(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106243
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】点検口
(51)【国際特許分類】
E04F 19/08 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
E04F19/08 101K
E04F19/08 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010479
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301062226
【氏名又は名称】株式会社日本設計
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永谷 有弘
(72)【発明者】
【氏名】松中 末広
(57)【要約】
【課題】天井又は壁面に設置される点検口について、その存在が目立たないよう意匠
性に配慮しつつ、開閉作業も容易かつ安全に行う。
【解決手段】設置面に設けられる開口に固定される方形状の外枠と、前記外枠の内側に開閉可能に設置される方形状の内枠と、前記内枠の内部に装着されるとともに、前記内枠の自由端側に貫通孔が設けられる蓋材と、前記内枠の自由端側の内面の遠位側に固定される遠位ステーと、前記内枠の自由端側の内面の近位側に固定される近位ステーと、前記遠位ステーに固定されるとともに、前記外枠に対して係止可能なラッチ片と、前記ラッチ片を回動させるための鍵孔とを有する錠ユニットと、前記貫通孔を通した状態で前記近位ステーに固定されるとともに、前記鍵孔と軸心同一かつ上下方向に貫通する内面孔を有する鍵カバーと、を備えることを特徴とする点検口。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に設けられる開口に固定される方形状の外枠と、
前記外枠の内側に開閉可能に設置される方形状の内枠と、
前記内枠の内部に装着されるとともに、前記内枠の自由端側に貫通孔が設けられる蓋材と、
前記内枠の自由端側の内面の遠位側に固定される遠位ステーと、
前記内枠の自由端側の内面の近位側に固定される近位ステーと、
前記遠位ステーに固定されるとともに、前記外枠に対して係止可能なラッチ片と、前記ラッチ片を回動させるための鍵孔とを有する錠ユニットと、
前記貫通孔を通した状態で前記近位ステーに固定されるとともに、前記鍵孔と軸心同一かつ上下方向に貫通する内面孔を有する鍵カバーと、
を備える点検口。
【請求項2】
前記鍵孔は、前記内枠の近位側の辺縁よりも遠位側に位置し、かつ、前記鍵カバーの遠位側端部に対向する、請求項1に記載の点検口。
【請求項3】
前記内面孔の断面は、前記鍵孔の断面を包摂することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の点検口。
【請求項4】
前記内面孔の遠位側の断面は、前記内面孔の近位側の断面に包摂される、請求項3に記載の点検口。
【請求項5】
前記内面孔の近位側の断面は円形であり、前記内面孔の遠位側の断面は正六角形である、請求項4に記載の点検口。
【請求項6】
前記内枠の近位側の辺縁が、前記蓋材の近位側の面である化粧面よりも遠位側に位置している、請求項1又は請求項2に記載の点検口。
【請求項7】
前記外枠の近位側の辺縁が、前記設置面よりも遠位側に位置している、請求項1又は請求項2に記載の点検口。
【請求項8】
前記開口の辺縁を被覆する見切材がさらに設けられるとともに、
前記見切材の近位側の辺縁には、前記内枠と前記外枠との間隙に突出する突条である張出部が形成されている、請求項7に記載の点検口。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の天井又は壁面のような設置面に開設される点検口に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の利用者が通常視認することのない建物の構造部又は機能部(たとえば、換気、空調、又は電気設備等)の点検用に、建物の壁面又は天井に点検口を設けることがある。点検口は、設置面に設けられる開口を、開閉可能に塞ぐ蓋体を有する。このような点検口として、たとえば特許文献1~特許文献3に記載の技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-204369号公報
【特許文献2】特開2021-017745号公報
【特許文献3】特開昭61-186650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、点検口の蓋において施錠器が表面に露出しないようにすることで、点検口周辺の外観を良好なものとすることを課題としている。しかし、本技術では蓋体を開放する際に天井パネル材と蓋体との間の隙間から板状の開錠具を差し入れる必要がある。したがって、蓋体の四辺のどこに施錠器があるのかが一見して分からないため、いずれの辺のどの部分に開錠具を差し入れるべきかが分かりにくくなっていた。
【0005】
特許文献2に記載の技術では、簡素な機構で防犯性を向上させ得る点検口を提供する目的で、蓋体の内枠に設けられた係合部材と、外枠に設けられた施錠板ばねの係合により内枠がロックされる技術が開示されている。しかし、本技術でもまた、内枠を開放する際に外枠と点検口蓋との間の隙間から板状の開錠具を差し入れて係合を解除する必要がある。したがって、内枠の四辺のうちのいずれの辺のどの部分に開錠具を差し入れるべきかが分かりにくくなっていた。また、外枠フランジと内枠フランジが表面に露出するため、点検口の存在が目立っていた。
【0006】
特許文献3に記載の技術では、従来の天井点検口は天井パネルと材質が異なることで見栄えが悪いという問題点に鑑み、天井パネルに天井点検口を一体に形成し、蓋体を天井パネル材と同質の材料で形成する、という技術が開示されている。しかし、本技術では、天井パネルが金属製のものに事実上限定されるため、汎用性を欠くものであった。
【0007】
本開示の実施態様は、天井又は壁面に設置される点検口について、その存在が目立たないよう意匠性に配慮しつつ、開閉作業も容易かつ安全に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施態様の点検口は、設置面に設けられる開口に固定される方形状の外枠と、前記外枠の内側に開閉可能に設置される方形状の内枠と、前記内枠の内部に装着されるとともに、前記内枠の自由端側に貫通孔が設けられる蓋材と、前記内枠の自由端側の内面の遠位側に固定される遠位ステーと、前記内枠の自由端側の内面の近位側に固定される近位ステーと、前記遠位ステーに固定されるとともに、前記外枠に対して係止可能なラッチ片と、前記ラッチ片を回動させるための鍵孔とを有する錠ユニットと、前記貫通孔を通した状態で前記近位ステーに固定されるとともに、前記鍵孔と軸心同一かつ上下方向に貫通する内面孔を有する鍵カバーと、を備える。
【0009】
本願において、「設置面」とは、たとえば天井や壁面をいう。天井は屋内及び軒下のような屋外を問わない。壁面は屋内及び屋外を問わない。
【0010】
本願において、「遠位」とは閉鎖した点検口によって隠されている方の側をいい、「近位」とは閉鎖した点検口の見える方の側をいう。たとえば、点検口が天井に設置される場合、「遠位」は上方を意味し、「近位」は下方を意味する。また、点検口が壁面に設置される場合、「遠位」は壁の中の側を意味し、「近位」は室内側を意味する。
【0011】
上記のように構成されることで、通常は蓋材側に設置される錠ユニットを設置面に対して遠位側に位置させることで表面に直接露出しないようになり、意匠性の向上がもたらされる。また、内面孔を有する鍵カバーが表面に露出することで、内面孔を通じて鍵孔まで解錠具を挿入して解錠操作を容易かつ安全に行うことも可能である。
【0012】
また、上記点検口においては、前記鍵孔は、前記内枠の近位側の辺縁よりも遠位側に位置し、かつ、前記鍵カバーの遠位側端部に対向する。このように構成されることで、鍵孔が室内側から直接視認されることがないため、点検口の外観の意匠性の向上がもたらされる。また、鍵カバーから鍵孔まで解錠具を挿入することが容易となる。
【0013】
また、上記点検口においては、前記内面孔の断面は、前記鍵孔の断面を包摂することが望ましい。このように構成されることで、内面孔から鍵孔まで解錠具を挿入することが容易となる。
【0014】
また、上記点検口においては、前記内面孔の遠位側の断面は、前記内面孔の近位側の断面に包摂されることが望ましい。さらには、前記内面孔の近位側の断面は円形であり、前記内面孔の遠位側の断面は正六角形であることがより望ましい。このように構成されることで、断面正六角形の遠位側の内面孔に六角レンチのような工具を挿入することで鍵カバーの取付作業を容易に行うことができる。その際、内面孔の近位側の断面は遠位側の断面を包摂しているので、工具を挿入しやすくなっている。また、内面孔の近位側の断面が円形であることで、点検口の内面孔の外観が円形となり意匠性も向上する。
【0015】
さらに、上記点検口においては、前記内枠の近位側の辺縁が、前記蓋材の近位側の面である化粧面よりも遠位側に位置している。このように構成されることで、内枠の近位側の辺縁が目地として表面に現れることがなくなるため、さらなる意匠性の向上がもたらされる。
【0016】
さらに、上記点検口においては、前記外枠の近位側の辺縁が、前記設置面よりも遠位側に位置している。このように構成されることで、外枠の近位側の辺縁が目地として表面に現れることがなくなるため、さらなる意匠性の向上がもたらされる。
【0017】
また、上記点検口においては、前記開口の辺縁を被覆する見切材がさらに設けられるとともに、前記見切材の近位側の辺縁には、前記内枠と前記外枠との間隙に突出する突条である張出部が形成されている。このように構成されることで、張出部により内枠と外枠との間隙をより狭くすることができるため、点検口の意匠的外観が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本開示の実施態様は、上記のように構成されているので、天井又は壁面に設置される点検口について、その存在が目立たないよう意匠性に配慮しつつ、開閉作業も容易かつ安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の点検口の外観を下方斜視図にて示す。
【
図3】実施形態の点検口を、一部を破断した下方斜視図にて示す。
【
図4】実施形態の点検口の要部を、一部を断面で表示した側面図にて示す。
【
図5】実施形態の点検口における錠ユニット及び鍵カバーの組み付け図を斜視図にて示す。
【
図6】
図5における錠本体及び鍵カバーを下方斜視図にて示す。
【
図7】実施形態の点検口においてカバー部材を取り付ける状態を一部側面断面図にて示す。
【
図8】実施形態の点検口における鍵カバーの外観を底面図にて示す。
【
図9】実施形態の点検口の解錠具を側面図にて示す。
【
図10】実施形態の点検口を開放する状態を、一部の部材を省略した下方斜視図にて示す。
【
図11】実施形態の点検口の閉鎖状態を上方斜視図にて示す。
【
図12】
図11の閉鎖状態を解除した状態を上方斜視図にて示す。
【
図13】第二の実施形態の点検口の要部を、一部を断面で表示した側面図にて示す。
【
図14】第三の実施形態の点検口の要部を、一部を断面で表示した側面図にて示す。
【
図15】第四の実施形態の点検口の要部を、一部を断面で表示した側面図にて示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の点検口の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において共通して付されている符号については、各図面の説明で言及されていない場合であっても同一の部位又は部材を指し示すものである。さらに、下記で言及する各部材の材質は一例であって、これに限定されるものではない。
【0021】
図1は、本願の実施形態において、点検口10の外観を斜視図にて示すものである。なお、本実施形態では、点検口10が設置面100としての天井に設置される場合について説明する。点検口10は、設置面100に設けられた方形の開口110に、蓋材40が装着された状態で視認される。蓋材40の近位側の面(換言すると、下面)には後述する仕上材43(
図3参照)が装着され、これが室内側からは化粧面42として視認される。また、蓋材40の四辺のうちの一辺の中央には、鍵カバー80が露出している。
【0022】
図1の点検口10の破線部分を拡大した
図2に示すように、鍵カバー80のうちの円形の仕上部83が表面に露出しており、その中心には円形の内面孔82が開口している。また、設置面100との見切り部分には、後述する外枠20(
図3参照)の下縁部分である近位縁22が見えている。
【0023】
図3は、実施形態の点検口10を、一部を破断した下方斜視図にて示すものである。前述したように、設置面100に設けられる開口110には、方形状の外枠20が固定される。具体的には設置面100を構成する壁材120の辺縁に、外枠20が設置される。外枠20の下縁部分の、開口110との見切り部分が近位縁22となっている。
【0024】
外枠20の内側には、方形状の内枠30が開閉可能に設置される。内枠30の内部には蓋材40が装着されている。外枠20及び内枠30の遠位縁(すなわち、上縁)にはそれぞれフランジ21及びフランジ31が形成されている。蓋材40の近位側には仕上材43が装着され、仕上材43の表面が化粧面42となっている。また、蓋材40の辺縁には断面略J字状の見切材44が装着されている。見切材44は、
図10に示すように、幅広の板状の広幅部44aと、幅狭の板状の狭幅部44cと、これらを連結する板状の中間部44bとで構成される、合成樹脂製の長尺部材である。狭幅部44cの下面側は、上方に向けて斜めに削がれたような形状となっている(
図7参照)。蓋材40の辺縁と外枠20の近位縁22との間には内枠30の開閉に必要な分の間隙が生じている。さらに、内枠30の自由端側には貫通孔41(
図7参照)が設けられ、ここに鍵カバー80が挿通され、その下端部である円形の仕上部83が化粧面42上に視認される。仕上部83の中心には内面孔82が開口している。
【0025】
図4は、実施形態の点検口10の要部を、一部を断面で表示した側面図にて示すものである。内枠30には、下地材押さえ46がネジ止めで装着され、この下地材押さえ46に下地材45が止めネジ45aで装着され、この下地材45の近位側に蓋材40が接着剤にて装着される。また、蓋材40の自由端側には、貫通孔41が形成される。内枠30の近位側の辺縁である近位縁32は、蓋材40の近位側の面である化粧面42よりも遠位側に位置しており、これにより近位縁32は表面には現れないこととなっている。
【0026】
内枠30の自由端側の内面の遠位側(すなわち、上側)には、遠位ステー50が取付ネジ54にて装着される。遠位ステー50には、錠ユニット70がナット53により固定される。錠ユニット70は、外枠20のフランジ21及び内枠30のフランジ31に係止可能なラッチ片73を有している。ラッチ片73は、錠ユニット70の遠位端にワッシャ76を介して取付ネジ77で装着される。さらに、錠ユニット70の近位端には、ラッチ片73を回動させるための鍵孔74(
図6、
図8及び
図10参照)が設けられている。
【0027】
また、内枠30の自由端側の内面の近位側(すなわち、下側)には、近位ステー60が取付ネジ64にて装着される。近位ステー60には、鍵カバー80が、貫通孔41を通した状態で、ナット63により固定される鍵孔74は、内枠30の近位側の辺縁よりも遠位側に位置し、かつ、鍵カバー80の遠位側端部に対向する(
図6参照)。鍵カバー80には上下方向に貫通する内面孔82(
図6及び
図7参照)が設けられている。この内面孔82は、前記した錠ユニット70の鍵孔74と軸心同一である(
図6及び
図8参照)。
【0028】
図5は、本実施形態の点検口10における錠ユニット70及び鍵カバー80の組み付け図を斜視図にて示すものである。また、
図6は、
図5における錠ユニット70の一部である錠本体78及び鍵カバー80を下方斜視図にて示すものである。錠ユニット70を固定する遠位ステー50は、内枠30に固定されるためのネジ孔51aが設けられる設置片51と、錠ユニット70が挿通される取付孔52aが設けられる取付片52とが、L字状に直交するL字金具として形成される。取付孔52aの辺縁は、1対の対向する円弧状の弧状部52bと、これらを連結する1対の対向する直線状の直線部52cとで形成されている。設置片51における近位側の辺である近位辺51bは、近位側に凸な形状を呈している。なお、遠位ステー50とは別体のナット53が、錠ユニット70を遠位ステー50に固定するために設けられている。
【0029】
鍵カバー80を固定する近位ステー60は、内枠30に固定されるためのネジ孔61aが設けられる設置片61と、鍵カバー80が挿通される取付孔62aが設けられる取付片62とが、L字状に直交するL字金具として形成される。取付片62の遠位側の面には、取付孔62aと孔の位置が一致するようにナット63が溶接されている。設置片61における遠位側の辺である遠位辺61bは、遠位側に凹な形状を呈しており、ここに前記した遠位ステー50の近位辺51bが入り込む。これにより、設置片51及び設置片61の長さを充分に取ることができ、遠位ステー50及び近位ステー60の内枠30への十分な取付強度を確保できるようになっている。
【0030】
錠ユニット70は、遠位ステー50の取付孔52aに挿通される錠本体78と、錠本体78に外挿されるスリーブ75と、錠本体78の遠位端に装着されるラッチ片73と、ワッシャ76を介してラッチ片73をネジ止めする取付ネジ77と、で構成される。
【0031】
錠本体78は略円柱状の外形を有し、上半分を構成する遠位部71と、下半分を構成する近位部72とに大別される。遠位部71の外周面には、ネジ山が切られている曲面部71aと、対向する2箇所が面削ぎされた形状の平面部71bとが形成されている。遠位部71の平面形状は、遠位ステー50の取付孔52aの平面形状と一致している。遠位部71の上端面には、四角形状に突出する凸部71cが形成されている。さらに遠位部71の上端面の中心には、取付ネジ77が螺入されるネジ孔71dが形成されている。一方、近位部72の外周面は円筒面となっていて、遠位部71の平面部71bとの境界に段差72aが形成されている。また、近位部72の下端には、外挿されるスリーブ75の下縁が当接するフランジ72bが形成されている。さらに、近位部72の下端の中心には、鍵孔74(
図6、
図8及び
図10参照)が設けられている。
【0032】
上下面が開放した円筒形状のスリーブ75は、錠本体78の外周面に外挿され、近位部72の下縁のフランジ72bに当接して係止される。スリーブ75の上縁は、遠位ステー50の設置片51の下面に当接する。これにより、錠ユニット70が遠位ステー50から遠位側に突出する寸法が、スリーブ75の高さに規制されることとなっている。
【0033】
ラッチ片73は階段状に屈曲して上段部73cと下段部73dとを有する板状部材として構成されている。下段部73dの下面には、錠ユニット70の凸部71cが嵌合する窪みである凹部73aが形成されている。また、下段部73dの中心には、取付ネジ77を挿通させる貫通孔73bが形成されている。
【0034】
合成樹脂の射出成形により形成される鍵カバー80は、蓋材40の貫通孔41(
図7参照)に挿入される円筒形状の挿入部81と、化粧面42の外側に露出するフランジ状の仕上部83とで構成される。鍵カバー80は、蓋材40の仕上材43の色調と同系の色調の合成樹脂により形成されることで、仕上部83が化粧面42に対して目立たないようになっている。また、鍵カバー80は、上下方向に貫通する内面孔82を有している。内面孔82の断面は、錠ユニット70の鍵孔74の断面を包摂する大きさとなっている(
図6、
図8参照)。また、内面孔82は、遠位側と近位側で断面形状が異なっており、遠位側である遠位側内面孔82aの断面が、近位側である近位側内面孔82bの断面に包摂される大きさとなっている(
図6、
図7及び
図8参照)。さらに、近位側内面孔82bの断面は円形であり、遠位側内面孔82aの断面は正六角形である(
図6及び
図8参照)。
【0035】
錠ユニット70及び鍵カバー80は、たとえば以下のようにして内枠30へ取り付けられる。まず、錠本体78にスリーブ75を外挿させてから、遠位部71を、遠位ステー50の取付孔52aへ下から挿通させる。そして、曲面部71aにナット53を螺着して、錠本体78を遠位ステー50に固定する。次いで、錠本体78の上面の凸部71cを、ラッチ片73の下面の凹部73aに嵌合させた状態で、上方からワッシャ76を挟んで取付ネジ77をラッチ片73の貫通孔73bに挿通し、錠本体78のネジ孔71dに螺入する。これにより、ラッチ片73が錠本体78に取り付けられる。これにより、錠ユニット70が遠位ステー50に固定される。
【0036】
そして、
図7に示すように、錠ユニット70が固定された遠位ステー50を内枠30に取付ネジ54で固定し、次いで近位ステー60を内枠30に取付ネジ64で固定する。そして、下地材45を下地材押さえ46を介して内枠30に取り付ける。
【0037】
一方、あらかじめ所定の位置に貫通孔41を形成した蓋材40の辺縁に、狭幅部44cが下になるようにして見切材44を装着し、そして、設置面100と同じ色調のパテ及び塗料による仕上材43を塗布して、化粧面42を形成しておく。この状態で、貫通孔41が近位ステー60の取付孔62aと一致させて、下地材45に蓋材40を接着することで、内枠30の内部に蓋材40を装着する(
図7参照)。最後に、貫通孔41の下から鍵カバー80を挿入した上で、遠位側内面孔82aと一致する形状の六角レンチを内面孔82に挿入してこれを回転させることで、ナット63に挿入部81を螺合させて、鍵カバー80が近位ステー60に固定される。
【0038】
以上により、
図4に示すように、錠ユニット70及び鍵カバー80が内枠30に装着される。すなわち、錠ユニット70が蓋材40に直接取り付けられていないため、蓋材40の表面に鍵孔74が現れることがなくなる。換言すると、鍵孔74は、内枠30の近位縁32よりも遠位側に位置し、かつ、鍵カバー80の遠位側端部とは離間しつつ近傍に位置している。この状態の底面図である
図8に示すように、鍵カバー80の仕上部は同系色の化粧面42に対し目立たなくなっている。また、近位側から視認される内面孔82のうち、最も近位側の近位側内面孔82bが円形である。これにより、その奥側に位置しこれに包摂される正六角形状の遠位側内面孔82a、さらにその奥側に位置しこれに包摂される正六角形状の鍵孔74が目立たないようになっている。さらに、
図7に示すように、蓋材40の辺縁に装着される見切材44の狭幅部44cが、仕上材43に被覆されて化粧面42に現れていない。加えて、内枠30の近位縁32が化粧面42よりも遠位側に位置しているため、内枠30が目地として表面に現れてこない。以上の点が相まって、点検口10の意匠的外観が向上することとなっている。
【0039】
図9は、本実施形態の点検口10の解錠具90を側面図で示すものである。解錠具90は、合成樹脂製の把手91に、断面六角形の鉄製の棒状材である挿入棒92が装着された形状を呈している。挿入棒92は、周囲を傷つけてしまうのを防止するため、先端部分を除いて、たとえばゴム製のチューブで被覆される。挿入棒92のうち、この被覆がされていない先端部分は、鍵孔74に挿入可能な大きさの断面を有する解除部93となっている。
【0040】
図10は、本実施形態の点検口10を開放する状態を、蓋材40及び鍵カバー80を省略して下方斜視図にて示すものである。内面孔82に解錠具90の挿入棒92を挿入し、先端の解除部93が鍵孔74に挿入される。このとき、内面孔82の入口である近位側内面孔82bから、遠位側内面孔82aを経て鍵孔74まで、その大きさが徐々に小さくなっており、また、鍵カバー80の遠位側端部が鍵孔74の近傍に位置しているため、解除部93が鍵孔74へスムーズに誘導されることとなっている。
【0041】
図11は、本実施形態の点検口10が閉鎖されている状態を、上方斜視図で示すものである。本図に示すように、錠ユニット70のラッチ片73が外枠20のフランジ21に係合していることで、点検口10の閉鎖状態が維持されている。この状態で、
図10に示すように、解錠具90の解除部93が鍵孔74に挿入された状態から、把手91を捻るように回転させると、
図12に示すように、鍵孔74の回転にラッチ片73が連動し、外枠20のフランジ21との係合が解除される。この状態で、解錠具90を挿入したまま把手91を下方に移動させると、重力により内枠30の自由端が回動して点検口10は開放状態となる。
【0042】
一方、点検口10を閉鎖するときは、内面孔82に解錠具90を挿入した状態でそのまま上方へ押し上げるように内枠30を回動させ、外枠20に突き当たったところで把手91を逆方向に捻れば、
図12に示す状態から
図11に示す状態へ遷移する。これにより、ラッチ片73が外枠20のフランジ21に係合して再び点検口10は閉鎖状態となる。以上のように、操作者は、鍵カバー80に解錠具90を挿入した状態で内枠30を開閉することができるため、蓋材40や周囲の設置面100に触れずに済む。これにより、蓋材40や周囲の設置面100を汚損することが防止できる。また、鍵カバー80が近位ステー60により固定されているため、内枠30の開閉時に鍵カバー80によ
る蓋材40の汚損を防止できる。また、錠ユニット70の鍵孔74を鍵カバー80の遠位側端部の近傍に位置させることにより、鍵孔74に挿入した解錠具90は内面孔82において揺動する範囲が小さくなり、内枠30の開閉時に鍵カバー80による蓋材40の汚損を防止できる。
【0043】
なお、鍵孔74の形状は、鍵カバー80の内面孔82に包摂される形状及び大きさであれば、上記した実施形態のような正六角形状に限定されるものではない。しかし、解錠具90として入手しやすい六角棒を利用できる点や、鍵孔74の向きと解錠具90の向きとを合わせる際に動かす角度が60°以下とわずかである点、また、通常の鍵を使用するような厳密な挿入の方向性が要求されない点を考慮すれば、鍵孔74の形状は、上記した実施形態のような正六角形状が望ましい。
【0044】
また、本開示の点検口10の形状は、
図1に示すような、四辺がほぼ等しい方形に限定されず、長辺と短辺とがある方形に形成することも可能である。この場合、錠ユニット70は、自由端側の長辺に2箇所設けることが望ましい。そして、この場合の点検口10の解錠は、解錠具90を両手にそれぞれ把持した状態で、同時に鍵孔74に挿入し把手91を回転させることで同様に可能である。
【0045】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0046】
なお、
図13に示す
第二の実施形態のように、鍵カバー80は、近位ステー60(
図4参照)を設けずに、貫通孔41に挿入された鍵カバー80を、ワッシャ63aを介してナット63で締結することで、仕上部83(
図5参照)とナット63とで蓋材40を挟み込むようにして、蓋材40に直接取り付けることとしてもよい。この場合も、上述した実施形態と同様に、解錠具90を用いて点検口10を開閉することができる。また、
図7に示すように、蓋材40の辺縁に装着される見切材44の狭幅部44cが、仕上材43に被覆されて化粧面42に現れていないこと、さらに、内枠30の近位縁32が化粧面42よりも遠位側に位置しているため、内枠30が目地として表面に現れてこないこともまた上述した実施形態と同様であり、以上の点が相まって、点検口10の意匠的外観が向上することとなっているのもまた同様である。
【0047】
また、
図14に示す第三の実施形態のように、設置面100の開口110(
図1参照)が、断面略J字状の見切材48で被覆されていてもよい。ここで、見切材48は、
図14に示すように、幅広の板状の広幅部48aと、幅狭の板状の狭幅部48cと、これらを連結する板状の中間部48bとで構成される、合成樹脂製の長尺部材である。狭幅部48cの下面側は、上方に向けて斜めに削がれたような形状となっている。そして、外枠20の近位縁22は、見切材48の遠位縁の角部分を覆っていることで、設置面よりも遠位側に位置している。これによって、外枠20の近位縁が目地として表面に現れることがなくなるため、さらなる意匠性の向上がもたらされる。
【0048】
さらに、見切材48の近位側の辺縁には、内方へ突出する突条である張出部48dが形成されている。この張出部48dが、内枠30と外枠20との間隙を狭めており、点検口10の意匠的外観の向上をもたらしている。さらに、張出部48dの上面側は、下方に向けて斜めに削がれたような形状となっているため、点検口10を開放する際、回動する内枠30が見切材48と干渉するのを防いでいる。
【0049】
なお、
図15に示す第四の実施形態のように、第三の実施形態と同様に設置面100の開口110(
図1参照)が、断面略J字状の見切材48で被覆されつつ、蓋材40の辺縁は通常の内枠30の内面で覆われることとしてもよい。このとき、内枠30の近位縁32は蓋材40と面一となっている。すなわち、室内側からは、内枠30の近位縁32は視認できるものの、外枠20の近位縁22は室内側から視認されないようになっている。
【符号の説明】
【0050】
10 点検口 20 外枠 21 フランジ 22 近位縁 30 内枠 31 フランジ 32 近位縁 40 蓋材 41 貫通孔 42 化粧面 43 仕上材 44 見切材 44a 広幅部 44b 中間部 44c 狭幅部 45 下地材 45a 止めネジ 46 下地材押さえ 48 見切材 48a 広幅部 48b 中間部 48c 狭幅部 48d 張出部 50 遠位ステー 51 設置片 51a ネジ孔 51b 近位辺 52 取付片 52a 取付孔 52b 弧状部 52c 直線部 53 ナット 54 取付ネジ 60 近位ステー 61 設置片 61a ネジ孔 61b 遠位辺 62 取付片 62a 取付孔 63 ナット 63a ワッシャ 64 取付ネジ 70 錠ユニット 71 遠位部 71a 曲面部 71b 平面部 71c 凸部 71d ネジ孔 72 近位部 72a 段差 72b フランジ 73 ラッチ片 73a 凹部 73b 貫通孔 73c 上段部 73d 下段部 74 鍵孔 75 スリーブ 76 ワッシャ 77 取付ネジ 78 錠本体 80 鍵カバー 81 挿入部 82 内面孔 82a 遠位側内面孔 82b 近位側内面孔 83 仕上部 90 解錠具 91 把手 92 挿入棒 93 解除部 100 設置面 110 開口 120 壁材