(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106289
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】自閉スペクトラム症の改善剤、この改善剤を含有する飲食品及び香料並びにこの改善剤を投与するための機器
(51)【国際特許分類】
A61K 31/015 20060101AFI20240731BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240731BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240731BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240731BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240731BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240731BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240731BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240731BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240731BHJP
【FI】
A61K31/015
A61P25/00
A61K9/72
A61K9/08
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010567
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(71)【出願人】
【識別番号】390019460
【氏名又は名称】稲畑香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】謝 敏▲かく▼
(72)【発明者】
【氏名】財満 信宏
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 百合
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD07
4B018MD61
4B018ME14
4B117LC04
4B117LG18
4B117LK06
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB27
4C076CC01
4C076EE51
4C076EE56
4C076FF02
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA04
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA72
4C206MA75
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA18
(57)【要約】
【課題】自閉スペクトラム症の改善剤、この改善剤を含有する飲食品及び香料並びにこの改善剤を投与するための機器を提供する。
【解決手段】本発明は、βカリオフィレン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を有効成分として含有する自閉スペクトラム症の症候改善剤、この改善剤を含有する飲食品及び香料が、吸入投与、経口投与又は非経口投与によって投与され、吸入投与におけるカリオフィレンの有効濃度が1mg/kg以上、望ましくは6~3600mg/kgである、自閉スペクトラム症の症候改善剤、この改善剤を含有する飲食品及び香料並びにこの改善剤を投与するための機器である。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
βカリオフィレン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を有効成分として含有する、自閉スペクトラム症(ASD)の改善剤。
【請求項2】
前記自閉スペクトラム症が、N-エチルマレイミド感受性融合タンパク質(NSF)の発現減少によってモデル化される、請求項1に記載の改善剤。
【請求項3】
吸入投与、経口投与又は非経口投与によって投与される、請求項1に記載の改善剤。
【請求項4】
前記吸入投与におけるβカリオフィレンの有効濃度が1mg/kg以上である、請求項3に記載の改善剤。
【請求項5】
前記吸入投与におけるβカリオフィレンの有効濃度が6~3600mg/kgである、請求項3に記載の改善剤。
【請求項6】
香料、アロマオイル、におい袋、線香、タバコ、および電子タバコからなる群より選択される少なくとも1種に含めるために使用される、請求項4又は5に記載の改善剤。
【請求項7】
請求項1乃至3に記載の改善剤を含有する飲食品。
【請求項8】
請求項1乃至5に記載の改善剤を投与するための機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリオフィレンを含有する自閉スペクトラム症の改善剤に関する。より詳しくは、自閉スペクトラム症の症候改善剤、この改善剤を含有する飲食品及び香料並びにこの改善剤を投与するための機器に関する。
【背景技術】
【0002】
自閉スペクトラム症(Autism spectrum disorder:ASD)は、社会的コミュニケーションの障害、限定・反復された行動・興味、感覚過敏や感覚鈍麻を示す神経発達症の一種でコミュニケーション能力や社会性、想像性に障害が認められる。米国CDCの2016年の調査では54人に1人が自閉スペクトラム症と報告されており、全世界で有病率は2%程度とされ、頻度の高い神経発達症である。発症は、圧倒的に男児に多く、およそ3歳までに症状が明らかとなり、生涯にわたって障害が続く。
【0003】
自閉スペクトラム症は、2013年より米国精神医学会によって導入されたDSM-5の診断基準によれば、以前には早期幼児自閉症、カナー型自閉症、高機能自閉症、非定型自閉症、特定不能の広汎性発達障害、小児期崩壊性障害、およびアスペルガー障害と呼ばれていた障害を包括するものである。対人的相互関係、対人的相互反応で用いられる非言語的コミュニケーション行動、及び人間関係を発展・維持、および理解する能力などの欠陥を含み、さまざまな状況における社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応の持続的な欠陥によって特徴づけられる。このため、自閉スペクトラム症の診断は、主として、その基本的特徴である「持続する相互的な社会的コミュニケーションや対人的相互反応の障害」(診断基準A)、および「限定された反復的な行動、興味、または活動の様式」(診断基準B)等に基づいて判断される。これらの症状は幼児期早期から認められ、日々の活動を制限するか障害する(診断基準CとD)。機能的な障害が明らかとなる局面は、個々の特性や環境によって異なる。主要な診断的特徴は発達期の間に明らかとなるが、治療的介入、代償、および現在受け入れている支援によって、少なくともいくつかの状況ではその困難が隠されている可能性がある。障害の徴候もまた、自閉症状の重症度、発達段階、暦年齢によって大きく変化するので、それゆえに「スペクトラム」という単語で表現される(非特許文献1)。
【0004】
自閉スペクトラム症の発症メカニズムは明らかになっておらず、生物学的診断法および根治的治療法は未だ確立されていない。薬物療法では主に、1)精神刺激薬、2)抗精神病薬、3) 非定型抗精神病薬、4)抗うつ薬、5)抗不安薬、6)抗てんかん薬、7)抗ヒスタミン薬、8)循環器用薬、9)その他(漢方薬など)が使用される。しかしながら、診断後の教育と家族に対する養育方法の指導が現在の有効な治療法とされている。
【0005】
自閉スペクトラム症の症候を説明する説のひとつに「セロトニン仮説」がある。これは、1)おおよそ1/3の自閉スペクトラム症者において、血中セロトニン濃度が上昇する高セロトニン血症が報告されていること、2)胎児の脳の発生過程において、セロトニンは、神経細胞の成熟、形態、活性、およびシナプスの可塑性に影響を与えること、3)セロトニンは自閉スペクトラム症の症状と関連がある社会性、攻撃性および不安などに影響を及ぼすことから提唱されている仮説である。
【0006】
血中のセロトニンの濃度は、主にセロトニントランスポーター(以下、SERTと称する)によって調節されている。従って、自閉スペクトラム症者ではSERTが正常に働いていない可能性がある。研究者により、高機能自閉症者の脳内のSERTがポジトロン断層法により解析された結果、定型発達者に比べ、自閉症者の脳内で広範囲にわたってSERTの機能が低下していることが明らかになり、これが「セロトニン仮説」を強く支持するものとなった。
【0007】
発明者らは、自閉スペクトラム症者の死後脳と、自閉スペクトラム症者のリンパ球を用いてSERTの遺伝子発現を解析した結果、SERTの遺伝子発現自体には異常がないことを明らかにした。一方で、SERTに結合しSERTの機能を調節する分子がいくつか知られており、上述の結果から、自閉スペクトラム症者でのSERT機能低下には、このような分子が関与している可能性が考えられた。
【0008】
発明者らは、SERTに結合する分子を同定し、自閉スペクトラム症者での動態を検討した。これまでの研究では、酵母を使っていることが多く、ヒトの脳における機能に結び付けることが困難であった。そこで発明者らは、哺乳類の脳内で実際にSERTと結合している分子を得るために、マウスの脳を用いたpull-down法、それに続く質量分析を行なった。その結果、新規のSERT結合分子としてN-エチルマレイミド感受性融合タンパク質(以下、NSFと称する)を同定した。さらに、SERTを安定的に発現させた細胞においてNSFの発現を減少させると、SERTの細胞膜での発現が減少すること、また、SERTの取り込み機能が減少することを明らかにした。
【0009】
次に、自閉スペクトラム症者のNSF発現の変化について確認するために、発明者らは、上述の死後脳と末梢血リンパ球を用いて自閉スペクトラム症者におけるNSFの発現を解析した。その結果、NSFの遺伝子発現は自閉スペクトラム症者の死後脳では減少傾向が、末梢血リンパ球では有意な減少がそれぞれ確認された。これらのことから、自閉スペクトラム症者ではNSFが減少し、その結果SERTの膜移行が滞り、機能低下が起こっていることが示唆された。
【0010】
以上の結果を生体内で検討するため、また同時にモデル動物確立のため、発明者らはNSFのノックアウトマウスの作製をおこなった。このヘテロノックアウトマウスは自閉スペクトラム症様の行動異常やSERT機能の低下を示すことが確認されたため、自閉スペクトラム症治療薬の候補である薬剤を投与し、行動異常やSERT機能が改善するかを検討した。
【0011】
カリオフィレンの一種であるβカリオフィレン(β-caryophyllene:BCP)は、植物性カンナビノイドで、カンナビノイド受容体2(CB2R)を介して作用を発揮することが知られている(非特許文献2)。
【0012】
特許文献1には、βカリオフィレンを含有する組成物、この組成物の製造方法、及び精神病(統合失調症)の治療にβカリオフィレンを用いる方法、カンナビノイド受容体2アゴニストを含有する組成物、この組成物の製造方法、及び精神病(統合失調症)の治療にカンナビノイド受容体2を用いる方法の発明が開示されており、特許が成立している。
しかし、βカリオフィレンが広汎性発達障害とされる自閉スペクトラム症の症候を改善することについては一切開示されていない。
【0013】
特許文献2は、シリコン微粒子を含有する自閉スペクトラム症を予防又は治療剤、医薬組成物、医療機器、食品又は飲料が開示されている。しかし、特許文献2の発明は、水と接することで水素を発生し得るシリコンを含有する微粒子を、経口投与又は皮膚もしくは粘膜上に留置することで、発生した水素により自閉スペクトラム症を予防又は治療するものであり、シリコン粒子という媒体なしには成立しない発明と云える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特願2015-501032号公報
【特許文献2】特願2019-212971号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「DSM-5(登録商標) 精神疾患の診断・統計マニュアル」31-32頁、49-57頁、日本語版用語監修 日本精神神経学会、株式会社医学書院発行、2015年2月15日第1版第4刷
【非特許文献2】Antonio Ortega-Alvaro, Auxiliadora Aracil-Ferna‘ndez, Maria S Garcia-Gutie’rrez, Francisco Navarrete and Jorge Manzanares Deletion of CB2 Cannabinoid Receptor Induces Schizophrenia-Related Behaviors in Mice Neuropsychopharmacology (2011) 36, 1489-1504
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述のように、自閉スペクトラム症の根治的な治療薬は、国内外を問わず知られていないのが現状である。
βカリオフィレンは、既に我が国の厚生労働省、米国の食品医薬品局により食品添加物として認められていることから、本発明は、自閉スペクトラム症モデル動物に対するβカリオフィレンの有効性が確認されたことにより、自閉スペクトラム症者を対象とする症候改善剤、この改善剤を含有する飲食品、及び香料並びにこの改善剤を投与するための機器として自閉スペクトラム症の症候改善手段を提供することを目的とする。
【0017】
本発明者らは、鋭意研究の結果、βカリオフィレンまたは、カリオフィレン代謝物及び誘導体が、自閉スペクトラム症の症候を改善する作用効果を有することを見出した。
すなわち、本発明者らは、従来からの課題を解決した、カリオフィレンを有効成分として含有する自閉スペクトラム症の症候改善剤、この改善剤を含有する飲食品、及び香料並びにこの改善剤を投与するための機器を初めて開発した。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に係る発明は、βカリオフィレン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を有効成分として含有する、自閉スペクトラム症(ASD)の症候改善剤に関する。
【0019】
請求項2に係る発明は、自閉スペクトラム症が、N-エチルマレイミド感受性融合タンパク質(NSF)の発現減少によってモデル化される、請求項1に記載の改善剤に関する。
【0020】
請求項3に係る発明は、吸入投与、経口投与又は非経口投与によって投与される、請求項1に記載の改善剤に関する。
【0021】
請求項4に係る発明は、前記吸入投与におけるβカリオフィレンの有効濃度が1mg/kg以上である、請求項3に記載の改善剤に関する。
【0022】
請求項5に係る発明は、前記吸入投与におけるβカリオフィレンの有効濃度が6~3600mg/kgである、請求項3に記載の改善剤に関する。
【0023】
請求項6に係る発明は、香料、アロマオイル、におい袋、線香、タバコ、および電子タバコからなる群より選択される少なくとも1種に含めるために使用される、請求項4又は5に記載の改善剤に関する。
【0024】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至3に記載の改善剤を含有する飲食品に関する。
【0025】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至5に記載の改善剤を投与するための機器に関する。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に係る発明によれば、βカリオフィレン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を有効成分として含有する、自閉スペクトラム症の症候改善剤であるため、容易かつ効率的に自閉スペクトラム症者の症候に対して改善効果を発揮することができる。
【0027】
請求項2に係る発明によれば、自閉スペクトラム症が、N-エチルマレイミド感受性融合タンパク質(NSF)の発現減少によってモデル化される、請求項1又は2に記載の改善剤であるため、NSFの発現減少を防止することにより、自閉スペクトラム症の症候に対する改善効果を有する。
【0028】
請求項3に係る発明によれば、吸入投与、経口投与又は非経口投与によって投与される、請求項1に記載の改善剤であるため、被験体に容易に投与することができる。
【0029】
請求項4に係る発明によれば、前記吸入投与におけるβカリオフィレンの有効濃度が1mg/kg以上である請求項3に記載の改善剤であるため、有効濃度の範囲で確実に自閉スペクトラム症の症候に対する改善効果を発揮することができる。
【0030】
請求項5に係る発明によれば、前記吸入投与におけるβカリオフィレンの有効濃度が6~3600mg/kgである請求項3に記載の改善剤であるため、有効濃度の範囲で確実に自閉スペクトラム症の症候に対する改善効果を発揮することができる。
【0031】
請求項6に係る発明によれば、香料、アロマオイル、におい袋、線香、タバコ、および電子タバコからなる群より選択される少なくとも1種に含めるために使用される、請求項4又は5に記載の改善剤であるため、様々な製品に添加して自閉スペクトラム症の症候に対して改善効果を発揮することができる。
【0032】
請求項7に係る発明によれば、請求項1乃至3に記載の改善剤を含有する飲食品であるため、自閉スペクトラム症の症候に対して改善効果を有する飲食品を得ることができる。
【0033】
請求項8に係る発明によれば、請求項1乃至5に記載の改善剤を投与するための機器であるため、自閉スペクトラム症の症候に対して改善効果を有する機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】コントロールマウス(3)及び自閉スペクトラム症モデルマウス(3)(NSFヘテロノックアウトマウス)に、経鼻的または経肺的にβカリオフィレンを投与するための実験系を示す図である。三角フラスコ(1)のフタの内側にβカリオフィレンを含侵させた脱脂綿(2)を装着することで、三角フラスコ(1)内のマウス(3)は気化されたβカリオフィレンに曝露され、βカリオフィレンを経鼻的または経肺的に吸収する。
【
図2】コントロールマウス及び自閉スペクトラム症モデルマウスに、βカリオフィレンを曝露させ1時間経過時の、オープンフィールド(OF)テストによる運動量及び常同行動の変化を示す図であり、(a)は各群における運動量(cm)、(b)は常同行動(回数)を比較した棒グラフである。
【
図3】コントロールマウス及び自閉スペクトラム症モデルマウスに、βカリオフィレンを曝露させ2時間経過後の、オープンフィールド(OF)テストによる運動量及び常同行動の変化を示す図であり、(a)は各群における運動量(cm)、(b)は常同行動(回数)を比較した棒グラフである。
【
図4】コントロールマウス(3)及び自閉スペクトラム症モデルマウス(3)に、βカリオフィレンを暴露させた後におこなった、スリーチャンバー(3chamber)テストの説明図である。 このテストは、20×40センチほどのボックスが3つ一直線に繋がれた装置内に被検体のマウス(3)を入れておこなう。3つの小部屋はマウス(3)が通れるように一部が開放されており、中央の部屋から両端へそれぞれ移動することができる。両端の小部屋にはそれぞれ表面が格子状のかごが置かれ、右の小部屋のかごには他のマウス(3)を1匹入れておく。被検体のマウス(3)が社会性を持つ場合、左の小部屋に置かれた空のかごよりも右の小部屋に置かれた他のマウス(3)入りのかごに興味を示し、右の小部屋を比較的長時間探索すると考えられることから、この時間を指標に評価をおこなう。
【
図5】コントロールマウス及び自閉スペクトラム症モデルマウスに、βカリオフィレンを曝露させ2時間経過後の、スリーチャンバーテストによる左右それぞれの小部屋を探索した時間(秒)を比較した図であり、左の小部屋、右の小部屋それぞれを探索した時間を示した棒グラフである。
【
図6】自閉スペクトラム症モデルマウスに、それぞれ5、50、500μLのβカリオフィレンを曝露させ1時間経過時の、オープンフィールド(OF)テストによるβカリオフィレンの有効濃度を検討した結果を示す図であり、(a)は各群における運動量(cm)、(b)は常同行動(回数)を比較した棒グラフである。
【
図7】自閉スペクトラム症モデルマウスに、それぞれ5、50、500μLのβカリオフィレンを曝露させ2時間経過後の、オープンフィールド(OF)テストによるβカリオフィレンの有効濃度を検討した結果を示す図であり、(a)は各群における運動量(cm)、(b)は常同行動(回数)を比較した棒グラフである。
【
図8】自閉スペクトラム症モデルマウスに、それぞれ5、50、500μLのβカリオフィレンを曝露させ2時間経過後の、スリーチャンバーテストによるβカリオフィレンの有効濃度を検討した結果を示す図であり、左の小部屋、右の小部屋それぞれを探索した時間(秒)を示した棒グラフである。
【
図9】
図2、3、5、6、7及び8の結果をまとめた一覧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る自閉スペクトラム症の症候改善剤の好適な実施形態について説明する。
【0036】
本明細書において、自閉スペクトラム症及びその症候とは、N-エチルマレイミド感受性融合タンパク質(NSF)の発現減少によりモデル化されるがこれに限定されず、自閉スペクトラム症の症候として当業者が一般的に認識するあらゆる種類の症候を含む。
【0037】
本明細書において、自閉スペクトラム症の症候改善とは、社会的相互作用の低下及び常同行動が改善されることを含む。また、当業者が自閉スペクトラム症と認識する一般的な症候を広く含み、症候改善の生理学的又は化学的なメカニズムは、特定のものに限定されない。
【0038】
本発明の自閉スペクトラム症の症候改善剤は、カリオフィレンを有効成分として含有する。該カリオフィレンは、β-カリオフィレン(BCP)、αフムレン(αカリオフィレン)、イソカリオフィレン及びカリオフィレンオキシドからなる群から選択される1種以上の化合物である。
【0039】
βカリオフィレンは、CAS番号87-44-5であって、下式(化1)に示す構造を有している。
【0040】
【0041】
βカリオフィレン(β-caryophyllene)等のカリオフィレンは、多くの精油の成分の天然の二環式のセスキテルペンで、特にチョウジノキ(Syzygium aromaticum、クローブ)の茎や花から採れるクローブオイル、アサ(Cannabis sativa)、ローズマリー、ホップに含まれる。通常、イソカリオフィレン(シス型二重結合異性体)やαフムレン(別名α-カリオフィレン)と混合して含まれる。
【0042】
本発明の自閉スペクトラム症の症候改善剤には、βカリオフィレンの他、αフムレン(αカリオフィレン)、イソカリオフィレン及びカリオフィレンオキシドを有効成分とするものを用いてもよい。
βカリオフィレン、αフムレン(αカリオフィレン)、イソカリオフィレン及びカリオフィレンオキシドはクローブリーフオイルの根茎及び/又はブラックペッパーの果実から、水蒸気蒸留、ヘキサン抽出、酢酸エチル抽出又はCO2抽出によって好適に抽出される。
【0043】
βカリオフィレン、αフムレン(αカリオフィレン)、イソカリオフィレン及びカリオフィレンオキシドは、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
βカリオフィレン、αフムレン(αカリオフィレン)、イソカリオフィレン及びカリオフィレンオキシドを混合して使用する場合、その混合比率は特に限定されず、例えば1:99~99:1の間等、任意の比率で混合して用いることができる。
下記実施例で詳述するように、βカリオフィレン、αフムレン(αカリオフィレン)、イソカリオフィレン及びカリオフィレンオキシドは、自閉スペクトラム症の症候を改善する作用効果を有しているので、これらを有効成分として含有する本発明の改善剤は、医薬用途を含む、各種用途に使用することができる。
【0044】
例えば、本発明にかかる改善剤を医薬製剤として用いる場合、哺乳動物(特に、ヒト)における自閉スペクトラム症の症候改善薬として用いられる。
【0045】
自閉スペクトラム症の症候を改善するための医薬組成物は、慣用されている方法により錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、注射剤、軟膏剤、点鼻剤、バップ剤、ローション剤等の医薬製剤に製剤化することができる。
【0046】
製剤化に通常使用される賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、および必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤などを使用することができ、一般に医薬製剤の原料として使用される成分および配合量を適宜選択して定法により製剤化される。
【0047】
自閉スペクトラム症の症候を改善するための医薬組成物を含む医薬製剤を投与する場合、吸入投与、経口投与、及び非経口投与等、通常使用される方法であれば、その形態は特に限定されない。
医薬製剤の投与量は、症状の程度、年齢、性別、体重、投与形態等に応じて、製剤学的な有効量を適宜選択することができる。
投与量の一例を挙げると、吸入投与または経口投与の場合、通常、成人において、有効成分量として1mg/kg以上、望ましくは6~3600mg/kg程度が適当であり、これを1日1回~数回に分けて投与すれば良い。
【0048】
また、本発明の改善剤は、必ずしも医薬用途ではなくとも、食品、飲料、香料等、経口的または経鼻的もしくは経肺的な摂取に関わる様々な製品に使用することができる。
【0049】
本発明に係る自閉スペクトラム症の症候を改善するための食品には、例えば清涼飲料水、乳製品(加工乳、ヨーグルト)、菓子類(ゼリー、チョコレート、ビスケット、ガム、錠菓)またはサプリメント等の各種の食品または健康食品が挙げられるが、これらに限定されない。尚、本明細書において、健康食品とは、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指し、機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品も包含する概念である。
【0050】
食品中におけるカリオフィレンの添加量については、特に限定されず、食品の種類に応じて適宜決定すれば良い。有効成分量が6~3600mg/kgの範囲となるように添加すれば良い。
【0051】
本発明に係る自閉スペクトラム症の症候を改善するための食品は、他の成分として、賦形剤、呈味剤、着色剤、保存剤、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、酸化防止剤等を含有しても良い。
このうち、賦形剤としては、これらに限定されないが、例えば、微粒子二酸化ケイ素のような粉末類、ショ糖脂肪酸エステル、結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム、リン酸水素カルシウム、小麦デンプン、米デンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、シクロデキストリン等のでんぷん類、結晶セルロース類、乳糖、ブドウ糖、砂糖、還元麦芽糖、水飴、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、マルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖などの糖類、ソルビトール、エリストール、キシリトール、ラクチトール、マンニトール等の糖アルコール類が挙げられる。これらの賦形剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用することができる。
【0052】
呈味剤としては、例えば、果汁エキスであるボンタンエキス、ライチエキス、リンゴ果汁、オレンジ果汁、ゆずエキス、ピーチフレーバー、ウメフレーバー、甘味剤であるアセスルファムK、スクラロース、エリストール、オリゴ糖類、マンノース、キシリトール、異性化糖類、茶成分である緑茶、ウーロン茶、バナバ茶、杜仲茶、鉄観音茶、ハトムギ茶、アマチャヅル茶、マコモ茶、昆布茶、およびヨーグルトフレーバー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
また、本発明の改善剤は、飲料に添加してもよい。飲料としては、オレンジ、リンゴ、グレープ、ピーチ、パッションフルーツ、ウメなどの果汁入りジュース、緑茶、ウーロン茶、バナバ茶、杜仲茶、鉄観音茶、ハトムギ茶、アマチャヅル茶、マコモ茶、昆布茶などの茶類、コーヒー、ココア、乳酸菌飲料、乳飲料、ビール、ウイスキー、チューハイ、各種カクテルなどのアルコール系飲料が挙げられるがこれらに限定されない。
【0054】
本発明の改善剤は、香り成分として直接吸入することにより摂取することもできる。本発明の改善剤は、揮発成分としてそのまま吸入してもよいし、他の香り成分(例えば、柑橘系フレーバーなど)と組み合わせて使用してもよい。吸入できるという特徴により、香料、アロマオイル、におい袋、線香、タバコ、および電子タバコからなる群より選択される少なくとも1種に添加することもできる。本発明の改善剤は、経鼻的または経肺的に吸収され、脳内、各器官及び血液中に移行する。
【0055】
さらに、本願は、自閉スペクトラム症の症候を改善するためのβカリオフィレンを含有する改善剤を投与するための機器の発明に係るものである。また、自閉スペクトラム症の症候を改善するためのβカリオフィレンを含有する改善剤を投与するための医療機器の発明に係るものである。本発明における医療機器とは、ヒト若しくは非ヒト動物の疾病の治療もしくは予防に使用されることを目的とする用具や器具等である。医療機器の一例としてはマスクが挙げられる。本発明のマスクを装着することにより、気管又は肺に直接βカリオフィレンを投与することができる。
【0056】
(試験例)
本試験例及び実施例においては、全て稲畑香料株式会社製のカリオフィレン(リラックフィトン 登録商標)を使用した。
【0057】
<試験例1:空間中における気体状のβカリオフィレン濃度の測定> 5000mLの三角フラスコのβカリオフィレンをそれぞれ0.05、0.5、5、10mL塗布した脱脂綿を設置し、一定時間揮発させ拡散した後、ポンプ(MINIPUMP MP-ΣNII:柴田科学株式会社社製)により吸着剤(Inert Sep C18)200mg/1mLに200mL吸着させた。吸着させた香気成分を溶媒(メタノール)1mLで溶出させ、得られた溶出液を1mLにメスアップし、GCMS(Agilent社製)に1μL注入することで測定をおこなった。
測定結果を以下の表に示す。
βカリオフィレン濃度(μg/mL)
【0058】
【表1】
以上の結果から、60分の揮散時間におけるβカリオフィレン濃度は、それぞれ10mL塗布時には平均9.92μg/mL、5mL塗布時には平均6.8μg/mL、0.5mL塗布時には平均2.76μg/mL、0.05mL塗布時には平均1.35μg/mLであることが確認された。
【0059】
<試験例2:βカリオフィレン暴露後のマウス各器官等への移行量の測定>
フラスコ内でマウスを気体状のβカリオフィレンに曝露した場合の各器官及び血液への移行を調べる試験を行った。
5週齢雄性Slc/ddYマウス(n=6)にβカリオフィレン10mLを60分間曝露した後屠殺した。屠殺したマウスから、脳、肺及び血液(血清)を採取した。採取した各器官及び血液(血清)中に含まれるβカリオフィレンの濃度をGCMS(Agilent社製)を用いて測定した。
測定結果を以下の表に示す。
【0060】
【表2】
脳・肺 (ng/g) 血清 (ng/mL)
【0061】
<試験例3:βカリオフィレン経口投与後のマウス各器官等への移行量の測定>
マウスにβカリオフィレンを経口投与した場合の各器官及び血液への移行を調べる試験を行った。
5週齢雄性Slc/ddYマウス(n=6)に、ゾンデを用いて、βカリオフィレン0.1mg/gを経口投与した後屠殺した。屠殺したマウスから、脳、肺及び血液(血清)を採取した。採取した各器官及び血液(血清)中に含まれるβカリオフィレンの濃度をGCMS(Agilent社製)を用いて測定した。
測定結果を以下の表に示す。
【0062】
【表3】
脳・肺 (ng/g) 血清 (ng/mL)
【0063】
試験例2及び3の各器官におけるβカリオフィレン含有量の測定結果により、脳を初め各器官にβカリオフィレンが移行していることが示された。なお、この結果より、βカリオフィレンを経口投与することの外、気体状態で曝露することによっても、各器官に移行することが示された。
【実施例0064】
以下、本発明の実施例を説明することにより、本発明の効果をより明確なものとする。
但し、本発明は以下の実施例には限定されない。
【0065】
<βカリオフィレン抽出物の調製>
クローブリーフオイル(稲畑香料株式会社製)150gに水酸化カリウム溶液300g(20%KOH、80%(V/V)メタノール)を加え、50℃、30分で反応させた。
一晩放置し、上層(オイル部分)と下層に分離させた。
上層(オイル部分)に5%クエン酸水100gを追加しよく撹拌した。
遠心分離機でオイル層を分離し(10000rpm、5分)、βカリオフィレン粗分画3.78gを得た。
さらに減圧蒸留(110℃、150Pa)にて蒸留し、βカリオフィレン分画3.32gを得た。
【0066】
<マウスに対するβカリオフィレン暴露の影響>
次に、βカリオフィレンによる自閉スペクトラム症の症候改善効果を確認するために、マウスにβカリオフィレンを暴露させる試験を実施した。
【0067】
以下に試験内容について詳述する。
マウスを以下の群に分けて試験を実施した。
B群:Nsf+/+マウス+超純水(MQ)(βカリオフィレン曝露なし)
C1群:Nsf+/+マウス+βカリオフィレン曝露50μL
C2群:Nsf+/-KO(ヘテロノックアウト)マウス+超純水(MQ)(βカリオフィレン曝露なし)
T1群:Nsf+/-KO(ヘテロノックアウト)マウス+βカリオフィレン曝露5μL
T2群:Nsf+/-KO(ヘテロノックアウト)マウス+βカリオフィレン曝露50μL
T3群:Nsf+/-KO(ヘテロノックアウト)マウス+βカリオフィレン曝露500μL
【0068】
本発明において、βカリオフィレン曝露は、気体状のβカリオフィレンにマウス(3)を曝露し、経鼻的または経肺的にβカリオフィレンを投与する実験系を用いて行った(
図1)。
気体状のβカリオフィレンにマウス(3)を曝露する実験系を
図1に示す。三角フラスコ(1)の中にマウス(3)を配置し、三角フラスコ(1)のフタの内側にβカリオフィレンを含侵させた脱脂綿(2)を装着し、それぞれ1時間又は2時間放置する曝露処理により、マウス(3)にβカリオフィレンを投与した。マウス(3)はβカリオフィレンを経鼻的または経肺的に吸収することが確認された(後述)。
【0069】
上記のB群、C1群、C2群及びT2群のマウスに、βカリオフィレンを曝露させ1時間経過時の、オープンフィールド(OF)テストによる運動量(cm)及び常同行動(時間)の変化を検証した。その結果、50μLのβカリオフィレンを曝露後1時間経過時において、T2群であるNsf+/-KO(ヘテロノックアウト)マウスは、B群、C1群、C2群それぞれのマウスと比較して、自閉スペクトラム症の症候である運動量及び常同行動が改善していた(
図2)。
【0070】
上記のB群、C1群、C2群及びT2群のマウスに、βカリオフィレンを曝露させ2時間経過後の、オープンフィールド(OF)テストによる運動量(cm)及び常同行動(時間)の変化を検証した。その結果、50μLのβカリオフィレンを曝露し2時間経過後において、T2群であるNsf+/-KO(ヘテロノックアウト)マウスは、B群、C1群、C2群それぞれのマウスと比較して、自閉スペクトラム症の症候である常同行動が改善していた(
図3)。
【0071】
また、上記のB群、C1群、C2群及びT2群のマウス(3)に、βカリオフィレンを曝露させ2時間経過後の、スリーチャンバーテスト(
図4)による左右それぞれの小部屋を探索した時間(秒)を比較検証した。その結果、50μLのβカリオフィレンを曝露し2時間経過後において、T2群であるNsf+/-KO(ヘテロノックアウト)マウスは、B群、C1群、C2群それぞれのマウスと比較して、自閉スペクトラム症の症候である社会行動が改善していた(
図5)。
【0072】
さらに、上記のC2群、T1群、T2群及びT3群のマウスに、βカリオフィレンを曝露させ1時間経過時の、オープンフィールド(OF)テストによる運動量(cm)及び常同行動(時間)の変化を検証した。その結果、βカリオフィレンを曝露後1時間経過時において、T2群であるNsf+/-KO(ヘテロノックアウト)マウス+βカリオフィレン曝露50μLは、C2群及びT1群及びT3群のマウスと比較して、自閉スペクトラム症の症候である運動量及び常同行動が有意に改善していたことから、自閉スペクトラム症の症候改善には、50μLの濃度のβカリオフィレンが有効であることがわかった(
図6)。
【0073】
上記のC2群、T1群、T2群及びT3群のマウスに、βカリオフィレンを曝露し2時間経過後に、オープンフィールド(OF)テストによる運動量(cm)及び常同行動(時間)の変化を検証した。その結果、βカリオフィレンを曝露し2時間経過後において、T2群であるNsf+/-KO(ヘテロノックアウト)マウス+βカリオフィレン曝露50μLは、C2群及びT1群及びT3群のマウスと比較して、自閉スペクトラム症の症候である運動量及び常同行動が有意に改善していたことから、自閉スペクトラム症の症候改善には、50μLの濃度のβカリオフィレンが有効であることがわかった(
図7)。
【0074】
上記のC2群、T1群、T2群及びT3群のマウスに、βカリオフィレンを曝露し2時間経過後の、スリーチャンバーテストによる左右それぞれの小部屋を探索した時間(秒)を比較検証した。その結果、50μLのβカリオフィレンを曝露し2時間経過後において、T2群であるNsf+/-KO(ヘテロノックアウト)マウス+βカリオフィレン曝露50μLは、C2群及びT1群及びT3群のマウスと比較して、自閉スペクトラム症の症候である社会行動が改善していたことから、自閉スペクトラム症の症候改善には、50μLの濃度のβカリオフィレンが有効であることがわかった(
図8)。
【0075】
以上の結果から、オープンフィールド(OF)テスト及びスリーチャンバーテストにおいて、βカリオフィレンを50μLの濃度で投与したとき、自閉スペクトラム症のマウス表現型の有意な改善効果が確認された(
図9)。
本発明に係る自閉スペクトラム症の症候改善剤並びにこの改善剤を含有する飲食品、香料及びこれを投与するための機器は、βカリオフィレン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を有効成分として含有するため、自閉スペクトラム症者の症候を改善することができる。それゆえに、本発明は、自閉スペクトラム症の症候改善剤並びにこの改善剤を含有する飲食品、香料及びこれを投与するための機器として好適に利用することができる。