(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106271
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】梱包用フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240731BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240731BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20240731BHJP
【FI】
B32B27/32
B65D65/40 D
C08J7/04 Z CER
C08J7/04 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010529
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 崇暁
【テーマコード(参考)】
3E086
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB02
3E086AC22
3E086AC34
3E086AD17
3E086BA04
3E086BA15
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3E086DA06
4F006AA12
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4F006CA07
4F100AK07A
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4F100GB15
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4F100JK02
4F100JK06
4F100JN30
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】伸縮性に優れるとともに、弱い力で梱包用フィルムを伸長させることができ、伸長後の透明性に優れる梱包用フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】梱包用フィルム1は、熱可塑性エラストマーを含有する中間層2と、中間層2の両面に設けられ、プロピレン系エラストマーを含有する表面層3,4とを備える。プロピレン系エラストマーが、プロピレンにエチレンを共重合させたプロピレン系エラストマーであり、表面層3(または、表面層4)の全体に対する前記プロピレン系エラストマーの含有量が45質量%以上95質量%以下であり、表面層3(または、表面層4)の全体に対するプロピレン系エラストマー中のエチレン単位の含有量の合計が1質量%以上7質量%未満である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマーを含有する中間層と、前記中間層の両面に設けられ、プロピレン系エラストマーを含有する表面層とを備え、
前記プロピレン系エラストマーが、プロピレンにエチレンを共重合させたプロピレン系エラストマーであり、
前記表面層の全体に対する前記プロピレン系エラストマーの含有量が45質量%以上95質量%以下であり、
前記表面層の全体に対する前記プロピレン系エラストマー中のエチレン単位の含有量の合計が1質量%以上7質量%未満である
ことを特徴とする梱包用フィルム。
【請求項2】
前記表面層の厚みが3~15μmであり、
前記表面層と前記中間層との厚み比が、表面層:中間層=1:3~1:20であることを特徴とする請求項1に記載の梱包用フィルム。
【請求項3】
前記表面層が、極性付与剤を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の梱包用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を梱包する際に使用される梱包用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、段ボール箱等の梱包容器に物品を梱包して配送する際に、物品と段ボールとの間に生じた隙間に、発泡スチロールやエアーキャップ、新聞紙などの緩衝材を詰めて、物品を固定して輸送していた。
【0003】
しかし、これらの緩衝材は、商品に比べて容量が大きく、使用後の廃棄が煩雑であり、後片付けに手間がかかるという問題があった。
【0004】
そこで、これらの緩衝材の代わりに、物品を固定して輸送するための梱包用フィルムが提案されている。例えば、内部層と、内部層の一方面側に配された第1外層と、内部層の他方面側に配された第2外層とを有するポリオレフィンフィルムであって、内部層の厚さは、第1外層及び第2外層のそれぞれの厚さに比べて1.5倍以上であるポリオレフィンフィルムが提案されている。そして、このような構成により、物品を梱包する際に、張力を利用して物品を好適に支持できると記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、熱可塑性エラストマー含有層と、熱可塑性エラストマー含有層の一方の面側に設けられたポリオレフィン系樹脂含有層を備え、ポリオレフィン系樹脂含有層が、極性付与剤を含有する梱包用フィルムが提案されている。そして、このような構成により、段ボール板等の紙基材に対する低温接着性に優れた梱包用フィルムを提供することができると記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-22958号公報
【特許文献2】特開2019-218092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の梱包用フィルムにおいては、梱包用フィルムを伸長する際に、伸長時の引張応力が大きいため、物品を梱包する際に、弱い力で梱包用フィルムを伸長させることが困難であるという問題があった。
【0008】
また、上記特許文献2に記載の梱包用フィルムにおいては、物品を梱包する際に、梱包用フィルムを伸長すると、伸長後に伸長部分の白化が発生するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、伸縮性に優れるとともに、弱い力で梱包用フィルムを伸長させることができ、伸長後の透明性に優れる梱包用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の梱包用フィルムは、熱可塑性エラストマーを含有する中間層と、中間層の両面に設けられ、プロピレン系エラストマーを含有する表面層とを備え、プロピレン系エラストマーがプロピレンにエチレンを共重合させたプロピレン系エラストマーであり、表面層の全体に対するプロピレン系エラストマーの含有量が45質量%以上95質量%以下であり、表面層の全体に対するプロピレン系エラストマー中のエチレン単位の含有量の合計が1質量%以上7質量%未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、伸縮性に優れるとともに、弱い力で梱包用フィルムを伸長させることができ、伸長後の透明性に優れる梱包用フィルムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る梱包用フィルムを説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の梱包用フィルムについて具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して適用することができる。
【0014】
図1は、本発明の梱包用フィルムを示す断面図である。
図1に示すように、本発明の梱包用フィルム1は、中間層2と、中間層2の第1の面2a上に設けられた第1の表面層3(以下、単に「表面層3」という場合がある。)と、中間層2の第2の面2b上に設けられた第2の表面層4(以下、単に「表面層4」という場合がある。)を備えている。
【0015】
(中間層)
中間層2は、常温においてゴム弾性を有する熱可塑性エラストマーを含有しており、梱包用フィルム1に伸縮性を付与するための層である。
【0016】
<熱可塑性エラストマー>
この熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性エラストマー、及びポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。なお、熱可塑性エラストマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
また、表面層3,4との接着性を向上させるとの観点から、これらの熱可塑性エラストマーのうち、オレフィン系熱可塑性エラストマーを使用することが好ましい。
【0018】
このオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、炭素数3以上のオレフィンを主成分とした共重合体又は単独重合体、並びにエチレンを主成分とした炭素数3以上のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。
【0019】
より具体的には、例えば、(1)立体規則性が低いプロピレン単独重合体や1-ブテン単独重合体等のα-オレフィン単独重合体、(2)プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-エチレン共重合体、1-ブテン-プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1-プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1-1-ブテン共重合体、4-メチルペンテン-1-プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、及びエチレン-オクテン共重合体等のα-オレフィン共重合体、(3)エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン-プロピレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-イソプレン共重合体等のエチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体等が挙げられる。また、結晶性ポリオレフィンのマトリクスに上述のエラストマーが分散したエラストマーを使用してもよい。なお、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
また、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、一般的に力学的性質などの基本物性を支配するハードセグメントと、ゴム的な性質である伸縮性を支配するソフトセグメントによって構成さ、オレフィン系熱可塑性エラストマーのハードセグメントがポリプロピレンからなるものをプロピレン系エラストマーという。そして、中間層を構成するオレフィン系熱可塑性エラストマーとして、プロピレンにエチレンを共重合させたプロピレン系エラストマー(プロピレンーエチレン共重合体)を使用する場合、全単位に対するエチレン単位の含有率は、3質量%~20質量%が好ましく、10質量%~20質量%がより好ましい。ソフトセグメントであるエチレン単位の含有率が3質量%~20質量%であれば、梱包用フィルムにおいて、優れた柔軟性と優れた伸縮性を得ることができる。
【0021】
また、中間層全体に対する熱可塑性エラストマーの含有量は、中間層100質量%のうち、70~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、95~100質量%であることがさらに好ましい。熱可塑性エラストマーの含有量が70質量%以上であれば、梱包用フィルムの伸縮性が十分に向上するため、梱包用フィルムを使用する際に、物品の保持安定性を向上させることが可能になる。
【0022】
<他の成分>
中間層2は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分を含んでもよい。他の成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、金属石鹸、ワックス、防カビ剤、抗菌剤、造核剤、難燃剤、及びスリップ剤等が挙げられる。
【0023】
(表面層)
表面層3,4は、梱包用フィルム1における伸長後の透明性を向上させるとともに、梱包用フィルム1の伸縮性を向上するための層である。
【0024】
図1に示すように、表面層3,4は、中間層2の両面(すなわち、第1の面2aおよび第2の面2bの両方)に設けられており、中間層2の第1の面2a上に表面層3が設けられるとともに、中間層2の第2の面2b上に表面層4が設けられている。なお、表面層3,4は、同じ種類(すなわち、組成や厚みが同じである)表面層であってもよく、異なる種類の表面層であってもよい。
【0025】
表面層3,4は、上述の中間層2において説明したオレフィン系熱可塑性エラストマーのうち、プロピレンにエチレンを共重合させたプロピレン系エラストマー(以下、単に「プロピレン系エラストマー」という場合がある。)を少なくとも1種以上含有する層である。
【0026】
<プロピレン系エラストマー>
表面層3,4に含有されるプロピレン系エラストマーにおいては、プロピレン系エラストマー中の(すなわち、プロピレン系エラストマーの総重量(全単位)に対する)エチレン単位の含有率は、3質量%~20質量%が好ましい。ソフトセグメントであるエチレン単位の含有率が3質量%~20質量%であれば、ソフトセグメントの弾性により、優れた柔軟性と優れた伸縮性を得ることができる。なお、プロピレン系エラストマー中のエチレン単位の含有率は、4質量%~16質量%がより好ましい。
【0027】
また、本発明の梱包用フィルムにおいては、表面層3全体(または表面層4全体)に対するプロピレン系エラストマー中のエチレン単位の含有量の合計が、表面層100質量%のうち、1質量%以上7質量%未満であり、3質量%以上6質量%以下が好ましい。これは、1質量%未満の場合は、エラストマーが含有するソフトセグメントの割合が少なくなるため、柔軟性と伸縮性が乏しくなるためであり、7質量%以上の場合は、エラストマーが含有するソフトセグメントの割合が多くなりすぎ、ベタつきが発生する場合があるためである。
【0028】
また、本発明の梱包用フィルムにおいては、表面層3全体(または表面層4全体)に対するプロピレン系エラストマーの含有量は、表面層100質量%のうち、45質量%以上95質量%以下である。プロピレン系エラストマーの含有量が上記範囲内であれば、エラストマーが含有するソフトセグメントの弾性により、優れた柔軟性と優れた伸縮性が得られるため、物品を梱包する際に、弱い力で梱包用フィルムを伸長させることができる。また、結晶成分を多く含有するポリオレフィン系樹脂においては、フィルムを伸長した際に樹脂の結晶化が促進され、伸長部分に白化が発生するが、エラストマーはハードセグメントである結晶成分がポリオレフィン系樹脂より少ないため、物品を梱包する際に、梱包用フィルムを伸長した場合であっても、伸長部分の白化を抑制することができる。また、表面層3全体(または表面層4全体)に対するプロピレン系エラストマーの含有量が95質量%以下であれば、エラストマーが含有するソフトセグメントの割合が多くなり過ぎず、ベタつきを防止することができる。
【0029】
また、プロピレン系エラストマーの密度は、0.900g/cm3以下であることが好ましく、0.895g/cm3以下であることがより好ましく、0.890g/cm3以下であることがさらに好ましい。密度が0.900g/cm3以下の場合は、エラストマーが含有するソフトセグメントの割合が多くなり、優れた柔軟性と優れた伸縮性を得ることができる。
【0030】
また、プロピレン系エラストマーのメルトマスフローレート(MFR)は、0.5~20g/10分であることが好ましく、1~15g/10分がより好ましく、1~10g/10分がさらに好ましい。メルトマスフローレート(MFR)が0.5~20g/10分の場合は、中間層との相溶性が向上し、フィルムを製造する際に多層化することができる。
【0031】
なお、上記のメルトマスフローレートは、ASTM D1238の規定に準拠して測定することで得られる。
【0032】
また、プロピレン系エラストマーは、市販品を使用してもよい。プロピレン系エラストマーの市販品としては、ExxonMobil社製のVistamaxx(登録商標)6102FL、ExxonMobil社製のVistamaxx(登録商標)3020FL、ExxonMobil社製のVistamaxx(登録商標)3588FL等が挙げられる。
【0033】
<オレフィン系樹脂>
また、表面層3,4は、オレフィン系樹脂を含有してもよい。オレフィン系樹脂としては、表面層3,4中のプロピレン系エラストマーと相溶性を有するものが好ましく、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が好ましい。なお、表面層3,4の伸縮性の低下を抑制するとの観点から、ポリエチレン樹脂が好ましい。また、オレフィン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。
【0035】
また、環境負荷を低減するとの観点から、植物由来(バイオマス由来)の低密度ポリエチレンを使用してもよい。
【0036】
この植物由来の低密度ポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリエチレンであり、例えば、サトウキビ由来の低密度ポリエチレンを挙げることができる。
【0037】
また、本発明の梱包用フィルムにおいては、95%以上のバイオマス度を有する低密度ポリエチレンを使用することができる。
【0038】
なお、ここでいう「バイオマス度」とは、具体的には、ASTM D6866に準拠し、加速器質量分光計(AMS)により放射性炭素(14C)の濃度を求めることにより、放射性炭素年代測定の原理に基づいて測定した値のことをいう。
【0039】
また、表面層は、オレフィン系樹脂のうち、柔軟性の低下を抑制するとの観点から、密度が0.930g/cm3以下である低密度ポリエチレン(LDPE)を含んでいることが好ましい。
【0040】
また、表面層の表面のベタつきを防止するとともに、梱包用フィルムの巻き取りを行う際のブロッキングを防止するとの観点から、低密度ポリエチレンの密度は、0.870g/cm3以上であることが好ましく、0.880g/cm3以上であることがより好ましい。
【0041】
また、低密度ポリエチレンのメルトマスフローレート(MFR)は、0.5~20g/10分であることが好ましく、1.0~15g/10分がより好ましく、1.0~10g/10分がさらに好ましい。メルトマスフローレート(MFR)が0.5~20g/10分の場合は、中間層との相溶性が向上し、フィルムを製造する際に多層化することができる。
【0042】
なお、上記のメルトマスフローレートは、ASTM D1238の規定に準拠して測定することで得られる。
【0043】
また、本発明の梱包用フィルムにおいては、表面層3,4がオレフィン系樹脂を含有する場合、表面層3全体(または表面層4全体)に対するオレフィン系樹脂の含有量は、表面層100質量%のうち、0質量%超45質量%以下であることが好ましい。オレフィン系樹脂の含有量が上記範囲内であれば、表面層3,4が含有するプロピレン系エラストマーの割合が少なくなり過ぎず、オレフィン系樹脂が低密度ポリエチレンの場合は、ランダムポリプロピレン等のオレフィン樹脂よりも結晶成分が少ないため、十分な伸縮性と伸長後の透明性を確保することができる。
【0044】
<極性付与剤>
また、表面層3,4は、極性付与剤を含有してもよい。極性付与剤は、上述のオレフィン系樹脂に極性を付与するためのものであり、オレフィン系樹脂に極性を付与することにより、表面層と紙基材等の基材との接着性が高まるため、本発明の梱包用フィルムが熱溶着、または糊接着で取り付けられた紙基材等に対する剥離強度を向上させることが可能になる。
【0045】
極性付与剤としては、例えば、分子内に無水カルボン酸構造を有するポリオレフィン系樹脂、分子内にエポキシ構造を有するポリオレフィン系樹脂、及び分子内にアクリル酸構造を有するポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。また、このうち、ポリオレフィン系樹脂との相溶性に優れるとの観点から、分子内に、無水マレイン酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水フタル酸、及び無水安息香酸等の無水カルボン酸の構造を有するポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。例えば、分子内に無水カルボン酸構造を有するポリプロピレンや無水カルボン酸構造を有するポリエチレン等が挙げられる。なお、極性付与剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
また、極性付与剤の融点は、120℃以上150℃以下が好ましい。極性付与剤の融点が上記範囲内であれば、基材への熱溶着、または糊接着を行った場合に、接着強度が向上する。
【0047】
また、極性付与剤の酸価は、1.0~60mgKOH/gが好ましく、11~52mgKOH/gがより好ましい。酸価が1.0~60mgKOH/gであれば、優れた極性の付与効果を得ることができる。
【0048】
なお、上記の酸価は、JIS K 0070の規定に準拠して測定することで得られる。
【0049】
また、本発明の梱包用フィルムにおいては、表面層3,4が極性付与剤を含有する場合、表面層3全体(または表面層4全体)に対する極性付与剤の含有量は、表面層100質量%のうち、1.0質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。極性付与剤の含有量が1.0質量%以上20質量%以下であれば、梱包用フィルムの紙基材等への接着性を向上することができる。
【0050】
<滑剤>
また、表面層3,4は、滑剤を含有してもよい。滑剤は、梱包用フィルムの巻き取りを行う際のブロッキングを防止するためのものであり、例えば、有機系の滑剤が好ましく、アマイド系の滑剤がより好ましい。また、アマイド系の滑剤としては、例えば、エルカ酸アマイド系の滑剤や、ステアリン酸アマイド系の滑剤等が挙げられ、エルカ酸アマイド系の滑剤が好ましい。
【0051】
また、本発明の梱包用フィルムにおいては、表面層3,4が滑剤を含有する場合、表面層3全体(または表面層4全体)に対する滑剤の含有量は、表面層100質量%のうち、0質量%超10質量%以下であることが好ましい。滑剤の含有量が上記範囲内であれば、梱包用フィルムのブロッキングを防止することができる。
【0052】
<他の成分>
また、表面層6,7は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分が含有されていてもよい。
【0053】
他の成分としては、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、防曇剤、金属石鹸、ワックス、防カビ剤、抗菌剤、造核剤、難燃剤等が挙げられる。
【0054】
以上より、本発明の梱包用フィルム1においては、表面層3全体(または表面層4全体)に対するプロピレン系エラストマーの含有量が45質量%以上95質量%以下であり、表面層の全体に対するプロピレン系エラストマー中のエチレン単位の含有量の合計が1質量%以上7質量%未満であるため、伸縮性と柔軟性に優れ、物品を梱包する際に、弱い力で梱包用フィルムを伸長させることができる。また、プロピレン系エラストマーは結晶成分が少なく、フィルムを伸長した際に樹脂の結晶化が促進されにくいため、物品を梱包する際に、梱包用フィルムを伸長した場合であっても、伸長後に伸長部分の白化を抑制することができる。
【0055】
<梱包用フィルムの製造方法>
次に、本発明の梱包用フィルムの製造方法について、詳細に説明する。
【0056】
本発明の梱包用フィルムは、まず、熱可塑性エラストマー、及び必要に応じて、上述のオレフィン系樹脂等の他の成分を所定の配合比率で混合し、中間層形成用の樹脂混合物を得る。
【0057】
また、同様に、プロピレン系エラストマー、及び必要に応じて、上述のオレフィン系樹脂、極性付与剤、滑剤、及び他の成分を所定の配合比率で混合し、表面層形成用の樹脂混合物を得る。
【0058】
次に、Tダイを備えた押出機を用い、中間層形成用の樹脂混合物、及び表面層形成用の樹脂混合物を所定の温度で押出成形し、キャストフィルムプロセス法によって、
図1に示す、中間層2と、中間層2の第1の面2aに設けられた第1の表面層3と、中間層の第2の面2bに設けられた第2の表面層4とを有する梱包用フィルム1を得る。
【0059】
なお、生産性の観点から、上述のキャストフィルムプロセス法を使用することが好ましいが、本発明の梱包用フィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、インフレーション法を使用してもよい。
【0060】
インフレーション法を使用する場合は、中間層形成用の樹脂混合物と表面層形成用の樹脂混合物を、円形ダイを備えた押出機にて所定の温度で溶融させて、共押し出しによりフィルム状に成形し、当該フィルムを巻取りロールで巻き取ることにより、
図1に示す梱包用フィルム1を得る。
【0061】
また、滑り性を向上させて、梱包用フィルムのブロッキングをより一層防止するとの観点から、梱包用フィルム1の表面(すなわち、表面層3の外表面3a及び表面層4の外表面4aの少なくとも一方)に、凹凸形状を形成してもよい。
【0062】
この凹凸は、エンボス加工等の公知の方法によって形成することができ、例えば、梱包用フィルムの表面に、エンボス処理が施された(すなわち、周面に凹凸形状を有する)エンボスロール(キャストロールや加熱ピンチロール)の周面を密着させることにより、形成することができる。
【0063】
また、フィルムの機械的物性(特に、収縮応力と永久歪み)を調整するとの観点から、梱包用フィルムの機械軸(長手)方向(以下、「MD」という。)及び、MDと直交する方向(以下、「TD」という。)の少なくとも一方向に対して延伸処理を行ってもよい。なお、梱包用フィルムに対して延伸処理を行う場合、一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよい。
【0064】
梱包用フィルムを延伸させる方法としては、例えば、一対のギアでフィルムを挟んで延伸させるギア延伸や、ロールを用いてフィルムを延伸させるロール延伸、クリップでフィルムを掴んでフィルムを延伸させるクリップ延伸等が挙げられるが、生産性の観点から、ギア延伸が好ましい。
【0065】
そして、上述の方法により製造された梱包用フィルム(すなわち、伸長前の梱包用フィルム)は、ヘイズ(HAZE)が10%以下になるため、優れた透明性を得ることが可能になる。
【0066】
また、上述の方法により製造された梱包用フィルムを100%伸長した後は、ヘイズ(HAZE)が25%以下になるため、物品を梱包する際に、梱包用フィルムを伸長した場合であっても、伸長部分の白化を抑制することができるため、優れた透明性を得ることが可能になる。
【0067】
なお、透明性をより一層向上させるとの観点から、伸長前の梱包用フィルムのヘイズは8%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましい。また、同様に、100%伸長後の梱包用フィルムのヘイズは20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。
【0068】
また、ここでいう「ヘイズ」とは、JIS K 7136に準拠して測定され指標のことをいう。
【0069】
また、上述の方法により製造された梱包用フィルムは、MDにおける50%伸長時の応力が5.0MPa以下となるとともに、MDにおける100%伸長時の応力が6.0MPa以下になるため、物品を梱包する際に、弱い力で梱包用フィルムを伸長させることができるため、物品を容易に梱包することが可能になる。
【0070】
なお、MDにおける50%伸長時の応力が4.5MPa以下、MDにおける100%伸長時の応力が5. 0MPa以下であることが好ましく、弱い力で梱包用フィルムを伸長させ、物品を容易に梱包する観点から、MDにおける50%伸長時の応力が4.0MPa以下、MDにおける100%伸長時の応力が4.0MPa以下であることがより好ましい。
【0071】
また、同様に、上述の方法により製造された梱包用フィルムは、TDにおける50%伸長時の応力が4.0MPa以下となるとともに、TDにおける100%伸長時の応力が4.0MPa以下になるため、物品を梱包する際に、弱い力で梱包用フィルムを伸長させることができるため、物品を容易に梱包することが可能になる。
【0072】
なお、弱い力で梱包用フィルムを伸長させ、物品を容易に梱包する観点から、TDにおける50%伸長時の応力が3.5MPa以下、TDにおける100%伸長時の応力が3.5MPa以下であることが好ましい。
【0073】
また、上述の方法により製造された梱包用フィルムは、MD、及びTDにおいて、応力(50%伸長時)と応力(100%伸長時)の差の絶対値が、0.5MPa以下であることが好ましく、0.3MPa未満であることがより好ましい。応力(50%伸長時)と応力(100%伸長時)の差の絶対値が0.5MPa以下であれば、物品を梱包する際に、一定の弱い力で梱包用フィルムを伸長させることができるため、物品を容易に梱包することが可能になる。
【0074】
また、上述の方法により製造された梱包用フィルムは、TDにおける応力(100%伸長時)とMDにおける応力(100%伸長時)の差の絶対値が、2.0MPa未満であることが好ましく、1.0MPa未満であることがより好ましく、0.5MPa未満であることがさらに好ましい。TDにおける応力(100%伸長時)とMDにおける応力(100%伸長時)の差の絶対値が、2.0MPa未満であれば、物品を梱包する際に、梱包用フィルムの等方性が優れるため、物品を容易に梱包することが可能になる。
【0075】
なお、上記「MDにおける50%伸長時の応力」、「MDにおける100%伸長時の応力」、「TDにおける50%伸長時の応力」、及び「TDにおける100%伸長時の応力」は、後述の実施例において記載した方法で求めることができる。
【0076】
また、上述の方法により製造された梱包用フィルムは、永久歪みが25%以下となるため、伸縮性が向上し、梱包される物品の保持性を向上することが可能になる。
【0077】
なお、梱包される物品の保持性をより一層向上させるとの観点から、梱包用フィルムの永久歪みは、20%以下であることがより好ましい。
【0078】
また、ここでいう「永久歪み」とは、以下の方法により算出されるものをいう。
【0079】
梱包用フィルムから、フィルムの一方向に100mm、一方向と直交する方向に25mmの短冊状試験片を切り取り、この試験片を精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフAG-5000A)のつかみ具につかみ具間距離が25mmとなるように固定する。そして、試験片を長手方向に速度254mm/分の条件で、下記式(1)で算出される伸び(伸長倍率)が100%となるように伸長した後、直ちに試験片を同速度にて収縮させる。そして、下記式(2)から永久歪み[%]を算出する。
【0080】
伸び[%]=(L1-L0)/L0×100 (1)
永久歪み[%]=(L2/L0)×100 (2)
【0081】
ただし、L0は、伸長する前のつかみ具間距離(mm)であり、L1は、伸長した後のつかみ具間距離(mm)であり、L2は、収縮させる際に試験片の荷重(N/25mm)が0になる時のつかみ具間距離(mm)である。
【0082】
また、紙基材に対する梱包用フィルムのヒートシール強度を向上させるとの観点から、紙基材に対する梱包用フィルムの剥離強度が、4N/50mm以上であることが好ましく、5N/50mm以上であることがより好ましい。
【0083】
なお、上記「紙基材に対する梱包用フィルムの剥離強度」は、後述の実施例において記載した方法で求めることができる。
【0084】
また、中間層2の厚みは、20~200μmであることが好ましく、30~180μmであることがより好ましい。中間層2の厚みが20μm以上であれば、中間層が含有する熱可塑性エラストマーのゴム弾性の効果が十分に発揮され、梱包用フィルムの伸縮性を向上させることができる。また、中間層の厚みが200μm以下であれば、スリット刃で規定の幅に精度よくスリットすることができるため、フィルムをロール状に巻き取る際にフィルム端部をきれいに巻き取ることができる。
【0085】
また、表面層3,4の厚みは、3~15μmであることが好ましく、5~10μmであることがより好ましい。表面層3,4の厚みが3μm以上であれば、梱包用フィルムの巻き取りを行う際のブロッキングを抑制することが可能になる。また、表面層3,4の厚みが15μm以下であれば、中間層2の厚みを十分に確保することが可能になるため、梱包用フィルムの伸縮性を十分に向上させることが可能になる。
【0086】
また、梱包用フィルム1の厚みは、30~250μmであることが好ましく、40~200μmであることがより好ましい。梱包用フィルム1の厚みが30~250μm以下であれば、梱包用フィルムの伸縮性を向上させことができるとともに、スリット刃で規定の幅に精度よくスリットすることができるため、フィルムをロール状に巻き取る際にフィルム端部をきれいに巻き取ることができる。
【0087】
また、特に、梱包用フィルム全体に対する表面層3,4の厚み比が小さい梱包用フィルム1においても、伸縮性を向上させるとの観点から、表面層3(または表面層4)と中間層2との厚み比が、表面層:中間層=1:3~1:20であることが好ましく、1:5~1:18であることがより好ましい。
【0088】
<梱包用部材>
本発明の梱包用部材は、上述した本発明の梱包用フィルム1と、梱包用フィルムの表面層3(または表面層4)が、例えば、熱溶着や糊接着等で取り付けられた基材とを備えるものである。
【0089】
そして、梱包用部材は、表面層と基材が取り付けられた取付部と、表面層と基材が取り付けられていない未取付部とを備えており、未取付部における基材と梱包用フィルムとの間に物品を挿入して収容し、基材と梱包用フィルムとの間で物品を挟持することにより、物品を梱包する構成となっている。
【0090】
なお、基材としては、例えば、紙基材、樹脂シート、及び不織布等が挙げられ、紙基材を使用することが好ましい。また、強度を向上させるとの観点から、段ボール板や厚紙がより好ましく、段ボール板がさらに好ましい。
【0091】
また、基材の形状としては、長方形状、正方形状、円形状、楕円形状等が挙げられるが、これらの形状に限定されず、梱包する物品の形状や梱包容器の形状に対応して、適宜、選択することができる。
【0092】
また、梱包用部材を製造する方法としては、例えば、基材と、梱包用フィルムの表面層とを接触させた状態で積層し、梱包用フィルムの周縁部を加熱することにより、梱包用フィルムの周縁部を基材に熱溶着し、表面層と基材が取り付けられた取付部と、表面層と基材が取り付けられていない未取付部とを備えた梱包用部材を製造する方法が挙げられる。
【0093】
また、梱包用部材は、物品を輸送する際に、紙や樹脂により形成された箱や袋(例えば、段ボール箱)等の梱包容器に収容された状態で使用される。
【実施例0094】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0095】
梱包用フィルムの製造に使用した材料を以下に示す。
【0096】
(1)プロピレン系エラストマー1(ExxonMobil社製、商品名:Vistamaxx(登録商標)3588FL、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン単位含有率:4質量%、密度:0.889g/cm3、MFR(230℃):8.0g/10分)
(2)プロピレン系エラストマー2(ExxonMobil社製、商品名:Vistamaxx(登録商標)6102FL、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン単位含有率:16質量%、密度:0.862g/cm3、MFR(230℃):3.0g/10分)
(3)LDPE:低密度ポリエチレン(Braskem製、商品名:SBC818、バイオマス度:95%、密度:0.918g/cm3、MFR(190℃):8.3g/10分)
(4)滑剤:エルカ酸アマイド含有マスターバッチ(理研ビタミン社製、商品名:リケマスターELM080、密度:0.919g/cm3)
(5)極性付与剤1:分子内に無水カルボン酸構造を有するポリプロピレン(三洋化成工業社製、商品名:ユーメックス1001、融点:142℃、酸価:26mgKOH/g、密度:0.95g/cm3)
(6)極性付与剤2:分子内に無水カルボン酸構造を有するポリオレフィン系樹脂(三洋化成工業社製、商品名:ユーメックス5500、融点:123℃、酸価:17mgKOH/g、密度:0.918g/cm3)
(7)R-PP:ランダムポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名:プライムポリプロF227、融点:152℃、密度:0.910g/cm3、MFR:8.0g/10分)
(8)ポリオレフィン系エラストマー(Dow Chemical社製、商品名:Affinity PL 1880G、エチレン-オクテン共重合体、密度:0.902g/cm3、MFR:1.0g/10分)
(9)オレフィンブロック共重合体(Dow Chemical社製、商品名:INFUSE9100、エチレン/オクテンブロック共重合体、密度:0.877g/cm3、MFR:1.0g/10分)
【0097】
(実施例1)
<梱包用フィルムの製造>
まず、表1に示す各材料を混合して、表1に示す組成(質量部)を有する実施例1の中間層形成用の材料と表面層(第1の表面層、及び第2の表面層)形成用の材料を用意し、中間層形成用樹脂混合物と表面層形成用樹脂混合物とを得た。
【0098】
次に、Tダイを備えた押出機(三菱重工社製)を用い、中間層形成用樹脂混合物および表面層形成用樹脂混合物を200℃で押出成形し、キャストフィルムプロセス法によって、中間層と、中間層の第1の面に設けられた第1の表面層と、中間層の第2の面に設けられた第2の表面層とを有する3層構造のフィルムを成形し、当該フィルムを25℃のチルロールに密着させて、冷却することにより、梱包用フィルムを得た。なお、製造した梱包用フィルムの厚み、及び中間層と表面層の厚みを表1に示す。
【0099】
また、表面層(第1の表面層)全体に対するプロピレン系エラストマー中のエチレン単位の含有量の合計(質量部)と、表面層(第2の表面層)全体に対するプロピレン系エラストマー中のエチレン単位の含有量の合計(質量部)を表1に示す。
【0100】
なお、本実施例の第1の表面層(または第2の表面層)においては、第1の表面層(または第2の表面層)100質量部に対して、プロピレン系エラストマー1(エチレン単位含有率:4質量%)を87質量部含有するため、表面層(第1の表面層、または第2の表面層)全体に対するプロピレン系エラストマー中のエチレン単位の含有量の合計(質量部)は、87×0.04=3.48質量部(すなわち、第1の表面層全体(または第2の表面層全体)に対するプロピレン系エラストマー中のエチレン単位の含有量の合計が、表面層100質量%のうち、3.48質量%)となる。
【0101】
<チルロールのベタつき評価>
上述のキャストフィルムプロセス法によって、中間層と、中間層の第1の面に設けられた第1の表面層と、中間層の第2の面に設けられた第2の表面層とを有する3層構造のフィルムを成形し、当該フィルムを25℃のチルロールに密着させて、冷却する際に、以下の基準に従い、チルロールのベタつきを評価した。以上の結果を表1に示す。
【0102】
チルロールに貼りつくことなく、フィルムを製造できる:ベタつきなし
チルロールに貼りつき、フィルムを製造できない、または製造が困難である:ベタつきあり
【0103】
<永久歪みの測定>
製造した梱包用フィルムから、フィルムの一方向に100mm、一方向と直交する方向に25mmの短冊状試験片を切り取り、この試験片を精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフAG-5000A)のつかみ具につかみ具間距離が25mmとなるように固定した。そして、試験片を長手方向に速度254mm/分の条件で、上記式(1)で算出される伸び(伸長倍率)が100%となるように伸長した後、直ちに試験片を同速度にて収縮させた。そして、上記式(2)から、MD、及びTDにおける永久歪み[%]を算出した。なお、試験は、室温(23℃±2℃)で行った。以上の結果を表1に示す。
【0104】
<ヘイズの測定>
濁度計(日本電色社製、商品名:ヘーズメーター NDH-5000)を用いて、JIS K 7136に準拠して、製造した梱包用フィルム(伸長前の梱包用フィルム)のヘイズ[%]を測定した。なお、ヘイズの測定を6回行い、6回分のヘイズの平均値を算出し、製造した梱包用フィルムのヘイズ[%]とした。以上の結果を表1に示す。
【0105】
また、製造した梱包用フィルムから、フィルムの一方向に50mm、一方向と直交する方向に100mmの短冊状試験片を切り取り、この試験片を精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフAG-5000A)のつかみ具につかみ具間距離が25mmとなるように固定した。そして、MDにおいて、試験片を長手方向に速度254mm/分の条件で、上記式(1)で算出される伸び(伸長倍率)が100%となるように伸長した後、直ちに試験片を同速度にて収縮させた。
【0106】
そして、濁度計(日本電色社製、商品名:ヘーズメーター NDH-5000)を用いて、JIS K 7136に準拠して、MDにおける100%伸長後の梱包用フィルムのヘイズ[%]を測定した。なお、ヘイズの測定を3回行い、3回分のヘイズの平均値を算出し、製造した梱包用フィルムのヘイズ[%]とした。以上の結果を表1に示す。
【0107】
<延伸方向(MD)における50%伸長時の応力の測定>
MDにおけるヒステリシス試験において、製造した梱包用フィルムをTDに25mm、MDに100mm切り出した試験片を用意し、チャック間距離が25mm、試験速度が254mm/minの条件にて、チャック間が50mm(100%)まで試験片をMDに延伸し、その状態を保持せずにチャック間距離を25mmへ戻した。そして、チャック間50mm(100%)まで試験片をMDに延伸する途中のチャック間距離が37.5mmの時(50%伸長時)のMDの応力[MPa]を、精密万能試験機(島津製作所社製、商品名:オートグラフAG-5000A)を用いて測定した。以上の結果を表1に示す。
【0108】
<延伸方向と直交する方向(TD)における50%伸長時の応力>
TDにおけるヒステリシス試験において、製造した梱包用フィルムをMDに25mm、TDに100mm切り出した試験片を用意し、チャック間距離が25mm、試験速度が254mm/minの条件にて、チャック間が50mm(100%)まで試験片をTDに延伸し、その状態を保持せずにチャック間距離を25mmへ戻した。そして、チャック間50mm(100%)まで試験片をTDに延伸する途中のチャック間距離が37.5mmの時(50%伸長時)のTDの応力[MPa]を、精密万能試験機(島津製作所社製、商品名:オートグラフAG-5000A)を用いて測定した。以上の結果を表1に示す。
【0109】
<延伸方向(MD)における100%伸長時の応力>
MDにおけるヒステリシス試験において、製造した梱包用フィルムをTDに25mm、MDに100mm切り出した試験片を用意し、チャック間距離が25mm、試験速度が254mm/minの条件にて、チャック間が50mm(100%)まで試験片をMDに延伸し、その状態を保持せずにチャック間距離を25mmへ戻した。そして、チャック間距離が50mmの時(100%伸長時)のMDの応力[MPa]を、精密万能試験機(島津製作所社製、商品名:オートグラフAG-5000A)を用いて測定した。以上の結果を表1に示す。
【0110】
<延伸方向と直交する方向(TD)における100%伸長時の応力>
TDにおけるヒステリシス試験において、製造した梱包用フィルムをMDに25mm、TDに100mm切り出した試験片を用意し、チャック間距離が25mm、試験速度が254mm/minの条件にて、チャック間が50mm(100%)まで試験片をTDに延伸し、その状態を保持せずにチャック間距離を25mmへ戻した。そして、チャック間距離が50mmの時(100%伸長時)のTDの応力[MPa]を、精密万能試験機(島津製作所社製、商品名:オートグラフAG-5000A)を用いて測定した。以上の結果を表1に示す。
【0111】
<剥離強度の測定>
温度が180℃、圧力が0.15MPaの条件で、ヒートシールにより、製造した梱包用フィルムを紙基材に熱溶着し、梱包用部材を製造した。
【0112】
次に、得られた梱包用部材における、紙基材に対する梱包用フィルムのヒートシール強度を評価した。より具体的には、梱包用部材から幅50mm、長さ100mmの試験片を切り出し、引張試験機(島津製作所社製、商品名:オートグラフAG-5000A)を用いて、測定温度が23℃、引張速度が200mm/分の条件にて、試験片に対して180°剥離を行い、紙基材に対する梱包用フィルムの剥離強度[N/50mm]を測定した。
【0113】
そして、剥離強度が4N/50mm以上の場合を、紙基材に対する梱包用フィルムのヒートシール強度が優れていると評価した。以上の結果を表1に示す。
【0114】
(実施例2~10、比較例1~3)
梱包用フィルムの組成(質量部)を表1~2に示す条件に変更したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、表1~2に示す厚みを有する梱包用フィルムを製造した。
【0115】
そして、上述の実施例1と同様にして、チルロールのベタつき評価、永久歪みの測定、ヘイズの測定、応力の測定、及び剥離強度の測定を行った。以上の結果を表1~2に示す。
【0116】
なお、比較例2~3においては、チルロールのベタつき(エラストマーの特性に起因する表面層のベタつき)があったため、永久歪みの測定、ヘイズの測定、応力の測定、及び剥離強度の測定を行うことができなかった。
【0117】
(比較例4)
<梱包用フィルムの製造>
梱包用フィルムの組成(質量部)を表2に示す条件に変更し、押出機をLabtech社製に変更したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、表2に示す厚みを有する梱包用フィルムを製造した。
【0118】
そして、上述の実施例1と同様にして、チルロールのベタつき評価、永久歪みの測定、ヘイズの測定、応力の測定、及び剥離強度の測定を行った。以上の結果を表2に示す。
【0119】
【0120】
【0121】
表1に示すように、実施例1~10の梱包用フィルムにおいては、表面層の全体に対するプロピレン系エラストマー(プロピレン系エラストマー1~3)の含有量が45質量%以上95質量%以下であり、表面層の全体に対するプロピレン系エラストマー中のエチレン単位の含有量の合計が1質量%以上7質量%未満であるため、MD、及びTDにおける伸長時の応力が小さく、物品を梱包する際に、弱い力で梱包用フィルムを伸長させることができることが分かる。また、伸長後のヘイズ(HAZE)が25%以下であるため、物品を梱包する際に、梱包用フィルムを伸長した場合であっても、伸長後の伸長部分の白化を抑制することができ、透明性に優れていることが分かる。また、エラストマーの特性に起因するベタつきを防止することができることが分かる。また、剥離強度が4N/50mm以上であるため、紙基材に対する梱包用フィルムのヒートシール強度が優れていることが分かる。
【0122】
一方、表2に示すように、比較例1の梱包用フィルムにおいては、表面層(第1の表面層)がプロピレン系エラストマーを含有しておらず、ランダムポリプロピレンを含有しているため、伸長後のヘイズ(HAZE)が非常に大きく(84.6%)なっており、物品を梱包する際に、梱包用フィルムを伸長すると、伸長部分の白化が発生し、透明性に乏しいことが分かる。
【0123】
また、比較例2の梱包用フィルムにおいては、表面層の全体に対するプロピレン系エラストマー(プロピレン系エラストマー3)の含有量が95質量%よりも大きく、表面層の全体に対するプロピレン系エラストマー中のエチレン単位の含有量の合計が6質量%よりも大きいため、上述のごとく、チルロールのベタつき(エラストマーの特性に起因する表面層のベタつき)が発生していることが分かる。
【0124】
また、比較例3においては、表面層の全体に対するプロピレン系エラストマー中のエチレン単位の含有量の合計が6質量%よりも大きいため、上述のごとく、チルロールのベタつき(エラストマーの特性に起因する表面層のベタつき)が発生していることが分かる。
【0125】
また、比較例4においては、表面層がプロピレン系エラストマーを含有しておらず、表面層(第2の表面層)がエチレン-オクテン共重合体を含有しているため、MD、及びTDにおける伸長時の応力が大きく、物品を梱包する際に、弱い力で梱包用フィルムを伸長させることが困難であることが分かる。
【0126】
また、比較例4においては、極性付与剤を含有していないため、剥離強度が4N/50mm未満となっており、紙基材に対する梱包用フィルムのヒートシール強度に乏しいことが分かる。