(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106244
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】操作レバー及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240731BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010480
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迫田 享大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 幸信
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B087DE05
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】レバー本体の強度を低下させる。
【解決手段】リクライニングロッド48を回転操作するためのリクラレバー50は、ストッパ52と、レバー本体74と、キャップ92とを備えている。ストッパ52は、リクライニングロッド48に対して一体回転可能に取り付けられ、車両用シートのフレームと係合することで回転範囲を制限される。このストッパ52には、弾性変形可能な係止爪70が設けられている。レバー本体74は、ストッパ52に取り付けられており、係止爪70が挿入される係止孔90を有している。係止爪70が係止孔90の縁部に引っ掛かることで、レバー本体74がストッパ52に係止されている。キャップ92は、レバー本体74に取り付けられており、係止爪70の弾性変形を制限することで上記の引っ掛かり状態を保持している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに設けられたシート調整機構の操作軸を回転操作するための操作レバーであって、
前記操作軸に対して一体回転可能に取り付けられ、前記乗物用シートのフレームと係合することで回転範囲を制限されると共に、弾性変形可能な係止爪を有するストッパと、
前記ストッパに取り付けられ、前記係止爪が挿入される係止孔が形成され、前記係止爪が前記係止孔の縁部に引っ掛かることで前記ストッパに係止されるレバー本体と、
前記レバー本体に取り付けられ、前記係止爪の弾性変形を制限することで前記引っ掛かり状態を保持するキャップと、
を備えた操作レバー。
【請求項2】
前記ストッパは、前記操作軸の周方向に並ぶ複数の前記係止爪を有し、
前記レバー本体は、前記複数の係止爪が挿入される複数の前記係止孔を有し、
前記キャップは、前記複数の係止爪の弾性変形を制限するリブを有する請求項1に記載の操作レバー。
【請求項3】
前記レバー本体は、前記ストッパを構成する樹脂よりも曲げ強度が低い樹脂によって構成されている請求項1又は請求項2に記載の操作レバー。
【請求項4】
前記レバー本体は、前記ストッパを構成する繊維強化樹脂よりも繊維含有率が低い繊維強化樹脂によって構成される請求項3に記載の操作レバー。
【請求項5】
シート調整機構を有し、車両の乗員が着座するシート本体と、
前記シート調整機構の操作軸に前記ストッパが取り付けられた請求項1又は請求項2に記載の操作レバーと、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特にシート調整機構の操作軸を回転操作するための操作レバーに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された乗物用シートは、リクライニング機構を作動させるための作動回動部材と、作動回動部材と連結して回動操作力を及ぼすことによってリクライニング機構を作動させるリクライニングレバーとを有している。作動回動部材は、切換軸と、アーム部とが一体的に構成されている。リクライニングレバーは、把持部位と、回動操作力を作動回動部材に伝達するための連結部位とを有している。連結部位は、切換軸に対し軸方向から嵌合する嵌合部と、アーム部に対しアーム部の回動方向に対向して接触する出力面部とを有している。これにより、回動操作レバーと作動回動部材との連結において回動操作力が集中しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術では、リクライニングレバーが有する嵌合部及び出力面部が、作動回動部材の切換軸及びアーム部と直接係合するため、リクライニングレバー(レバー本体)の強度を高める必要がある。その結果、例えばリクライニングレバーを構成する繊維強化樹脂の繊維含有率を高める等の対策が必要となり、製造コストが増加する原因となる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、レバー本体の強度を低下させることができる操作レバー及びこれを備えた車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の操作レバーは、車両用シートに設けられたシート調整機構の操作軸を回転操作するための操作レバーであって、前記操作軸に対して一体回転可能に取り付けられ、前記乗物用シートのフレームと係合することで回転範囲を制限されると共に、弾性変形可能な係止爪を有するストッパと、前記ストッパに取り付けられ、前記係止爪が挿入される係止孔が形成され、前記係止爪が前記係止孔の縁部に引っ掛かることで前記ストッパに係止されるレバー本体と、前記レバー本体に取り付けられ、前記係止爪の弾性変形を制限することで前記引っ掛かり状態を保持するキャップと、を備えている。
【0007】
第1の態様によれば、車両用シートに設けられたシート調整機構の操作軸を回転操作するための操作レバーは、ストッパと、レバー本体と、キャップとを備えている。ストッパは、操作軸に対して一体回転可能に取り付けられ、車両用シートのフレームと係合することで回転範囲を制限されると共に、弾性変形可能な係止爪を有している。レバー本体は、ストッパに取り付けられ、係止爪が挿入される係止孔が形成され、係止爪が係止孔の縁部に引っ掛かることでストッパに係止される。キャップは、レバー本体に取り付けられ、係止爪の弾性変形を制限することで上記引っ掛かり状態を保持する。これにより、ストッパからのレバー本体の脱落が防止される。この態様では、レバー本体がストッパを介して操作軸に取り付けられるので、レバー本体が操作軸に直接取り付けられる場合と比較して、レバー本体の強度を低下させることができる。
【0008】
第2の態様の操作レバーは、第1の態様において、前記ストッパは、前記操作軸の周方向に並ぶ複数の前記係止爪を有し、前記レバー本体は、前記複数の係止爪が挿入される複数の前記係止孔を有し、前記キャップは、前記複数の係止爪の弾性変形を制限するリブを有する。
【0009】
第2の態様によれば、ストッパが有する複数の係止爪が操作軸の周方向に並んでおり、レバー本体が有する複数の係止孔に複数の係止爪が挿入される。レバー本体にキャップが取り付けられると、キャップに形成されたリブによって複数の係止爪の弾性変形が制限される。これにより、複数の係止孔の縁部に対する複数の係止爪の返し部の引っ掛かり状態を保持することができる。
【0010】
第3の態様の操作レバーは、第1の態様又は第2の態様において、前記レバー本体は、前記ストッパを構成する樹脂よりも曲げ強度が低い樹脂によって構成される。
【0011】
第3の態様では、上記のように構成されるので、ストッパの強度を確保しつつ、レバー本体の製造コストを低下させることが可能となる。
【0012】
第4の態様の操作レバーは、第3の態様において、前記レバー本体は、前記ストッパを構成する繊維強化樹脂よりも繊維含有率が低い繊維強化樹脂によって構成される。
【0013】
第4の態様では、上記のように構成されるので、レバー本体及びストッパの曲げ強度の設定が容易になる。
【0014】
第5の態様の車両用シートは、シート調整機構を有し、車両の乗員が着座するシート本体と、前記シート調整機構の操作軸に前記ストッパが取り付けられた第1の態様~第4の態様の何れか1つの態様の操作レバーと、を備えている。
【0015】
第5の態様の車両用シートでは、乗員が着座するシート本体に設けられたシート調整機構の操作軸に、操作レバーのストッパが取り付けられる。この操作レバーは、第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様のものであるため、前述した効果が得られる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る操作レバー及び車両用シートによれば、レバー本体の強度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る車両用シートの一部を示す斜視図である。
【
図3】
図2のF3-F3線に沿った切断面を示す断面図である。
【
図4】
図2のF4-F4線に沿った切断面を示す断面図である。
【
図5】実施形態に係る車両用シートの操作レバーとその周辺の構成を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示される構成を
図5とは異なる方向から見た状態で示す斜視図である。
【
図7】操作レバーが備えるストッパを表面側から見た状態で示す斜視図である。
【
図9】操作レバーが備えるレバー本体を表面側から見た状態で示す斜視図である。
【
図10】レバー本体を背面側から見た状態で示す斜視図である。
【
図11】操作レバーが備えるキャップを表面側から見た状態で示す斜視図である。
【
図12】キャップを背面側から見た状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1~
図12を参照して本発明の一実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR、LH及びUPは、車両用シート10の前方、左方及び上方をそれぞれ示している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、車両用シート10に対する方向を示すものとする。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、一例として所謂右ハンドルの車両の運転席であり、乗員が着座するシート本体12と、操作レバーであるリクラレバー50とを備えている。シート本体12は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション14と、乗員の背部を支持するシートバック16と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト18と、車両に対するシート本体12の前後位置を調整するためのスライド機構36と、車両に対するシート本体12の上下位置を調整するためのリフタ機構38と、シートクッション14に対するシートバック16のリクライニング角度を調整するためのリクライニング機構40とを備えている。リクライニング機構40は、本発明における「シート調整機構」に相当する。
【0020】
図2に示さ
れるように、シートクッション14の骨格を構成するクッションフレーム20は、左右一対のサイドフレーム22と、左右のサイドフレーム22の前部を左右方向に繋いだフロントフレーム24と、左右のサイドフレーム22の後端部を左右方向に繋いだリヤフレーム26と、左右のサイドフレーム22の後端部に固定された左右一対のBブラケット28(左側のBブラケット28は図示省略)とを備えている。シートバック16の骨格を構成するバックフレーム30は、左右一対のサイドフレーム32(左側のサイドフレーム32は図示省略)と、左右のサイドフレーム32の下端部を左右方向に繋いだロアフレーム34と、左右のサイドフレーム32の上端部を左右方向に繋いだ図示しないアッパフレームとを備えている。
【0021】
図2~
図4に示されるように、右側のサイドフレーム32の下端部は、右側のBブラケット28に対して左方側(シート幅方向内側)に配置されている。右側のサイドフレーム32の下端部と、右側のBブラケット28との間には、リクライニング機構40の主要部を構成するリクライナ42が配置されている。図示は省略するが、リクライナ42は、左側のBブラケット28と、左側のサイドフレーム32との間にも配置されている。左右のリクライナ42は、操作軸であるリクライニングロッド48によって左右方向に繋がれている。リクライニングロッド48には、リクラレバー50が取り付けられている。リクライニングロッド48及びリクラレバー50は、リクライニング機構40の一部を構成している。
【0022】
リクライニングロッド48の左右の端部は、断面略三角形状に潰し加工されている。リクライニングロッド48の右端部は、右側のサイドフレーム32の下端部、右側のリクライナ42及び右側のBブラケット28を貫通しており、右側のBブラケット28に対して右方側(シート幅方向外側)へ突出している。リクライニングロッド48の左端部は、左側のサイドフレーム32の下端部、左側のリクライナ42及び左側のBブラケット28を貫通しており、左側のBブラケット28に対して左方側(シート幅方向外側)へ突出している。
【0023】
左右のリクライナ42の軸心部には、リクライニングロッド48の左右の端部が嵌合した回転部材44(
図3及び
図4参照)が設けられている。この回転部材44がリクライニングロッド48と一体で回転されることにより、左右のリクライナ42のロックが解除され、シートバック16のリクライニング角度の調整が可能となる。なお、
図3及び
図4において、17は、シートバック16を起立方向へ付勢するねじりコイルばねである。
【0024】
リクラレバー50は、右側のBブラケット28に対して右方側に配置されており、リクライニングロッド48の右端部に取り付けられている。このリクラレバー50は、リクライニングロッド48を回転操作するための操作レバーである。このリクラレバー50は、
図1~
図6に示されるように、ストッパ52と、レバー本体74と、キャップ92とを備えている。
【0025】
図7及び
図8に示されるように、ストッパ52は、周壁部54と底壁部56とを有する略有底円筒状をなしている。このストッパ52は、ここではガラス繊維強化樹脂によって構成されており、周壁部54の開口が左方側(シート幅方向内側)を向く姿勢で、リクライニングロッド48と同軸的に配置されている。底壁部56の中央部には、略三角形の嵌合孔58が形成されると共に、右方側(シート幅方向外側)へ突出したボス部60(
図7参照)が嵌合孔58の縁部から延出されている。このボス部60及び嵌合孔58の内側には、リクライニングロッド48の右端部が圧入されている。これにより、ストッパ52がリクライニングロッド48に対して一体回転可能に取り付けられている。
【0026】
図8に示されるように、ストッパ52の周壁部54の内側には、略円筒状の内壁部62が同軸的に設けられており、内壁部62の内側には、複数(ここでは3つ)の固定爪64が設けられている。内壁部62及び固定爪64は、底壁部56から一体に延出されている。複数の固定爪64は、周壁部54の周方向に並んで配置されている。各固定爪64は、周壁部54の径方向に弾性変形可能とされている。各固定爪64の先端部には、周壁部54の径方向内側へ向けて突出した返し部(符号省略)が形成されており、当該返し部は、右側のリクライナ42の回転部材44に形成された周方向溝46(
図3及び
図4参照)に嵌合している。これにより、ストッパ52がリクライニングロッド48の右端部に対して抜け止めされている。
【0027】
なお、リクライニングロッド48の右端部にストッパ52が取り付けられる際には、各固定爪64の返し部が回転部材44と摺接することにより、各固定爪64がリクライニングロッド48の径方向外側へ弾性変形した後に弾性復帰し、各固定爪64の返し部が周方向溝46に嵌合する。
【0028】
ストッパ52のボス部60の外側には、周壁部54の周方向に沿って延在する異形形状の嵌合壁部66が設けられている。嵌合壁部66は、底壁部56から一体に延出されている。嵌合壁部66には、ボス部60側へ凹んだ複数(ここでは3つ)の凹部68が周方向に並んで形成されている。3つの凹部68は、周壁部54の周方向に等間隔又は略等間隔に並んで配置されている。
【0029】
複数の凹部68内には、それぞれ係止爪70が設けられている。複数(ここでは3つ)の係止爪70は、底壁部56から一体に延出されており、周壁部54の周方向に等間隔又は略等間隔に並んで配置されている。各係止爪70は、周壁部54の径方向に弾性変形可能とされている。各係止爪70の先端部には、嵌合壁部66とは反対側(周壁部54の径方向外側)へ向けて突出した返し部70Aが形成されている。
【0030】
また、底壁部56には、3つの係止爪70に対して周壁部54の周方向にずれた箇所に、複数(ここでは3つ)の貫通孔72が形成されている。複数の貫通孔72は、周壁部54の軸方向から見て嵌合壁部66とボス部60との間に配置されており、底壁部56を貫通している。複数の貫通孔72は、周壁部54の軸方向から見て周壁部54の周方向を長手とする略矩形状をなしている。
【0031】
周壁部54の一部には、周壁部54の径方向外側へ突出した回転制限部54Aが形成されている。回転制限部54Aは、周壁部54の軸方向から見て円弧状をなしており、左方側(シート幅方向内側)へ向けて開口している。
図3、
図5及び
図6に示されるように、回転制限部54Aの内側には、右側のBブラケット28の上端部に設けられた回転制限片28Aが挿入されている。回転制限片28Aは、右側のBブラケット28の上端部から右方側(シート幅方向外側)へ向けて突出しており、回転制限部54Aよりも周壁部54の周方向の寸法が小さく形成されている。ストッパ52がリクライニングロッド48と一体で回転すると、回転制限部54Aにおける上記周方向の端部が回転制限片28Aに当たる。これにより、ストッパ52すなわちリクラレバー50の回転範囲が制限される構成になっている。
【0032】
図9及び
図10に示されるように、レバー本体74は、略三角形(略台形)の皿状をなしている。このレバー本体74は、ここではガラス繊維強化樹脂によって構成されており、厚さ方向が左右方向に沿い且つ左方側へ向けて開口する姿勢で、ストッパ52に対する右方側(シート幅方向外側)に配置されている。レバー本体74における左方側の面には、ハニカム状の補強用リブ(符号省略)が形成されている。このレバー本体74は、ストッパ52を構成するガラス繊維強化樹脂よりもガラス繊維の含有率が低いガラス繊維強化樹脂によって構成されている。例えば、ストッパ52を構成するガラス繊維強化樹脂のガラス繊維含有率が60%とされ、レバー本体74を構成するガラス繊維強化樹脂のガラス繊維含有率が30%とされている。これにより、レバー本体74を構成する樹脂は、ストッパ52を構成する樹脂よりも曲げ強度が低く設定されている。なお、ストッパ52及びレバー本体74を構成する樹脂は、ガラス繊維強化樹脂に限らない。
【0033】
このレバー本体74は、後方側へ向かうほど上下方向の寸法が上方側へ拡大する形状をなしている。レバー本体74の前部(すなわちレバー本体74において上下方向の寸法が小さい部分)の下面には、乗員がレバー本体74を操作する際に指を掛けるための凹みである指掛け部74Aが形成されている。レバー本体74の後部(すなわちレバー本体74において上下方向の寸法が大きい部分)の上部には、円形の貫通孔76が形成されている。この貫通孔76は、リクライニングロッド48と同軸上に配置されており、リクライニングロッド48の右端部が貫通孔76内に挿入されている。レバー本体74の後部の上部における右方側の面には、左方側へ凹んだ窪み部78が形成されている。窪み部78は、リクライニングロッド48と同心の段付き円柱状をなしており、外周側の部分よりも中央部側の部分が深く凹んでいる。
【0034】
また、レバー本体74の後部の上部には、左方側(シート幅方向内側)へ突出した外壁部80が形成されている。外壁部80は、リクライニングロッド48と同心の略円筒状をなしている。外壁部80の内周には、外壁部80の径方向内側へ突出した複数(ここでは3つ)の凸部82が形成されている。複数の凸部82は、外壁部80の周方向に等間隔又は略等間隔に並んで配置されている。
【0035】
外壁部80の内側には、複数(ここでは3つ)の嵌合部84が設けられている。複数の嵌合部84は、レバー本体74における貫通孔76の縁部から一体に延出されており、外壁部80の周方向に等間隔又は略等間隔に並んで配置されている。複数の嵌合部84は、外壁部80の複数の凸部82に対して外壁部80の周方向にずれた位置に配置されている。複数の嵌合部84は、ストッパ52の嵌合壁部66に形成された複数の凹部68の間に配置されており、嵌合壁部66の内側に嵌合している。嵌合壁部66の複数の凹部68には、外壁部80の複数の凸部82が嵌合している。これにより、レバー本体74がストッパ52に対して一体回転可能に取り付けられている。
【0036】
図9に示されるように、レバー本体74は、複数の嵌合部84が形成された箇所がそれぞれ左方側へ凹んだキャップ係止孔86とされている。また、
図10に示されるように、複数の嵌合部84の先端面からは、それぞれ倒れ防止片88が左方側へ向けて延出されている。各倒れ防止片88は、リクライニングロッド48の軸方向を長手方向とし且つリクライニングロッド48の径方向を厚さ方向とする板状をなしている。複数の倒れ防止片88は、ストッパ52の複数の貫通孔72に挿通され、ストッパ52の複数の固定爪64と内壁部62との間にそれぞれ配置されている。これにより、複数の固定爪64がリクライニングロッド48の径方向の外側への弾性変形を制限されており、複数の固定爪64の各返し部64Aが回転部材44の周方向溝46に嵌合した状態が保持されている。
【0037】
レバー本体74における貫通孔76の周囲には、複数(ここでは3つ)の係止孔90が形成されている。複数の係止孔90は、貫通孔76の周方向に等間隔又は略等間隔に並んで配置されており、貫通孔76の軸方向から見て貫通孔76の周方向を長手とする矩形状をなしている。複数の係止孔90は、複数の嵌合部84に対して貫通孔76の周方向にずれた位置に配置されている。複数の係止孔90には、ストッパ52に形成された複数の係止爪70がそれぞれ挿入されている。複数の係止孔90の先端部は、レバー本体74の窪み部78内へ突出しており、複数の係止爪70の先端部に形成された返し部70Aが、複数の係止孔90の縁部に引っ掛かっている。これにより、レバー本体74がストッパ52に係止されている。
【0038】
なお、ストッパ52にレバー本体74が取り付けられる際には、各係止爪70の返し部70Aが係止孔90の縁部と摺接することにより、各係止爪70がリクライニングロッド48の径方向内側へ弾性変形した後に弾性復帰し、各係止爪70の返し部70Aが係止孔90の縁部に引っ掛かる。
【0039】
図11及び
図12に示されるように、キャップ92は、円板状をなしており、リクライニングロッド48と同軸上に配置されている。このキャップ92は、ここではガラス繊維強化樹脂によって構成されており、レバー本体74の窪み部78に嵌め込まれている。このキャップ92は、ここではレバー本体74を構成するガラス繊維強化樹脂と同じガラス繊維強化樹脂によって構成されている。これにより、レバー本体74とキャップ92との外観変化をなくすようにしている。
【0040】
キャップ92における左方側(シート幅方向内側)の面には、複数(ここでは3つ)の引掛爪94が一体に形成されている。複数の引掛爪94は、リクライニングロッド48の周方向に等間隔又は略等間隔に並んで配置されている。複数の引掛爪94は、レバー本体74に形成された複数のキャップ係止孔86内に挿入されている。各引掛爪94の先端部には、キャップ92の径方向外側へ向けて突出した返し部94Aが形成されている。各引掛爪94の返し部94Aは、各キャップ係止孔86の開口部付近に形成されたスリット87(
図4及び
図9参照)に挿入されている。これにより、キャップ92がレバー本体74に係止されている。
【0041】
また、キャップ92における左方側の面には、円筒状のリブ96が一体に形成されている。このリブ96は、リクライニングロッド48と同軸上に配置されている。このリブ96は、
図4に示されるように、ストッパ52の複数の係止爪70の先端部に対して、返し部70Aとは反対側から近接して対向する。このリブ96は、複数の係止爪70がリクライニングロッド48側へ弾性変形することを制限する。これにより、複数の係止孔90の縁部に対する複数の係止爪70の返し部70Aの引っ掛かり状態が保持されるように構成されている。
【0042】
次に、本発明の作用及び効果について説明する。
上記構成の車両用シート10では、乗員が着座するシート本体12に設けられたリクライニング機構40のリクライニングロッド48に、リクライニングロッド48を回転操作するためのリクラレバー50が取り付けられている。このリクラレバー50は、ストッパ52と、レバー本体74と、キャップ92とを備えている。
【0043】
ストッパ52は、リクライニングロッド48に対して一体回転可能に取り付けられており、車両用シート10のクッションフレーム20の一部であるBブラケット28と係合することで回転範囲を制限される。このストッパ52には、弾性変形可能な係止爪70が設けられている。レバー本体74は、ストッパ52に取り付けられており、係止爪70が挿入される係止孔90を有している。係止爪70が係止孔90の縁部に引っ掛かることで、レバー本体74がストッパ52に係止されている。
【0044】
キャップは、レバー本体74に取り付けられており、係止爪70の弾性変形を制限することで上記の引っ掛かり状態を保持している。これにより、ストッパ52からのレバー本体74の脱落が防止されている。このリクラレバー50では、レバー本体74がストッパ52を介してリクライニングロッド48に取り付けられるので、レバー本体74がリクライニングロッド48に直接取り付けられる場合と比較して、レバー本体74の強度を低下させることができる。
【0045】
具体的には、このリクラレバー50では、係止爪70及び引掛爪94がストッパ52及びキャップ92に設けられ、レバー本体74には、係止爪70及び引掛爪94の相手である係止孔90及びスリット87が集約して設けられている。これにより、優先的に強度を必要としない部品としてレバー本体74を設定することができる。その結果、レバー本体74の製造コストを低下させることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態では、ストッパ52が有する複数の係止爪70がリクライニングロッド48の周方向に並んでおり、レバー本体74が有する複数の係止孔90に複数の係止爪70が挿入される。レバー本体74にキャップ92が取り付けられると、キャップ92に形成されたリブ96によって複数の係止爪70の弾性変形が制限される。これにより、複数の係止孔90の縁部に対する複数の係止爪70の返し部70Aの引っ掛かり状態を保持することができる。このリブ96は、リクライニングロッド48と同心の環状に形成されているため、キャップ92をレバー本体74に取り付ける際に、リクライニングロッド48の周方向に並ぶ複数の係止爪70に対してリブ96をリクライニングロッド48の周方向に位置合わせをする必要がない。これにより、レバー本体74へのキャップ92の取り付け作業が容易になる。
【0047】
また、本実施形態では、レバー本体74は、ストッパ52を構成するガラス繊維強化樹脂よりもガラス繊維の含有率が低いガラス繊維強化樹脂によって構成されている。このため、レバー本体74を構成する樹脂は、ストッパ52を構成する樹脂よりも曲げ強度が低く設定されている。これによりリクライニングロッド48が直接嵌合するストッパ52の強度を確保しつつ、レバー本体74の製造コストを低下させることが可能となる。しかも、レバー本体74及びストッパ52の強度の設定が容易である。
【0048】
なお、上記実施形態では、キャップ92のリブ96が環状に形成された構成にしたが、これに限らず、リブの形状は適宜変更可能である。
【0049】
また、上記実施形態では、キャップ92に形成されたリブ96によって係止爪70の弾性変形が制限される構成にしたが、これに限るものではない。例えばキャップ92に形成された凸部によって係止爪の弾性変形が制限される構成にしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、シート調整機構であるリクライニング機構40のリクライニングロッド48(操作軸)に取り付けられるリクラレバー50に対して本発明が適用された場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、シート調整機構であるリフタ機構38の操作軸に取り付けられた操作レバーであるリフタレバー98(
図1参照)に対して本発明が適用される構成にしてもよい。
【0051】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
10 車両用シート
12 シート本体
20 クッションフレーム(フレーム)
40 リクライニング機構(シート調整機構)
42 リクライナ
48 リクライニングロッド(操作軸)
50 リクラレバー(操作レバー)
52 ストッパ
70 係止爪
74 レバー本体
90 係止孔
92 キャップ
96 リブ