋼板の組成とが異なる場合もあり得る。このような場合、冷却される高炭素鋼材の熱間圧延鋼板の等温変態挙動を把握できるように、文献等に掲載されているTTT曲線図を変形するようにしてもよい。例えば、特許文献1に開示されているように、冷却される熱間圧延鋼板の組成などに応じて予めTTT線図を変形させておくようにしてもよい。
【0099】
変態率・発熱量算出部82は、このようにして、ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3、・・・ゾーンnのそれぞれのゾーン出側変態率およびゾーン出側変態発熱量を算出する。
【0100】
上述したように温度算出部81が各ゾーンのゾーン出側温度を算出することによって冷却装置22の内部の任意のゾーン(入側であっても出側であってもよい)の温度を求めることができる。また、変態率・発熱量算出部82が各ゾーンのゾーン出側変態率を算出することによって、冷却装置内を移動する鋼板が最後に通過するゾーン(例えば、ゾーンn)のゾーン出側変態率も求めることができる。ゾーンnの出口は、冷却装置22の出口であり、ゾーンnのゾーン出側変態率は、熱間圧延鋼板が巻取機23によって巻き取られるときの変態率(巻取時の変態率)として擬制することができる。
【0101】
(温度比較部および温度比較部の機能)
温度算出部81により算出された各ゾーンの温度は、温度比較部62に供給される。温度比較部62は、各ゾーンの温度を、閾値として予め設定された下限温度と比較する。ここで下限温度は、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持するための適切な値であり、一例として550℃が閾値として設定される。
【0102】
また、変態率・発熱量算出部82により算出されたゾーンnのゾーン出側変態率は、変態率比較部63に供給される。変態率比較部63は、ゾーンnのゾーン出側変態率を閾値として予め設定された目標変態率と比較する。ここで、目標変態率は、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持するための適切な値であり、一例として70%が閾値として設定される。
【0103】
すなわち、温度比較部62は、冷却装置22内の複数の位置における熱間圧延鋼板の温度と温度閾値とを比較し、変態率比較部63は、冷却装置22の出口における熱間圧延鋼板の変態率と変態率閾値とを比較する。
【0104】
温度比較部62は、温度算出部81により算出された各ゾーンの温度のいずれかが下限温度を下回っているか否かを示す比較結果を出力し、操作部64に供給する。変態率比較部63は、変態率・発熱量算出部82により算出されたゾーンnのゾーン出側変態率(すなわち、巻取時の変態率)が目標変態率以上であるか否かを示す比較結果を出力し、操作部64に供給する。
【0105】
(操作部の機能)
操作部64は、冷却装置22内の複数のノズルを開放または閉止する操作を行う。操作部64は、一例としてノズルの開閉などを指令する制御信号を出力することにより、複数のノズルの開閉を操作する。操作部64は、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持できるように、温度比較部62の比較結果および変態率比較部63の比較結果に基づいてノズルの操作を行う。
【0106】
このような操作の一例として、操作部64は、ノズルを1つ開放し、温度比較部62の比較結果および変態率比較部63の比較結果を参照する。なお、初期状態において、ノズルは全て閉止されているものとする。そして、操作部64は、比較結果を参照した結果、各ゾーンの温度のいずれかが下限温度を下回っている場合、または、巻取時の変態率が目標変態率以上である場合、それ以上のノズルを開放しないようにする。
【0107】
一方、各ゾーンの温度のいずれも下限温度を下回っていない場合、または、巻取時の変態率が目標変態率以上ではない場合、操作部64は、ノズルをさらに1つ開放して温度比較部62の比較結果および変態率比較部63の比較結果を参照する。そして、操作部64は、比較結果を参照した結果、各ゾーンの温度のいずれかが下限温度を下回っている場合、または、巻取時の変態率が目標変態率以上である場合、それ以上のノズルを開放しないようにする。
【0108】
このような処理を繰り返すことにより、操作部64は、冷却装置22のノズルを1つずつ開放していく。なお、ノズルが開放される都度、上述した温度算出部81に各ゾーンの温度の算出、変態率・発熱量算出部82による巻取時の変態率の算出が行われることになる。そして、比較結果を参照してさらにノズルを開放するか否かが判断されることになる。下限温度または目標変態率を下回らない限り、全てのノズルが開放されるまで、冷却装置22のノズルが1つずつ開放されていく。
【0109】
すなわち、操作部64は、複数のノズルを、順番に開放する処理を実行し、算出部61は、ノズルが開放される都度、熱間圧延鋼板の所定位置における温度および変態率を算出する。
【0110】
操作部64は、このようにノズルを1つずつ開放していく処理を、例えば、所定の時間間隔で繰り返し実行する。このように操作部64がノズルを操作して、冷却装置22の冷却力を制御することによって、制御装置51は、冷却中の鋼板の最低温度が閾値以上であり巻取時の変態率が閾値以上となるように、冷却装置の冷却力を制御することができる。
【0111】
(冷却装置制御処理)
次に、図10のフローチャートを参照して、制御装置51による冷却装置制御処理の流れの例を説明する。この処理は、仕上圧延機21から送り出された熱間圧延鋼板が、冷却装置22内を搬送されるときに実行される。
【0112】
ステップS101において、算出部61は、図11のフローチャートを参照して後述するゾーン別温度・変態率計算処理を実行する。これにより、冷却装置22の各ゾーンの温度およびゾーン出側変態率が算出される。
【0113】
ステップS102において、温度比較部62は、各ゾーンの温度(ここでは、各ゾーンのゾーン出側温度)を下限温度と比較し、比較結果を操作部64に供給する。そして、操作部64は、温度比較部62の比較結果を参照して各ゾーンの温度のいずれかが下限温度を下回っているか否か、すなわち温度閾値未満であるか否かを判定する。
【0114】
ステップS102において、各ゾーンの温度のいずれも下限温度を下回っていない(温度閾値以上である)と判定された場合、ステップS103の処理が実行される。
【0115】
ステップS103において、変態率比較部63は、巻取時の変態率を目標変態率と比較し、比較結果を操作部64に供給する。そして、操作部64は、変態率比較部63の比較結果を参照して巻取時の変態率が目標変態率以上であるか否か、すなわち変態率閾値以上であるか否かを判定する。
【0116】
ステップS103において、巻取時の変態率が目標変態率以上ではない(変態率閾値未満である)と判定された場合、ステップS104の処理が実行される。
【0117】
ステップS104において、操作部64は、開放済のノズル数がMAX(最大値)であるか否か、すなわち、全てのノズルを開放したか否かを判定する。ステップS104において、開放済のノズル数がMAXではないと判定された場合、ステップS105の処理が実行される。
【0118】
ステップS105において、操作部64は、ノズルを1つ開放する。このとき、冷却装置22内の複数のノズルのうちの1つが開放され、開放されたノズルによって熱間圧延鋼板に吐水される。その後、ステップ101の処理に戻り、それ以降の処理が繰り返し実行される。
【0119】
一方、ステップS102において、各ゾーンの温度のいずれかが下限温度を下回っている(温度閾値未満である)と判定された場合、ステップS106の処理が実行される。また、ステップS103において、巻取時の変態率が目標変態率以上である(変態率閾値以上である)と判定された場合、ステップS106の処理が実行される。これらの場合、これ以上ノズルが開放されることはない。
【0120】
このように、操作部64は、温度比較部62の比較結果である第1比較結果が、温度閾値未満を示すものであるか、または、変態率比較部63の比較結果である第2比較結果が、変態率閾値以上を示すものである場合、ノズルを順番に開放する処理を停止する。この際、操作部64は、温度比較部62の比較結果である第1比較結果が、温度閾値未満を示すものであるかを参照した後、変態率比較部63の比較結果である第2比較結果が、変態率閾値以上を示すものであるかを参照する。すなわち、第1比較結果が第2比較結果に優先して参照される。従って、各ゾーンの温度のいずれかが下限温度を下回っていれば、巻取時の変態率に係らず、ノズルを順番に開放する処理が停止される。
【0121】
また、ステップS104において、開放済のノズル数がMAXであると判定された場合、やはりステップS106の処理が実行される。
【0122】
ステップS106において、操作部64は、この時点で開放済のノズル数である開放ノズル数の情報を出力する。出力された情報は、例えば、制御装置51の図示せぬディスプレイに表示されるようにしてもよいし、他の装置に供給され、冷却装置22の動作に関する解析などに用いられるようにしてもよい。
【0123】
ステップS106の処理の後、冷却装置制御処理は終了する。このようにして冷却装置制御処理が実行される。なお、ここでは、ステップS106において、ノズルが1つ開放されることとしたが、複数のノズルが開放されるようにしてもよい。すなわち、操作部64がノズルを2つずつ、3つずつ、・・・開放していくようにしてもよい。
【0124】
次に、図11のフローチャートを参照して、図10のステップS101のゾーン別温度・変態率計算処理の流れの例を説明する。
【0125】
ステップS121において、算出部61は、変数iの値を初期値(ここでは、1)に設定する。
【0126】
ステップS122において、温度算出部81は、ゾーンiの温度降下量を算出する。このとき、上述した式(1)により、ゾーンiの温度降下量が算出される。
【0127】
ステップS123において、温度算出部81は、ゾーンiのゾーン出側温度を算出する。このとき、ゾーンiのゾーン入側温度から、ステップS122で算出したゾーンiの温度降下量を減じることにより、ゾーンiのゾーン出側温度が算出される。なお、ここで算出されたゾーンiのゾーン出側温度は、この後、ゾーンi+1のゾーン入側温度としても用いられる。
【0128】
ステップS124において、変態率・発熱量算出部82は、ゾーンiのゾーン出側変態率を算出する。このとき、上述した式(9)により、ゾーンiのゾーン出側変態率が算出される。なお、ここで算出されたゾーンiのゾーン出側変態率は、この後、ゾーンi+1のゾーン入側変態率としても用いられる。
【0129】
ステップS125において、変態率・発熱量算出部82は、ゾーンiのゾーン出側変態発熱量を算出する。このとき、上述した式(10)によりゾーンiのゾーン出側変態発熱量が算出される。なお、ここで算出されたゾーンiのゾーン出側変態発熱量は、この後、ゾーンi+1のゾーン入側変態発熱量としても用いられる。
【0130】
ステップS126において、変数iがMAX(最大値)であるか否か、すなわち、全てのゾーンについてステップS122乃至ステップS125の処理が実行されたか否かが判定される。例えば、冷却装置22の内部が10のゾーンに区分されている場合、iの値が10であるとき、ステップS126において、変数iの値がMAX(最大値)であると判定される。
【0131】
ステップS126において、変数iの値がMAXではないと判定された場合、ステップS127の処理が実行される。ステップS127において、変数iの値が1だけインクリメントされる。その後、ステップS122以降の処理が繰り返し実行されることになる。
【0132】
ステップS126において、変数iの値がMAXであると判定された場合、ゾーン別温度・変態率計算処理は終了する。これにより、全てゾーンにおけるゾーン出側温度、ゾーン出側変態率およびゾーン出側変態発熱量が算出されることになる。このようにして、ゾーン別温度・変態率計算処理が実行される。
【0133】
なお、ここでは、全てのゾーンにおけるゾーン出側温度が算出されることとしたが、例えば、冷却装置22の内部で温度計が設置されているゾーンについては、温度計によって計測された温度が用いられるようにしてもよい。
【0134】
図10を参照して上述した冷却装置制御処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。この所定の時間間隔は任意であるが、例えば、制御装置51が、冷却装置制御処理を1回実行するのに要する時間が0.2秒である場合、冷却装置制御処理は、0.5秒間隔で繰り返し実行される。
【0135】
(第1実施形態の効果)
このように、本実施形態によれば、仕上圧延機21から搬送される熱間圧延鋼板を冷却する際に鋼板温度が下限温度を下回ることなく、かつ、巻取時の変態率が目標変態率以上となるように、冷却装置の冷却強度が操作される。従って、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持できるように、冷却装置の冷却力を制御することができる。
【0136】
すなわち、本実施形態によれば、冷却強度の設定の試行錯誤などを行うことなく、熱間圧延鋼板の「コイル潰れ」および「鋼板割れ」を回避するのに適した冷却を行うことが可能となる。よって、本実施形態によれば、熱間圧延される高炭素鋼材の冷却工程の制御を、より簡単かつ適切に行うことができる。
【0137】
さらに、冷却装置制御処理においては、温度比較部62の比較結果である第1比較結果が、変態率比較部63の比較結果である第2比較結果に優先して参照されるので、より重大な品質不良である「鋼板割れ」を確実に回避することができる。
<比較例を用いた効果の説明>
次に、熱間圧延される高炭素鋼材の冷却工程の制御について、上述した実施形態による制御と従来技術による制御とを比較して説明する。
【0138】
図12図13および図14は、従来技術による制御を行った場合の鋼板温度および変態率の変化を説明する図である。なお、図12図13および図14の例において、熱間圧延される高炭素鋼材は、鋼種規格がS70Cであり、板厚が1.893mmであり、炭素含有量が0.67%である。
【0139】
従来技術では、熱間圧延鋼板の巻取温度が目標値と一致するように冷却装置の制御が行われる。このような制御は、例えば、図10を参照して上述した処理において、ステップS102で巻取温度が目標温度と比較され、ステップS103は常にスキップされるようにすればよい。なお、冷却装置内を移動する鋼板が最後に通過するゾーン(例えば、ゾーンn)の出口は、冷却装置22の出口であり、ゾーンnのゾーン出側温度は、熱間圧延鋼板が巻取機23によって巻き取られるときの温度(巻取温度)として擬制することができる。
【0140】
なお、図12図13および図14においては、従来技術による制御が行われるので、巻取時の目標変態率が設定されていない。
【0141】
図12図13および図14には、それぞれ3つのグラフが示されている。
【0142】
これら3つのグラフのうち、最も上側のグラフにおいて、横軸は鋼板先端からの距離(鋼板の位置)を表し、縦軸は鋼板の温度を表し、仕上出側温度、巻取温度および最低温度の変化が、それぞれ曲線(または折れ線)によって示されている。仕上出側温度は、仕上出側温度計32で計測された温度であり、巻取温度は、温度算出部81により算出されたゾーンnのゾーン出側温度であり、最低温度は、温度算出部81により算出された各ゾーンのゾーン出側温度のうち最も低い温度である。
【0143】
3つのグラフのうち、中央のグラフにおいて、横軸は鋼板先端からの距離(鋼板の位置)を表し、縦軸は冷却装置の通過時間および開放ノズル数を表し、冷却装置の通過時間および開放ノズル数の変化が、それぞれ曲線(または折れ線)によって示されている。
【0144】
3つのグラフのうち、最も下側のグラフにおいて、横軸は鋼板先端からの距離(鋼板の位置)を表し、鋼板の変態率を表し、鋼板の巻取時の変態率の変化が曲線(または折れ線)によって示されている。
【0145】
図12は、巻取温度の目標温度を630℃に設定した場合の例を示している。図12の最も下側のグラフから分かる通り、巻取時の変態率は、鋼板全体に渡って90%を超えている。巻取時の変態率が70%以上であれば、「コイル潰れ」は発生しないと考えられるので巻取時の変態率については、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持するにあたり適切と考えられる。
【0146】
一方、図12の最も上側のグラフから分かる通り、鋼板全体に渡って最低温度が550℃を下回っており、鋼板先端からの距離が約700mの位置では、514℃まで下がっている。冷却中の鋼板の温度が550℃を下回ると、「鋼板割れ」が発生するおそれがあると考えられるので最低温度については、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持するにあたり不適切と考えられる。
【0147】
図13は、巻取温度の目標温度を640℃に設定した場合の例を示している。図13の最も下側のグラフから分かる通り、巻取時の変態率は、鋼板の後端(鋼板先端からの距離が約850mの位置)を除き、全体に渡って70%を超えている。巻取時の変態率が70%以上であれば、「コイル潰れ」は発生しないと考えられるので巻取時の変態率については、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持するにあたり適切と考えられる。
【0148】
一方、図13の最も上側のグラフから分かる通り、鋼板先端からの距離が約400mから約700mまでの位置で最低温度が550℃を下回っており、鋼板先端からの距離が約600mの位置では、539℃まで下がっている。冷却中の鋼板の温度が550℃を下回ると、「鋼板割れ」が発生するおそれがあると考えられるので最低温度については、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持するにあたり不適切と考えられる。
【0149】
図14は、巻取温度の目標温度を650℃に設定した場合の例を示している。図14の最も上側のグラフから分かる通り、鋼板全体に渡って最低温度が550℃を超えている。冷却中の鋼板の温度を550℃以上に保てば、「鋼板割れ」が発生するおそれはないと考えられるので最低温度については、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持するにあたり適切と考えられる。
【0150】
一方、図14の最も下側のグラフから分かる通り、巻取時の変態率は、鋼板先端からの距離が約550mの位置で急激に下降しており、鋼板先端からの距離が約600m以上の位置では、ほぼ0%となっている。巻取時の変態率が70%以上でないと、「コイル潰れ」が発生すると考えられるので巻取時の変態率については、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持するにあたり不適切と考えられる。
【0151】
図12図13および図14を参照して上述した通り、従来行われていたように、巻取温度を目標温度に近づけるように冷却装置を操作しても、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持することはできないことが分かる。
【0152】
図15および図16は、図7図11を参照して上述した実施形態による制御を行った場合の鋼板温度および変態率の変化を説明する図である。なお、図15および図16の例において、熱間圧延される高炭素鋼材は、鋼種規格がS70Cであり、板厚が1.893mmであり、炭素含有量が0.67%である。すなわち、図12図13および図14の場合と同じ高炭素鋼材が用いられる。また、図15および図16においては、図12図13および図14の場合と同じ熱間圧延鋼板製造装置を用いて熱間圧延鋼板を製造する。
【0153】
なお、図15および図16においては、巻取時の目標変態率が設定されており、図12図13および図14の場合とは冷却工程の制御の方式が異なっている。
【0154】
図15および図16には、それぞれ3つのグラフが示されている。
【0155】
これら3つのグラフのうち、最も上側のグラフにおいて、横軸は鋼板先端からの距離(すなわち、鋼板の位置)を表し、縦軸は鋼板の温度を表し、仕上出側温度、巻取温度および最低温度の変化が、それぞれ曲線(または折れ線)によって示されている。仕上出側温度は、仕上出側温度計32で計測された温度であり、巻取温度は、温度算出部81により算出されたゾーンnのゾーン出側温度であり、最低温度は、温度算出部81により算出された各ゾーンのゾーン出側温度のうち最も低い温度である。
【0156】
3つのグラフのうち、中央のグラフにおいて、横軸は鋼板先端からの距離(すなわち、鋼板の位置)を表し、縦軸は冷却装置の通過時間および開放ノズル数を表し、冷却装置の通過時間および開放ノズル数の変化が、それぞれ曲線(または折れ線)によって示されている。
【0157】
3つのグラフのうち、最も下側のグラフにおいて、横軸は鋼板先端からの距離(すなわち、鋼板の位置)を表し、鋼板の変態率を表し、鋼板の巻取時の変態率の変化が曲線(または折れ線)によって示されている。
【0158】
図15は、下限温度を550℃に設定し、巻取時の目標変態率を70%に設定した場合の例を示している。図15の最も上側のグラフから分かる通り、鋼板全体に渡って最低温度が550℃を超えており、温度が最も低くなる位置(鋼板先端からの距離が約850mの位置)でも562℃となっている。冷却中の鋼板の温度が550℃を超えていれば、「鋼板割れ」が発生するおそれはないと考えられるので最低温度については、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持するにあたり適切と考えられる。
【0159】
また、図15の最も下側のグラフから分かる通り、巻取時の変態率は、鋼板全体に渡って70%を超えている。巻取時の変態率が70%以上であれば、「コイル潰れ」は発生しないと考えられるので巻取時の変態率については、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持するにあたり適切と考えられる。
【0160】
図16は、下限温度を550℃に設定し、巻取時の目標変態率を90%に設定した場合の例を示している。図16の最も上側のグラフから分かる通り、鋼板全体に渡って最低温度が550℃以上であり、温度が最も低くなる位置(鋼板先端からの距離が約850mの位置)でも550℃となっている。冷却中の鋼板の温度を550℃以上に保てば、「鋼板割れ」が発生するおそれはないと考えられるので最低温度については、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持するにあたり適切と考えられる。
【0161】
一方、図16の最も下側のグラフから分かる通り、鋼板先端からの距離が0mから約650mまでの位置では巻取時の変態率が90%以上であるが、鋼板先端からの距離が約650mから約850mまでの位置では巻取時の変態率が90%を下回っている。これは、鋼板の後端付近で鋼板温度が下限温度に近づいたため、冷却力を抑制する制御を行ったためと考えられる。
【0162】
しかし、巻取時の変態率は、鋼板全体に渡って70%を超えている。巻取時の変態率が70%以上であれば、「コイル潰れ」は発生しないと考えられるので巻取時の変態率については、やはり製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持するにあたり適切と考えられる。
【0163】
このように、図7図11を参照して上述した実施形態による制御を行うことで、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持することができる。しかも、冷却装置の設定を変えて試行錯誤などすることなく、製造される熱間圧延鋼板の品質を高く維持するにあたり適切な制御を行うことができる。
【0164】
<ソフトウェアによる実現例>
制御装置51の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0165】
図17は、制御装置51として用いられるコンピュータの物理的構成を例示したブロック図である。制御装置51は、図17に示すように、バス510と、プロセッサ501と、主メモリ502と、補助メモリ503と、通信インタフェース504と、入出力インタフェース505とを備えたコンピュータによって構成可能である。プロセッサ501、主メモリ502、補助メモリ503、通信インタフェース504、及び入出力インタフェース505は、バス510を介して互いに接続されている。入出力インタフェース505には、入力装置506および出力装置507が接続されている。
【0166】
プロセッサ501としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、マイクロコントローラ、またはこれらの組み合わせ等が用いられる。
【0167】
主メモリ502としては、例えば、半導体RAM(random access memory)等が用いられる。
【0168】
補助メモリ503としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはこれらの組み合わせ等が用いられる。補助メモリ503には、上述した制御装置51の動作をプロセッサ501に実行させるためのプログラムが格納されている。プロセッサ501は、補助メモリ503に格納されたプログラムを主メモリ502上に展開し、展開したプログラムに含まれる各命令を実行する。
【0169】
通信インタフェース504は、ネットワークに接続するインタフェースである。
【0170】
入出力インタフェース505としては、例えば、USBインタフェース、赤外線やBluetooth(登録商標)等の近距離通信インタフェース、またはこれらの組み合わせが用いられる。
【0171】
入力装置506としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド、マイク、又はこれらの組み合わせ等が用いられる。出力装置507としては、例えば、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ、又はこれらの組み合わせが用いられる。
【0172】
制御装置51の機能を、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現する場合、プロセッサ501と主メモリ502により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0173】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0174】
また、上記各ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。
【0175】
また、上記各ブロックの機能の一部または全部は、上記装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ(cloud server)等)で動作するものであってもよい。
【0176】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0177】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る熱間圧延鋼板製造装置は、高炭素鋼から熱間圧延鋼板を製造する熱間圧延鋼板製造装置であって、前記高炭素鋼を熱間圧延し前記熱間圧延鋼板とする仕上圧延機と、前記仕上圧延機から搬出される前記熱間圧延鋼板を冷却する冷却装置と、前記冷却装置を操作する制御装置と、前記冷却装置から搬出される前記熱間圧延鋼板を巻き取る巻取機と、を有し、前記制御装置は、前記仕上圧延機と前記冷却装置の入口との間に設置された温度計によって測定された温度に基づいて、前記熱間圧延鋼板の所定位置における温度と前記熱間圧延鋼板の所定位置における変態率とを算出する算出部と、前記算出された前記熱間圧延鋼板の所定位置における温度と、予め設定された閾値である温度閾値とを比較する温度比較部と、前記算出された前記熱間圧延鋼板の所定位置における変態率と、予め設定された閾値である変態率閾値とを比較する変態率比較部と、前記温度比較部による比較結果と前記変態率比較部による比較結果を参照して、前記冷却装置が有し前記熱間圧延鋼板に水を吐出する複数のノズルの開閉を操作する操作部と、を有する。
【0178】
本発明の態様2に係る熱間圧延鋼板製造装置は、上記の態様1において、前記冷却装置は、前記熱間圧延鋼板の搬送方向に沿って複数の区間に区分され、前記算出部は、前記複数の区間の各区間の出口における前記熱間圧延鋼板の温度と変態率とを算出する。
【0179】
本発明の態様3に係る熱間圧延鋼板製造装置は、上記の態様2において、前記算出部は、前記区間の入口における前記熱間圧延鋼板の温度に基づいて、前記区間の温度降下量を演算し、前記温度降下量と、前記区間の入口における前記熱間圧延鋼板の変態に起因する変態発熱量とに基づいて、前記区間の出口における前記熱間圧延鋼板の温度を算出する第1算出部と、TTT線図を参照し、前記区間の入口における前記熱間圧延鋼板の温度と変態率とに基づいて、前記区間の出口における前記熱間圧延鋼板の変態率と、前記区間の出口における前記熱間圧延鋼板の変態に起因する変態発熱量とを算出する第2算出部と、を有し、前記複数の区間のうち、前記熱間圧延鋼板が最初に通過する区間においては、前記区間の入口における前記熱間圧延鋼板の変態率および前記変態発熱量が初期値として与えられる。
【0180】
本発明の態様4に係る熱間圧延鋼板製造装置は、上記の態様1乃至3のいずれかにおいて、前記操作部は、前記複数のノズルを、順番に開放する処理を実行し、前記算出部は、前記ノズルが開放される都度、前記熱間圧延鋼板の所定位置における温度および変態率を算出する。
【0181】
本発明の態様5に係る熱間圧延鋼板製造装置は、上記の態様4において、前記温度比較部は、前記冷却装置内の複数の位置における前記熱間圧延鋼板の温度と前記温度閾値とを比較し、前記変態率比較部は、前記冷却装置の出口における前記熱間圧延鋼板の変態率と前記変態率閾値とを比較する。
【0182】
本発明の態様6に係る熱間圧延鋼板製造装置は、上記の態様5において、前記操作部は、前記温度比較部による比較結果が、前記温度閾値未満を示すものであるか、または、前記変態率比較部による比較結果が、前記閾値以上を示すものである場合、前記ノズルを順番に開放する処理を停止する。
【0183】
本発明の態様7に係る熱間圧延鋼板製造装置は、上記の態様5において、前記操作部は、前記温度比較部による比較結果を参照した後、前記変態率比較部による比較結果を参照する。
【0184】
本発明の態様8に係る熱間圧延鋼板製造装置は、上記の態様1乃至7のいずれかにおいて、前記高炭素鋼の炭素含有量は、0.3%乃至0.9%である。
【0185】
本発明の態様9に係る熱間圧延鋼板製造方法は、高炭素鋼から熱間圧延鋼板を製造する熱間圧延鋼板製造方法であって、前記高炭素鋼を熱間圧延し前記熱間圧延鋼板とする仕上圧延機と、前記仕上圧延機から搬出される前記熱間圧延鋼板を冷却する冷却装置と、前記冷却装置を操作する制御装置と、前記冷却装置から搬出される前記圧延鋼板を巻き取る巻取機と、を有する熱間圧延鋼板製造装置を用い、前記制御装置を用いて、前記仕上圧延機と前記冷却装置の入口との間に設置された温度計によって測定された温度に基づいて、前記熱間圧延鋼板の所定位置における温度と前記熱間圧延鋼板の所定位置における変態率とを算出する算出ステップと、前記算出された前記熱間圧延鋼板の所定位置における温度と、予め設定された閾値である温度閾値とを比較する温度比較ステップと、前記算出された前記熱間圧延鋼板の所定位置における変態率と、予め設定された閾値である変態率閾値とを比較する変態率比較ステップと、前記温度比較ステップによる比較結果と前記変態率比較ステップによる比較結果とに基づいて、前記冷却装置が有し前記熱間圧延鋼板に水を吐出する複数のノズルの開閉を操作する操作ステップと、を有する。
【0186】
本発明の態様10に係る熱間圧延鋼板は、上記の態様9に係る熱間圧延鋼板製造方法により製造される。
【符号の説明】
【0187】
1 熱間圧延鋼板製造装置
21 仕上圧延機
22 冷却装置
23 巻取機
31 搬送速度計
32 仕上出側温度計
33 巻取温度計
51 制御装置
61 算出部
62 温度比較部
63 変態率比較部
64 操作部
81 温度算出部
82 変態率・発熱量算出部
83 TTT線図テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17