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特開2024-106261印刷物、データ生成装置、データ生成方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106261
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】印刷物、データ生成装置、データ生成方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20240731BHJP
   H04N 1/32 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B41M3/14
H04N1/32 144
【審査請求】未請求
【請求項の数】37
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010513
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹多 果純
(72)【発明者】
【氏名】小川 稔
【テーマコード(参考)】
2H113
【Fターム(参考)】
2H113AA06
2H113BA03
2H113BA05
2H113BA09
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB09
2H113BB10
2H113BB18
2H113BB22
2H113CA34
2H113CA39
2H113CA40
2H113CA44
2H113CA45
2H113FA24
(57)【要約】
【課題】 CMYKのプロセスカラーの4色を用いることによって、特色インキを用いることなく、高い色調のバリエーションで、視認されないコピー牽制文字を組み込んだ印刷物を提供すること。
【解決手段】 実施形態の印刷物は、複写された場合に残る第1領域と、複写された場合に消失する第2領域とを備える。第1領域および第2領域にはともに、網点がランダムに配置されるが、第1領域と第2領域とでは網点のサイズおよび色構成が異なり、第1領域では、複写された場合に残りやすいように、網点は、サイズが大きく、例えばK色が多く使用され、第2領域では、複写された場合に消失するように、網点は、サイズが小さく、例えばK色は使用されない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複写されると発現する特定情報が記録された印刷物であって、
前記特定情報を発現させるための第1領域と第2領域とを備え、
前記第1領域内には、複数の第1網点がランダムに配置され、
前記第2領域内には、複数の第2網点がランダムに配置され、
前記第1網点は、前記第2網点よりも大きく、
前記印刷物が複写されると、複写物において、前記第1領域が濃く写り、前記第2領域が写らないか薄く写ることによって、前記特定情報が発現する
ことを特徴とする、印刷物。
【請求項2】
前記第2領域を取り囲むように前記第1領域が配置される
ことを特徴とする、請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記第1領域を取り囲むように前記第2領域が配置される
ことを特徴とする、請求項1に記載の印刷物。
【請求項4】
前記第1領域および前記第2領域に、複写される前に前記特定情報が視認されないように、前記特定情報をカモフラージュする視認可能なパターンを、複数の第3網点を配置することによって設け、
前記第1網点は、前記第3網点よりも大きい
ことを特徴とする、請求項1に記載の印刷物。
【請求項5】
前記第1領域内にはさらに、複数の第4網点がランダムに配置され、
前記第4網点は、前記第1網点より小さく、前記第2網点よりも大きい
ことを特徴とする、請求項1に記載の印刷物。
【請求項6】
前記第4網点の色と、前記第1網点の色とは異なる
ことを特徴とする、請求項5に記載の印刷物。
【請求項7】
前記第4網点または前記第1網点は、CMYKのうちのKで着色された
ことを特徴とする、請求項6に記載の印刷物。
【請求項8】
前記複数の第2網点のおのおのは、それぞれ任意の形状を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の印刷物。
【請求項9】
前記複数の第1網点のうちの少なくとも1つの第1網点は、CMYKのうちのKで着色された
ことを特徴とする、請求項1に記載の印刷物。
【請求項10】
前記複数の第2網点のおのおのは、CMYKのうちのK以外の何れかで着色された
ことを特徴とする、請求項1に記載の印刷物。
【請求項11】
前記複数の第2網点は、CMYKのうちのCで着色された第1グループと、CMYKのうちのMで着色された第2グループと、CMYKのうちのYで着色された第3グループとに分類され、
前記第2領域に配置された前記第2網点の合計数に対する、前記第1グループに属する前記第2網点数の割合、前記第2グループに属する前記第2網点数の割合、および前記第3グループに属する前記第2網点数の割合を、前記複写物の所望する色味に応じて決定する
ことを特徴とする、請求項10に記載の印刷物。
【請求項12】
前記色味の調整のために、前記第2網点が配置された第2領域の一部から、前記第2網点を除外する
ことを特徴とする、請求項11に記載の印刷物。
【請求項13】
複写されると発現する特定情報を印刷物に配置するためのデータを生成する装置であって、
前記特定情報を配置するために、前記印刷物が複写された複写物において濃く写る第1領域と、写らないか薄く写る第2領域との、前記印刷物における配置場所を決定する領域配置場所決定部と、
前記印刷物の前記第1領域に配置される第1網点のサイズと、前記印刷物の前記第2領域に配置される第2網点のサイズとを、前記第1網点のサイズが、前記第2網点のサイズよりも大きくなるように決定する網点サイズ決定部と、
前記印刷物の前記第1領域内において複数の前記第1網点がそれぞれ配置される場所と、前記印刷物の前記第2領域内において複数の前記第2網点がそれぞれ配置される場所とを、ランダムに決定する網点配置場所決定部と、
前記印刷物の前記第1領域内において複数の前記第1網点がそれぞれ配置される場所の情報と、前記印刷物の前記第2領域内において複数の前記第2網点がそれぞれ配置される場所の情報とを含む前記データを生成するデータ生成部とを備える
ことを特徴とする、データ生成装置。
【請求項14】
前記領域配置場所決定部は、前記印刷物において、前記第2領域を取り囲むように前記第1領域の配置場所を決定する
ことを特徴とする、請求項13に記載のデータ生成装置。
【請求項15】
前記領域配置場所決定部は、前記印刷物において、前記第1領域を取り囲むように前記第2領域の配置場所を決定する
ことを特徴とする、請求項13に記載のデータ生成装置。
【請求項16】
前記印刷物において前記特定情報が視認されないように、前記特定情報をカモフラージュする視認可能なパターンを決定するカモフラージュパターン決定部と、
前記カモフラージュパターン決定部によって決定されたパターンを前記印刷物において視認可能とするために前記印刷物に配置される複数の第3網点の場所を決定するカモフラージュ網点場所決定部とをさらに備え、
前記データ生成部は、前記カモフラージュ網点場所決定部によって決定された前記場所の情報を前記データに含め、
前記第1網点は、前記第3網点よりも大きい
ことを特徴とする、請求項13に記載のデータ生成装置。
【請求項17】
前記網点配置場所決定部は、前記印刷物の前記第1領域内にさらに配置される、複数の第4網点の場所をランダムに決定し、
前記網点サイズ決定部は、前記第4網点のサイズを、前記第1網点のサイズよりも小さく、前記第2網点のサイズよりも大きくなるように決定する
ことを特徴とする、請求項13に記載のデータ生成装置。
【請求項18】
前記第4網点の色と、前記第1網点の色とを、異なる色となるように決定する網点色決定部をさらに備える
ことを特徴とする、請求項17に記載のデータ生成装置。
【請求項19】
前記網点色決定部は、前記第4網点の色、または前記第1網点の色を、CMYKのうちのKに決定し、
前記データ生成部はさらに、前記第4網点または前記第1網点の色の情報を前記データに含める
ことを特徴とする、請求項18に記載のデータ生成装置。
【請求項20】
前記複数の第2網点のおのおのは、それぞれ任意の形状を有し、
前記データ生成部はさらに、前記複数の第2網点のおのおのの形状の情報を前記データに含める
ことを特徴とする、請求項13に記載のデータ生成装置。
【請求項21】
前記複数の第1網点のうちの少なくとも1つの第1網点の色を、CMYKのうちのKに決定する網点色決定部をさらに備える
ことを特徴とする、請求項13に記載のデータ生成装置。
【請求項22】
前記複数の第2網点のおのおのの色を、CMYKのうちのK以外の色に決定する網点色決定部をさらに備える
ことを特徴とする、請求項13に記載のデータ生成装置。
【請求項23】
前記複数の第2網点を、前記網点色決定部によって、CMYKのうちのCに決定された第1グループと、CMYKのうちのMに決定された第2グループと、CMYKのうちのYに決定された第3グループとに分類する網点分類部と、
前記第2領域に配置される前記第2網点の合計数に対する、前記第1グループに属する前記第2網点数の割合、前記第2グループに属する前記第2網点数の割合、および前記第3グループに属する前記第2網点数の割合を、前記印刷物に対して要求される色調に応じて決定するグループ割合決定部とを備える
ことを特徴とする、請求項22に記載のデータ生成装置。
【請求項24】
前記印刷物に対して要求される色調の調整のために、前記印刷物において前記第2網点が配置された第2領域の一部から、前記第2網点を除外する網点除外部をさらに備え、
前記データ生成部は、前記除外された第2網点の情報を、前記データから削除する
ことを特徴とする、請求項23に記載のデータ生成装置。
【請求項25】
複写されると発現する特定情報を印刷物に配置するためのデータを生成する方法であって、
プロセッサが、
前記特定情報を配置するために、前記印刷物が複写された複写物において写る第1領域と、写らないか前記第1領域より薄く写る第2領域との、前記印刷物における配置場所を決定する第1ステップと、
前記印刷物の前記第1領域に配置される第1網点のサイズと、前記印刷物の前記第2領域に配置される第2網点のサイズとを、前記第1網点のサイズが、前記第2網点のサイズよりも大きくなるように決定する第2ステップと、
前記印刷物の前記第1領域内において複数の前記第1網点がそれぞれ配置される場所と、前記印刷物の前記第2領域内において複数の前記第2網点がそれぞれ配置される場所とを、ランダムに決定する第3ステップと、
前記印刷物の前記第1領域内において複数の前記第1網点がそれぞれ配置される場所の情報と、前記印刷物の前記第2領域内において複数の前記第2網点がそれぞれ配置される場所の情報とを含む前記データを生成する第4ステップとを含む
ことを特徴とする、データ生成方法。
【請求項26】
前記第1ステップは、前記印刷物において、前記第2領域を取り囲むように前記第1領域の配置場所を決定するステップを含む
ことを特徴とする、請求項25に記載のデータ生成方法。
【請求項27】
前記第1ステップは、前記印刷物において、前記第1領域を取り囲むように前記第2領域の配置場所を決定するステップを含む
ことを特徴とする、請求項25に記載のデータ生成方法。
【請求項28】
前記プロセッサがさらに、
前記印刷物において前記特定情報が視認されないように、前記特定情報をカモフラージュする視認可能なパターンを決定する第5ステップと、
前記第5ステップにおいて決定されたパターンを前記印刷物において視認可能とするために前記印刷物に配置される複数の第3網点の場所を決定する第6ステップとをさらに含み、
前記第4ステップは、前記第6ステップによって決定された前記場所の情報を前記データに含め、
前記第1網点は、前記第3網点よりも大きい
ことを特徴とする、請求項25に記載のデータ生成方法。
【請求項29】
前記第3ステップは、前記印刷物の前記第1領域内にさらに配置される、複数の第4網点の場所をランダムに決定し、
前記第2ステップは、前記第4網点のサイズを、前記第1網点のサイズよりも小さく、前記第2網点のサイズよりも大きくなるように決定する
ことを特徴とする、請求項25に記載のデータ生成方法。
【請求項30】
前記プロセッサが、
前記第4網点の色と、前記第1網点の色とを、異なる色となるように決定する第7ステップをさらに含む
ことを特徴とする、請求項29に記載のデータ生成方法。
【請求項31】
前記第7ステップは、前記第4網点の色、または前記第1網点の色を、CMYKのうちのKに決定し、
前記第4ステップはさらに、前記第4網点または前記第1網点の色の情報を前記データに含める
ことを特徴とする、請求項30に記載のデータ生成方法。
【請求項32】
前記複数の第2網点のおのおのは、それぞれ任意の形状を有し、
前記第4ステップはさらに、前記複数の第2網点のおのおのの形状の情報を前記データに含める
ことを特徴とする、請求項25に記載のデータ生成方法。
【請求項33】
前記プロセッサが、
前記複数の第1網点のうちの少なくとも1つの第1網点の色を、CMYKのうちのKに決定する第8ステップをさらに含む
ことを特徴とする、請求項25に記載のデータ生成方法。
【請求項34】
前記プロセッサが、
前記複数の第2網点のおのおのの色を、CMYKのうちのK以外の色に決定する第8ステップをさらに含む
ことを特徴とする、請求項25に記載のデータ生成方法。
【請求項35】
前記プロセッサが、
前記複数の第2網点を、前記第8ステップにおいて、CMYKのうちのCに決定された第1グループと、CMYKのうちのMに決定された第2グループと、CMYKのうちのYに決定された第3グループとに分類する第9ステップと、
前記第2領域に配置される前記第2網点の合計数に対する、前記第1グループに属する前記第2網点数の割合、前記第2グループに属する前記第2網点数の割合、および前記第3グループに属する前記第2網点数の割合を、前記印刷物に対して要求される色調に応じて決定する第10ステップとをさらに含む
ことを特徴とする、請求項34に記載のデータ生成方法。
【請求項36】
前記プロセッサが、
前記印刷物に対して要求される色調の調整のために、前記印刷物において前記第2網点が配置された第2領域の一部から、前記第2網点を除外する第11ステップをさらに含み、
前記第4ステップは、前記除外された第2網点の情報を、前記データから削除する
ことを特徴とする、請求項35に記載のデータ生成方法。
【請求項37】
複写されると発現する特定情報を印刷物に配置するためのデータを生成するプログラムであって、
プロセッサに、
前記特定情報を配置するために、前記印刷物が複写された複写物において写る第1領域と、写らないか前記第1領域より薄く写る第2領域との、前記印刷物における配置場所を決定する機能、
前記印刷物の前記第1領域に配置される第1網点のサイズと、前記印刷物の前記第2領域に配置される第2網点のサイズとを、前記第1網点のサイズが、前記第2網点のサイズよりも大きくなるように決定する機能、
前記印刷物の前記第1領域内において複数の前記第1網点がそれぞれ配置される場所と、前記印刷物の前記第2領域内において複数の前記第2網点がそれぞれ配置される場所とを、ランダムに決定する機能、
前記印刷物の前記第1領域内において複数の前記第1網点がそれぞれ配置される場所の情報と、前記印刷物の前記第2領域内において複数の前記第2網点がそれぞれ配置される場所の情報とを含む前記データを生成する機能
を実行させることを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー牽制技術を組み込んだ例えば印刷用紙のような印刷物、当該印刷物のためのデータを生成する装置、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品券や証明書といった紙証券類には、偽造防止のために、コピー牽制技術が組み込まれている。
【0003】
一般に、コピー牽制技術が組み込まれている印刷物(以下、「コピー牽制印刷物」とも称する)は、複写後の印刷物に再現されない小さな網点と、複写後の印刷物に再現される大きな網点とを組み合わせて構成される。なお、複写後の印刷物に再現されない小さな網点からなる領域は潜像領域、複写後の印刷物に再現される大きな網点からなる領域は背景領域とされている。
【0004】
従来のコピー牽制技術は、規則正しく配列された網点で構成されることが一般的(特許文献1)だが、これによると潜像領域と背景領域の境目がわかりやすくなり、印刷時点にコピー牽制文字を視認可能である。
【0005】
この境目を分かりづらくするため、すなわち、視認不能とするため、背景領域とその境目にランダム網点を使用している技術(特許文献2)や、網点ではなく万線を用いたパターンにより構成される技術(特許文献3)がある。
【0006】
しかし、上記の通常網点や万線パターンは、いずれもCMYKのプロセスカラーの4色を用いて印刷すると複写機でそのまま再現されてしまうことから、複写機をごまかすために特色インキを用い、かつ高解像度で出力する必要がある。
【0007】
また、カラープリンタによる無版印刷に適したコピー牽制技術として、CMYの混色による混色グレー表示部、単色のK(黒)を用いた単色グレー表示部により背景領域・潜像領域を形成するものもある(特許文献4)。しかし、上記の場合、色味がグレーのみであり別の色調への展開ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-154364号公報
【特許文献2】日本国特許第5957861号公報
【特許文献3】日本国特許第4701730号公報
【特許文献4】日本国特許第4656719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上説明したように、従来のコピー牽制技術では、以下のような問題がある。
【0010】
第1の問題は、特色インキでしか印刷ができないことである。これは、通常網点を用いてCMYKのプロセスカラーの4色で印刷しようとすると、印刷時点で背景領域と潜像領域との境目が分かりやすくなってしまったり、コピーで背景領域と潜像領域とがそのまま再現されてしまうためである。
【0011】
また、コピー牽制技術では、複写機での再現ができないように特色インキを用いることが一般的であるが、特色インキを用いると、使用する色が、他の絵柄印刷(CMYK)に加えて、1色増えるため、コスト高となってしまう。さらには、特色インキは、単色であることから色調のバリエーションを持たせることができない。
【0012】
第2の問題は、複写機で再現されにくくするため高解像度で製版を行うために、データが重くなってしまい、一般的なデザインソフトへの展開ができないことである。
【0013】
第3の問題は、通常網点の場合、薄い濃度になると網点の一粒一粒が小さくなるため、印刷時の濃度安定性が難しくなることである。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、上記問題を解決できる、コピー牽制技術を組み込んだ印刷物、当該印刷物のためのデータを生成する装置、方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0016】
第1の態様は、複写されると発現する特定情報が記録された印刷物であって、特定情報を発現させるための第1領域と第2領域とを備え、第1領域内には、複数の第1網点がランダムに配置され、第2領域内には、複数の第2網点がランダムに配置され、第1網点は、第2網点よりも大きく、印刷物が複写されると、複写物において、第1領域が濃く写り、第2領域が写らないか薄く写ることによって、特定情報が発現することを特徴とする、印刷物である。
【0017】
第2の態様は、第2領域を取り囲むように第1領域が配置されることを特徴とする、第1の態様の印刷物である。
【0018】
第3の態様は、第1領域を取り囲むように第2領域が配置されることを特徴とする、第1の態様の印刷物である。
【0019】
第4の態様は、第1領域および第2領域に、複写される前に特定情報が視認されないように、特定情報をカモフラージュする視認可能なパターンを、複数の第3網点を配置することによって設け、第1網点は、第3網点よりも大きいことを特徴とする、第1の態様の印刷物である。
【0020】
第5の態様は、第1領域内にはさらに、複数の第4網点がランダムに配置され、第4網点は、第1網点より小さく、第2網点よりも大きいことを特徴とする、第1の態様の印刷物である。
【0021】
第6の態様は、第4網点の色と、第1網点の色とは異なることを特徴とする、第5の態様の印刷物である。
【0022】
第7の態様は、第4網点または第1網点が、CMYKのうちのKで着色されたことを特徴とする、第6の態様の印刷物である。
【0023】
第8の態様は、複数の第2網点のおのおのが、それぞれ任意の形状を有することを特徴とする、第1の態様の印刷物である。
【0024】
第9の態様は、複数の第1網点のうちの少なくとも1つの第1網点が、CMYKのうちのKで着色されたことを特徴とする、第1の態様の印刷物である。
【0025】
第10の態様は、複数の第2網点のおのおのが、CMYKのうちのK以外の何れかで着色されたことを特徴とする、第1の態様の印刷物である。
【0026】
第11の態様は、複数の第2網点が、CMYKのうちのCで着色された第1グループと、CMYKのうちのMで着色された第2グループと、CMYKのうちのYで着色された第3グループとに分類され、第2領域に配置された第2網点の合計数に対する、第1グループに属する第2網点数の割合、第2グループに属する第2網点数の割合、および第3グループに属する第2網点数の割合を、複写物の所望する色味に応じて決定することを特徴とする、第10の態様の印刷物である。
【0027】
第12の態様は、色味の調整のために、第2網点が配置された第2領域の一部から、第2網点を除外することを特徴とする、第11の態様の印刷物である。
【0028】
第13の態様は、複写されると発現する特定情報を印刷物に配置するためのデータを生成する装置であって、特定情報を配置するために、印刷物が複写された複写物において濃く写る第1領域と、写らないか薄く写る第2領域との、印刷物における配置場所を決定する領域配置場所決定部と、印刷物の第1領域に配置される第1網点のサイズと、印刷物の第2領域に配置される第2網点のサイズとを、第1網点のサイズが、第2網点のサイズよりも大きくなるように決定する網点サイズ決定部と、印刷物の第1領域内において複数の第1網点がそれぞれ配置される場所と、印刷物の第2領域内において複数の第2網点がそれぞれ配置される場所とを、ランダムに決定する網点配置場所決定部と、印刷物の第1領域内において複数の第1網点がそれぞれ配置される場所の情報と、印刷物の第2領域内において複数の第2網点がそれぞれ配置される場所の情報とを含むデータを生成するデータ生成部とを備えることを特徴とする、データ生成装置である。
【0029】
第14の態様は、領域配置場所決定部が、印刷物において、第2領域を取り囲むように第1領域の配置場所を決定することを特徴とする、第13の態様のデータ生成装置である。
【0030】
第15の態様は、領域配置場所決定部が、印刷物において、第1領域を取り囲むように第2領域の配置場所を決定することを特徴とする、第13の態様のデータ生成装置である。
【0031】
第16の態様は、印刷物において特定情報が視認されないように、特定情報をカモフラージュする視認可能なパターンを決定するカモフラージュパターン決定部と、カモフラージュパターン決定部によって決定されたパターンを印刷物において視認可能とするために印刷物に配置される複数の第3網点の場所を決定するカモフラージュ網点場所決定部とをさらに備え、データ生成部は、カモフラージュ網点場所決定部によって決定された場所の情報をデータに含め、第1網点は、第3網点よりも大きいことを特徴とする、第13の態様のデータ生成装置である。
【0032】
第17の態様は、網点配置場所決定部が、印刷物の第1領域内にさらに配置される、複数の第4網点の場所をランダムに決定し、網点サイズ決定部が、第4網点のサイズを、第1網点のサイズよりも小さく、第2網点のサイズよりも大きくなるように決定することを特徴とする、第13の態様のデータ生成装置である。
【0033】
第18の態様は、第4網点の色と、第1網点の色とを、異なる色となるように決定する網点色決定部をさらに備えることを特徴とする、第17の態様のデータ生成装置である。
【0034】
第19の態様は、網点色決定部が、第4網点の色、または第1網点の色を、CMYKのうちのKに決定し、データ生成部がさらに、第4網点または第1網点の色の情報をデータに含めることを特徴とする、第18の態様のデータ生成装置である。
【0035】
第20の態様は、複数の第2網点のおのおのが、それぞれ任意の形状を有し、データ生成部がさらに、複数の第2網点のおのおのの形状の情報をデータに含めることを特徴とする、第13の態様のデータ生成装置である。
【0036】
第21の態様は、複数の第1網点のうちの少なくとも1つの第1網点の色を、CMYKのうちのKに決定する網点色決定部をさらに備えることを特徴とする、第13の態様のデータ生成装置である。
【0037】
第22の態様は、複数の第2網点のおのおのの色を、CMYKのうちのK以外の色に決定する網点色決定部をさらに備えることを特徴とする、第13の態様のデータ生成装置である。
【0038】
第23の態様は、複数の第2網点を、網点色決定部によって、CMYKのうちのCに決定された第1グループと、CMYKのうちのMに決定された第2グループと、CMYKのうちのYに決定された第3グループとに分類する網点分類部と、第2領域に配置される第2網点の合計数に対する、第1グループに属する第2網点数の割合、第2グループに属する第2網点数の割合、および第3グループに属する第2網点数の割合を、印刷物に対して要求される色調に応じて決定するグループ割合決定部とを備えることを特徴とする、第22の態様のデータ生成装置である。
【0039】
第24の態様は、印刷物に対して要求される色調の調整のために、印刷物において第2網点が配置された第2領域の一部から、第2網点を除外する網点除外部をさらに備え、データ生成部は、除外された第2網点の情報を、データから削除することを特徴とする、第23の態様のデータ生成装置である。
【0040】
第25の態様は、複写されると発現する特定情報を印刷物に配置するためのデータを生成する方法であって、プロセッサが、特定情報を配置するために、印刷物が複写された複写物において写る第1領域と写らないか第1領域より薄く写る第2領域との、印刷物における配置場所を決定する第1ステップと、印刷物の第1領域に配置される第1網点のサイズと、印刷物の第2領域に配置される第2網点のサイズとを、第1網点のサイズが、第2網点のサイズよりも大きくなるように決定する第2ステップと、印刷物の第1領域内において複数の第1網点がそれぞれ配置される場所と、印刷物の第2領域内において複数の第2網点がそれぞれ配置される場所とを、ランダムに決定する第3ステップと、印刷物の第1領域内において複数の第1網点がそれぞれ配置される場所の情報と、印刷物の第2領域内において複数の第2網点がそれぞれ配置される場所の情報とを含むデータを生成する第4ステップとを含むことを特徴とする、データ生成方法である。
【0041】
第26の態様は、第1ステップが、印刷物において、第2領域を取り囲むように第1領域の配置場所を決定するステップを含むことを特徴とする、第25の態様のデータ生成方法である。
【0042】
第27の態様は、第1ステップが、印刷物において、第1領域を取り囲むように第2領域の配置場所を決定するステップを含むことを特徴とする、第25の態様のデータ生成方法である。
【0043】
第28の態様は、プロセッサがさらに、印刷物において特定情報が視認されないように、特定情報をカモフラージュする視認可能なパターンを決定する第5ステップと、第5ステップにおいて決定されたパターンを印刷物において視認可能とするために印刷物に配置される複数の第3網点の場所を決定する第6ステップとをさらに含み、第4ステップは、第6ステップによって決定された場所の情報をデータに含め、第1網点は、第3網点よりも大きいことを特徴とする、第25の態様のデータ生成方法である。
【0044】
第29の態様は、第3ステップが、印刷物の第1領域内にさらに配置される、複数の第4網点の場所をランダムに決定し、第2ステップが、第4網点のサイズを、第1網点のサイズよりも小さく、第2網点のサイズよりも大きくなるように決定することを特徴とする、第25の態様のデータ生成方法である。
【0045】
第30の態様は、プロセッサが、第4網点の色と、第1網点の色とを、異なる色となるように決定する第7ステップをさらに含むことを特徴とする、第29の態様のデータ生成方法である。
【0046】
第31の態様は、第7ステップが、第4網点の色、または第1網点の色を、CMYKのうちのKに決定し、第4ステップがさらに、第4網点または第1網点の色の情報をデータに含めることを特徴とする、第30の態様のデータ生成方法である。
【0047】
第32の態様は、複数の第2網点のおのおのが、それぞれ任意の形状を有し、第4ステップがさらに、複数の第2網点のおのおのの形状の情報をデータに含めることを特徴とする、第25の態様のデータ生成方法である。
【0048】
第33の態様は、プロセッサが、複数の第1網点のうちの少なくとも1つの第1網点の色を、CMYKのうちのKに決定する第8ステップをさらに含むことを特徴とする、第25の態様のデータ生成方法である。
【0049】
第34の態様は、プロセッサが、複数の第2網点のおのおのの色を、CMYKのうちのK以外の色に決定する第8ステップをさらに含むことを特徴とする、第25の態様のデータ生成方法である。
【0050】
第35の態様は、プロセッサが、複数の第2網点を、第8ステップにおいて、CMYKのうちのCに決定された第1グループと、CMYKのうちのMに決定された第2グループと、CMYKのうちのYに決定された第3グループとに分類する第9ステップと、第2領域に配置される第2網点の合計数に対する、第1グループに属する第2網点数の割合、第2グループに属する第2網点数の割合、および第3グループに属する第2網点数の割合を、印刷物に対して要求される色味に応じて決定する第10ステップとをさらに含むことを特徴とする、第34の態様のデータ生成方法である。
【0051】
第36の態様36 は、プロセッサが、印刷物に対して要求される色味の調整のために、印刷物において第2網点が配置された第2領域の一部から、第2網点を除外する第11ステップをさらに含み、第4ステップは、除外された第2網点の情報を、データから削除することを特徴とする、第35の態様のデータ生成方法である。
【0052】
第37の態様は、複写されると発現する特定情報を印刷物に配置するためのデータを生成するプログラムであって、プロセッサに、特定情報を配置するために、印刷物が複写された複写物において写る第1領域と写らないか第1領域より薄く写る第2領域との、印刷物における配置場所を決定する機能、印刷物の第1領域に配置される第1網点のサイズと、印刷物の第2領域に配置される第2網点のサイズとを、第1網点のサイズが、第2網点のサイズよりも大きくなるように決定する機能、印刷物の第1領域内において複数の第1網点がそれぞれ配置される場所と、印刷物の第2領域内において複数の第2網点がそれぞれ配置される場所とを、ランダムに決定する機能、印刷物の第1領域内において複数の第1網点がそれぞれ配置される場所の情報と、印刷物の第2領域内において複数の第2網点がそれぞれ配置される場所の情報とを含むデータを生成する機能を実行させることを特徴とする、プログラムである。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、上記問題を解決できる、コピー牽制技術を組み込んだ印刷物、当該印刷物のためのデータを生成する装置、方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1図1は、第1の実施形態に係る印刷物の正面図およびその複写物の正面図の一例である。
図2図2は、第1の実施形態に係る印刷物の正面図およびその一部の拡大正面図の一例である。
図3図3は、第1の実施形態の変形例に係る印刷物の正面図およびその一部の拡大正面図の一例である。
図4図4は、第2の実施形態に係る印刷物の正面図およびその複写物の正面図の一例である。
図5図5は、第2の実施形態に係る印刷物の正面図およびその一部の拡大正面図の一例である。
図6図6は、第2の実施形態の変形例に係る印刷物の正面図およびその一部の拡大正面図の一例である。
図7図7は、第3の実施形態に係る印刷物の正面図およびその複写物の正面図の一例である(ポジパターンの場合)。
図8図8は、図7に示す印刷物の正面図およびその一部の拡大正面図の一例である。
図9図9は、第3の実施形態の変形例に係る印刷物の正面図およびその一部の拡大図の一例である。
図10図10は、第3の実施形態の変形例に係る印刷物の正面図およびその一部の拡大図の一例である。
図11図11は、第4の実施形態に係る印刷物の正面図およびその複写物の正面図の一例である(ネガパターンの場合)。
図12図12は、図11に示す印刷物の正面図およびその一部の拡大正面図の一例である。
図13図13は、データ生成装置の電子回路構成例を示すブロック図である。
図14図14は、(a)データ生成装置によって特定情報が組み込まれた一例の印刷物の正面図と、(b)同じ特定情報が従来技術によって組み込まれた印刷物の正面図との一例である。
図15図15は、(a)図14(a)の第1領域の一部の部分拡大図と、(b)図15(a)に対応する図14(b)の第1領域の一部の部分拡大図である。
図16図16は、(a)実施形態に係るデータ生成装置によって特定情報が組み込まれた別の一例の印刷物の正面図と、(b)同じ特定情報が組み込まれた比較用の印刷物の正面図との一例である。
図17図17は、(a)図16(a)に示す印刷物における一部の部分拡大図と、(b)図16(b)に示す印刷物における一部の部分拡大図との一例である。
図18図18は、外観評価結果の一覧表である。
図19図19は、(a)実施形態に係る印刷物のようにコピー牽制情報が組み込まれた株主優待券の正面図と、(b)その複写物の正面図との一例である。
図20図20は、(a)実施形態に係る印刷物のようにコピー牽制情報が組み込まれた商品券の正面図と、(b)その複写物の正面図との一例である。
図21図21は、図20(a)の商品券90におけるX-X’線に沿った断面における層構造を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0056】
(第1の実施形態に係る印刷物)
本発明の第1の実施形態に係る印刷物について説明する。
【0057】
図1は、第1の実施形態に係る印刷物の正面図およびその複写物の正面図である。
【0058】
図1(a)は、例えば印刷用紙のような、複写前の印刷物10Aを示し、図1(b)は、例えばコピーされたコピー用紙のような、複写後の複写物11Aを示す。
【0059】
印刷物10Aは、複写機によって複写されると複写物11Aにポジパターンで発現する特定情報(例えば、図1(b)に示す「COPY」という文字情報)が記録された、コピー牽制技術が組み込まれた印刷物10Aである。この印刷物10Aは、図1(a)に示すように、第1領域20と、第1領域20を取り囲む第2領域30とを備えている。
【0060】
なお、本明細書では、印刷物および複写物を、各実施形態を通じて共通的に説明する場合には、印刷物10および複写物11と表す。
【0061】
図2は、第1の実施形態に係る印刷物の正面図およびその一部の拡大正面図の一例である。
【0062】
図2(a)に示す印刷物10Aは、図1(a)に示す印刷物10Aと同じであり、図2(b)は、図2(a)に示す印刷物10Aの表面の一部であるA部の拡大正面図である。
【0063】
図2(b)に例示されるように、第1領域20内には、多数の網点21、および多数の網点24が、ランダムに配置され、第2領域30内には、多数の網点32、多数の網点33、および多数の網点34がランダムに配置されている。ランダムな配置は、ランダムとは十分に長い周期を有する疑似乱数によりその配置位置を計算した直交座標の値で配置したものとできる。十分に長い周期とは、100万以上とできる。
【0064】
第1領域20に配置される網点は、CMYKのプロセスカラーの4色のうち2色以上の版で構成され、図2(b)に示す例には、2種類の色の網点21(黒(墨))および網点24(イエロー)で構成された例が示されている。尚、CMYKは、シアン、マゼンダ、イエロー、墨の4色を略して表している。またこの4色をプロセスカラーという。プロセスカラーはカラー印刷の基本となる色である。またシアンインキ、マゼンダインキ、イエローインキ、墨インキの4つのインキのセットをプロセスインキという。
【0065】
第1領域20に配置される各網点の1粒の大きさ(直径)は、0.03mm~0.20mm、好ましくは0.04mm~0.17mmであり、各網点それぞれの配置密度は、色味に応じて、1~15%の間をとる。第1領域20に配置される各網点の1粒の大きさが、0.03mmよりも小さい場合、複写機によって複写されたときに写されない場合があり、逆に0.20mmよりも大きい場合、第2領域30との境目が顕著になるため、印刷物10の時点で文字が視認される恐れがある。
【0066】
図2(b)に示す例では、網点21(黒(墨))の大きさは0.169mm、配置密度は4.2%であり、網点24(イエロー)の大きさは0.064mm、配置密度は4%である。このように、第1領域20に配置される網点は、種類毎に大きさおよび配置密度を変えることができる。また、種類毎に形状も変えることができる。
【0067】
第2領域30に配置される網点も、CMYKのうち2色以上の版で構成され、図2(b)に示す例には、3種類の色の網点32(マゼンダ)、網点33(シアン)、および網点34(イエロー)で構成された例が示されている。
【0068】
第2領域30に配置される各網点の1粒の大きさ(直径)は、第1領域20に配置される網点21,24の1粒の大きさよりも小さく、0.02mm~0.05mm、好ましくは0.03mm~0.04mmであり、各網点それぞれの配置密度は、色味に応じて、1~15%の間をとる。第2領域30に配置される各網点の1粒の大きさが、0.02mmよりも小さい場合、高解像度での製版が必要となるため一般的なデザインソフトへの変換が難しくなり、逆に0.05mmよりも大きい場合、複写機によって複写されたときに写ってしまう可能性がある。
【0069】
色調の調整のために、第2領域30に配置される網点を、CMYKのうちのCで着色された網点からなる第1グループと、CMYKのうちのMで着色された網点からなる第2グループと、CMYKのうちのYで着色された網点からなる第3グループとに分類し、第2領域30に配置された網点の合計数に対する、第1グループに属する網点数の割合、第2グループに属する網点数の割合、および第3グループに属する網点数の割合を、表示する色調に応じて決定することができる。
【0070】
図2(b)に示す例では、網点32(マゼンダ)の大きさは0.032mm、配置密度は4%であり、網点33(シアン)の大きさは0.032mm、配置密度は4%であり、網点34(イエロー)の大きさは0.032mm、配置密度は5%である。第2領域30に配置される網点もまた、種類毎に大きさおよび配置密度を変えることができる。また、種類毎に形状も変えることができる。
【0071】
このような構成の印刷物10Aは、図1(a)に例示するように、全面的に薄茶色に見えるが、複写機によって複写されると、図1(b)に例示するように、複写物11A(コピー用紙)では、第1領域20が写りし、第2領域30が写らないことによって、背景部に囲まれた特定情報(例えば、「COPY」という文字情報)が発現する。特定情報は、文字列、記号、ピクトグラムとその組合せとして記録できる。複写機で複写され、発現する特定情報は、複写により出現した第1領域205により表示される。
【0072】
このようなポジパターンによる特定情報の発現は、印刷物10Aに、大きな網点がランダムに配置された第1領域20を取り囲むように、小さな網点がランダムに配置された第2領域30を設け、さらに第2領域30内の網点に黒を使用しないことによって、複写時に第2領域30が消失しやすくする一方、第1領域20における黒色の網点21の配置密度を高くすることによって実現できる。
【0073】
また、変形例として、色味の調整のために、第2領域30に白抜き部を設けても良い。これを、図3を用いて説明する。
【0074】
図3は、第1の実施形態の変形例に係る印刷物の正面図およびその一部の拡大正面図の一例である。
【0075】
図3(a)は、第1の実施形態の変形例に係る印刷物10A’の正面図であり、図3(b)は、図3(a)に示す印刷物10A’の表面の一部であるA’部の拡大正面図である。
【0076】
図3(b)に例示するように、印刷物10A’には、第1領域20に、CMYKのうち2色以上の網点として、網点21(黒(墨))、網点23(シアン)、および網点24(イエロー)の3色の網点が、それぞれ多数、ランダムに配置されている。
【0077】
この例では、網点21(黒(墨))、網点23(シアン)、および網点24(イエロー)の大きさは何れも0.127mmであり、配置密度はそれぞれ2%、6%、および3%である。第1領域20に配置される網点は、種類毎に大きさおよび配置密度を変えることができる。また、種類毎に形状も変えることができる。
【0078】
また、印刷物10A’には、第2領域30に、CMYKのうち2色以上の網点として、網点31(黒(墨))、網点33(シアン)、および網点34(イエロー)の3色の網点が、それぞれ多数、ランダムに配置されている。
【0079】
この例では、網点31(黒(墨))、網点33(シアン)、および網点34(イエロー)の大きさは何れも0.032mmであり、配置密度はそれぞれ1%、7%、および2%である。
【0080】
さらに、印刷物10A’には、第2領域30に、色味の調整のために、網点が配置されない白抜き部40もランダムに、任意の数、配置される。
【0081】
この例では、白抜き部40の大きさは0.254mmであり、配置密度は20%である。
【0082】
このような構成の印刷物10A’は、第2領域30に、白抜き部40を配置したことによって、複写物における背景部と文字部との濃度を合わせることができ、図示しないが、第1領域20と第2領域30がともに薄青色に見え、複写機によって複写された複写物では、第1領域20が写り、第2領域30が写らないことによって、背景部に囲まれた特定情報(例えば、「COPY」という文字情報)がポジパターンで発現する。
【0083】
(第2の実施形態に係る印刷物)
本発明の第2の実施形態に係る印刷物について説明する。
【0084】
第1の実施形態では、ポジパターンで特定情報(例えば、「COPY」という文字情報)を発現する印刷物について説明した。本実施形態では、逆に、ネガパターンで特定情報を発現する印刷物について説明する。
【0085】
図4は、第2の実施形態に係る印刷物の正面図およびその複写物の正面図の一例である。
【0086】
図4(a)は、複写前の印刷物10Bを示し、図4(b)は、複写後の複写物(例えば、コピー後のコピー用紙)11Bを示す。
【0087】
すなわち、本実施形態に係る印刷物10Bは、複写機によって複写されると複写物11Bにネガパターンで発現する特定情報(例えば、図4(b)に示す「COPY」という文字情報)が記録された、コピー牽制技術が組み込まれた印刷物10Bである。この印刷物10Bもまた、図4(a)に示すように、第1領域20と、第2領域30とを備えている。
【0088】
しかしながら、図4(a)に示す例では、図1(a)とは逆に、第2領域30を取り囲むように第1領域20が配置されている。
【0089】
図5は、第2の実施形態に係る印刷物の正面図およびその一部の拡大正面図の一例である。
【0090】
図5(a)に示す印刷物10Bは、図4(a)に示す印刷物10Bと同じであり、図5(b)は、図5(a)に示すように、印刷物10Bの表面の一部であるB部の拡大正面図である。
【0091】
図5(b)に例示されるように、第1領域20内には、多数の網点22、多数の網点23、および多数の網点24が、ランダムな場所に配置され、第2領域30内には、多数の網点31、多数の網点34がランダムな場所に配置されている。
【0092】
第1領域20に配置される網点は、CMYKのうち2色以上の版で構成され、図5(b)に示す例には、3種類の網点22(マゼンダ)、網点23(シアン)、および網点24(イエロー)で構成された例が示されている。
【0093】
第1領域20に配置される各網点の1粒の大きさは、第1の実施形態と同様に、0.03mm~0.20mm、好ましくは0.04mm~0.17mmであり、各網点それぞれの配置密度は、色味に応じて、1~15%の間をとる。
【0094】
図5(b)に示す例では、網点22(マゼンダ)の大きさは、0.127mm、配置密度は3%であり、網点23(シアン)の大きさは、0.127mm、配置密度は4%であり、網点24(イエロー)の大きさは、0.064mm、配置密度は4%である。このように、第1領域20に配置される網点は、種類毎に大きさおよび配置密度を変えることができる。
【0095】
第2領域30に配置される網点も、CMYKのうち2色以上の版で構成され、図5(b)には、2種類の色の網点31(黒(墨))、および網点34(イエロー)で構成された例が示されている。
【0096】
第2領域30に配置される各網点の1粒の大きさは、第1の実施形態と同様に、第1領域20に配置される網点22,23,24の1粒の大きさよりも小さく、0.02mm~0.05mm、好ましくは0.03mm~0.04mmであり、各網点それぞれの配置密度は、色味に応じて、1~15%の間をとる。
【0097】
図5(b)に示す例では、網点31(黒)の大きさは0.032mm、配置密度は4%であり、網点34(イエロー)の大きさは0.032mm、配置密度は4%である。第2領域30に配置される網点もまた、種類毎に大きさおよび配置密度を変えることができる。
【0098】
このような構成の印刷物10Bは、図4(a)に例示するように、全面的に薄茶色に見えるが、複写機によって複写されると、図4(b)に例示するように、複写物11B(コピー用紙)には、第1領域20が出現し、第2領域30が写らないことによって、ネガパターンによる特定情報(例えば、「COPY」という文字情報)が発現する。網点31(黒(墨))の配置密度を低くすることによって、「COPY」という文字を白抜きで出現させることができる。
【0099】
このようなネガパターンによる特定情報の発現は、印刷物10Bに、小さな網点がランダムに配置された第2領域30を取り囲むように、大きな網点がランダムに配置された第1領域20を設け、複写時に第2領域30が消失しやすくする一方、背景の第1領域20だけが残るようにすることによって実現される。
【0100】
図5(b)に示す例では、背景の第1領域20に配置されている網点22(マゼンダ)および網点23(シアン)の色味に近づけつつ、複写時における特定情報(例えば、「COPY」という文字情報)の出方を調整するために、第2領域30では、網点31(黒)を使用している。一般に、黒色の網点の数が多いと、濃度が濃くなり、複写時に、その濃さがそのまま再現されてしまう恐れがあるが、本実施形態では、網点31(黒)のランダムな配置と、密度の調整とにより、黒色の濃度を薄くしつつも、印刷時点での文字部と背景部の境目を分かりづらくすることができる。
【0101】
また、変形例として、色調の調整、すなわち第1領域の色調を第2領域の色調に合わせるために、第1領域20に白抜き部を設けても良い。これを、図6を用いて説明する。
【0102】
図6は、第2の実施形態の変形例に係る印刷物の正面図およびその一部の拡大正面図の一例である。
【0103】
図6(a)は、第2の実施形態の変形例に係る印刷物10B’の正面図であり、図6(b)は、図6(a)に示す印刷物10B’の表面の一部であるB’部の拡大正面図である。
【0104】
図6(b)に例示するように、印刷物10B’には、第1領域20に、CMYKのうち2色以上の網点として、網点21(黒(墨))、網点23(シアン)、および網点24(イエロー)の3色の網点が、それぞれ多数ランダムに配置されている。
【0105】
この例では、網点21(黒(墨))、網点23(シアン)、および網点24(イエロー)の大きさは何れも0.127mmであり、配置密度はそれぞれ3%、10%、および3%である。第1領域20に配置される網点は、種類毎に大きさおよび配置密度を変えることができる。また、種類毎に形状も変えることができる。
【0106】
さらに、印刷物10B’には、第1領域20に、色味の調整のために、網点が配置されない白抜き部40もランダムに、任意の数、配置される。
【0107】
この例では、白抜き部40の大きさは0.254mmであり、配置密度は33%である。
【0108】
また、印刷物10B’には、第2領域30に、CMYKのうち2色以上の網点として、網点31(黒(墨))、網点33(シアン)、および網点34(イエロー)の3色の網点が、それぞれランダムに多数配置されている。
【0109】
この例では、網点31(黒(墨))、網点33(シアン)、および網点34(イエロー)の大きさは何れも0.032mmであり、配置密度はそれぞれ2%、4%、および2%である。
【0110】
このような構成の印刷物10B’は、第1領域20に、白抜き部40を配置したことによって、複写物における背景部と文字部との濃度を合わせることができ、図示しないが、背景部と文字部とが薄青色に見え、複写機によって複写されると、複写物では、第2領域30が写らず、背景部である第1領域20が写ることによって、特定情報(例えば、「COPY」という文字情報)がネガパターンで発現する。
【0111】
(第3の実施形態に係る印刷物)
本発明の第3の実施形態に係る印刷物について説明する。
【0112】
本実施形態に係る印刷物は、第1の実施形態に係る印刷物10Aにさらにオブジェクトパターンを組み込んだものである。したがって、ここでは、第1の実施形態と重複する説明は避け、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0113】
オブジェクトパターンとは、複写前に特定情報が視認されないように、特定情報をカモフラージュする視認可能なパターンである。
【0114】
図7は、第3の実施形態に係る印刷物の正面図およびその複写物の正面図の一例である(ポジパターンの場合)。
【0115】
図7(a)に示すように、複写前の印刷物10Cは、ジグゾーパズルのピースの組合せのようなパターンが見える。これがオブジェクトパターンの一例である。
【0116】
印刷物10Cへのオブジェクトパターンの組み込みは、第1領域20内の網点よりも小さな多数の網点を配置して、後述するごまかし線41を形成することによって実現される。すなわち、ごまかし線41がオブジェクトパターンのように見える。
【0117】
図8は、図7に示す印刷物の正面図およびその一部の拡大正面図の一例である。
【0118】
図8(a)に示す印刷物10Cは、図7(a)に示す印刷物10Cと同じであり、図8(b)は、図8(a)に示すように、印刷物10Cの表面の一部であるC部の拡大正面図である。
【0119】
図8(b)に例示されるように、第1領域20内には、多数の網点21(黒)、および多数の網点23(シアン)がランダムに配置され、第2領域30内には、多数の網点31(黒)、おおび多数の網点33(シアン)がランダムに配置されている。さらに、印刷物10C内には、第1領域20および第2領域30に関係なく、ごまかし線41となる小さな網点(黒)が配置されている。
【0120】
第1領域20に配置される各網点の1粒の大きさは、第1の実施形態と同様に、0.03mm~0.20mm、好ましくは0.04mm~0.17mmであり、各網点それぞれの配置密度は、表示する色味に応じて、1~15%の間をとることができる。
【0121】
図8(b)に示す例では、第1領域20に配置される網点21(黒)の大きさは、0.045mm、配置密度は40%であり、網点23(シアン)の大きさは、0.0635mm、配置密度は16%である。なおこのときの配置密度は、白抜き以外でのものとできる。このように、第1領域20に配置される網点は、第1の実施形態と同様に、種類毎に大きさおよび配置密度を変えることができる。
【0122】
第2領域30に配置される各網点の1粒の大きさも、第1の実施形態と同様に、第1領域20に配置される網点21,24の1粒の大きさよりも小さく、0.02mm~0.05mm、好ましくは0.03mm~0.04mmであり、各網点それぞれの配置密度は、色味に応じて、1~15%の間をとる。
【0123】
図8(b)に示す例では、第2領域30に配置される網点31(黒)の大きさは0.032mm、配置密度は6%であり、網点33(シアン)の大きさは0.032mm、配置密度は7%である。このように、第2領域30に配置される網点もまた、第1の実施形態と同様に、種類毎に大きさおよび配置密度を変えることができる。
【0124】
図8(b)に示す例では、ごまかし線41を形成する網点は、色が黒であり、線幅は0.03mmである。
【0125】
印刷物10Cは、このような構成によって、第1領域20を、オブジェクトパターンの中に閉じ込める一方、第1領域20には、複写後に消失せず、かつ背景との濃度調整もできるように、配置密度40%で、黒色の網点21を配置している。
【0126】
このように構成された印刷物10Cは、図7(a)に例示するように、ごまかし線41によって形成されたオブジェクトパターンが視認可能な状態で全面的に薄青色に見えるが、複写機によって複写されると、図7(b)に例示するように、複写物11C(コピー用紙)では、オブジェクトパターンが消失し、第1領域20が黒く写りし、第2領域30が薄青色で写ることによって、特定情報(この場合「コピー」という文字情報)がポジパターンで発現する。
【0127】
また、変形例として、色味の調整のために、第2領域30に白抜き部を設けても良い。これを、図9および図10を用いて説明する。
【0128】
図9および図10は、第3の実施形態の変形例に係る印刷物の正面図およびその一部の拡大正面図の一例である。
【0129】
図9(a)は、第3の実施形態の変形例に係る印刷物10C’の正面図であり、図9(b)は、図9(a)に示す印刷物10C’の表面の一部であるC’部の拡大正面図である。
【0130】
図9(b)に例示するように、印刷物10C’には、第1領域20に、CMYKのうち2色以上の網点として、網点21(黒(墨))および網点22(マゼンダ)の2色の網点が、それぞれランダムに多数配置されている。
【0131】
この例では、網点21(黒(墨))および網点22(マゼンダ)の大きさは0.045mmおよび0.064mmであり、配置密度はそれぞれ40%および16%である。
【0132】
第1領域20には、この例では線幅が0.03mmである黒色の網点によって、ごまかし線41も形成されている。
【0133】
また、印刷物10C’では、第2領域30に、CMYKのうち2色以上の網点として、網点31(黒(墨))および網点32(マゼンダ)の2色の網点が、それぞれ多数、ランダムに配置されている。
【0134】
この例では、網点31(黒(墨))および網点32(マゼンダ)の大きさは何れも0.032mmであり、配置密度はそれぞれ6%および7%である。
【0135】
さらに、印刷物10C’には、第2領域30に、色味の調整のために、網点が配置されない白抜き部40もランダムに、任意の数、配置される。また、白抜き部40をごまかし線に隣接して設けてもよい。
【0136】
このような構成の印刷物10C’は、第2領域30に白抜き部40を配置したことによって、複写前のみならず、複写物における背景部と文字部との濃度も合わせることができ、複写前は、黒く見えるオブジェクトパターンが組み込まれた状態で全面的に薄ピンク色に見えるが、複写機によって複写されると、複写物では、第1領域20が黒く写り、第2領域30が薄ピンク色のまま写ることによって、薄ピンク色の背景部に囲まれた黒色の特定情報(例えば図7(b)に示すように、「コピー」という文字情報)がポジパターンで発現する。
【0137】
図10(a)は、第3の実施形態の別の変形例に係る印刷物10C’’の正面図であり、図10(b)は、図10(a)に示す印刷物10C’’の表面の一部であるC’’部の拡大正面図である。
【0138】
図10(b)に例示するように、印刷物10C’’には、第1領域20に、CMYKのうち2色以上の網点として、網点21(黒(墨))および網点24(イエロー)の2色の網点が、それぞれランダムに多数配置されている。
【0139】
この例では、網点21(黒(墨))および網点24(イエロー)の大きさはともに0.042mmであり、配置密度はそれぞれ40%および16%である。
【0140】
第1領域20には、この例では線幅が0.03mmである黒色の網点によって、ごまかし線41も形成されている。
【0141】
また、印刷物10C’’では、第2領域30に、CMYKのうち2色以上の網点として、網点31(黒(墨))および網点34(イエロー)の2色の網点が、それぞれ多数、ランダムに配置されている。
【0142】
この例では、網点31(黒(墨))および網点34(イエロー)の大きさは何れも0.032mmであり、配置密度はそれぞれ7%および9%である。
【0143】
このような構成の印刷物10C’’は、第2領域30に白抜き部40を配置したことによって、複写前のみならず、複写物における背景部と文字部との濃度も合わせることができ、複写前は、黒く見えるオブジェクトパターンが組み込まれた状態で全面的に薄黄色に見えるが、複写機によって複写されると、複写物では、第1領域20が黒く写り、第2領域30が薄黄色のまま写ることによって、薄黄色の背景部に囲まれた黒色の特定情報(例えば図7(b)に示すように、「コピー」という文字情報)がポジパターンで発現する。
【0144】
(第4の実施形態に係る印刷物)
本発明の第4の実施形態に係る印刷物について説明する。
【0145】
本実施形態に係る印刷物は、第2の実施形態に係る印刷物10Bにさらに、第3の実施形態で説明したようなオブジェクトパターンを組み込んだものである。したがって、ここでは、第2および第3の実施形態と重複する説明は避け、第2および第3の実施形態と異なる点について説明する。
【0146】
図11は、第4の実施形態に係る印刷物の正面図およびその複写物の正面図の一例である(ネガパターンの場合)。
【0147】
図11(a)に示すように、複写前の印刷物10Dでも、図7(a)と同様に、ジグゾーパズルのピースの組合せのようなオブジェクトパターンが見える。
【0148】
印刷物10Dへのオブジェクトパターンの組み込みもまた、第3の実施形態と同様に、第1領域20内の網点よりも小さな多数の網点を配置して、ごまかし線41を形成することによって実現される。
【0149】
図12は、図11に示す印刷物の正面図およびその一部の拡大正面図の一例である。
【0150】
図12(a)に示す印刷物10Dは、図11(a)に示す印刷物10Dと同じであり、図12(b)は、図12(a)に示すように、印刷物10Dの表面の一部であるD部の拡大正面図である。
【0151】
図12(b)に例示されるように、第1領域20内には、多数の網点21(黒)、および多数の網点23(シアン)がランダムな場所に配置され、第2領域30内には、多数の網点31(黒)、および多数の網点33(シアン)がランダムな場所に配置されている。さらに、印刷物10D内には、第1領域20および第2領域30に関係なく、ごまかし線41となる小さな網点(黒)が配置されている。
【0152】
第1領域20に配置される各網点の1粒の大きさは、第1の実施形態と同様に、0.03mm~0.20mm、好ましくは0.04mm~0.17mmであり、各網点それぞれの配置密度は、色味に応じて、1~15%の間をとる。
【0153】
図12(b)に示す例では、第1領域20に配置される網点21(黒)の大きさは、0.045mm、配置密度は40%であり、網点23(シアン)の大きさは、0.0635mm、配置密度は16%である。このように、第1領域20に配置される網点は、第1の実施形態と同様に、種類毎に大きさおよび配置密度を変えることができる。
【0154】
第2領域30に配置される各網点の1粒の大きさも、第1の実施形態と同様に、第1領域20に配置される網点21,23の1粒の大きさよりも小さく、0.02mm~0.05mm、好ましくは0.03mm~0.04mmであり、各網点それぞれの配置密度は、色味に応じて、1~15%の間をとる。
【0155】
図12(b)に示す例では、第2領域30に配置される網点31(黒)の大きさは0.032mm、配置密度は6%であり、網点33(シアン)の大きさは0.032mm、配置密度は7%である。このように、第2領域30に配置される網点もまた、第1の実施形態と同様に、種類毎に大きさおよび配置密度を変えることができる。
【0156】
図12(b)に示す例では、ごまかし線41を形成する網点は、色が黒であり、線幅は0.03mmである。
【0157】
このように構成された印刷物10Dは、図11(a)に例示するように、ごまかし線41によって形成されたオブジェクトパターンが視認可能な状態で全面的に薄青色に見えるが、複写機によって複写されると、図11(b)に例示するように、複写物11D(コピー用紙)では、オブジェクトパターンが消失し、第1領域20が黒く写り、第2領域30が薄青色で写ることによって、特定情報(この場合「コピー」という文字情報)が薄青色のネガパターンで発現する。
【0158】
(各実施形態に係る印刷物の基材および製法)
前述した本発明の各実施形態のいずれにおいても、印刷物10の基材には、一般には紙やプラスチックを用いることができる。しかしながら、紙やプラスチックに限定される訳ではなく、他にも、木材、金属、ガラス等の中から、必要に応じて適切な材質を選択できる。
【0159】
基材に配置する網点の形成のためには、オフセットインキ、グラビアインキ、スクリーンインキ等、公知の印刷方式で使用されているインキを使用できる。
【0160】
また、網点は、オフセット印刷法、グビア印刷法、スクリーン印刷法等の有版印刷方式により、設けることができる。また、インクジェット印刷などの無版印刷によって設けることも可能である。
【0161】
本発明の各実施形態に係る印刷物10によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
【0162】
すなわち、印刷物10は、第1領域20と第2領域30とを有し、第1領域20には、複写されると残る大きな網点をランダムに配置し、第2領域30には、複写されると消失する小さな網点をランダムに配置することによって、複写後にのみ特定情報が出現するコピー牽制機能を組み込むことができる。第1領域20の網点は、複写機のラインセンサーで検知されるが、第2領域30の網点は、検知されないか第1領域20の網点より検知されづらい。
【0163】
また、印刷物10は、網点自体の大きさだけではなく、特定情報の色の濃度を、網点の配置密度で制御することも可能である。したがって、濃度と数値との設定により様々な網点をランダムに配置することによって、例えばCMYKでそれぞれ網点構成を変え、組み合わせることで、複写前の色調を変えずに、複写後に第1領域20と第2領域30とで異なって出現するように制御することも可能となる。したがって、仮に色数を増やさなくても、もともとある絵柄へ特定情報を組み込むこともできる。
【0164】
その一方で、印刷物10は、CMYKのプロセスカラーの4色を使用した場合でも、第1領域20と第2領域30との境目が視認不能または視認しづらくすることができるので、特定情報の表示のために、CMYKのプロセスカラーの4色で潜像を形成可能である。したがって、CMYKのプロセスカラーの4色を使用した高い色調のバリエーションで、特定情報を表示、すなわち複写機で写すことも可能である。
【0165】
このように、印刷物10によれば、従来必要としていた特色インキを使用せずに、CMYKプロセスカラーを使用してコピー牽制機能を組み込むことが可能となるため、コストの削減、および色調のバリエーションの向上を図り、前述した第1の問題を解決することができる。
【0166】
また、印刷物10によれば、網点のランダムな配置により、粗さが目立たないため、薄い濃度でもある程度の網点の大きさをキープできるため、低解像度での利用も可能となる。したがって、一般的なデザインソフトへの変換も容易となり、前述した第2の問題を解決することができる。
【0167】
また、印刷物10によれば、濃度を網点の大きさではなく、密度で変調できるので、網点を小さくしなくても、薄い濃度を実現できるので、前述した第3の問題を解決することができる。
【0168】
更に、印刷物10によれば、第1領域20と第2領域30とで、サイズの異なる網点が、それぞれの領域内においてランダムに配置されているので、同一サイズの網点で実現される従来の印刷物に比べて、偽造が極めて困難となるのみならず、特定情報の隠蔽度も高めることができる。また、印刷物10は、複写された場合、複写機のスキャン方向に関わらず、同一の特定情報を出現させることができる。
【0169】
以上、第1から第4の実施形態で説明したようなコピー牽制機能は、印刷用紙に適用することが好適であるが、それに限定される訳ではなく、紙以外の、製品等の物に直接適用することもできる。第1から第4の実施形態で説明したようなコピー牽制機能は、印刷用紙に適用された場合、この印刷用紙が複写された場合に、特定情報を発現するが、物に適用された場合、物が撮影された場合に、特定情報を発現することができる。
【0170】
(データ生成装置、データ生成方法、およびプログラム)
次に以上説明したコピー牽制技術が組み込まれた印刷物10のためのデータ生成方法、およびこのデータ生成方法が適用されたデータ生成装置について説明する。
【0171】
図13は、本発明の実施形態に係るデータ生成方法が適用されたデータ生成装置の電子回路構成例を示すブロック図である。
【0172】
データ生成装置100は、複写されると発現する特定情報を、例えば印刷用紙のような印刷物10に配置するためのデータを生成する装置であって、バス111によって互いに接続されたCPU112、記録媒体読取部114、カラープリンタ150に接続された出力部115、ディスプレイ等の表示画面116、マウスやキーボード等の入力部117、およびメモリ120を備えている。このようなデータ生成装置100は、限定される訳ではないが、PCや、タブレット端末で実現することができる。
【0173】
表示画面116は、限定される訳ではないが、例えば、液晶ディスプレイのような公知のディスプレイとすることができる。
【0174】
メモリ120は、後述するプログラム121~130を記憶している。
【0175】
入力部117は、限定される訳ではないが、例えば、キーボード、マウス、およびスキャナを含む。オペレータは、プログラム121~130が必要とする情報を、入力部117を使って、適宜入力し、メモリ120に提供し、プログラム121~130は、このように入力された情報を、処理のために適宜使用することができる。
【0176】
プログラム121~130は、メモリ120に予め記憶されていてもよいし、あるいはメモリカード等の外部記録媒体113から記録媒体読取部114を介してメモリ120に読み込まれて記憶されたものであってもよい。これらプログラム121~130は、書き換えできないようになっている。
【0177】
メモリ120には、このような書き換え不可能なエリアの他に、書き換え可能なデータを記憶するエリアとして、書込可能データエリア131が確保されている。
【0178】
CPU112は、コンピュータであって、メモリ120に記憶されている各プログラム121~130に従い回路各部の動作を制御し、ソフトウェアとハードウェアとが協働して、以下に説明するように動作する。
【0179】
記憶装置140は、例えばSSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)等からなり、例えば、データ生成プログラム124によって生成されたデータdを記憶している。
【0180】
次に、プログラム121~130について説明する。
【0181】
領域配置場所決定プログラム121は、例えば図1(a)における印刷物10Aにおいて、特定情報(例えば、「COPY」という文字情報)を配置するために、複写物11Aにおいて写る第1領域20と写らない第2領域30との、印刷物10Aにおける配置場所を決定する。例えば、領域配置場所決定プログラム121は、図1(a)に示すように、印刷物10Aにおいて、第1領域20を取り囲むように第2領域30の配置場所を決定することができる。あるいは、その逆に、図4(a)に示すように、印刷物10Aにおいて、第2領域30を取り囲むように第1領域20の配置場所を決定することができる。
【0182】
網点サイズ決定プログラム122は、印刷物10Aの第1領域20に配置される第1網点(例えば、図2における黒色の網点21、イエローの網点24)のサイズと、印刷物10Aの第2領域30に配置される第2網点(例えば、図2におけるマゼンダの網点32、シアンの網点33、イエローの網点34)のサイズとを、第1網点(例えば、図2における複数の黒色の網点21、および複数のイエローの網点24)のサイズが、第2網点(例えば、図2における複数のマゼンダの網点32、複数のシアンの網点33、複数のイエローの網点34)のサイズよりも大きくなるように決定する。
【0183】
網点配置場所決定プログラム123は、印刷物10Aの第1領域20内において複数の第1網点(例えば、図2における複数の網点21、および複数の網点24)がそれぞれ配置される場所と、第2領域30内において複数の第2網点(例えば、図2における網点32、網点33、網点34)がそれぞれ配置される場所とを、ランダムに決定する。
【0184】
また、第1領域20内には、第1網点の他に、第1網点のサイズよりも小さく、第2網点のサイズよりも大きい、第4網点をランダムに配置することもできる。この場合、網点配置場所決定プログラム123は、第1領域20内に配置される、複数の第4網点の場所をランダムに決定することができる。
【0185】
データ生成プログラム124は、第1領域20内において複数の第1網点(例えば、図2における複数の網点21、および複数の網点24)がそれぞれ配置される場所の情報と、第2領域30内において複数の第2網点(例えば、図2における網点32、網点33、網点34)がそれぞれ配置される場所の情報とを含むデータdを生成し、記憶装置140に書き込む。
【0186】
カモフラージュパターン決定プログラム125は、例えば、図7に示すように、印刷物10Cにおいて特定情報(例えば、図7(b)に示される「コピー」という文字情報)が視認されないように、特定情報をカモフラージュする視認可能なパターン(例えば、図7(a)に示すジグゾーパズルのピース)を決定する。
【0187】
カモフラージュ網点場所決定プログラム126は、カモフラージュパターン決定プログラム125によって決定されたパターンを、印刷物10Cにおいて視認可能とするために印刷物10Cに配置される複数の第3網点(例えば、図8に示すごまかし線41を形成する網点)の場所を決定する。ただし、第3網点よりも、第1網点の方がサイズは大きい。データ生成プログラム124は、カモフラージュ網点場所決定プログラム126によって決定された場所の情報を、記憶装置140に記憶されているデータdに追加する。
【0188】
網点色決定プログラム127は、第1領域20に第1網点と第4網点との両方が配置される場合、第1網点の色と第4網点の色とを、異なる色となるように決定する。例えば、第1網点の色をCMYKのうちのKとし、第4網点の色をCMYKのうちのK以外とすることができる。あるいはその逆に、第4網点の色をCMYKのうちのKとし、第1網点の色をCMYKのうちのK以外とすることができる。
【0189】
データ生成プログラム124はさらに、網点色決定プログラム127によって決定された第4網点および第1網点の色の情報を、記憶装置140に記憶されているデータdに追加する。
【0190】
データ生成プログラム124はさらに、複数の第2網点のおのおのの形状の情報を、記憶装置140に記憶されているデータdに追加する。ここで、複数の第2網点のおのおのは、それぞれ任意の形状を有することができる。
【0191】
網点色決定プログラム127は、複数の第1網点のうちの少なくとも1つの第1網点の色を、CMYKのうちのKに決定する。また、複数の第2網点のおのおのの色を、CMYKのうちのK以外の色に決定する。
【0192】
網点分類プログラム128は、複数の第2網点を、網点色決定プログラム127によってCMYKのうちのCに決定された第1グループと、同プログラム127によってCMYKのうちのMに決定された第2グループと、同プログラム127によってCMYKのうちのYに決定された第3グループとに分類する。
【0193】
グループ割合決定プログラム129は、第2領域30に配置される第2網点の合計数に対する、第1グループに属する第2網点数の割合、第2グループに属する第2網点数の割合、および第3グループに属する第2網点数の割合を、印刷物10に対して要求される色味に応じて決定する。
【0194】
網点除外プログラム130は、印刷物10に対して要求される色味の調整のために、印刷物10において第2網点が配置された第2領域の一部から、第2網点を除外する。
【0195】
網点除外プログラム130によって第2網点が除外された場合、データ生成プログラム124は、除外された第2網点の情報を、記憶装置140に記憶されているデータdから削除する。
【0196】
出力部115は、記憶装置140に記憶されたデータdをカラープリンタ150に出力することができる。
【0197】
カラープリンタ150は、出力部115から出力されたデータdに基づいて印刷用紙に印刷することによって、コピー牽制技術が組み込まれた印刷物10を作成することができる。
【0198】
以上説明した実施形態に係るデータ生成装置100によって生成されたデータにしたがって作成された印刷物10と、従来技術でコピー牽制技術が組み込まれた印刷物との比較結果について説明する。
【0199】
(第1の比較結果)
図14および図15を用いて、第1の比較結果について説明する。
【0200】
図14(a)は、データ生成装置100によって特定情報が組み込まれた一例の印刷物50の正面図の一例を示し、図14(b)は、同じ特定情報が従来技術によって組み込まれた印刷物60の正面図の一例を示す。
【0201】
図14(a)に示す印刷物50は、第1の実施形態で説明したように、第1領域20および第2領域30ともに、網点をランダムに配置することによって作成されたものであって、第1領域20が、黒色の網点21、シアンの網点23、イエローの網点24によって構成され、黒色の網点21の大きさは0.127mm、配置密度は2%であり、シアンの網点23の大きさは0.127mm、配置密度は6%であり、イエロー24の網点の大きさは0.127mm、配置密度は3%とできる。また、印刷物50は、第2領域30が、黒色の網点31、シアンの網点33、イエローの網点34によって構成され、黒色の網点31の大きさは0.032mm、配置密度は1%であり、シアンの網点33の大きさは0.032mm、配置密度は7%であり、イエローの網点34の大きさは0.032mm、配置密度は2%とできる。
【0202】
このような網点構成によって、印刷物50は、本例では全体的に薄青色に見えるように色味が調整されている。
【0203】
一方、図14(b)に示す印刷物60は、第1の比較例として、印刷物50と同じように全体的に薄青色に見えるように、第1領域20および第2領域30ともに、網点を規則的に配置することによって作成されたものである。
【0204】
印刷物60は、第1領域20が、黒色の網点21、シアンの網点23、イエローの網点24によって構成され、黒色の網点21の大きさは0.105mm、配置密度は3%であり、シアンの網点23の大きさは0.174mm、配置密度は10%であり、イエロー24の網点の大きさは0.105mm、配置密度は3%である。また、印刷物60は、第2領域30が、黒色の網点31、シアンの網点33、イエローの網点34によって構成され、黒色の網点31の大きさは0.011mm、配置密度は1%であり、シアンの網点33の大きさは0.035mm、配置密度は7%であり、イエローの網点34の大きさは0.022mm、配置密度は2%である。
【0205】
印刷物60の網点構成を上記のようにすることによって、印刷物60も、印刷物50と同様に薄青色に見えるようにできる。
【0206】
図15は、(a)図14(a)の第1領域の一部の部分拡大図と、(b)図15(a)に対応する図14(b)の第1領域の一部の部分拡大図である。
【0207】
図15(a)には、印刷物50の第1領域20において、網点21,23,24がランダムに配置されていることが示されている。また、図15(b)には、印刷物60の第1領域20において、網点21,23,24が規則的に配置されていることが示されている。
【0208】
印刷物60は、図14(b)に示すように、背景領域と潜像領域との境目がわかりやすくなっており、文字が視認できてしまうのに対して、本実施形態に係るデータ生成装置によって作成された印刷物50は、網点がランダムに配置されているために、図14(a)に示すように、背景領域と潜像領域との境目を分りにくくなっている。
【0209】
また、印刷物50と印刷物60とを比較すると、第2領域30における黒色の網点21、シアンの網点、イエローの網点のそれぞれの配置密度は同じである。
【0210】
しかしながら、印刷物60では、網点の大きさは、各網点の配置密度に応じて異なる。このため、例えばシアンのように、配置密度が高い(7%)ものは、網点の大きさを、ある程度の大きさがある0.035mmとできるが、それよりも配置密度が低い黒(1%)やイエロー(2%)は、配置密度に応じて、網点の大きさも小さくなる。例えば、イエローの場合は0.022mmとなり、黒の場合はさらに小さく、0.011mmとなる。このため、印刷物60は、安定した印刷を行うことが困難となる。
【0211】
一方、印刷物50は、網点の大きさを、各網点の配置密度に関わらず、ある程度の大きさがある0.032mmに統一できる。このため、安定した印刷が可能となる。
【0212】
(第2の比較結果)
図16および図17を用いて、第2の比較結果について説明する。
【0213】
図16は、(a)データ生成装置100によって特定情報が組み込まれた別の一例の印刷物50の正面図と、(b)同じ特定情報が組み込まれた比較用の印刷物70の正面図との一例である。
【0214】
印刷物50は、第1の実施形態で説明したように、第1領域20および第2領域30ともに、網点をランダムに配置することによって作成されたものであって、本例では全体的に薄青色に見えるように色味が調整されている。
【0215】
一方、印刷物70は、第2の比較例として、印刷物50と同じように全体的に薄青色に見えるように、第1領域20に、網点を規則的に配置し、第2領域30に、網点をランダムに配置することによって作成されたものである。
【0216】
印刷物70は、第1領域20が、黒色の網点21、シアンの網点23、イエローの網点24によって構成され、黒色の網点21の大きさは0.105mm、配置密度は3%であり、シアンの網点23の大きさは0.174mm、配置密度は10%であり、イエロー24の網点の大きさは0.105mm、配置密度は3%である。また、印刷物70は、第2領域30が、黒色の網点31、シアンの網点33、イエローの網点34によって構成され、黒色の網点31の大きさは0.032mm、配置密度は1%であり、シアンの網点33の大きさは0.032mm、配置密度は7%であり、イエローの網点34の大きさは0.032mm、配置密度は2%である。
【0217】
印刷物70の網点構成を上記のようにすることによって、印刷物70も、印刷物50と同様に薄青色に見えるようにできる。
【0218】
図17は、(a)図16(a)に示す印刷物50における一部の部分拡大図と、(b)図16(b)に示す印刷物70における一部の部分拡大図との一例である。
【0219】
図17(a)に示す部分拡大図は、第1領域20と第2領域30との両方を含んでいる。
【0220】
図17(b)に示す部分拡大図も、第1領域20と第2領域30との両方を含んでいる。
【0221】
なお、図17(a)と図17(b)とは対応しておらず、印刷物50と印刷物70との別の場所を示している。
【0222】
図17(a)には、印刷物50の第1領域20において、網点21,23,24がランダムに配置されていることが示され、第2領域30において、網点がランダムに配置されていることが示されている。
【0223】
また、図17(b)には、印刷物70の第1領域20において、網点21,23,24が規則的に配置されていることが示され、第2領域30において、網点がランダムに配置されていることが示されている。
【0224】
このように、印刷物70には、第2領域30に網点が規則的に配置されているものの、第1領域20には網点がランダムに配置されている。このため、図16(b)に示すように、印刷物70は、図14(b)に示す印刷物60よりも、背景領域と潜像領域との境目が分りにくくなっている。
【0225】
しかしながら、図16(b)に示す印刷物70は、図16(a)に示す印刷物50よりも、背景領域と潜像領域との境目がわかりやすくなっており、文字が視認できてしまう。
【0226】
一方、図16(a)に示すデータ生成装置100によって作成された印刷物50は、第1領域20と第2領域30との両方に網点がランダムに配置されているために、背景領域と潜像領域との境目が分りにくい。
【0227】
上記の結果から、コピー牽制技術が組み込まれた印刷物としては、前述した各実施形態で説明したように、第1領域20および第2領域30のいずれにも、多数の網点をランダムに配置する構成が適していることが確認された。
【0228】
(外観評価)
次に、以上説明したデータ生成装置100によって生成されたデータにしたがって、コピー牽制技術が組み込まれた印刷物の外観評価について説明する。
【0229】
図18は、外観評価結果の一覧表である。
【0230】
図18に示すように、外観評価は、印刷物と、その印刷物の複写物とを対象に10ケースについて行った。ケース1~8は、本発明の実施形態に係る印刷物10に該当し、ケース9~10は、本発明の実施形態に係る印刷物10に該当しない。
【0231】
10ケースの印刷物の正面図は、図2図3図5図6図8図10図11図12図14図16である。これら印刷物は、データ生成装置100によって生成されたデータにしたがってコピー牽制技術が組み込まれ、オフセット印刷によりCMYKを用いて印刷された。
【0232】
これら印刷物を、以下の評価基準に従って、A~Dからなる4段階で評価した。
A:全体が均一でコピー牽制文字が全く視認できない。
B:コピー牽制文字が視認できない。
C:コピー牽制文字がやや視認できる。
D:コピー牽制文字が視認できる。
【0233】
また、これら印刷物を複写して得られる複写物を、以下の評価基準に従って、a~dからなる4段階で評価した。
a:コピーけん制文字がはっきり視認できる。
b:コピーけん制文字が視認できる。
c:コピーけん制文字があまり視認できない。
d:コピーけん制文字が視認できない。
【0234】
これら10ケースについて、印刷物と複写物について外観評価したところ、図18に示すように、本発明の実施形態に係る印刷物に該当するケース5~8については、印刷物、複写物ともに、極めて良好な品質であり、同様に、本発明の実施形態に係る印刷物に該当しケース1~4については、印刷物、複写物ともに、ほぼ良好な品質であるとの結果が得られた。
【0235】
一方、本発明の実施形態に係る印刷物に該当しないケース9~10については、印刷物においてコピー牽制文字が視認できてしまい品質が良くないとの結果が得られた。
【0236】
このように、本発明の実施形態に係る印刷物は、外観評価の観点から、良好な品質を呈することを確認できた。
【0237】
(適用例)
次に、以上説明したデータ生成装置100によって生成されたデータにしたがって、コピー牽制情報が組み込まれた印刷物10の適用例について説明する。
【0238】
図19は、(a)前述した実施形態に係る印刷物のようにコピー牽制情報が組み込まれた株主優待券の正面図と、(b)その複写物の正面図との一例である。
【0239】
図19(a)に示すように、株主優待券80には、背景全面にコピー牽制情報が組み込まれている。したがって、株主優待券80を複写すると、図19(b)に示すように、その複写物81には、組み込まれたコピー牽制情報(例えば、「COPY」という特定情報)Jが出現するので、複写されたものであることが分かる。
【0240】
図20は、(a)前述した実施形態に係る印刷物のようにコピー牽制情報が組み込まれた商品券の正面図と、(b)その複写物の正面図との一例である。
【0241】
図20(a)に示すように、金券90には、図中Pに示すワンポイントで、コピー牽制情報Jが組み込まれている。したがって、金券90を複写すると、図20(b)に示すように、その複写物91には、複写前のワンポイントPに対応する場所P’に、組み込まれたコピー牽制情報(例えば、「コピー」という特定情報)Jが出現するので、複写された物であることが分かる。
【0242】
図21は、図16(a)の商品券90におけるX-X’線に沿った断面における層構造を示す側断面図である。
【0243】
図20(a)のように、コピー牽制情報をワンポイントPで組み込む場合、層構造は、限定される訳ではないが、例えば図21(a)に示すように、基材92上の絵柄印刷部93の一部をワンポイントPで置換することによって実現できる。
【0244】
また、図20(b)のように、表面をオーバーコート層94で覆ったり、図20(c)のように、絵柄印刷部93およびワンポイントPを、基材92上に直接配置するのではなく、基材92上にアンカー層95を配置し、アンカー層95の上に配置するなど、適宜必要な層を設けて良い。
【0245】
従来は、図19のように全面にコピー牽制情報Jを組み込む場合、あるいは図20のようにワンポイントPでコピー牽制情報Jを組み込む場合の何れであっても、例えばCMYKによって絵柄を印刷した後に、特色インキを用いて、コピー牽制情報を印刷しなければならなかった。
【0246】
しかしながら、実施形態に係る印刷物10では、絵柄と、コピー牽制情報Jとの両方をCMYKの4色での印刷できる。このため、コピー牽制情報Jのために特色インキを使用する必要がなくなり、印刷に必要な版が少なくコスト的に優れているのに加えて、CMYKの4色を使って、色調のバリエーションを高い、カラフルなコピー牽制情報を組み込むことも可能となる。
【0247】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0248】
10、10A、10A’、10B、10B’、10C、10C’、10C’’、10D・・印刷物
11、11A、11B、11C、11D・・複写物
20・・第1領域
21・・網点(黒)
22・・網点(マゼンダ)
23・・網点(シアン)
24・・網点(イエロー)
30・・第2領域
31・・網点(黒)
32・・網点(マゼンダ)
33・・網点(シアン)
34・・網点(イエロー)
40・・白抜き部
41・・ごまかし線
50、60、70・・印刷物
80・・株主優待券
81・・複写物
90・・金券、商品券
91・・複写物
92・・基材
93・・絵柄印刷部
94・・オーバーコート層
95・・アンカー層
100・・データ生成装置
111・・バス
112・・CPU
113・・外部記録媒体
114・・記録媒体読取部
115・・出力部
116・・表示画面
117・・入力部
120・・メモリ
121・・領域配置場所決定プログラム
122・・網点サイズ決定プログラム
123・・網点配置場所決定プログラム
124・・データ生成プログラム
125・・カモフラージュパターン決定プログラム
126・・カモフラージュ網点場所決定プログラム
127・・網点色決定プログラム
128・・網点分類プログラム
129・・グループ割合決定プログラム
130・・網点除外プログラム
131・・書込可能データエリア
140・・記憶装置
150・・カラープリンタ

図1
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