(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010627
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】土壌改良剤及び土壌改良方法
(51)【国際特許分類】
C09K 17/02 20060101AFI20240117BHJP
A01G 24/28 20180101ALI20240117BHJP
【FI】
C09K17/02 H
A01G24/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112080
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】722004104
【氏名又は名称】株式会社ナノジャパン
(72)【発明者】
【氏名】高田 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 哲也
【テーマコード(参考)】
2B022
4H026
【Fターム(参考)】
2B022AA05
2B022BA15
4H026AA01
4H026AB03
4H026AB04
(57)【要約】
【課題】優れた土壌改良機能を持つ土壌改良剤及び土壌改良剤を用いる土壌改良方法を提供する。
【解決手段】多孔質物質を含む土壌改良剤であって、前記多孔質物質が複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子を含んでおり、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であり、前記細孔が、貫通孔であり、さらに、<111>配向している結晶を含む土壌改良剤。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質物質を含む土壌改良剤であって、前記多孔質物質が複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子を含んでおり、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であることを特徴とする土壌改良剤。
【請求項2】
前記細孔が、貫通孔である請求項1記載の土壌改良剤。
【請求項3】
前記細孔が、<111>配向している結晶を含む請求項1又は2に記載の土壌改良剤。
【請求項4】
前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内である請求項1~3のいずれかに記載の土壌改良剤。
【請求項5】
前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が90以上である請求項1~4のいずれかに記載の土壌改良剤。
【請求項6】
前記多孔質粒子の平均粒径が0.1μm~10μmである請求項1~5のいずれかに記載の土壌改良剤。
【請求項7】
前記多孔質粒子が酸化物を主成分として含む請求項1~6のいずれかに記載の土壌改良剤。
【請求項8】
前記酸化物がSiO2を含む請求項7に記載の土壌改良剤。
【請求項9】
前記酸化物におけるFe2O3の含有量が0.01at%~0.5at%である請求項7又は8に記載の土壌改良剤。
【請求項10】
前記多孔質粒子が、前記細孔を5以上含む請求項1~9のいずれかに記載の土壌改良剤。
【請求項11】
前記多孔質粒子が、珪藻土を主成分として含む請求項1記載の土壌改良剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の土壌改良剤を土壌に添加する工程を含むことを特徴とする土壌改良方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の土壌改良剤を配合していることを特徴とする改良土壌。
【請求項14】
植物生育前または生育中の土壌に請求項1~11のいずれかに記載の土壌改良剤を施すことを特徴とする植物の生育方法。
【請求項15】
請求項1~11のいずれかに記載の土壌改良剤を配合した土壌で発芽又は生育させたことを特徴とする植物苗。
【請求項16】
請求項13又は15に記載の土壌及び植物苗で構成されていることを特徴とするポット苗。
【請求項17】
請求項1~11のいずれかに記載の土壌改良剤を配合した土壌で発芽又は生育させたことを特徴とする植物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改良剤及び土壌改良剤を用いる土壌改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌改良剤は、土壌の性質を改善するため、従来、農業、林業や土木建築等に用いられ、これら適用について多くの改良がなされ、種々検討されている。
近年においては、産業用廃棄物を用いた土壌改良剤、少量の合成高分子系の土壌改良剤、植物の由来の成分を用いた土壌改良剤又は塩害土壌の改良を目指した土壌改良剤が検討されている。
【0003】
特許文献1には、パルプスラッジとセメントと水とを混合した後、乾燥させた土壌改良剤が記載されている。しかしながら、製造工程が煩雑で、製造期間が長く、製造時に液肥を用いなければならず、品質管理も困難であるといった問題があった。また、酸性土壌に施肥しても酸性土壌を中性及びアルカリ性に調整するには、まだまだ満足のいくものではなかった。なお、特許文献1には、製紙スラッジ、フライアッシュ、ゼオライト又は珪藻土を用い加熱乾燥して成るものは、酸性の土壌を中性又はアルカリ性に調整する効果が不十分であると記載されている。
【0004】
特許文献2には、植物の搾汁液を処理液とし、酸化カルシウムを加えてカルシウム化合物を生成し、液状にした土壌改良剤が、土壌改良機能を損なうことなく分散性を向上させることが記載されている。しかしながら、液状にして土壌に施肥すると土壌が団粒状態となり、土壌改良効果が十分に発揮されないといった問題があった。特に、酸性土壌においては、吸水性が悪く、液状の土壌改良剤では、効果が十分に発揮されないといった問題があった。
【0005】
特許文献3には、塩害土壌の改良を目的とした土壌改良剤が記載されている。しかしながら、土壌中の塩分を吸収しても、吸収効率が悪く、酸性土壌を中性及びアルカリ性に調節するのに時間を要するといった問題があった。また、特許文献3に記載の土壌改良剤には、藻類、米糠、及びピートモスが有効成分として含まれているが、時間経過により品質が劣化するといった問題もあった。
そのため、酸性土壌を中性及びアルカリ性に容易に調節できる土壌改良剤が待ち望まれた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4496550号公報
【特許文献2】特許第5685016号公報
【特許文献3】特許第6514042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた土壌改良機能を持つ土壌改良剤及び土壌改良剤を用いる土壌改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、多孔質物質を含む土壌改良剤であって、前記多孔質物質が複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子を含んでおり、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状である土壌改良剤が、優れた土壌改良機能を備えていること等を知見し、このような多孔質粒子が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 多孔質物質を含む土壌改良剤であって、前記多孔質物質が複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子を含んでおり、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であることを特徴とする土壌改良剤。
[2] 前記細孔が、貫通孔である前記[1]記載の土壌改良剤。
[3] 前記細孔が、<111>配向している結晶を含む前記[1]又は[2]に記載の土壌改良剤。
[4] 前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内である前記[1]~[3]のいずれかに記載の土壌改良剤。
[5] 前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が90以上である前記[1]~[4]のいずれかに記載の土壌改良剤。
[6] 前記多孔質粒子の平均粒径が0.1μm~10μmである前記[1]~[5]のいずれかに記載の土壌改良剤。
[7] 前記多孔質粒子が酸化物を主成分として含む前記[1]~[6]のいずれかに記載の土壌改良剤。
[8] 前記酸化物がSiO2を含む前記[7]に記載の土壌改良剤。
[9] 前記酸化物におけるFe2O3の含有量が0.01at%~0.5at%である前記[7]又は[8]に記載の土壌改良剤。
[10] 前記多孔質粒子が、前記細孔を5以上含む前記[1]~[9]のいずれかに記載の土壌改良剤。
[11] 前記多孔質粒子が、珪藻土を主成分として含む前記[1]記載の土壌改良剤。
[12] 前記[1]~[11]のいずれかに記載の土壌改良剤を土壌に添加する工程を含むことを特徴とする土壌改良方法。
[13] 前記[1]~[11]のいずれかに記載の土壌改良剤を配合していることを特徴とする改良土壌。
[14] 植物生育前または生育中の土壌に前記[1]~[11]のいずれかに記載の土壌改良剤を施すことを特徴とする植物の生育方法。
[15] 前記[1]~[11]のいずれかに記載の土壌改良剤を配合した土壌で発芽又は生育させたことを特徴とする植物苗。
[16] 前記[13]又は[15]に記載の土壌及び植物苗で構成されていることを特徴とするポット苗。
[17] 前記[1]~[11]のいずれかに記載の土壌改良剤を配合した土壌で発芽又は生育させたことを特徴とする植物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の土壌改良剤及び土壌改良剤を用いる土壌改良方法は、優れた土壌改良機能を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に用いられる多孔質体の好適な実施態様の一例を模式的に示す図である。
【
図2】実施例における顕微鏡像(TEM像)を示す。
【
図3】本発明に用いられる多孔質粒子の実施例における実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の多孔質粒子は、複数の細孔を有する多孔質体を含む多孔質粒子であって、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ前記細孔の形状が略円筒状であれば特に限定されない。
【0013】
前記多孔質粒子は、前記多孔質体を含む粒子であればそれでよく、粒子の形状等は特に限定されないし、他の多孔質体、賦形剤、結着剤又は接着剤等の添加剤などが含まれていてもよい。本発明においては、前記細孔が、貫通孔であるのが好ましい。また、<111>配向している結晶を含むのが好ましい。なお、前記貫通孔は、便宜上、Xe-NMRにて確認できるものであってよい。また、前記結晶はX線回折装置を用いて確認できるものであってよい。また、本発明においては、前記粒子の平均粒径が0.1μm~10μmであるのが好ましい。このような好ましい範囲によれば、土壌改良機能において、より優れた性能を発揮することができる。なお、前記平均粒径は、任意に抽出した10個の粒子の粒径の平均値をいう。
【0014】
前記多孔質体は、複数の細孔を有するものであって、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状であれば特に限定されないが、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内であるのが好ましく、1:10~1:100の範囲内であるのがより好ましい。前記多孔質体の好適な態様を
図1に示す。
図1の多孔質体は、複数の細孔を有している多孔質体であり、
図1には、A-A’断面図とともに、前記細孔の形状が円筒状であることが示されている。前記細孔は、平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、かつ形状が略円筒状であることが土壌改良機能において肝要である。本発明においては、前記平均孔径が8nm±2nmの範囲内であるのが好ましく、前記形状が円筒状であるのも好ましい。
【0015】
前記平均孔径は、任意に抽出した10個の細孔の孔径の平均値をいう。前記孔径は、前記細孔の直径を意味し、例えば、
図1に示されるw1をいう。前記深さは、前記細孔の深さを意味し、例えば、前記細孔が貫通孔である場合には、便宜上、前記多孔質体粒子の粒径を前記深さとしてもよい。前記深さは、例えば、d1をいう。なお、
図1のw1は、例えば8nmであり、d1は、例えば50nmである。
【0016】
前記多孔質粒子の構成材料は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、本発明においては、酸化物を主成分として含むのが好ましい。前記酸化物は、SiO2を含むのが好ましく、また、Al2O3を含むのも好ましい。また、本発明においては、前記酸化物におけるFe2O3の含有量が組成比で0.5at%以下であるのが好ましく、0.1at%以下であるのがより好ましい。前記酸化物におけるFe2O3の含有量の下限は特に限定されないが、例えば0.01at%である。このような好ましいFe2O3の含有量の前記酸化物を主成分として含む前記多孔質粒子は、例えば雨季と乾季とを有する熱帯モンスーン気候下の珪藻土層の一定の深さの区画から抽出される珪藻土を焼成及び粒子状に整粒することにより、容易に得ることができる。なお、前記焼成及び前記整粒の手段及び順序等は本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段等が好適に用いられ、これら条件等も適宜設定されてよい。
【0017】
前記多孔質粒子は、前記細孔を5以上含むのが好ましく、このような好ましい範囲によれば、土壌改良機能をより優れたものとすることができる。
【0018】
前記多孔質粒子は、例えば、タイや日本等の珪藻土層において、SEM又はTEM等の顕微鏡にて測定される、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状であり、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内となる多孔質体が含まれる珪藻土層の区画から、所定の珪藻土を常法に従い取り出し、ついで公知の手段を用いて焼成及び粒子状に整粒することにより、容易に得ることが可能である。なお、タイや日本(例えば稚内等)などの珪藻土層において、前記区画が存在し、かつ前記区画にて容易に前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が略円筒状である前記多孔質体を含む前記多孔質粒子を取り出せることは、本発明者らによる新知見である。また、本発明においては、前記多孔質粒子のJIS Z8722に規定される白色度が80以上であるのが好ましく、90以上であるのがより好ましい。このような好ましい白色度を有する前記多孔質粒子は、例えば、上記したように、前記多孔質粒子のFe2O3の含有量を0.5at%以下とすることにより、容易に得ることができる。
【0019】
前記多孔質粒子はそのままで又はさらに例えばバインダー等の添加剤や溶媒等と混合され、断湿材、消臭剤、放射性物質吸着材又は不純物吸着材等の製品として用いることができる。前記混合手段は公知の手段であってよい。なお、このような処理方法も本発明に包含される。前記多孔質粒子は、土壌改良材において、10重量%以上含まれるのが好ましく、このような好ましい範囲によれば、前記捕集蓄積機能をより良好なものとすることができる。
【0020】
また、前記土壌改良剤は前記多孔質粒子が使用された後の再利用品であってもよい。使用済みの前記多孔質粒子を前記土壌改良剤として再利用することにより、より環境に配慮した土壌改良処理等を実現することができる。
【実施例0021】
(実施例1)
タイの一定の深さにある珪藻土層において、
図2に示されるように、顕微鏡(TEM)にて測定される、前記細孔の平均孔径が8nm±2nmの範囲内であり、前記細孔の形状が円筒状であり、前記細孔の孔径と深さとの比が、1:10~1:1000の範囲内となる多孔質体が得られる珪藻土層の区画から、珪藻土を取り出し、ついで660℃で焼成及び10μmに整粒することにより、本発明の多孔質粒子を得た。なお、得られた多孔質粒子は、Xe-NMRにて細孔解析を実施したところ細孔壁面の形状は真っ直ぐに貫通された形状であり、貫通孔を有していた。また、X線回折装置を用いて多孔質粒子の結晶性につき評価したところ<111>配向している結晶であることがわかった。また、白度計(JIS Z8722)にて10箇所以上の複数地点で計測したところ、いずれも80以上であり、かつ平均で90以上であり、きれいで且つ良好な白色を有していた。また、得られた多孔質粒子のFe
2O
3の含有量を測定したところ、0.5at%以下であった。
【0022】
得られた多孔質粒子を、
図3に示すように、植物8が植えられているプランターの土10の上に土壌改良剤9として散布し、植物の生育を観察した。その結果、本発明の土壌改良剤を用いた場合、茎等が太くなり、発色も良く、肥料や免疫賦活剤のような効果があった。また、根腐れも全く発生しなかった。他のものに比べて、実施例品は、虫等が付きにくく、蜘蛛の巣なども有意になかった。