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  • 特開-酸吸着材及び酸の処理方法 図1
  • 特開-酸吸着材及び酸の処理方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010624
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】酸吸着材及び酸の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/28 20060101AFI20240117BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B01J20/28 Z
B01J20/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112077
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】722004104
【氏名又は名称】株式会社ナノジャパン
(72)【発明者】
【氏名】高田 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 哲也
【テーマコード(参考)】
4G066
【Fターム(参考)】
4G066AA22B
4G066AA39B
4G066AA63C
4G066AA70A
4G066BA01
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA31
4G066BA38
4G066CA07
4G066DA01
4G066DA07
4G066EA20
4G066FA37
(57)【要約】
【課題】優れた酸吸着機能を備えた酸吸着材及び前記酸吸着材を用いた処理方法を提供する。
【解決手段】酸を吸着する機能を有する酸吸着材であって、複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子を含んでおり、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であり、前記細孔が貫通孔であり、前記細孔が、<111>配向している結晶を含む酸吸着材を用いて酸を含む液体又は気体を処理する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸を吸着する機能を有する酸吸着材であって、複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子を含んでおり、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であることを特徴とする酸吸着材。
【請求項2】
前記細孔が、貫通孔である請求項1記載の酸吸着材。
【請求項3】
前記細孔が、<111>配向している結晶を含む請求項1又は2に記載の酸吸着材。
【請求項4】
前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内である請求項1~3のいずれかに記載の酸吸着材。
【請求項5】
前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が90以上である請求項1~4のいずれかに記載の酸吸着材。
【請求項6】
前記多孔質粒子の平均粒径が0.1μm~10μmである請求項1~5のいずれかに記載の酸吸着材。
【請求項7】
前記多孔質粒子が酸化物を主成分として含む請求項1~6のいずれかに記載の酸吸着材。
【請求項8】
前記酸化物がSiOを含む請求項7に記載の酸吸着材。
【請求項9】
前記酸化物におけるFeの含有量が0.01at%~0.5at%である請求項7又は8に記載の酸吸着材。
【請求項10】
前記多孔質粒子が、前記細孔を5以上含む請求項1~9のいずれかに記載の酸吸着材。
【請求項11】
酸吸着材を用いて酸を吸着処理する処理方法であって、前記酸吸着材が請求項1~11のいずれかに記載の酸吸着材であることを特徴とする処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸吸着材及び前記酸吸着材を用いて酸を処理する処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸吸着材は、液体や気体に含まれる酸を吸着して液体や気体からそれら酸を除去することができるので、従来、これら適用について多くの改良がなされ、種々検討されている。
近年においては、電池の電解液が飛び散って、発生するフッ酸の除去及びその抑制のために、酸吸着材としてCaでイオン交換されたA型のゼオライト等が用いられている(特許文献1)。しかしながら、このような酸吸着材では、酸を蓄積することができず、一時的な吸着だけで時間が経てば、また、放出されるといった問題があった。
【0003】
特許文献2には、β-オキシ水酸化鉄を主成分とし平均結晶子径が10nm以下である粒子を多孔質の支持体に担持してなる、BET比表面積が50m2/g以上の吸着材が、酸を吸着すると記載されている。しかしながら、これら吸着材はβ-オキシ水酸化鉄の酸吸着機能を利用したものであり、それを多孔質体に担持させることでβ-オキシ水酸化鉄の表面積を大きくしなければ十分な吸着能を発揮できず、また、製造工程が煩雑であり、コストがかかるといった問題があった。また、吸着材担持体の支持体に多孔質高分子材料が用いられており、脱炭素社会を目指すうえで、環境に優しくないため活用しづらいといった問題もあった。
【0004】
特許文献3には、水質浄化材として火山灰土と陰イオン吸着能を有する高機能炭がカルシウムやアンモニアガスで処理された吸着材が用いられている。しかしながら、特許文献3記載の吸着材も特許文献2記載の吸着材と同様、酸と反応して塩を形成する物質を炭などの多孔質体に担持させているに過ぎず、表面積を大きくしなければ十分な吸着能を発揮することができなかった。また、これら吸着材は、火山灰土を併用しなければ、十分酸を吸着できないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7073643号公報
【特許文献2】特許第6835319号公報
【特許文献3】特開2021-079363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた酸吸着機能を備えた酸吸着材及び前記酸吸着材を用いた処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、酸を吸着する機能を有する酸吸着材であって、複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子を含んでおり、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状である酸吸着材が、優れた酸吸着機能を備えていること等を知見し、このような酸吸着材が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 酸を吸着する機能を有する酸吸着材であって、複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子を含んでおり、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であることを特徴とする酸吸着材。
[2] 前記細孔が、貫通孔である前記[1]記載の酸吸着材。
[3] 前記細孔が、<111>配向している結晶を含む前記[1]又は[2]に記載の酸吸着材。
[4] 前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内である前記[1]~[3]のいずれかに記載の酸吸着材。
[5] 前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が90以上である前記[1]~[4]のいずれかに記載の酸吸着材。
[6] 前記多孔質粒子の平均粒径が0.1μm~10μmである前記[1]~[5]のいずれかに記載の酸吸着材。
[7] 前記多孔質粒子が酸化物を主成分として含む前記[1]~[6]のいずれかに記載の酸吸着材。
[8] 前記酸化物がSiOを含む前記[7]に記載の酸吸着材。
[9] 前記酸化物におけるFeの含有量が0.01at%~0.5at%である前記[7]又は[8]に記載の酸吸着材。
[10] 前記多孔質粒子が、前記細孔を5以上含む前記[1]~[9]のいずれかに記載の酸吸着材。
[11] 酸吸着材を用いて酸を吸着処理する処理方法であって、前記酸吸着材が前記[1]~[11]のいずれかに記載の酸吸着材であることを特徴とする処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の酸吸着材及び前記酸吸着材を用いて酸を処理する処理方法は、優れた酸吸着機能を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に用いられる多孔質体の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
図2】実施例における顕微鏡像(TEM像)を示す。
図3】本発明の処理方法の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の酸吸着材は、酸を吸着する機能を有する酸吸着材であって、複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子を含んでおり、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であれば特に限定されない。
【0012】
前記多孔質粒子は、前記多孔質体を含む粒子であればそれでよく、粒子の形状等は特に限定されないし、他の多孔質体、賦形剤、結着剤又は接着剤等の添加剤などが含まれていてもよい。本発明においては、前記細孔が、貫通孔であるのが好ましい。また、<111>配向している結晶を含むのが好ましい。なお、前記貫通孔は、便宜上、Xe-NMRにて確認できるものであってよい。また、前記結晶はX線回折装置を用いて確認できるものであってよい。また、本発明においては、前記粒子の平均粒径が0.1μm~10μmであるのが好ましい。このような好ましい範囲によれば、酸の吸着蓄積において、より優れた性能を発揮することができる。なお、前記平均粒径は、任意に抽出した10個の粒子の粒径の平均値をいう。
【0013】
前記多孔質体は、複数の細孔を有するものであって、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状であれば特に限定されないが、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内であるのが好ましく、1:10~1:100の範囲内であるのがより好ましい。前記多孔質体の好適な態様を図1に示す。図1の多孔質体は、複数の細孔を有している多孔質体であり、図1には、A-A’断面図とともに、前記細孔の形状が円筒状であることが示されている。前記細孔は、平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ形状が略円筒状であることが酸吸着蓄積機能において肝要である。本発明においては、前記平均孔径が8nm±2nmの範囲内であるのが好ましく、前記形状が円筒状であるのも好ましい。
【0014】
前記平均孔径は、任意に抽出した10個の細孔の孔径の平均値をいう。前記孔径は、前記細孔の直径を意味し、例えば、図1に示されるw1をいう。前記深さは、前記細孔の深さを意味し、例えば、前記細孔が貫通孔である場合には、便宜上、前記多孔質体粒子の粒径を前記深さとしてもよい。前記深さは、例えば、d1をいう。なお、図1のw1は、例えば8nmであり、d1は、例えば50nmである。
【0015】
前記多孔質粒子の構成材料は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、本発明においては、酸化物を主成分として含むのが好ましい。前記酸化物は、SiOを含むのが好ましく、また、Alを含むのも好ましい。また、本発明においては、前記酸化物におけるFeの含有量が組成比で0.5at%以下であるのが好ましく、0.1at%以下であるのがより好ましい。前記酸化物におけるFeの含有量の下限は特に限定されないが、例えば0.01at%である。このような好ましいFeの含有量の前記酸化物を主成分として含む前記多孔質粒子は、例えば雨季と乾季とを有する熱帯モンスーン気候下の珪藻土層の一定の深さの区画から抽出される珪藻土を焼成及び粒子状に整粒することにより、容易に得ることができる。なお、前記焼成及び前記整粒の手段及び順序等は本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段等が好適に用いられ、これら条件等も適宜設定されてよい。
【0016】
前記多孔質粒子は、前記細孔を5以上含むのが好ましく、このような好ましい範囲によれば、酸吸着蓄積機能をより優れたものとすることができる。
【0017】
前記多孔質粒子は、例えば、タイや日本等の珪藻土層において、SEM又はTEM等の顕微鏡にて測定される、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状であり、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内となる多孔質体が含まれる珪藻土層の区画から、所定の珪藻土を常法に従い取り出し、ついで公知の手段を用いて焼成及び粒子状に整粒することにより、容易に得ることが可能である。なお、タイや日本(例えば稚内等)などの珪藻土層において、前記区画が存在し、かつ前記区画にて容易に前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状である前記多孔質体を含む前記多孔質粒子を取り出せることは、本発明者らによる新知見である。また、本発明においては、前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が80以上であるのが好ましく、90以上であるのがより好ましい。このような好ましい白色度を有する前記多孔質粒子は、例えば、上記したように、前記多孔質粒子のFeの含有量を0.5at%以下とすることにより、容易に得ることができる。
【0018】
本発明においては、前記多孔質粒子はそのままで又はさらに例えば樹脂、又は粘土等の成形用材料と共に成形され、成形品を前記酸吸着材として用いるのが好ましい。前記成形手段は押出成形等の公知の手段であってよい。なお、このような酸吸着材の製造方法も本発明に包含される。このような好ましい範囲によれば、酸吸着能力をより良好なものとすることができる。
【0019】
本発明における処理方法は、前記酸吸着材を前記酸に接触させれば特に限定されない。処理時間及び処理温度等も特に限定されず、前記酸を含む被処理物に応じて適宜処理条件を設定することができる。前記被処理物は、液状であってもよいし、気体状であってもよい。ゾル状等であってもよい。
【0020】
前記酸は、特に限定されないが、水中に溶存する酸が好ましい。前記水中に溶存する酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、ホウ酸などの無機酸や、ギ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、スルホン酸などの有機酸または二酸化硫黄、硫化水素、硝酸などの酸性ガスなどが挙げられる。本発明では、いずれの酸も好適に前記酸吸着材で処理することができる。
【0021】
また、前記酸吸着剤は前記多孔質粒子が使用された後の再利用品であってもよい。使用済みの前記多孔質粒子を前記酸吸着剤として再利用することにより、より環境に配慮した酸処理等を実現することができる。
【実施例0022】
(実施例1)
タイの一定の深さにある珪藻土層において、図2に示されるように、顕微鏡(TEM)にて測定される、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が円筒状であり、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内となる多孔質体が得られる珪藻土層の区画から、珪藻土を取り出し、ついで660℃で焼成及び10μmに整粒することにより、本発明の多孔質粒子を得た。なお、得られた多孔質粒子は、Xe-NMRにて細孔解析を実施したところ細孔壁面の形状は真っ直ぐに貫通された形状であり、貫通孔を有していた。また、X線回折装置を用いて多孔質粒子の結晶性につき評価したところ<111>配向している結晶であることがわかった。また、白度計(JIS Z8722)にて10箇所以上の複数地点で計測したところ、いずれも80以上であり、かつ平均で90以上であり、きれいで且つ良好な白色を有していた。また、得られた多孔質粒子のFeの含有量を測定したところ、0.5at%以下であった。
【0023】
得られた多孔質粒子に粘土を混ぜ、ついで水を用いて、図3に示されるように、マカロニ状のろ過材を作製し、ネットに入れ、フィルターを作製した。酸を含有させた試験水を、作製したフィルターに対して流し込み、ろ過材における酸の捕集蓄積機能を評価した。なお、比較例1としてゼオライトフィルターを用いた。その結果、酸の蓄積量が、実施例品は比較例品の700倍に達しており、優れた酸吸着蓄積機能を有することが分かった。また、このような酸吸着蓄積機能は、ゼオライトフィルターや他のメソポーラスフィルター(平均孔径8nm±2nmの範囲外のもの及び非円柱状細孔のものを含む)では確認できず、本発明特有の効果であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の酸吸着材は、例えば酸を不純物等として含む水や溶液、それにガス等に対する酸除去剤として好適に用いられ、空気や水の処理等に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0025】
1 多孔質体
2 細孔
d1 孔径
d2 深さ
4 水路管
5 被処理水(W)
6 ネット
7 マカロニ状のろ過材
図1
図2
図3