(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106247
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】引戸連動装置
(51)【国際特許分類】
E05F 17/00 20060101AFI20240731BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20240731BHJP
E06B 3/34 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
E05F17/00 A
E05D15/06 117
E05D15/06 101
E06B3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010489
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000145895
【氏名又は名称】株式会社小林製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000169329
【氏名又は名称】アトムリビンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(72)【発明者】
【氏名】田村 佳大
(72)【発明者】
【氏名】半井 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和江
【テーマコード(参考)】
2E014
2E034
【Fターム(参考)】
2E014AA01
2E014CA01
2E034AA01
2E034BA15
2E034CA01
2E034EA04
(57)【要約】
【課題】隣接する引戸の重複範囲を可及的に小さく抑制することができ、また損傷を抑制することができる引戸連動装置を提供する。
【解決手段】複数の引戸における連結軸D7が突出する突出端面に跨がって設置される引戸連動装置である。第1引戸の突出端面に取り付けられる第1枠体5、及び第1枠体5に沿って互いに逆方向にスライドする一対のスライダ8を有する連動装置本体2と、第2引戸の突出端面に取り付けられる第2枠体10、及び第2枠体10における一端部に取り付けられるとともに一方のスライダ8に係合する受け部11を有する受けユニット3とを備える。第2枠体10は、第2引戸の連結軸D7を一端部から長手方向に沿って挿通可能な挿通溝53を含み、第2枠体10は、挿通溝53内に連結軸D7が挿通される軸挿通部54と、軸挿通部54の外側に受け部11が挿通溝53内に挿入されて取り付けられる受け取付部55とを有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下いずれかの端部にユニット取付部が設けられた引戸本体と、前記引戸本体の戸幅方向の一側面から前記ユニット取付部に挿入されるとともに前記引戸本体の前記上下いずれかの端面から突出する突出軸が設けられる突出軸ユニットとをそれぞれに有する複数の引戸における前記突出軸が突出する突出端面に跨がって設置される引戸連動装置であって、
第1引戸の突出端面に長手方向の両端部に亘って取り付けられる第1枠体、及び前記第1枠体の長手方向に沿って互いに逆方向にスライドするとともに前記第1引戸に隣接する第2引戸の開閉に伴って前記第1引戸を連動開閉させる一対のスライダを有する連動装置本体と、
前記第2引戸の突出端面に長手方向の両端部に亘って取り付けられる第2枠体、及び前記第2枠体における長手方向の一端部に取り付けられるとともに前記一対のスライダのうち一方のスライダに係合する受け部を有する受けユニットとを備え、
前記第2枠体は、前記第2引戸の前記突出端面から突出する第2突出軸を前記一端部から前記長手方向に沿って挿通可能な溝部を含み、
前記第2枠体は、前記溝部内に前記第2突出軸が上下に挿通される軸挿通部と、前記軸挿通部の外側に前記受け部が前記溝部内に挿入されて取り付けられる受け取付部とを有する、引戸連動装置。
【請求項2】
前記第2枠体は、底壁と、底壁の前後側縁から立ち上がる前後側壁とを備え、
前記受けユニットは、前記第2枠体の受け取付部に配置された前記受け部を前後に貫通するとともに前後両端部が前記前後側壁に支持される取付軸部をさらに備える、請求項1記載の引戸連動装置。
【請求項3】
前記受け部は、前記受け取付部に挿入される受け本体と、前記受け本体から前記引戸の厚み方向における前記連動装置本体側に離間して配置されるとともに前記一方のスライダに係合する係合部と、前記受け本体及び前記係合部を跨がった状態で連結する連結部とを備え、
前記受け本体及び前記係合部の少なくともいずれか一方に、前記連結部が選択的に嵌合される複数の嵌合孔が前記厚み方向に沿って並設されている、請求項1に記載の引戸連動装置。
【請求項4】
前記一方のスライダは、前記厚み方向に開口する係止溝を有し、
前記係合部は、前記一方のスライダに押圧されることにより前記厚み方向に弾性変形するとともに前記係止溝に係止される係止フックを有する、請求項3記載の引戸連動装置。
【請求項5】
前記第1枠体と前記第2枠体とは、共通の枠体から構成されている、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の引戸連動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や家具などの構造物の開口部を複数の引戸で開閉する場合に、一の引戸の開閉操作に伴って他の引戸を連動させる引戸連動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物などにおける開口部においては、間口の有効利用等のため、引戸を複数枚設けることがある。このように複数枚の引戸を設けた場合には、一枚一枚の引戸を順次開閉操作することが面倒である等の理由から、一枚の引戸の開閉操作に伴い他の引戸を連動させる引戸連動装置が設置されることがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の引戸連動装置は、第1及び第2の引戸からなる上吊り式の引戸に設置されている。これらの引戸のそれぞれは、上端部における戸幅方向両端部に凹溝が設けられた引戸本体と、前記凹溝に挿入されるローラユニットとを備えている。ローラユニットは、前記引戸本体の凹溝に収納固定される引戸固定体と、前記引戸固定体から上方に突出することにより前記引戸本体の上端面から突出する連結軸と、前記連結軸の先端部に取り付けられたローラ体とを備え、前記引戸固定体が前記引戸本体の戸幅方向の一側方から前記凹溝に挿脱されることにより前記引戸本体を開口部から着脱できるように構成されている。
【0004】
特許文献1の引戸連動装置は、具体的には、第1引戸における引戸本体の上端面に長手方向の両端部に亘って取り付けられる連動装置本体と、前記第1引戸に隣接する第2引戸における引戸本体の上端面に取り付けられるとともに前記連動装置本体と係合する受け部材とを備え、前記第2引戸の開閉に伴って前記第1引戸を連動開閉させるものである。
【0005】
この連動装置本体は、引戸本体における上端面の両端部に亘って取り付けられる枠体と、枠体の長手方向両端部に取り付けられる一対のプーリと、これらのプーリに架け渡された無端状ワイヤと、無端状ワイヤに取り付けられるとともに前記枠体の長手方向に沿って互いに逆方向にスライドする一対のスライダとを備える。連動装置本体は、前記第1引戸における引戸本体の上端面に取り付けられた状態で前記ローラユニットを着脱することができるように、前記枠体の両端部が長手方向に沿って溝状に切り欠かれ、この切欠部を通じて前記ローラユニットの連結軸が引戸開閉方向に挿通可能に構成されている。一方、受け部材は、第2引戸の引戸本体の上端面における長手方向一端部に取り付けられ、前記一対のスライダの一方に係止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記受け部材は、前記ローラユニットの前記引戸本体に対する着脱にあたって、第2引戸における前記ローラユニットの連結軸に干渉しないように、当該連結軸の戸幅方向内側における引戸本体の上端面に取り付けられている。このため、前記従来の引戸連動装置は、引戸の枚数を増やしてこの増やした引戸を含めて連動開閉させる場合には、第2引戸の上面における前記受け部材のさらに内側に他の連動装置本体を設置しなければならず、隣接する引戸の重複範囲が大きくなることが懸念される。
【0008】
しかも、前記引戸本体に対するローラユニットの挿脱作業と、連動装置本体と受け部材との係脱作業とが各々別個独立に行うことができるため、連動装置本体と受け部材との係止状態を解除する前に、引戸本体を取り外そうとすると、連動装置本体と受け部材との係止状態が適切に解除されずに前記受け部材やスライダなどの連動装置本体が破損するなど損傷の虞があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、隣接する引戸の重複範囲を可及的に小さく抑制することができ、また引戸の取外し時に確実に連動装置本体と受け部材との係止状態を解除して損傷を抑制することができる引戸連動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明に係る引戸連動装置は、上下いずれかの端部にユニット取付部が設けられた引戸本体と、前記引戸本体の戸幅方向の一側面から前記ユニット取付部に挿入されるとともに前記引戸本体の前記上下いずれかの端面から突出する突出軸が設けられる突出軸ユニットとをそれぞれに有する複数の引戸における前記突出軸が突出する突出端面に跨がって設置される引戸連動装置であって、第1引戸の突出端面に長手方向の両端部に亘って取り付けられる第1枠体、及び前記第1枠体の長手方向に沿って互いに逆方向にスライドするとともに前記第1引戸に隣接する第2引戸の開閉に伴って前記第1引戸を連動開閉させる一対のスライダを有する連動装置本体と、前記第2引戸の突出端面に長手方向の両端部に亘って取り付けられる第2枠体、及び前記第2枠体における長手方向の一端部に取り付けられるとともに前記一対のスライダのうち一方のスライダに係合する受け部を有する受けユニットとを備え、前記第2枠体は、前記第2引戸の前記突出端面から突出する第2突出軸を前記一端部から前記長手方向に沿って挿通可能な溝部を含み、前記第2枠体は、前記溝部内に前記第2突出軸が上下に挿通される軸挿通部と、前記軸挿通部の外側に前記受け部が前記溝部内に挿入されて取り付けられる受け取付部とを有するものである。
【0011】
この発明によれば、ユニット取付部が設けられた引戸本体と、前記引戸本体の戸幅方向の一側端面から前記ユニット取付部に挿入される突出軸ユニットとをそれぞれに有する複数の引戸について、これらの引戸に跨がって引戸連動装置が設置される場合でも、デッドスペースを有効に活用して引戸の重複範囲を可及的に小さくすることができるとともに、前記受け部を取り外した後でなければ前記第2突出軸を含む突出軸ユニットを取り外すことができないことから、引戸連動装置の破損などの損傷を可及的に抑制することができる。
【0012】
すなわち、この発明によれば、前記第1引戸の突出端面に取り付けられる前記連動装置本体と、前記第2引戸の突出端面に取り付けられる前記受けユニットとを有するので、前記第2引戸の開閉に伴って前記第1引戸を連動開閉させることができる。この受けユニットの前記第2枠体は、前記第2引戸の前記突出端面から突出する第2突出軸を前記一端部から前記長手方向に沿って挿通可能な溝部を含むので、前記引戸本体に前記第2枠体を取り付けた後においても、前記突出軸ユニットを前記引戸本体に取り付けることができ、現場における施工性を向上させることができる。この場合、通常、前記引戸が取り付けられた状態においては、前記溝部における開口端側がデッドスペースになるが、本発明によれば、前記第2枠体は、前記溝部内に前記第2突出軸が上下に挿通される軸挿通部と、前記軸挿通部の外側に前記受け部が前記溝部内に挿入されて取り付けられる受け取付部とを有するので、前記第2枠体の前記一端部、すなわち前記軸挿通部の外側の溝部内の空間を有効に活用して前記受け部を前記受け取付部に取り付けることができる。しかも、連動させる引戸を増やす場合でも、デッドスペースを有効に活用することにより、引戸の重複範囲を可及的に抑制することができる。また、第2枠体は、前記軸挿通部と、前記軸挿通部の外側、すなわち前記軸挿通部に対して前記溝部内の開口端側に受け取付部とを有し、この受け取付部に前記受け部が取り付けられているので、前記受け取付部から前記受け部を取り外して、前記受けユニットと前記連動装置本体との係合を解除した後でなければ前記第2突出軸を含む突出軸ユニットを取り外すことができない。このため、前記受けユニットと前記連動装置本体との係合を解除する前に、前記突出軸ユニットを取り外すことにより発生する引戸連動装置の破損などの損傷を効果的に抑制することができる。
【0013】
前記第2枠体の受け取付部に対する受け部の取付構造を特に限定するものではないが、前記第2枠体は、底壁と、底壁の前後側縁から立ち上がる前後側壁とを備え、前記受けユニットは、前記第2枠体の受け取付部に配置された前記受け部を前後に貫通するとともに前後両端部が前記前後側壁に支持される取付軸部をさらに備えるのが好ましい。
【0014】
このように構成すれば、前記第2枠体は、前記底壁と、前記前後側壁とを備え、前記受けユニットは、前記第2枠体の受け取付部に配置された前記受け部を前後に貫通するとともに前後両端部が前記前後側壁に支持される取付軸部をさらに備えるので、前後両端部が前記前後側壁に支持される取付軸部によって、前記第2枠体の前記一端部を補強することができ、前記第2枠体の前記溝部回りの剛性を向上させることができる。これにより、前記受け部を介して第2枠体の一端部に外力が作用しても当該一端部における前後側壁の変形などの損傷を可及的に抑制することができる。
【0015】
前記受け部は、前記一対のスライダの一方のスライダに係合するものであれば、その具体的構成を特に限定するものではないが、前記受け部は、前記受け取付部に挿入される受け本体と、前記受け本体から前記引戸の厚み方向における前記連動装置本体側に離間して配置されるとともに前記一方のスライダに係合する係合部と、前記受け本体及び前記係合部を跨がった状態で連結する連結部とを備え、前記受け本体及び前記係合部の少なくともいずれか一方に、前記連結部が選択的に嵌合される複数の嵌合孔が前記厚み方向に沿って並設されているのが好ましい。
【0016】
このように構成すれば、前記受け部は、前記受け本体と前記係合部と前記連結部とを備え、前記受け本体及び前記係合部の少なくともいずれか一方に、前記連結部が選択的に嵌合される複数の嵌合孔が前記厚み方向に沿って並設されているので、前記連結部が嵌合される前記嵌合孔を選択することにより、前記受け本体と前記係合部との前後の離間距離を変更することができる。これにより、施工現場において、前記受け本体と前記係合部との離間距離を、前記引戸の厚みや引戸間の隣接方向の隙間などに応じて適切に設定することができるため、施工性を向上させることができる。
【0017】
この場合、前記係合部と前記一方のスライダとの係合構造について特に限定するものではなく、例えば両者をネジ止め等するものであっても良いが、前記一方のスライダは、前記厚み方向に開口する係止溝を有し、前記係合部は、前記一方のスライダに押圧されることにより前記厚み方向に弾性変形するとともに前記係止溝に係止される係止フックを有するのが好ましい。
【0018】
このように構成すれば、前記係合部は、前記一方のスライダに押圧されることにより前記厚み方向に弾性変形するとともに前記係止溝に係止される係止フックを有するので、前記連動装置本体と前記受けユニットとを第1及び第2引戸に設置した後、両引戸を開閉方向に操作するだけで、前記一方のスライダが前記係止フックを押圧することにより当該係止フックを弾性変形させて前記係止溝に係止させることができ、現場における施工性を向上させることができる。
【0019】
さらに、前記第1枠体と前記第2枠体とは、各々別個に設計された枠体であっても良いが、共通の枠体から構成されているのが好ましい。
【0020】
このように構成すれば、前記第1枠体と前記第2枠体とは、共通の枠体から構成されているので、各枠体を個別に作製する必要が無く、コスト面で有利になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る引戸連動装置によれば、デッドスペースを有効に活用して引戸の重複範囲を可及的に小さくすることができるとともに、引戸連動装置の破損などの損傷を可及的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の引戸連動装置を引戸の一部とともに示す斜視図である。
【
図3】同装置の連動装置本体及び壁用受け部を分解して示す斜視図である。
【
図4】同装置の受けユニットを分解して示す斜視図である。
【
図6】受けユニットの受け部をエンドキャップとともに分解して示す斜視図である。
【
図8】ローラユニットを取り外した状態で、受け部とスライダとを拡大して示す平面図である。
【
図9】壁用受け部を分解した状態で示す斜視図である。
【
図10】キャッチャとスライダとの係合動作を説明するためローラ体を省略した状態で示す平面図である。
【
図11】3枚の引戸に適用した引戸連動装置を、一部省略した状態で示す斜視図である。
【
図12】3枚の引戸に適用した引戸連動装置を一部省略した状態で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の引戸連動装置は、ガイドローラがガイドレールに案内支持される吊下式引戸について適用したものであるが、非吊下式の引戸であっても引戸本体の下端面から下側ガイドレールに案内されるガイド突出部を有するガイドユニットが引戸本体の戸幅方向の少なくとも一端部に取り付けられている引戸など、前記引戸本体の上下いずれかの端面から突出する突出軸を有する複数枚の引戸であれば、その他の引戸にも適用することができる。
【0024】
図1は、本実施形態の引戸連動装置を引戸に設置した状態で示す斜視図であり、
図2は同装置を示す平面図である。なお、以下、便宜上、各図における+X方向を右方向、+Y方向を後方向、+Z方向を上方向として説明する場合もあるが、これらの方向の表現については特に限定されるものではなく、単に本実施形態の装置における相対的な位置関係を表したものである。ここで、左右方向は引戸の戸幅方向(開閉方向)に相当し、前後方向は引戸の厚み方向に相当し、上下方向は引戸の高さ方向に相当する。
【0025】
この引戸構造は、開口部に隣接する壁Wの前側に前方開放型の戸袋が設置され、この戸袋から2枚の引戸Dが左方に引き出されることにより開口部が閉塞されるものである。これらの引戸Dは、全開状態で戸袋において略完全に重複する状態に配置されており、全閉状態においても戸幅方向の端部同士が重複する状態で配置されている。なお、2枚の引戸Dのうち、壁W側の引戸Dを第1引戸D1と称し、第1引戸D1に対し壁Wと反対側に隣接する引戸Dを第2引戸D2と称する場合がある。
【0026】
具体的には、引戸Dは、
図3及び
図4に示すように、板状の引戸本体D3と、引戸本体D3の上端部における左右両端部にそれぞれ配置されたローラユニット(突出軸ユニットに対応)D4とを備える。引戸本体D3は、上端部における左右両端部のそれぞれに上方及び左右方向の外側が開放されたユニット取付溝(ユニット取付部に対応)D5を有する。ユニット取付溝D5は、上方及び外側方の開口幅が同等に形成されているが、上方の開口幅については、ローラユニットD4の後述する連結軸D7が外側方から挿通可能であれば外側方の開口幅よりも狭くても良い。各ユニット取付溝D5には、ローラユニットD4が取り付けられている。
【0027】
ローラユニットD4は、ユニット取付溝D5に収納固定される引戸固定体D6と、この引戸固定体D6から上方に突出する連結軸(突出軸に対応)D7と、この連結軸D7の先端部に取り付けられたローラ体D8とを備え、ローラ体D8が上側ガイドレール(不図示)に支持されることにより引戸本体D3を上側ガイドレールに吊下する。このローラユニットD4を引戸本体D3に取り付けることにより、連結軸D7が引戸本体D3の上端面から突出するので、本実施形態では引戸本体D3の上端面が本発明にいう「突出端面」に対応する。なお、引戸固定体D6を分割構成して、分割体の一方を予め引戸本体D3のユニット取付溝D5に装着し、他方を予め連結軸D7に接続して、両分割体を連結させることにより、引戸本体D3にローラユニットD4を取り付けるものであっても良く、この場合もローラユニットD4は引戸本体D3の戸幅方向の一側面からユニット取付溝D5に挿入される場合に含まれる。
【0028】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の引戸連動装置1は、これらの引戸Dの各上端面に跨がって設置されている。引戸連動装置1は、第1引戸D1の上端面に取り付けられた連動装置本体2と、第2引戸D2の上端面に取り付けられるとともに連動装置本体2に係合する受けユニット3と、壁Wに取り付けられるとともに連動装置本体2に係合する壁用受け部4とを備え、第2引戸D2を開閉に伴って第1引戸D1も連動開閉させるものである。
図3は、連動装置本体2及び壁用受け部4を分解して示す斜視図であり、
図4は、受けユニット3を分解して示す斜視図である。なお、
図3は前方側からの視点の斜視図であるのに対し、
図4は後方側からの視点の斜視図である。
【0029】
連動装置本体2は、その基本構成として、第1引戸D1の上端面における長手方向(引戸Dの開閉方向)の両端に亘って取り付けられる第1枠体5と、この第1枠体5における長手方向の両端部に回転自在に取り付けられる一対のプーリ6と、これらのプーリ6に周回可能に架け渡された無端状体7と、この無端状体7に固定されるとともに第1枠体5の長手方向に沿って互いに逆方向にスライドする一対のスライダ8とを備え、これらの基本構成5~8がユニット化されている。
【0030】
第1枠体5は、
図3に示すように、第1引戸D1の上端面における一端部から他端部に延びるとともに延出方向に直交する横断面視において上下に偏平な逆ハット状の基体51と、基体51の両端部に取り付けられるサイドキャップ52とを備え、両端部にローラユニットD4の連結軸D7を各端部から挿通可能な挿通溝(溝部に対応)53が基体51及びサイドキャップ52を上下に貫通してそれぞれ設けられている。このため、挿通溝53は、左右方向の外側が開放しており、引戸本体D3にローラユニットD4を装着した状態で連結軸D7が配置される箇所にまで延びている。この第1枠体5は、一対のプーリ6及び無端状体7を収納可能に構成されているとともに、スライダ8が第1枠体5にガイドされて長手方向に沿って互いに逆方向にスライド可能であれば、特に具体的構成を限定するものではない。本実施形態では、第1枠体5は、受けユニット3の後述する第2枠体10と共通の枠体5から構成されているので、第1及び第2枠体5,10について共通の符号を付し、基体51についてまず説明した後、詳細な説明は第2枠体10とともに後述する。
【0031】
基体51は、上方及び側方に開口した横断面視において逆ハット状の長尺枠体である。具体的には、
図3及び
図7に示すように、左右方向に延びる底壁51aと、この底壁51aの前後側縁から立ち上がる前後側壁51bとを備え、これらの前後側壁51bの上端部が前後方向外側に突出して前後側壁51bが横断面視鈎状に形成されることにより、後述するスライダ8のガイドレールとしての役目を果たしている。底壁51aの左右方向の両端部には、挿通溝53に対応する切欠部51dが設けられるとともに、切欠部51dの左右方向の内側にプーリ6を取り付けるための軸孔51eが設けられている。また、底壁51aには、左右の軸孔51eの間に等間隔に、第1枠体5を引戸本体D3に取り付けるための取付孔51fが穿設されている。
【0032】
次に、一対のプーリ6のそれぞれは、公知のプーリであり、本実施形態では、各挿通溝53の内側に隣接した状態で、サイドキャップ52の内側端部に回転自在に取り付けられている。このように、各プーリ6が各挿通溝53に隣接した状態で配置されているため、一対のプーリ6間の寸法は可及的大きく設定されており、これによりスライダ8のスライド範囲も可及的大きく設定することができる。
【0033】
無端状体7は、本実施形態では鋼製ワイヤが採用されているが特に限定するものではなく、ゴム製、合成樹脂製、化学繊維製の種々の無端状のベルトや線状体等であってもよく、別部材を介在させて無端状体としてもよい。本実施形態では、無端状体7は、両端部にワイヤ径よりも大きく膨出する膨出取付部72を有する等尺の二本のワイヤ71から構成され、各ワイヤ71の膨出取付部72のそれぞれが一対のスライダ8のそれぞれに取り付けられることにより、無端状体7を形成している。
【0034】
一対のスライダ8は、それぞれ前後に偏平なブロック状体を呈し、第1枠体5の前後側壁51bにそれぞれスライド自在に取り付けられている。このスライダ8は、
図5に示すように、下方に開口するとともに左右方向に貫通する断面鈎状のガイド溝81と、ガイド溝81の上側において前後方向の内側に開口する係止溝82と、この係止溝82の左右両側にそれぞれ係止溝82に連通する一対の被取付部83とを含む。各スライダ8は、ガイド溝81に前後側壁51bのいずれかが挿通されることにより、前後側壁51bにスライド自在に取り付けられる。係止溝82は、受けユニット3の後述する係止フック152が係止され、これにより連動装置本体2と受けユニット3とが係合される。本実施形態では、係止溝82は、左右内側面が前後方向に延びる垂直面として形成されているが、係止フック152が係止可能であればその具体的構成は特に限定されない。
【0035】
また、平面視において、この係止溝82の左右両側におけるスライダ8の前後方向における内側面85は、係止溝82側に向かうにしたがって前後方向内側に傾斜するテーパ面として構成され、このテーパ面によって係止フック152を徐々に前後方向内側に弾性変形させて係止溝82に導くように構成されている。被取付部83は、ワイヤ71の膨出取付部72が嵌合される。これにより、一対のスライダ8は、
図2に示すように、第1枠体5の組付状態において、平面視において第1枠体5の中心点に対して、互いに点対称位置に配置され、第1枠体5に沿って互いに反対方向にスライドする。なお、スライダ8と無端状体7との取付は、両者が相対的に移動しないように取り付けられていれば良く、例えば無端状体7にスライダ8と係合するための係合部材を固設して該係合部材とスライダとを固定するもの等であってもよい。
【0036】
図2に示すように、この一対のスライダ8の一方(図例では前方側のスライダ8)に受けユニット3が係合し、他方に壁用受け部4が係合し、これにより第2引戸D2の開閉操作力を第1引戸D1に伝達することができる。
図4は、受けユニット3を分解して示す斜視図である。
【0037】
具体的には、受けユニット3は、その基本構成として、第2引戸D2の上端面における長手方向(引戸D2の開閉方向)の両端に亘って取り付けられる第2枠体10と、この第2枠体10における長手方向の右端部(第2引戸D2の閉方向の端部)に取り付けられる受け部11と、受け部11を第2枠体10に取り付けるために受け部11を前後に貫通して前後方向に延びる取付ネジ部(取付け軸部に対応)12とを備え、これらの基本構成10~12がユニット化されている。この第2枠体10は、第2引戸D2の上端面の左右両端に亘って取り付けられることにより、第2引戸D2における引戸本体D3の上方において、第1枠体5に対応する隙間を埋める化粧効果を奏する。
【0038】
第2枠体10は、第2引戸D2に取り付けられる点を除いて、基本構成は第1枠体5と同一である。すなわち、第2枠体10は、第2引戸D2の上端面における一端部から他端部に延びる基体51と、サイドキャップ52とを備え、両端部に挿通溝53がそれぞれ設けられている。挿通溝53は、
図8を参照して、奥底部に設けられ連結軸D7が上下に挿通される軸挿通部54と、軸挿通部54の左右方向の外側に受け部11が挿通溝53内に挿入されて取り付けられる受け取付部55とを有し、受け取付部55に受け部11が取り付けられていない場合には軸挿通部54が左右方向の外側に向かって開放されている。この挿通溝53は、軸挿通部54から受け取付部55まで前後溝幅寸法が同幅に形成されているが、軸挿通部54と受け取付部55との間で溝幅寸法を変更しても良い。軸挿通部54は、
図8に示すように、平面視において、連結軸D7に対して前後左右に遊びをもって挿通され、これにより寸法誤差等を吸収可能に構成されているとともに、連結軸D7の前後左右の移動を許容するものとなされている。
【0039】
第2枠体10の基体51は、上記のように、第1枠体5の基体51と同様に構成されているので、
図7において、同一の符号を付してその説明を省略する。なお、前後側壁51bの左右方向の両端部には、
図3及び
図4に示すように、取付けネジ部12が支持される支持孔51gが形成され、これによりいずれの端部においても受け部11を取付可能に構成されている。
【0040】
サイドキャップ52は、
図6及び
図8に示すように、左右方向に延びる平面視Y字状のブロック体であり、基体51の左右両端部にそれぞれ取り付けられている。サイドキャップ52は、第1枠体5の部材として用いられる場合(
図3参照)にはプーリ6が取り付けられ、一方、第2枠体10の部材として用いられる場合(
図4参照)には受け部11が取り付けられる。具体的には、サイドキャップ52は、左右方向の内端部に設けられたプーリ取付部52aと、このプーリ取付部52aの左右方向の外側に連設されたキャップ本体52bと、キャップ本体52bの外端部に前後方向外方に突出する位置決め突部52cとを備え、本実施形態では合成樹脂から一体成形されている。
【0041】
プーリ取付部52aは、プーリ6が取り付けられる部分であり、上面がキャップ本体52bの上面に対して低く設定されることにより凹部が形成され、この凹部にプーリ6の一部が収納される。プーリ取付部52aは、左右方向の中間部にプーリ6の軸部が挿入される軸孔521aを有するプーリ用ボス521が上方に突設され、平面視において、このプーリ用ボス521の中心よりも左右方向の外側の部分がキャップ本体52bの後述するキャップ溝522に連通した状態でキャップ本体52bの内端面によって囲われている。
【0042】
キャップ本体52bは、左右方向に延びる直方体状に形成されている。このキャップ本体52bは、挿通溝53を構成するキャップ溝522が左右方向の外端から長手方向に沿って形成されている。このキャップ溝522は、基体51の切欠部51dとともに枠体5,10の挿通溝53を形成するものであり、ローラユニットD4の連結軸D7の突出部分に対応する位置まで延出している。本実施形態では、キャップ溝522がプーリ取付部52aの凹部と連通させることにより、キャップ溝522とプーリ取付部52aとを近接配置させており、このため左右のプーリ6の間の離間距離を可及的に大きくなるように設定されている。このキャップ溝522の前後溝幅寸法は、受け部11を緊密状態に嵌合されるように設定されている。キャップ本体52bにおけるキャップ溝522に臨む対向面の上下方向中央部には、受けスライド溝523が前後方向の外側に凹入した状態で形成されている。この受けスライド溝523は、受け部11の後述するスライド突条142が挿通されるものであり、枠体5の受け取付部55に対応して設けられている。受けスライド溝523は、受け部11の上下方向の移動を規制するとともに受け部11の挿通溝53における位置決めを行う。このため、受けスライド溝523は、キャップ本体52bの左右方向の外端から受け部11の長さ寸法に対応して形成され、本実施形態では受け部11の長さ寸法と一致するように設定されている。キャップ本体52bは、左右方向の中間部に、取付けネジ部12が挿通される軸差込溝524がキャップ溝522を横断するように前後に貫通して設けられている。この軸差込溝524は、下方に開口するとともに、受けスライド溝523の上面の高さまで形成され、溝幅寸法は、取付けネジ部12の軸部12aの外径よりも大きく形成され、寸法誤差を吸収可能に構成されている。
【0043】
位置決め突部52cは、基体51の左右端面に当接して、基体51に挿入されるサイドキャップ52の挿入を規制するものである。本実施形態では、位置決め突部52cは、キャップ本体52bにおける左右方向の外端部から前後方向外方に突出するだけでなく、下方にも突出し、基体51の左右端面の全面に亘って当接するようになされている。
【0044】
次に、受け部11について、
図6及び
図7を主に用いて説明する。受け部11は、第2枠体10の右端部(引戸Dの開方向の一端部)に取り付けられるとともに、連動装置本体2の一対のスライダ8のうち前側のスライダ8の係止溝82に係止することによりスライダ8に係合するものであり、本実施形態では引戸Dを全閉することによりスライダ8に係止するように構成されている。
【0045】
具体的には、受け部11は、受け取付部55に挿入される受け本体14と、受け本体14から後方に離間して配置されるとともに前側のスライダ8に係合するキャッチャ(係合部に対応)15と、受け本体14及びキャッチャ15を跨がった状態で連結する連結板(連結部に対応)16とを備え、
図7に示すように側面視においてキャッチャ15が受け本体14の上方に配置されることにより各枠体5,10の上方においてスライダ8に係合可能に構成されている。
【0046】
受け本体14は、第2枠体10の受け取付部55に挿入されるとともに取付けネジ部12によって基体51及びサイドキャップ52に支持されることにより、受け部11を第2枠体10に支持するためのものであり、左右方向に延びるブロック状に形成されている。具体的には、受け本体14は、直方体状の受けブロック141と、受けブロック141の前後側面における上下方向中央部に前後方向外側に突出する前後一対のスライド突条142とを備え、一対のスライド突条142及び受けブロック141を前後方向に貫通する受け貫通孔143が受け本体14の長手方向の中央部に設けられることにより、取付けネジ部12が挿通可能に構成されている。
【0047】
受けブロック141は、前後幅寸法がサイドキャップ52のキャップ溝522の溝幅寸法と同等に設定されるとともに、高さ寸法が第2枠体10の高さ寸法と同等に設定されたブロック状に形成されている。受けブロック141には、連結板16の一端部が遊嵌される連結孔141aが受けブロック141の前後幅方向中央部に左右方向に沿って形成されている。連結孔141aは、受けブロック141を上下に貫通して設けられ、受け貫通孔143に連通する。本実施形態では、連結孔141aは、下方に向かうにしたがって前後に拡幅するように構成され、これにより連結板16の前後への傾倒を可能にして、第1引戸D1に対する第2引戸D2の相対的な前後の傾倒を許容するように構成されている。また、連結孔141aは、連結板16の一端部が遊嵌されるように寸法設定されているため、連結板16の上下方向の移動も許容して、引戸Dの上下方向の挙動も許容するように構成されている。
【0048】
また、受けブロック141には、連結孔141aの後方において上下に延びる有底のナット収納孔141bが上方に開口した状態で設けられ、取付けネジ部12に螺合する六角のナット141cが回転を規制された状態で収納可能に構成されている。すなわち、ナット収納孔141bは、
図7に示すように、受け貫通孔143に連通し、ナット141cが奥底部に収納された状態で当該ナット141cのネジ孔が受け貫通孔143に軸心が一致した状態で配置されるように各種寸法、形状等が設定されている。なお、本実施形態では、取付けネジ部12は、第2枠体10及び受け部11を貫通するとともにナット141cに螺合されることにより受け本体14を第2枠体10に取り付けるものとなされているが、取付構造については特に限定するものではなく、ナット141cやナット収納孔141bを省略して、受け貫通孔143の内周面や基体51に取付けネジ部12に螺合するネジ溝を刻設するものであっても良い。ただし、本実施形態のように、受けブロック141にナット141cやナット収納孔141bを設けることにより、取付けネジ部12を強固に受けブロック141に取り付けることができる。
【0049】
スライド突条142は、受けブロック141の長さに対応する突条であり、サイドキャップ52の受けスライド溝523に先端面が突き当たるまで挿入される。本実施形態では、スライド突条142は、長手方向に連続して形成されているが、長手方向に沿って分断しているもの等、受けブロック141の受け取付部55における位置決め、及び上下方向への移動規制を行えるものであれば具体的構成は問わない。
【0050】
次に、キャッチャ15について説明する。キャッチャ15は、一対のスライダ8のうち前側に配置されたスライダ8の上部に係合するものであり、本実施形態では引戸Dを全閉操作することに伴って後述する係止フック152が弾性変形してスライダ8に係止するように構成されている。具体的には、キャッチャ15は、
図6及び
図8に示すように、連結板16が接続される接続部151と、接続部151の左端部に連設される係止フック152と、係止フック152に対し前側に離間した状態で配置された位置決め当接部153とを備え、本実施形態では上下に偏平なブロック状体として合成樹脂から一体成形されている。このキャッチャ15は、左右方向に延びる中心線を含む水平面を基準に上下対称形状に形成され、これにより左右いずれの方向に開く引戸にも適応可能に構成されている。
【0051】
接続部151は、連結板16の他端部が緊密状態に嵌合されることにより接続されるものであり、直方体形状を呈する。接続部151は、上下各面に連結板16が収納される平面視矩形状の板収納部151aが凹設され、この板収納部151aの奥底面に連結板16の他端部が選択的に嵌合される複数の板嵌合孔151bが前後方向に沿って並設されている。板収納部151aは、連結板16、詳細には後述する前後接続板部162の一部を収納するものである。このため、板収納部151aは、前後接続板部162の板厚に応じた深さを有し、前方に開放されて板収納部151aの奥底面に当接した前後接続板部162を前方に延出可能に構成されている。本実施形態では、板収納部151aは、前後接続板部162の板厚と同等の深さに形成されることにより、接続部151の上面と連結板16の上面が略面一になるように形成され、これにより受け部11の上下寸法をコンパクトになるように工夫されている。一方、各板嵌合孔151bは、連結板16の後述するキャッチャ側板部163が嵌合されるものであり、板収納部151aの左端から右端にまで延びる平面視矩形状に形成されている。より具体的には、各板嵌合孔151bは、連結板16の断面形状に対応する矩形状に形成されるとともに、各内側面(本実施形態では内側面のうちの後面)に上下に延びる圧接突条151cが突設されキャッチャ側板部163が緊密状態に嵌合されるようになされている。本実施形態では、板嵌合孔151bは、前後方向に3つ並設されている。各板嵌合孔151bの間隔は、引戸本体D3の厚みや引戸D間の隙間寸法を考慮して適宜設定されている。
【0052】
係止フック152は、一対のスライダ8のうち前側に配置されているスライダ8の係止溝82に係止されるものであり、左右方向に延びる平面視鈎状に形成されている。本実施形態では、係止フック152は、前側のスライダ8に押圧されることにより前後方向に弾性変形してスライダ8の係止溝82に導かれて弾性回復により係止されるように構成されている。
【0053】
具体的には、係止フック152は、接続部151から左右方向に延びる胴部152aと、胴部152aの先端部(図例では左端部)において前方に突出するフック本体152bとを有する。胴部152aは、位置決め当接部153よりも左右方向に長尺に形成され、左右方向の中間部に前後方向に湾曲する湾曲部152cを有することにより前後方向に弾性変形し易いように構成されている。フック本体152bは、先端面が突出方向に向かうにしたがって胴部152a側に湾曲する湾曲面(または傾斜面)として形成され、フック本体152bの先端面がスライダ8の左右一側面に当接することによりこの先端面に従って係止フック152が後方に弾性変形するように構成されている。フック本体152bの右端面は、前後方向に延びる垂直面として形成され、スライダ8の係止溝82の内側面に係止するものとなされている。
【0054】
位置決め当接部153は、係止フック152が係止溝82に係止された状態でスライダ8の左右一側面(図例では右側面)に当接してキャッチャ15とスライダ8との相対的な位置決めを行う。本実施形態では、位置決め当接部153の一端部(図例では左端部)は前後方向に延びる垂直面に形成され、スライダ8の右端面に面接触するものとなされている。
【0055】
一方、連結板16は、一端部が受け本体14に連結されるとともに他端部がキャッチャ15に連結され、これにより受け本体14とキャッチャ15とを跨がった状態で連結するものであり、本実施形態では屈曲した板状体から構成されている。具体的には、連結板16は、
図6に示すように、受け本体14の連結孔141aに遊嵌される本体側板部161と、本体側板部161の上端部から前後方向に延びる前後接続板部162と、前後接続板部162の後端部から下方に延びるキャッチャ側板部163とを備え、本実施形態では金属製矩形状の平板を異形U字状に屈曲することにより形成されている。本体側板部161は、下半部における左右方向の中央部に調整孔161aを有する。この調整孔161aは、取付けネジ部12が挿通されるものであり、この挿通状態で連結板16が受け本体14に対し上下方向に相対的な移動ができることによりローラユニットD4の上下調整に追従可能なように上下方向に延びる長孔として形成されている。前後接続板部162は、本体側板部161の上端から後方に延びる。本実施形態では、前後接続板部162は、前後水平方向に延出し、湾曲や傾斜するもの等と比べて、上下方向の寸法がコンパクトに形成されている。キャッチャ側板部163は、前後接続板部162の後端から下方に延びるとともに、本体側板部161よりも上下短尺に形成され、全長に亘って板嵌合孔151bに圧入されるものとなされている。
【0056】
次に、壁用受け部4について説明する。
図9は、壁用受け部4を分解した状態で示す斜視図である。この壁用受け部4は、
図2に示すように、壁Wの前面に取り付けられるとともに、連動装置本体2の一対のスライダ8のうち後側のスライダ8の係止溝82に係止することによりスライダ8に係合するものであり、本実施形態では引戸Dを全閉することによりスライダ8に係止するように構成されている。
【0057】
具体的には、壁用受け部4は、
図9に示すように、第1引戸D1に隣接する壁Wの壁面に取り付けられる壁用ベース41と、壁用ベース41に連結される壁用キャッチャ42とを備え、壁用キャッチャ42がスライダ8の係止溝82に係止可能な高さ位置に配置されている。
【0058】
壁用ベース41は、壁用キャッチャ42を壁Wに支持するものであり、板状に形成されている。具体的には、壁用ベース41は、壁Wの壁面に当接した状態で取り付けられる壁取付板部411と、壁取付板部411に対して前方に偏位した状態で上方に延びるキャッチャ取付板部412とを備え、本実施形態では矩形状の金属板をクランク状に屈曲して形成されている。壁取付板部411は、平板状に形成され、上下に並設されたネジ穴411aを通じてネジ止めされることにより壁面に取り付けられる。キャッチャ取付板部412は、壁用キャッチャ42が取り付けられるものであり、本実施形態では、キャッチャ取付板部412は、壁取付板部411に対して狭幅に構成されている。
【0059】
一方、壁用キャッチャ42は、一対のスライダ8のうち後側に配置されたスライダ8に係合するものであり、本実施形態では引戸Dを全閉操作することに伴って後述する壁用係止フック422が弾性変形してスライダ8に係止するように構成されている。具体的には、壁用キャッチャ42は、
図3に示すように、壁用ベース41のキャッチャ取付板部412に接続される壁接続部421と、壁接続部421の右端部に連設される壁用係止フック422と、壁用係止フック422に対し後側に離間した状態で配置された壁用位置決め当接部423とを備え、本実施形態では上下に偏平なブロック状体として合成樹脂から一体成形されている。壁用キャッチャ42は、後側面が平面に形成され、壁用ベース41に取り付けられた状態で、壁Wの壁面の少なくとも一部に面接触するように構成されている。また、この壁用キャッチャ42も、左右方向に延びる中心線を含む水平面を基準に上下対称形状に形成され、これにより左右いずれの方向に開く引戸にも適応可能に構成されている。
【0060】
壁接続部421は、壁取付板部411が嵌合されることにより壁用ベース41に接続されるものであり、直方体形状を呈する。壁接続部421は、後端部に左右方向に沿って延びる板嵌合孔421aが上下に貫通して設けられている。板嵌合孔421aは、壁取付板部411が嵌合されるものであり、壁取付板部411の断面形状に対応する矩形状に形成されている。なお、この板嵌合孔421aにも、図示していないものの、キャッチャ15の板嵌合孔151bと同様に、上下に延びる圧接突条が突設され、壁取付板部411が緊密状態に嵌合されるようになされている。
【0061】
壁用係止フック422は、一対のスライダ8のうち後側に配置されているスライダ8の係止溝82に係止されるものであり、キャッチャ15の係止フック152と同様に形成されているため、
図9において同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
壁用位置決め当接部423は、壁用係止フック422が係止溝82に係止された状態でスライダ8の左右一側面(図例では左側面)に当接して壁用キャッチャ42とスライダ8との相対的な位置決めを行うものである。本実施形態では、壁用位置決め当接部423も、キャッチャ15の位置決め当接部153と同様に形成されているため、
図9において同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
以上のように構成された引戸連動装置1は、例えば次のように引戸Dに設置される。
【0064】
まず連動装置本体2を組み立てる。具体的には、
図3に示すように、係止溝82がそれぞれ前後方向内側に指向した状態でスライダ8のガイド溝81に、第1枠体5における基体51の前後側壁51bをそれぞれ挿通させる。これにより、各スライダ8を基体51の前後側壁51bのそれぞれに取り付ける。このとき、スライダ8の係止溝82は、基体51に対して上方に配置されている。そして、これらのスライダ8の被取付部83に、ワイヤ71の膨出取付部72をそれぞれ取り付けてスライダ8の下部から引き出すことにより、スライダ8を介して無端状体7を構成する。次に、基体51の両端部にサイドキャップ52を配置し、無端状体7を掛け回したプーリ6のそれぞれをサイドキャップ52のプーリ取付部52aに取り付ける。このプーリ6の取付にあたって、プーリ6の軸部をプーリ取付部52aの軸孔521a及び基体51の軸孔51eに差し込み、プーリ6の軸部によってサイドキャップ52を基体51に取り付ける。これにより、第1枠体5の長手方向に沿って互いに逆方向にスライドする一対のスライダ8を有する連動装置本体2が形成される。
【0065】
次に、第2枠体10を組み立てる。具体的には、まず基体51の両端部にサイドキャップ52を配置し、不図示の取付軸をプーリ取付部52aの軸孔521a及び基体51の軸孔51eに差し込み、この取付軸によってサイドキャップ52を基体51に取り付ける。なお、ここまでの作業は、工場等の製造現場で実施される。
【0066】
ここで、施工現場に移って、まず壁Wに壁用受け部4を取り付ける。具体的には、壁用ベース41を、壁Wの所定の高さ位置に壁取付板部411を配置するとともにネジ穴411aに木ネジをネジ込むことにより、壁Wに取り付ける。そして、この壁用ベース41のキャッチャ取付板部412に、上方から壁用係止フック422の板嵌合孔421aを緊密状態に嵌合することにより、壁用ベース41に壁用係止フック422を取り付ける。このとき、壁用係止フック422の後側面は、壁Wの壁面に面接触しており、壁用係止フック422に作用する外力を分散することができる。
【0067】
次に、第1引戸D1に連動装置本体2を取り付けるとともに、第2引戸D2に第2枠体10を取り付ける。具体的には、第1及び第2枠体5,10のそれぞれを対応する引戸Dの上端面に配置し、底壁51aの取付孔51fを通じて木ネジ57を引戸本体D3にネジ込むことにより、連動装置本体2及び第2枠体10をそれぞれ対応する引戸Dの上端面に取り付ける。このとき、各枠体5,10の左右両端は引戸Dの上端面の左右両端に一致するとともに、各枠体5,10における挿通溝53のそれぞれは、各引戸本体D3のユニット取付溝D5に上下に重なり合い、連結軸D7を左右方向の外側から挿入可能になっている。
【0068】
このように、連動装置本体2の第1枠体5、及び受けユニット3の第2枠体10は、各引戸D1,D2の上端面から突出する連結軸D7を一端部から長手方向に沿って挿通可能な挿通溝53を含むので、引戸本体D3に第1及び第2枠体5,10を取り付けた後においても、ローラユニットD4を引戸本体D3に取り付けることができ、現場における施工性を向上させることができる。
【0069】
続いて、引戸Dの開き方向を考慮して、受け部11を組み立てる。すなわち、連結板16の一端部である本体側板部161を、受け本体14の連結孔141aに遊嵌するとともに、他端部であるキャッチャ側板部163をキャッチャ15の板嵌合孔151bのいずれかに緊密状態に嵌合する。いずれの板嵌合孔151bを選択するかは、引戸本体D3の板厚や引戸Dの間の前後の隙間を考慮して適宜選択する。
【0070】
このように、本実施形態の引戸連動装置1の受け部11は、受け本体14とキャッチャ15と連結板16とを備え、キャッチャ15は、接続部151に連結板16が選択的に嵌合される複数の板嵌合孔151bが前後方向に沿って並設されているので、連結板16が嵌合される板嵌合孔151bを選択することにより、受け本体14とキャッチャ15との前後の離間距離を調整することができる。このため、施工現場において、引戸連動装置1を設置する引戸Dの厚みや引戸Dの前後方向の隙間を確認して、これらの各種寸法に応じて受け本体14とキャッチャ15との前後離間距離を適切に設定することができ、施工性を向上させることができる。
【0071】
次に、連動装置本体2が取り付けられた第1引戸D1を上側ガイドレールに吊り込み、壁用受け部4に連動装置本体2のスライダ8を係合する。すなわち、予め上側ガイドレールに各ローラ体D8が支持された左右一対のローラユニットD4の引戸固定体D6を、それぞれ第1引戸D1の左右のユニット取付溝D5に左右方向外方から挿入し、各引戸固定体D6を引戸本体D3に固定することにより、第1引戸D1を上部ガイドレールに吊下する。各ローラユニットD4をユニット取付溝D5に挿入するにあたって、ローラユニットD4の連結軸D7は、第1枠体5の挿通溝53に沿って挿入され、挿通溝53内の軸挿通部54に配置される。
【0072】
そして、この第1引戸D1を全閉位置にゆっくりとスライドさせることにより、このスライドに伴い壁用受け部4の壁用係止フック422が連動装置本体2における後側のスライダ8における係止溝82に係止する。この係止の動作については、キャッチャ15の係止フック152と前側のスライダ8との係止動作と同様であるので、この説明とともに後述する。
【0073】
続いて、第2枠体10が取り付けられた第2引戸D2を上側ガイドレールに吊り込み、第2枠体10に受け部11を取り付けて受けユニット3を構成する。この第2引戸D2の吊り込みは、第1引戸D1の吊り込みと同様であり、第2引戸D2のユニット取付溝D5にローラユニットD4の引戸固定体D6を取り付けることにより行われる。これにより、第2引戸D2の連結軸D7は、第2枠体10の軸挿通部54に配置される。そして、第2枠体10の挿通溝53の一方(図例では右側)に受け部11を挿入する。すなわち、受け部11の受け本体14のスライド突条142をサイドキャップ52の受けスライド溝523に対応させ、このスライド突条142の左右方向の先端が受けスライド溝523の左右方向の先端面に当接して位置決めされるまで、受け本体14を第2枠体10の挿通溝53に挿入する。この位置決め状態では、受け部11の受け本体14が、第2枠体10の挿通溝53内の受け取付部55に配置される。最後に、取付けネジ部12によって受け部11を第2枠体10に固定する。すなわち、取付けネジ部12を基体51の支持孔51gの一方から挿入して、サイドキャップ52の軸差込溝524及び受け本体14の受け貫通孔143を通じてナット141cに螺合し、基体51における他方の支持孔51gに挿入支持することにより、受け部11を第2枠体10に取り付ける。第2枠体10に対して、受け部11を取り付けることにより受けユニット3を形成する。なお、このとき、取付けネジ部12は連結板16の調整孔161aに挿通され、連結板16の一端部を上下移動可能に受け本体14に連結される。
【0074】
このように、第2枠体10は、挿通溝53内に連結軸D7(第2突出軸に対応)が上下に挿通される軸挿通部54と、軸挿通部54の外側に受け取付部55とを有するので、第2枠体10における軸挿通部54の外側の挿通溝53内の空間を有効に活用して受け部11を受け取付部55に取り付けることができる。しかも、後述するように連動させる引戸Dを増やす場合でも、前記引戸が取り付けられた状態におけるデッドスペースを有効に活用することにより、引戸Dの重複範囲を可及的に抑制することができる。また、受け部11はこの受け部11を前後に貫通するとともに前後両端部が前記前後側壁に支持される取付けネジ部12によって第2枠体10の受取付部55に取り付けられるので、この取付けネジ部12によって第2枠体10の右端部を補強することができ、挿通溝53回りの第2枠体10剛性を向上させることができる。これにより、第2引戸D2の開閉に伴い、受け部11を介して第2枠体10の右端部に外力が作用しても、基体51の前後側壁51bが前後方向に変形したり、サイドキャップ52が破損したりするなど第2枠体10の損傷を可及的に抑制することができる。
【0075】
そして、この第2引戸D2を全閉位置にゆっくりとスライドさせることにより、このスライドに伴いキャッチャ15の係止フック152が連動装置本体2の前側のスライダ8における係止溝82に係止する。すなわち、第2引戸D2を閉方向に移動させると、
図10に示すように、係止フック152も左方に移動してスライダ8の右側面に当接する。この状態でさらに第2引戸D2を閉方向に移動させると、スライダ8がスライドできないので、このスライダ8によってフック本体152bが押圧され、フック本体152bの先端面に従って係止フック152が後方に弾性変形するとともに、スライダ8の内側面85に沿ってさらに後方に弾性変形し、フック本体152bが係止溝82に到達すると、弾性回復してフック本体152bが係止溝82に収納されることにより係止フック152が係止溝82に係止する。
【0076】
このように、キャッチャ15は、スライダ8に押圧されることにより前後方向に弾性変形するとともに係止溝82に到達することにより弾性回復して当該係止溝82に係止される係止フック152を有するので、第2引戸D2を閉方向に操作するだけで、係止フック152を弾性変形させてスライダ8の係止溝82に係止させることができ、現場における施工性を向上させることができる。
【0077】
一方、引戸Dに設置された引戸連動装置1を、その整備、或いは部品交換等のために取り外す場合には、まず取付けネジ部12を取り外して、受け部11を第2枠体10から取り外し、連動装置本体2と受けユニット3の係合を解除してから、第2引戸D2の引戸本体D3からローラユニットD4を取り外す。
【0078】
このように、この引戸連動装置1は、第2枠体10が、連結軸D7が上下方向に挿通される軸挿通部54と、軸挿通部54に対して挿通溝53内の開口端側に受け取付部55とを挿通溝53内に有し、この受け取付部55に受け部11が取り付けられているので、受け取付部55から受け部11を取り外して、受けユニット3と連動装置本体2との係合を解除した後でなければ連結軸D7を含むローラユニットD4を物理的に取り外すことができない。このため、取り外し手順に従わずに誤って、受けユニット3と連動装置本体2との係合を解除する前にローラユニットD4を取り外すことにより発生する引戸連動装置1、例えば係止フック152の破損などの損傷を効果的に抑制することができる。
【0079】
その後、取付手順と逆方向に各部材を取り外すことにより、引戸連動装置1を引戸Dから取り外すことができる。具体的には、まず取付けネジ部12を外すことにより受け部11と第2枠体10との固定状態を解除する。この固定解除状態で、第1及び第2引戸D1、D2を相対的に引き離すように移動させることにより、受け部11の受け本体14が第2枠体10の挿通溝53から引き出され、挿通溝53から抜出されることにより係止フック152とスライダ8との係止状態を解除することができる。この状態で、第2引戸D2の引戸固定体D6を引戸本体D3から取り外すことにより、第2引戸D2の吊下状態を解除する。同様に、第1引戸D1についても、引戸固定体D6を引戸本体D3から取り外すことにより、第1引戸D1の吊下状態を解除することができる。
【0080】
以上のように、この引戸連動装置1によれば、ユニット取付溝D5が設けられた引戸本体D3と、引戸本体D3の戸幅方向の一側端面からユニット取付溝D5に挿入されるローラユニットD4とをそれぞれに有する複数の引戸Dについて、これらの引戸Dに跨がって引戸連動装置1が設置される場合でも、デッドスペースを有効に活用して引戸Dの重複範囲を可及的に小さくすることができるとともに、受け部11を取り外した後でなければ第2引戸D2の連結軸D7を含むローラユニットD4を取り外すことができないことから、引戸連動装置1の破損などの損傷を可及的に抑制することができる。
【0081】
なお、以上に説明した引戸連動装置1は、本発明の引戸連動装置の一実施形態であり、その具体的構成等についてはその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、本実施形態の変形例について説明する。
【0082】
(1)上記実施形態の引戸連動装置1は、開口部を2枚の引戸D1,D2で開閉する引戸Dに適用したものであるが、引戸の枚数は複数枚であれば良く、枚数が多くなれば、上記実施形態における第1及び第2引戸D1,D2の間に引戸を介在させ、この引戸の上端面に、開方向一端部に受け部が設けられた連動装置本体を設けるとともに、この引戸に対して壁W方向に隣接する引戸の上端面に設けられた連動装置本体の閉方向一端部に受け部を取り付けることにより、容易に全引戸を連動させることができる。
【0083】
例えば、
図11は上記実施形態とは別の引戸連動装置を3枚の引戸に適用した場合であってローラ体を省略した状態で示す斜視図であり、
図12は
図11の引戸連動装置について、受けユニットの一部を省略した状態で示す平面図である。
【0084】
この引戸連動装置101は、前後方向について第1引戸D1と第2引戸D2との間に、第3引戸D13が設けられた引戸Dに設置されている。この引戸連動装置101は、第1引戸D1の上端面に取り付けられた第1連動装置本体102と、第3引戸D13の上端面に取り付けられるとともに第1連動装置本体102に係合する第2連動装置本体109と、第2引戸D2の上端面に取り付けられるとともに第2連動装置本体109に係合する受けユニット103と、壁Wに取り付けられるとともに第1連動装置本体102に係合する壁用受け部104とを備え、第2引戸D2を開閉に伴って第3引戸D13,及び第1引戸D1も連動開閉させるものである。この引戸連動装置101は、第3引戸D13の上端面に受け部付の第2連動装置本体109が設けられる点、及びこの第3引戸D13に対して壁側に隣接する第1引戸D1の上端面に設けられる第1連動装置本体102にも受け部が設けられている点で上記実施形態と異なる。この異なる点を中心に引戸連動装置101について説明する。
【0085】
具体的には、第1及び第2連動装置本体102、109は、上記実施形態と同様に、連動装置本体2の基本構成5~8を有し、この点については同一符号を付してその説明を省略する。第1連動装置本体102は、さらに第1枠体5の引戸閉方向の一端部(図例では左端部)に、第2連動装置本体109の後側のスライダ8に係合する受け部111が設けられている。この受け部111は、第1枠体5の左側の受け取付部55に取り付けられており、上記実施形態の受けユニット3における受け部11と同様に構成されているので同一符号を付してその説明を省略する。一方、第2連動装置本体109は、さらに第1枠体5の引戸開方向一端部(図例では右端部)に第1連動装置本体102の前側のスライダ8に係合する受け部211が設けられている。この受け部211も、第1枠体5の右側の受け取付部55に取り付けられており、上記実施形態の受けユニット3における受け部11と同様に構成されているので同一符号を付してその説明を省略する。
【0086】
以上のように構成された引戸連動装置101は、受けユニット3の受け部11が第2連動装置本体109の前側のスライダ8に係合し、第2連動装置本体109の受け部211が第1連動装置本体102の前側のスライダ8に係合し、さらに第1連動装置本体102の受け部111が第2連動装置本体109の後側のスライダ8に係合するとともに、壁用受け部4が第1連動装置本体102の後側のスライダ8に係合することにより、第2引戸D2の開閉に伴って第3引戸D13,及び第1引戸D1も連動開閉する。
【0087】
この引戸連動装置101においても、上記実施形態と同様に、デッドスペースを有効に活用して引戸Dの重複範囲を可及的に小さくすることができるとともに、受け部11,111,211を取り外した後でなければ第1~第3引戸D1,D2,D13の各連結軸D7を含む各ローラユニットD4を取り外すことができないことから、引戸連動装置101の破損などの損傷を可及的に抑制することができる。また特に、各受け部111,211が挿通溝53内における軸挿通部54の外側の受け取付部55に取り付けられているので、デッドスペースを有効に活用することができ、このため、例えば受け部を各連結軸D7の左右方向内側に配設する場合に比べて、スライダ8のスライド範囲を可及的に大きく設定することができるとともに、各引戸Dの重複範囲を可及的に抑制することができる。
【0088】
引戸Dを3枚以上に増やす場合にも、増やした引戸の上端面に受け部付の第2連動装置本体109を設置することにより、増やした引戸を含めた全引戸を容易に連動させることができる。
【0089】
なお、この場合、第3引戸D13と第2引戸D2との関係、第1引戸D1と第3引戸D13との関係が、本発明の第1引戸と第2引戸との関係に対応する。
【0090】
(2)上記実施形態では、引戸連動装置1が各引戸本体D3の各上端面に設けられているが、引戸本体D3の下端面に設けられるものであっても良い。この場合には、引戸本体の下端部における左右両端部に下部レールに案内されるガイドボスが設けられる場合があるが、このガイドボスが本発明にいう「突出軸」に対応する。また、この場合には、引戸連動装置1を上下反転して用い、これに応じて各部が適宜設計される。
【0091】
(3)上記実施形態では、第2枠体10の受け取付部55に配置された受け部11を、この受け部11を前後方向に貫通する取付けネジ部12によって基体51に取り付けているが、両者の係脱が可能であれば、受け部11の第2枠体10に対する取付構造はこれに限定されるものではない。例えば、基体51の前後側壁51bか押圧ネジをネジ込んで受け部11の受け本体14をサイドキャップ52に圧接させるものであっても良い。ただし、上記実施形態のように取付け軸部を基体51の前後側壁51bに支持させることにより、基体51の挿通溝53周辺の剛性を向上させて、第2枠体10の破損を効果的に抑制できることから、上記のような取付け軸部を設けるのが好ましい。
【0092】
(4)上記実施形態では、受け部11は、受け本体14とキャッチャ15と連結板16とを備え、キャッチャ15には連結板16の他端部が選択的に嵌合される板嵌合孔151bが設けられているが、受け本体14とキャッチャ15との離間距離が調整できないものであってもよく、また当該離間距離を調整する場合に嵌合孔を受け本体側に設けるものであっても良い。
【0093】
また、上記実施形態では、係合部として、前後方向に弾性変形する係止フック152を有するキャッチャ15が採用されているが、係合部は一方のスライダ8に係合可能であれば、例えば両者をネジ止めすることにより係合させるものであっても良い。
【0094】
さらに、上記実施形態では、連結部として、連結板16が採用されているが、連結部は、板状である必要はなく、屈曲した棒状体等であっても良い。
【0095】
(5)上記実施形態では、連動装置本体2の第1枠体5と受けユニット3の第2枠体10とが共通の枠体5から形成されているが、各々別個の枠体を採用するものであっても良い。ただし、各枠体5,10について、共通の枠体5を採用することにより、各引戸毎に外観体裁が異なることがなく、デザイン的に統一することができる。
【0096】
(6)上記実施形態では、上下に偏平な枠体5,10が用いられているが、前後に偏平な基体も用いることができる。この場合、プーリ6の軸心は、上下方向に沿ったものに替えて前後方向に沿ったものを用いるのが良い。
【0097】
(7)上記実施形態では、無端状体7が、回転自在に基体51に取り付けられたプーリ6に架け渡されているが、無端状体をガイドするガイド体としては無端状体に対して係合してその移動を円滑にガイドできるものであれば、具体的な構成を特に限定するものではなく、例えば無端状体に対して円滑に摺接する低摩擦円筒体などを使用してもよい。
【0098】
(8)上記実施形態では、受け部11がキャッチャ15を有し、このキャッチャ15によりスライダ8に係合するものとなされているが、キャッチャはスライダの構成要素として構成されているものであっても良く、この場合、受け部にキャッチャが係合する被係合部が設けられる。
【符号の説明】
【0099】
1 :引戸連動装置
2 :連動装置本体
3 :受けユニット
5 :第1枠体
53 :挿通溝(溝部に対応)
54 :軸挿通部
55 :受け取付部
8 :スライダ
10 :第2枠体
11 :受け部
D :引戸
D1 :第1引戸
D2 :第2引戸
D3 :引戸本体
D4 :ローラユニット(突出軸ユニットに対応)
D5 :ユニット取付溝(ユニット取付部に対応)
D7 :連結軸(突出軸に対応)