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特開2024-106309CBD含有重炭酸入浴剤及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106309
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】CBD含有重炭酸入浴剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20240731BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240731BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240731BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20240731BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/19
A61Q19/10
A61K8/362
A61K8/365
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191968
(22)【出願日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2023010148
(32)【優先日】2023-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】512083883
【氏名又は名称】株式会社ホットアルバム炭酸泉タブレット
(74)【代理人】
【識別番号】100114672
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】小星 重治
(72)【発明者】
【氏名】上田 豊
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB311
4C083AB312
4C083AB351
4C083AC071
4C083AC231
4C083AC291
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC761
4C083AC791
4C083AC841
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD221
4C083AD641
4C083CC25
4C083DD15
4C083DD17
4C083EE11
4C083FF01
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】重炭酸イオンの効果によって血流が促進された状態でCBD(カンナビジオール)を効率的に経皮吸収することができ、CBDの添加量を少なくすることができるCBD含有重炭酸入浴剤及びその製造方法の提供。
【解決手段】重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム)と、有機酸(クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸から選ばれる少なくとも1つ)と、CBDと、を含む材料を圧縮成型した錠剤からなるCBD含有重炭酸入浴剤を製造する際に、重炭酸塩と有機酸とを、錠剤を溶解した水溶液のpHが中性領域(pHが7前後)となる所定の重量比で配合し、CBDを錠剤15gあたり純度100%に換算して0.003mgから1000mg添加し、錠剤の硬さが所定値以上となるように錠剤を圧縮成型する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重炭酸塩と有機酸とCBDとを含む材料を圧縮成型した錠剤からなるCBD含有重炭酸入浴剤であって、
前記重炭酸塩は、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムであり、前記有機酸は、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸から選ばれる少なくとも1つであり、
前記重炭酸塩と前記有機酸とは、前記錠剤を溶解した水溶液のpHが中性領域となる所定の重量比で配合され、
前記CBDは、前記錠剤15gあたり純度100%に換算して0.003mgから1000mg添加され、
前記錠剤の硬さが所定値以上となるように前記錠剤が圧縮成型されている、
ことを特徴とするCBD含有重炭酸入浴剤。
【請求項2】
前記CBDは、アイソレート製法を用いて麻の成分からCBD成分のみを抽出した結晶性固形物を中鎖脂肪酸油に溶解してCBD油とし、前記CBD油を油脂包接粉末化基材で包接し、粉末化して親水性にした水溶性粉末である、
ことを特徴とする請求項1に記載のCBD含有重炭酸入浴剤。
【請求項3】
前記材料は、ポリエチレングリコールを含み、前記重炭酸塩に対して、前記有機酸の重量比は1/20から1/3、前記ポリエチレングリコールの重量比は1/50から1/5であり、
前記錠剤の硬度が15kgf以上であり、前記錠剤の直径及び厚みがそれぞれ10mm以上である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のCBD含有重炭酸入浴剤。
【請求項4】
前記材料は、ポリエチレングリコール及び無水物を含み、
前記無水物は、無水炭酸ナトリウム又は無水炭酸カリウムであり、
前記重炭酸塩に対して、前記有機酸の重量比は1/10から1/3、前記ポリエチレングリコールの重量比は1/100から1/5、前記無水物の重量比は1/100から1/10であり、
前記錠剤を溶解した直後の水溶液のpHが5.5から8.5であり、
前記錠剤の硬度が15kgf以上であり、前記錠剤の直径及び厚みがそれぞれ7mm以上である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のCBD含有重炭酸入浴剤。
【請求項5】
前記材料は、ポリエチレングリコール、界面活性剤及び塩素中和化合物を含み、
前記界面活性剤は、炭素数6から18のアルカンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、ショ糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つであり、前記塩素中和化合物は、L-アスコルビン酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、茶カテキン、エリソルビン酸塩から選ばれる少なくとも1つであり、
前記重炭酸塩と前記ポリエチレングリコールとの混合物Aに対して、前記有機酸と前記界面活性剤と前記ポリエチレングリコールとの混合物Bの重量比は1/50から2/3であり、前記塩素中和化合物は、前記錠剤15gあたり略0.005g添加され、
前記錠剤を水1Lあたり15g溶解した後の水溶液のpHが5.5から8.5であり、
前記錠剤の硬度が15kgf以上であり、前記錠剤の摩損度が5.0wt%以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のCBD含有重炭酸入浴剤。
【請求項6】
前記材料は、塩素中和化合物及び滑沢剤を含み、
前記塩素中和化合物は、L-アスコルビン酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、茶カテキン、エリソルビン酸塩から選ばれる少なくとも1つであり、
前記滑沢剤は、炭素数6から18のアルカンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、ショ糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つであり、
前記重炭酸塩に対する前記有機酸の重量比率は1/8~2/7であり、
前記錠剤に対する前記塩素中和化合物の重量比率は1/1500~1/30であり、
前記錠剤の硬度は、20kgf以上である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のCBD含有重炭酸入浴剤。
【請求項7】
重炭酸塩と有機酸とCBDとを含む材料を圧縮成型して錠剤を作製するCBD含有重炭酸入浴剤の製造方法であって、
前記重炭酸塩は、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムであり、前記有機酸は、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸から選ばれる少なくとも1つであり、
前記重炭酸塩と前記有機酸とを、前記錠剤を溶解した水溶液のpHが中性領域となる所定の重量比で配合し、
前記CBDを前記錠剤15gあたり純度100%に換算して0.003mgから1000mg添加し、
前記錠剤の硬さが所定値以上となるように前記錠剤を圧縮成型する、
ことを特徴とするCBD含有重炭酸入浴剤の製造方法。
【請求項8】
前記CBDは、アイソレート製法を用いて麻の成分からCBD成分のみを抽出した結晶性固形物を中鎖脂肪酸油に溶解してCBD油とし、前記CBD油を油脂包接粉末化基材で包接し、粉末化して親水性にした水溶性粉末である、
ことを特徴とする請求項7に記載のCBD含有重炭酸入浴剤の製造方法。
【請求項9】
前記材料は、ポリエチレングリコールを含み、前記重炭酸塩に対して、前記有機酸の重量比を1/20から1/3、前記ポリエチレングリコールの重量比を1/50から1/5とし、
前記錠剤の硬度が15kgf以上、前記錠剤の直径及び厚みがそれぞれ10mm以上となるように前記錠剤を圧縮成型する、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のCBD含有重炭酸入浴剤の製造方法。
【請求項10】
前記材料は、ポリエチレングリコール及び無水物を含み、
前記無水物は、無水炭酸ナトリウム又は無水炭酸カリウムであり、
前記重炭酸塩に対して、前記有機酸の重量比を1/10から1/3、前記ポリエチレングリコールの重量比を1/100から1/5、前記無水物の重量比を1/100から1/10とし、
前記錠剤を溶解した直後の水溶液のpHが5.5から8.5となり、前記錠剤の硬度が15kgf以上、前記錠剤の直径及び厚みがそれぞれ7mm以上となるように前記錠剤を圧縮成型する、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のCBD含有重炭酸入浴剤の製造方法。
【請求項11】
前記材料は、ポリエチレングリコール、界面活性剤及び塩素中和化合物を含み、
前記界面活性剤は、炭素数6から18のアルカンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つであり、前記塩素中和化合物は、L-アスコルビン酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、茶カテキン、エリソルビン酸塩から選ばれる少なくとも1つであり、
前記重炭酸塩と前記ポリエチレングリコールとの混合物Aに対して、前記有機酸と前記界面活性剤と前記ポリエチレングリコールとの混合物Bの重量比を1/100から2/3とし、前記塩素中和化合物を、前記錠剤15gあたり略0.005g添加し、
前記錠剤を水1Lあたり15g溶解した後の水溶液のpHが5.5から8.5となり、前記錠剤の硬度が15kgf以上、前記錠剤の摩損度が5.0wt%以下となるように前記錠剤を圧縮成型する、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のCBD含有重炭酸入浴剤の製造方法。
【請求項12】
前記材料は、塩素中和化合物及び滑沢剤を含み、
前記塩素中和化合物は、L-アスコルビン酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、茶カテキン、エリソルビン酸塩から選ばれる少なくとも1つであり、
前記滑沢剤は、炭素数6から18のアルカンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、ショ糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つであり、
前記重炭酸塩に対する前記有機酸の重量比率を1/8~2/7とし、
前記錠剤に対する前記塩素中和化合物の重量比率を1/1500~1/30とし、
前記錠剤の硬度が20kgf以上となるように前記材料を圧縮成形する、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のCBD含有重炭酸入浴剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CBD(カンナビジオール)を含有した重炭酸入浴剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アサ科1年草の薬用植物アサには、カンナビノド類、テルペン類、フラボノイド類、フェノール類などの様々な化合物が含まれている。上記カンナビノイドは、炭素数21の化合物であり、さらに、THCタイプ、CBDタイプ、CBNタイプ、CBCタイプ、CBGタイプ、CBTタイプ、CBEタイプ、CBLタイプ、CBNDタイプなどが存在している。その中で近年注目されているのはCBD(カンナビジオール)である。
【0003】
CBDは、化学式がC21H30O2、化学構造式が(2-[(1R,6R)-3-メチル-6-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール)の化合物であって、脳や体内の受容体と相互作用することで、向精神効果や鎮痛作用を発揮することが知られており、更に、抗菌作用や抗がん作用、骨の成長促進、抗炎症作用にも注目されている。このCBDは、水に溶解せずに有機溶媒に溶解する結晶性固形物であり、特許文献1には、CBDを親油性の溶媒または懸濁担体に溶解させた治療薬が記載されている。
【0004】
CBDは親油性であることから、経口摂取の際に水に溶かしながら流し込むことが困難であった。また、CBDは水に難溶であるため、日常生活への用途や経口摂取の形態が限定されていた。そこで、特許文献2には、CBD結晶を中鎖脂肪酸油に溶解してCBD油とし、このCBD油に油脂包接粉末化基材を添加してCBD含有水溶性粉末とすることが記載されている。
【0005】
上記方法で作製されたCBD含有水溶性粉末は、水等に溶解させて使用できることから、ドリンクの添加剤とするといった使用方法が提案されている。このCBD含有水溶性粉末を飲料に溶解するなどして簡便に経口摂取することにより、リラックス効果、健康促進効果、体調管理効果等を得ることができるとともに、自律神経を整えたりホルモンや伝達物質の流れを正常化したりすることができる。
【0006】
CBD含有水溶性粉末を溶解した飲料を経口摂取した場合、CBDは消化管で吸収され、肝臓で代謝された後、体全体に広がるため、上述した効果が現れるまでに時間がかかる。そこで、CBDの結晶性固形物や水溶性粉末を打錠して錠剤のような固形形状とし、入浴剤として使用する方法も提案されている。このようなCBDを添加した入浴剤を溶解した湯に入浴することにより、CBDを皮膚から体内に吸収(経皮吸収)することが可能になり、CBDが血管に直接吸収されることによって上述した効果を速やかに得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2004-529892号公報
【特許文献2】特開2022-129204号公報
【特許文献3】特許第5588490号
【特許文献4】特許第5877778号
【特許文献5】特許第6525945号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】丸山修寛・小星重冶,「No.29 重炭酸イオンークエン酸入浴剤の開発と未病への対応」,日本温泉気候物理医学会雑誌,第78巻,第1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、CBDを添加した入浴剤を溶解した湯に入浴したとしても、体がCBDを効率的に吸収できる状態、すなわち、入浴剤の作用によって血流が促進された状態になっていなければ、CBDを効率的に経皮吸収することはできず、必要な量のCBDを経皮吸収するためには入浴剤に多量のCBDを添加しなければならない。従って、入浴によってCBDを効率的に経皮吸収するためには、CBDが添加される入浴剤がどのような効果を有する入浴剤であるかが重要になる。
【0010】
入浴剤には、無機塩類系、炭酸ガス系(無機塩類の中の炭酸塩と有機酸を組み合わせたもの)、薬用植物(生薬類)系、酵素系など様々な種類があるが、重炭酸イオンの効果によって血流を促進させることができる重炭酸入浴剤が注目されている。この重炭酸入浴剤は、重炭酸塩と有機酸とを使い中和反応で炭酸ガスを発泡させるものであるが、一般に、炭酸ガスがたくさん出て肌に泡がつく現象をもって良い炭酸泉とされることから、入浴剤は湯水に溶けた時にpH4~5.5程度の弱酸性になるように設計し、有機酸を酸性過剰で添加混合し、激しく中和反応を起こさせ、発泡する炭酸ガスを湯水中へ溶解させようとしていた。
【0011】
しかしながら、湯が弱酸性になるような入浴剤では、見た目は炭酸ガスが大量に出ているように見えても、炭酸ガスは限りなくガスとして液外に揮散してしまう性質があるため、実際の湯水中の重炭酸イオン濃度を高くすることはできず、重炭酸イオンの効果によって血流を促進させることができない。そのため、湯が弱酸性になるような入浴剤にCBDを添加したとしても、血流が促進された状態にはならないため、CBDを効率的に経皮吸収することはできず、やはり入浴剤に多量のCBDを添加しなければならない。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、CBDを効率的に経皮吸収することでき、CBDの添加量を少なくすることができるCBD含有重炭酸入浴剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面は、重炭酸塩と有機酸とCBDとを含む材料を圧縮成型した錠剤からなるCBD含有重炭酸入浴剤であって、前記重炭酸塩は、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムであり、前記有機酸は、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸から選ばれる少なくとも1つであり、前記重炭酸塩と前記有機酸とは、前記錠剤を溶解した水溶液のpHが中性領域となる所定の重量比で配合され、前記CBDは、前記錠剤15gあたり純度100%に換算して0.003mgから1000mg添加され、前記錠剤の硬さが所定値以上となるように前記錠剤が圧縮成型されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の一側面は、重炭酸塩と有機酸とCBDとを含む材料を圧縮成型して錠剤を作製するCBD含有重炭酸入浴剤の製造方法であって、前記重炭酸塩は、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムであり、前記有機酸は、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸から選ばれる少なくとも1つであり、前記重炭酸塩と前記有機酸とを、前記錠剤を溶解した水溶液のpHが中性領域となる所定の重量比で配合し、前記CBDを前記錠剤15gあたり純度100%に換算して0.003mgから1000mg添加し、前記錠剤の硬さが所定値以上となるように前記錠剤を圧縮成型することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のCBD含有重炭酸入浴剤及びその製造方法によれば、重炭酸イオンの効果によって血流が促進された状態になり、CBDを効率的に経皮吸収することができ、CBDの添加量を少なくすることができる。
【0016】
その理由は、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム)と、有機酸(クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸から選ばれる少なくとも1つ)と、CBDと、を含む材料を圧縮成型した錠剤からなるCBD含有重炭酸入浴剤を製造する際に、重炭酸塩と有機酸とを、錠剤を溶解した水溶液のpHが中性領域(pHが7前後)となる所定の重量比で配合し、CBDを錠剤15gあたり純度100%に換算して0.003mgから1000mg添加し、錠剤の硬さが所定値以上となるように錠剤を圧縮成型するからである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】重炭酸イオンによる血流量増加のメカニズムを説明する模式図である。
図2】ピッツバーグ睡眠質問票の項目と判定基準である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
重炭酸イオンの効果について説明する。一般的に、水に溶存した二酸化炭素は溶存無機炭素として存在するが、この溶存無機炭素は重炭酸塩平衡によって3種類の形態があり、溶液のpHに依存して形態が変化するとされている。pHによる3種類の溶存無機炭素の存在比は、溶液のpHが弱酸性以下の領域では重炭酸イオンの割合は低く炭酸が高くなり、中性から弱アルカリの領域では重炭酸イオンの割合が最も高く、アルカリ領域では対称的に重炭酸イオンは低く炭酸イオンが高くなることが知られている。
【0019】
また、二酸化炭素は皮膚の毛穴や汗腺などを経由する付属器官経路を経て皮膚表面から毛細血管に移行するとされているが、血液のpH域は重炭酸イオンの存在比が最も高いpH域と一致していることから、本願発明者らは、皮膚から血中に移行した二酸化炭素の多くが重炭酸イオンとして生理活性を発揮し、生体に対して有益な効果を与える可能性に着目し、重炭酸イオンの生体に与える効果について検討を行った(非特許文献1参照)。
【0020】
その結果、生体内試験において、対照群と比較して有意にマウスの血流を増加させ、その血液中の重炭酸イオン量や末梢血管における内皮型一酸化窒素合成酵素のリン酸化を介したNO産生の増加傾向が認められた。さらにヒト臍帯動脈内皮細胞を用いた試験管内試験では、中性重炭酸イオン水の存在下で内皮型一酸化窒素合成酵素のリン酸化の促進とNO産生の増加が検出され、中性重炭酸イオン水の活性酸素種消去活性は対照よりも有意に高い結果を得た。加えて、冷えの自覚症状のある中年の男女を対象に実施した二重盲検ランダム化比較試験では、中性重炭酸イオン水温浴による体温の上昇効果と冷え症状や睡眠の質に改善効果が認められた。
【0021】
これらのことから、重炭酸イオンは経皮的に吸収されることで血管内皮への直接作用により内皮型一酸化窒素合成酵素をリン酸化させ、NO産生の増加により血流を促進させることが明らかとなり、血行不良に伴う循環器領域における様々な臨床症状の改善への有用性が示唆された。
【0022】
この重炭酸イオンの吸収を効率的に行うためには、入浴剤が溶解した湯水のpHが中性領域(pHが7前後)となり、湯水中の重炭酸イオンが高濃度になることが重要であることから、本願発明者らは、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)と中和反応をさせる化合物として有機酸(クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸)を用い、ポリエチレングリコールの存在下で、圧縮成型によって一定以上の高硬度とする錠剤の製造方法を発明した(特許文献3~5)。
【0023】
これらの方法で製造した重炭酸入浴剤では、激しく効率よく中和反応が起こり、可能な限り小さなサイズの炭酸ガス泡を一定時間継続的に放出させることによって、発生した炭酸ガスの大部分を空気中に逃がさず湯水中に溶解させることができる。また、溶解直後のpHが中性となるように設計することによって湯水中の重炭酸イオンが高濃度になり、更に、pHを中性にすることによって皮膚に触れた炭酸ガスが容易に重炭酸イオンとなり、本来存在する重炭酸イオンと相まって重炭酸イオンが高濃度になり、皮膚からの血管への重炭酸イオンの吸収を限りなく多くすることができ、NO産生の増加により血流を促進させることができる。
【0024】
そこで、本願では、上述した重炭酸入浴剤など(中性重炭酸入浴剤と呼ぶ。)に微量のCBDを添加し、微量のCBDが添加された中性重炭酸入浴剤を溶解した湯に入浴するだけで、重炭酸イオンの効果によって血流が促進された状態でCBDが効率的に経皮吸収されるようにし、高価なCBDの添加量をできる限り少なくする。
【0025】
具体的には、本願のCBD添加重炭酸入浴剤は、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)と、有機酸(クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸)と、必要に応じてポリエチレングリコールと、CBDと、を含む材料を圧縮成型した錠剤からなり、重炭酸塩と有機酸と必要に応じてポリエチレングリコールとを錠剤を溶解した水溶液のpHが中性領域(pHが7前後)となる所定の重量比で混合し、CBDを錠剤15gあたり純度100%に換算して0.003mgから1000mg添加し、錠剤の硬度が所定値以上(必要に応じて錠剤の直径及び厚みがそれぞれ所定値以上)となるように錠剤を圧縮成型する。また、材料に無水物を加え、錠剤を溶解した直後の水溶液のpHを規定して、湯水が中性に保たれるようにしたり、材料に界面活性剤(滑沢剤)及び塩素中和化合物を加え、錠剤の摩損度や硬度を規定して、水道水中の残留塩素を確実に除去できるようにしたりする。
【0026】
なお、重炭酸イオンを発生する入浴剤を溶かした湯に入浴する重炭酸温浴を利用した療法は、重炭酸温浴療法と呼ばれるが、特に、本願発明者らが発明した中性重炭酸入浴剤(特許文献3~5参照)を使用した重炭酸温浴療法(中性重炭酸温浴NO療法と呼ぶ。)では、湯が中性となり、高濃度の重炭酸イオンを発生させることができることから、血管内皮に一酸化窒素NOが分泌して毛細血管をダブルサイズに拡張し、血流が一気に3~5倍にアップして血流と酸素で体を温めることができる。従って、特許文献3~5に記載の中性重炭酸入浴剤に微量のCBDを添加するだけで、血流を促進すると共にCBDを効率的に経皮吸収することができ、リラックス効果を高めて、健康増進を図ることができる。
【実施例0027】
上記した本発明の一実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の一実施例に係るCBD含有重炭酸入浴剤及びその製造方法について説明する。
【0028】
図1は、人の血管の構造を模式的に示しており、表皮1の内側に真皮/皮下脂肪組織2があり、真皮/皮下脂肪組織2の内側に血管5がある。血管5は平滑筋7を有する血管壁6とその内側の血管内皮細胞8とで構成され、血管内皮細胞8の内部が血管内9である。ここで、重炭酸イオンが溶解した湯水に入浴すると、図1に示すように、重炭酸イオンは汗孔4などを介して、血管内9に浸透して血管内皮細胞8に存在する内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)をリン酸化し(P-eNOS)、L-アルギニン(L-Al)に作用して一酸化窒素(NO)を発生する。発生したNOはグアニル酸シクラーゼ酵素(sGC)によりグアノシン三リン酸(GTP)を介して環状グアイノシンリン酸(cGMP)を生成する。そして環状グアイノシンリン酸(cGMP)は血管壁6の平滑筋7を弛緩し、その結果、血管5が拡張して血流が増加する。
【0029】
従って、溶解した湯水のpHが中性領域になる重炭酸入浴剤(特許文献3~5に示す中性重炭酸入浴剤)を用いて湯水中の重炭酸イオンの濃度を高めることにより、上述した重炭酸イオンの効果によって一酸化窒素の血管内皮への分泌が盛んになり、血流を飛躍的に促進することができる。そして、このような中性重炭酸入浴剤とCBDとを組み合わせることにより、微量のCBDを添加するだけでCBDを効率的に経皮吸収することが可能となり、CBDの持つ様々な効果をより高く発揮することができる。
【0030】
この中性重炭酸入浴剤とCBDとの組み合わせの効果を確認するために、ピッツバーグ睡眠質問票を用いて、中性重炭酸入浴剤に添加するCBDの量を変化させた場合の睡眠の質を評価した。このピッツバーグ睡眠質問票(PSQI:Pittsburgh Sleep Quality Index)は、最近1ヵ月間の睡眠について睡眠の質、入眠時間、睡眠時間、睡眠効率、睡眠困難、眠剤の使用、日中覚醒困難の項目から評価するもので、スコアが低いほど睡眠の質が高いことを示している。図2は、ピッツバーグ睡眠質問票における質問する項目と質問に対する回答の判定基準とを示している。
【0031】
被験者に対して図2に示す項目を質問し、その回答に対して図2に示す判定基準に基づいてスコアを計算した。その結果を表1に示す。なお、被験者は30~50代の女性19名であり、入浴条件は、湯水の温度39℃、入浴時間30分である。また、錠剤Aは、中性重炭酸入浴剤にCBDを添加したものであり、CBD以外の組成は、重炭酸ナトリウム11.3g、炭酸ナトリウム0.6g、無水クエン酸2.4g、ポリエチレングリコール(平均分子量6000)0.7gなどである。また、錠剤Bは、比較のために作製した通常の重炭酸入浴剤にCBDを添加したものであり、CBD以外の組成は、重炭酸ナトリウム14.3g、炭酸ナトリウム0.6g、ポリエチレングリコール(平均分子量6000)0.1gなどである。また、睡眠の質を表すレベル(睡眠の質が良いほどレベルが高い)として、スコア4未満をレベル5、スコア4以上6未満をレベル4、スコア6以上8未満をレベル3、スコア8以上10未満をレベル2、スコア10以上をレベル1としている。
【0032】
【表1】
【0033】
表1より、錠剤A(中性重炭酸入浴剤にCBDを添加したもの)を溶解した湯水に入浴するグループは、錠剤B(通常の重炭酸入浴剤にCBDを添加したもの)を溶解した湯水に入浴するグループに比べてレベルが格段に高い(スコアが格段に低い)ことから、中性重炭酸入浴剤を利用することにより、微量のCBDでも睡眠の質の向上に効果があることが分かる。また、錠剤Aを溶解した湯水に入浴するグループに関して、CBDを0.003mg(CBD含有量6%の水溶性粉末を0.05mg)添加するとレベルが一気に高くなることから、CBDの添加量は錠剤15gあたり0.003mg以上が好ましいことが分かる。また、CBDの添加量が多ければ多いほど睡眠の質は向上するが、CBDは高価な材料であり、また、CBDの添加量が1500mgになると、錠剤表面が変色し、硬度が低下し、発泡が激しくなって湯水に溶け込む重炭酸イオン濃度が下がり、効果が低下することから、CBDの添加量は1000mg以下が好ましいと言える。
【0034】
上記の実験結果を踏まえて、特許文献3~5の中性重炭酸入浴剤などに、CBDを錠剤15gあたり純度100%に換算して0.003mgから1000mg添加した本実施例のCBD含有重炭酸入浴剤(第1乃至第4のCBD含有重炭酸入浴剤)及びその製造方法について詳細に説明する。
【0035】
[第1のCBD含有重炭酸入浴剤]
本実施例の第1のCBD含有重炭酸入浴剤は、特許文献3の重炭酸入浴剤にCBDを添加したものである。具体的には、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム)に対して重量比が1/20から1/3の有機酸及び重量比が1/50から1/5のポリエチレングリコールを加え、かつ、錠剤15gあたり純度100%に換算して0.003mgから1000mgのCBDを添加して圧縮成型した錠剤において、錠剤の硬度が15kgf以上であり、錠剤の直径及び厚みがそれぞれ10mm以上であるものである。
【0036】
上記重炭酸塩、特に炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)は、発泡剤としての役割を果たすものであり、有機酸とともに湯水に溶けると、中和反応で二酸化炭素を発泡しながら溶解水のpHにより重炭酸イオンと水素イオンに乖離し水に溶解する。この重炭酸イオンは、いわゆるニオイの元になる毛穴のミネラル皮脂汚れを洗浄する能力を発揮する。第1のCBD含有重炭酸入浴剤における重炭酸塩の含量は、他の成分との関係において規定される。その含量が規定量よりも少ないと、湯水への溶解時のpHが所定の値にならず、重炭酸イオンの湯水への溶解量が大幅に減じてしまう。一方、上記含量が規定量を超えると、炭酸ガスの発泡が大幅に減少してしまう。
【0037】
また、上記有機酸、特にクエン酸やコハク酸、フマル酸、リンゴ酸は、重炭酸塩を中和し炭酸ガスの発泡を生じさせる役割を果たし、湯水に溶ける場合に肌の洗浄効果や肌の柔軟効果なども発揮する。特に、クエン酸を用いた場合、他の有機酸を用いた場合よりも中和反応がより効果的に起きる。有機酸の含量は、前記の通りに、他の成分との関係において規定される。その含量が規定量よりも少ないと、錠剤が溶ける間の炭酸ガス発泡量が減少し、溶解する重炭酸イオンの量が減少し、血流増進効果などが低下してしまう。一方、その含量が規定量を超えると、炭酸ガスの発泡量は上がるが泡の径が大きくなってガスが中和されにくくなり、溶解する重炭酸イオンの量が減少してしまう。
【0038】
また、上記ポリエチレングリコール(PEG)は、錠剤を湯水中に溶解した場合、炭酸ガス成分を重炭酸イオンとして最大に溶解させる役割を果たす。このポリエチレングリコールは、平均分子量が4000から8000のものが好ましく、ロータリー式打錠機の如き圧縮成形打錠機による成形安定性、杵付着耐性、キャッピング、錠剤成形速度の向上の観点から、平均分子量6000程度のものがより好ましい。ポリエチレングリコールの含量は、前記の通りに、他の成分との関係において規定される。その含量が規定量よりも少ないと、炭酸ガス泡の径が大きくなって発泡時間も短くなり、湯水に溶解する炭酸ガス成分を多くできない。一方、その含量が規定量を超えると、発生する泡の量が抑えられてしまい、同じように湯水に溶解する炭酸ガス成分が少なくなってしまう。
【0039】
また、上記CBDは、経皮吸収されることにより、リラックス効果、健康促進効果、体調管理効果等を発揮する。このCBDは、アイソレート製法を用いて麻の成分からCBD成分のみを抽出した結晶性固形物としてもよいし、結晶性固形物を加工して水溶性にした(例えば、油に溶かし乳化剤などで覆ってエマルジョンとして分散できるようにした)水溶性粉末としてもよいが、CBD含有重炭酸入浴剤に界面活性剤を添加しない場合は、湯水に溶けやすい水溶性粉末とすることが好ましい。この水溶性粉末としては、株式会社吉兆堂が製造・販売している水溶性粉末などを使用することができ、例えば、固形状のCBDを中鎖脂肪酸油(菜種油、アマニ油、ヘンプオイル、コーン油、アボガド油、ピーナツ油、ゴマ油、コメ油、グレープシード油、ココナッツ油、ノニ油、アルガン油など)に溶解してCBD油とし、このCBD油を油脂包接粉末化基材(オーガニック食物繊維、シクロデキストリン、加工デンプン、乳化剤などの油脂を包接体粉末とするための成分)で包接し、粉末化することにより親水性の水溶性粉末を製造することができる。この水溶性粉末におけるCBDの配合量は、CBD油と油脂包接粉末化基材の合計重量を100として、1~15重量%の範囲とすることが好ましく、6重量%とすることが最も好ましいことから、本実施例では、CBD含有量が6重量%の水溶性粉末を用いている。CBDの含量は、前記の通りに、他の成分との関係において規定される。その含量が規定量よりも少ないと、リラックス効果等を十分に得ることができない。一方、その含量が規定量よりも多いと、錠剤表面が変色し、硬度が低下し、発泡が激しくなって湯水に溶け込む重炭酸イオン濃度が下がる恐れがあると共にCBD含有重炭酸入浴剤のコストが上昇するため、好ましくない。
【0040】
次に、これらの成分を用いて第1のCBD含有重炭酸入浴剤を製造する方法について説明する。
【0041】
重炭酸入浴剤の基本成分となる重炭酸塩と有機酸とポリエチレングリコールの混合方法としては、(1)重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製し、その造粒物に有機酸とポリエチレングリコールの混合物を混合する方法と、(2)有機酸をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製し、その造粒物に重炭酸塩とポリエチレングリコールの混合物を混合する方法と、(3)重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作成すると共に、有機酸をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作成し、それらの造粒物を混合する方法と、がある。
【0042】
また、上記の基本成分にCBDを添加する方法としては、(A)造粒物と混合物又は造粒物と造粒物を混合する際にCBDを添加する方法と、(B)造粒物を作製する際にCBDを添加する方法と、がある。
【0043】
いずれの方法を用いても本発明の効果を発揮するCBD含有重炭酸入浴剤を製造することができるが、基本成分の混合方法に関しては、(1)の方法は、ミクロサイズの泡を長時間発泡させ、湯水の中に溶解する炭酸ガス成分を最大にできると共に、工程を大幅に省略できる。また、CBDの添加方法に関しては、(A)の方法は、基本成分に対して既存の製造方法を利用することができると共に、工程を簡略化できる。従って、第1のCBD含有重炭酸入浴剤の製造方法としては、(1)の方法と(A)の方法とを組み合わせた方法、すなわち、重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製し、有機酸とポリエチレングリコールの混合物にCBDを添加して造粒物と混合する方法が好ましい。以下、この方法を前提にして説明する。
【0044】
まず、重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製する。重炭酸塩を流動層で造粒して造粒物を得る際、実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機を用いると錠剤の硬度を著しく高められる。機械式流動層造粒機では、撹拌に空気を用いた流動を行わず、プロペラなどの機械式羽などを用いて粉体を流動させるため、造粒中に湿気のある空気から持ち込まれる水分を吸湿する事もなく、造粒中に減圧ポンプで真空にすることも可能となる。その結果、ポリエチレングリコールの量を下げて造粒できるため、中和反応をより活発にしながら、発泡する泡の径を小さくできる効果が発揮でき、また、錠剤を高い硬度にできるため好ましく使われる。
【0045】
実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機とは、横型ドラムの中にすき状ショベルを配し、遠心拡散及び渦流作用を起こさせ、三次元流動させる混合機であり、例えば、ドイツレーディゲ社製又は松坂技研社製のものが市場で販売されている。
【0046】
本造粒機には、減圧するための真空ポンプが付いていることがより好ましい。即ち、冷却時に減圧し、少しでも水分が飛ぶように操作することにより、本発明の効果を向上させることができる。更に、本造粒機には、造粒した顆粒が冷却時に粗大粒子になるのを防止するためのチョッパーが付いていることが好ましい。即ち、チョッパーを冷却時に作動させて整粒することにより、本発明の炭酸ガス泡の径をミクロサイズにより小さくする効果を発揮することができる。
【0047】
なお、重炭酸塩に対するポリエチレングリコールの重量比は、1/50から1/5(重炭酸塩100質量部に対して2から20質量部)が好ましく、特に、3/100から1/10(重炭酸塩100質量部に対して3から10質量部)が好ましい。
【0048】
次に、有機酸とポリエチレングリコールの混合物を作製する。その際、重炭酸塩の造粒物に対する有機酸若しくは有機酸とポリエチレングリコールの混合物の重量比は1/20から1/3が好ましく、特に、1/7から1/4が好ましい。また、有機酸に対するポリエチレングリコールの重量比は、0から3/20が好ましく、特に、1/100から1/10が好ましい。その含量が上記量を超えると、品質安定性及び発泡性が悪くなり、コストも上昇する。なお、有機酸からなる混合物を造粒しない場合は、ポリエチレングリコールを添加しなくても本発明の効果は得られるが、打錠性を良くするためにポリエチレングリコールを添加することが好ましい。
【0049】
次に、有機酸とポリエチレングリコールの混合物にCBD(ここではCBD含有量が6重量%の水溶性粉末)を添加する。添加するCBDは極微量でよく、上述した実験結果から、錠剤(重炭酸塩と有機酸とポリエチレングリコールの総量)15gあたり純度100%に換算して0.003mgから1000mg添加することが好ましい。通常の入浴剤や通常の重炭酸入浴剤であれば、十分なリラックス効果を得るためには多量のCBDを添加する必要があるが、本実施例の中性重炭酸入浴剤では、湯水中の重炭酸イオンの濃度を高めることにより一酸化窒素の血管内皮への分泌が盛んになり、血流を飛躍的に促進することができることから、CBDの添加量を格段に少なくすることができる。なお、錠剤1錠の重量は約15gであるので、CBDの添加量は錠剤1錠あたり純度100%に換算して0.003mgから1000mgとなる。
【0050】
次に、造粒物(重炭酸塩及びポリエチレングリコール)に混合物(有機酸とポリエチレングリコールとCBD)を混合した材料を圧縮成形して錠剤を作製する。錠剤を作製する圧縮成形には公知の圧縮成形機を使用することができるが、例えば、油圧プレス機、単発式打錠機、ロータリー式打錠機、ブリケッティングマシンなどを用いることができる。
【0051】
この打錠機などに用いる杵の大きさは、杵が円形である場合は直径が10mm以上であることが好ましく、杵が三角形や四角形の場合は、円形杵に換算して直径が10mm以上となるものが好ましい。杵の厚みについても同様である。円形の錠剤とする場合、錠剤の直径は10mm以上、厚みも10mm以上とすることが好ましい。三角形や四角形等の錠剤とする場合、円形錠剤に換算して、直径及び厚みの各々を10mm以上とすることが好ましい。なお、錠剤は必ずしも平面を持つ円形でなくてもよく、10mm以上の固形物であれば、楕円形でもタブレットでも球体でも、形は何ら制限されない。
【0052】
また、圧縮成形の際に、錠剤の硬度(破壊強度やビッカース硬度)が所定値以上(ここでは錠剤の直径方向の硬度が15kgf以上)となるようにする。硬度は高いほど錠剤中での炭酸ガスの発生がより効果的に起こり湯水中への炭酸ガスの溶解が効率的に行われ、泡の径が細かくなり、好ましい結果を生じる。直径方向の破壊強度(kgf)は、岡田精工社製デジタル錠剤硬度計ニュー・スピードチェッカーTS75NLを用いることができる。また、ビッカース硬度(Hv、kgf/mm)の測定は、硬さ試験機の一つである、マイクロビッカース硬さ試験機ミツトヨHM-221を用いることができる。
【0053】
以上が第1のCBD含有重炭酸入浴剤の基本的な構成及び製造方法であるが、第1のCBD含有重炭酸入浴剤には、無水炭酸ナトリウムや無水炭酸カリウム、無水炭酸カルシウム、無水炭酸マグネシウムなどの無水物を添加してもよい。無水物を添加することにより、炭酸ガスの泡径を最適な小さなものとしながら、発泡量をより大きく、且つ長時間持続させることができ、特に無水物として無水炭酸ナトリウムを添加した場合に上記効果を顕著に発揮させることができる。この無水物は、造粒物を作製する工程や造粒物と混合物を混合する工程など、圧縮成型前のいずれかの工程で添加することができるが、重炭酸塩の造粒物に有機酸とポリエチレングリコールとCBDの混合物を混合する段階で無水物を添加することが望ましく、特に、造粒物を冷却後、有機酸、ポリエチレングリコール、CBD、無水物を同時に添加し混合して直ちに打錠することが最も望ましい。重炭酸塩に対する無水物の重量比は、1/100から1/10が好ましく、特に、1/50から1/10が好ましい。無水物は、量が多すぎると発泡する泡の量が少なくなってしまい、一方、量が少なすぎると湯水中での炭酸ガスの発生が激しくなり、好ましくない。また、重炭酸塩の造粒物に対する有機酸の量と無水物の量を規定して錠剤を一定サイズの大きさで且つ一定硬度以上にすることで、錠剤中では中和反応が起き、溶解した水溶液は中性から弱アルカリ性にすることができるという効果が発揮される。
【0054】
また、第1のCBD含有重炭酸入浴剤には、打錠のための滑沢剤を添加することができ、重炭酸塩の造粒物に有機酸とCBDと無水物を加え、さらに滑沢剤としてポリエチレングリコールを加えて混合し、圧縮成型して錠剤を得ることが好ましい。また、第1のCBD含有重炭酸入浴剤には、錠剤成形のための離型剤を使用することができる。この離型剤としては、一般的にショ糖やステアリン酸マグネシウムなどが使われるが、ステアリン酸マグネシウムが、錠剤を安定に連続かつ高速に圧縮成型できることから最も好ましい。更に、第1のCBD含有重炭酸入浴剤には、その他の成分を必要に応じて混合することができる。その他の成分として、ヒアルロン酸などの健康成分や香料、色素、界面活性剤などが挙げられる。
【0055】
[第2のCBD含有重炭酸入浴剤]
本実施例の第2のCBD含有重炭酸入浴剤は、特許文献4の重炭酸入浴剤にCBDを添加したものである。具体的には、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム)に対して重量比が1/10から1/3の有機酸、重量比が1/100から1/5のポリエチレングリコール及び重量比が1/100から1/10の無水物(無水炭酸ナトリウム、無水炭酸カリウム)を加え、かつ、錠剤15gあたり純度100%に換算して0.003mgから1000mgのCBDを添加して圧縮成型した錠剤において、錠剤を溶解した直後の水溶液のpHが5.5から8.5であり、錠剤の硬度が15kgf以上、錠剤の直径及び厚さがそれぞれ7mm以上であるものである。
【0056】
溶解した炭酸ガス成分が中和され、重炭酸イオンとして高濃度に溶解させるためには、錠剤溶解直後のpHが5.5から8.5の範囲にあることが重要であり、望ましくは、炭酸ガスの発生と重炭酸への効率よい変換が起こる点から錠剤溶解直後のpHが6.0から8.0の範囲であることが重要である。ここで、錠剤が溶解した直後から、重炭酸イオンは中性pH付近であっても炭酸ガスを自然に揮発させ、pHは徐々に上昇していくものであり、例えば、溶解直後のpHが7.0であっても24時間後にはpHは7.5くらいに変化し、またジェットバスなどで空気を吹き込むことでさらにpHは上昇する。従って、水溶液のpHは溶解直後の値で規定するのが妥当である。
【0057】
そこで、第2のCBD含有重炭酸入浴剤では、錠剤を溶解した直後の水溶液のpHが所定に範囲になるように、重炭酸塩に対する有機酸の量を規定すると共に所定量の無水物を添加し、かつ、pHを上記範囲で維持するために、錠剤のサイズ及び硬度を規定している。
【0058】
この第2のCBD含有重炭酸入浴剤に用いられる重炭酸塩、有機酸、ポリエチレングリコール、CBDに関しては、前記した第1のCBD含有重炭酸入浴剤と同様であり、その含量は、他の成分との関係において規定される。
【0059】
更に、第2のCBD含有重炭酸入浴剤には、無水物が必須の成分として用いられる。この無水物は、無水炭酸ナトリウム、無水炭酸カリウムなどであり、無水物を添加することにより、炭酸ガスの泡径を最適な小さなものとしながら、発泡量をより大きく、且つ長時間持続させることができ、特に無水物として無水炭酸ナトリウムを添加した場合に上記効果を発揮させることができる。無水物の含量は、前記の通りに、他の成分との関係において規定されるが、量が多すぎると発泡する泡の量が少なくなってしまい、一方、量が少なすぎると湯水中での炭酸ガスの発生が激しくなり、好ましくない。
【0060】
次に、これらの成分を用いて第2のCBD含有重炭酸入浴剤を製造する方法について説明する。
【0061】
重炭酸入浴剤の基本成分となる重炭酸塩と有機酸とポリエチレングリコールの混合方法としては、第1のCBD含有重炭酸入浴剤と同様に、(1)重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製し、その造粒物に有機酸とポリエチレングリコールの混合物を混合する方法と、(2)有機酸をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製し、その造粒物に重炭酸塩とポリエチレングリコールの混合物を混合する方法と、(3)重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製すると共に、有機酸をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製し、それらの造粒物を混合する方法と、がある。
【0062】
また、基本成分に無水物とCBDを添加する方法としては、(A)造粒物と混合物又は造粒物と造粒物を混合する際に無水物とCBDを添加する方法と、(B)造粒物を作製する際に無水物及びCBDの双方を添加する方法と、(C)造粒物を作製する際に無水物及びCBDの一方を添加し、他方の造粒物又は混合物と混合する際に無水物及びCBDの他方を添加する方法と、がある。
【0063】
いずれの方法を用いても本発明の効果を発揮するCBD含有重炭酸入浴剤を製造することができるが、基本成分の混合方法に関しては、(1)の方法は、ミクロサイズの泡を長時間発泡させ、湯水の中に溶解する炭酸ガス成分を最大にできると共に、工程を大幅に省略できる。また、無水物とCBDの添加方法に関しては、(A)の方法は、基本成分に対して既存の製造方法を利用することができると共に、工程を簡略化できる。従って、第2のCBD含有重炭酸入浴剤の製造方法としては、(1)の方法と(A)の方法とを組み合わせた方法、すなわち、重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作成し、有機酸とポリエチレングリコールの混合物に無水物とCBDを添加して造粒物と混合する方法が好ましい。以下、この方法を前提にして説明する。
【0064】
まず、重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製する。重炭酸塩を流動層で造粒して造粒物を得る際、実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機を用いると錠剤の硬度を著しく高められる。この機械式流動層造粒機は、第1のCBD含有重炭酸入浴剤の場合と同様であり、例えば、ドイツレーディゲ社製又は松坂技研社製のものが市場で販売されている。その際、重炭酸塩に対するポリエチレングリコールの重量比は1/100から1/5(特に、1/100から1/10)が好ましい。
【0065】
次に、有機酸とポリエチレングリコールの混合物を作製する。その際、重炭酸塩の造粒物に対する有機酸若しくは有機酸とポリエチレングリコールの混合物の重量比は1/10から1/3が好ましい。
【0066】
次に、有機酸とポリエチレングリコールの混合物に無水物とCBD(ここではCBD含有量が6重量%の水溶性粉末)を添加する。この無水物とCBDは、造粒物を作成する工程や造粒物と混合物を混合する工程など、圧縮成型前のいずれかの工程で添加することができるが、造粒物を冷却後、有機酸、ポリエチレングリコール、無水物、CBDを同時に添加し混合して直ちに打錠することが最も望ましい。重炭酸塩に対する無水物の重量比は、1/100から1/5が好ましく、特に、1/100から1/10が好ましい。また、添加するCBDは極微量でよく、上述した実験結果から、錠剤(重炭酸塩と有機酸とポリエチレングリコールと無水物の総量)15gあたり純度100%に換算して0.003mgから1000mg添加することが好ましい。通常の入浴剤や通常の重炭酸入浴剤であれば、十分なリラックス効果を得るためには多量のCBDを添加する必要があるが、本実施例の中性重炭酸入浴剤では、湯水中の重炭酸イオンの濃度を高めることにより一酸化窒素の血管内皮への分泌が盛んになり、血流を飛躍的に促進することができることから、CBDの添加量を格段に少なくすることができる。
【0067】
次に、造粒物(重炭酸塩及びポリエチレングリコール)に混合物(有機酸とポリエチレングリコールと無水物とCBD)を混合した材料を圧縮成形して錠剤を作製する。錠剤を作製する圧縮成形には公知の圧縮成形機を使用できるが、第1のCBD含有重炭酸入浴剤の場合と同様に、例えば、油圧プレス機、単発式打錠機、ロータリー式打錠機、ブリケッティングマシンなどを用いることができる。
【0068】
この打錠機などに用いる杵の大きさは、杵が円形である場合は直径が7mm以上であることが好ましく、杵が三角形や四角形の場合、円形杵に換算して直径が7mm以上となるものが好ましい。杵の厚みについても同様である。円形の錠剤とする場合、錠剤の直径は7mm以上、特に10mm以上が好ましく、厚みも7mm以上、特に10mm以上が好ましい。三角形や四角形等の錠剤とする場合、円形錠剤に換算して、直径及び厚みの各々を7mm以上とすることが好ましい。なお、錠剤は必ずしも平面を持つ円形でなくてもよく、7mm以上の固形物であれば、楕円形でもタブレットでも球体でも、形は何ら制限されない。
【0069】
また、圧縮成形の際に、錠剤の硬度(破壊強度やビッカース硬度)が所定値以上(ここでは錠剤の直径方向の硬度が15kgf以上)となるようにする。硬度は高いほど錠剤中での炭酸ガスの発生がより効果的に起こり浴中への炭酸ガスの溶解が効率的に行われ、泡の径が細かくなり、好ましい結果を生じる。直径方向の破壊強度(kgf)は、岡田精工社製デジタル錠剤硬度計ニュー・スピードチェッカーTS75NLを用いることができる。また、ビッカース硬度(Hv、kgf/mm)の測定は、硬さ試験機の一つである、マイクロビッカース硬さ試験機ミツトヨHM-221を用いることができる。
【0070】
このように、重炭酸塩の造粒物に対する有機酸の量と無水物の量を規定して錠剤を一定サイズの大きさで且つ一定硬度以上にすることで、錠剤中では中和反応が起き、溶解した水溶液は中性から弱アルカリ性とすることができるという効果が発揮される。
【0071】
なお、ここでは、重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製し、有機酸とポリエチレングリコールと無水物とCBDの混合物を混合する方法を例にして説明したが、有機酸をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製し、その造粒物に重炭酸塩とポリエチレングリコールと無水物とCBDの混合物を混合する方法を用いることもできる。この製造方法における重炭酸塩の混合物に対する有機酸の造粒物の重量比は、1/10から1/3が好ましい。また、有機酸に対するポリエチレングリコールの重量比は、1/20から3/20が好ましい。
【0072】
以上が第2のCBD含有重炭酸入浴剤の基本的な構成及び製造方法であるが、第2のCBD含有重炭酸入浴剤には、打錠のための滑沢剤を添加することができ、造粒物に有機酸と無水物とCBDを加え、さらに滑沢剤としてポリエチレングリコールを加えて混合し、圧縮成型して錠剤を得ることが好ましい。また、第2のCBD含有重炭酸入浴剤には、錠剤成形のための離型剤を使用することができ、この離型剤としては、一般的にショ糖やステアリン酸マグネシウムなどが使われるが、特に、n-(ノルマル)オクタンスルホン酸ナトリウムやラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ミリストイルメチルアラニンナトリウムなどから選ばれる1種を含むことで、錠剤を安定的に連続にかつ高速に圧縮成型できる。また、錠剤が湯水に溶解された際、ミクロサイズの発泡を行わせ、溶解後のこの湯水の透明性を維持する上でも、これらの離型剤が最も好ましく用いられる。更に、第2のCBD含有重炭酸入浴剤には、その他の成分(添加物)を必要に応じて混合することができる。その他の添加物として、ヒアルロン酸などの健康成分や香料、色素、界面活性剤などが挙げられる。
【0073】
[第3のCBD含有重炭酸入浴剤]
本実施例の第3の重炭酸入浴剤は、特許文献5の重炭酸入浴剤にCBDを添加したものである。具体的には、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム)とポリエチレングリコールとを造粒又は混合した材料Aと、材料Aに対して重量比が1/50から2/3の有機酸とポリエチレングリコールと炭素数6から18のアルカンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つの界面活性剤(滑沢剤)とを造粒又は混合した材料Bと、L-アスコルビン酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、茶カテキン、エリソルビン酸塩から選ばれる少なくとも1つの塩素中和化合物と、錠剤15gあたり純度100%に換算して0.003mgから1000mgのCBDと、を混合して圧縮成形した錠剤において、錠剤を水1Lあたり15g溶解した後の水溶液のpHが5.5から8.5であり、錠剤の硬度が15kgf以上、錠剤の摩損度が5.0wt%以下であるものである。
【0074】
上水源から取水される水道水は、次亜塩素酸ナトリウムを用いて塩素殺菌を行っている。すなわち、水道水は、浄水場での1次塩素処理を通じて殺菌をすると共に有機化合物を除去し、家庭に給水する直前で更に2次的に塩素を投入して残留塩素を維持して、病原菌による疾病を予防することが行われた上で水圧をかけ、一般家庭に供給されている。しかしながら、上記水道水の消毒に用いられる塩素は皮膚や毛髪のたんぱく質を破壊する性質を持っているため、塩素が皮膚や毛髪に触れれば、皮膚や毛髪を荒らしたり老化させたりすると共に、各種の皮膚トラブルの原因となる。また、塩素はトリハロメタンを生成し、癌の発生起因にもなるとも言われている。この塩素は還元性物質で除去することができるが、通常の入浴剤に還元性物質を添加してシャワーヘッドに装着しても、吐水から1秒以内に湯水が身体にかかるシャワーでは湯水の塩素を有効に除去することはではない。
【0075】
すなわち、浴槽に溜める湯水では、錠剤の溶解成分と塩素が反応するために必要な数十分から数時間の中和反応時間を確保することができるのに対して、シャワーから放出する湯水では、シャワーヘッド内で錠剤の溶解成分と塩素が合流した後、1秒から数秒以内に顔や肌に水道水が到達してしまう。そのため、塩素除去が可能な塩素中和化合物を添加した錠剤であっても、錠剤が半分程溶解する頃には錠剤内で塩素と優先的に反応してしまい、錠剤が未溶解で残っている後半部分ではまったく塩素中和能力がなくなるという状態になってしまう。そこで、第3のCBD含有重炭酸入浴剤では、シャワーヘッドに装着して使用する場合でも、錠剤が溶解し終わるまで塩素中和能力が発揮され、水道水に含まれている塩素を有効に除去できるようにする。
【0076】
この第3のCBD含有重炭酸入浴剤に用いられる重炭酸塩、有機酸、ポリエチレングリコール、CBDに関しては、第1及び第2のCBD含有重炭酸入浴剤と同様であり、その含量は、他の成分との関係において規定される。なお、ポリエチレングリコールは、平均分子量は1000から8000、特に、4000から6000程度のものが好ましい。また、第3のCBD含有重炭酸入浴剤には界面活性剤が添加されることから、CBDは結晶性固形物としてもよい。
【0077】
更に、第3のCBD含有重炭酸入浴剤には、界面活性剤と塩素中和化合物が必須の成分として用いられる。この界面活性剤は、炭素数6から18のアルカンスルホン酸ナトリウム、オレフィンスルホン酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステルなどである。また、使用することが望ましい化合物として、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ミリストイルメチルアラニンナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、n-(ノルマル)オクタンスルホン酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、炭素数14から18のアルカンスルホン酸ナトリウム混合物、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステルが挙げられる。これらの中でも、n-(ノルマル)オクタンスルホン酸ナトリウム、n-ヘプタンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0078】
また、塩素中和化合物は、L-アスコルビン酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、茶カテキン、エリソルビン酸塩などである。アスコルビン酸としては、公知のものを特別の制限なく用いることができる。塩としては、ナトリウム塩やカルシウム塩が例として挙げられるが、ナトリウム塩が好ましい。L-アスコルビン酸は、ビタミンCとして広く知られているが、水道水に添加すると、下記の反応式1、2の反応を経て水道水に含まれている塩素を除去することができる。また、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸塩や亜流酸塩、茶カテキンなどの還元剤もよく似た反応で塩素を中和し無害化することができる。
【0079】
[反応式1]C6H8O6+NaClO→C6H6O6+H2O+NaCl(1次殺菌のために投入される次亜塩素酸ナトリウムをビタミンCが還元し除去する反応)
【0080】
[反応式2]C6H8O6+Cl2→C6H6O6+2HCl(塩素の維持のために投入される塩素をビタミンCにより除去する反応)
【0081】
反応式1、2の反応を経てアスコルビン酸が水道水に溶けると、水道水に含まれている塩素が除去される。これにより、残留塩素が肌に及ぼす問題点である「酸化や老化、ふけ」等の発生を防止することができる。加えて、アスコルビン酸自体の効能である肌の張りの増加、小皺の予防、美肌、美白、アンチエージングなどの効果を発揮することができる。なお、反応式2に示すように、塩素の除去時に少量の塩酸が発生するが、重炭酸イオンと有機酸のバッファー効果により溶解水のpHは緩衝され、シャワー水や風呂水のpHが酸性になってしまうことはなく、水道水のpHは安定である。
【0082】
次に、これらの成分を用いて第3のCBD含有重炭酸入浴剤を製造する方法について説明する。
【0083】
重炭酸入浴剤の基本成分となる重炭酸塩と有機酸とポリエチレングリコールの混合方法としては、第1及び第2のCBD含有重炭酸入浴剤と同様に、(1)重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製し、その造粒物に有機酸とポリエチレングリコールの混合物を混合する方法と、(2)有機酸をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製し、その造粒物に重炭酸塩とポリエチレングリコールの混合物を混合する方法と、(3)重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製すると共に、有機酸をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製し、それらの造粒物を混合する方法と、がある。
【0084】
また、基本成分に界面活性剤と塩素中和化合物とCBDを添加する方法としては、(A)造粒物と混合物又は造粒物と造粒物を混合する際に界面活性剤と塩素中和化合物とCBDを添加する方法と、(B)造粒物を作製する際に界面活性剤と塩素中和化合物とCBDの全てを添加する方法と、(C)造粒物を作製する際に界面活性剤と塩素中和化合物とCBDの少なくとも1つの材料を添加し、他方の造粒物又は混合物と混合する際に界面活性剤と塩素中和化合物とCBDの残りの材料を添加する方法と、がある。
【0085】
いずれの方法を用いても本発明の効果を発揮するCBD含有重炭酸入浴剤を製造することができるが、基本成分の混合方法に関しては、(1)の方法は、錠剤に水が浸透するときに激しく均一にかつ持続的に反応し、かつ発生する炭酸ガス泡はミクロサイズの微細炭酸ガスとして発生させることができ、錠剤は溶解し終わるまでミクロサイズの泡を多数発生し、ほとんどの泡が空気中に出る前に水に溶解して、液中の炭酸ガスと溶解する重炭酸イオンの濃度を最大限に高くできる。また、界面活性剤と塩素中和化合物とCBDの添加方法に関しては、(A)の方法は、基本成分に対して既存の製造方法を利用することができると共に、工程を簡略化できる。従って、第3のCBD含有重炭酸入浴剤の製造方法としては、(1)の方法と(A)の方法とを組み合わせた方法、すなわち、重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作成し、有機酸と界面活性剤とポリエチレングリコールの混合物に塩素中和化合物とCBDを添加して造粒物と混合する方法が好ましい。以下、この方法を前提にして説明する。
【0086】
まず、重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製する。重炭酸塩を流動層で造粒して造粒物を得る際、実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機を用いると錠剤の硬度を著しく高められる。この機械式流動層造粒機は、第1及び第2のCBD含有重炭酸入浴剤の場合と同様であり、例えば、ドイツレーディゲ社製又は松坂技研社製のものが市場で販売されている。その際、重炭酸塩に対するポリエチレングリコールの重量比は1/100から1/5(特に1/100から1/8)が好ましい。
【0087】
次に、有機酸と界面活性剤とポリエチレングリコールの混合物を作製する。その際、重炭酸塩の造粒物に対する有機酸若しくは有機酸と界面活性剤とポリエチレングリコールの混合物の重量比は、1/50から2/3、特に1/10から1/3が好ましい。また、有機酸に対する界面活性剤の重量比は、1/100から1/20が好ましい。
【0088】
次に、有機酸と界面活性剤とポリエチレングリコールの混合物に塩素中和化合物とCBD(ここではCBD含有量が6重量%の水溶性粉末)を添加する。塩素中和化合物は、錠剤15gあたり0.005g程度とすることが好ましい。0.005g未満であれば、塩素の除去能力が低下することがあり、1.0gを超える場合には錠剤の固形化をより困難にするだけでなく、コスト的に不利である。また、添加するCBDは極微量でよく、上述した実験結果から、錠剤(重炭酸塩と有機酸と界面活性剤と塩素中和化合物とポリエチレングリコールの総量)15gあたり純度100%に換算して0.003mgから1000mg添加することが好ましい。通常の入浴剤や通常の重炭酸入浴剤であれば、十分なリラックス効果を得るためには多量のCBDを添加する必要があるが、本実施例の中性重炭酸入浴剤では、湯水中の重炭酸イオンの濃度を高めることにより一酸化窒素の血管内皮への分泌が盛んになり、血流を飛躍的に促進することができることから、CBDの添加量を格段に少なくすることができる。
【0089】
次に、造粒物(重炭酸塩及びポリエチレングリコール)に混合物(有機酸とポリエチレングリコールと界面活性剤と塩素中和化合物とCBD)を混合した材料を圧縮成形して錠剤を作製する。錠剤を作製する圧縮成形も第1及び第2のCBD含有重炭酸入浴剤の場合と同様であり、例えば、油圧プレス機、単発式打錠機、ロータリー式打錠機、ブリケッティングマシンなどを用いることができる。
【0090】
この打錠機などに用いる杵の大きさは、杵が円形である場合は直径が7mm以上であることが好ましく、杵が三角形や四角形の場合、円形杵に換算して直径が7mm以上となるものが好ましい。杵の厚みについても同様である。円形の錠剤とする場合、錠剤の直径は7mm以上、特に10mm以上が好ましく、厚みも7mm以上、特に10mm以上が好ましい。三角形や四角形等の錠剤とする場合、円形錠剤に換算して、直径及び厚みの各々が7mm以上とすることが好ましい。なお、錠剤は必ずしも平面を持つ円形でなくてもよく、7mm以上の固形物であれば、楕円形でもタブレットでも球体でも、形は何ら制限されない。
【0091】
また、錠剤中でミクロサイズの発泡をゆっくり起こさせ、液中への炭酸ガスの溶解をより効率的に行うためには、錠剤の硬度(破壊強度やビッカース硬度)は所定値以上(ここでは錠剤の直径方向の硬度は15kgf以上)、摩損度は5.0wt%以下が好ましい。直径方向の破壊強度(kgf)は、岡田精工社製デジタル錠剤硬度計ニュー・スピードチェッカーTS75NLを用いることができる。また、ビッカース硬度(Hv、kgf/mm)の測定は、硬さ試験機の一つである、マイクロビッカース硬さ試験機ミツトヨHM-221を用いることができる。また、摩損度は以下の方法で求めることができる。例えば、錠剤摩損度試験器(萱垣医理科工業株式会社製)に錠剤重量が31g以上となるように錠剤を入れる。例えば、1錠剤の重量が15gの場合は、錠剤を3個入れ、2分間回転する(回転速度は、25回転/分)。回転終了後の各錠剤の表面の粉をブラシ(例えば化学天秤の清掃用に使用されるブラシ)で払い(摩損)、錠剤摩損度を下記式で求める。
(摩損前錠剤重量(g)総和-摩損後の錠剤重量(g)総和)/摩損前錠剤重量(g)総和]×100=錠剤摩損度(wt%)
【0092】
なお、ここでは、重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作製し、有機酸とポリエチレングリコールと界面活性剤と塩素中和化合物とCBDの混合物を混合する方法を例にして説明したが、有機酸を界面活性剤とポリエチレングリコールとで造粒し、その造粒物に重炭酸塩とポリエチレングリコールと塩素中和化合物とCBDの混合物を混合する方法を用いることもできる。この製造方法における重炭酸塩の混合物に対する有機酸の造粒物の重量比は、1/10から1/3(特に、1/50から2/3)が好ましい。また、有機酸に対するポリエチレングリコールの重量比は、1/20から3/20が好ましい。
【0093】
以上が第3のCBD含有重炭酸入浴剤の基本的な構成及び製造方法であるが、第3のCBD含有重炭酸入浴剤には、無水炭酸ナトリウムや無水炭酸カルシウム、無水炭酸マグネシウムなどの無水物を添加してもよい。無水物を添加することにより、炭酸ガスの泡径を最適な小さなものとしながら、発泡量をより大きく、且つ長時間持続させることができ、特に無水物として無水炭酸ナトリウムを添加した場合に上記効果を発揮させることができる。この無水物は、造粒物を作成する工程や造粒物と混合物を混合する工程など、圧縮成型前のいずれかの工程で添加することができるが、重炭酸塩の造粒物を製造後に混合物を混合する段階で無水物を添加することが望ましく、特に、造粒物を冷却後、有機酸、ポリエチレングリコール、界面活性剤、塩素中和化合物、CBD、無水物を同時に添加し混合して直ちに打錠することが最も望ましい。無水物は、量が多すぎると発泡する泡の量が少なくなってしまい、一方、量が少なすぎると湯水中での炭酸ガスの発生が激しくなり、好ましくない。
【0094】
また、第3のCBD含有重炭酸入浴剤には、打錠のための滑沢剤を添加することができ、造粒物に有機酸と界面活性剤と塩素中和化合物とCBDと無水物を加え、さらに滑沢剤としてポリエチレングリコールを加えて混合し、圧縮成型して錠剤を得ることが好ましい。また、第3のCBD含有重炭酸入浴剤には、錠剤成形のための離型剤を使用することができ、この離型剤としては、一般的にショ糖やステアリン酸マグネシウムなどが使われる。更に、第3のCBD含有重炭酸入浴剤には、その他の成分(添加物)を必要に応じて混合することができる。その他の添加物として、ヒアルロン酸などの健康成分や香料、色素、pH調整剤などが挙げられる。pH調整剤としては、炭酸ナトリウムや有機酸が好ましく用いられるが、錠剤は目や口に入る可能性がある事から、特に食品添加物としてのpH調整剤を用いることが安全上好ましく、例えば、クエン酸三ナトリウム(クエン酸ナトリウム)、クエン酸二ナトリウム、クエン酸一ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0095】
[第4のCBD含有重炭酸入浴剤]
本実施例の第4のCBD含有重炭酸入浴剤は、重炭酸塩と有機酸と塩素中和化合物と滑沢剤とCBDとを混合して圧縮成型したものである。更に、必要に応じて、錠剤の成形性及び湯水への溶解性を向上させるための水溶性高分子などの材料(以下、造粒促進剤と呼ぶ。)を加えて圧縮成型したものである。
【0096】
この第4のCBD含有重炭酸入浴剤に用いられる重炭酸塩、有機酸、CBDに関しては、第1乃至第3のCBD含有重炭酸入浴剤と同様であり、その含量は、他の成分との関係において規定される。また、第4のCBD含有重炭酸入浴剤に用いられる塩素中和化合物に関しては、第3のCBD含有重炭酸入浴剤と同様であり、その含量は、他の成分との関係において規定される。また、第4のCBD含有重炭酸入浴剤に用いられる滑沢剤は、第3のCBD含有重炭酸入浴剤における界面活性剤と同じであり、この滑沢剤として、炭素数6から18のアルカンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、ショ糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つなどを用いることができ、特に、炭素数6から18のアルカンスルホン酸塩及び/又はオレフィンスルホン酸塩は、炭素数14から18のアルカンスルホン酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ノルマルオクタンスルホン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1つとすることが好ましい。
【0097】
また、上記造粒促進剤として、第1乃至第3のCBD含有重炭酸入浴剤と同様に、ポリエチレングリコール(PEG)を用いることができ、特に、PEG6000が好ましい。なお、ポリエチレングリコールは、製造工程において、発がん性物質であるエチレンオキシドや発がん性が疑われる1,4-ジオキサンなどの溶媒が使用されることから、これらの溶媒に汚染されることが懸念されている。また、ポリエチレングリコールは、体内に長く存在することから、アレルギーを引き起こすことも懸念されている。ポリエチレングリコールに代わる材料として、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、カルボキシビニルポリマー、カチオン化ポリマー、スチレン重合体エマルション、ポリリン酸およびその塩、ピロリン酸およびその塩、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびその塩、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、結晶セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル、澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン澱粉、にかわ、寒天、ゼラチン、コラーゲンタンパク、流動パラフィン、カゼイン、ペクチン、アルギン酸およびその塩、カラギーナン、ファーセレラン、タマリンドガム、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、クインスシード、デキストリン、デキストランなどを使用することができる。
【0098】
次に、これらの成分を用いて第4のCBD含有重炭酸入浴剤を製造する方法について説明する。
【0099】
第4のCBD含有重炭酸入浴剤の製造に造粒促進剤を利用する場合は、第3のCBD含有重炭酸入浴剤の製造方法と同様である。具体的には、第4のCBD含有重炭酸入浴剤の製造方法としては、(1)の方法と(A)の方法とを組み合わせた方法、すなわち、重炭酸塩を造粒促進剤でコーティングして造粒物を作成し、有機酸と滑沢剤の混合物に塩素中和化合物とCBDを添加して造粒物と混合する方法が好ましい。以下、この方法を前提にして説明する。
【0100】
まず、重炭酸塩を造粒促進剤でコーティングして造粒物を作製する。本実施例では、重炭酸塩として炭酸水素ナトリウムを用い、造粒促進剤としてPEG6000を用いる。本願発明者の実験によれば、重炭酸塩に対する造粒促進剤の重量比を1/50~1/8に設定することによって、毛細血管をダブルサイズに拡張し、血流を一気に5倍以上に高めることができる。
【0101】
次に、有機酸と滑沢剤の混合物を作製する。本実施例では、有機酸としてクエン酸を用い、滑沢剤として、テトラデセンスルホン酸ナトリウムとオクタンスルホン酸ナトリウムを用いる。本願発明者の実験によれば、重炭酸塩に対する有機酸の重量比を1/8~2/7に設定することによって、毛細血管をダブルサイズに拡張し、血流を一気に5倍以上に高めることができる。なお、有機酸と滑沢剤の混合物を造粒しない場合は、造粒促進剤を添加しなくてもよいが、打錠性を良くするために造粒促進剤を添加してもよい。
【0102】
次に、有機酸と滑沢剤の混合物に塩素中和化合物とCBD(ここではCBD含有量が6重量%の水溶性粉末)を添加する。本実施例では、塩素中和化合物としてL-アスコルビン酸ナトリウムを用いる。本願発明者の実験によれば、錠剤に対する塩素中和化合物の重量比を1/1500~1/30に設定することによって、毛細血管をダブルサイズに拡張し、血流を一気に5倍以上に高めることができる。
【0103】
次に、造粒物(重炭酸塩及び造粒促進剤)に混合物(有機酸と滑沢剤と塩素中和化合物とCBD)を混合した材料を圧縮成形して錠剤を作製する。錠剤を作製する圧縮成形には公知の圧縮成形機を使用することができるが、例えば、油圧プレス機、単発式打錠機、ロータリー式打錠機、ブリケッティングマシンなどを用いることができる。
【0104】
この圧縮成形の際に、錠剤の硬度(ここでは破壊強度)が所定値以上となるようにする。硬度は高いほど錠剤中での炭酸ガスの発生がより効果的に起こり湯水中への炭酸ガスの溶解が効率的に行われ、泡の径が細かくなり、好ましい結果を生じる。本願発明者の実験によれば、錠剤の硬度を20kgf以上にすることによって、毛細血管をダブルサイズに拡張し、血流を一気に5倍以上に高めることができる。この直径方向の破壊強度(kgf)は、岡田精工社製デジタル錠剤硬度計ニュー・スピードチェッカーTS75NLを用いて測定することができる。
【0105】
以上が第4のCBD含有重炭酸入浴剤の基本的な構成及び製造方法であるが、第4のCBD含有重炭酸入浴剤には、無水炭酸ナトリウムや無水炭酸カリウム、無水炭酸カルシウム、無水炭酸マグネシウムなどの無水物を添加してもよい。また、第4のCBD含有重炭酸入浴剤には、錠剤成形のための離型剤を使用することができる。この離型剤としては、一般的にショ糖やステアリン酸マグネシウムなどが使われるが、ステアリン酸マグネシウムが、錠剤を安定に連続かつ高速に圧縮成型できることから最も好ましい。更に、第4のCBD含有重炭酸入浴剤には、その他の成分を必要に応じて混合することができる。その他の成分として、ヒアルロン酸などの健康成分や香料、色素、界面活性剤などが挙げられる。
【0106】
以上、第1乃至第4のCBD含有重炭酸入浴剤及びその製造方法について説明したが、これらのCBD含有重炭酸入浴剤を用いて中性重炭酸温浴NO療法を行ったところ、アトピーや肌荒れ、原因不明の不調や症状の改善が求められた。このことから、特許文献3~5の中性重炭酸入浴剤とCBDとを組み合わせることによって、極微量のCBDを添加するだけで、CBDが持つ効果をより高く発揮できることが証明された。
【0107】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、その構成は適宜変更可能である。
【0108】
例えば、上記実施例では、CBDを、CBD含有量が6重量%の水溶性粉末として添加する場合について記載したが、水溶性粉末におけるCBDの含有量は6重量%に限定されない。
【0109】
また、上記実施例では、重炭酸塩をポリエチレングリコールでコーティングして造粒物を作成し、有機酸とポリエチレングリコールとCBD(必要に応じて、無水物、界面活性剤、塩素中和化合物)を混合する方法を例にして説明したが、他の方法を用いて錠剤を製造してもよい。
【0110】
また、上記実施例の第1乃至第3のCBD含有重炭酸入浴剤では、本願発明者が発明した特許文献3~5の錠剤にCBDを添加する場合について記載したが、第4のCBD含有重炭酸入浴剤で示したように、入浴剤が溶解した湯水のpHが中性領域(pHが7前後)になり、重炭酸イオンの効果によって同等に血流を促進することができる他の重炭酸入浴剤にCBDを添加するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、重炭酸入浴剤及びその製造方法に利用可能であり、特に、CBD(カンナビジオール)を含有した重炭酸入浴剤及びその製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 表皮
2 真皮/皮下脂肪組織
3 毛孔
4 汗孔
5 血管
6 血管壁
7 平滑筋
8 血管内皮細胞
9 血管内
図1
図2