(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106251
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】膜形成装置、積層体の製造方法、及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20240731BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20240731BHJP
H01L 21/205 20060101ALN20240731BHJP
H01L 21/368 20060101ALN20240731BHJP
H01L 31/0463 20140101ALN20240731BHJP
H10K 39/12 20230101ALN20240731BHJP
【FI】
C23C16/455
H10K30/50
H01L21/205
H01L21/368
H01L31/04 532A
H10K39/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010499
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥山 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 桂也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 啓介
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F053
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
4K030BA12
4K030BA42
4K030BA43
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4K030BA46
4K030BA47
4K030DA03
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4K030KA09
5F045AA00
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(57)【要約】
【課題】基板の洗浄から当該基板の膜形成プロセスへの移動を簡便にした、膜形成装置、積層体の製造方法、及び半導体デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】基板5上に膜を形成する装置10であって、基板5を洗浄する洗浄機構Aと、開口部2、並びに、膜原料を含有するガス及び不活性ガスを導入するガス導入口3、を有する容器1と、洗浄後の基板5及び容器1の少なくとも一方を移動させて、基板5の第1面及び開口部2を対向させる制御を行う第1制御機構Bとを備える、膜形成装置10。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に膜を形成する装置であって、
前記基板を洗浄する洗浄機構と、
開口部、並びに、膜原料を含有するガス及び不活性ガスを導入するガス導入口、を有する容器と、
前記洗浄後の基板及び前記容器の少なくとも一方を移動させて、前記基板の第1面及び前記開口部を対向させる制御を行う第1制御機構と
を備える、膜形成装置。
【請求項2】
前記第1面及び前記開口部が対向している間に、前記基板及び前記容器の少なくとも一方を移動させて、前記開口部を前記第1面に接触させる制御、並びに、前記開口部及び前記基板の当該接触を解除する制御を行う第2制御機構をさらに備える、請求項1に記載の膜形成装置。
【請求項3】
前記第2制御機構は、前記開口部を前記第1面に接触させることにより、前記容器と前記基板とに囲まれた領域からなる膜形成室を形成する、請求項2に記載の膜形成装置。
【請求項4】
前記膜原料を含有するガスは、膜形成材料又は膜形成材料の前駆体を含む液体をミスト化したものを含む、請求項1に記載の膜形成装置。
【請求項5】
前記ガス導入口を介して前記容器に不活性ガスを導入し、当該不活性ガスの導入に係るレイノルズ数を30以上3000以下にするガス導入機構をさらに備える、請求項1に記載の膜形成装置。
【請求項6】
前記第1制御機構は、前記基板を搬送する搬送機構を含み、前記搬送機構内の前記基板上部の清浄度がクラス1000以下である、請求項1に記載の膜形成装置。
【請求項7】
前記膜原料を含有するガスの導入により前記第1面に膜原料が付着された前記基板を加熱して前記膜を形成する加熱ステーションをさらに備える、請求項1に記載の膜形成装置。
【請求項8】
前記膜は、有機薄膜太陽電池デバイス用の膜である、請求項1~7のいずれか一項に記載の膜形成装置。
【請求項9】
基板と膜とを含む積層体の製造方法であって、
前記基板を洗浄する工程と、
前記洗浄後の基板及び開口部を有する容器の少なくとも一方を移動させて、前記基板の第1面及び前記開口部を対向させる工程と、
前記第1面及び前記開口部が対向している間に、前記開口部を前記第1面に接触させる工程と、
前記開口部及び前記第1面の接触の間に前記容器内に膜原料を含有するガスを導入して前記第1面上に膜を形成する工程と
を含む、積層体の製造方法。
【請求項10】
前記開口部を前記第1面に接触させる工程では、前記開口部を前記第1面に接触させることにより、前記容器と前記基板とに囲まれた領域からなる膜形成室が形成され、
前記膜原料を含有するガスの前記導入は、前記膜形成室が形成されている間に行われる、
請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記開口部及び前記第1面の接触の間に前記容器内に不活性ガスを導入することにより、前記第1面のうち前記開口部に囲まれた領域を、前記不活性ガスの導入により乾燥させる工程をさらに含み、
前記第1面上に膜を形成する工程は、前記乾燥させる工程に続いて行われる、
請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記膜原料を含有するガスは、膜形成材料又は膜形成材料の前駆体を含む液体をミスト化したものを含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項9から12のいずれかに記載の方法により前記積層体を製造する工程を含む、半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成装置、積層体の製造方法、及び半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池デバイス等の半導体デバイスにおいて、所定の膜を被処理部材(例えば基板)に形成する種々の方法が知られている(特許文献1~5)。
これらの特許文献1~5において、膜を形成する際の問題点として、作業環境が汚染されること、膜形成材料が基板以外に付着すること、基板及び基板に形成される膜が汚損されること、形成される膜が均一でないこと等が知られている。
【0003】
特許文献1は、ミスト発生装置を用いたミストの塗布方法がブース内で行われることを開示する(
図1)。特許文献2には、誘電体膜の製造方法に用いる成膜装置として、チャンバー内に基板を置き、ミスト発生器をこのチャンバーに接続した装置が記載されている(
図1)。特許文献3は、プロセスチャンバー内に、基板を載せる回転ステージと、ミスト噴出手段とを備える誘電体薄膜形成装置を開示する(
図1)。特許文献4には、ミスト化した被膜材料溶液を被処理部材の表面に塗布する成膜方法が、処理室内で行われることが教示されている(
図2)。特許文献5は、チャンバー内に、ミスト散布部と、基板設置部とを備えるパターン形成装置を有することを開示する(
図1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-26370号公報
【特許文献2】特開平10-92802号公報
【特許文献3】特開平11-131238号公報
【特許文献4】特開2003-273097号公報
【特許文献5】特開2007-27536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1~5はいずれも、成膜装置内に基板を設置して膜を形成している。例えば、成膜装置が有機薄膜太陽電池デバイスの製造に用いられるような場合、基板を洗浄する装置から成膜装置への基板の移動を効率化することは検討されていなかった。これは、例えば水分及び酸素の影響を防ぐため成膜装置内で基板が事前に乾燥されていることが要求され、故に、これらの装置を単純に接続することが困難なためである。
【0006】
そこで、本発明は、基板の洗浄から当該基板の膜形成プロセスへの移動を簡便にした、膜形成装置、積層体の製造方法、及び半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、次に記載の態様を含み得る。
[1] 基板上に膜を形成する装置であって、
前記基板を洗浄する洗浄機構と、
開口部、並びに、膜原料を含有するガス及び不活性ガスを導入するガス導入口、を有する容器と、
前記洗浄後の基板及び前記容器の少なくとも一方を移動させて、前記基板の第1面及び前記開口部を対向させる制御を行う第1制御機構と
を備える、膜形成装置。
[2] 前記第1面及び前記開口部が対向している間に、前記基板及び前記容器の少なくとも一方を移動させて、前記開口部を前記第1面に接触させる制御、並びに、前記開口部及び前記基板の当該接触を解除する制御を行う第2制御機構をさらに備える、[1]に記載の膜形成装置。
[3] 前記第2制御機構は、前記開口部を前記第1面に接触させることにより、前記容器と前記基板とに囲まれた領域からなる膜形成室を形成する、[2]に記載の膜形成装置。
[4] 前記膜原料を含有するガスは、膜形成材料又は膜形成材料の前駆体を含む液体をミスト化したものを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の膜形成装置。
[5] 前記ガス導入口を介して前記容器に不活性ガスを導入し、当該不活性ガスの導入に係るレイノルズ数を30以上3000以下にするガス導入機構をさらに備える、[1]~[4]のいずれかに記載の膜形成装置。
[6] 前記第1制御機構は、前記基板を搬送する搬送機構を含み、前記搬送機構内の前記基板上部の清浄度がクラス1000以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の膜形成装置。
[7] 前記膜原料を含有するガスの導入により前記第1面に膜原料が付着された前記基板を加熱して前記膜を形成する加熱ステーションをさらに備える、[1]~[6]のいずれかに記載の膜形成装置。
[8] 前記膜は、有機薄膜太陽電池デバイス用の膜である、[1]~[7]のいずれか一項に記載の膜形成装置。
[9] 基板と膜とを含む積層体の製造方法であって、
前記基板を洗浄する工程と、
前記洗浄後の基板及び開口部を有する容器の少なくとも一方を移動させて、前記基板の第1面及び前記開口部を対向させる工程と、
前記第1面及び前記開口部が対向している間に、前記開口部を前記第1面に接触させる工程と、
前記開口部及び前記第1面の接触の間に前記容器内に膜原料を含有するガスを導入して前記第1面上に膜を形成する工程と
を含む、積層体の製造方法。
[10] 前記開口部を前記第1面に接触させる工程では、前記開口部を前記第1面に接触させることにより、前記容器と前記基板とに囲まれた領域からなる膜形成室が形成され、
前記膜原料を含有するガスの前記導入は、前記膜形成室が形成されている間に行われる、
[9]に記載の製造方法。
[11] 前記開口部及び前記第1面の接触の間に前記容器内に不活性ガスを導入することにより、前記第1面のうち前記開口部に囲まれた領域を、前記不活性ガスの導入により乾燥させる工程をさらに含み、
前記第1面上に膜を形成する工程は、前記乾燥させる工程に続いて行われる、
[9]又は[10]に記載の製造方法。
[12] 前記膜原料を含有するガスは、膜形成材料又は膜形成材料の前駆体を含む液体をミスト化したものを含む、[9]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13] [9]から[12]のいずれかに記載の方法により前記積層体を製造する工程を含む、半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、洗浄後の基板、及び、開口部を有する容器、の少なくとも一方が移動されて、基板の第1面及び開口部が対向される。開口部を有する容器では、膜原料を含有するガスが導入されて膜形成が行われる。このように、基板の洗浄から当該基板の膜形成プロセスへの移動が簡便化される。例えば、基板の移動経路にHEPAフィルタが設けられた囲いを設けることによりクリーンの管理および湿度の管理が容易となり、さらに、搬送系がシンプルになる故に発塵が低減され、装置全体での占有面積が低減され、ならびに、装置全体の低コスト化も可能となり得る。。
【0009】
このような移動系が可能とされるのは、例えば次の構成による。上記容器では、例えば、開口部を基板の第1面に接触させることにより当該容器に基板が設置される。このように基板が設置された当該容器内に不活性ガスを導入することにより、基板の成膜面を容易に乾燥させることが可能である。或いは、基板を洗浄する洗浄機構内では、例えば、基板洗浄工程に続いて基板の乾燥工程が行われるようにする。このようにして、成膜装置に設置される基板が乾燥されていることの要求への対処がなされ、故に上述したような移動系が可能とされる。
【0010】
さらに、本発明によると次に説明する効果も奏され得る。
特許文献1~5の膜形成によれば、例えば基板を成膜装置内に移送して基板を当該成膜装置内で位置合わせする手順等が要され、さらに、膜を複数形成する場合に当該装置を複数設置することが要されるため、膜形成に要する時間が長くなっていた。他方、積層された膜に凹凸パターンを形成する際に、通常、メタルマスク及びエッチングが用いられる。メタルマスク、エッチングは、膜形成の作業環境とは異なる作業環境で使用される場合が多く、作業工程が煩雑となり、かかる点でも膜形成に要する時間が長くなっていた。また、メタルマスク、エッチングに必要な部材も増えコストがかかっていた。上述したように開口部を基板の第1面に接触させることにより当該容器に基板が設置される場合、開口部の形状によるパターン形成が可能であるため、メタルマスク及びエッチングを必要とせず、膜形成効率を改善することが可能となり、さらには、コストの低減及び作業環境の汚染の抑制も可能となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る積層体の製造方法の一例を表す。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る積層体の製造方法を用いたデバイス製造工程の一例を表す。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る積層体の製造方法を用いたデバイス製造工程の別の例を表す。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る膜形成装置の構成の一例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
<積層体の製造方法例>
図1を参照して、基板と当該基板に形成される膜とを含む積層体の製造方法を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る積層体の製造方法の一例を表す。
【0014】
本発明の積層体の製造方法は、基板と膜とを含む積層体の製造方法であって、例えば、(0)基板5を洗浄し、洗浄後の基板5、及び、開口部2を有する容器1、の少なくとも一方を移動させて、基板5の第1面及び開口部2を対向させる工程(
図1(i-1))、(1)当該第1面及び開口部2が対向している間に、基板5及び容器1の少なくとも一方を移動させて、開口部2を当該第1面に接触させる工程(
図1(i-2))、(2)開口部2及び当該第1面の接触の間に容器1内に膜原料を含有するガス(膜原料含有ガスとも称され得る。)7を導入する工程(
図1(ii))、並びに、(3)膜原料含有ガス7を基板5の上記第1面に接触させて基板5の当該第1面上に膜8を形成する工程(
図1(iii))、を含む。このようにして、基板5の洗浄から基板5の膜形成プロセスへの移動が簡便化される。例えば、基板の移動経路にHEPAフィルタが設けられた囲いを設けることによりクリーンの管理および湿度の管理が容易となり、さらに、搬送系がシンプルになる故に発塵が低減され、装置全体での占有面積が低減され、ならびに、装置全体の低コスト化も可能となり得る。また、本発明によれば、例えば、メタルマスク及びエッチングを必要とせずに膜形成することができる。また、本発明によれば、コストの低減及び作業環境の汚染の抑制が可能となり得る。
【0015】
(1)~(3)工程後に容器1の位置を変更することにより当該(1)~(3)工程を連続して行うことが可能である。また、複数の容器を用いて(1)~(3)工程を行うことにより複数の膜を並行して形成できる。したがって、膜形成効率を改善することができる。なお、後述するように、容器1の位置変更に先立つ容器1の基板5からの取り外しは(3)工程後に行われるものに限定されず、故に、容器1の位置変更も(3)工程後に行われるものに限定されない。
【0016】
積層体は、例えば、少なくとも1つの基板と、少なくとも1つの膜(層とも称される。)を積層してなるものであり、好ましくは、少なくとも1つの基板と、2以上の異なる膜を積層してなる。本明細書では、基板5上に膜8が形成されて積層体が製造される場合について主に説明を行うが、膜8は、基板5と基板5上に積層された1以上の層とからなる積層構造上に形成され、これにより積層体が形成されるものであってもよい。
【0017】
以下、本発明の積層体の製造方法の例を各工程に分けて説明する。
【0018】
(0)工程(基板洗浄工程及び移動工程)
(0)工程は、基板5を洗浄する工程と、洗浄後の基板5及び容器1の少なくとも一方を移動させて、基板5の第1面及び開口部2を対向させる工程とを含む。当該移動工程では、例えば、洗浄後の基板5上に1以上の層を形成し、当該1以上の層の形成後の基板5及び容器1の少なくとも一方の移動が行われてもよい。
【0019】
基板5を洗浄する工程により、例えば、基板5の表面の異物及び付着物が除去される。当該洗浄工程で用いられる洗浄方式として、水を用いる洗浄、ブラシ洗浄、高圧水吹付け洗浄、超音波洗浄、プラズマ洗浄、UVオゾン洗浄、並びに他の既知の洗浄方式が、単独で又は組み合わされて用いられ得る。当該洗浄工程では、洗浄剤が用いられてもよい。洗浄剤が用いられる場合、洗浄剤を用いた洗浄に続いて水を用いる洗浄が行われることにより、洗浄剤成分が洗い流されることが好ましい。
【0020】
洗浄工程により水が用いられる場合、続いて乾燥工程が行われることが好ましい。当該乾燥工程では、エアーナイフによる乾燥、及び乾燥炉による加熱乾燥等が、単独で又は組み合わされて用いられ得る。洗浄工程によりプラズマ洗浄及びUVオゾン洗浄等の乾式の洗浄が行われる場合、続いての乾燥工程は必ずしも行われなくてもよい。
【0021】
(1)工程(接触工程)
(1)工程は、基板5の上記第1面と開口部2とが対向している間に、基板5及び容器1の少なくとも一方を移動させて、開口部2を当該第1面に接触させる工程である。(1)工程では、基板5に対し、開口部2を有する容器1を接触させ(
図1(i-1)、(i-2))、基板5と開口部2の接触を維持することが好ましい。基板5上に1以上の層が形成されている場合、当該接触は、部分的に又は全体として、基板5上に形成されているこれらの層を介して行われるものであってもよい。当該接触では、例えば、開口部2の全面が基板5の上記第1面に接触され、容器1と基板5とに囲まれた領域からなる膜形成室6が形成される。これにより、後述するように、膜原料含有ガス7の充填、膜原料含有ガス7と基板5の第1面との接触、膜8の形成を行うことが可能となる。
【0022】
容器1の材質としては、有機材料又は無機材料のいずれが用いられてもよい。上述したように容器1の位置を変更することにより例えば(1)~(3)工程を連続して行う観点から、容器1は軽量であることが好ましく、容器1の材質は、有機材料であることが好ましく、プラスチックであることがより好ましい。他方、容器1の材質は、無機材料である場合、金属であることがより好ましい。容器1への電位印加により膜原料含有ガスの容器1への付着を防止する観点からは、容器1は、導電性の部材を有し、当該部材と他の導電部材との間に設けられる絶縁部材を有することが好ましい。容器1は、膜原料含有ガス、水、酸素等に対して耐食性を有していてもよく、フッ素樹脂等でコーティングされていてもよい。
【0023】
容器1及び開口部2は、基板5及び/又は基板5に積層される層により形成される段差に応じた形状を有していてもよい。また、容器1が有する開口部2の数は、1つ又は2以上であってもよい。容器1が2以上の開口部2を有する場合、膜形成効率を高めることができる。容器1が2以上の開口部2を有する場合、2以上の開口部2は、ラインアンドスペース、ハニカム等のパターンを形成してもよい。開口部2が上記形状を有すること、及び/又は、2以上の開口部2が上記パターンを形成することにより、メタルマスク、エッチングを使用することなく、形成膜に凹凸パターンを付与することができる。
【0024】
図1の例では単一の容器1のみが示されるが、2以上の容器1が用いられてもよい。この場合、2以上の容器1は、連結されていてもよく、所定の間隔を隔てて連結されていてもよい。かかる容器を使用すれば、基板5上の異なる場所に複数の膜を並行して形成でき、膜形成に要する時間を短縮することができ、膜形成効率を改善することができる。
【0025】
容器1は、ガス導入口3及びガス排出口4を備えていることが好ましい。ガス導入口3及びガス排出口4はそれぞれ、少なくとも1以上のバルブを備えていることが好ましい。容器1は、1つ又は2以上のガス導入口3を備えていてもよく、また、1つ又は2以上のガス排出口4を備えていてもよい。
【0026】
ガス導入口3は、ガス供給ラインを介して、膜原料(例えば、膜形成材料又は膜形成材料の前駆体等)を含む液体が溜められる膜原料含有タンクと接続されていてもよい。膜原料含有タンクは、例えば、膜原料を含む液体から膜原料含有ガスを生成する気化又は噴霧手段(例えば加熱手段、バブリング手段、超音波手段)を備えていてもよい。具体的には、膜原料含有タンクは、例えば、不活性ガス導入ラインにより不活性ガスが供給され、さらに、当該タンクに充填される膜原料をバブリング又は超音波に供した結果の、膜原料含有ガスを供給するものであってもよく、或いは、不活性ガス導入ラインにより不活性ガスが供給され、当該タンク内の膜材料を加熱した結果の、膜原料含有ガスを供給するものであってもよい。
【0027】
ガス導入口3は、ノズルを備えていてもよい。ノズルは、振動エネルギーを使用するノズルであることが好ましく、超音波アトマイザーを使用するノズルであることがより好ましい。これにより、膜原料含有ガス7に含まれるミストの大きさをさらに小さくすることができ、膜原料含有ガス7を膜形成室6内でより一層拡散させることができる。
【0028】
基板5は、例えば、有機材料、金属材料、布帛材料、紙材料、セラミック材料、ガラス材料、又はこれらの組み合わせであり、使用されるデバイス(例えば太陽電池デバイス等の半導体デバイス)に応じて選択すればよい。基板5は、薄膜を堆積させる基板として使用される。基板5を構成する材料は、例えばSi、Ge、及びGaAs等の半導体材料、ガラス、金属(例えばSUS)、高分子フィルム(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、或いはポリエステルエラストマー(好ましくはペルプレン(登録商標))、ナイロン)であることが好ましい。また、基板5は、ガラスにワニス層が堆積したもの、金属がコーティングされたもの、多層のフィルム等のように、上述した材料が組み合わされた上部基板と下部基板とを含むものであってもよい。基板5の大きさは、膜形成効率を改善する観点から、半導体デバイス等を構成するセル単位を複数配置可能な大きさであることが好ましい。基板5の形状は、膜形成効率を改善する観点から、フィルム形状又はロール形状であることが好ましい。
【0029】
基板5には、上述したように他の層が積層されていてもよく、他の層としては、透明導電層、電子輸送層、電極層、(p型半導体層及び/又はn型半導体層を含み得る)光起電力層、ホール輸送層、保護層、p型半導体層、n型半導体層、絶縁層、ガスバリア層、及び接着剤層等が挙げられる。基板5上に直接膜を形成することができ、基板5に積層された他の層上に膜を形成することもできる。
【0030】
容器1の開口部2を基板5の第1面に接触させる手段として、(a)容器1の開口部2の一部を基板5に当て、次いで開口部2の残りの部分を順次又は同時に基板5に当てること、(b)容器1の開口部2全体を基板5に同時に当てることが挙げられる。基板5に対する容器1の位置決めを調節しながら接触させる観点から、(a)が好ましい。また、基板5に対する容器1の位置決めの為に画像認識を使うことが好ましい。
【0031】
開口部2と基板5の第1面とが接触する周囲部を容器1の外部から密閉するような材料(好ましくは弾性体、より好ましくはゴム弾性体)を容器1の外周部に嵌めてもよい。これにより、容器1の開口部2と基板5との間に隙間が発生することを防止でき、膜原料含有ガス7の容器1からの流出を防止することができる。
【0032】
(1a)工程(電位印加工程)
本発明の方法は、(1a)膜原料含有ガス7の容器1への付着を防止するような電位を容器1に印加する工程をさらに含むことが好ましい。(1a)工程は、どのタイミングで行われてもよい。具体的には、(1a)工程は、(1)工程の前、(1)工程の間、(1)工程の後に行ってもよく、(2)工程の前、(2)工程の間、(2)工程の後に行ってもよく、(3)工程の前、(3)工程の間、(3)工程の後に行ってもよく、膜8が形成されるまで連続して行ってもよい。本明細書において、或る工程が別の工程の間に行われると説明される場合、当該2つの工程が部分的に並行して実行され得ることも意図されている。
【0033】
電位印加は、膜原料含有ガス7が有する電荷に応じて調整すればよく、膜原料含有ガス7が有する同極性電荷に帯電させるものであることが好ましく、容器1の側面に電源を接続して、電位を印加することがより好ましい。例えば、膜原料含有ガス7がプラスの電荷を有する場合、容器1の側面の内壁がプラスの電荷を帯びるように電位を印加することが好ましく、電源のプラス側を容器1の側面に接続し、電源のマイナス側をアース接続することがより好ましい。他方、膜原料含有ガス7がマイナスの電荷を有する場合、容器1の側面の内壁がマイナスの電荷を帯びるように電位を印加することが好ましく、電源のマイナス側を容器1の側面に接続し、電源のプラス側をアース接続することがより好ましい。
【0034】
他方、膜原料含有ガス7が有する電荷を調節してもよく、例えば膜原料含有ガス供給ライン上に電源を設けて電位を印加してもよい。例えば、膜原料含有ガス7が有する電荷をプラス側に帯電させる場合、電源のプラス側を膜原料含有ガス供給ラインに接続し、電源のマイナス側をアース接続することが好ましい。他方、膜原料含有ガス7が有する電荷をマイナス側に帯電させる場合、電源のマイナス側を膜原料含有ガス供給ラインに接続し、電源のプラス側をアース接続することが好ましい。
【0035】
(2)工程(膜原料含有ガス導入工程)
(2)工程は、容器1内に膜原料含有ガス7を導入する工程であり、容器1の開口部2と基板5の第1面との接触により膜形成室6が形成されている間に、膜形成室6に膜原料含有ガス7を導入することが好ましい。すなわち、(2)工程は、(1)工程により開口部2と基板5とが接触されている間に行われることが好ましい。なお、(2)工程は、(1)工程の前、(1)工程の間、(1)工程の後に行ってもよいが、膜原料含有ガス7を安定して導入する観点から、(1)工程の後に行うことが好ましい。
【0036】
膜原料含有ガス7は、液体(溶液とも称され得る。)を含む気体、及び気体のいずれでもよく、液体が気化する事で膜原料が固体微粒子化したもの、液体中に固体が分散しているものを含むものであってもよい。膜原料含有ガス7に含まれる膜原料は気体、液体、固体のいずれであってもよく、膜原料が固体である場合は、溶剤に溶解又は分散させて液体として使用することが好ましく、膜原料が液体である場合は、溶剤をさらに加えた液体として使用することが好ましい。
【0037】
膜原料含有ガス7に含まれる膜原料は、無機材料、有機材料のいずれでもよく、所望される膜に応じて適宜選択すればよい。膜原料は、ナノ粒子で膜形成する材料、ゾルゲル等の反応で膜形成する材料、酸化処理で酸化物を形成して膜形成する材料、窒化処理で窒化物を形成して膜形成する材料等であることが好ましく、ZnOx、TiOx、MoOx、ITO、FTO、酸化アルミニウム、酸化シリコンであることがより好ましい。
【0038】
溶液に使用される溶媒は、膜原料の溶解又は分散が可能となるものであればよく、例えば、エステル溶剤、エーテル溶剤、エーテルエステル溶剤、ケトン溶剤、アルコール溶剤、芳香族炭化水素溶剤、アミド溶剤、水及び上記の混合溶液等が挙げられる。溶液中の膜原料の濃度は、形成される膜や膜形成時間に応じて調整すればよく、10質量%以下0.1ppm以上の範囲が望ましい。
【0039】
膜原料含有ガス7は、キャリアガスとして不活性ガスを含むことが好ましい。キャリアガスとして不活性ガスを使用することにより、膜原料含有ガス7に含まれる膜原料の濃度を調整することができる。また、不活性ガスは、酸素及び水が除去されていることが好ましいが、ゾルゲル反応を使用して膜を形成する場合、不活性ガスは、水をある程度含んでいてもよい。不活性ガスとしては窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が挙げられるが、汎用性の観点から、不活性ガスは、好ましくは窒素、ヘリウム、アルゴンであり、より好ましくは窒素、アルゴンである。また、水と選択的に活性な膜原料に対してクリーンドライエアを使用してもよい。
【0040】
膜原料含有ガス7は、膜原料を気体又は液体(溶液)として含むことが好ましく、膜原料を含む液体をミスト化したものを含むことがより好ましい。
【0041】
ミスト化する方法としては、バブリング;単一噴孔ノズル、衝突型噴射弁、ファンスプレーノズル、渦巻き噴射弁等の圧力エネルギーを使用する方法;振動ノズル、超音波、音響等の振動エネルギーを使用する方法;エアーアシストアトマイザー、エアーブラストアトマイザー等の気体エネルギーを使用する方法;回転噴孔、回転円板、回転カップ、回転ホイール等の遠心力を使用する方法;静電等の電気エネルギーを使用する方法;蒸発凝縮法(液体を加熱して気化させて次いで冷却、凝集して微粒子を生成する方法)、減圧沸騰法(液体を急速に減圧して沸騰させ、蒸気泡が成長して液体を分裂させ微粒子を生成する方法)等の熱エネルギーを使用する方法;バブルの破裂に伴い微粒子を生成する方法等が挙げられる。ミスト化する方法としては、他の公知の手法が用いられてもよい。
【0042】
(2)工程において、膜原料含有ガス7はガス導入口3から導入すればよい。これにより、膜形成室6は、ガス導入口3から導入された膜原料含有ガス7で充填されることが好ましい。膜原料含有ガス7の導入量は、形成される膜や膜形成時間に応じて調節可能である。例えば、膜原料含有ガス7の導入量は、容器1の開口部2と基板5の第1面との接触により形成される膜形成室6の体積の1/3~20倍の範囲であることが望ましい。
【0043】
(2)工程の好ましい態様として、膜原料タンクに充填された膜原料を含む溶液を超音波に供してミスト化したものを、膜原料タンクに供給される不活性ガスで圧送することにより、容器内に膜原料含有ガスを導入することが挙げられる。これにより、膜原料をミストとして含む膜原料含有ガスを、ガス導入口3から膜形成室6に導入することができる。
【0044】
(2a)工程(膜原料含有ガス導入の停止工程)
本発明の方法は、(2)工程の後、容器1内への膜原料含有ガス7の導入を停止することにより膜原料含有ガス7の導入停止時間を設ける(2a)工程をさらに含むことが好ましい。(2a)工程は、(1)工程により開口部2と基板5とが接触されている間に行われることが好ましい。膜原料含有ガス7の導入を停止して膜原料含有ガス7の導入停止時間を設けることにより、膜形成室6において膜原料含有ガス7をさらに拡散させ、均一な膜を形成することが可能となり、また、膜原料含有ガス7の使用量を低減することも可能となる。
【0045】
(膜原料含有ガス7の導入時間)/(膜原料含有ガス7の導入停止時間)の比が1/4~2であることが好ましく、1/3~1.5であることがより好ましく、1/2~1であることがさらに好ましい。(膜原料含有ガス7の導入時間)/(膜原料含有ガス7の導入停止時間)の比が上記範囲を満たせば、膜形成室6において膜原料含有ガス7をさらに拡散させ、均一な膜を形成することが可能となり、また、膜原料含有ガス7の使用量を低減することも可能となる。
【0046】
(2a)工程は、(2)工程の後であれば、どのタイミングで行ってもよい。(2a)工程は、(3)工程の前、(3)工程の間、(3)工程の後に行ってもよい。膜原料含有ガスの導入停止は、1回又は2回以上行ってもよく、2回以上行う場合、(膜原料含有ガス7の導入時間の合計)/(膜原料含有ガス7の導入停止時間の合計)の比が上記数値範囲を満たせばよい。
【0047】
(3)工程(膜形成工程)
(3)工程は、膜原料含有ガス7を基板5の上記第1面に接触させて基板5の当該第1面上に膜8を形成する工程である。(3)工程において、膜原料含有ガス7と基板5の第1面との接触は、(1)工程により開口部2と基板5とが接触されている間に行うことが好ましい。(3)工程は、(2)工程の間、(2)工程の後に行ってもよく、(2)工程の後に行うことが好ましい。
【0048】
(3)工程において、加熱下で膜を形成してもよく、基板5を加熱して膜を形成することが好ましい。(3)工程において、加熱は、容器1を基板5に接触させたまま行ってもよいが、必要に応じて容器1を基板5から取り外して行ってもよく、容器1と基板5との接触を解除して行ってもよい。加熱には、基板5を加熱することに加え、又は、基板5を加熱する代わりに、膜原料含有ガスを加熱すること、及び/又は、容器を加熱すること等も含まれる。また、加熱は、(2)工程の前(膜原料含有ガスの加熱を除く)、(2)工程の間、(2)工程の後に行ってもよく、(3)工程の前、(3)工程の間、(3)工程の後に行ってもよい。当該加熱により、基板5上に存在する、膜原料含有ガス7に含まれる溶剤を蒸発させること、膜8がゾルゲル反応を伴って基板5に形成される場合、膜形成室6内部又は膜8の水分等によりゾルゲル反応を促進させること、膜8に含まれる有機材料を硬化させること、膜8に含まれる光起電力層がドナーとアクセプターを含む場合、ドナーとアクセプターの相分離を調節することが可能となる。
【0049】
基板5の法線方向(基板5の上記第1面に対する法線方向とも称され得る。)からみた膜8の形状と、基板5の法線方向からみた開口部2の形状とが互いに相似であることが好ましく、基板5の法線方向からみた膜8の形状と、基板5の法線方向からみた開口部2の形状とが互いに合同であることがより好ましい。
【0050】
膜8は、上記第1面に接触する開口部2の内側全面に形成されるものであることが好ましい。
【0051】
膜8は、当該膜8が基板5上に直接形成されるか、基板5と基板5上に積層された1以上の層とからなる積層構造上に形成されるかに応じて、例えば、導電層、電子輸送層、電極層、光起電力層、ホール輸送層、保護層、p型半導体層、n型半導体層、絶縁層、ガスバリア層、及び接着剤層のうちのいずれかとして機能する。導電層と電極層は、互いに異なる電極(正極、負極)として機能するものであることが好ましく、導電層は、透明であってもよい。膜8は、p型半導体及び/又はn型半導体を含むものであってもよい。
【0052】
(4)工程(不活性ガス導入工程)
本発明の方法は、(4)工程として、容器1に不活性ガスを導入する工程をさらに含むものであってもよい。使用する不活性ガスは、前述したものと同様であってもよい。(4)工程において、例えば不活性ガスはガス導入口3から導入される。当該不活性ガスの導入では、例えば、不活性ガスの導入に係るレイノルズ数を30以上3000以下に制御する。当該工程により、膜原料含有ガス7導入前に膜形成室6に存在する材料を排出すること、膜原料含有ガス7導入時に膜原料含有ガス7を拡散すること、膜原料含有ガス7導入後及び/又は加熱前に膜形成室6に残った材料を排出すること、加熱後に膜形成室6に発生したガス等を排出することが可能となる。排出のために、例えばガス排出口4が用いられる。また、膜形成後に不活性ガスを供給することより、ミスト及び溶剤の排出を促進することができ、形成した膜8から溶剤を揮発させて膜8中の溶剤濃度をコントロールすることができる。
【0053】
(4)工程は、(1)工程の間、(1)工程の後に行ってもよく、(2)工程の前、(2)工程の間、(2)工程の後に行ってもよく、(3)工程の前、(3)工程の間、(3)工程の後に行ってもよく、前述したよう(3)工程において基板を加熱した後に行ってもよい。
【0054】
(0)工程の洗浄工程により水が用いられる場合、上記では、洗浄工程に続いて乾燥工程が行われることが好ましいと説明した。当該乾燥工程の代わりに、(0)工程に続いて(1)工程が行われて、開口部2および基板5の上記第1面が接触して膜形成室6が形成されている間に、(4)工程が行われて、続いて(2)工程が行われるようにしてもよい。この場合、(4)工程により基板5の上記第1面のうち開口部2に囲まれた領域の乾燥が行われる。このように(0)工程での乾燥工程が省略される場合、膜8の生産効率が向上され得る。
【0055】
(5)工程(容器取り外し工程)
本発明の方法は、(5)工程として、基板5及び容器1の少なくとも一方を移動させて、容器1を上記第1面から取り外す工程をさらに含むものであってもよい。当該工程により、容器1の開口部2と基板5との接触を解除して、基板5及び基板5に形成された膜8を取り出すことが可能となる。容器1を上記第1面から取り外す手段としては、手動、所定の搬送用コロ、一軸移動可能な基板ホルダー、ロボットアームやロボットハンドを介して容器1を基板5から取り外すこと等が挙げられる。(5)工程は、(3)工程の後に行ってもよく、(4)工程の後に行ってもよく、(3)工程の加熱の前に行ってもよい。
【0056】
(1)~(3)工程又は(1)~(4)工程が繰り返し行われることが好ましい。(1)~(3)工程又は(1)~(4)工程を繰り返して行う場合、(5)工程は、最後の(3)工程又は(4)工程の後に行うことが好ましく、(3)工程において、加熱下で膜を形成する場合に行うことが好ましい。また、(1)~(3)工程又は(1)~(4)工程を行なった後、(1)工程を省略して(2)~(3)工程又は(2)~(4)工程を行ってもよい。これらにより、異なる複数膜を連続して形成することが可能となり、膜形成に要する時間を短縮でき、かつ膜形成効率を改善することができる。異なる膜を形成する際、膜原料含有ガス7に使用される膜原料や不活性ガスを変更してもよく、容器1の開口部2の形状を変更することにより凹凸形状を膜8に付与してもよい。
【0057】
容器1の開口部2と膜8との接触部分に均一でない膜が形成されている場合には、レーザー又はカッター等を用いて不要な部分を膜から切除してもよい。また溶剤を乾燥させる前に不要な部分をふき取る操作をしてもよい。また、基板5及び基板5上に形成された膜8は封止工程に供されてもよい。
【0058】
基板5上に、導電層21、電子輸送層22、光起電力層23、ホール輸送層24及び電極層25の順に積層することが好ましく、電極層25の上に保護層、ガスバリア層を積層することが好ましい。基板5上に、電極層25、ホール輸送層24、光起電力層23、電子輸送層22、導電層21の順に積層することも好ましく、導電層21の上に保護層、ガスバリア層を積層することが好ましい。本発明の方法によれば、太陽電池デバイス(有機薄膜太陽電池デバイス)、表示デバイス、光センサー、及びタッチパネル等の半導体デバイスを製造することができる。
【0059】
<太陽電池デバイス等の半導体デバイスの製造方法例>
図2及び3を参照して、太陽電池デバイス等の半導体デバイスの製造方法を具体的に説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る積層体の製造方法を用いたデバイス製造工程の一例を表し、
図3は、本発明の実施形態に係る積層体の製造方法を用いたデバイス製造工程の別の例を表す。以下、
図2及び
図3では、2つのセル単位が並行して製造される場合の例が示されるが、単一のセル単位のみが製造されるようにしてもよいし、3以上のセル単位が並行して製造されるようにしてもよい。
【0060】
図2(a)~(f)は、太陽電池デバイス等の半導体デバイスを2つのセル単位で製造するデバイス製造工程を順次示し、2つのセル単位は、基板5上に直列接続されるように配置されることになる。
図2(a)は、基板5を準備する工程、
図2(b)は、直列接続されるセル単位の数に応じた数の、互いに分離している複数の導電層21を、基板5に形成する工程、
図2(c)は、各セル単位について、露出している基板5上、及び、導電層21上に、電子輸送層22を形成する工程、
図2(d)は、各セル単位について電子輸送層22上に光起電力層23を形成する工程、
図2(e)は、各セル単位について光起電力層23上にホール輸送層24を形成する工程、
図2(f)は、各セル単位について、ホール輸送層24上に電極層25を形成する工程を示す。直列接続のため、当該電極層25は、例えば、隣接するセル単位の電極層21上にも設けられるように形成される。
図2(f)の工程において、電極層21、電子輸送層22、光起電力層23、ホール輸送層24、及び電極層25から構成される各セル単位の積層体は、所定の間隔を空けて、他のセル単位の積層体と隣接して基板5上に形成される。このような積層体の形成のため、複数の容器1が、互いに間隔を空けて隣接するよう、電極層21上に設置される(
図2(c))。
【0061】
図2において、
図1を参照して説明した方法は、
図2(a)~(e)の工程で使用されることが好ましい。例えば基板5を洗浄することにより基板5を準備することが好ましい(
図2(a))。さらに、例えば電極層21を基板5に形成した後、基板5及び容器1の少なくとも一方を移動させて、基板5の第1面及び開口部2を対向させ、当該第1面と開口部2とが対向している間に、基板5及び容器1の少なくとも一方を移動させて、開口部2を当該第1面に接触させ、開口部2及び当該第1面の接触の間に膜原料含有ガス7を導入することにより、電子輸送層22を形成することが好ましい(
図2(c))。電子輸送層22が形成された後、変更した膜原料含有ガス7を導入することにより、光起電力層23を形成することが好ましい(
図2(d))。光起電力層23を形成した後、変更した膜原料含有ガス7を導入することにより、ホール輸送層24を形成することが好ましい(
図2(e))。
電極層25は、容器1を用いて形成した後、エッチングしてもよい。
図2(c)~(e)に示すように、複数の容器1を使用することにより、複数のセル単位を並行して製造することができ、膜形成効率を改善することができる。後述する
図3(c)~(e)についても同様である。
【0062】
図3(a)~(f)は、太陽電池デバイス等の半導体デバイスを2つのセル単位で製造する他のデバイス製造工程を順次示し、2つのセル単位は、基板5上に直列接続されるように配置されることになる。
図3(a)は、基板5を準備する工程、
図3(b)は、直列接続されるセル単位の数に応じた数の、互いに分離している複数の導電層21を、基板5に形成する工程、
図3(c)は、各セル単位について、露出している基板5上、及び、電極層21上に、電子輸送層22を形成する工程、
図3(d)は、各セル単位について電子輸送層22上に光起電力層23を形成する工程、
図3(e)は、各セル単位について光起電力層23上にホール輸送層24を形成する工程、
図3(f)は、各セル単位について、ホール輸送層24上に電極層25を形成する工程を示す。直列接続のため、当該電極層25は、例えば、隣接するセル単位の電極層21上、及び、当該ホール輸送層24と当該電極層21の間で上面が露出している基板5上にも設けられるように形成される。
図3(f)の工程において、電極層21、電子輸送層22、光起電力層23、ホール輸送層24、及び電極層25から構成される各セル単位の積層体は、所定の間隔を空けて、他のセル単位の積層体と隣接して基板5上に形成される。このような積層体の形成のため、複数の容器1が、互いに間隔を空けて隣接するよう、電極層21上に設置される(
図3(c))。
【0063】
図3において、
図1を参照して説明した方法は、
図3(a)~(e)の工程で使用されることが好ましい。例えば基板5を洗浄することにより基板5を準備することが好ましい(
図3(a))。さらに、例えば電極層21を基板5に形成した後、基板5及び容器1の少なくとも一方を移動させて、基板5の第1面及び開口部2を対向させ、当該第1面と開口部2とが対向している間に、基板5及び容器1の少なくとも一方を移動させて、容器1の開口部2(開口部2は容器1の上面からの高さが異なる部分を有する。)を、露出している基板5の第1面及び電極層21に接触させ、当該接触の間に膜原料含有ガス7を導入することにより、電子輸送層22が形成される(
図3(c))。電子輸送層22が形成された後、変更した膜原料含有ガス7を導入することにより、光起電力層23を形成することが好ましい(
図3(d))。光起電力層23を形成した後、変更した膜原料含有ガス7を導入することにより、ホール輸送層24を形成することが好ましい(
図3(e))。
電極層25は、容器1を用いて形成してもよく、容器1を用いて形成した後、エッチングしてもよい。
【0064】
<膜形成装置の構成例>
図4を参照して、本発明の膜形成装置の基本構成を説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る膜形成装置の構成の一例を表す。当該装置は、
図1を参照して説明した積層体の製造方法、並びに、
図2及び
図3を参照して説明した半導体デバイスの製造方法を実施可能である。
【0065】
膜形成装置10は、基板5に膜を形成する装置であって、例えば、基板5を保持する保持具9と、基板5に対向して設けられる容器1とを備える。容器1は、基板5の第1面に接触される開口部2とガス導入口3を有する。容器1は、ガス排出口4をさらに有していてもよい。膜形成装置10によれば、例えば、メタルマスク及びエッチングを必要とせず、膜形成効率を改善することが可能となり、さらには、コストの低減及び作業環境の汚染の抑制が可能となり得る。膜形成装置10に係る基板5、容器1、開口部2、ガス導入口3、及びガス排出口4については、前述したのと同様の説明が成り立つ。
【0066】
保持具9は、基板5を例えば容器1に対向するように保持可能である。保持具9は、例えば基板5を載せる台、基板5を固定する器具(例えば留め具、好ましくはネジ)を備えていることが好ましい。
【0067】
膜形成装置10はさらに、基板5を洗浄する洗浄機構Aを備える。洗浄機構Aは、例えば洗浄ユニットと乾燥ユニットとが直接接続されることにより、洗浄工程に続いて行われ得る乾燥工程を実現してもよい。膜形成装置10はさらに、洗浄機構Aによる洗浄後の基板5、及び、容器1、の少なくとも一方を移動させて、基板5の第1面及び開口部2を対向させる制御を行う第1制御機構Bを備える。当該移動では、例えば、洗浄後の基板5上に1以上の層が形成され、当該1以上の層の形成後の基板5及び容器1の少なくとも一方の移動が行われてもよい。このようにして、基板5が洗浄された後の基板5の膜形成プロセスへの移動が簡便化される。例えば、基板の移動経路にHEPAフィルタが設けられた囲いを設けることによりクリーンの管理および湿度の管理が容易となり、さらに、搬送系がシンプルになる故に発塵が低減され、装置全体での占有面積が低減され、ならびに、装置全体の低コスト化も可能となり得る。
【0068】
洗浄機構Aは、例えば、保持具9に保持される前の基板5を洗浄する。この場合、第1制御機構Bは、例えば、洗浄後の基板5を移動させて保持具9に接近させることにより、保持具9に基板5を保持させて基板5の第1面及び開口部2を対向させる制御を行う。保持具9に基板5を保持させた際に、基板5の第1面及び開口部2が対向していない場合、第1制御機構Bは、保持具9及び保持具9に保持された基板5、並びに、容器1、の少なくとも一方を移動させて、基板5の第1面及び開口部2を対向させる制御を行う。なお、保持具9に基板5を保持させる際に、第1制御機構Bは、洗浄後の基板5および保持具9の少なくとも一方を移動させるものであってもよい。
【0069】
洗浄機構Aは、保持具9に保持される基板5を洗浄可能であってもよい。この場合、第1制御機構Bは、例えば、保持具9及び保持具9に保持され洗浄機構Aにより洗浄された基板5、及び、容器1、の少なくとも一方を移動させて、基板5の第1面及び開口部2を対向させる制御を行う。
【0070】
このような第1制御機構Bによる制御では、基板5及び/又は容器1が例えば第1方向に沿って移動される。同様に、第1制御機構Bによる制御では、第1制御機構Bにより保持具9が移動される場合、保持具9が例えば第1方向に沿って移動される。例えば、保持具9と洗浄機構Aとは第1方向に並ぶように設けられている。
【0071】
第1制御機構Bは、例えばロボットアーム、ロボットハンド、基板ホルダ、搬送用コロ等を含む。第1制御機構Bは、基板5を搬送する搬送機構を含むものであってもよく、当該搬送機構は例えば搬送用コロであってもよい。搬送機構内の基板5上部の清浄度は例えばクラス1000以下である。
【0072】
膜形成装置10はさらに、基板5の上記第1面および開口部2が対向している間に、基板5及び容器1の少なくとも一方を移動させて、開口部2を基板5の上記第1面に接触させる制御、並びに、開口部2と基板5の当該接触を解除する制御を行う第2制御機構Cを備えてもよい。当該制御において基板5が移動される場合、例えば、基板5を保持する保持具9を移動させることにより実現される。このような第2制御機構Cによる制御では、保持具9及び/又は容器1が例えば第2方向に沿って移動されることにより、保持具9と容器1とが相対的に接近又は離間される。第2方向は、上記第1方向とは異なる。第2制御機構Cは、例えばロボットアーム、ロボットハンド、基板ホルダ等を含む。
【0073】
第2制御機構Cは、例えば、容器1の開口部2を基板5の上記第1面に接触させることにより、容器1と基板5とに囲まれた領域からなる膜形成室6を形成する。他方、第2制御機構Cは、例えば、当該接触を解除することにより、基板5と膜の取り出し等を可能とする。
【0074】
第1制御機構B及び第2制御機構Cによると、開口部2と基板5との接触(第一接触とも称され得る。)を解除して開口部2と基板5の異なる位置とを接触(第二接触とも称され得る。)させることも可能となり得、故に、膜形成に要する時間を短縮でき、膜形成効率を改善することが可能となり得る。上記では、第1制御機構Bと第2制御機構Cとを別個のものとして説明したが、第1制御機構Bと第2制御機構Cとが部分的に又は全体として物理的に一体となっていてもよい。
【0075】
膜形成装置10はさらに、例えばガス導入機構を備える。ガス導入機構は、上述したガス導入口3を含む。ガス導入機構は、上述したガス排出口4を含んでもよい。ガス導入機構は、ガス導入口3を介して、容器1に膜原料含有ガス及び不活性ガスを導入する。ガス導入機構は、ガス導入口3を介して容器1に不活性ガスを導入する際に、例えば、当該不活性ガスの導入に係るレイノルズ数を30以上3000以下にする。
【0076】
膜形成装置10はさらに、例えば、ガス導入機構による膜原料を含有するガスの導入により上記第1面に膜原料が付着された基板5を加熱して膜を形成する加熱ステーションを備える。
【0077】
膜形成装置10は、開口部2と基板5の第1面とが接触する周囲部を容器1の外部から密閉するような弾性体をさらに備えていてもよい。当該弾性体で容器1の外周部を密閉することにより、膜形成室6から膜原料含有ガス7の流出を防止することができる。
【0078】
膜形成装置10は、容器1内を陽圧とする機構をさらに備えていてもよい。容器1内を陽圧とすることで膜形成室6内部に外部から外気が流入することを防止することができ、膜形成における酸素及び水の影響を低減することができる。また、上記弾性体と組み合わせることにより、膜8の形成を安定して行うことができる。容器1内を陽圧とする機構は、ガスの導入量と排出量の片方又は両方を制御することでコントロールできる。容器1外部よりも容器1内部の気圧が高い状態にできるものであればよく、不活性ガス(例えばアルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス等)を導入する機構であることが好ましい。
【0079】
膜形成装置10は、膜原料含有ガス7の容器1への付着を防止するような電位を容器1に印加する電位印加機構をさらに備えていてもよい。当該電位印加機構は、上記電位印加工程で説明したものと同様であってもよい。
【0080】
開口部2と基板5の第1面とが接触する部分はラビリンスを有していることも好ましい。ラビリンスは、例えば開口部2と基板5とが接触する部分において、開口部2と基板5の両方が、凹凸形状を有しており、凹凸形状が互い違いに噛み合っている構造であることが好ましい。接触する部分がラビリンスを有することで、接触する部分が安定して固定され、接触する部分からの膜原料含有ガス7の流出を防止することができる。
【0081】
以上、本発明の積層体の製造方法、半導体デバイスの製造方法、及び膜形成装置を説明したが、本発明は、種々の膜を形成する分野、特に、太陽電池デバイス(有機薄膜太陽電池デバイス)、表示デバイス、光センサー、及びタッチパネル等の半導体デバイスの分野に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1:容器
2:開口部
3:ガス導入口
4:ガス排出口
5:基板
6:膜形成室
7:膜原料含有ガス
8:膜
9:保持具
10:膜形成装置
21:導電層
22:電子輸送層
23:光起電力層
24:ホール輸送層
25:電極層
A:洗浄機構
B;第1制御機構
C:第2制御機構