(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106255
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】配線基板及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240731BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20240731BHJP
H01P 3/04 20060101ALI20240731BHJP
H01P 5/02 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K1/02 N
H05K1/18 J
H01P3/04
H01P5/02 603C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010504
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】高田 秀一
【テーマコード(参考)】
5E336
5E338
【Fターム(参考)】
5E336AA04
5E336BB03
5E336CC31
5E336CC55
5E336EE03
5E336GG11
5E338AA03
5E338BB75
5E338CC02
5E338CD13
5E338EE14
(57)【要約】
【課題】静電気破壊を防止するための容量性部品を配線パターンに接続してもインピーダンス不整合が起きないようにする。
【解決手段】配線基板は、第1面を有する基板と、基板の第1面に配置される端子と、第1面において端子に接続されて信号を伝送するように構成される配線パターンと、基板の内部又は第1面の反対側の第2面に配置されて基準電圧が印加可能な基準電圧層と、を備え、配線パターンに接続される容量性部品の接続箇所を含む所定の配線領域における配線パターンの線幅は、所定の配線領域以外の配線パターンの線幅よりも細く、基板を平面視したときに所定の配線領域と重なる基準電圧層は、部分的に除去されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する基板と、
前記基板の前記第1面に配置される端子と、
前記第1面において前記端子に接続されて信号を伝送するように構成される配線パターンと、
前記基板の内部又は前記第1面の反対側の第2面に配置されて基準電圧が印加可能な基準電圧層と、を備え、
前記配線パターンに接続される容量性部品の接続箇所を含む所定の配線領域における前記配線パターンの線幅は、前記所定の配線領域以外の前記配線パターンの線幅よりも細く、
前記基板を平面視したときに前記所定の配線領域と重なる前記基準電圧層は、部分的に除去されている、
配線基板。
【請求項2】
前記配線パターンは、
前記端子から前記所定の配線領域までの間に設けられる第1配線領域と、
前記所定の配線領域を含む第2配線領域と、
前記所定の配線領域を挟んで前記第1配線領域の反対側に配置される第3配線領域と、を有し、
前記第1配線領域の線幅は、前記第2配線領域の線幅及び前記第3配線領域の線幅よりも広く、
前記第3配線領域の線幅は、前記第2配線領域の線幅よりも広い、
請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第2配線領域における前記容量性部品の接続箇所の両側のインピーダンスは、前記第1配線領域及び前記第3配線領域のインピーダンスよりも高い、
請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記基準電圧層は、
前記基板の内部に配置される第1基準電圧層と、
前記第1基準電圧層に第1絶縁層を挟んで積層され、前記第1基準電圧層よりも前記配線パターンから遠い位置に配置される第2基準電圧層と、を有し、
前記平面視したときに前記所定の配線領域と重なる前記第1基準電圧層は、部分的に除去される、
請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
前記端子は、外部接続用に露出されている、
請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
前記容量性部品は、TVS(Translent Voltage Suppressors)ダイオード又はツェナーダイオードを含む、
請求項1に記載の配線基板。
【請求項7】
前記信号は差動信号であり、
前記端子は、前記差動信号を伝送するための第1端子及び第2端子を有し、
前記配線パターンは、
前記第1端子に接続される第1配線パターンと、
前記第2端子に接続される第2配線パターンと、を有し、
前記第1配線パターンに接続される第1容量性部品の接続箇所を含む第1の所定の配線領域における前記第1配線パターンの線幅は、前記第1の所定の配線領域以外の前記第1配線パターンの線幅よりも細く、
前記第2配線パターンに接続される第2容量性部品の接続箇所を含む第2の所定の配線領域における前記第2配線パターンの線幅は、前記第2の所定の配線領域以外の前記第2配線パターンの線幅よりも細い、
請求項1に記載の配線基板。
【請求項8】
前記差動信号は、PCI(Peripheral Component Interconnect) Express規格、又はUFS(Universal Flash Storage)規格のシリアル通信用の信号を含む、
請求項7に記載の配線基板。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の配線基板に実装され、前記配線パターンを介して前記信号を送受するコントローラと、
前記配線基板の前記第1面に実装されて前記配線パターンに接続される前記容量性部品と、を備える、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、配線基板及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
外部接続用の端子が露出された電子機器の一例として、SSD(Solid State Drive)が知られている。このような電子機器では、露出された端子に対して、静電気放電(ESD:Electro-Static Discharge)によるサージ電圧が印加されるおそれがある。電子機器に搭載される電子部品の静電気破壊を防止するために、端子に接続される配線パターンに静電気防止用の保護回路を設ける場合がある。
【0003】
保護回路は、容量性部品を含んでおり、配線パターンに寄生容量が増えるとインピーダンスの不整合が生じる。保護回路が設けられた配線パターンを用いる信号伝送において、挿入損失は大きくなり、反射損失が小さくなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6892126号公報
【特許文献2】特開2011-77581号公報
【特許文献3】特開2007-174075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態では、容量性部品が設けられた配線パターンにインピーダンス不整合が起きないようにした配線基板及び電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態によれば、第1面を有する基板と、
前記基板の前記第1面に配置される端子と、
前記第1面において前記端子に接続されて信号を伝送するように構成される配線パターンと、
前記基板の内部又は前記第1面の反対側の第2面に配置されて基準電圧が印加可能な基準電圧層と、を備え、
前記配線パターンに接続される容量性部品の接続箇所を含む所定の配線領域における前記配線パターンの線幅は、前記所定の配線領域以外の前記配線パターンの線幅よりも細く、
前記基板を平面視したときに前記所定の配線領域と重なる前記基準電圧層は、部分的に除去されている、
配線基板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係るメモリシステムの概略構成を示すブロック図。
【
図3】SSDの配線基板上の各端子と、各端子に繋がる配線パターンとを模式的に示す平面図。
【
図5】配線パターンとTVSダイオードの接続箇所付近の等価回路図。
【
図9】一定の線幅の配線パターンのインピーダンス変化を模式的に示す図。
【
図10】本実施形態に係る配線基板のインピーダンス変化を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、配線基板及び電子機器の実施形態について説明する。以下では、配線基板及び電子機器の主要な構成部分を中心に説明するが、配線基板及び電子機器には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0009】
図1は、一実施形態に係るメモリシステム1の概略構成を示すブロック図である。
図1のメモリシステム1は、NAND型フラッシュメモリ(以下、単にNANDメモリと称する)2を備えたSSDの構成を示す。なお、
図1のメモリシステム1は、SSD以外の種々のシステム、例えばUFS(Universal Flash Storage)デバイス、MMC(Multi Media Card)、SDカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ等にも適用可能である。また、
図1のメモリシステム1は、NANDメモリ以外の不揮発メモリ(例えば、MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory、ReRAM:Resistive Random Access Memory、PRAM:Phase-change Random Access Memoryなど)を用いたシステムや、揮発メモリ(例えば、DRAM:Dynamic Random Access MemoryやSRAM:Static Random Access Memoryなど)を用いたシステムにも適用可能である。
【0010】
図1のメモリシステム1は、NANDメモリ2と、コントローラ3とを備えている。NANDメモリ2の具体的な構成については後述する。
【0011】
コントローラ3は、NANDバス4を介してNANDメモリ2に接続され、NANDメモリ2を制御する。コントローラ3は、ホストバス5を介してホスト機器(以下、単にホストと称する)6に接続されうる。コントローラ3は、ホストバス5を介してホスト6から受信した命令に応答して、NANDバス4を介してNANDメモリ2にアクセスする。ホスト6は、例えばパーソナルコンピュータ又はサーバ等の電子機器である。ホストバス5は、例えばPCIe(TM)、UFS、Ethernet(TM)などのインタフェース規格に従ったバスである。NANDバス4は、Toggle IFなどのインタフェース規格に従ったバスである。すなわち、コントローラ3は、ホスト6及びNANDメモリ2それぞれとの間で、所定のインタフェース規格に準じて信号の送受信を行う。
【0012】
コントローラ3は、ホストインタフェース回路(ホスト I/F)11、内蔵メモリ(RAM)12、プロセッサ(CPU)13、バッファメモリ14、NANDインタフェース回路(NAND I/F)15、及びECC(Error Checking and Correcting)回路16を備える。なお、コントローラ3の構成部品は
図1に示したものに限定されず、他の部品が含まれていてもよい。コントローラ3は、これらの構成部品を1パッケージに封止するSoC(System-on-a-Chip)として構成されうる。
【0013】
ホストインタフェース回路11は、ホストバス5を介してホスト6と接続され、ホスト6から受信した命令及びデータを、CPU13及びバッファメモリ14に転送する。またホストインタフェース回路11は、CPU13の命令に応答して、バッファメモリ14に記憶されたデータをホスト6へ転送する。
【0014】
CPU13は、コントローラ3の動作を制御する。例えばCPU13は、ホスト6から書き込み命令を受信した際には、それに応答して、NANDインタフェース回路15に対して書き込み命令を発行する。CPU13は、読み出し及び消去の際には、それぞれに応答して、NANDインタフェース回路15に対して読み出し命令及び消去命令を発行する。またCPU13は、NANDメモリ2を管理するための様々な処理を実行する。この様々な処理は、ガベージコレクション、リフレッシュ、及びウェアレベリングを含む。なお、以下で説明するコントローラ3の動作はファームウェアをCPU13が実行することで実現されても良いし、又はハードウェアで実現されても良い。
【0015】
NANDインタフェース回路15は、NANDバス4を介してNANDメモリ2と接続され、NANDメモリ2との通信を司る。そして、NANDインタフェース回路15は、CPU13から受信した書き込み命令に基づき、書き込むべきデータ及び制御信号をNANDメモリ2に送信する。また、NANDインタフェース回路15は、CPU13から受信した読み出し命令に基づき、NANDメモリ2に読み出し要求を行って、NANDメモリ2からの読み出し対象のデータ及び制御信号を受信する。バッファメモリ14は、書き込むべきデータや読み出し対象のデータを一時的に記憶する。
【0016】
RAM12は、例えばDRAMやSRAM等の半導体メモリであり、CPU13の作業領域として使用される。RAM12は、CPU13が実行するファームウェアや、NANDメモリ2を管理するための各種の管理情報等を記憶する。RAM12は、コントローラ3の外部に設けられてもよい。
【0017】
ECC回路16は、NANDメモリ2に格納されるデータに関する誤り検出及び誤り訂正に関する処理を行う。ECC回路16は、符号化器16aと復号器16bを有する。符号化器16aは、データの書き込みに伴って誤り訂正符号を生成して、これを書き込みデータに付加する。復号器16bは、NANDメモリ2から読み出したデータに含まれるエラーを検出し、検出したエラーを誤り訂正符号により訂正する。
【0018】
NANDメモリ2は、周辺回路20とメモリセルアレイ21を備える。周辺回路20は、ロウデコーダ22、ドライバ23、カラム制御回路24、及びレジスタ群25などを含む。周辺回路20は、NANDバス4を介してコントローラ3と接続される。
【0019】
メモリセルアレイ21は、ロウ及びカラムに対応付けられた複数の不揮発性のメモリセルを含む複数のブロックを備えている。メモリセルアレイ21に対するデータの読み書きは、周辺回路20により制御される。
【0020】
メモリシステム1は、配線基板上に
図1に示す各構成部品と外部接続用の端子(パッド又はピンとも呼ばれる)などを実装して構成される。
図1に示す各構成部品のうち少なくとも一部は、1以上のIC(Integrated Chip)チップの形態で配線基板に実装されてもよいし、個別のディスクリート部品の形態で配線基板に実装されてもよい。
【0021】
図2は、メモリシステム1の一例であるSSD10の外観図である。
図2のように、SSD10は、矩形状の配線基板30を有し、配線基板30の一辺に沿って配置される複数の端子31を備える。
図2では、配線基板30と端子31がともに露出される例を示すが、配線基板30を覆う筐体を設けて、端子31だけが露出されるようにしたSSD10もありうる。複数の端子31は、SSD10の配線基板30の第1面及び第1面とは反対側の第2面それぞれの一辺に沿って配置される。各端子31には、
図2では不図示の配線パターンが接続されている。各配線パターンは、第1面又は第2面で、対応する端子31に接続される。
【0022】
配線基板30には、複数のNANDメモリ2とコントローラ3を含む複数の実装部品が実装されている。
図2では、簡略化のためにNANDメモリ2とコントローラ3以外の実装部品を省略している。
【0023】
SSD10には、複数の規格があり、端子31の形状及び数は規格によって異なる。SSD10の端子31は、いわゆる雄型であり、露出されている。露出された各端子31は、ホスト機器6が備える主回路基板等に実装されたソケットに着脱自在に接続される。
【0024】
図3は、SSD10の配線基板30上の各端子31と、各端子31に繋がる配線パターン32とを模式的に示す平面図である。
図3では、複数の端子31に接続される複数の配線パターン32が略平行に一定間隔で配置される例を示すが、配線パターン32の配置場所と線幅は
図3に示したものに限定されない。
【0025】
図4は、
図3の一部分を拡大した平面図である。SSD10は、ノイズ耐性を向上させるために、少なくとも一部の信号については、差動信号で信号伝送を行う。
図4は、一組の差動信号用の一対の端子31に接続される2つの配線パターン32を示す。上述したように、SSD10では、複数の端子31からなる端子群が露出されており、端子群に静電気放電によるサージ電圧が印加されるおそれがある。このため、各端子31に繋がる配線パターン32には、TVS(Translent Voltage Suppressors)ダイオード又はツェナーダイオード33が接続される場合がある。本明細書では、配線基板30上の端子31に繋がる配線パターン32にTVSダイオード33を接続する例を説明する。
【0026】
図5は、配線パターン32とTVSダイオード33の接続箇所付近の等価回路図である。
図5に示すように、例えば各TVSダイオード33のそれぞれのカソードは対応する配線パターン32に接続され、それぞれのアノードは接地ノードに接続される。接地ノードは、SSD10のコントローラ3が動作する際の基準電圧が印加されるノードである。配線パターン32に静電気放電によるサージ電圧が印加されると、そのサージ電圧はTVSダイオード33によってクランプされる。従って、TVSダイオード33のカソードが繋がる配線パターン32は、TVSダイオード33のクランプ電圧以上には上昇しなくなる。これにより、サージ電圧を抑制することができる。
【0027】
図4において、配線パターン32の左側にSSD10の複数の端子31が設けられ、右側には例えばSSD10のコントローラ3等のICチップが電気的に接続される。本実施形態に係る配線基板30では、
図4に示すように、配線パターン32の線幅は、配線基板30上で一定ではなく、場所によって異なる。例えば、配線パターン32に接続されるTVSダイオード33の接続箇所を含む所定の配線領域における配線パターン32の線幅は、所定の配線領域以外の配線パターン32の線幅よりも細い。
【0028】
また、配線基板30の内部の配線層には、基準電圧層が配置される。基準電圧層は、例えば接地ノードに接続される配線層であり、接地層とも呼ばれる。第1の実施形態に係る配線基板30では、平面視したときに上述した所定の配線領域と重なる基準電圧層が部分的に除去される。
【0029】
このように、本実施形態に係る配線基板30では、配線パターン32におけるTVSダイオード33の接続箇所付近の配線パターン32の線幅を調整するとともに、基準電圧層を部分的に除去することにより、配線パターン32のインピーダンスを制御し、結果として、配線パターン32のインピーダンス不整合を抑制する。
【0030】
配線基板30の内部には、複数の基準電圧層が積層される。例えば、配線基板30の内部には、第1基準電圧層(例えば、第1接地層)と第2基準電圧層(例えば、第2接地層)が積層される。第2基準電圧層は、第1基準電圧層に第1絶縁層を挟んで積層され、第1基準電圧層よりも配線パターン32から遠い位置に配置される。この場合、平面視したときに所定の配線領域と重なる第1基準電圧層は、部分的に除去される。
【0031】
あるいは、配線基板30の内部には、第1~第3基準電圧層が配置されてもよい。第3基準電圧層(例えば、第3接地層)は、第2基準電圧層に第2絶縁層を挟んで積層され、第1基準電圧層及び第2基準電圧層よりも配線パターン32から遠い位置に配置される。この場合、平面視したときに所定の配線領域と重なる第1基準電圧層及び第2基準電圧層は、部分的に除去される。
【0032】
図4に示すように、SSD10の配線基板30上の配線パターン32は、第1配線領域32a、第2配線領域32b、及び第3配線領域32cを有する。第1配線領域32aは、端子31から所定の配線領域までの間の範囲である。第2配線領域32bは、所定の配線領域を含む範囲である。第3配線領域32cは、所定の配線領域を挟んで第1配線領域32aの反対側に配置される範囲である。
【0033】
本実施形態に係る配線基板30では、第1配線領域32aの線幅(第1線幅)は、第2配線領域32bの線幅(第2線幅)と第3配線領域32cの線幅(第3線幅)よりも広くしている。また、第3配線領域32cの線幅は、第2配線領域32bの線幅よりも広くしている。
【0034】
また、本実施形態に係る配線基板30では、第2配線領域32bにおけるTVSダイオード33の接続箇所の両側、すなわち、接続箇所以外の箇所のインピーダンスは、第2配線領域32bにおけるTVSダイオード33の接続箇所のインピーダンスよりも高くなる。その理由は、TVSダイオード33の接続箇所は、接続するためのフットプリントによる容量とTVSダイオード自体の容量によってインピーダンスが低下するためである。また、第2配線領域32bにおけるTVSダイオード33の接続箇所の両側のインピーダンスは、第1配線領域32a及び第3配線領域32cのインピーダンスよりも高くしている。また、上述した理由により、第2配線領域32bにおけるTVSダイオード33の接続箇所のインピーダンスは、第1配線領域32a及び第3配線領域32cのインピーダンスよりも低くなる。
【0035】
第3配線領域32cには、インピーダンス整合のための部品が接続される場合がある。この種の部品は、例えば、コイル又はインダクタを含む。
【0036】
配線基板30の第3配線領域32cにインピーダンス整合のための部品を接続したとしても、配線パターン32に静電気放電対策用のTVSダイオード33を接続すると、インピーダンスが変化し、インピーダンス不整合が生じるおそれがある。
【0037】
具体的には、TVSダイオード33を接続すると、TVSダイオード33の端子形状に依存する寄生容量とTVSダイオード33自体の寄生容量により、配線パターン32の寄生容量が増えてしまい、配線パターン32のインピーダンスが低下し、インピーダンス不整合が生じる。
【0038】
そこで、本実施形態に係る配線基板30では、TVSダイオード33を配線パターン32に接続してもインピーダンス不整合が生じないようにする。
【0039】
【0040】
配線基板30は、複数の基準電圧層34を有する。以下では、基準電圧層34が接地層である例を説明する。
図6~
図8に示すように、配線基板30は、配線パターン32が配置される第1面の下に、第1接地層34a、第2接地層34b、及び第3接地層34cをこの順で有する。これら第1~第3接地層34a、34b、34cは、それぞれ別個の絶縁層35a、35bを挟んで積層されている。
図6~
図8では、配線パターン32が配置される第1面と反対側の第2面には配線パターン32と接地層が配置されていないが、第2面に配線パターン32又は接地層を配置してもよい。
図6~
図8に示す構造によるインピーダンス変化については後述する。
【0041】
図9は、一定の線幅の配線パターン32のインピーダンス変化を模式的に示す図である。
図9は、端子31に繋がる配線パターン32が一定の線幅で、かつ、配線パターン32の下方に配置される第1~第3接地層34a、34b、34cのそれぞれが部分的に除去されることなくベタパターンとして形成されている場合の図である。ここで、配線パターン32の下方は、配線パターン32が配置される第1面の下側の方向である。
図9の下側の図において、横軸は配線パターン32の端子31からの距離、縦軸は配線パターン32のインピーダンス値である。
【0042】
図9に示すように、端子31と配線パターン32の幅が互いに異なることから、端子31付近ではインピーダンスの変動が生じやすい。また、TVSダイオード33の接続箇所付近の第2配線領域32bは、TVSダイオード33のカソードの形状及びサイズに依存する寄生容量と、TVSダイオード33自体の寄生容量の影響を受けて、インピーダンスが低下する。TVSダイオード33の接続箇所付近より後段における第3配線領域32cは、配線幅と基準電圧層までの距離を一定に保つことでインピーダンスが一定に維持される。
【0043】
図9に示すように、一定の線幅の配線パターン32にTVSダイオード33を接続するためのフットプリントを有するため、インピーダンス不整合が生じる。本実施形態に係る配線基板30は、TVSダイオード33を接続しても、インピーダンスの不連続を抑えるようにする構成を有する。
【0044】
図10は、本実施形態に係る配線基板30のインピーダンス変化を模式的に示す図である。
図10の下側の図において、横軸は端子31からの距離、縦軸は配線パターン32のインピーダンス値である。
【0045】
以下、
図6~
図8と
図10を参照して、本実施形態に係る配線基板30の技術的特徴を説明する。配線基板30上の端子31からTVSダイオード33の接続箇所付近までの第1配線領域32aは、
図6に示すように、配線パターン32の一部を第1線幅に太くして形成される。また、第1配線領域32aでは、平面視したときに配線パターン32と重なる領域の第1接地層34aを部分的に除去している。上述したように、端子31の近傍ではインピーダンスが変動しやすいことから、第1配線領域32aにおける配線パターン32の線幅を太くしている。また、端子31の近傍の第1接地層34aを部分的に除去することで、第1配線領域32aにおける配線パターン32のインピーダンスを高くすることができる。
【0046】
TVSダイオード33の接続箇所付近(所定の配線領域の範囲)の第2配線領域32bは、
図7に示すように、配線パターン32の線幅を第2線幅に細くして形成される。また、第2配線領域32bでは、平面視したときに配線パターン32と重なる領域の第1接地層34aと第2接地層34bを部分的に除去している。第2配線領域32bでは第1接地層34a及び第2接地層34bを除去することで、第2配線領域32bにおける配線パターン32と、その下方の接地層(この場合は第3接地層34c)との距離を広げることができ、第1配線領域32aよりも配線パターン32のインピーダンスを高くすることができる。
図10に示すように、TVSダイオード33の接続箇所ではインピーダンスが一時的に低下するが、その両側では、第2配線領域32bにおける配線パターン32の線幅を細くし、かつ第1接地層34a及び第2接地層34bを部分的に除去することにより、インピーダンスを高くすることができ、配線パターン32の挿入損失と反射損失を抑制できるとともに、第2配線領域32bの平均的なインピーダンスの落ち込みを抑制できる。
【0047】
TVSダイオード33の接続箇所付近より後段における第3配線領域32cは、
図8に示すように、配線パターン32の線幅を第3線幅に太くして形成される。また、第3配線領域32cでは、平面視したときに配線パターン32と重なる領域の第2接地層34bを部分的に除去している。これにより、第3配線領域32cでは、第2配線領域32bよりもインピーダンスを低くすることができる。
図10に示すように、第3配線領域32cでは、
図9と同様にインピーダンスの変動が起きない。
【0048】
上述した実施形態では、配線パターン32にTVSダイオード33又はツェナーダイオードを接続する例を示したが、本実施形態による回路基板は、配線パターン32にTVSダイオード33又はツェナーダイオード以外の他の容量性部品を接続する場合にも適用可能である。容量性部品の一例は、キャパシタである。なお、容量性部品とは、回路パターンに部品を接続したときに、部品自体の寄生容量と、部品の端子部分の寄生容量により、回路パターンのインピーダンスを低下させる部品を指す。
【0049】
このように、本実施形態では、配線基板30の端子31に繋がる配線パターン32にTVSダイオード33を接続する際、配線パターン32の線幅を場所により調整し、かつ配線基板30の配線パターン32よりも下方に配置される複数の接地層を場所により部分的に除去する。これにより、配線パターン32の挿入損失と反射損失を抑制できるとともに、配線パターン32のインピーダンス不整合を抑制できる。より具体的な一例では、TVSダイオード33の接続箇所では、インピーダンスが落ち込むことから、TVSダイオード33の接続箇所の両側では、配線パターン32の線幅を細くするとともに、その下方に配置される第1及び第2接地層34a、34bを部分的に除去することで、インピーダンスを高くすることができ、TVSダイオード33の接続箇所の周辺での平均的なインピーダンスの変動を抑制できる。
[付記]
【0050】
[項目1]
第1面を有する基板と、
前記基板の前記第1面に配置される端子と、
前記第1面において前記端子に接続されて信号を伝送するように構成される配線パターンと、
前記基板の内部又は前記第1面の反対側の第2面に配置されて基準電圧が印加可能な基準電圧層と、を備え、
前記配線パターンに接続される容量性部品の接続箇所を含む所定の配線領域における前記配線パターンの線幅は、前記所定の配線領域以外の前記配線パターンの線幅よりも細く、
前記基板を平面視したときに前記所定の配線領域と重なる前記基準電圧層は、部分的に除去されている、
配線基板。
[項目2]
前記配線パターンは、
前記端子から前記所定の配線領域までの間に設けられる第1配線領域と、
前記所定の配線領域を含む第2配線領域と、
前記所定の配線領域を挟んで前記第1配線領域の反対側に配置される第3配線領域と、を有し、
前記第1配線領域の線幅は、前記第2配線領域の線幅及び前記第3配線領域の線幅よりも広く、
前記第3配線領域の線幅は、前記第2配線領域の線幅よりも広い、
項目1に記載の配線基板。
[項目3]
前記第2配線領域における前記容量性部品の接続箇所の両側のインピーダンスは、前記第1配線領域及び前記第3配線領域のインピーダンスよりも高い、
項目2に記載の配線基板。
[項目4]
前記第2配線領域における前記容量性部品の接続箇所の両側のインピーダンスは、前記第2配線領域における前記容量性部品の接続箇所のインピーダンスよりも高い、
項目3に記載の配線基板。
[項目5]
前記第2配線領域における前記容量性部品の接続箇所のインピーダンスは、前記第1配線領域及び前記第3配線領域のインピーダンスよりも低い、
項目3又は4に記載の配線基板。
[項目6]
前記基準電圧層は、
前記基板の内部に配置される第1基準電圧層と、
前記第1基準電圧層に第1絶縁層を挟んで積層され、前記第1基準電圧層よりも前記配線パターンから遠い位置に配置される第2基準電圧層と、を有し、
前記平面視したときに前記所定の配線領域と重なる前記第1基準電圧層は、部分的に除去される、
項目1乃至5のいずれか一項に記載の配線基板。
[項目7]
前記基準電圧層は、前記第2基準電圧層に第2絶縁層を挟んで積層され、前記第1基準電圧層及び前記第2基準電圧層よりも前記配線パターンから遠い位置に配置される第3基準電圧層を有し、
前記平面視したときに前記所定の配線領域と重なる前記第2基準電圧層は、部分的に除去される、
項目6に記載の配線基板。
[項目8]
前記端子は、外部接続用に露出されている、
項目1乃至7のいずれか一項に記載の配線基板。
[項目9]
前記容量性部品は、TVS(Translent Voltage Suppressors)ダイオード又はツェナーダイオードを含む、
項目1乃至8のいずれか一項に記載の配線基板。
[項目10]
前記信号は差動信号であり、
前記端子は、前記差動信号を伝送するための第1端子及び第2端子を有し、
前記配線パターンは、
前記第1端子に接続される第1配線パターンと、
前記第2端子に接続される第2配線パターンと、を有し、
前記第1配線パターンに接続される第1容量性部品の接続箇所を含む第1の所定の配線領域における前記第1配線パターンの線幅は、前記第1の所定の配線領域以外の前記第1配線パターンの線幅よりも細く、
前記第2配線パターンに接続される第2容量性部品の接続箇所を含む第2の所定の配線領域における前記第2配線パターンの線幅は、前記第2の所定の配線領域以外の前記第2配線パターンの線幅よりも細い、
項目1乃至9のいずれか一項に記載の配線基板。
[項目11]
前記差動信号は、シリアル通信用の信号を含む、
項目10に記載の配線基板。
[項目12]
前記差動信号は、PCI(Peripheral Component Interconnect) Express規格、又はUFS(Universal Flash Storage)規格のシリアル通信用の信号を含む、
項目11に記載の配線基板。
[項目13]
項目1乃至12のいずれか一項に記載の配線基板に実装され、前記配線パターンを介して前記信号を送受するコントローラと、
前記配線基板の前記第1面に実装されて前記配線パターンに接続される前記容量性部品と、を備える、
電子機器、
【0051】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 メモリシステム、2 NANDメモリ、3 コントローラ、4 NANDバス、5 ホストバス、6 ホスト機器、11 ホストインタフェース回路、12 内蔵メモリ(RAM)、13 プロセッサ(CPU)、14 バッファメモリ、15 NANDインタフェース回路、16 ECC回路、16a 符号化器、16b 復号器、20 コントローラインタフェース回路、21 メモリセルアレイ、22 ロウデコーダ、23 ドライバ、24 カラム制御回路、25 レジスタ群、26 シーケンサ、30 配線基板、31 端子、32 配線パターン、32a 第1配線領域、32b 第2配線領域、32c 第3配線領域、33 TVSダイオード、34 基準電圧層、34a 第1接地層、34b 第2接地層、34b 第1及び第2接地層、34c 第3接地層、35a 絶縁層、35b 絶縁層