IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ナノジャパンの特許一覧

<>
  • 特開-水質改良剤及び水質改良方法 図1
  • 特開-水質改良剤及び水質改良方法 図2
  • 特開-水質改良剤及び水質改良方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010626
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】水質改良剤及び水質改良方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/10 20060101AFI20240117BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20240117BHJP
【FI】
B01J20/10 C
C02F1/28 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112079
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】722004104
【氏名又は名称】株式会社ナノジャパン
(72)【発明者】
【氏名】高田 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 哲也
【テーマコード(参考)】
4D624
4G066
【Fターム(参考)】
4D624AA01
4D624AB10
4D624AB15
4D624BA06
4D624BB01
4D624BC04
4G066AA22B
4G066AA27B
4G066AA63D
4G066AA70A
4G066BA01
4G066BA12
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA24
4G066BA31
4G066BA38
4G066CA07
4G066CA45
(57)【要約】
【課題】優れた水質改良機能を備えた水質改良剤及び水質改良剤を用いる水質改良方法を提供する。
【解決手段】多孔質物質を含む水質改良剤であって、前記多孔質物質が複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子を含んでおり、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であり、前記細孔が、貫通孔であり、さらに、<111>配向している結晶を含む水質改良剤。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質物質を含む水質改良剤であって、前記多孔質物質が複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子を含んでおり、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であることを特徴とする水質改良剤。
【請求項2】
前記細孔が、貫通孔である請求項1記載の水質改良剤。
【請求項3】
前記細孔が、<111>配向している結晶を含む請求項1又は2に記載の水質改良剤。
【請求項4】
前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内である請求項1~3のいずれかに記載の水質改良剤。
【請求項5】
前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が90以上である請求項1~4のいずれかに記載の水質改良剤。
【請求項6】
前記多孔質粒子の平均粒径が0.1μm~10μmである請求項1~5のいずれかに記載の水質改良剤。
【請求項7】
前記多孔質粒子が酸化物を主成分として含む請求項1~6のいずれかに記載の水質改良剤。
【請求項8】
前記酸化物がSiOを含む請求項7に記載の水質改良剤。
【請求項9】
前記酸化物におけるFeの含有量が0.01at%~0.5at%である請求項7又は8に記載の水質改良剤。
【請求項10】
前記多孔質粒子が、前記細孔を5以上含む請求項1~9のいずれかに記載の水質改良剤。
【請求項11】
前記多孔質粒子が、珪藻土を主成分として含む請求項1記載の水質改良剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の水質改良剤を水中に添加する工程を含むことを特徴とする水質改良方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の水質改良剤が添加されていることを特徴とする水。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質改良剤及び水質改良剤を用いる水質改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水質改良剤は、水を植物の生育や動物の成長に適したものに変えるため、従来、農業、林業や漁業等に用いられ、これら適用について多くの改良がなされ、種々検討されている。
【0003】
特許文献1には、パイナップル果汁から抽出したブロメライン酵素に、汚染水中の微生物を活性化させる触媒機能を促進する酵母とクエン酸水を混合した触媒反応による水質浄化剤が記載されているが、これは水中の浮遊物質の減少や汚泥の減少を目的としており、水質の改良自体は限定的である。
【0004】
特許文献2には、炭酸カルシウムを主成分とする石灰質原料と、シリカを主成分とする珪酸質原料と、粘土鉱物とを粉砕・混合し、これらの粉砕混合物を多孔質構造の成形体となした後、750℃~1000℃の温度範囲で熱処理を施して、炭酸カルシウム成分を生石灰化し、前記生石灰化の後、含水させて消化させ、前記消化後、160℃~210℃の温度範囲で水蒸気養生を行うことによって得られる水浄化材が記載されているが、主に赤潮やアオコなどの発生原因であるリンを除去することを目的としており、水質の改良自体は限定的である。
【0005】
特許文献3には、沖縄県産米または農薬不使用米の米の研ぎ汁、沖縄県産の紅芋を乾燥させたもの、沖縄県産のオクラ、パパイヤ、ウイキョウから選ばれた1種またはそれらの混合物を乾燥させたものに対し、黒糖・糖蜜・白糖から選ばれた1種またはそれらの混合物、沖縄県産の海水塩、水を加えたものを2~6日静置して得た水質改良剤が記載されているが、水中に酸性物質や放射性物質が含まれている場合には、これらを除去することができず、アオコの発生原因であるリンなどを除去するなどの目的に限られ、水質の改良自体限定的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3392850号公報
【特許文献2】特許第4827045号公報
【特許文献3】特許第6539828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた水質改良機能を備えた水質改良剤及び水質改良剤を用いる水質改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、多孔質物質を含む水質改良剤であって、前記多孔質物質が複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子を含んでおり、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状である水質改良剤が、優れた水質改良機能を備えていること等を知見し、このような水質改良剤が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 多孔質物質を含む水質改良剤であって、前記多孔質物質が複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子を含んでおり、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であることを特徴とする水質改良剤。
[2] 前記細孔が、貫通孔である前記[1]記載の水質改良剤。
[3] 前記細孔が、<111>配向している結晶を含む前記[1]又は[2]に記載の水質改良剤。
[4] 前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内である前記[1]~[3]のいずれかに記載の水質改良剤。
[5] 前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が90以上である前記[1]~[4]のいずれかに記載の水質改良剤。
[6] 前記多孔質粒子の平均粒径が0.1μm~10μmである前記[1]~[5]のいずれかに記載の水質改良剤。
[7] 前記多孔質粒子が酸化物を主成分として含む前記[1]~[6]のいずれかに記載の水質改良剤。
[8] 前記酸化物がSiOを含む前記[7]に記載の水質改良剤。
[9] 前記酸化物におけるFeの含有量が0.01at%~0.5at%である前記[7]又は[8]に記載の水質改良剤。
[10] 前記多孔質粒子が、前記細孔を5以上含む前記[1]~[9]のいずれかに記載の水質改良剤。
[11] 前記多孔質粒子が、珪藻土を主成分として含む前記[1]記載の水質改良剤。
[12] 前記[1]~[11]のいずれかに記載の水質改良剤を水中に添加する工程を含むことを特徴とする水質改良方法。
[13] 前記[1]~[11]のいずれかに記載の水質改良剤が添加されていることを特徴とする水。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水質改良剤及び水質改良剤を用いる水質改良方法は、優れた水質改良機能を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に用いられる多孔質体の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
図2】実施例における顕微鏡像(TEM像)を示す。
図3】本発明の処理方法の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の多孔質粒子は、複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子であって、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であれば特に限定されない。
【0013】
前記多孔質粒子は、前記多孔質体を含む粒子であればそれでよく、粒子の形状等は特に限定されないし、他の多孔質体、賦形剤、結着剤又は接着剤等の添加剤などが含まれていてもよい。本発明においては、前記細孔が、貫通孔であるのが好ましい。また、<111>配向している結晶を含むのが好ましい。なお、前記貫通孔は、便宜上、Xe-NMRにて確認できるものであってよい。また、前記結晶はX線回折装置を用いて確認できるものであってよい。また、本発明においては、前記粒子の平均粒径が0.1μm~10μmであるのが好ましい。このような好ましい範囲によれば、水中に含まれる酸の吸着蓄積、放射性物質や不純物の捕集蓄積において、より優れた性能を発揮することができる。なお、前記平均粒径は、任意に抽出した10個の粒子の粒径の平均値をいう。
【0014】
前記多孔質体は、複数の細孔を有するものであって、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状であれば特に限定されないが、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内であるのが好ましく、1:10~1:100の範囲内であるのがより好ましい。前記多孔質体の好適な態様を図1に示す。図1の多孔質体は、複数の細孔を有している多孔質体であり、図1には、A-A’断面図とともに、前記細孔の形状が円筒状であることが示されている。前記細孔は、平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ形状が略円筒状であることが捕集蓄積機能において肝要である。本発明においては、前記平均孔径が8nm±2nmの範囲内であるのが好ましく、前記形状が円筒状であるのも好ましい。
【0015】
前記平均孔径は、任意に抽出した10個の細孔の孔径の平均値をいう。前記孔径は、前記細孔の直径を意味し、例えば、図1に示されるw1をいう。前記深さは、前記細孔の深さを意味し、例えば、前記細孔が貫通孔である場合には、便宜上、前記多孔質体粒子の粒径を前記深さとしてもよい。前記深さは、例えば、d1をいう。なお、図1のw1は、例えば8nmであり、d1は、例えば50nmである。
【0016】
前記多孔質粒子の構成材料は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、本発明においては、酸化物を主成分として含むのが好ましい。前記酸化物は、SiOを含むのが好ましく、また、Alを含むのも好ましい。また、本発明においては、前記酸化物におけるFeの含有量が組成比で0.5at%以下であるのが好ましく、0.1at%以下であるのがより好ましい。前記酸化物におけるFeの含有量の下限は特に限定されないが、例えば0.01at%である。このような好ましいFeの含有量の前記酸化物を主成分として含む前記多孔質粒子は、例えば雨季と乾季とを有する熱帯モンスーン気候下の珪藻土層の一定の深さの区画から抽出される珪藻土を焼成及び粒子状に整粒することにより、容易に得ることができる。なお、前記焼成及び前記整粒の手段及び順序等は本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段等が好適に用いられ、これら条件等も適宜設定されてよい。
【0017】
前記多孔質粒子は、前記細孔を5以上含むのが好ましく、このような好ましい範囲によれば、捕集蓄積機能をより優れたものとすることができる。
【0018】
前記多孔質粒子は、例えば、タイや日本等の珪藻土層において、SEM又はTEM等の顕微鏡にて測定される、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状であり、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内となる多孔質体が含まれる珪藻土層の区画から、所定の珪藻土を常法に従い取り出し、ついで公知の手段を用いて焼成及び粒子状に整粒することにより、容易に得ることが可能である。なお、タイや日本(例えば稚内等)などの珪藻土層において、前記区画が存在し、かつ前記区画にて容易に前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状である前記多孔質体を含む前記多孔質粒子を取り出せることは、本発明者らによる新知見である。また、本発明においては、前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が80以上であるのが好ましく、90以上であるのがより好ましい。このような好ましい白色度を有する前記多孔質粒子は、例えば、上記したように、前記多孔質粒子のFeの含有量を0.5at%以下とすることにより、容易に得ることができる。
【0019】
前記多孔質粒子はそのままで又はさらに例えばバインダー等の添加剤や溶媒等と混合され、さらに加工され、水質改良剤又は水質改良用の製品として用いることができる。前記混合手段及び前記加工手段はそれぞれ公知の手段であってよい。前記多孔質粒子は、水質改良剤又は前記製品において、10重量%以上含まれるのが好ましく、このような好ましい範囲によれば、前記水質改良機能をより優れたものとすることができる。
【0020】
本発明の水質改良方法は、前記水質改良剤を水中に添加する工程を含んでいれば特に限定されない。添加量等の条件は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、水中に含まれる酸や不純物等の濃度等によって適宜設定される。前記水としては、例えば、純水、超純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられ、これらの水に、例えば精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、電解、浸透圧の調整、緩衝化等の処理をした水(例えば、オゾン水、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等)も例として含まれる。また、本発明においては、これら例に限定されず、前記水には、水分が含まれる溶媒等も含まれる。
【0021】
また、前記水質改良剤は前記多孔質粒子が使用された後の再利用品であってもよい。使用済みの前記多孔質粒子を前記水質改良剤として再利用することにより、より環境に配慮した水質改良処理等を実現することができる。
【実施例0022】
(実施例1)
タイの一定の深さにある珪藻土層において、図2に示されるように、顕微鏡(TEM)にて測定される、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が円筒状であり、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内となる多孔質体が得られる珪藻土層の区画から、珪藻土を取り出し、ついで660℃で焼成及び10μmに整粒することにより、本発明の多孔質粒子を得た。なお、得られた多孔質粒子は、Xe-NMRにて細孔解析を実施したところ細孔壁面の形状は真っ直ぐに貫通された形状であり、貫通孔を有していた。また、X線回折装置を用いて多孔質粒子の結晶性につき評価したところ<111>配向している結晶であることがわかった。また、白度計(JIS Z8722)にて10箇所以上の複数地点で計測したところ、いずれも80以上であり、かつ平均で90以上であり、きれいで且つ良好な白色を有していた。また、得られた多孔質粒子のFeの含有量を測定したところ、0.5at%以下であった。
【0023】
得られた多孔質粒子に粘土を混ぜ、ついで水を用いて、マカロニ状のろ過材を作製し、ネットに入れ、フィルターを作製した。酸及びセシウムを含有させた試験水を、作製したフィルターに対して流し込み、ろ過材における酸の吸着蓄積機能とセシウムの捕集蓄積機能とを評価した。なお、比較例1としてゼオライトフィルターを用いた。評価したところ、酸の吸着については、実施例1では、アルカリ性を示すまで酸が吸着された。また、比較例1でも酸が少し吸着されていたが、しばらくすると、酸性傾向となり、吸着した酸が放出されたようであった。なお、実施例品では、吸着されたまま、放出は確認されなかった。また、セシウムの場合も同様の傾向を示した。なお、セシウムの評価結果を表1に示す。このような捕集蓄積機能は、ゼオライトフィルターや他のメソポーラスフィルター(平均孔径8nm±2nmの範囲外のもの及び非円柱状細孔のものを含む)では確認できず、本発明特有の効果であると考えられる。
【0024】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の多孔質粒子は、例えば水質改良剤として好適に用いられ、水の処理等に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0026】
1 多孔質体
2 細孔
d1 孔径
d2 深さ
4 水路管
5 被処理水(W)
6 ネット
7 マカロニ状のろ過材
図1
図2
図3