(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106270
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
B64U 20/87 20230101AFI20240731BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20240731BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20240731BHJP
G05D 1/46 20240101ALI20240731BHJP
H04N 23/69 20230101ALI20240731BHJP
H04N 5/222 20060101ALI20240731BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240731BHJP
B64U 101/31 20230101ALN20240731BHJP
【FI】
B64U20/87
B64U10/13
G08B17/00 K
G05D1/10
H04N23/69
H04N5/222 100
H04N7/18 U
B64U101:31
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010526
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】村田 順一
(72)【発明者】
【氏名】中居 隼風
(72)【発明者】
【氏名】山納 正人
【テーマコード(参考)】
5C054
5C122
5G405
5H301
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054CE01
5C054DA07
5C054FC12
5C054FD07
5C122DA12
5C122EA37
5C122EA63
5C122FD04
5C122FE05
5C122FH11
5C122FK23
5C122GC53
5C122GD11
5C122HA75
5C122HB01
5G405AB02
5G405CA11
5G405FA16
5H301AA06
5H301AA10
5H301BB10
5H301CC04
5H301CC07
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG09
(57)【要約】
【課題】飛行体が飛行を開始してから検査対象物の位置に到達するまでの間、飛行体が検査対象物を検出可能な大きさで撮影し続けられるようにする。
【解決手段】飛行体100は、飛行体100を飛行させるための揚力を発生する揚力発生部20と、レンズ132により飛行体の上空を撮像する撮像部13と、撮像部13が撮像した画像から検査対象物を検出する検出部42と、検出部42の検出結果に応じてズームレンズのズーム制御をするレンズ制御部133と、検出部42が検出した検査対象物に飛行体を接近させる飛行制御部43と、検査対象物の検査時において飛行体の上面側に備えられた検査部10と、備え、レンズ制御部133は、飛行体の飛行前及び飛行中において画像に含まれている検査対象物の大きさが所定範囲内になるようズーム制御をする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体であって、
前記飛行体を飛行させるための揚力を発生する揚力発生部と、
ズームレンズにより前記飛行体の上空を撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した画像から検査対象物を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に応じて前記ズームレンズのズーム制御をするレンズ制御部と、
前記検出部が検出した前記検査対象物に前記飛行体を接近させる飛行制御部と、
前記検査対象物の検査時において前記飛行体の上面側に備えられた検査部と、
を備え、
前記レンズ制御部は、前記飛行体の飛行前及び飛行中において前記画像に含まれている前記検査対象物の大きさが所定範囲内になるよう前記ズーム制御をする、
飛行体。
【請求項2】
外部の操作端末と通信可能な通信部をさらに備え、
前記通信部は、前記検出部が前記検査対象物を検出した後に前記検査対象物を検出しなくなると前記操作端末に非検出警告を通知し、
前記飛行制御部は、前記通信部が前記操作端末に非検出警告を通知すると、前記操作端末から受信した操作データによらず前記飛行体を移動させる自動モードから、前記操作データに基づいて前記飛行体を移動させる手動操縦モードに変更する、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記撮像部が撮像した画像を画面に表示可能な外部の操作端末と通信可能な通信部をさらに備え、
前記検出部は、前記飛行体の飛行前において前記操作端末に当該画像が表示された画面上で範囲が指定された領域内の画像から前記検査対象物を検出し、
前記揚力発生部は、前記レンズ制御部による前記ズーム制御により、前記検査対象物が前記所定範囲内で検出される状態になってから揚力を発生させる、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項4】
前記レンズ制御部は、前記飛行体の飛行前に前記通信部を介して前記操作端末から取得した前記検査対象物が設置された位置の高さに基づいて、飛行前の位置において前記撮像部が撮像した画像における前記検査対象物の大きさが所定範囲内になるよう前記ズーム制御をする、
請求項3に記載の飛行体。
【請求項5】
前記飛行体から前記検査対象物までの距離を測定する測距部をさらに有し、
前記レンズ制御部は、前記測距部が測定した前記距離が小さくなればなるほど前記ズームレンズの焦点距離が短くなるように前記ズーム制御をする、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項6】
前記検査対象物は、火災感知器であって、
前記検出部は、予め記憶部に記憶された前記火災感知器の外観又は正面視形状を示すデータを参照することにより、前記画像から前記検査対象物を検出する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飛行体に関するものであり、特に高所に取り付けられた検査対象物の動作試験を行う飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内に取り付けられている検査対象物(例えば火災感知器)には、定期的な動作試験が義務付けられている。近時に建設された近代的なビルでは、例えばエントランスホールが複数階にわたり吹き抜けの構造になっていることもある。火災感知器が天井に付けられている場合、天井がさほど高くなければ作業員が脚立に乗って試験を行ったり、伸縮する棒の先に試験器を取り付けて床から試験を行ったりすることができるが、検査対象物が高所に取り付けられていると動作試験が困難であった。
【0003】
これについて特許文献1には、火災感知器に貼付された所定のマーカーを飛行体に搭載された撮像部で撮像することにより、飛行体がマーカーを目標に自律飛行し、飛行体が有する試験器の筐体を火災感知器に覆いかぶせることで高所の火災感知器の試験を可能にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飛行体が床面から飛行を開始すると、飛行開始直後の飛行体が床面の近くにある場合と飛行体が高所にある検査対象物に近づいた場合とでは、検査対象物までの距離が大きく異なるため、固定焦点レンズを使った撮像部では、得られた画像に写る検査対象物のサイズが大きく変化する。検査対象物のサイズが大き過ぎたり小さ過ぎたりすると、検査対象物を適切に検出できない可能性がある。
【0006】
また、特許文献1に記載された技術では、火災感知器にマーカーを付けることが前提になっているが、既に設置済みの火災感知器に後からマーカーを付与するのは、火災感知器が高所にあるからには困難であり、画像処理で検出しやすいマーカーのデザインが建物の美観を損ねる可能性もある。
【0007】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、飛行体が飛行を開始してから検査対象物の位置に到達するまでの間、飛行体が検査対象物を検出可能な大きさで撮影し続けられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の飛行体は、前記飛行体を飛行させるための揚力を発生する揚力発生部と、ズームレンズにより前記飛行体の上空を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像した画像から検査対象物を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に応じて前記ズームレンズのズーム制御をするレンズ制御部と、前記検出部が検出した前記検査対象物に前記飛行体を接近させる飛行制御部と、前記検査対象物の検査時において前記飛行体の上面側に備えられた検査部と、を備え、前記レンズ制御部は、前記飛行体の飛行前及び飛行中において前記画像に含まれている前記検査対象物の大きさが所定範囲内になるよう前記ズーム制御をする。
【0009】
前記飛行体は、外部の操作端末と通信可能な通信部をさらに備え、前記通信部は、前記検出部が前記検査対象物を検出した後に前記検査対象物を検出しなくなると前記操作端末に非検出警告を通知し、前記飛行制御部は、前記通信部が前記操作端末に非検出警告を通知すると、前記操作端末から受信した操作データによらず前記飛行体を移動させる自動モードから、前記操作データに基づいて前記飛行体を移動させる手動操縦モードに変更してもよい。
【0010】
前記飛行体は、前記撮像部が撮像した画像を画面に表示可能な外部の操作端末と通信可能な通信部をさらに備え、前記検出部は、前記飛行体の飛行前において前記操作端末に当該画像が表示された画面上で範囲が指定された領域内の画像から前記検査対象物を検出し、前記揚力発生部は、前記レンズ制御部による前記ズーム制御により、前記検査対象物が前記所定範囲内で検出される状態になってから揚力を発生させてもよい。
【0011】
前記レンズ制御部は、前記飛行体の飛行前に前記通信部を介して前記操作端末から取得した前記検査対象物が設置された位置の高さに基づいて、飛行前の位置において前記撮像部が撮像した画像における前記検査対象物の大きさが所定範囲内になるよう前記ズーム制御をしてもよい。
【0012】
前記飛行体は、前記飛行体から前記検査対象物までの距離を測定する測距部をさらに有し、前記レンズ制御部は、前記測距部が測定した前記距離が小さくなればなるほど前記ズームレンズの焦点距離が短くなるように前記ズーム制御をしてもよい。
【0013】
前記検査対象物は、火災感知器であって、前記検出部は、予め記憶部に記憶された前記火災感知器の外観又は正面視形状を示すデータを参照することにより、前記画像から前記検査対象物を検出してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、飛行体が飛行を開始してから検査対象物の位置に到達するまでの間、飛行体が検査対象物を検出可能な大きさで撮影し続けられるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】飛行体100の概要を説明するための図である。
【
図2】飛行体100によるズーム制御の概要を説明するための図である。
【
図3】飛行体100の外観を模式的に示す図である。
【
図4】飛行体100の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】識別器を用いたマッチング処理の説明図である。
【
図6】テンプレート画像を用いたマッチング処理の説明図である。
【
図7】手動操縦モードについて説明するための図である。
【
図8】飛行体100の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[飛行体100の概要]
図1は、飛行体100の概要を説明するための図である。飛行体100は、建物の天井のような高所に設置されている検査対象物を検査するために使用される。検査対象物は、例えば火災感知器である。飛行体100は例えばドローンであるが、空間を浮揚して移動することができる物体であればドローン以外の物体であってもよい。
【0017】
図1は、飛行体100が、床に載置された第1状態から、空間内を浮揚する第2状態を経て、天井に設置された火災感知器200の位置に到達した第3状態まで移動する様子を模式的に示している。第1状態は、火災感知器200を検査するユーザUが、飛行体100を台車又は手で運ぶことにより、飛行体100を火災感知器200の下方の位置に載置した状態である。この状態において、飛行体100に設けられた撮像部(例えばカメラ)に火災感知器200が写るようになっている。
【0018】
その後、ユーザUが飛行体100を操作したり、飛行体100を操作するための端末において所定の操作をしたりすることにより、飛行体100が浮揚を開始して第2状態になる。飛行体100は、撮像部で撮影した画像中に火災感知器200が写った状態になるように、ほぼ垂直に上昇しながら自律飛行をする。
【0019】
その後、飛行体100が火災感知器200に近づいたことを検知すると、飛行体100は、試験装置が収容されている筐体15に火災感知器200が収容されるように水平方向の位置決めをする。飛行体100は位置決めができた第3状態において、火災感知器200の試験を実行する。
【0020】
このように飛行体100が床に載置された状態から火災感知器200に近づいていくと、撮像部に写る火災感知器200が大きくなり、火災感知器200が撮像部の撮像領域からはみ出してしまうという問題が生じる。そこで、飛行体100は、飛行体100の飛行前及び飛行中(すなわち、浮揚前及び浮揚中)において撮像部が生成した撮像画像に含まれている火災感知器200の大きさが所定範囲内になるよう撮像部のズーム制御をする。
【0021】
図2は、飛行体100によるズーム制御の概要を説明するための図である。
図2(a)は、飛行体100がズーム制御をしない場合に第1状態、第2状態及び第3状態のそれぞれで撮像された画像を示している。中央付近の円形部分は火災感知器200の画像を示しており、第3状態においては火災感知器200の画像が画面からはみ出している。このように火災感知器200の画像が画面からはみ出していると、飛行体100は、火災感知器200の試験をするために適した位置に水平移動することが困難になってしまう。
【0022】
図2(b)は、飛行体100がズーム制御をする場合に第1状態、第2状態及び第3状態のそれぞれで撮像された画像を示している。第3状態における火災感知器200の画像は第1状態における火災感知器200の画像よりも大きいが、画面内に収まっている。このように、火災感知器200の画像が画面内の適切な領域に収まっていると、飛行体100は火災感知器200の試験をするために適した位置に速やかに水平移動できるので、試験時間を短縮することができる。
以下、飛行体100の構成及び動作を詳細に説明する。
【0023】
[飛行体100の外観]
図3は、飛行体100の外観を模式的に示す図である。より具体的には、
図3(a)は、飛行体100の上面図であり、
図3(b)は、飛行体100の正面図である。
図3(a)に示す飛行体100は、飛行体100を浮揚させるための揚力を発生する揚力発生部20を6つ有するが、揚力発生部20の数は任意である。なお、
図3(a)、
図3(b)それぞれにおいて揚力発生部20を示す符号は1箇所ずつのみ示しているが、図中においてそれぞれの符号20が示す部材と同一形状の部材も揚力発生部20である。
【0024】
飛行体100は、筐体15、一以上の揚力発生部20、フレーム30、制御部40、電源部50、床面までの距離を検出する床面センサ60、及びランディングギア70を有する。筐体15は円筒形状であり、筐体15の底面の中心がフレーム30の中心と一致するように配置されている。また筐体15の上面には、検査対象物を収容可能な開口部が設けられている。筐体15には、検査部10を構成する擬似火災発生装置11及び作動検知部12と、撮像部13と、測距センサ14とが収容されている。
【0025】
フレーム30は、正六角形の形状である板状部材である。各揚力発生部20は、一例として、フレーム30の中心からフレーム30の各頂点を結ぶ直線上において、フレーム30の中心から等距離の位置に回転軸が存在するように配置されている。
【0026】
検査部10は、飛行体100の検査時において飛行体100の上面側に位置するように設けられている。これにより、火災感知器200等の検査対象物が天井Cに備えられていても、飛行体100は検査部10を検査対象物に近づけて検査対象物を検査することができる。
【0027】
図3(b)において、破線L1は飛行体100の検査時における筐体15の開口部の高さを示す。また一点鎖線L2は各揚力発生部20の回転部のうち、最も高い回転部の高さを示す。なお、
図3に示す例では各揚力発生部20の回転部の高さは全て同一の高さである。
図3(b)に示すように、飛行体100の検査時において、破線L1は一点鎖線L2よりも高い位置となる。
【0028】
このように、飛行体100の検査時における筐体15の上端は、複数の揚力発生部20のいずれよりも高い位置となるように配置される。これにより、飛行体100は、検査対象物が天井Cに設置されている場合であっても、揚力発生部20が天井Cに接触することなく、検査部10を用いて火災感知器200の作動試験を実施することができる。
【0029】
[飛行体100の機能構成]
図4は、飛行体100の機能構成を示すブロック図である。飛行体100は、検査部10、撮像部13、揚力発生部20、メモリ45、制御部40、及び通信部80を少なくとも有する。
図4に示す飛行体100は、測距センサ14もさらに有する。
【0030】
制御部40は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって実現される。制御部40は、メモリ45にロードしたプログラムを実行することにより、全体制御部41、検出部42、飛行制御部43、及び検査制御部44として機能する。全体制御部41は、制御部40の各部を全体的に制御する。
【0031】
検査部10は、擬似火災発生装置11及び作動検知部12を有する。擬似火災発生装置11は、検査制御部44からの指示に基づいて、火災感知器200を検査するために擬似的な煙を発生させる。擬似火災発生装置11はヒーターとファンを装備しており、それらを作動させて煙を拡散させる。
【0032】
作動検知部12は、図示しないカメラによって、擬似火災発生装置11が発生させた擬似火災に反応して火災感知器200が発生させた光を検出する。作動検知部12は、光を検出できたか否かに基づいて、火災感知器200が正常に作動したか否かを判定することができる。作動検知部12は、判定結果を検査制御部44に通知する。
【0033】
撮像部13は、ズームレンズにより飛行体の上空を撮像するユニットであり、カメラ本体131、レンズ132及びレンズ制御部133を有する。レンズ132は、焦点距離が可変のレンズであり、レンズ制御部133の制御により焦点距離を変えることができる。レンズ制御部133は、例えばCPUによって実現される。制御部40がレンズ制御部133として機能してもよい。
【0034】
測距センサ14は、飛行体100から火災感知器200までの距離を測定するためのセンサであり、測距部として機能する。測距センサ14は、例えば赤外線センサ、超音波センサ又はマイクロ波センサであるが、距離を検出する手段はこれらに限らず、測距センサ14は音波、レーザ光又は画像を用いて距離を検出してもよい。検査対象物である火災感知器200は建物内の天井Cに設置されている場合が多い。そのため、測距センサ14は、飛行体100の検査時における上面側となるように筐体15内に配置されている。これにより、測距センサ14は、飛行体100が天井Cに近づいたことを検出することができる。
【0035】
検出部42は、全体制御部41の制御の下、撮像部13が撮像した画像から検査対象物を検出する。検査対象物が火災感知器200である場合、検出部42は、予めメモリ45に記憶された火災感知器200の外観又は正面視形状を示すデータを参照することにより、画像から火災感知器200を検出する。検出部42が検査対象物を検出する方法は任意であるが、例えば識別器を用いたマッチング処理を行ったり、検査対象物のエッジを示すテンプレート画像を用いたマッチング処理を行ったりすることにより検査対象物を検出する。
【0036】
図5は、識別器を用いたマッチング処理の説明図である。検出部42は、
図5(a)に示すような、それぞれ形状及び大きさが異なる複数の識別器を用いて、
図5(b)に示すように、撮像部13が撮像した画像に基づく輝度画像をスキャンする。検出部42は、複数の識別器と輝度画像とのマッチングスコアが最も高い位置に、使用した識別器に対応する大きさで検査対象物が写っていることを検出する。
【0037】
図6は、テンプレート画像を用いたマッチング処理の説明図である。検出部42は、
図6(a)に示すような、複数の検査対象物のエッジを示しそれぞれ大きさが異なる複数のテンプレート画像を用いて、
図6(b)に示すように、撮像部13が撮像した画像に基づくエッジ画像をスキャンする。検出部42は、複数のテンプレート画像とエッジ画像とのマッチングスコアが最も高い位置に、使用したテンプレート画像に対応する大きさで検査対象物が写っていることを検出する。
【0038】
検出部42は、画像に検査対象物があるか否かを示す情報、検出した検査対象物の画像内の位置を示す情報、又は検出した検査対象物の画像内の大きさを示す情報の少なくともいずれかをレンズ制御部133に通知する。
【0039】
飛行制御部43は、全体制御部41の制御の下、例えば姿勢センサ(不図示)や測距センサ14等の出力に基づいて揚力発生部20の動作を制御することにより、飛行体100の飛行を制御する。飛行制御部43は、揚力発生部20の動作を制御することにより、検出部42が検出した検査対象物に飛行体100を接近させる。
【0040】
飛行体100が検査対象物である火災感知器200に接近すると、検査制御部44は、全体制御部41の制御の下、擬似火災発生装置11を作動させる。検査制御部44は、作動検知部12による火災感知器200の作動検査の検査結果を取得する。検査制御部44は、作動検知部12によって火災感知器200が正常に動作していると判定された場合、擬似火災発生装置11の動作を停止するよう検査部10に指示する。
【0041】
全体制御部41は、一例として、検査制御部44が取得した検査結果を、通信部80を介して飛行体100を使用するユーザUの操作端末に通知する。火災感知器200が天井C等の高所に設置されている場合、火災感知器200の検査をする飛行体100のユーザUは、火災感知器200が発生する発光を確認しづらく、特に高天井で火災感知器試験器が火災感知器200に被さっている場合は発光の確認が難しいため、目視等で火災感知器200の作動確認をする手間を省くことができる。
【0042】
[撮像部13の動作]
以下、撮像部13の動作を詳細に説明する。レンズ制御部133は、検出部42から入力される情報に基づいて、検出部42の検出結果に応じて、ズームレンズであるレンズ132の焦点距離を変化させるズーム制御を行う。レンズ制御部133は、飛行体100の飛行前及び飛行中において画像に含まれている検査対象物である火災感知器200の大きさが所定範囲内になるようズーム制御をする。
【0043】
所定範囲は、飛行体100が飛行している空間における空気の流れ等の外乱の影響で飛行体100の水平方向の位置が変動しても、撮像画像内に火災感知器200の画像が含まれ、かつ筐体15に火災感知器200を収容するために必要な精度で火災感知器200の位置を検出部42が検出できる範囲である。具体的には、所定範囲は、例えば撮像領域の長辺又は短辺の長さの20%以上80%未満の辺で囲まれた四辺形の範囲である。所定範囲は、ユーザUにより予め設定されてメモリ45に記憶された範囲であってもよい。
【0044】
一例として、レンズ制御部133は、測距センサ14が測定した火災感知器200までの距離が小さくなればなるほどレンズ132の焦点距離が短くなるようにズーム制御をする。レンズ制御部133は、例えば、メモリ45に記憶された、飛行体100から火災感知器200までの距離と焦点距離との関係を示すズーム制御用データを参照することにより、測距センサ14が測定した距離に対応する焦点距離にするための制御信号をレンズ132に送信することによりレンズ132の焦点距離を制御する。
【0045】
レンズ制御部133は、カメラ本体131から現時点の焦点距離の通知を受けて、通知を受けた焦点距離と測距センサ14が測定した距離とを比較した結果に基づいて、焦点距離を変更するための制御信号を送信するか否かを判定してもよい。具体的には、レンズ制御部133は、通知を受けた現時点の焦点距離が、測距センサ14が測定した距離に適していないと判定した場合に、焦点距離を変更するための制御信号をレンズ132に送信する。レンズ制御部133は、通知を受けた現時点の焦点距離が、測距センサ14が測定した距離に適していると判定した場合に、焦点距離を変更するための制御信号をレンズ132に送信しない。
【0046】
なお、レンズ制御部133は、測距センサ14が測定した距離を使用することなくレンズ132のズーム制御をしてもよい。一例として、飛行体100が上昇する速度が一定であり、かつ床面に対する天井Cの高さが既知である場合、レンズ制御部133は、飛行体100が上昇を開始してからの経過時間に基づいて飛行体100と天井Cまでの距離を特定することができる。そこで、レンズ制御部133は、天井Cまでの高さから、飛行体100が上昇を開始してからの経過時間に飛行体100の上昇速度を乗算した値を減算することにより飛行体100から火災感知器200までの距離を算出し、算出した距離が小さくなればなるほどレンズ132の焦点距離が短くなるようにズーム制御をしてもよい。レンズ制御部133は、飛行体100が上昇を開始してからの経過時間と焦点距離とが関連付けられてデータをメモリ45から読み出して参照することによりズーム制御をしてもよい。
【0047】
[ユーザUによる操作]
飛行体100が飛行している空間における空気の流れ等の外乱の影響で、飛行体100の水平方向の位置が大きく移動してしまい、火災感知器200が所定範囲に含まれなくなってしまう場合が想定される。このような場合に備えて、飛行体100が自律飛行をする自動モードから、ユーザUの操縦により飛行体100が飛行する手動操縦モードに切り替えられるように構成されていてもよい。
【0048】
図7は、手動操縦モードについて説明するための図である。
図7においては、ユーザUが飛行体100の操縦に使用可能な操作端末300を持っている状態が示されている。操作端末300は、飛行体100との間で、無線通信回線Wを介してデータを送受信することができる。無線通信回線Wは、例えばWi-Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)である。
【0049】
図7には、第1状態の飛行体100が、離陸した後に左側に移動してしまい、第2状態Aにおいて火災感知器200の位置からずれた位置にある状態が示されている。第2状態Aで撮像部13が生成した撮像画像G1には火災感知器200の一部しか写っていないので、制御部40は火災感知器200の位置を適切に検出することができない。
【0050】
このように、検出部42が火災感知器200を検出した後に火災感知器200を検出しなくなると、通信部80は操作端末300に非検出警告を通知する。飛行制御部43は、通信部80が操作端末300に非検出警告を通知すると、操作端末300から受信した操作データによらず飛行体100を移動させる自動モードから、操作データに基づいて飛行体100を移動させる手動操縦モードに変更する。
【0051】
図7に示す例において、飛行制御部43は操作端末300から受信した操作データに基づいて右向きに飛行体100を移動させることにより、第2状態Bが示す火災感知器200の位置まで飛行体100が戻っている。第2状態Bで撮像部13が生成した撮像画像G2には、中央付近に火災感知器200の全体が写っている。このように飛行制御部43が自動モードから手動操縦モードに変更することで、適切に火災感知器200の試験を実行できる確率が高まる。
【0052】
ユーザUは、自動モードで動作させる前に操作端末300を用いて各種の設定操作をしてもよい。一例として、ユーザUは、飛行体100の飛行前において、撮像部13が撮像した画像を画面に表示可能な操作端末300の画面上で、火災感知器200を検出する対象となる範囲を指定してもよい。操作端末300は、指定された範囲を示す情報を飛行体100に送信し、飛行体100は、指定された範囲をメモリ45に記憶する。
【0053】
この場合、検出部42は、操作端末300の画面上で範囲が指定された領域内の画像から火災感知器200を検出する。レンズ制御部133は、検出された火災感知器200の大きさに基づいてズーム制御を行う。揚力発生部20は、飛行制御部43の制御の下、レンズ制御部133によるズーム制御により、火災感知器200が所定範囲内で検出される状態になってから揚力を発生させる。このように飛行体100が飛行を開始する前に、検出部42が火災感知器200を検出する範囲をユーザUが指定することで、火災感知器200の付近に火災感知器200の形状に似た模様又は物体が存在する場合であっても、ユーザUが当該模様又は物体を含まない範囲を設定することにより、火災感知器200が所定範囲内に収まるようにレンズ制御部133がズーム制御を行うことができる。
【0054】
ユーザUは、床面から火災感知器200までの距離(すなわち火災感知器200が設置された位置の高さ)を操作端末300において設定し、操作端末300が当該高さを飛行体100に通知してもよい。この場合、レンズ制御部133は、飛行体100の飛行前に通信部80を介して操作端末300から取得した火災感知器200が設置された位置の高さに基づいて、飛行前の位置において撮像部13が撮像した画像における火災感知器200の大きさが所定範囲内になるようズーム制御をしてもよい。
【0055】
レンズ制御部133は、例えば、メモリ45に記憶された火災感知器200の位置の高さと焦点距離との関係を示すデータを参照することによりズーム制御をする。レンズ制御部133がこのように動作することで、検出部42が火災感知器200を検出する処理を行うことなく火災感知器200の大きさが所定範囲内になるようにすることができるので、飛行を開始するまでの時間を短くすることができる。
【0056】
検出部42が操作端末300の画面上で範囲が指定された領域内の画像から火災感知器200を検出するとともに、レンズ制御部133が、火災感知器200が設置された位置の高さに基づいてズーム制御をしてもよい。レンズ制御部133は、例えば、操作端末300の画面上で範囲が指定された領域内の画像から火災感知器200が検出されている場合に、火災感知器200が設置された位置の高さに基づいてズーム制御をし、操作端末300の画面上で範囲が指定された領域内の画像から火災感知器200が検出されていない場合に、高さに基づいてズーム制御をすることなく、通信部80を介して操作端末300に警告を発する。レンズ制御部133がこのように動作することで、ユーザUの設定ミスにより火災感知器200が写っていない状態で飛行体100が飛行を開始することを防げる。
【0057】
[飛行体100の動作の流れ]
図8は、飛行体100の動作の流れを示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、ユーザUが初期調整をする時点から開始している(S1)。
【0058】
初期調整は、飛行体100が火災感知器200の下方に載置され、火災感知器200に向けて飛行を開始することができる状態にすることである。一例として、撮像部13の撮像範囲に火災感知器200が含まれる位置までユーザUが100を台車に載せて移動させることにより初期調整が行われる。撮像部13が撮像した画像が操作端末300の画面に表示される場合、画面に写った火災感知器200が検出可能な範囲に収まるように、ユーザUは操作端末300を操作することによりレンズ132の焦点距離を初期調整してもよい。
【0059】
ユーザUは、操作端末300の画面に表示された火災感知器200の領域を選択することにより、飛行体100が飛行中に検出して試験をする対象の火災感知器200を指定する初期調整をしてもよい。飛行体100の全体制御部41は、初期調整が行われた結果、検出部42が火災感知器200を検出できる状態になった場合、離陸が可能であると判定し、飛行制御部43を介して揚力発生部20を動作させることにより飛行体100を離陸させる(S2)。全体制御部41は、離陸が可能であると判定した時点で通信部80を介して操作端末300に離陸準備が完了したことを通知し、操作端末300からの離陸許可を受けてから飛行体100を離陸させてもよい。
【0060】
その後、飛行制御部43は揚力発生部20に高度の上昇を継続させる(S3)。この間、検出部42は火災感知器200を検出する処理を実行する(S4)。検出部42が火災感知器200を検出した場合(S5においてYES)、検出部42は検出した火災感知器200の大きさが適切であるか否かを判定する(S6)。
【0061】
検出した火災感知器200が小さ過ぎると検出部42が判定した場合、検出部42はレンズ132の焦点距離を長くするようにレンズ制御部133に指示する(S7)。検出した火災感知器200が大き過ぎると検出部42が判定した場合、検出部42はレンズ132の焦点距離を短くするようにレンズ制御部133に指示する(S8)。検出部42は、S7又はS8において焦点距離を変更するズーム制御をした後に、S4に処理を戻す。
【0062】
検出した火災感知器200の大きさが適切であると検出部42が判定した場合、検出部42はレンズ制御部133にレンズ132の焦点距離を変更させず、火災感知器200の大きさが適切であることを全体制御部41に通知する。全体制御部41は、測距センサ14による測定結果に基づいて、火災感知器200の試験を開始できる位置まで火災感知器200に近づいたか否かを判定する(S9)。飛行体100が火災感知器200に近づいていないと全体制御部41が判定した場合(S9においてNO)、S3に処理を戻して、飛行体100をさらに上昇させる。
【0063】
飛行体100が火災感知器200に近づいたと全体制御部41が判定した場合(S9においてYES)、検査制御部44が火災感知器200の試験を実行する(S10)。検査制御部44は、試験が終了すると、通信部80を介して試験の結果を操作端末300に通知し(S11)、火災感知器200の試験を終了する(S12)。全体制御部41は、試験が終了したという通知を検査制御部44から受けると、飛行体100を降下させるように飛行制御部43に指示し、飛行制御部43は揚力発生部20を制御することにより飛行体100を降下させて着陸させる(S13)。
【0064】
検出部42は、S5において火災感知器200を検出できないと判定した場合(S5においてNO)、火災感知器200を検出できない状態が一定時間経過したか否かを判定する(S14)。一定時間が経過していないと検出部42が判定した場合(S14においてNO)、全体制御部41は通信部80を介して操作端末300に警告を出力し、手動操縦モードに切り替える(S15)。全体制御部41は、操作端末300からの操作内容を飛行制御部43に通知し、飛行制御部43は、操作内容に基づいて揚力発生部20を制御することにより飛行体100の水平位置を調整する(S16)。その後、検出部42は処理をS4に戻して火災感知器200の検出処理を実行する。
【0065】
検出部42がS14において一定時間が経過したと判定した場合(S14においてYES)、検出部42は全体制御部41にその旨を通知し、全体制御部41は飛行体100を降下させて着陸させる(S13)。以上の流れにより、飛行体100は火災感知器200の試験を実行することができる。
【0066】
[飛行体100による効果]
以上説明したように、本実施の形態に係る飛行体100においては、レンズ制御部133が、飛行体100の飛行前及び飛行中において画像に含まれている火災感知器200の大きさが所定範囲内になるようズーム制御をする。その結果、飛行体100が飛行を開始してから火災感知器200の位置に到達するまでの間、飛行体100が火災感知器200を検出可能な大きさで撮影し続けられるので、飛行体100が速やかに火災感知器200の位置に到達して試験を実行することが可能になる。
【0067】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0068】
10 検査部
11 擬似火災発生装置
12 作動検知部
13 撮像部
14 測距センサ
15 筐体
20 揚力発生部
20 符号
30 フレーム
40 制御部
41 全体制御部
42 検出部
43 飛行制御部
44 検査制御部
45 メモリ
50 電源部
60 床面センサ
70 ランディングギア
80 通信部
100 飛行体
131 カメラ本体
132 レンズ
133 レンズ制御部
200 火災感知器
300 操作端末