IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ナノジャパンの特許一覧

<>
  • 特開-分散剤及び分散方法 図1
  • 特開-分散剤及び分散方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010625
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】分散剤及び分散方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20240117BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B01J13/00 B
C01B33/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112078
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】722004104
【氏名又は名称】株式会社ナノジャパン
(72)【発明者】
【氏名】高田 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 哲也
【テーマコード(参考)】
4G065
4G072
【Fターム(参考)】
4G065AA02
4G065BA07
4G065BB06
4G065CA11
4G065DA03
4G065EA01
4G065EA03
4G072AA45
4G072BB05
4G072BB15
4G072DD04
4G072DD05
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH36
4G072MM28
4G072MM36
4G072RR13
4G072TT01
4G072TT08
4G072TT19
4G072TT30
4G072UU30
(57)【要約】
【課題】優れた分散機能を備えた分散剤及び前記分散剤を用いた分散方法を提供する。
【解決手段】多孔質粒子を含む分散剤であって、前記多孔質粒子が複数の細孔を有しており、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であり、前記細孔が、貫通孔であり、さらに、<111>配向している結晶を含む多孔質粒子を含む分散剤を用いて水溶媒中の粉体を分散する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質粒子を含む分散剤であって、前記多孔質粒子が複数の細孔を有しており、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であることを特徴とする分散剤。
【請求項2】
前記細孔が、貫通孔である請求項1記載の分散剤。
【請求項3】
前記細孔が、<111>配向している結晶を含む請求項1又は2に記載の分散剤。
【請求項4】
前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内である請求項1~3のいずれかに記載の分散剤。
【請求項5】
前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が90以上である請求項1~4のいずれかに記載の分散剤。
【請求項6】
前記多孔質粒子の平均粒径が0.1μm~10μmである請求項1~5のいずれかに記載の分散剤。
【請求項7】
前記多孔質粒子が、酸化物を主成分として含む請求項1~6のいずれかに記載の分散剤。
【請求項8】
前記酸化物がSiOを含む請求項7に記載の分散剤。
【請求項9】
前記酸化物におけるFeの含有量が0.01at%~0.5at%である請求項7又は8に記載の分散剤。
【請求項10】
前記多孔質粒子が、前記細孔を5以上含む請求項1~9のいずれかに記載の分散剤。
【請求項11】
バルキング解消剤である請求項1~10のいずれかに記載の分散剤。
【請求項12】
分散剤を用いて水系溶媒中に粉体を分散させる工程を含む分散方法であって、前記分散剤が請求項1~11のいずれかに記載の分散剤であることを特徴とする分散方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の分散剤、粉体及び水系溶媒を混合し、前記粉体を分散させる工程を含むことを特徴とするスラリー組成物の製造方法。
【請求項14】
分散剤、粉体及び水系溶媒を少なくとも含むスラリー組成物であって、前記分散剤が、請求項1~11のいずれかに記載の分散剤であることを特徴とするスラリー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤及び分散剤を用いて粉体を分散する分散方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分散剤は、水溶媒中に粉体を混ぜ合わせる際に用いられ、粉体同士が玉状になるのを防ぎつつ、分散させる機能がある。そのため、従来、インクジェットインク、洗剤、化粧品及び食品等に用いられ、これら適用について多くの改良がなされ、種々検討されている。特に、近年においては、分散性の向上を目指した高分子分散剤等が検討されている。
【0003】
特許文献1には、高分子分散剤を用いて分散性、濡れ性及び消泡性を発揮し、分散時間の短縮させることが記載されている。しかしながら、このような高分子分散剤には、炭素系合成化合物が含まれており、製造が煩雑であり、コストが高くなり、また脱炭素社会を目指すうえで、自然環境に優しくないため、活用しづらいといった問題があり、必ずしも満足のいくものではなかった。そのため、自然環境に優れ、かつ、活用しやすく、分散性に優れた分散剤が待ち望まれた。
【0004】
ところで、分散剤は工業製品にも使用されている。特に、分散安定性の向上を目指した高分子分散剤等も検討されている。
特許文献2には、液体現像剤用高分子分散剤を用いて網点再現性、転写性に優れ、かつ、長期にわたって優れた保存安定性を有することが記載されている。しかしながら、このような高分子分散剤も、炭素系合成化合物が含まれており、製造が煩雑であり、コストが高くなり、また脱炭素社会を目指すうえで、自然環境に優しくないため、活用しづらいといった問題があった。また、最近では、工業製品の製造過程において、熱処理などに耐えられる分散剤が望まれてきているが、特許文献2に記載の高分子分散剤では、耐熱性及び放熱性が不十分であるといった問題があり、必ずしも満足のいくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6730639号公報
【特許文献2】特許第6592865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた分散機能を備えた分散剤及び分散剤を用いて粉体を分散する分散方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、多孔質粒子を含む分散剤であって、前記多孔質粒子が複数の細孔を有しており、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状である分散剤が、優れた分散機能を備えていること等を知見し、このような分散剤が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 多孔質粒子を含む分散剤であって、前記多孔質粒子が複数の細孔を有しており、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であることを特徴とする分散剤。
[2] 前記細孔が、貫通孔である前記[1]記載の分散剤。
[3] 前記細孔が、<111>配向している結晶を含む前記[1]又は[2]に記載の分散剤。
[4] 前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内である請求項1~3のいずれかに記載の分散剤。
[5] 前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が90以上である前記[1]~[4]のいずれかに記載の分散剤。
[6] 前記多孔質粒子の平均粒径が0.1μm~10μmである前記[1]~[5]のいずれかに記載の分散剤。
[7] 前記多孔質粒子が、酸化物を主成分として含む前記[1]~[6]のいずれかに記載の分散剤。
[8] 前記酸化物がSiOを含む前記[7]に記載の分散剤。
[9] 前記酸化物におけるFeの含有量が0.01at%~0.5at%である前記[7]又は[8]に記載の分散剤。
[10] 前記多孔質粒子が、前記細孔を5以上含む前記[1]~[9]のいずれかに記載の分散剤。
[11] バルキング解消剤である前記[1]~[10]のいずれかに記載の分散剤。
[12] 前記[1]~[11]のいずれかに記載の分散剤を用いて水系溶媒中に粉体を分散させる工程を含むことを特徴とする分散方法。
[13] 前記[1]~[11]のいずれかに記載の分散剤、粉体及び水系溶媒を混合し、前記粉体を分散させる工程を含むことを特徴とするスラリー組成物の製造方法。
[14] 分散剤、粉体及び水系溶媒を少なくとも含むスラリー組成物であって、前記分散剤が、前記[1]~[11]のいずれかに記載の分散剤であることを特徴とするスラリー組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分散剤及び分散剤を用いて粉体を分散する分散方法は、優れた分散機能を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に用いられる多孔質体の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
図2】実施例における顕微鏡像(TEM像)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の分散剤は、多孔質粒子を含む分散剤であって、前記多孔質粒子が複数の細孔を有しており、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であれば特に限定されない。
【0012】
前記多孔質粒子は、前記多孔質体を含む粒子であればそれでよく、粒子の形状等は特に限定されないし、他の多孔質体、賦形剤、結着剤又は接着剤等の添加剤などが含まれていてもよい。本発明においては、前記細孔が、貫通孔であるのが好ましい。また、<111>配向している結晶を含むのが好ましい。なお、前記貫通孔は、便宜上、Xe-NMRにて確認できるものであってよい。また、前記結晶はX線回折装置を用いて確認できるものであってよい。また、本発明においては、前記粒子の平均粒径が0.1μm~10μmであるのが好ましい。このような好ましい範囲によれば、分散性のみならず、放射性物質や不純物の捕集蓄積においても、より優れた性能を発揮することができる。なお、前記平均粒径は、任意に抽出した10個の粒子の粒径の平均値をいう。
【0013】
前記多孔質体は、複数の細孔を有するものであって、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状であれば特に限定されないが、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内であるのが好ましく、1:10~1:100の範囲内であるのがより好ましい。前記多孔質体の好適な態様を図1に示す。図1の多孔質体は、複数の細孔を有している多孔質体であり、図1には、A-A’断面図とともに、前記細孔の形状が円筒状であることが示されている。前記細孔は、平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ形状が略円筒状であることが分散性において肝要である。本発明においては、前記平均孔径が8nm±2nmの範囲内であるのが好ましく、前記形状が円筒状であるのも好ましい。
【0014】
前記平均孔径は、任意に抽出した10個の細孔の孔径の平均値をいう。前記孔径は、前記細孔の直径を意味し、例えば、図1に示されるw1をいう。前記深さは、前記細孔の深さを意味し、例えば、前記細孔が貫通孔である場合には、便宜上、前記多孔質体粒子の粒径を前記深さとしてもよい。前記深さは、例えば、d1をいう。なお、図1のw1は、例えば8nmであり、d1は、例えば50nmである。
【0015】
前記多孔質粒子の構成材料は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、本発明においては、酸化物を主成分として含むのが好ましい。前記酸化物は、SiOを含むのが好ましく、また、Alを含むのも好ましい。また、本発明においては、前記酸化物におけるFeの含有量が組成比で0.5at%以下であるのが好ましく、0.1at%以下であるのがより好ましい。前記酸化物におけるFeの含有量の下限は特に限定されないが、例えば0.01at%である。このような好ましいFeの含有量の前記酸化物を主成分として含む前記多孔質粒子は、例えば雨季と乾季とを有する熱帯モンスーン気候下の珪藻土層の一定の深さの区画から抽出される珪藻土を焼成及び粒子状に整粒することにより、容易に得ることができる。なお、前記焼成及び前記整粒の手段及び順序等は本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段等が好適に用いられ、これら条件等も適宜設定されてよい。
【0016】
前記多孔質粒子は、前記細孔を5以上含むのが好ましく、このような好ましい範囲によれば、分散性のみならず、捕集蓄積機能をもより優れたものとすることができる。
【0017】
前記多孔質粒子は、例えば、タイや日本等の珪藻土層において、SEM又はTEM等の顕微鏡にて測定される、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状であり、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内となる多孔質体が含まれる珪藻土層の区画から、所定の珪藻土を常法に従い取り出し、ついで公知の手段を用いて焼成及び粒子状に整粒することにより、容易に得ることが可能である。なお、タイや日本(例えば稚内等)などの珪藻土層において、前記区画が存在し、かつ前記区画にて容易に前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状である前記多孔質体を含む前記多孔質粒子を取り出せることは、本発明者らによる新知見である。また、本発明においては、前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が80以上であるのが好ましく、90以上であるのがより好ましい。このような好ましい白色度を有する前記多孔質粒子は、例えば、上記したように、前記多孔質粒子のFeの含有量を0.5at%以下とすることにより、容易に得ることができる。
【0018】
前記多孔質粒子はそのままで又はさらに例えばバインダー等の添加剤や溶媒等と混合され、分散剤又は分散剤が使用された製品として用いることができる。前記混合手段は公知の手段であってよい。なお、このような処理方法も本発明に包含される。前記多孔質粒子は、分散剤において、10重量%以上含まれるのが好ましく、このような好ましい範囲によれば、分散性及び捕集蓄積機能をより良好なものとすることができる。
【0019】
本発明における分散剤は、バルキング解消剤として使用するのも好ましく、スラッジ又は汚泥等のバルキング解消剤として使用するのがより好ましい。バルキング解消剤として用いることで、分散性をより優れたものにすることができるのみならず、消臭機能や水浄化機能もより効果的に発揮することができる。
【0020】
本発明の分散方法は、前記分散剤を用いて水系溶媒中に粉体を分散させる工程を含む分散方法であるのが好ましい。水系溶媒としては、例えば、イオン交換水や超純水等の水、又は水と水溶性有機溶媒(エチルアルコール、エチレングリコール等)との混合溶媒等が挙げられるが、本発明においては、これらに限定されず、水分が含まれる溶媒であればそれでよく、例えばスラッジや汚泥等も前記推計溶媒に含まれる。また、本発明の分散方法によれば、スラリー組成物を容易に製造することができ、本発明の分散方法を用いて作られるスラリー組成物は、前記分散剤、粉体及び水系溶媒を少なくとも含むスラリー組成物であるのが好ましい。また、スラリー組成物の製造方法は、前記分散剤、粉体及び水系溶媒を混合し、前記粉体を分散させる工程を含むのが好ましい。このような好ましい範囲であれば、粉体の分散性をより向上させることができる。このような好ましい範囲によれば、スラリー組成物の粘度をより低減させることができ、分散性をより向上させることができる。
【0021】
また、前記分散剤は前記多孔質粒子が使用された後の再利用品であってもよい。使用済みの前記多孔質粒子を前記分散剤として再利用することにより、より環境に配慮した分散処理等を実現することができる。
【実施例0022】
(実施例1)
タイの一定の深さにある珪藻土層において、図2に示されるように、顕微鏡(TEM)にて測定される、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が円筒状であり、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内となる多孔質体が得られる珪藻土層の区画から、珪藻土を取り出し、ついで660℃で焼成及び10μmに整粒することにより、本発明の多孔質粒子を得た。なお、得られた多孔質粒子は、Xe-NMRにて細孔解析を実施したところ細孔壁面の形状は真っ直ぐに貫通された形状であり、貫通孔を有していた。また、X線回折装置を用いて多孔質粒子の結晶性につき評価したところ<111>配向している結晶であることがわかった。また、白度計(JIS Z8722)にて10箇所以上の複数地点で計測したところ、いずれも80以上であり、かつ平均で90以上であり、きれいで且つ良好な白色を有していた。また、得られた多孔質粒子のFeの含有量を測定したところ、0.5at%以下であった。
【0023】
得られた多孔質粒子を汚泥に混ぜて撹拌したところ、ゼオライト粉末に比べ、分散の速度と分布が明らかに違っており、本発明品は分散性に優れていた。また、得られた多孔質粒子に粘土を混ぜ、ついで水を用いて、スラリー組成物を形成したところ、分散性に優れており、多孔質粒子を50%以上含ませても、ろくろにて容器を容易に作製することができた。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の分散剤は、例えばバルキング解消剤として好適に用いられ、スラッジや汚泥等に好適に用いられる。また、分散剤として各種工業製品に好適に用いることもできる。
【符号の説明】
【0025】
1 多孔質体
2 細孔
d1 孔径
d2 深さ
図1
図2