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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106312
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】紡糸生産設備
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/092 20060101AFI20240731BHJP
   D01D 5/096 20060101ALI20240731BHJP
   D01D 5/08 20060101ALI20240731BHJP
   D01D 7/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
D01D5/092 101
D01D5/096 Z
D01D5/08 A
D01D7/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209909
(22)【出願日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2023010416
(32)【優先日】2023-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】橋本 欣三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳平
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 真子
【テーマコード(参考)】
4L045
【Fターム(参考)】
4L045AA05
4L045BA03
4L045CB11
4L045DA21
4L045DA49
4L045DA50
4L045DB11
4L045DB13
4L045DC31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】1つの口金から紡出された複数のフィラメントが2つに分けて束ねられて2本の糸として下方に紡出される構成において、適切に冷却する紡糸生産設備。
【解決手段】紡糸生産設備は、複数の吐出口が形成された口金24を有する紡糸装置と、口金の下方に配置された冷却装置と、さらに下方に配置された給油ユニット5と、を含む。複数の吐出口は、仮想分割面Xによって、第1吐出口群と第2吐出口群とに分けられる。給油ユニットは、第1給油面52aを有する第1給油ガイド51aと、第2給油面52bを有する第2給油ガイド51bと、を含む。紡糸生産設備は、冷却装置の下方且つ給油ユニットの上方に配置された第1集束ガイド30a及び第2集束ガイド30bをさらに含む。第1と第2の集束ガイド間の距離は、給油ユニットの第1と第2の給油ガイド間の距離よりも小さく、且つ、第1吐出口群の重心位置と第2吐出口群の重心位置との間の距離よりも小さい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィラメントを下方に紡出する複数の吐出口が形成された口金を有する紡糸装置と、
前記口金の下方に配置され、前記複数のフィラメントを冷却風によって冷却する冷却装置と、
前記冷却装置のさらに下方に配置され、前記複数のフィラメントが2つに分けて束ねられることで構成される第1糸及び第2糸に油剤を付与する給油ユニットと、
を備え、
前記複数の吐出口は、鉛直方向と交差する方向である所定幅方向に広がりつつ前記鉛直方向に延びる仮想分割面によって、前記第1糸を構成する複数のフィラメントを紡出する第1吐出口群と前記第2糸を構成する複数のフィラメントを紡出する第2吐出口群とに分けられており、
前記給油ユニットは、
前記第1糸を構成する複数のフィラメントからなる第1フィラメント群が走行しながら接触する第1給油面と、水平方向における前記第1給油面の両側に形成され前記第1フィラメント群を前記第1給油面に案内するための一対の第1糸案内部材と、を有する第1給油ガイドと、
前記第2糸を構成する複数のフィラメントからなる第2フィラメント群が走行しながら接触する第2給油面と、水平方向における前記第2給油面の両側に形成され前記第2フィラメント群を前記第2給油面に案内するための一対の第2糸案内部材と、を有する第2給油ガイドと、
を含み、
前記冷却装置の下方且つ前記給油ユニットの上方に配置され、前記第1フィラメント群が掛けられる第1集束ガイドと、
前記冷却装置の下方且つ前記給油ユニットの上方に配置され、前記第2フィラメント群が掛けられる第2集束ガイドと、
をさらに備え、
前記第1集束ガイドと前記第2集束ガイドとの間の前記水平方向における距離は、前記第1給油ガイドと前記第2給油ガイドとの間の前記水平方向における距離よりも小さく、且つ、前記第1吐出口群の重心位置と前記第2吐出口群の重心位置との間の前記水平方向における距離よりも小さく、
前記鉛直方向から見たときに、前記第1給油ガイドが前記仮想分割面に対して前記第1吐出口群と同じ側に配置されており、前記第2給油ガイドが前記仮想分割面に対して前記第2吐出口群と同じ側に配置されており、
前記第1給油面は、水平方向である所定の第1幅方向に広がりつつ上下に延びる面となっており、
前記第2給油面は、水平方向である所定の第2幅方向に広がりつつ上下に延びる面となっており、
前記鉛直方向から見たときに、前記第1幅方向と前記仮想分割面とが平行且つ前記第1給油面が前記仮想分割面と向かい合う向きとは反対向きのときの、前記第1幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度を0度とした場合において、
前記鉛直方向から見たときに、前記第1幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度が+90度から-90度の範囲内であり、
前記鉛直方向から見たときに、前記第2幅方向と前記仮想分割面とが平行且つ前記第2給油面が前記仮想分割面と向かい合う向きとは反対向きのときの、前記第2幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度を0度とした場合において、
前記鉛直方向から見たときに、前記第2幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度が+90度から-90度の範囲内であることを特徴とする紡糸生産設備。
【請求項2】
前記第1吐出口群は、前記所定幅方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数が、前記所定幅方向と交差する任意の方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数よりも多くなるように構成されており、
前記第2吐出口群は、前記所定幅方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数が、前記所定幅方向と交差する任意の方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数よりも多くなるように構成されており、
前記鉛直方向から見たとき、前記第1幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度及び前記第2幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度がそれぞれ+45度から-45度の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の紡糸生産設備。
【請求項3】
前記鉛直方向から見たときに、
前記第1吐出口群と前記第2吐出口群とは、前記仮想分割面の延びる方向を軸として線対称となるように配置されており、
前記第1集束ガイドと前記第2集束ガイドとは、前記仮想分割面の延びる方向を軸として線対称となるように配置されており、
前記第1給油面と前記第2給油面とは、前記仮想分割面の延びる方向を軸として線対称となるように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の紡糸生産設備。
【請求項4】
前記第1糸及び前記第2糸が走行する糸走行方向において、前記給油ユニットよりも下流側には、前記第1糸及び前記第2糸を引き取るための引取ローラが配置されており、
前記第1集束ガイドは、前記引取ローラによって前記第1糸が引き取られるときの規制位置と、前記第1集束ガイドに前記第1フィラメント群が掛けられるときの糸掛位置との間で切り替え可能であって、
前記第2集束ガイドは、前記引取ローラによって前記第2糸が引き取られるときの規制位置と、前記第2集束ガイドに前記第2フィラメント群が掛けられるときの糸掛位置との間で切り替え可能であって、
前記糸掛位置にある前記第1集束ガイドと前記糸掛位置にある前記第2集束ガイドとの間の距離は、前記規制位置にある前記第1集束ガイドと前記規制位置にある前記第2集束ガイドとの間の距離よりも大きいことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の紡糸生産設備。
【請求項5】
前記第1集束ガイド及び前記第2集束ガイドのそれぞれは、棒状のバーガイドであることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の紡糸生産設備。
【請求項6】
前記各バーガイドは、その延在方向に沿った軸心を回転軸として回転可能であることを特徴とする請求項5に記載の紡糸生産設備。
【請求項7】
前記第1集束ガイドと前記第2集束ガイドとの間の距離は、1mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の紡糸生産設備。
【請求項8】
前記冷却装置は、走行する複数のフィラメントの全周にわたって冷却風を吹き付ける環状冷却装置であることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の紡糸生産設備。
【請求項9】
前記第1集束ガイド及び前記第2集束ガイドは、鉛直方向において、前記給油ユニットよりも前記冷却装置に近い位置に配置されていることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の紡糸生産設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの口金から紡出された複数のフィラメントが2つに分けて束ねられることで2本の糸として下方に紡出される構成の紡糸生産設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下端部に設けられた複数の口金から糸を下方に紡出する紡糸装置と、紡糸装置から紡出された糸に油剤を付与する給油ユニットと、を有する紡糸生産設備が知られている。各口金には、複数のフィラメントを紡出する複数の吐出口が形成されている。複数の吐出口から紡出された複数のフィラメントが束になって糸を形成する。
【0003】
例えば、特許文献1には、生産効率化のために、1つの口金(特許文献1の紡糸口金)から紡出された複数のフィラメントが複数(例えば2つ)に分けて束ねられることで複数の糸(例えば2本)として下方に紡出される構成が開示されている。口金の下方には冷却装置が配置され、冷却装置のさらに下方には複数の糸に油剤を付与するための給油ユニット(特許文献1の給油ノズルユニット)が配置されている。冷却装置は、1つの口金から紡出された複数のフィラメントの周囲から冷却風を吹き付ける。給油ユニットは、1つの口金から紡出された複数のフィラメントが分けて掛けられる複数の給油ガイドを有する。1つの口金から下方に紡出された複数のフィラメントは、冷却装置から供給される冷却風によってまとめて冷却される。その後、複数のフィラメントは、各糸を構成する複数のフィラメントごとに各給油ガイドによって油剤が付与される。すなわち、1つの口金から紡出された複数のフィラメントは、各糸を構成する複数のフィラメントからなる複数のフィラメント群として、各給油ガイドに向かって走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-196219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、1つの口金から紡出される各フィラメント群は、互いに異なる給油ガイドに向かって走行する。そうすると、1つの口金から各給油ガイドに向かう複数のフィラメント群同士の間には空間が形成される。この空間に冷却装置からの冷却風が入り込むと、空間内で気流の乱れが発生する。そうすると、複数のフィラメントに吹き付けられる冷却風が乱れて、各フィラメントの全周において冷却され易い箇所と冷却されにくい箇所が生じてしまい、冷却風による複数のフィラメントへの冷却作用が不均一となる。その結果、複数のフィラメントからなる糸の品質が悪化する。
【0006】
本発明の目的は、1つの口金から紡出された複数のフィラメントが2つに分けて束ねられることで2本の糸として下方に紡出される構成において、複数のフィラメントを適切に冷却するようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の紡糸生産設備は、複数のフィラメントを下方に紡出する複数の吐出口が形成された口金を有する紡糸装置と、前記口金の下方に配置され、前記複数のフィラメントを冷却風によって冷却する冷却装置と、前記冷却装置のさらに下方に配置され、前記複数のフィラメントが2つに分けて束ねられることで構成される第1糸及び第2糸に油剤を付与する給油ユニットと、を備え、前記複数の吐出口は、鉛直方向と交差する方向である所定幅方向に広がりつつ前記鉛直方向に延びる仮想分割面によって、前記第1糸を構成する複数のフィラメントを紡出する第1吐出口群と前記第2糸を構成する複数のフィラメントを紡出する第2吐出口群とに分けられており、前記給油ユニットは、前記第1糸を構成する複数のフィラメントからなる第1フィラメント群が走行しながら接触する第1給油面と、水平方向における前記第1給油面の両側に形成され前記第1フィラメント群を前記第1給油面に案内するための一対の第1糸案内部材と、を有する第1給油ガイドと、前記第2糸を構成する複数のフィラメントからなる第2フィラメント群が走行しながら接触する第2給油面と、水平方向における前記第2給油面の両側に形成され前記第2フィラメント群を前記第2給油面に案内するための一対の第2糸案内部材と、を有する第2給油ガイドと、を含み、前記冷却装置の下方且つ前記給油ユニットの上方に配置され、前記第1フィラメント群が掛けられる第1集束ガイドと、前記冷却装置の下方且つ前記給油ユニットの上方に配置され、前記第2フィラメント群が掛けられる第2集束ガイドと、をさらに備え、前記第1集束ガイドと前記第2集束ガイドとの間の前記水平方向における距離は、前記第1給油ガイドと前記第2給油ガイドとの間の前記水平方向における距離よりも小さく、且つ、前記第1吐出口群の重心位置と前記第2吐出口群の重心位置との間の前記水平方向における距離よりも小さく、前記鉛直方向から見たときに、前記第1給油ガイドが前記仮想分割面に対して前記第1吐出口群と同じ側に配置されており、前記第2給油ガイドが前記仮想分割面に対して前記第2吐出口群と同じ側に配置されており、前記第1給油面は、水平方向である所定の第1幅方向に広がりつつ上下に延びる面となっており、前記第2給油面は、水平方向である所定の第2幅方向に広がりつつ上下に延びる面となっており、前記鉛直方向から見たときに、前記第1幅方向と前記仮想分割面とが平行且つ前記第1給油面が前記仮想分割面と向かい合う向きとは反対向きのときの、前記第1幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度を0度とした場合において、前記鉛直方向から見たときに、前記第1幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度が+90度から-90度の範囲内であり、前記鉛直方向から見たときに、前記第2幅方向と前記仮想分割面とが平行且つ前記第2給油面が前記仮想分割面と向かい合う向きとは反対向きのときの、前記第2幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度を0度とした場合において、前記鉛直方向から見たときに、前記第2幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度が+90度から-90度の範囲内であることを特徴とするものである。「第1幅方向が仮想分割面に対してなす角度が+90度」とは、鉛直方向から見たときに、第1幅方向の延びる方向が、仮想分割面を基準として時計回りに90度傾いた方向であることを意味する。「第1幅方向が仮想分割面に対してなす角度が-90度」とは、鉛直方向から見たときに、第1幅方向の延びる方向が、仮想分割面を基準として反時計回りに90度傾いた方向であることを意味する。「第2幅方向が仮想分割面に対してなす角度が+90度」とは、鉛直方向から見たときに、第2幅方向の延びる方向が、仮想分割面を基準として時計回りに90度傾いた方向であることを意味する。「第2幅方向が仮想分割面に対してなす角度が-90度」とは、鉛直方向から見たときに、第2幅方向の延びる方向が、仮想分割面を基準として反時計回りに90度傾いた方向であることを意味する。
【0008】
本発明によれば、口金から紡出された第1フィラメント群は給油ユニットの上方で第1集束ガイドに掛けられ、口金から紡出された第2フィラメント群は給油ユニットの上方で第2集束ガイドに掛けられる。このとき、第1集束ガイドと第2集束ガイドとの間の距離は、第1給油ガイドと第2給油ガイドとの間の距離よりも小さく、且つ、第1吐出口群の重心位置と第2吐出口群の重心位置との間の距離よりも小さい。よって、1つの口金と各給油ガイドとの間を走行する2つのフィラメント群は、給油ユニットの上方にある各集束ガイドに掛けられることによって一旦集束される形となる。そうすると、1つの口金と各給油ガイドとの間を走行する2つのフィラメント群、すなわち、冷却装置から冷却風を吹き付けられる領域を通過する2つのフィラメント群同士の間に形成される空間を小さくすることができる。これにより、冷却装置からの冷却風が空間に入り込むことによって引き起こされる気流の乱れが抑制され、冷却風が適切に各フィラメントに吹き付けられる。よって、複数のフィラメントを適切に冷却することができる。
【0009】
また、本発明の構成では、第1給油ガイドが仮想分割面に対して第1吐出口群と同じ側に配置されており、第2給油ガイドが仮想分割面に対して第2吐出口群と同じ側に配置されている。すなわち、仮想分割面は第1給油ガイドと第2給油ガイドとの間に存在する仮想面である。このような構成において、本発明では、第1幅方向が仮想分割面に対してなす角度及び第2幅方向が仮想分割面に対してなす角度がそれぞれ+90度から-90度の範囲内である。すなわち、第1給油面と仮想分割面とが向かい合うことがない。第2給油面についても同様である。このため、第1給油面に第1フィラメント群を掛ける際に、第1給油ガイドと第2給油ガイドの間にある仮想分割面の側から第1フィラメント群を掛ける必要がなく、第2給油ガイドが邪魔になることがない。第2給油面に第2フィラメント群を掛ける際も同様である。したがって、各給油面に各フィラメント群を掛けることが容易となる。
【0010】
本発明の紡糸生産設備では、前記第1吐出口群は、前記所定幅方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数が、前記所定幅方向と交差する任意の方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数よりも多くなるように構成されており、前記第2吐出口群は、前記所定幅方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数が、前記所定幅方向と交差する任意の方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数よりも多くなるように構成されており、前記鉛直方向から見たとき、前記第1幅方向が仮想分割面に対してなす角度及び前記第2幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度がそれぞれ+45度から-45度の範囲内であることが好ましい。
【0011】
本発明では、第1吐出口群及び第2吐出口群は、所定幅方向に沿って並んだ吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる吐出口の数が、所定幅方向とは異なる方向に沿って並んだ吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる吐出口の数よりも多くなるように構成されている。したがって、第1吐出口群及び第2吐出口群から紡出される複数のフィラメントは、それぞれ、鉛直方向から見たときに、仮想分割面の延びる所定幅方向を最も広がる方向として並んで走行し、下方にある給油ユニットに向かう。この点、本発明によれば、鉛直方向から見たときに、第1幅方向が仮想分割面に対してなす角度、及び、第2幅方向が仮想分割面に対してなす角度がいずれも+45度から-45度の範囲内である。このため、鉛直方向から見たときに、第1吐出口群から紡出される複数のフィラメントの最も広がる方向(すなわち所定幅方向)と、第1給油面の第1幅方向とが交差する角度をできるだけ小さくすることができる。同様に、第2吐出口群から紡出される複数のフィラメントの最も広がる方向(すなわち所定幅方向)と、第2給油面の第2幅方向とが交差する角度をできるだけ小さくすることができる。これにより、各給油面に対して、各吐出口群から紡出される複数のフィラメントをできるだけ広げた状態で接触させることができる。これにより、フィラメント同士の重なりを減らすことができ、できるだけ多くのフィラメントを給油面に直接接触させることができる。よって、複数のフィラメントに対して効率良く油剤を付与することができる。
【0012】
本発明の紡糸生産設備では、前記鉛直方向から見たときに、前記第1吐出口群と前記第2吐出口群とは、前記仮想分割面の延びる方向を軸として線対称となるように配置されており、前記第1集束ガイドと前記第2集束ガイドとは、前記仮想分割面の延びる方向を軸として線対称となるように配置されており、前記第1給油面と前記第2給油面とは、前記仮想分割面の延びる方向を軸として線対称となるように配置されていることが好ましい。
【0013】
1つの口金の2つの吐出口群から紡出された複数のフィラメントは、紡糸装置と給油ユニットとの間に配置された冷却装置から供給される冷却風によって冷却される。本発明によれば、第1吐出口群から紡出されて第1集束ガイドを経由して第1給油面に至るまでの第1フィラメント群の経路と、第2吐出口群から紡出されて第2集束ガイドを経由して第2給油面に至るまでの第2フィラメント群の経路とが、仮想分割面を境にして面対称となる。このため、第1吐出口群から紡出された複数のフィラメントと、第2吐出口群から紡出された複数のフィラメントとは、紡糸装置と給油ユニットの間に配置される冷却装置からの冷却風が吹きつけられる経路長が同じとなる。これにより、1つの口金の2つの吐出口群から紡出される複数のフィラメントから構成される2本の糸の品質を均一にすることができる。
【0014】
本発明の紡糸生産設備では、前記第1糸及び前記第2糸が走行する糸走行方向において、前記給油ユニットよりも下流側には、前記第1糸及び前記第2糸を引き取るための引取ローラが配置されており、前記第1集束ガイドは、前記引取ローラによって前記第1糸が引き取られるときの規制位置と、前記第1集束ガイドに前記第1フィラメント群が掛けられるときの糸掛位置との間で切り替え可能であって、前記第2集束ガイドは、前記引取ローラによって前記第2糸が引き取られるときの規制位置と、前記第2集束ガイドに前記第2フィラメント群が掛けられるときの糸掛位置との間で切り替え可能であって、前記糸掛位置にある前記第1集束ガイドと前記糸掛位置にある前記第2集束ガイドとの間の距離は、前記規制位置にある前記第1集束ガイドと前記規制位置にある前記第2集束ガイドとの間の距離よりも大きいことが好ましい。
【0015】
第1集束ガイド及び第2集束ガイドが糸掛位置にあるときの第1集束ガイドと第2集束ガイドとの間の距離は、第1集束ガイド及び第2集束ガイドが規制位置にあるときの第1集束ガイドと第2集束ガイドとの間の距離よりも大きい。このため、各集束ガイドを糸掛位置に切り換えることで、各集束ガイドにフィラメント群を掛けることが容易となる。
【0016】
本発明の紡糸生産設備では、前記第1集束ガイド及び前記第2集束ガイドのそれぞれは、棒状のバーガイドであることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、棒状のバーガイドである各集束ガイドにフィラメント群を沿わせながら掛ければよく、各集束ガイドにフィラメント群を掛けることが容易となる。
【0018】
本発明の紡糸生産設備では、前記各バーガイドは、その延在方向に沿った軸心を回転軸として回転可能であることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、各集束ガイドに掛けられたフィラメント群が走行するのに従ってバーガイドである集束ガイドを回転させることによって、各フィラメントと各集束ガイドとが接触していることによってフィラメントが受ける摩擦力を低減することができる。その結果、各フィラメント群から構成される糸の品質の低下を抑制することができる。
【0020】
本発明の紡糸生産設備では、前記第1集束ガイドと前記第2集束ガイドとの間の距離は、1mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0021】
第1集束ガイドと第2集束ガイドとの間の距離が小さすぎると、各集束ガイドに掛けられた各フィラメント群同士が絡まってしまうおそれがある。逆に、第1集束ガイドと第2集束ガイドとの間の距離が大きすぎると、1つの口金と各給油ガイドとの間で2つのフィラメント群を十分に集束させることができず、1つの口金と各給油ガイドとの間を走行する2つのフィラメント群同士の間に形成される空間の大きさを低減するのに限界がある。本発明によれば、上記問題を解決し、各集束ガイドに掛けられた各フィラメント群が絡まることを抑制しつつ、1つの口金と各給油ガイドとの間を走行する2つのフィラメント群同士の間に形成される空間の大きさをさらに減少させることができる。
【0022】
本発明の紡糸生産設備では、前記冷却装置は、走行する複数のフィラメントの全周にわたって冷却風を吹き付ける環状冷却装置であることが好ましい。
【0023】
環状冷却装置によって複数のフィラメントの全周にわたって冷却風を吹き付ける場合、1つの口金とその下方にある複数の給油ガイドとの間を走行する複数のフィラメント群同士の間に形成される空間には、より多くの冷却風が入り込みやすい。よって、空間内での気流の乱れも発生しやすい。本発明によれば、環状冷却装置を備える構成において、冷却装置からの冷却風が空間に入り込むことによって引き起こされる気流の乱れを効果的に抑制することができる。よって、複数のフィラメントをより適切に冷却することができる。
【0024】
本発明の紡糸生産設備では、前記第1集束ガイド及び前記第2集束ガイドは、鉛直方向において、前記給油ユニットよりも前記冷却装置に近い位置に配置されていることが好ましい。
【0025】
本発明によれば、1つの口金と各給油ガイドとの間を走行する2つのフィラメント群は、鉛直方向において、各給油ガイドよりも冷却装置に近い位置で一旦収束される形となる。このため、1つの口金と各集束ガイドとの間を走行する2つのフィラメント群同士、すなわち、冷却装置を通過する2つのフィラメント群同士の間に形成される空間の大きさをさらに減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る紡糸生産設備の側面図である。
図2】本実施形態に係る紡糸装置、及び、冷却装置の一部断面図である。
図3】本実施形態に係る口金の下面図である。
図4】1つの口金とその下方に配置された集束ガイド及び給油ユニットを示す図である。
図5】本実施形態に係る集束ガイドを示す斜視図である。
図6】本実施形態に係る給油ガイドの上面図である。
図7】糸掛位置にある集束ガイドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(紡糸生産設備1の全体構成)
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る紡糸生産設備1の側面図である。図2は、紡糸装置2及び冷却装置4の一部断面図である。図3は、口金24の下面図である。図4は、複数の口金24のうちの任意の1つの口金24とその下方に配置された給油ユニット5を示す図である。図5は、集束ガイド30を示す斜視図である。図6は、給油ガイド51の上面図である。なお、図1及び図2では、集束ガイド30の記載は省略している。以下、図1における前後左右上下方向を、紡糸生産設備1の前後左右上下方向と定義する。上下方向は、本発明の鉛直方向であって、重力が作用する方向である。
【0028】
紡糸生産設備1は、図1に示すように、紡糸装置2と、紡糸引取装置3とを備えている。紡糸装置2は、溶融したポリマーを糸Yとして下方に紡出する装置である。紡糸引取装置3は、紡糸装置2から紡出された糸Yを引き取る装置であって、冷却装置4と、複数の給油ユニット5と、複数の糸道規制ガイド6と、櫛歯ガイド7と、ゴデットローラ8及び9と、紡糸巻取装置10とを備えている。
【0029】
図2に示すように、紡糸装置2は、紡糸ビーム21と、紡糸ビーム21の下部に形成された収容部に取り付けられた複数の紡糸パック22と、糸Yの材料であるポリマーが収容されたポリマータンク23と、を備えている。紡糸ビーム21は、内部に配置された紡糸パック22、ポリマータンク23、紡糸パック22とポリマータンク23とを接続するポリマー配管25などを加熱することが可能である。紡糸ビーム21は、例えば、平面視で左右方向を長辺とする長方形形状である。そして、平面視で長方形の紡糸ビーム21に対して、複数の紡糸パック22が千鳥状に2列に配置されている。言い換えれば、長方形の紡糸ビーム21に対して、複数の紡糸パック22が前後2列に配置され、左右方向における紡糸パック22の配置される位置が、1列目の紡糸パック22と2列目の紡糸パック22とで左右にずれている。
【0030】
紡糸パック22は、内部に溶融ポリマーが貯留されており、下端部には口金24が形成されている。本実施形態では、各口金24からは、2本の糸Y(以下、第1糸Y1及び第2糸Y2とも言う)を構成する複数のフィラメントFが紡出される(図4参照)。図3に示すように、口金24は、下方から見たときに略円形の形状である。口金24の直径は、例えば、85mmである。口金24には、複数のフィラメントFを下方に紡出するための複数の吐出口26が全体にわたって形成されている。より詳細には、複数の吐出口26は、前後方向及び左右方向に並んで配置されており、例えば、1つの口金24あたりに144個の吐出口26が形成されている。紡糸パック22の内部に貯留された溶融ポリマーは、各口金24に形成された複数の吐出口26から、複数のフィラメントFとして下方に紡出される。
【0031】
図3に示すように、複数の吐出口26は、第1糸Y1(図4参照)を構成する複数のフィラメントFを紡出する第1吐出口群26Aと、第2糸Y2(図4参照)を構成する複数のフィラメントFを紡出する第2吐出口群26Bとに分けられている。より詳細には、複数の吐出口26は、前後方向(本発明の所定幅方向)に広がりつつ上下方向に延びる仮想分割面Xによって第1吐出口群26Aと第2吐出口群26Bとに分けられている(図3及び図4を参照)。図3に示すように、上下方向から見たときに、第1吐出口群26Aと第2吐出口群26Bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されている。第1吐出口群26Aは、72個の吐出口26からなる。図3に示すように、第1吐出口群26Aは、前後方向に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数が、前後方向と交差する任意の方向(例えば、左右方向、左後から右前に向かう方向等)に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数よりも多くなるように構成されている。別の言い方をすれば、第1吐出口群26Aは、前後方向に沿って配置される吐出口26の数が前後方向とは異なる方向に沿って配置される吐出口26の数と比べて最も多くなるように構成されている。第2吐出口群26Bは、72個の吐出口26からなる。図3に示すように、第2吐出口群26Bは、前後方向に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数が、前後方向と交差する任意の方向(例えば、左右方向、左後から右前に向かう方向等)に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数よりも多くなるように構成されている。別の言い方をすれば、第2吐出口群26Bは、前後方向に沿って配置される吐出口26の数が前後方向とは異なる方向に沿って配置される吐出口26の数と比べて最も多くなるように構成されている。図4に示すように、第1吐出口群26Aから紡出された複数のフィラメントFは束ねられて第1糸Y1を構成する。また、第2吐出口群26Bから紡出された複数のフィラメントFは束ねられて第2糸Y2を構成する。すなわち、2本の糸Y(第1糸Y1及び第2糸Y2)は、1つの口金24から紡出される複数のフィラメントFが2つに分割されて束ねられることで構成される。
【0032】
ポリマータンク23は、内部にポリマーを収容する部分であり、ポリマータンク23内のポリマーは複数のポリマー配管25を介して、複数の紡糸パック22へと送られる。ポリマータンク23から紡糸パック22にポリマーが送られるとき、ポリマータンク23及びポリマー配管25の内部のポリマーは、紡糸ビーム21によって所定の温度で加熱され、溶融ポリマーとなる。
【0033】
冷却装置4は、冷却風によって、紡糸パック22から紡出された糸Yを冷却する装置である。より具体的には、冷却装置4は、紡糸パック22の下端部に形成された口金24から紡出される複数のフィラメントFを冷却風によって冷却する装置である。冷却装置4は、走行する複数のフィラメントFの全周にわたって冷却風を吹き付ける環状冷却装置である。冷却装置4は、図2に示すように、紡糸ビーム21の下方に配置されており、複数の冷却筒41と、複数の冷却筒41が収容された冷却風供給箱42とを備えている。複数の冷却筒41は、複数の紡糸パック22の直下にそれぞれ配置されている。冷却筒41は、上下方向に延びた略円筒形状の部材であり、内部に上下方向の両端が開口した糸走行空間43が形成されている。冷却筒41の糸走行空間43の側壁を形成する部分では、冷却風供給箱42の内部空間44からそれぞれの糸走行空間43に流れ込む冷却風の整流が行われる。内部空間44は、各糸走行空間43の全周にわたって設けられている。冷却風供給箱42のそれぞれの内部空間44には、不図示のダクトから不図示の冷却空気配管を通って冷却風が送られる。なお、冷却空気配管は、図2において、冷却装置4の紙面裏側に配置されている。
【0034】
給油ユニット5は、複数の紡糸パック22から下方に紡出された複数の糸Yに油剤を付与する。より具体的には、給油ユニット5は、複数のフィラメントFが2つに分けて束ねられることで構成される2本の糸Y(第1糸Y1及び第2糸Y2)に油剤を付与するものである。複数の給油ユニット5は、図2に示すように、複数の冷却筒41の直下に配置されている。すなわち、各給油ユニット5は、複数の紡糸パック22に対応して設けられている。
【0035】
各給油ユニット5は、1つの口金24から紡出される2本の糸Y(第1糸Y1及び第2糸Y2)のそれぞれを構成する複数のフィラメントFからなる2つのフィラメント群がそれぞれ掛けられる2つの給油ガイド51を有する。具体的には、各給油ユニット5は、2つの給油ガイド51として、第1吐出口群26Aから紡出された複数のフィラメントFの束(以下、第1フィラメント群と称する)が掛けられる第1給油ガイド51aと、第2吐出口群26Bから紡出された複数のフィラメントFの束(以下、第2フィラメント群と称する)が掛けられる第2給油ガイド51bとを有する。上下方向から見たときに、第1給油ガイド51aは仮想分割面Xに対して第1吐出口群26Aと同じ側に配置されており、第2給油ガイド51bは仮想分割面Xに対して第2吐出口群26Bと同じ側に配置されている。より具体的には、第1給油ガイド51aは、第1吐出口群26Aの重心位置の略直下に配置されている。ここで、第1吐出口群26Aの重心位置とは、第1吐出口群26Aに含まれる各吐出口26の中心に同じ重み付けをしたと仮定した場合に、上下方向から見たときにおける第1吐出口群26Aに含まれる各吐出口26の中心の重心位置(幾何中心)のことを指す。ここでいう重心位置とは、第1吐出口群26Aに含まれる複数の吐出口26の中心に対して1つ設定される位置である。また、第2給油ガイド51bは、第2吐出口群26Bの重心位置の略直下に配置されている。ここで、第2吐出口群26Bの重心位置とは、第2吐出口群26Bに含まれる各吐出口26の中心に同じ重み付けをしたと仮定した場合に、上下方向から見たときにおける第2吐出口群26Bに含まれる各吐出口26の中心の重心位置(幾何中心)のことを指す。ここでいう重心位置とは、第1吐出口群26Bに含まれる複数の吐出口26の中心に対して1つ設定される位置である。
【0036】
第1給油ガイド51aは、第1糸Y1を構成する複数のフィラメントFからなる第1フィラメント群が走行しながら接触する第1給油面52aと、第1フィラメント群を第1給油面52aに案内するための一対の第1糸案内部材53aと、油剤を吐出する油剤吐出孔(不図示)とを有する(図6参照)。図6に示すように、第1給油面52aは、水平方向である所定の第1幅方向D1に広がりつつ上下に延びる面となっている。上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度は+90度から-90度の範囲内であり、+45度から-45度の範囲内であることが好ましい。「第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度が+90度」とは、上下方向から見たときに、第1幅方向D1の延びる方向が、仮想分割面Xを基準として時計回りに90度傾いた方向であることを意味する。「第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度が-90度」とは、上下方向から見たときに、第1幅方向D1の延びる方向が、仮想分割面Xを基準として反時計回りに90度傾いた方向であることを意味する。+45度及び-45度についても同様である。第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度が0度とは、第1幅方向D1と仮想分割面Xとが平行且つ第1給油面52aが仮想分割面Xと向かい合う向きとは反対向きのときのことである。本実施形態では、上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度は0度である。言い換えれば、本実施形態では、第1幅方向D1と仮想分割面Xとは、ともに前後方向に延びている。ここで、「第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度」について具体的に説明する。「第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度」とは、上下方向から見たときに、第1幅方向D1と仮想分割面Xとが平行且つ第1給油面52aが仮想分割面Xと向かい合う向きとは反対向きのとき(図6の状態)の、第1幅方向D1が仮想分割面に対してなす角度を0度とした場合において、上下方向から見たときに第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度である。例えば、仮想分割面Xが前後方向に延びている場合において、上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度が-90度のとき、第1幅方向D1は左右方向に延びており、第1給油面52aは前向きとなっている。また、仮想分割面Xが前後方向に延びている場合において、上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度が+90度のとき、仮想分割面Xが前後方向に延びるのに対し、第1幅方向D1は左右方向に延びており、第1給油面52aは後ろ向きとなっている。
【0037】
第1給油面52aは、上下に湾曲した形状である(図4参照)。図6の破線は、上下に湾曲した第1給油面52aの下端を示している。なお、第1給油面52aは湾曲していなくてもよく、上下方向と平行に延びていてもよい。油剤吐出孔から吐出された油剤は第1給油面52aへ流れており、第1糸Y1を構成する複数のフィラメントFは第1給油面52aに接触しながら走行することによって油剤が付与される。一対の第1糸案内部材53aは、水平方向である前後方向における第1給油面52aの両側に形成されている。各第1糸案内部材53aは、第1給油面52aから左方に向かって延びている。なお、第1吐出口群26Aから紡出された複数のフィラメントFは、第1給油ガイド51aによって油剤が付与された後、交絡されるなどして、1本のマルチフィラメントからなる第1糸Y1となる。
【0038】
また、第2給油ガイド51bは、第2糸Y2を構成する複数のフィラメントFからなる第2フィラメント群が走行しながら接触する第2給油面52bと、第2フィラメント群を第2給油面52bに案内するための一対の第2糸案内部材53bと、油剤を吐出する油剤吐出孔(不図示)とを有する(図6参照)。図6に示すように、第2給油面52bは、水平方向である所定の第2幅方向D2に広がりつつ上下に延びる面となっている。上下方向から見たときに、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度は+90度から-90度の範囲内であり、+45度から-45度の範囲内であることが好ましい。「第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度が+90度」とは、上下方向から見たときに、第2幅方向D2の延びる方向が、仮想分割面Xを基準として時計回りに90度傾いた方向であることを意味する。「第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度が-90度」とは、上下方向から見たときに、第2幅方向D2の延びる方向が、仮想分割面Xを基準として反時計回りに90度傾いた方向であることを意味する。+45度及び-45度についても同様である。第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度が0度とは、第2幅方向D2と仮想分割面Xとが平行且つ第2給油面52bが仮想分割面Xと向かい合う向きとは反対向きのときのことである。本実施形態では、上下方向から見たときに、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度は0度である。言い換えれば、本実施形態では、第2幅方向D2と仮想分割面Xとは、ともに前後方向に延びている。ここで、「第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度」について具体的に説明する。「第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度」とは、上下方向から見たときに、第2幅方向D2と仮想分割面Xとが平行且つ第2給油面52bが仮想分割面Xと向かい合う向きとは反対向きのとき(図6の状態)の、第2幅方向D2が仮想分割面に対してなす角度を0度とした場合において、上下方向から見たときに第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度である。例えば、仮想分割面Xが前後方向に延びている場合において、上下方向から見たときに、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度が+90度のとき、第2幅方向D2は左右方向に延びており、第2給油面52bは前向きとなっている。また、仮想分割面Xが前後方向に延びている場合において、上下方向から見たときに、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度が-90度のとき、仮想分割面Xが前後方向に延びるのに対し、第2幅方向D2は左右方向に延びており、第2給油面52bは後ろ向きとなっている。
【0039】
第2給油面52bは、上下に湾曲した形状である(図4参照)。図6の破線は、上下に湾曲した第2給油面52bの下端を示している。なお、第2給油面52bは湾曲していなくてもよく、上下方向と平行に延びていてもよい。油剤吐出孔から吐出された油剤は第2給油面52bへ流れており、第2糸Y2を構成する複数のフィラメントFは第2給油面52bに接触しながら走行することによって油剤が付与される。一対の第2糸案内部材53bは、水平方向である前後方向における第2給油面52bの両側に形成されている。各第2糸案内部材53bは、第2給油面52bから右方に向かって延びている。なお、第2吐出口群26Bから紡出された複数のフィラメントFは、第2給油ガイド51bによって油剤が付与された後、交絡されるなどして、1本のマルチフィラメントからなる第2糸Y2となる。
【0040】
本実施形態において、第1給油面52aと第2給油面52bとは、背面配置されている。すなわち、第1給油面52aは左方を向いており、第2給油面52bは右方を向いている。また、図6に示すように、上下方向から見たときに、第1給油面52aと第2給油面52bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されている。
【0041】
糸道規制ガイド6は、各給油ガイド51の各給油面に糸Yを適切な態様で押し付けるように糸道を規定する。複数の糸道規制ガイド6は、図2に示すように、各給油ユニット5の下方に2つずつ配置されている。より詳細には、糸道規制ガイド6は、各給油ユニット5の第1給油ガイド51aの下方と第2給油ガイド51bの下方とにそれぞれ1つずつ配置されている。第1給油ガイド51aの下方に配置された糸道規制ガイド6は、第1給油ガイド51aの第1給油面52aに第1糸Y1を構成する複数のフィラメントFを適切な態様で押し付けるように糸道を規定する。第2給油ガイド51bの下方に配置された糸道規制ガイド6は、第2給油ガイド51bの第2給油面52bに第2糸Y2を構成する複数のフィラメントFを適切な態様で押し付けるように糸道を規定する。
【0042】
櫛歯ガイド7は、複数の糸Yを案内するための複数の溝(不図示)が左右方向に沿って等間隔に形成された櫛歯状のガイドである。櫛歯ガイド7の複数の溝は、上下方向の両端、及び、前方又は後方のいずれか一方が開口している。櫛歯ガイド7は、複数の糸道規制ガイド6の左右方向及び前後方向の中央の略直下に1つ配置されている。複数の糸道規制ガイド6において案内された複数の糸Yは、櫛歯ガイド7において、複数の溝に案内され、左右方向に等間隔に並びながら下方に向かって走行する。
【0043】
なお、各給油ガイド51、各糸道規制ガイド6及び櫛歯ガイド7への糸掛け作業は、作業者によって行われてもよく、自動で行われてもよい。
【0044】
ゴデットローラ8、9は、図1に示すように、櫛歯ガイド7の糸走行方向の下流側に配置されており、不図示のモータによって回転駆動される。紡糸装置2から紡出された複数の糸Yは、冷却装置4の糸走行空間43、給油ユニット5、糸道規制ガイド6、櫛歯ガイド7を経由して、ゴデットローラ8、9の順に巻き掛けられており、ゴデットローラ8、9によって紡糸巻取装置10へ送られる。なお、ゴデットローラ8、9は、本発明の引取ローラに相当する。
【0045】
紡糸巻取装置10は、ボビンホルダ11に保持されている複数のボビンBに複数の糸Yを巻き取って、複数のパッケージPを形成する。紡糸巻取装置10には、2本のボビンホルダ11が設けられている。ボビンホルダ11は、前後方向に延びる軸部材であり、その後端部が機台12に設けられたターレット13によって片持ち支持されている。ボビンホルダ11は、軸方向に複数のボビンBを並べて保持することができる。例えば、8本の糸Yが紡糸装置2から送られてくる場合、8本の糸Yを8個のボビンBに巻き取る。
【0046】
また、紡糸巻取装置10は、ボビンホルダ11と略平行に前後方向に延びる支持フレーム14を有する。支持フレーム14は、その後端部が機台12によって片持ち支持されている。支持フレーム14の上部には、前後方向に延びるガイド支持体15が設けられている。ガイド支持体15には、ボビンホルダ11に保持される複数のボビンBに対応して、複数の支持ガイド16が前後方向に並んで設けられている。また、支持フレーム14には、ボビンホルダ11に保持される複数のボビンBに対応して、複数のトラバース装置17が前後方向に並んで設けられる。各トラバース装置17は、対応する支持ガイド16を中心に糸Yを前後方向に綾振りする。
【0047】
紡糸巻取装置10は、支持フレーム14によって回転可能に支持されたコンタクトローラ18を有する。コンタクトローラ18は、支持フレーム14の下方に設けられている。紡糸巻取装置10の各部の動作は不図示の制御装置によって制御される。紡糸巻取装置10は、複数のトラバース装置17によって綾振りされている複数の糸Yの巻き取りを、2つのボビンホルダ11のうち、上方に配置されているボビンホルダ11に装着されている複数の新しいボビンBに対して開始する。糸Yの巻き取り中には、適宜、コンタクトローラ18を昇降駆動及び/又はターレット13を回転駆動させることで、パッケージPの径の増加に対応しながら、複数のパッケージPを形成する。
【0048】
ここで、1つの口金24から紡出される2つのフィラメント群は、互いに異なる給油ガイド51に向かって走行する。具体的には、1つの口金24の第1吐出口群26Aから紡出される複数のフィラメントFからなる第1フィラメント群は第1給油ガイド51aに向かって走行し、第2吐出口群26Bから紡出される複数のフィラメントFからなる第2フィラメント群は第2給油ガイド51bに向かって走行する。そうすると、1つの口金24から2つの給油ガイド51に向かう2つのフィラメント群同士の間には空間が形成される。この空間に冷却装置4からの冷却風が入り込むと、空間内で気流の乱れが発生する。そうすると、複数のフィラメントFに吹き付けられる冷却風が乱れて、各フィラメントFの全周において冷却され易い箇所と冷却されにくい箇所が生じてしまい、冷却風による複数のフィラメントFへの冷却作用が不均一となる。その結果、複数のフィラメントFからなる糸Yの品質が悪化する。そこで、本実施形態では、複数のフィラメントFを適切に冷却するようすることを目的として、複数の集束ガイド30が配置されている。以下、図4図5及び図7を参照しつつ、本実施形態に係る集束ガイド30について説明する。
【0049】
(集束ガイド30)
図4に示すように、複数の集束ガイド30は、冷却装置4の下方且つ給油ユニット5の上方に配置されている。各集束ガイド30は、上下方向において、給油ユニット5よりも冷却装置4に近い位置に配置されている。複数の集束ガイド30は、各給油ユニット5の上方に2つずつ配置されている。より詳細には、各給油ユニット5の上方に2つずつ配置されている集束ガイド30は、第1給油ガイド51aの上方に配置された第1集束ガイド30aと、第2給油ガイド51bの上方に配置された第2集束ガイド30bとを含む。第1集束ガイド30aには、第1吐出口群26Aから紡出される複数のフィラメントFからなる第1フィラメント群が掛けられる。第2集束ガイド30bには、第2吐出口群26Bから紡出される複数のフィラメントFからなる第2フィラメント群が掛けられる。
【0050】
図5に示すように、各集束ガイド30は、前後方向を延在方向とする棒状のバーガイドである。より具体的には、集束ガイド30は、前後方向に延びる円柱形状のバーガイドである。第1吐出口群26Aから紡出される第1フィラメント群は、バーガイドである第1集束ガイド30aの右側の周面に掛けられる。第2吐出口群26Bから紡出される第2フィラメント群は、バーガイドである第2集束ガイド30bの左側の周面に掛けられる。また、バーガイドである集束ガイド30は、前後方向に沿った円柱形状の軸心を回転軸として、回転可能である(図5の実線矢印参照)。集束ガイド30は、例えば、自由回転可能に構成されている。バーガイドである集束ガイド30は、例えばセラミック製である。
【0051】
図4に示すように、第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとの間の左右方向(水平方向)における距離は、給油ユニット5の第1給油ガイド51aと第2給油ガイド51bとの間の左右方向(水平方向)における距離よりも小さい。また、第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとの間の左右方向(水平方向)における距離は、第1吐出口群26Aの重心位置と第2吐出口群26Bの重心位置との間の左右方向(水平方向)における距離よりも小さい。ここで、第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとの間の距離とは、複数のフィラメントFと第1集束ガイド30aとの接触領域の中心と、複数のフィラメントFと第2集束ガイド30bとの接触領域の中心との間の距離である。なお、複数のフィラメントFと第1集束ガイド30aとの接触領域とは、第1集束ガイド30aの右側の周面のうちの複数のフィラメントFと接触し得る領域のことである。また、複数のフィラメントFと第2集束ガイド30bとの接触領域とは、第2集束ガイド30bの左側の周面のうちの複数のフィラメントFと接触し得る領域のことである。また、給油ユニット5の第1給油ガイド51aと第2給油ガイド51bとの間の距離とは、複数のフィラメントFと第1給油ガイド51aの第1給油面52aとの接触領域の中心と、複数のフィラメントFと第2給油ガイド51bの第2給油面52bとの接触領域の中心との間の距離である。なお、複数のフィラメントFと第1給油面52aとの接触領域とは、第1給油面52aのうちの複数のフィラメントFと接触し得る領域のことである。また、複数のフィラメントFと第2給油面52bとの接触領域とは、第2給油面52bのうちの複数のフィラメントFと接触し得る領域のことである。また、第1吐出口群26Aの重心位置と第2吐出口群26Bの重心位置との間の距離とは、上下方向から見たときの第1吐出口群26Aの重心位置と第2吐出口群26Bの重心位置との間の距離である。さらに、第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとの間の距離は、1mm以上10mm以下である。
【0052】
また、上下方向から見たときに、第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されている。さらに、第1集束ガイド30a及び第2集束ガイド30bは、ゴデットローラ8、9によって複数の糸Yが引き取られるときの規制位置(図4の位置)と、各集束ガイド30にフィラメント群が掛けられるときの糸掛位置(図7の位置)との間で切り替え可能である。本実施形態において、各集束ガイド30は、左右方向に移動することで規制位置と糸掛位置との間で切り替え可能である(図7の実線矢印参照)。より具体的には、第1集束ガイド30aは、右から左に移動することによって規制位置から糸掛位置に切り替わる。第2集束ガイド30bは、左から右に移動することによって規制位置から糸掛位置に切り替わる。集束ガイド30の規制位置と糸掛位置との間の切り替えは、不図示のモータによって駆動されてもよく、作業者によって手動で行われてもよい。図4及び図7に示すように、2つの集束ガイド30が糸掛位置にあるときの第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとの間の距離は、2つの集束ガイド30が規制位置にあるときの第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとの間の距離よりも大きい。
【0053】
(効果)
本実施形態の紡糸生産設備1は、複数の吐出口26が形成された口金24を有する紡糸装置2と、口金24の下方に配置された冷却装置4と、冷却装置4のさらに下方に配置され、複数のフィラメントFが2つに分けて束ねられることで構成される2本の糸Y(第1糸Y1及び第2糸Y2)に油剤を付与する給油ユニット5と、を含む。複数の吐出口26は、前後方向に広がりつつ上下方向に延びる仮想分割面Xによって、第1糸Y1を構成する複数のフィラメントを紡出する第1吐出口群26Aと第2糸Y2を構成する複数のフィラメントを紡出する第2吐出口群26Bとに分けられている。給油ユニット5は、2つの給油ガイド51(第1給油ガイド51a及び第2給油ガイド51b)を有する。第1給油ガイド51aは、第1糸Y1を構成する複数のフィラメントFからなる第1フィラメント群が走行しながら接触する第1給油面52aと、一対の第1糸案内部材53aとを有する。第2給油ガイド51bは、第2糸Y2を構成する複数のフィラメントFからなる第2フィラメント群が走行しながら接触する第2給油面52bと、一対の第2糸案内部材53bとを有する。さらに、紡糸生産設備1は、冷却装置4の下方且つ給油ユニット5の上方に配置され、2つのフィラメント群がそれぞれ掛けられる2つの集束ガイド30(第1集束ガイド30a及び第2集束ガイド30b)をさらに含む。そして、第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとの間の左右方向における距離は、給油ユニット5の第1給油ガイド51aと第2給油ガイド51bとの間の左右方向における距離よりも小さく、且つ、第1吐出口群26Aの重心位置と第2吐出口群26Bの重心位置との間の左右方向における距離よりも小さい。また、上下方向から見たときに、第1給油ガイド51aが仮想分割面Xに対して第1吐出口群26Aと同じ側に配置されており、第2給油ガイド51bが仮想分割面Xに対して第2吐出口群26Bと同じ側に配置されている。第1給油面52aは水平方向である所定の第1幅方向D1に広がりつつ上下に延びる面となっており、第2給油面52bは、水平方向である所定の第2幅方向D2に広がりつつ上下に延びる面となっている。上下方向から見たときに、第1幅方向D1と仮想分割面Xとが平行且つ第1給油面52aが仮想分割面Xと向かい合う向きとは反対向きのときの、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度を0度とした場合において、上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度が+90度から-90度の範囲内である。上下方向から見たときに、第2幅方向D2と仮想分割面Xとが平行且つ第2給油面52bが仮想分割面Xと向かい合う向きとは反対向きのときの、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度を0度とした場合において、上下方向から見たときに、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度が+90度から-90度の範囲内である。
【0054】
本実施形態によれば、口金24から紡出された第1フィラメント群は給油ユニット5の上方で第1集束ガイド30aに掛けられ、口金24から紡出された第2フィラメント群は給油ユニット5の上方で第2集束ガイド30bに掛けられる。このとき、第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとの間の左右方向における距離は、第1給油ガイド51aと第2給油ガイド51bとの間の左右方向における距離よりも小さく、且つ、第1吐出口群26Aの重心位置と第2吐出口群26Bの重心位置との間の左右方向における距離よりも小さい。よって、1つの口金24と各給油ガイド51との間を走行する2つのフィラメント群は、給油ユニット5の上方にある2つの集束ガイド30に掛けられることによって一旦集束される形となる。そうすると、1つの口金24と各給油ガイド51との間を走行する2つのフィラメント群、すなわち、冷却装置4から冷却風を吹き付けられる領域を通過する2つのフィラメント群同士の間に形成される空間を小さくすることができる。これにより、冷却装置4からの冷却風が空間に入り込むことによって引き起こされる気流の乱れが抑制され、冷却風が適切に各フィラメントFに吹き付けられる。よって、複数のフィラメントを適切に冷却することができる。
【0055】
また、本実施形態の構成では、第1給油ガイド51aが仮想分割面Xに対して第1吐出口群26Aと同じ側に配置されており、第2給油ガイド51bが仮想分割面Xに対して第2吐出口群26Bと同じ側に配置されている。すなわち、仮想分割面Xは第1給油ガイド51aと第2給油ガイド51bとの間に存在する仮想面である。このような構成において、本実施形態では、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度及び第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度がそれぞれ+90度から-90度の範囲内である。すなわち、第1給油面52aと仮想分割面Xとが向かい合うことがない。第2給油面52bについても同様である。このため、第1給油面52aに第1フィラメント群を掛ける際に、第1給油ガイド51aと第2給油ガイド51bの間にある仮想分割面Xの側から第1フィラメント群を掛ける必要がなく、第2給油ガイド51bが邪魔になることがない。第2給油面52bに第2フィラメント群を掛ける際も同様である。したがって、各給油面51に各フィラメント群を掛けることが容易となる。
【0056】
また、本実施形態の紡糸生産設備1では、第1吐出口群26Aは、前後方向(所定幅方向)に沿って並んだ吐出口26の列に含まれる吐出口26の数が、前後方向と交差する任意の方向に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数よりも多くなるように構成されている。また、第2吐出口群26Bは、前後方向(所定幅方向)に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数が、前後方向と交差する任意の方向に沿って並んだ吐出口26の列に含まれる吐出口26の数よりも多くなるように構成されている。そして、上下方向から見たとき、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度及び第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度がそれぞれ+45度から-45度の範囲内である。本実施形態では、第1吐出口群26A及び第2吐出口群26Bから紡出される複数のフィラメントFは、それぞれ、上下方向から見たときに、仮想分割面Xの延びる前後方向(所定幅方向)を最も広がる方向として並んで走行し、下方にある給油ユニット5に向かう。この点、本実施形態によれば、上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度、及び、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度がいずれも+45度から-45度の範囲内である。このため、上下方向から見たときに、第1吐出口群26Aから紡出される複数のフィラメントFの最も広がる方向(すなわち前後方向)と、第1給油面52aの第1幅方向D1とが交差する角度をできるだけ小さくすることができる。同様に、第2吐出口群26Bから紡出される複数のフィラメントFの最も広がる方向(すなわち前後方向)と、第2給油面52bの第2幅方向D2とが交差する角度をできるだけ小さくすることができる。これにより、各給油面52a、52bに対して、各吐出口群26A、26Bから紡出される複数のフィラメントFをできるだけ広げた状態で接触させることができる。これにより、フィラメントF同士の重なりを減らすことができ、できるだけ多くのフィラメントFを給油面52a、52bに直接接触させることができる。よって、複数のフィラメントFに対して効率良く油剤を付与することができる。
【0057】
また、本実施形態の紡糸生産設備1では、上下方向から見たときに、第1吐出口群26Aと第2吐出口群26Bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されており、第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されており、第1給油面52aと第2給油面52bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されている。1つの口金24の2つの吐出口群26A、26Bから紡出された複数のフィラメントFは、紡糸装置2と給油ユニット5との間に配置された冷却装置4から供給される冷却風によって冷却される。本実施形態によれば、第1吐出口群26Aから紡出されて第1集束ガイド30aを経由して第1給油面52aに至るまでの第1フィラメント群の経路と、第2吐出口群26Bから紡出されて第2集束ガイド30bを経由して第2給油面52bに至るまでの第2フィラメント群の経路とが、仮想分割面Xを境にして面対称となる。このため、第1吐出口群26Aから紡出された複数のフィラメントFと、第2吐出口群26Bから紡出された複数のフィラメントFとは、紡糸装置2と給油ユニット5の間に配置される冷却装置4からの冷却風が吹きつけられる経路長が同じとなる。これにより、1つの口金24の2つの吐出口群26A、26Bから紡出される複数のフィラメントFから構成される2本の糸Y(第1糸Y1及び第2糸Y2)の品質を均一にすることができる。
【0058】
また、本実施形態では、上下方向から見たときに、2つの集束ガイド30及び2つの給油ガイド51は、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されている。そして、給油ユニット5の下流側には2つの糸道規制ガイド6が配置されている。したがって、2つの集束ガイド30に掛けられた第1フィラメント群及び第2フィラメント群は、その下方で外側に広げられながら2つの給油ガイド51に掛けられ、その下流側で糸道規制ガイド6に掛けられる。本実施形態では、第1給油面52aと第2給油面52bとが互いに背中合わせとなるように背面配置されている。そして、2つの給油ガイド51の間の左右方向における距離は、2つの集束ガイド30の間の左右方向における距離よりも大きく、2つの糸道規制ガイド6の間の左右方向における距離よりも大きい。このため、第1フィラメント群及び第2フィラメント群は、2つの給油ガイド51の外側に掛けられることになり、2つの給油ガイド51の各給油面52a、52bに押し当てられる。さらに、本実施形態では、第1給油面52aには一対の第1糸案内部材53aが形成されており、第2給油面52bには一対の第2糸案内部材53bが形成されている。したがって、各フィラメント群が各給油ガイド51から外れにくくなる。
【0059】
また、本実施形態の紡糸生産設備1では、糸走行方向において、給油ユニット5よりも下流側には、複数の糸Yを引き取るためのゴデットローラ8、9が配置されている。第1集束ガイド30a及び第2集束ガイド30bは、ゴデットローラ8、9によって複数の糸Yが引き取られるときの規制位置と、各集束ガイド30にフィラメント群が掛けられるときの糸掛位置との間で切り替え可能である。そして、2つの集束ガイド30が糸掛位置にあるときの第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとの間の距離は、2つの集束ガイド30が規制位置にあるときの第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとの間の距離よりも大きい。このため、2つの集束ガイド30を糸掛位置に切り換えることで、各集束ガイド30にフィラメント群を掛けることが容易となる。
【0060】
また、本実施形態の紡糸生産設備1では、各集束ガイド30は、棒状のバーガイドである。本実施形態によれば、棒状のバーガイドである集束ガイド30にフィラメント群を沿わせながら掛ければよく、各集束ガイド30にフィラメント群を掛けることが容易となる。また、複数のフィラメントFを、バーガイドである集束ガイド30の延在方向に分散させて接触させることができる。集束ガイド30に掛けられる複数のフィラメントFは油剤の付与前であり、重なった状態で集束ガイド30に掛けられるフィラメントFが多いほど、フィラメントFの品質に及ぼす悪影響は大きい。本実施形態によれば、上記問題を解消し、フィラメントFの品質を確保することができる。
【0061】
さらに、本実施形態の紡糸生産設備1では、バーガイドである各集束ガイド30は、その延在方向(前後方向)に沿った軸心を回転軸として回転可能である。本実施形態によれば、集束ガイド30に掛けられたフィラメント群が走行するのに従ってバーガイドである集束ガイド30を回転させることによって、各フィラメントFと集束ガイド30とが接触していることによってフィラメントFが受ける摩擦力を低減することができる。その結果、各フィラメント群から構成される糸Yの品質の低下を抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態の紡糸生産設備1では、互いに隣接する第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとの間の距離は、1mm以上10mm以下である。互いに隣接する集束ガイド30間の距離が小さすぎると、各集束ガイド30に掛けられた各フィラメント群同士が絡まってしまうおそれがある。逆に、互いに隣接する集束ガイド30間の距離が大きすぎると、1つの口金24と2つの給油ガイド51との間で2つのフィラメント群を十分に集束させることができず、1つの口金24と2つの給油ガイド51との間を走行する2つのフィラメント群同士の間に形成される空間の大きさを低減するのに限界がある。本実施形態によれば、上記問題を解決し、各集束ガイド30に掛けられた2つのフィラメント群が絡まることを抑制しつつ、1つの口金24と2つの給油ガイド51との間を走行する2つのフィラメント群同士の間に形成される空間の大きさをさらに減少させることができる。
【0063】
また、本実施形態の紡糸生産設備1では、冷却装置4は、走行する複数のフィラメントFの全周にわたって冷却風を吹き付ける環状冷却装置である。環状冷却装置によって複数のフィラメントFの全周にわたって冷却風を吹き付ける場合、1つの口金24とその下方にある2つの給油ガイド51との間を走行する複数のフィラメント群同士の間に形成される空間には、より多くの冷却風が入り込みやすい。よって、空間内での気流の乱れも発生しやすい。本実施形態によれば、環状冷却装置を備える構成において、冷却装置4からの冷却風が空間に入り込むことによって引き起こされる気流の乱れを効果的に抑制することができる。よって、複数のフィラメントFをより適切に冷却することができる。
【0064】
また、本実施形態の紡糸生産設備1では、集束ガイド30は、上下方向において、給油ユニット5よりも冷却装置4に近い位置に配置されている。本実施形態によれば、1つの口金24と2つの給油ガイド51との間を走行する2つのフィラメント群は、上下方向において、2つの給油ガイド51よりも冷却装置4に近い位置で一旦収束される形となる。このため、1つの口金24と2つの集束ガイド30との間を走行する2つのフィラメント群同士、すなわち、冷却装置4を通過する2つのフィラメント群同士の間に形成される空間の大きさをさらに減少させることができる。
【0065】
(変形例)
以下に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0066】
上記実施形態では、各集束ガイド30は、規制位置と糸掛位置との間で切り替え可能である。しかしながら、各集束ガイド30は、規制位置に固定されるものであってもよい。
【0067】
上記実施形態では、第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとの間の距離は、1mm以上10mm以下である。しかしながら、これに限られず、例えば、第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとの間の距離は、1mm未満でもよく、10mmよりも大きくてもよい。
【0068】
上記実施形態では、冷却装置4は環状冷却装置である。しかしながら、冷却装置4は、走行する複数のフィラメントFの全周のうちの一部に冷却風を吹き付ける装置でもよい。
【0069】
上記実施形態では、上下方向から見たときに、第1吐出口群26Aと第2吐出口群26Bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されており、第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されており、第1給油面52aと第2給油面52bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されている。しかしながら、このような配置関係に限られない。例えば、第1吐出口群26Aと第2吐出口群26Bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されていなくてもよい。また、第1集束ガイド30aと第2集束ガイド30bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されていなくてもよい。さらに、第1給油面52aと第2給油面52bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されていなくてもよい。
【0070】
上記実施形態では、各集束ガイド30は、上下方向において、給油ユニット5よりも冷却装置4に近い位置に配置されている。しかしながら、各集束ガイド30は、上下方向において、冷却装置4よりも給油ユニット5に近い位置に配置されていてもよい。
【0071】
上記実施形態では、複数の糸道規制ガイド6の下方には、複数の溝(不図示)が左右方向に沿って等間隔に形成された櫛歯状の櫛歯ガイド7が配置されている。しかしながら、複数の糸道規制ガイド6の下方に配置されるガイドは櫛歯状のガイドでなくてもよい。例えば、U字ガイドのように、1つのガイド部材に糸Yをガイドする糸走行部が1つ設けられたガイド等を採用することも可能である。
【0072】
上記実施形態では、紡糸ビーム21は平面視で左右方向を長辺とする長方形形状である。しかしながら、紡糸ビーム21は、例えば、平面視で円形であってもよい。この場合、円形の紡糸ビーム21に沿って複数の紡糸パック22が配置されている。
【0073】
上記実施形態では、バーガイドである集束ガイド30は、自由回転可能に構成されている。しかしながら、バーガイドである集束ガイド30は、例えば、モータによって回転が駆動されるものであってもよい。また、集束ガイド30は、バーガイドに限定されない。具体的に説明すると、上記実施形態では、前後方向から見たときに、集束ガイド30の糸Yと接触する部分は、円周に沿った曲面形状となっている。しかしながら、前後方向から見たときに、集束ガイド30の糸Yと接触する部分は、円周に沿わない曲面形状であってもよく、曲面形状でなくてもよい。
【0074】
上記実施形態では、口金24は、下方から見たときに略円形の形状である。しかしながら、口金24は、円形でなくてもよい。例えば、多角形の形状であってもよい。また、上記実施形態では、第1吐出口群26Aは、仮想分割面Xの延びる前後方向(所定幅方向)に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数が、前後方向と交差する任意の方向に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数よりも多くなるように構成されている。そして、第2吐出口群26Bは、仮想分割面Xの延びる前後方向(所定幅方向)に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数が、前後方向と交差する任意の方向に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数よりも多くなるように構成されている。しかしながら、第1吐出口群26A及び第2吐出口群26Bは、仮想分割面Xの延びる前後方向(所定幅方向)と交差する所定の方向に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数が、前後方向に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数よりも多くなるように構成されていてもよい。
【0075】
上記実施形態では、第1吐出口群26Aは、前後方向に沿って並んだ吐出口26の列を複数含んでいる。しかしながら、第1吐出口群26Aは、前後方向に沿って並んだ吐出口26の列を1つだけ含んでいてもよい。同様に、上記実施形態では、第2吐出口群26Aは、前後方向に沿って並んだ吐出口26の列を複数含んでいる。しかしながら、第2吐出口群26Aは、前後方向に沿って並んだ吐出口26の列を1つだけ含んでいてもよい。
【0076】
上記実施形態では、上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度は0度である。しかしながら、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度は0度でなくてもよく、+90度から-90度の範囲内であればよい。+90度及び-90度の定義は上述した通りである。第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度についても同様である。
【符号の説明】
【0077】
1 紡糸生産設備
2 紡糸装置
4 冷却装置
5 給油ユニット
8 ゴデットローラ(引取ローラ)
9 ゴデットローラ(引取ローラ)
24 口金
26 吐出口
26A 第1吐出口群
26B 第2吐出口群
30 集束ガイド
30a 第1集束ガイド
30b 第2集束ガイド
51 給油ガイド
51a 第1給油ガイド
51b 第2給油ガイド
52a 第1給油面
52b 第2給油面
D1 第1幅方向
D2 第2幅方向
F フィラメント
X 仮想分割面
Y 糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7