(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106248
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240731BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20240731BHJP
H02H 3/08 20060101ALI20240731BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240731BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02H7/18
H02J7/00 Y
H02H3/08 A
H01M10/48 P
H01M10/42 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010491
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100194777
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 憲治
(72)【発明者】
【氏名】山野 光徳
【テーマコード(参考)】
5G004
5G053
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G053AA01
5G053BA01
5G053CA01
5G053DA03
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA10
5G503DA04
5G503EA08
5G503FA17
5G503GA11
5G503GA12
5G503GD02
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS06
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放電過電流の発生状況に応じて、適切で安全な処理を実行する放電過電流保護装置を備えた電池パックを提供する
【解決手段】電池パック1は、二次電池セル10と、過電流保護装置20と、を備える。過電流保護装置20の制御部27は、放電過電流が検出された場合に放電スイッチング素子21をオフにして電池パックを保護する。制御部27は、放電スイッチング素子21がオフ状態になってから第2電流検出時間の間に規定値以上の放電電流を検出した場合は、二次電池セル10が充電状態になるまで放電スイッチング素子21のオフ状態を維持する。制御部27は、放電スイッチング素子21のオフ状態において、所定の第2電流検出時間以上継続して放電電流を検出した場合は、溶断部26を溶断して導通経路を不可逆的に遮断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池セルと過電流保護装置とを備え、電気負荷に接続される電池パックであって、
前記過電流保護装置は、
前記二次電池セルと前記電気負荷とを通電する通電経路に設けられ、前記通電経路に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記通電経路に流れる放電電流を制御する放電スイッチング素子と、
前記電流検出部が放電過電流を検出すると前記放電スイッチング素子をオフにし、前記放電スイッチング素子がオフにされてから所定の自動復帰時間の経過後に前記放電スイッチング素子を自動的にオンにするように前記放電スイッチング素子のオン及びオフを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記放電スイッチング素子がオフになってから所定の第1電流検出時間内に、前記電流検出部が所定の規定値以上の放電電流を検出すると、前記二次電池セルが充電状態になるまでは前記放電スイッチング素子のオフ状態を維持する、電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記制御部は、前記放電スイッチング素子がオフ状態を維持している間に、前記電流検出部が所定の第2電流検出時間以上継続して前記所定の規定値以上の放電電流を検出すると、前記導通経路を不可逆的に遮断する、電池パック。
【請求項3】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記過電流保護装置は、前記放電スイッチング素子の電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記制御部は、前記二次電池が充電状態になると前記放電スイッチング素子をオンにし、前記電流検出部により検出される電流と前記電圧検出部により検出される電圧とから算出される前記放電スイッチング素子の電力損失が、前記放電スイッチング素子の最大温度定格とジャンクション周囲間熱抵抗とから算出される前記放電スイッチング素子の許容損失よりも大きいかを判断し、前記許容損失よりも前記電力損失が大きいと判定した場合には、前記導通経路を不可逆的に遮断する、電池パック。
【請求項4】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記制御部は、前記電流検出部が放電過電流を検出した検出回数をカウントし、前記検出回数が所定の規定回数を超えると、前記二次電池セルが充電状態になるまでは前記放電スイッチング素子のオフ状態を維持し、前記放電スイッチング素子がオフ状態を維持している間に、前記電流検出部が所定の第2電流検出時間以上継続して前記所定の規定値以上の放電電流を検出すると、前記導通経路を不可逆的に遮断する、電池パック。
【請求項5】
請求項4に記載の電池パックであって、
前記過電流保護装置は、前記放電スイッチング素子の電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記制御部は、前記放電スイッチング素子が充電状態になると前記検出回数のカウントをリセットするとともに前記放電スイッチング素子をオンにし、前記電流検出部により検出される電流と前記電圧検出部により検出される電圧とから算出される前記放電スイッチング素子の電力損失が、前記放電スイッチング素子の最大温度定格とジャンクション周囲間熱抵抗とから算出される前記放電スイッチング素子の許容損失よりも大きいかを判断し、前記許容損失よりも前記電力損失が大きいと判断した場合には、前記導通経路を不可逆的に遮断する、電池パック。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の電池パックであって、
前記過電流保護装置は、報知部を備え、
前記報知部は、前記導通経路が不可逆的に遮断されたとき、外部に異常を報知する、電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過電流保護装置を備える電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過電流保護装置を備えた電池パックは広く用いられている。過電流保護装置を備えた電池パックは、電源から電気負荷への通電経路にスイッチング素子を備えており、通電経路に所定値以上の電流が所定時間以上継続して流れたときに過電流が発生したとし、電源を保護するためにスイッチング素子をオフ状態にする。その後、一定時間が経過したときに導通状態に復帰させる。
【0003】
特開平06-351156号公報(特許文献1)は、電池の過電流保護回路を開示している。電池の過電流保護回路は、電池と直列に接続されたスイッチ手段と、電池に流れる電流を検出する電流検出手段と、電流検出手段の検出結果に基づいてスイッチ手段をオンオフ制御する制御手段とを備えている。制御手段は、電池に所定値以上の電流が流れると、スイッチ手段をオフ状態とすると共に、オフ時点から所定時間経過後に、スイッチ手段を自動的にオン状態に復帰させている。
【0004】
このような電池の過電流保護回路は、通電経路に過電流が流れてスイッチング素子が遮断状態となる動作と、その後一定時間の経過により導通状態に復帰する動作とを繰り返す。そのため、断続的に電源から電気負荷に過電流が流れ続けることになり、電源及び電気負荷の過熱を招くおそれがある。そこで、通電経路に過電流が流れてスイッチング素子が遮断状態となる動作と、その後一定時間の経過により導通状態に復帰する動作とを繰り返した回数が所定回数を超えた場合には、その後は遮断状態を維持して復帰処理をさせない過電流保護装置が提案されている。
【0005】
特開2010-187532号公報(特許文献2)は、電池パックの保護監視回路を開示している。保護監視回路は、二次電池の状態を検出する二次電池監視回路と、前記二次電池の過電流等を検出して二次電池と負荷又は充電装置との間に設けられた充電制御トランジスタ又は放電制御トランジスタをオン/オフ制御する保護回路とを備えている。二次電池監視回路は、保護回路に対して充電制御トランジスタ又は放電制御トランジスタを強制的にオン/オフさせる制御信号を出力する。保護回路は、制御信号を受信すると、充電制御トランジスタ又は前記放電制御トランジスタをオン/オフ制御する。さらに、二次電池監視回路は、二次電池の過電流等の検出回数をカウントして、カウントした検出回数を不揮発性メモリに記録し、検出回数が所定回数を超えた場合に、所定回数を超えたときの検出結果に応じて、保護回路に対して前記充電制御トランジスタ又は前記放電制御トランジスタを強制的にオフさせる制御信号を出力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06-351156号公報
【特許文献2】特開2010-187532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の電池パックの保護監視回路は、所定回数までは過電流等が発生するのを許容している。すなわち、二次電池及び電気負荷に対する安全性をさらに向上させるためには、過電流の発生状況に応じた適切な処理を実行することが肝要となる。
【0008】
そこで、本開示は、放電過電流の発生状況に応じて、適切で安全な処理を実行する放電過電流保護装置を備えた電池パックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示は次のように構成した。すなわち、本開示に係る電池パックは、二次電池セルと過電流保護装置とを備え、電気負荷に接続される。過電流保護装置は、二次電池セルと前記電気負荷とを通電する通電経路に設けられ、通電経路に流れる電流を検出する電流検出部と、通電経路に流れる放電電流を制御する放電スイッチング素子と、電流検出部が放電過電流を検出すると放電スイッチング素子をオフにし、放電スイッチング素子がオフにされてから所定の自動復帰時間の経過後に放電スイッチング素子を自動的にオンにするように放電スイッチング素子のオン及びオフを制御する制御部とを備える。制御部は、放電スイッチング素子がオフになってから所定の第1電流検出時間内に、電流検出部が所定の規定値以上の放電電流を検出すると、二次電池セルが充電状態になるまでは放電スイッチング素子のオフ状態を維持する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、放電過電流の発生状況に応じて、適切で安全な処理を実行する過電流保護装置を備えた電池パックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示に係る放電過電流保護装置を示す電気回路図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す過電流保護装置の処理を示すフロー図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す過電流保護装置の処理を示すタイミング図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す過電流保護装置の処理を示すタイミング図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す過電流保護装置の処理を示すタイミング図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す過電流保護装置の処理を示すタイミング図である。
【
図7】
図7は、
図1に示す過電流保護装置の処理を示すタイミング図である。
【
図8】
図8は、
図1に示す過電流保護装置の処理を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(構成1)
本開示の実施形態に係る電池パックは、二次電池セルと過電流保護装置とを備え、電気負荷に接続される。過電流保護装置は、二次電池セルと前記電気負荷とを通電する通電経路に設けられ、通電経路に流れる電流を検出する電流検出部と、通電経路に流れる放電電流を制御する放電スイッチング素子と、電流検出部が放電過電流を検出すると放電スイッチング素子をオフにし、放電スイッチング素子がオフにされてから所定の自動復帰時間の経過後に放電スイッチング素子を自動的にオンにするように放電スイッチング素子のオン及びオフを制御する制御部とを備える。制御部は、放電スイッチング素子がオフになってから所定の第1電流検出時間内に、電流検出部が所定の規定値以上の放電電流を検出すると、二次電池セルが充電状態になるまでは放電スイッチング素子のオフ状態を維持する。
【0013】
これにより、放電スイッチング素子がオフ状態になってから放電電流が流れるという異常を検知でき、放電スイッチング素子のオフ状態を維持することで当該異常から電池パックを保護することができる。
【0014】
(構成2)
構成1の電池パックにおいて、制御部は、放電スイッチング素子がオフ状態を維持している間に、電流検出部が所定の第2電流検出時間以上継続して所定の規定値以上の放電電流を検出すると、導通経路を不可逆的に遮断してよい。これにより、放電スイッチング素子がオフ状態になっても継続して放電電流が流れるという異常を検知でき、より安全に電池パックを保護することができる。
【0015】
(構成3)
構成1又は2の電池パックにおいて、過電流保護装置は、放電スイッチング素子の電圧を検出する電圧検出部を備えてよい。制御部は、二次電池が充電状態になると放電スイッチング素子をオンにし、前記電流検出部により検出される電流と前記電圧検出部により検出される電圧とから算出される前記放電スイッチング素子の電力損失が、前記放電スイッチング素子の最大温度定格とジャンクション周囲間熱抵抗とから算出される許容損失よりも大きいかを判定してよい。許容損失よりも電力損失が大きいと判定した場合には、導通経路を不可逆的に遮断してよい。これにより、放電スイッチング素子の復帰後における異常を検知することができ、より安全に電池パックを保護することができる。
【0016】
(構成4)
構成1の電池パックにおいて、制御部は、電流検出部が放電過電流を検出した検出回数をカウントし、検出回数が所定の規定回数を超えると、二次電池セルが充電状態になるまでは放電スイッチング素子のオフ状態を維持してよい。放電スイッチング素子がオフ状態を維持している間に、電流検出部が所定の第2電流検出時間以上継続して所定の規定値以上の放電電流を検出すると、導通経路を不可逆的に遮断してよい。これにより、検出回数が規定回数を超えた場合であっても、さらに、放電スイッチング素子がオフ状態になっても継続して放電電流が流れるという異常を検知でき、より安全に電池パックを保護することができる。
【0017】
(構成5)
構成1の電池パックにおいて、過電流保護装置は、放電スイッチング素子の電圧を検出する電圧検出部を備えてよい。制御部は、放電スイッチング素子が充電状態になると放電スイッチング素子をオンにするとともに検出回数のカウントをリセットしてよい。前記放電スイッチング素子の最大温度定格とジャンクション周囲間熱抵抗とから算出される電力損失が、許容損失前記放電スイッチング素子の最大温度定格とジャンクション周囲間熱抵抗とから算出される前記放電スイッチング素子の許容損失よりも大きいかを判断してよい。許容損失よりも電力損失が大きいと判定した場合には、導通経路を不可逆的に遮断されてよい。これにより、放電スイッチング素子の復帰後における異常を検知することができ、より安全に電池パックを保護することができる。
【0018】
(構成6)
構成2~5のいずれかの電池パックにおいて、過電流保護装置は、報知部を備えてよい。報知部は、導通経路が不可逆的に遮断されたとき、外部に異常を報知してよい。これにより、電池パックのユーザは電池パックの異常を知ることができる。
【0019】
以下、本開示の実施形態について、
図1~
図8を用いて具体的に説明する。まず、
図1に示すように、電池パック1は、二次電池セル10と過電流保護装置20と外部端子30とから構成されている。
【0020】
二次電池セル10は、リチウムイオン電池等、充放電可能な二次電池である。外部端子30は、正極端子31及び負極端子32を含む。二次電池セル10は、外部端子30を介して外部機器又は充電器等の電気負荷(図示せず。)に接続される。
【0021】
過電流保護装置20は、放電スイッチング素子21と、充電スイッチング素子22と、シャント抵抗23と、電流検出部24と、電圧検出部25と、溶断部26と、制御部27とを含む。
【0022】
放電スイッチング素子21は、図示しない寄生ダイオードを有し、放電を制御するMOSFETである。放電スイッチング素子21は、通常制御時においてオンの状態であり、放電可能な状態にある。放電スイッチング素子21は、電流検出部24において放電過電流を検出すると制御部27からの信号を受けてオフの状態になる。これにより放電を停止し、電池パック1の過熱を防止し、電池パック1及び電気負荷を保護する。なお、放電スイッチング素子21は、放電電流の通電と遮断とのオン/オフをスイッチングできればこれに限定されるものではない。
【0023】
充電スイッチング素子22は、図示しない寄生ダイオードを有し、充電を制御するMOSFETである。充電スイッチング素子22は、通常制御においてオンの状態である。なお、充電スイッチング素子22は、充電電流の通電と遮断とのオン/オフをスイッチングできればこれに限定されるものではない。
【0024】
電流検出部24は、電流計であり、シャント抵抗23により放電電流及び充電電流を検出する。電流検出部24で検出された電流値は制御部27に送られる。電流検出部24は、導通経路を流れる放電電流及び充電電流を検出できればこれに限定されるものではない。
【0025】
電圧検出部25は、分圧抵抗であり、放電スイッチング素子21又は充電スイッチング素子22の電圧を検出する。本実施形態において、電圧モニタは、放電スイッチング素子21及び充電スイッチング素子22の両端に2か所設けられている。なお、電圧検出部25は、放電スイッチング素子21又は充電スイッチング素子22の電圧を検出できればこれに限定されるものではない。
【0026】
溶断部26は、自己溶断ヒューズである。自己溶断ヒューズは、例えば、デクセリアルズ株式会社製のSCP等である。溶断部26は、後述するように、導通経路を不可逆的に遮断するとき、制御部27からの信号を受けてヒューズエレメントを溶断する。本実施形態では、制御部27からの信号に応じて
図1に示すスイッチング素子(FET)28をオンにし、自己溶断ヒューズを溶断させる。すなわち、溶断部26は、導通経路を物理的に遮断する。なお、本開示において、「導通経路を不可逆的に遮断する」とは、導通経路を物理的に遮断するだけでなく、放電スイッチング素子21又は充電スイッチング素子22をオンにしないように永続的或いは半永続的に非復帰の状態にすることも含むものとする。
【0027】
制御部27は、これら過電流保護装置20に含まれる要素の動作を制御する。以下に、制御部27の制御について、
図2~
図8を用いて詳細に説明する。なお、制御部27は、電池パック1に内蔵される保護ICであってもよく、以下の処理を実行させる制御プログラムであってもよい。
【0028】
図2に示すように、制御部27は、放電時において、放電過電流を電流検出部24が検出すると、放電スイッチング素子21をオフにし、放電を停止する。これにより、導通経路を遮断し、電池パック1を保護する(S1)。このとき、制御部27は、電流検出部24が放電過電流を検出した検出回数をカウントする(S2)。カウントされた検出回数は、図示しない記憶部に記憶される。
【0029】
制御部27は、放電スイッチング素子21がオフ状態であるにもかかわらず、放電スイッチング素子21をオフにしてから所定の時間(第1電流検出時間)内、例えば1秒間以内に、電流検出部24が予め設定された所定の規定値以上の放電電流を検出したかを判断する(S3)。
【0030】
制御部27は、所定の規定値以上の電流を電流検出部24が検出しなかった場合、上述した放電過電流を電流検出部24が検出した検出回数が予め設定された所定の規定回数(n回)、例えば3回を超えているかを判断する(S4)。すなわち、検出回数が規定回数を超えている(n回+1)となった場合には、比較的に多く放電過電流を繰り返し検出しているとして、放電スイッチング素子21のオフ状態を維持する。
【0031】
制御部27は、検出回数が規定回数を超えていない、例えば3回以下であると判断した場合、自動回復時間の間、例えば10秒間、放電スイッチング素子21を復帰待機させる(S5)。すなわち、制御部27は、比較的に多く放電過電流を繰り返し検出していない場合を安全であると判断する。制御部27は、自動復帰時間の経過後、放電スイッチング素子21を復帰させて、通常の制御へと戻す(S6)。
【0032】
S1~S6の流れを
図3のタイミング図に示す。
図3に示すように、電流検出部24が放電過電流を検出した場合、制御部は、放電スイッチング素子21をオフにする。このとき、放電スイッチング素子21をオフにした直後から第1電流検出時間が経過するまでの間に所定の規定値以上の電流を検出していない。また、検出回数は1回であり、所定の規定回数(例えば3回)を超えていない。したがって、制御部27は、自動復帰時間を経過後に放電スイッチング素子21をオンにし、通常の制御に戻している。
【0033】
一方、S3において、
図4にも示すように、放電スイッチング素子21がオフの状態で、かつ、所定の規定値以上の放電電流を電流検出部24が検出した場合には、これを異常であると判断し、二次電池セル10が充電状態になる、すなわち、充電器に接続されるまでは、放電スイッチング素子21のオフ状態を維持する(S7)。言い換えれば、制御部27は、充電復帰のみを許可している。
【0034】
このとき、二次電池セル10が充電状態になるまでの間に、制御部27は、予め設定された所定の時間(第2電流検出時間)以上、例えば、5秒間以上、上述した所定の規定値以上の電流を継続して検出したかどうかを判断する(S8)。継続して規定値以上の電流を検出した場合、制御部27は、溶断部26を溶断する。これより、導電経路を不可逆的に遮断する(S9)。
図5にも示すように、電流検出部24は、放電スイッチング素子21がオフになった直後から第2電流検出時間(例えば5秒間)を超えて継続的に規定値以上の放電電流を検出している。この場合、制御部27は、さらに異常があるとして溶断部26を溶断し、導通経路を不可逆的に遮断する。
【0035】
ここで、S4において、カウントされた検出回数が規定回数を超えた場合も、二次電池セル10が充電状態になるまでは放電スイッチング素子21のオフ状態を維持する(S7)。このとき、
図6にも示すように、二次電池セル10が充電状態になるまでの間に、電流検出部24が第2電流検出時間以上(例えば、5秒間以上)において継続的に所定の規定値を超える放電電流を検出した場合には(S8)、制御部27は、溶断部26を溶断して導通経路を不可逆的に遮断する(S9)。一方、
図7に示すように、所定の規定値以上の放電電流を検出せずに充電状態になると、充電電流が流れるのに従って、制御部27は、上述した放電過電流をカウントした検出回数をリセットし、検出回数を0に戻す(S10)。
【0036】
また、このとき、二次電池セル10が充電状態になると、制御部27は、放電スイッチング素子21をオンの状態に復帰させる(S11)。なお、検出回数のリセット(S10)と放電スイッチング素子21の復帰(S11)とは同時に処理されてもよく、放電スイッチング素子21の復帰(S11)を先に処理し、その後検出回数をリセット(S10)するように処理してもよい。
【0037】
制御部27は、二次電池セル10が充電状態になると、充電スイッチング素子22及び放電スイッチング素子21の電力損失W1が放電スイッチング素子21の最大温度定格に基づく電力値(許容損失)W2よりも大きいかどうかを判定する(S12)。制御部27は、最大温度定格に基づく電力値(許容損失)W2よりも電力損失W1が大きいと判定した場合には、溶断部26を溶断し、導通経路を不可逆的に遮断する(S9)。ここで、充電状態における電力損失W1及び最大温度定格に基づく電力値(許容損失)W2は、以下の式により算出される。
W1=電流検出部24で検出される充電電流×電圧検出部25で検出される電圧
W2=放電スイッチング素子21の最大温度定格(℃)÷ジャンクション周囲間熱抵抗(℃/W)
なお、本実施形態において、電圧検出部25で検出される電圧は、放電スイッチング素子21及び充電スイッチング素子22のドレイン-ソース間の電圧である。
一例として、電流検出部24で検出された充電電流が10Aであり、電圧検出部25で検出された電圧が0.7Vである場合、電力損失W1は7Wである。また、放電スイッチング素子21の最大温度定格が175℃であり、放電スイッチング素子21のジャンクション周囲間熱抵抗が40℃/Wである場合、許容損失W2は4.375Wである。この場合、許容損失W2よりも電力損失W1が大きくなる。
【0038】
また、制御部27は、許容損失W2よりも電力損失W1が小さいと判断した場合には、通常の制御に戻す。
図8にも示すように、上述したカウントの規定回数を超えて充電待ちの状態から充電状態になった後、放電スイッチング素子21がオンの状態になるとともに(S11)、電力損失W1が許容損失W2よりも大きい場合には、溶断部26が溶断され(S9)、充電電流が遮断される。
【0039】
本実施形態の過電流保護装置20は、放電スイッチング素子21及び充電スイッチング素子22を含む(
図1を参照。)。ただし、過電流保護装置20は、充電スイッチング素子22を設けず、放電スイッチング素子21のみを設けてもよい。この場合、電力損失Wの算出において、「電圧検出部25で検出される電圧」は、放電スイッチング素子21のドレイン-ソース間の電圧である。なお、過電流保護装置20が充電スイッチング素子22を含む場合、放電スイッチング素子21及び充電スイッチング素子22の両方をモニタし、その両端の電圧を検出することより、充電スイッチング素子22の不良を検出することができる。
【0040】
過電流保護装置20は、報知部28を備えることができる。報知部28は、導通経路が不可逆的に遮断された場合に、制御部27からの信号を受けて警報音を発する。報知部28は、警告灯であってもよく、外部の携帯端末等に警告情報を送信するようにしてもよい。これにより、電池パック1のユーザは、電池パック1の異常を知ることができる。
【0041】
このように、電池パック1によれば、放電過電流を検知した回数をカウントするだけでなく、放電スイッチング素子21のオフ状態における異常な電流検出、及び、放電スイッチング素子21の復帰後における最大温度定格に基づく電力値によって、放電過電流が発生する状況に応じてより適切かつ安全な動作を実行することができる。
【0042】
なお、本発明によれば、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」および目標12「つくる責任 つかう責任」に寄与することができる。
【0043】
以上、実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 電池パック、10 二次電池セル、20 過電流保護装置、21 放電スイッチング素子、22 充電スイッチング素子、23 シャント抵抗、24 電流検出部、25 電圧検出部、26 溶断部、27 制御部、28 報知部、30 外部端子