(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106237
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/509 20060101AFI20240731BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
C23C16/509
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010463
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】長町 学
(72)【発明者】
【氏名】安藤 瞭汰
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 夏生
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB05
2G084BB28
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD04
2G084DD12
2G084DD22
2G084DD25
2G084DD38
2G084DD55
2G084EE25
2G084FF36
4K030AA09
4K030AA14
4K030AA17
4K030FA04
4K030GA02
4K030KA20
4K030KA45
4K030LA22
(57)【要約】
【課題】アンテナの材質に関わらず、被処理物の温度を所望の温度にした状態で被処理物に対して成膜を行う。
【解決手段】成膜装置(1)は、被処理物(W)を内部に収容する真空容器(2)と、真空容器(2)の内部にプラズマを発生させるためのアンテナ(3)と、被処理物(W)を加熱するヒータ(81)と、アンテナ(3)とヒータ(81)との間に配置され、ヒータ(81)からアンテナ(3)への輻射を抑制する輻射抑制部材(5)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に対して成膜を行う成膜装置であって、
前記被処理物を内部に収容する真空容器と、
前記真空容器の内部にプラズマを発生させるためのアンテナと、
前記被処理物を加熱する加熱部と、
前記アンテナと前記加熱部との間に配置され、前記加熱部から前記アンテナへの輻射を抑制する輻射抑制部材と、を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記被処理物を支持するホルダと、
前記ホルダにバイアス電圧を印加するバイアス電源と、をさらに備え、
前記輻射抑制部材の電位が前記被処理物の電位と同一になるように、前記輻射抑制部材は、前記ホルダと電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記輻射抑制部材には開口部が形成されており、
前記被処理物の一部が前記開口部内に配置されることにより、前記被処理物と前記輻射抑制部材との間に隙間が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記アンテナは、
少なくとも2つの導体要素と、互いに隣り合う前記導体要素の間を絶縁する絶縁要素と、を有し、
前記輻射抑制部材は、
前記絶縁要素と前記加熱部との間に配置され、前記加熱部から前記絶縁要素への輻射を抑制するとともに、前記加熱部に対して、前記アンテナのうち前記絶縁要素を含む一部を遮蔽するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記輻射抑制部材の熱を前記輻射抑制部材の外部に導くことにより、前記輻射抑制部材を冷却する冷却機構をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、真空容器内に配置された直線状のアンテナと、真空容器内に誘導結合型のプラズマを生成するための高周波をアンテナに印加する高周波電源と、を備え、プラズマを用いて真空容器内の基板に処理を施すプラズマ処理装置が開示されている。アンテナは、少なくとも2つの導体要素と、互いに隣り合う導体要素と電気的に直列接続された容量素子と、を備える。真空容器内には、基板を保持する基板ホルダが設けられており、基板ホルダ内には、基板を加熱するヒータが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示のプラズマ処理装置において、プラズマを用いて処理を施す対象を、300℃以上に加熱する必要があるものに変更した場合、アンテナの温度が上昇し、アンテナが許容する温度を上回る可能性がある。よって、当該プラズマ処理装置では、アンテナを用いた処理を安定して継続できなくなるという問題がある。本開示の一態様は、アンテナの材質に関わらず、被処理物の温度を所望の温度にした状態で被処理物に対して成膜を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る成膜装置は、被処理物に対して成膜を行う成膜装置であって、前記被処理物を内部に収容する真空容器と、前記真空容器の内部にプラズマを発生させるためのアンテナと、前記被処理物を加熱する加熱部と、前記アンテナと前記加熱部との間に配置され、前記加熱部から前記アンテナへの輻射を抑制する輻射抑制部材と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、アンテナの材質に関わらず、被処理物の温度を所望の温度にした状態で被処理物に対して成膜を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態1に係る成膜装置の構成を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す成膜装置において、アンテナ、輻射抑制部材及び被処理物の位置関係を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態2に係る成膜装置の構成を示す断面図である。
【
図4】
図3に示す成膜装置において、アンテナ、輻射抑制部材、冷却機構及び被処理物の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
図1は、本開示の実施形態1に係る成膜装置1の構成を示す断面図である。
図1において、アンテナ3の延伸方向をX軸方向、ホルダ8からアンテナ3に向かう方向をZ軸方向、X軸方向及びZ軸方向の両方の方向に直交する方向をY軸方向とする。X軸方向及びZ軸方向は互いに直交する方向である。ここで説明したX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の定義については、他の図においても適用されるものとする。
【0009】
<成膜装置1の構成>
成膜装置1は、誘導結合型のプラズマPを用いたプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、被処理物Wに対して成膜を行うプラズマCVD装置である。被処理物Wは、例えば複雑な形状をしているものであってもよく、螺旋形状に形成されるドリルまたはエンドミル等の工具である。また、被処理物Wは、例えば金属製材料を用いて構成されたものである。
【0010】
図1に示すように、成膜装置1は、真空容器2と、アンテナ3と、高周波電源4と、整合器41と、輻射抑制部材5と、真空排気装置6と、ガス供給機構7と、を備える。また、成膜装置1は、ホルダ8と、ヒータ81と、ヒータ電源9と、絶縁カバー10と、絶縁部材11と、固定治具12と、配線13と、バイアス電源14と、を備える。
【0011】
<真空容器2及び真空排気装置6の構成>
真空容器2は、例えばSUS(ステンレス)またはアルミニウム等の金属製の容器であり、電気的に接地されている。真空容器2は、被処理物Wを内部に収容している。真空容器2の内部は、真空排気装置6によって真空排気される。真空排気装置6は、真空容器2の内部の圧力を調整するバルブ等の圧力調整器61及び図示しないポンプを有する。真空排気装置6は、圧力調整器61を制御してプラズマ生成時における真空容器2の内部の圧力を調整する。
【0012】
<アンテナ3の構成>
アンテナ3は、真空容器2の内部にプラズマを発生させるためのものであり、直線状に形成されている。アンテナ3は、真空容器2の内部における被処理物Wの上方に、ホルダ8に沿うように配置されている。アンテナ3は、Y軸方向に並んで複数配置されていてもよい。これにより、より広い範囲でプラズマPを均一に発生させることができ、より多くの被処理物Wに対して処理を行うことができる。なお、アンテナ3の本数は、複数本に限らず1本だけであってもよい。
【0013】
アンテナ3は真空容器2を貫通しており、アンテナ3の給電端部3A及び接地端部3Bは、真空容器2の外部に配置されている。アンテナ3は、絶縁部材11を介して真空容器2に設けられている。絶縁部材11は、真空容器2とアンテナ3とを電気的に絶縁するものである。真空容器2と絶縁部材11との間には、真空容器2と絶縁部材11との間を真空シールするパッキン111が設けられている。アンテナ3と絶縁部材11との間にも、アンテナ3と絶縁部材11との間を真空シールするパッキン111が設けられている。
【0014】
アンテナ3は、導体要素31、絶縁要素32及び容量素子33を有するLCアンテナである。導体要素31は、例えば管状に形成された金属パイプであり、1本のアンテナ3に対して少なくとも2つ設けられている。絶縁要素32は、互いに隣り合う導体要素31の間に設けられており、互いに隣り合う導体要素31の間を電気的に絶縁する。絶縁要素32は、例えば管状に形成された絶縁パイプであり、容量素子33を覆っている。容量素子33は、例えばコンデンサであり、絶縁要素32の内部に設けられている。導体要素31及び容量素子33は、絶縁要素32の内部で電気的に互いに直列接続されている。
【0015】
導体要素31の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金またはSUS等である。絶縁要素32の材質は、例えば、アルミナ等のセラミックス、石英、フッ素樹脂、ポリエチレン(PE)またはエンジニアリングプラスチック等である。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。絶縁要素32は単一の材質から構成されているが、これに限られるものではなく、複数の材質から構成されていてもよい。
【0016】
アンテナ3は、高周波電圧が印加される給電端部3Aと、電気的に接地されている接地端部3Bと、を有する。給電端部3Aには、高周波電源4から整合器41を介して高周波電圧が印加される。整合器41は、高周波電源4からの電力を負荷に応じて整合させる電気回路である。
【0017】
<絶縁カバー10の構成>
アンテナ3における真空容器2の内部に位置する部分は、管状の絶縁カバー10により覆われている。絶縁カバー10の両端部は、絶縁部材11によって支持されている。絶縁カバー10の材質は、例えば、石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコンまたはシリコン等である。
【0018】
絶縁カバー10が設けられることにより、プラズマP中の荷電粒子が導体要素31に入射することを抑制できるため、導体要素31に荷電粒子が入射することによるプラズマ電位の上昇を抑制することができる。また、導体要素31が荷電粒子によってスパッタされてプラズマP及び被処理物Wに対して金属汚染が生じることを防ぐことができる。上記荷電粒子は主にイオンである。
【0019】
<ガス供給機構7の構成>
ガス供給機構7は、真空容器2におけるZ軸正方向側の上壁に形成されたガス導入口21を通して原料ガス等のガスGを真空容器2の内部に供給するものである。ガス供給機構7は、ガス導入口21からZ軸負方向にガスGを供給する。ガスGは、例えばC(炭素)、H(水素)及びO(酸素)を含むガスであり、具体的には、H2ガス、CH4ガスまたはCO2ガスであるが、本開示はそれに限定されるものではない。ガス供給機構7が有する流量調整器71は、真空容器2の内部に供給されるガスGの流量を調整するバルブ等である。
【0020】
<ホルダ8、ヒータ81及びバイアス電源14の構成>
ホルダ8は、真空容器2の内部に設けられており、被処理物Wを支持する。被処理物Wは、ホルダ8の上にX軸方向に沿って複数配置されている。ホルダ8は金属性材料を用いて構成されている。ホルダ8の内部には、被処理物Wを加熱するヒータ81が設けられている。ヒータ81は加熱部の一例である。ホルダ8はバイアス電源14と電気的に接続されており、ヒータ81はヒータ電源9と電気的に接続されている。
【0021】
バイアス電源14は、ホルダ8にバイアス電圧を印加する。ホルダ8に印加されるバイアス電圧は、例えば負の直流電圧である。バイアス電源14は、ホルダ8にバイアス電圧を印加することにより、例えば、プラズマP中の正イオンが被処理物Wに入射するときのエネルギーを制御して、被処理物Wの表面に形成される膜の結晶化度の制御等を行うことができる。ヒータ電源9がヒータ81に電圧を印加することにより、ヒータ81の温度が上昇する。
【0022】
<輻射抑制部材5の構成>
図1及び
図2を用いて輻射抑制部材5について説明する。
図2は、
図1に示す成膜装置1において、アンテナ3、輻射抑制部材5及び被処理物Wの位置関係を示す図である。
図2では、成膜装置1の構成のうち、アンテナ3及び輻射抑制部材5以外の構成の図示を省略している。また
図2は、アンテナ3、輻射抑制部材5及び被処理物WをZ軸負方向に向かって視認した場合の図である。
【0023】
図1に示すように、輻射抑制部材5は、アンテナ3とヒータ81との間に配置され、ヒータ81からアンテナ3への輻射を抑制する。また、輻射抑制部材5は、アンテナ3とホルダ8との間に配置され、ヒータ81から絶縁要素32への電磁波を抑制する。輻射抑制部材5は、アンテナ3に対してホルダ8の全体を遮蔽する、つまり、ヒータ81の全体を遮蔽するものである。
【0024】
被処理物Wのうち成膜される成膜部分は、被処理物Wのうち輻射抑制部材5の上面よりも上側の部分である。当該上面は、輻射抑制部材5におけるZ軸正方向側の面である。被処理物Wのうち輻射抑制部材5の下面よりも下側の部分は成膜されない。当該下面は、輻射抑制部材5におけるZ軸負方向側の面である。
【0025】
輻射抑制部材5は、XY平面に沿って延伸する板状の部材である。輻射抑制部材5の材質は、例えば、アルミニウム合金、SUSまたは高融点金属である。当該高融点金属としては、例えば、Ta(タンタル)、W(タングステン)またはMo(モリブデン)等である。輻射抑制部材5は単一の材質から構成されているが、これに限られるものではなく、複数の材質から構成されていてもよい。
【0026】
輻射抑制部材5におけるZ軸方向に沿った厚みは、例えば10mm以上である。なお、輻射抑制部材5の材質がMoである場合、輻射抑制部材5の厚みを2mmにし、輻射抑制部材5の下面に、輻射抑制部材5の材質と同一の材質の棒状部材を格子状に設けてもよい。これにより輻射抑制部材5を丈夫なものとすることができる。
【0027】
アンテナ3とヒータ81との間に輻射抑制部材5が配置されることにより、アンテナ3の温度上昇を抑制することができるため、アンテナ3に含まれる絶縁要素32の材質の選択の幅を広げることができる。また、被処理物Wに対して成膜を行うときに被処理物Wの温度の範囲を広げることができるため、成膜を行える被処理物Wの種類の幅も広げることができる。したがって、アンテナ3の材質に関わらず、被処理物Wの温度を所望の温度にした状態で被処理物Wに対して成膜を行うことができる。さらに被処理物Wに対して長時間安定した成膜を行うことができる。
【0028】
被処理物Wが例えば工具である場合、被処理物Wが基板である場合に比べて、被処理物Wがホルダ8によって支持されているとき、被処理物Wの成膜部分とヒータ81との間の距離が大きくなる。よって、被処理物Wが工具である場合、被処理物Wの温度が例えば500℃以上となるように、ヒータ81で被処理物Wを加熱する必要がある。この場合、被処理物Wの温度が樹脂のガラス転移温度よりも高くなるが、輻射抑制部材5が設けられることにより、絶縁要素32の材質として樹脂系のものを使用することができる。
【0029】
配線13は、輻射抑制部材5とホルダ8とを電気的に接続する。ホルダ8には、被処理物Wをホルダ8に固定する固定治具12が設けられている。固定治具12は、被処理物Wがホルダ8に接触するように、被処理物Wをホルダ8に固定する。これにより、輻射抑制部材5は、輻射抑制部材5の電位が被処理物Wの電位と同一になるように、ホルダ8と電気的に接続される。
【0030】
輻射抑制部材5の電位が被処理物Wの電位と同一になることにより、真空容器2の内部に発生するプラズマPを安定させることができる。また、輻射抑制部材5と被処理物Wとの間に電位差が生じないため、輻射抑制部材5と被処理物Wとの間に異常放電が生じることを防ぐことができる。
【0031】
また、固定治具12は、金属製材料を用いて構成されている。固定治具12は、輻射抑制部材5の下面よりも下側に配置されるため、固定治具12がプラズマPにさらされないようにすることができる。よって、互いに隣り合う固定治具12の間に異常放電が生じることを防ぐことができる。
【0032】
図1及び
図2に示すように、輻射抑制部材5には複数の開口部51が形成されている。被処理物Wの一部が開口部51内に配置されることにより、被処理物Wと輻射抑制部材5との間に隙間SPが形成される。Z軸負方向に向かって輻射抑制部材5を視認した場合、開口部51の直径は、被処理物Wの直径よりも大きい。つまり、被処理物Wの全周に亘って隙間SPが形成される。
【0033】
複数の被処理物Wと複数の開口部51とが1対1に対応するように、複数の開口部51は、輻射抑制部材5にX軸方向に沿って複数形成されている。Z軸負方向に向かって輻射抑制部材5を視認した場合、複数の被処理物W及び複数の開口部51は、互いに隣り合うアンテナ3の間に配置されている。
【0034】
被処理物Wと輻射抑制部材5との間に隙間SPが形成されることにより、被処理物Wと輻射抑制部材5とを接触しないようにすることができる。これにより、被処理物Wから輻射抑制部材5への熱の移動を抑制でき、輻射抑制部材5の温度上昇を抑制することができる。よって、ヒータ81からアンテナ3への輻射を抑制する輻射抑制部材5の機能を維持することができる。
【0035】
〔実施形態2〕
本開示の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0036】
図3は、本開示の実施形態2に係る成膜装置1Aの構成を示す断面図である。
図4は、
図3に示す成膜装置1Aにおいて、アンテナ3、輻射抑制部材5A、冷却機構15及び被処理物Wの位置関係を示す図である。
図4では、成膜装置1の構成のうち、アンテナ3、輻射抑制部材5A及び冷却機構15以外の構成の図示を省略している。また
図4は、アンテナ3、輻射抑制部材5A、冷却機構15及び被処理物WをZ軸負方向に向かって視認した場合の図である。
【0037】
図3及び
図4に示すように、成膜装置1Aは、成膜装置1に比べて、輻射抑制部材5が輻射抑制部材5Aに変更されている点と、冷却機構15を備える点と、が異なる。輻射抑制部材5Aは、アンテナ3の絶縁要素32とヒータ81との間に配置され、ヒータ81から絶縁要素32への輻射を抑制する。また、輻射抑制部材5Aは、ヒータ81に対して、アンテナ3のうち絶縁要素32を含む一部34を遮蔽するものである。
【0038】
具体的には、輻射抑制部材5Aは、ヒータ81に対して、絶縁要素32と、容量素子33と、導体要素31のうち絶縁要素32及び容量素子33の近傍に位置する部分と、を有するアンテナ3の一部34を遮蔽するものである。なお、輻射抑制部材5Aは、ヒータ81に対して、絶縁要素32及び容量素子33のみを有するアンテナ3の一部34を遮蔽するものであってもよい。
【0039】
X軸方向において輻射抑制部材5Aと輻射抑制部材5Aの外部との境界となる輻射抑制部材5Aの外端5Eは、Z軸負方向に向かって輻射抑制部材5Aを視認した場合において導体要素31とヒータ81との間に配置される。なお、輻射抑制部材5Aの外端5Eは、Z軸負方向に向かって輻射抑制部材5Aを視認した場合において導体要素31と、絶縁要素32と、の境界に重なる位置に配置されてもよい。
【0040】
このように、輻射抑制部材5Aは、ヒータ81に対して、アンテナ3のうち絶縁要素32を含む一部34を遮蔽するものであるため、輻射抑制部材5Aのサイズを小さくすることができ、輻射抑制部材5Aにかかるコストを削減することができる。
【0041】
輻射抑制部材5Aは、真空容器2の内部に複数設けられているが、これに限られず、真空容器2の内部に1つ設けられていてもよい。輻射抑制部材5Aが真空容器2の内部に複数設けられている場合、配線13は、複数の輻射抑制部材5Aのそれぞれとホルダ8とを電気的に接続する。
【0042】
冷却機構15は、輻射抑制部材5Aの熱を輻射抑制部材5Aの外部に導くことにより、輻射抑制部材5Aを冷却する。冷却機構15は、熱交換器151と、循環流路152と、図示しないポンプ等の循環機構と、を有する。熱交換器151は、真空容器2の外部に配置されており、循環流路152を循環して流通する冷却液を一定温度に調整するためのものである。上記循環機構は、循環流路152に冷却液を循環させるためのものである。
【0043】
循環流路152は、真空容器2を貫通して輻射抑制部材5Aの内部に設けられている管によって形成されている。なお、循環流路152を形成する管は、輻射抑制部材5Aの下面に設けられていてもよい。循環流路152は、輻射抑制部材5Aの熱を輻射抑制部材5Aの外部に導く。また、循環流路152は、輻射抑制部材5Aの熱を真空容器2の外部に導く。
【0044】
ヒータ81からの輻射によって温度が上昇した輻射抑制部材5Aを冷却機構15によって冷却することができ、輻射抑制部材5Aの温度を適切な温度に維持することができる。冷却機構15により輻射抑制部材5Aを冷却することにより、輻射抑制部材5Aの温度を下げることができ、ヒータ81からアンテナ3への輻射を抑制する輻射抑制部材5Aの機能を維持することができる。
【0045】
〔実施例〕
本開示の実施例について以下に説明する。成膜装置1において、真空容器2の内部に輻射抑制部材5が設けられていない場合、ヒータ81の温度が700℃であるとき、絶縁要素32の表面温度が最高で240℃になった。240℃は、上述のエンジニアリングプラスチックを連続して使用可能な温度に近い温度であり、長時間の成膜を行う場合において絶縁要素32の交換頻度が高かった。
【0046】
また、バイアス電源14によってホルダ8に25Vのバイアス電圧を印加することにより、被処理物Wの電位を25Vにしたとき、互いに隣り合う固定治具12の間に異常放電が生じていた。よって、成膜を行う処理の維持が困難になっていた。
【0047】
しかし、真空容器2の内部に輻射抑制部材5が設けられることにより、絶縁要素32の損傷を低減することができ、絶縁要素32の交換頻度を低下させることができた。また、バイアス電源14によって被処理物Wの電位を50Vまで上げた状態でも、互いに隣り合う固定治具12の間に異常放電が生じることを防ぐことができた。
【0048】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る成膜装置は、被処理物に対して成膜を行う成膜装置であって、前記被処理物を内部に収容する真空容器と、前記真空容器の内部にプラズマを発生させるためのアンテナと、前記被処理物を加熱する加熱部と、前記アンテナと前記加熱部との間に配置され、前記加熱部から前記アンテナへの輻射を抑制する輻射抑制部材と、を備える構成である。
【0049】
本開示の態様2に係る成膜装置は、上記の態様1において、前記被処理物を支持するホルダと、前記ホルダにバイアス電圧を印加するバイアス電源と、をさらに備え、前記輻射抑制部材の電位が前記被処理物の電位と同一になるように、前記輻射抑制部材は、前記ホルダと電気的に接続されている構成としてもよい。
【0050】
本開示の態様3に係る成膜装置は、上記の態様1または2において、前記輻射抑制部材には開口部が形成されており、前記被処理物の一部が前記開口部内に配置されることにより、前記被処理物と前記輻射抑制部材との間に隙間が形成される構成としてもよい。
【0051】
本開示の態様4に係る成膜装置は、上記の態様1から3のいずれかにおいて、前記アンテナは、少なくとも2つの導体要素と、互いに隣り合う前記導体要素の間を絶縁する絶縁要素と、を有し、前記輻射抑制部材は、前記絶縁要素と前記加熱部との間に配置され、前記加熱部から前記絶縁要素への輻射を抑制するとともに、前記加熱部に対して、前記アンテナのうち前記絶縁要素を含む一部を遮蔽するものである構成としてもよい。
【0052】
本開示の態様5に係る成膜装置は、上記の態様1から4のいずれかにおいて、前記輻射抑制部材の熱を前記輻射抑制部材の外部に導くことにより、前記輻射抑制部材を冷却する冷却機構をさらに備える構成としてもよい。
【0053】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1、1A 成膜装置
2 真空容器
3 アンテナ
5、5A 輻射抑制部材
8 ホルダ
14 バイアス電源
15 冷却機構
31 導体要素
32 絶縁要素
51 開口部
81 ヒータ
P プラズマ
SP 隙間
W 被処理物