(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106313
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】紡糸生産設備
(51)【国際特許分類】
D01D 5/096 20060101AFI20240731BHJP
D01D 5/092 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
D01D5/096 Z
D01D5/092 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209932
(22)【出願日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2023010418
(32)【優先日】2023-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】橋本 欣三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳平
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 真子
【テーマコード(参考)】
4L045
【Fターム(参考)】
4L045AA05
4L045BA03
4L045CB11
4L045DA21
4L045DA49
4L045DA50
(57)【要約】 (修正有)
【課題】1つの口金から紡出された複数のフィラメントが2つに分けて束ねられて2本の糸として下方に紡出される構成において、効率的に油剤を付与する紡糸生産設備。
【解決手段】紡糸生産設備は、複数の吐出口が形成された口金を有する紡糸装置と、冷却装置と、給油ユニット5と、を備える。吐出口は、仮想分割面Xによって、第1及び第2吐出口群に分けられる。第1及び第2吐出口群は、前後方向に沿って並んだ吐出口の列に含まれる吐出口の数が、前後方向と交差する任意の方向に沿って並んだ吐出口の列に含まれる吐出口の数よりも多くなるように構成されている。給油ユニットは、第1給油面52aと第2給油面52bとを有し、上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度が+45度から-45度の範囲内である。上下方向から見たときに、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度が+45度から-45度の範囲内である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィラメントを下方に紡出する複数の吐出口が形成された口金を有する紡糸装置と、
前記口金の下方に配置され、前記複数のフィラメントを冷却風によって冷却する冷却装置と、
前記冷却装置のさらに下方に配置され、前記複数のフィラメントが2つに分けて束ねられることで構成される第1糸及び第2糸に油剤を付与する給油ユニットと、
を備え、
前記複数の吐出口は、鉛直方向と交差する方向である所定幅方向に広がりつつ前記鉛直方向に延びる仮想分割面によって、前記第1糸を構成する複数のフィラメントを紡出する第1吐出口群と前記第2糸を構成する複数のフィラメントを紡出する第2吐出口群とに分けられており、
前記第1吐出口群は、前記所定幅方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数が、前記所定幅方向と交差する任意の方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数よりも多くなるように構成されており、
前記第2吐出口群は、前記所定幅方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数が、前記所定幅方向と交差する任意の方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数よりも多くなるように構成されており、
前記給油ユニットは、前記第1糸を構成する複数のフィラメントが走行しながら接触する第1給油面と、前記第2糸を構成する複数のフィラメントが走行しながら接触する第2給油面と、を有しており、
前記第1給油面は、水平方向である所定の第1幅方向に広がりつつ上下に延びる面となっており、
前記第2給油面は、水平方向である所定の第2幅方向に広がりつつ上下に延びる面となっており、
前記鉛直方向から見たときに、前記第1幅方向と前記仮想分割面とが平行且つ前記第1給油面が前記仮想分割面と向かい合う向きのときの、前記第1幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度を0度とした場合において、
前記鉛直方向から見たときに、前記第1幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度が+45度から-45度の範囲内であり、
前記鉛直方向から見たときに、前記第2幅方向と前記仮想分割面とが平行且つ前記第2給油面が前記仮想分割面と向かい合う向きのときの、前記第2幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度を0度とした場合において、
前記鉛直方向から見たときに、前記第2幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度が+45度から-45度の範囲内であり、
前記第1給油面の中心位置と前記第2給油面の中心位置との間の前記水平方向における距離が、前記第1吐出口群の重心位置と前記第2吐出口群の重心位置との間の前記水平方向における距離よりも小さいことを特徴とする紡糸生産設備。
【請求項2】
前記鉛直方向から見たときに、前記第1幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度と、前記第2幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度とが同じであることを特徴とする請求項1に記載の紡糸生産設備。
【請求項3】
前記鉛直方向から見たときに、
前記第1吐出口群と前記第2吐出口群とは、前記仮想分割面の延びる方向を軸として線対称となるように配置されており、
前記第1給油面と前記第2給油面とは、前記仮想分割面の延びる方向を軸として線対称となるように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の紡糸生産設備。
【請求項4】
前記給油ユニットは、前記第1給油面が形成された第1給油ガイドと、前記第2給油面が形成された第2給油ガイドとを有し、
前記第1糸及び前記第2糸が走行する糸走行方向において、前記給油ユニットよりも下流側には、前記第1糸及び前記第2糸を引き取るための引取ローラが配置されており、
前記第1給油ガイドは、前記引取ローラによって前記第1糸が引き取られるときの規制位置と、前記第1給油ガイドに前記第1糸が掛けられるときの糸掛位置との間で切り替え可能であって、
前記第2給油ガイドは、前記引取ローラによって前記第2糸が引き取られるときの規制位置と、前記第2給油ガイドに前記第2糸が掛けられるときの糸掛位置との間で切り替え可能であって、
前記糸掛位置にある前記第1給油ガイドと前記糸掛位置にある前記第2給油ガイドとの間の距離は、前記規制位置にある前記第1給油ガイドと前記規制位置にある前記第2給油ガイドとの間の距離よりも大きいことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の紡糸生産設備。
【請求項5】
前記冷却装置は、走行する複数のフィラメントの全周にわたって冷却風を吹き付ける環状冷却装置であることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の紡糸生産設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの口金から紡出された複数のフィラメントが2つに分けて束ねられることで2本の糸として下方に紡出される構成の紡糸生産設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下端部に設けられた複数の口金から糸を下方に紡出する紡糸装置と、紡糸装置から紡出された糸に油剤を付与する給油ユニットと、を有する紡糸生産設備が知られている。各口金には、複数のフィラメントを紡出する複数の吐出口が形成されている。複数の吐出口から紡出された複数のフィラメントが束になって糸を形成する。
【0003】
例えば、特許文献1には、生産効率化のために、1つの口金から紡出された複数のフィラメントが2つに分けて束ねられることで2本の糸として下方に紡出される構成が開示されている。口金の下方には、2本の糸に油剤を付与するための給油ユニット(特許文献1の給油ガイド)が配置されている。給油ユニットは、各糸が下方に走行しながら接触する2つの給油面(特許文献1の接糸面)と、油剤を吐出する2つの油剤吐出孔とを有する。各給油面は、水平方向である幅方向に広がりつつ上下に延びる面である。油剤吐出孔から吐出された油剤は給油面へ流れており、2本の糸は各給油面に接触しながら走行することによって油剤が付与される。なお、特許文献2には、1つの口金から紡出された複数のフィラメントが複数(特許文献2の
図1では4つ)に分けて束ねられることで複数の糸として下方に紡出され、給油ユニット(特許文献2の4つのガイドオイリングノズル)によって各糸に油剤が付与される構成が開示されている。
【0004】
ここで、口金として、例えば、全体にわたって複数の吐出口が形成された円形の口金が知られている。特許文献1のように1つの口金から紡出された複数のフィラメントが2つに分けて束ねられることで2本の糸として下方に紡出される構成では、例えば、円形の口金に形成された複数の吐出口は以下のように分けられる。すなわち、複数の吐出口は、水平方向である幅方向に広がりつつ鉛直方向に延びる仮想分割面によって、2本の糸のうちの一方を構成する複数のフィラメントを紡出する第1吐出口群と、他方の糸を構成する複数のフィラメントを紡出する第2吐出口群とに分けられる。第1吐出口群を構成する複数の吐出口及び第2吐出口群を構成する複数の吐出口は、それぞれ、全体として概ね半円形状を形成するように配置されている。このため、第1吐出口群から紡出された複数のフィラメント及び第2吐出口群から紡出された複数のフィラメントは、それぞれ、鉛直方向から見たときに略半円状に並んで走行し、下方にある給油ユニットの給油面に向かう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-245713号公報
【特許文献2】特開平6-93509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、鉛直方向から見たときに、略半円状に並んで走行する複数のフィラメントが最も広がる方向(仮想分割面の水平に延びる方向すなわち各吐出口群の半円形状の直径方向)が、給油面の幅方向と大きな角度で交差する場合、次のような問題がある。後で詳細に説明するが、この場合、走行する複数のフィラメントは、広がった状態で給油面に接触することができず、多くのフィラメントが多重に重なった状態で給油面に接触する。言い換えれば、多くのフィラメントは、フィラメント同士が重なることによって給油面に直接接触することができない。給油面に直接接触できないフィラメントには、油剤吐出孔から吐出されて給油面を流れる油剤が適切に付与されない。特に、鉛直方向から見たときに、仮想分割面の延びる方向と給油面の幅方向とのなす角度が大きければ大きいほど、より多くのフィラメントが重なった状態で給油面に接触することになる。このように、給油面に直接接触できないことによって油剤が適切に付与されないフィラメントの数が多いほど、複数のフィラメントからなる糸の品質も悪化する。
【0007】
加えて、特許文献1の構成において、2つの給油面同士の間の距離が大きい場合、複数のフィラメントからなる2本の糸の品質が悪化するおそれがある。以下、具体的に説明する。一般に、口金と給油ユニットとの間には、複数のフィラメントの周囲から冷却風を吹き付ける冷却装置が配置されている。冷却装置から複数のフィラメントに冷却風が均一に吹き付けられることによって、複数のフィラメントからなる糸の品質が確保される。ところで、上述したように2つの給油面同士の間の距離が大きい場合、1つの口金の第1吐出口群から紡出されて一方の給油面に向かう複数のフィラメントの束と、第2吐出口群から紡出されて他方の給油面に向かうフィラメントの束との間には大きな空間が形成される。この空間に冷却装置からの冷却風が入り込むと、空間内で気流の乱れが発生する。そうすると、複数のフィラメントに吹き付けられる冷却風が乱れて、各フィラメントの全周において冷却され易い箇所と冷却されにくい箇所が生じてしまい、冷却風による複数のフィラメントへの冷却作用が不均一となる。その結果、複数のフィラメントからなる糸の品質が悪化する。
【0008】
本発明の目的は、1つの口金から紡出された複数のフィラメントが2つに分けて束ねられることで2本の糸として下方に紡出される構成において、複数のフィラメントに効率的に油剤を付与しつつ、複数のフィラメントを適切に冷却するようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の紡糸生産設備は、複数のフィラメントを下方に紡出する複数の吐出口が形成された口金を有する紡糸装置と、前記口金の下方に配置され、前記複数のフィラメントを冷却風によって冷却する冷却装置と、前記冷却装置のさらに下方に配置され、前記複数のフィラメントが2つに分けて束ねられることで構成される第1糸及び第2糸に油剤を付与する給油ユニットと、を備え、前記複数の吐出口は、鉛直方向と交差する方向である所定幅方向に広がりつつ前記鉛直方向に延びる仮想分割面によって、前記第1糸を構成する複数のフィラメントを紡出する第1吐出口群と前記第2糸を構成する複数のフィラメントを紡出する第2吐出口群とに分けられており、前記第1吐出口群は、前記所定幅方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数が、前記所定幅方向と交差する任意の方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数よりも多くなるように構成されており、前記第2吐出口群は、前記所定幅方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数が、前記所定幅方向と交差する任意の方向に沿って並んだ前記吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる前記吐出口の数よりも多くなるように構成されており、前記給油ユニットは、前記第1糸を構成する複数のフィラメントが走行しながら接触する第1給油面と、前記第2糸を構成する複数のフィラメントが走行しながら接触する第2給油面と、を有しており、前記第1給油面は、水平方向である所定の第1幅方向に広がりつつ上下に延びる面となっており、前記第2給油面は、水平方向である所定の第2幅方向に広がりつつ上下に延びる面となっており、前記鉛直方向から見たときに、前記第1幅方向と前記仮想分割面とが平行且つ前記第1給油面が前記仮想分割面と向かい合う向きのときの、前記第1幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度を0度とした場合において、前記鉛直方向から見たときに、前記第1幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度が+45度から-45度の範囲内であり、前記鉛直方向から見たときに、前記第2幅方向と前記仮想分割面とが平行且つ前記第2給油面が前記仮想分割面と向かい合う向きのときの、前記第2幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度を0度とした場合において、前記鉛直方向から見たときに、前記第2幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度が+45度から-45度の範囲内であり、前記第1給油面の中心位置と前記第2給油面の中心位置との間の前記水平方向における距離が、前記第1吐出口群の重心位置と前記第2吐出口群の重心位置との間の前記水平方向における距離よりも小さいことを特徴とするものである。「第1幅方向が仮想分割面に対してなす角度が+45度」とは、鉛直方向から見たときに、第1幅方向の延びる方向が、仮想分割面を基準として時計回りに45度傾いた方向であることを意味する。「第1幅方向が仮想分割面に対してなす角度が-45度」とは、鉛直方向から見たときに、第1幅方向の延びる方向が、仮想分割面を基準として反時計回りに45度傾いた方向であることを意味する。「第2幅方向が仮想分割面に対してなす角度が+45度」とは、鉛直方向から見たときに、第2幅方向の延びる方向が、仮想分割面を基準として時計回りに45度傾いた方向であることを意味する。「第2幅方向が仮想分割面に対してなす角度が-45度」とは、鉛直方向から見たときに、第2幅方向の延びる方向が、仮想分割面を基準として反時計回りに45度傾いた方向であることを意味する。
【0010】
本発明では、第1吐出口群は仮想分割面の延びる所定幅方向に沿って並んだ吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる吐出口の数が、所定幅方向とは異なる方向に沿って並んだ吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる吐出口の数よりも多くなるように構成されている。また、第2吐出口群は所定幅方向に沿って並んだ吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる吐出口の数が、所定幅方向とは異なる方向に沿って並んだ吐出口の列のうちの最も吐出口の数を多く含む列に含まれる吐出口の数よりも多くなるように構成されている。したがって、第1吐出口群及び第2吐出口群から紡出される複数のフィラメントは、それぞれ、鉛直方向から見たときに、仮想分割面の延びる所定幅方向を最も広がる方向として並んで走行し、下方にある給油ユニットに向かう。この点、本発明によれば、鉛直方向から見たときに、第1幅方向が仮想分割面に対してなす角度、及び、第2幅方向が仮想分割面に対してなす角度がいずれも+45度から-45度の範囲内である。このため、鉛直方向から見たときに、第1吐出口群から紡出される複数のフィラメントの最も広がる方向(すなわち所定幅方向)と、第1給油面の第1幅方向とが交差する角度をできるだけ小さくすることができる。同様に、第2吐出口群から紡出される複数のフィラメントの最も広がる方向(すなわち所定幅方向)と、第2給油面の第2幅方向とが交差する角度をできるだけ小さくすることができる。これにより、各給油面に対して、各吐出口群から紡出される複数のフィラメントをできるだけ広げた状態で接触させることができる。これにより、フィラメント同士の重なりを減らすことができ、できるだけ多くのフィラメントを給油面に直接接触させることができる。よって、複数のフィラメントに対して効率良く油剤を付与することができる。
【0011】
さらに、本発明では、鉛直方向から見たときに、第1幅方向と仮想分割面とが平行且つ第1給油面が仮想分割面と向かい合う向きのときの、第1幅方向が仮想分割面に対してなす角度を0度とした場合において、第1幅方向が仮想分割面に対してなす角度が+45度から-45度の範囲内である。また、鉛直方向から見たときに、第2幅方向と仮想分割面とが平行且つ第2給油面が仮想分割面と向かい合う向きのときの、第2幅方向が仮想分割面に対してなす角度を0度とした場合において、第2幅方向が仮想分割面に対してなす角度が+45度から-45度の範囲内である。言い換えれば、第1給油面と第2給油面とが対向配置されており、すなわち2つの給油面の間には別の部材が存在していない。このため、2つの給油面をなるべく近づけることができる。そして、互いに近づけた2つの給油面について、第1給油面の中心位置と第2給油面の中心位置との間の水平方向における距離は、第1吐出口群の重心位置と第2吐出口群の重心位置との間の水平方向における距離よりも小さい。このため、第1吐出口群から紡出された複数のフィラメントの束と第2吐出口群から紡出された複数のフィラメントの束とは、各給油面に向かって集束する。言い換えれば、第1給油面と接触する複数のフィラメント及び第2給油面と接触する複数のフィラメントは内側に絞られることになる。これにより、1つの口金と給油ユニットの間において、第1吐出口群から紡出された複数のフィラメントの束と、第2吐出口群から紡出された複数のフィラメントの束との間に形成される空間の大きさを小さくできる。よって、冷却装置からの冷却風が上記空間に入り込むことによって引き起こされる気流の乱れを抑制でき、各フィラメントへの冷却作用を均一化できる。したがって、複数のフィラメントを適切に冷却することができ、その結果、複数のフィラメントから構成される2本の糸の品質確保につながる。
【0012】
本発明の紡糸生産設備は、前記鉛直方向から見たときに、前記第1幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度と、前記第2幅方向が前記仮想分割面に対してなす角度とが同じであることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、第1吐出口群から紡出される複数のフィラメントの第1給油面に対する広がり具合と、第2吐出口群から紡出される複数のフィラメントの第2給油面に対する広がり具合とを揃えることができる。これにより、2つの吐出口群から紡出される複数のフィラメントについて、各給油面からの油剤付与効率を均一にすることができる。よって、1つの口金の2つの吐出口群から紡出される2本の糸の品質を均一にすることができる。
【0014】
本発明の紡糸生産設備は、前記鉛直方向から見たときに、前記第1吐出口群と前記第2吐出口群とは、前記仮想分割面の延びる方向を軸として線対称となるように配置されており、前記第1給油面と前記第2給油面とは、前記仮想分割面の延びる方向を軸として線対称となるように配置されていることが好ましい。
【0015】
1つの口金の2つの吐出口群から紡出された複数のフィラメントは、紡糸装置と給油ユニットとの間に配置された冷却装置から供給される冷却風によって冷却される。本発明によれば、第1吐出口群から紡出された複数のフィラメントの第1給油面に至るまでの経路と、第2吐出口群から紡出された複数のフィラメントの第2給油面に至るまでの経路とが、仮想分割面を境にして面対称となる。このため、第1吐出口群から紡出された複数のフィラメントと、第2吐出口群から紡出された複数のフィラメントとは、紡糸装置と給油ユニットの間に配置される冷却装置からの冷却風が吹きつけられる経路長が同じとなる。これにより、1つの口金の2つの吐出口群から紡出される複数のフィラメントから構成される2本の糸の品質を均一にすることができる。
【0016】
また、本発明の紡糸生産設備では、前記給油ユニットは、前記第1給油面が形成された第1給油ガイドと、前記第2給油面が形成された第2給油ガイドとを有し、前記第1糸及び前記第2糸が走行する糸走行方向において、前記給油ユニットよりも下流側には、前記第1糸及び前記第2糸を引き取るための引取ローラが配置されており、前記第1給油ガイドは、前記引取ローラによって前記第1糸が引き取られるときの規制位置と、前記第1給油ガイドに前記第1糸が掛けられるときの糸掛位置との間で切り替え可能であって、前記第2給油ガイドは、前記引取ローラによって前記第2糸が引き取られるときの規制位置と、前記第2給油ガイドに前記第2糸が掛けられるときの糸掛位置との間で切り替え可能であって、前記糸掛位置にある前記第1給油ガイドと前記糸掛位置にある前記第2給油ガイドとの間の距離は、前記規制位置にある前記第1給油ガイドと前記規制位置にある前記第2給油ガイドとの間の距離よりも大きいことが好ましい。
【0017】
糸掛位置にある第1給油ガイドと糸掛位置にある第2給油ガイドとの間の距離は、規制位置にある第1給油ガイドと規制位置にある第2給油ガイドとの間の距離よりも大きい。このため、第1給油ガイド及び第2給油ガイドを糸掛位置に切り換えることで、各給油ガイドに糸を掛けることが容易となる。
【0018】
また、本発明の紡糸生産設備では、前記冷却装置は、走行する複数のフィラメントの全周にわたって冷却風を吹き付ける環状冷却装置であることが好ましい。
【0019】
環状冷却装置によって複数のフィラメントの全周にわたって冷却風を吹き付ける場合、1つの口金とその下方にある給油ガイドとの間を走行する複数のフィラメント群同士の間に形成される空間には、より多くの冷却風が入り込みやすい。よって、空間内での気流の乱れも発生しやすい。本発明によれば、環状冷却装置を備える構成において、冷却装置からの冷却風が空間に入り込むことによって引き起こされる気流の乱れを効果的に抑制することができる。よって、複数のフィラメントをより適切に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る紡糸生産設備の側面図である。
【
図2】本実施形態に係る紡糸装置、及び、冷却装置の一部断面図である。
【
図4】1つの口金とその下方に配置された給油ユニットを示す図である。
【
図5】本実施形態に係る給油ガイドの上面図である。
【
図6】本発明の課題を説明するための参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(紡糸生産設備1の全体構成)
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る紡糸生産設備1の側面図である。
図2は、紡糸装置2及び冷却装置4の一部断面図である。
図3は、口金24の下面図である。
図4は、複数の口金24のうちの任意の1つの口金24とその下方に配置された給油ユニット5を示す図である。
図5は、給油ガイド51の上面図である。以下、
図1における前後左右上下方向を、紡糸生産設備1の前後左右上下方向と定義する。上下方向は、本発明の鉛直方向であって、重力が作用する方向である。
【0022】
紡糸生産設備1は、
図1に示すように、紡糸装置2と、紡糸引取装置3とを備えている。紡糸装置2は、溶融したポリマーを糸Yとして下方に紡出する装置である。紡糸引取装置3は、紡糸装置2から紡出された糸Yを引き取る装置であって、冷却装置4と、複数の給油ユニット5と、複数の糸道規制ガイド6と、櫛歯ガイド7と、ゴデットローラ8及び9と、紡糸巻取装置10とを備えている。
【0023】
図2に示すように、紡糸装置2は、紡糸ビーム21と、紡糸ビーム21の下部に形成された収容部に取り付けられた複数の紡糸パック22と、糸Yの材料であるポリマーが収容されたポリマータンク23と、を備えている。紡糸ビーム21は、内部に配置された紡糸パック22、ポリマータンク23、紡糸パック22とポリマータンク23とを接続するポリマー配管25などを加熱することが可能である。紡糸ビーム21は、例えば、平面視で左右方向を長辺とする長方形形状である。そして、平面視で長方形の紡糸ビーム21に対して、複数の紡糸パック22が千鳥状に2列に配置されている。言い換えれば、長方形の紡糸ビーム21に対して、複数の紡糸パック22が前後2列に配置され、左右方向における紡糸パック22の配置される位置が、1列目の紡糸パック22と2列目の紡糸パック22とで左右にずれている。
【0024】
紡糸パック22は、内部に溶融ポリマーが貯留されており、下端部には口金24が形成されている。本実施形態では、各口金24からは、2本の糸Y(以下、第1糸Y1及び第2糸Y2とも言う)を構成する複数のフィラメントFが紡出される(
図4参照)。
図3に示すように、口金24は、下方から見たときに略円形の形状である。口金24の直径は、例えば、85mmである。口金24には、複数のフィラメントFを下方に紡出するための複数の吐出口26が全体にわたって形成されている。より詳細には、複数の吐出口26は、前後方向及び左右方向に並んで配置されており、例えば、1つの口金24あたりに144個の吐出口26が形成されている。紡糸パック22の内部に貯留された溶融ポリマーは、各口金24に形成された複数の吐出口26から、複数のフィラメントFとして下方に紡出される。
【0025】
図3に示すように、複数の吐出口26は、第1糸Y1(
図4参照)を構成する複数のフィラメントFを紡出する第1吐出口群26Aと、第2糸Y2(
図4参照)を構成する複数のフィラメントFを紡出する第2吐出口群26Bとに分けられている。より詳細には、複数の吐出口26は、前後方向(本発明の所定幅方向)に広がりつつ上下方向に延びる仮想分割面Xによって第1吐出口群26Aと第2吐出口群26Bとに分けられている(
図3及び
図4を参照)。
図3に示すように、上下方向から見たときに、第1吐出口群26Aと第2吐出口群26Bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されている。第1吐出口群26Aは、72個の吐出口26からなる。
図3に示すように、第1吐出口群26Aは、前後方向に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数が、前後方向と交差する任意の方向(例えば、左右方向、左後から右前に向かう方向等)に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数よりも多くなるように構成されている。別の言い方をすれば、第1吐出口群26Aは、前後方向に沿って配置される吐出口26の数が前後方向とは異なる方向に沿って配置される吐出口26の数と比べて最も多くなるように構成されている。第2吐出口群26Bは、72個の吐出口26からなる。
図3に示すように、第2吐出口群26Bは、前後方向に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数が、前後方向と交差する任意の方向(例えば、左右方向、左後から右前に向かう方向等)に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数よりも多くなるように構成されている。別の言い方をすれば、第2吐出口群26Bは、前後方向に沿って配置される吐出口26の数が前後方向とは異なる方向に沿って配置される吐出口26の数と比べて最も多くなるように構成されている。
図4に示すように、第1吐出口群26Aから紡出された複数のフィラメントFは束ねられて第1糸Y1を構成する。また、第2吐出口群26Bから紡出された複数のフィラメントFは束ねられて第2糸Y2を構成する。すなわち、2本の糸Y(第1糸Y1及び第2糸Y2)は、1つの口金24から紡出される複数のフィラメントFが2つに分割されて束ねられることで構成される。
【0026】
ポリマータンク23は、内部にポリマーを収容する部分であり、ポリマータンク23内のポリマーは複数のポリマー配管25を介して、複数の紡糸パック22へと送られる。ポリマータンク23から紡糸パック22にポリマーが送られるとき、ポリマータンク23及びポリマー配管25の内部のポリマーは、紡糸ビーム21によって所定の温度で加熱され、溶融ポリマーとなる。
【0027】
冷却装置4は、冷却風によって、紡糸パック22から紡出された糸Yを冷却する装置である。より具体的には、冷却装置4は、紡糸パック22の下端部に形成された口金24から紡出される複数のフィラメントFを冷却風によって冷却する装置である。冷却装置4は、走行する複数のフィラメントFの全周にわたって冷却風を吹き付ける環状冷却装置である。冷却装置4は、
図2に示すように、紡糸ビーム21の下方に配置されており、複数の冷却筒41と、複数の冷却筒41が収容された冷却風供給箱42とを備えている。複数の冷却筒41は、複数の紡糸パック22の直下にそれぞれ配置されている。冷却筒41は、上下方向に延びた略円筒形状の部材であり、内部に上下方向の両端が開口した糸走行空間43が形成されている。冷却筒41の糸走行空間43の側壁を形成する部分では、冷却風供給箱42の内部空間44からそれぞれの糸走行空間43に流れ込む冷却風の整流が行われる。内部空間44は、各糸走行空間43の全周にわたって設けられている。冷却風供給箱42のそれぞれの内部空間44には、不図示のダクトから不図示の冷却空気配管を通って冷却風が送られる。なお、冷却空気配管は、
図2において、冷却装置4の紙面裏側に配置されている。
【0028】
給油ユニット5は、複数の紡糸パック22から下方に紡出された複数の糸Yに油剤を付与する。より具体的には、給油ユニット5は、複数のフィラメントFが2つに分けて束ねられることで構成される2本の糸Y(第1糸Y1及び第2糸Y2)に油剤を付与するものである。複数の給油ユニット5は、
図2に示すように、複数の冷却筒41の直下に配置されている。すなわち、各給油ユニット5は、複数の紡糸パック22に対応して設けられている。
【0029】
各給油ユニット5は、1つの口金24から紡出される2本の糸Y(第1糸Y1及び第2糸Y2)のそれぞれを構成する複数のフィラメントFからなる2つのフィラメント群がそれぞれ掛けられる2つの給油ガイド51を有する。具体的には、各給油ユニット5は、2つの給油ガイド51として、第1吐出口群26Aから紡出された複数のフィラメントFの束(以下、第1フィラメント群と称する)が掛けられる第1給油ガイド51aと、第2吐出口群26Bから紡出された複数のフィラメントFの束(以下、第2フィラメント群と称する)が掛けられる第2給油ガイド51bとを有する。上下方向から見たときに、第1給油ガイド51aは仮想分割面Xに対して第1吐出口群26Aと同じ側に配置されており、第2給油ガイド51bは仮想分割面Xに対して第2吐出口群26Bと同じ側に配置されている。より具体的には、第1給油ガイド51aは、第1吐出口群26Aの重心位置の略直下に配置されている。ここで、第1吐出口群26Aの重心位置とは、第1吐出口群26Aに含まれる各吐出口26の中心に同じ重み付けをしたと仮定した場合に、上下方向から見たときにおける第1吐出口群26Aに含まれる各吐出口26の中心の重心位置(幾何中心)のことを指す。ここでいう重心位置とは、第1吐出口群26Aに含まれる複数の吐出口26の中心に対して1つ設定される位置である。また、第2給油ガイド51bは、第2吐出口群26Bの重心位置の略直下に配置されている。ここで、第2吐出口群26Bの重心位置とは、第2吐出口群26Bに含まれる各吐出口26の中心に同じ重み付けをしたと仮定した場合に、上下方向から見たときにおける第2吐出口群26Bに含まれる各吐出口26の中心の重心位置(幾何中心)のことを指す。ここでいう重心位置とは、第1吐出口群26Bに含まれる複数の吐出口26の中心に対して1つ設定される位置である。
【0030】
第1給油ガイド51aは、第1糸Y1を構成する複数のフィラメントFが走行しながら接触する第1給油面52aと、油剤を吐出する油剤吐出孔(不図示)とを有する(
図5参照)。
図5に示すように、第1給油面52aは、水平方向である所定の第1幅方向D1に広がりつつ上下に延びる面となっている。上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度は+45度から-45度の範囲内である。「第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度が+45度」とは、上下方向から見たときに、第1幅方向D1の延びる方向が、仮想分割面Xを基準として時計回りに45度傾いた方向であることを意味する。「第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度が-45度」とは、上下方向から見たときに、第1幅方向D1の延びる方向が、仮想分割面Xを基準として反時計回りに45度傾いた方向であることを意味する。第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度が0度とは、第1幅方向D1と仮想分割面Xとが平行且つ第1給油面52aが仮想分割面Xと向かい合っているときのことである。本実施形態では、上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度は0度である。言い換えれば、本実施形態では、第1幅方向D1と仮想分割面Xとは、ともに前後方向に延びている。ここで、「第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度」について具体的に説明する。「第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度」とは、上下方向から見たときに、第1幅方向D1と仮想分割面Xとが平行且つ第1給油面52aが仮想分割面Xと向かい合う向きとのとき(
図5の状態)の、第1幅方向D1が仮想分割面に対してなす角度を0度とした場合において、上下方向から見たときに第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度である。
【0031】
第1給油面52aは、上下に湾曲した形状である(
図4参照)。
図5の破線は、上下に湾曲した第1給油面52aの下端を示している。なお、第1給油面52aは湾曲していなくてもよく、上下方向と平行に延びていてもよい。油剤吐出孔から吐出された油剤は第1給油面52aへ流れており、第1糸Y1を構成する複数のフィラメントFは第1給油面52aに接触しながら走行することによって油剤が付与される。なお、第1吐出口群26Aから紡出された複数のフィラメントFは、第1給油ガイド51aによって油剤が付与された後、交絡されるなどして、1本のマルチフィラメントからなる第1糸Y1となる。
【0032】
また、第2給油ガイド51bは、第2糸Y2を構成する複数のフィラメントFが走行しながら接触する第2給油面52bと、油剤を吐出する油剤吐出孔(不図示)とを有する(
図5参照)。
図5に示すように、第2給油面52bは、水平方向である所定の第2幅方向D2に広がりつつ上下に延びる面となっている。上下方向から見たときに、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度は+45度から-45度の範囲内である。「第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度が+45度」とは、上下方向から見たときに、第2幅方向D2の延びる方向が、仮想分割面Xを基準として時計回りに45度傾いた方向であることを意味する。「第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度が-45度」とは、上下方向から見たときに、第2幅方向D2の延びる方向が、仮想分割面Xを基準として反時計回りに45度傾いた方向であることを意味する。第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度が0度とは、第2幅方向D2と仮想分割面Xとが平行且つ第2給油面52bが仮想分割面Xと向かい合っているときのことである。本実施形態では、上下方向から見たときに、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度は0度である。言い換えれば、本実施形態では、第2幅方向D2と仮想分割面Xとは、ともに前後方向に延びている。ここで、「第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度」について具体的に説明する。「第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度」とは、上下方向から見たときに、第2幅方向D2と仮想分割面Xとが平行且つ第2給油面52bが仮想分割面Xと向かい合う向きのとき(
図5の状態)の、第2幅方向D2が仮想分割面に対してなす角度を0度とした場合において、上下方向から見たときに第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度である。そして、上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度と、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度とは同じである。
【0033】
第2給油面52bは、上下に湾曲した形状である(
図4参照)。
図5の破線は、上下に湾曲した第2給油面52bの下端を示している。なお、第2給油面52bは湾曲していなくてもよく、上下方向と平行に延びていてもよい。油剤吐出孔から吐出された油剤は第2給油面52bへ流れており、第2糸Y2を構成する複数のフィラメントFは第2給油面52bに接触しながら走行することによって油剤が付与される。なお、第2吐出口群26Bから紡出された複数のフィラメントFは、第2給油ガイド51bによって油剤が付与された後、交絡されるなどして、1本のマルチフィラメントからなる第2糸Y2となる。
【0034】
図5に示すように、第1給油面52aと第2給油面52bとは、対向配置されている。すなわち、第1給油面52aは右方を向いており、第2給油面52bは左方を向いている。また、
図5に示すように、上下方向から見たときに、第1給油面52aと第2給油面52bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されている。
【0035】
第1給油面52aの中心位置と第2給油面52bの中心位置との間の左右方向(水平方向)における距離が、第1吐出口群26Aの重心位置と第2吐出口群26Bの重心位置との間の左右方向(水平方向)における距離よりも小さい。第1給油面52aの中心位置と第2給油面52bの中心位置との間の距離とは、複数のフィラメントFと第1給油面52aとの接触領域の中心と、複数のフィラメントFと第2給油面52bとの接触領域の中心との間の距離である。なお、複数のフィラメントFと第1給油面52aとの接触領域とは、第1給油面52aのうちの複数のフィラメントFと接触し得る領域のことである。また、複数のフィラメントFと第2給油面52bとの接触領域とは、第2給油面52bのうちの複数のフィラメントFと接触し得る領域のことである。また、第1吐出口群26Aの重心位置と第2吐出口群26Bの重心位置との間の距離とは、上下方向から見たときの第1吐出口群26Aの重心位置と第2吐出口群26Bの重心位置との間の距離である。
【0036】
さらに、第1給油ガイド51a及び第2給油ガイド51bは、ゴデットローラ8、9によって複数の糸Yが引き取られるときの規制位置と、各給油ガイド51にフィラメント群が掛けられるときの糸掛位置との間で切り替え可能である。本実施形態において、各給油ガイド51は、左右方向に移動することで規制位置と糸掛位置との間で切り替え可能である(
図4の実線矢印参照)。より具体的には、第1給油ガイド51aは、右から左に移動することによって規制位置から糸掛位置に切り替わる。第2給油ガイド51bは、左から右に移動することによって規制位置から糸掛位置に切り替わる。各給油ガイド51の規制位置と糸掛位置との間の切り替えは、不図示のモータによって駆動されてもよく、作業者によって手動で行われてもよい。2つの給油ガイド51が糸掛位置にあるときの第1給油ガイド51aと第2給油ガイド51bとの間の距離は、2つの給油ガイド51が規制位置にあるときの第1給油ガイド51aと第2給油ガイド51bとの間の距離よりも大きい。
【0037】
糸道規制ガイド6は、各給油ガイド51の各給油面に糸Yを適切な態様で押し付けるように糸道を規定する。複数の糸道規制ガイド6は、
図2に示すように、各給油ユニット5の下方に2つずつ配置されている。より詳細には、糸道規制ガイド6は、各給油ユニット5の第1給油ガイド51aの下方と第2給油ガイド51bの下方とにそれぞれ1つずつ配置されている。第1給油ガイド51aの下方に配置された糸道規制ガイド6は、第1給油ガイド51aの第1給油面52aに第1糸Y1を構成する複数のフィラメントFを適切な態様で押し付けるように糸道を規定する。第2給油ガイド51bの下方に配置された糸道規制ガイド6は、第2給油ガイド51bの第2給油面52bに第2糸Y2を構成する複数のフィラメントFを適切な態様で押し付けるように糸道を規定する。
【0038】
櫛歯ガイド7は、複数の糸Yを案内するための複数の溝(不図示)が左右方向に沿って等間隔に形成された櫛歯状のガイドである。櫛歯ガイド7の複数の溝は、上下方向の両端、及び、前方又は後方のいずれか一方が開口している。櫛歯ガイド7は、複数の糸道規制ガイド6の左右方向及び前後方向の中央の略直下に1つ配置されている。複数の糸道規制ガイド6において案内された複数の糸Yは、櫛歯ガイド7において、複数の溝に案内され、左右方向に等間隔に並びながら下方に向かって走行する。
【0039】
なお、各給油ガイド51、各糸道規制ガイド6及び櫛歯ガイド7への糸掛け作業は、作業者によって行われてもよく、自動で行われてもよい。
【0040】
ゴデットローラ8、9は、
図1に示すように、櫛歯ガイド7の糸走行方向の下流側に配置されており、不図示のモータによって回転駆動される。紡糸装置2から紡出された複数の糸Yは、冷却装置4の糸走行空間43、給油ユニット5、糸道規制ガイド6、櫛歯ガイド7を経由して、ゴデットローラ8、9の順に巻き掛けられており、ゴデットローラ8、9によって紡糸巻取装置10へ送られる。なお、ゴデットローラ8、9は、本発明の引取ローラに相当する。
【0041】
紡糸巻取装置10は、ボビンホルダ11に保持されている複数のボビンBに複数の糸Yを巻き取って、複数のパッケージPを形成する。紡糸巻取装置10には、2本のボビンホルダ11が設けられている。ボビンホルダ11は、前後方向に延びる軸部材であり、その後端部が機台12に設けられたターレット13によって片持ち支持されている。ボビンホルダ11は、軸方向に複数のボビンBを並べて保持することができる。例えば、8本の糸Yが紡糸装置2から送られてくる場合、8本の糸Yを8個のボビンBに巻き取る。
【0042】
また、紡糸巻取装置10は、ボビンホルダ11と略平行に前後方向に延びる支持フレーム14を有する。支持フレーム14は、その後端部が機台12によって片持ち支持されている。支持フレーム14の上部には、前後方向に延びるガイド支持体15が設けられている。ガイド支持体15には、ボビンホルダ11に保持される複数のボビンBに対応して、複数の支持ガイド16が前後方向に並んで設けられている。また、支持フレーム14には、ボビンホルダ11に保持される複数のボビンBに対応して、複数のトラバース装置17が前後方向に並んで設けられる。各トラバース装置17は、対応する支持ガイド16を中心に糸Yを前後方向に綾振りする。
【0043】
紡糸巻取装置10は、支持フレーム14によって回転可能に支持されたコンタクトローラ18を有する。コンタクトローラ18は、支持フレーム14の下方に設けられている。紡糸巻取装置10の各部の動作は不図示の制御装置によって制御される。紡糸巻取装置10は、複数のトラバース装置17によって綾振りされている複数の糸Yの巻き取りを、2つのボビンホルダ11のうち、上方に配置されているボビンホルダ11に装着されている複数の新しいボビンBに対して開始する。糸Yの巻き取り中には、適宜、コンタクトローラ18を昇降駆動及び/又はターレット13を回転駆動させることで、パッケージPの径の増加に対応しながら、複数のパッケージPを形成する。
【0044】
(効果)
本実施形態の紡糸生産設備1は、複数のフィラメントFを下方に紡出する複数の吐出口26が形成された口金24を有する紡糸装置2と、口金24の下方に配置され、複数のフィラメントFを冷却風によって冷却する冷却装置4と、冷却装置4のさらに下方に配置され、複数のフィラメントFが2つに分けて束ねられることで構成される第1糸Y1及び第2糸Y2に油剤を付与する給油ユニット5と、を備える。複数の吐出口26は、上下方向と交差する方向である前後方向(所定幅方向)に広がりつつ上下方向に延びる仮想分割面Xによって、第1糸Y1を構成する複数のフィラメントFを紡出する第1吐出口群26Aと第2糸Y2を構成する複数のフィラメントFを紡出する第2吐出口群26Bとに分けられている。第1吐出口群26Aは前後方向(所定幅方向)に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数が、前後方向と交差する任意の方向に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数よりも多くなるように構成されている。また、第2吐出口群26Bは前後方向(所定幅方向)に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数が、前後方向と交差する任意の方向に沿って並んだ吐出口26の列のうちの最も吐出口26の数を多く含む列に含まれる吐出口26の数よりも多くなるように構成されている。給油ユニット5は、第1糸Y1を構成する複数のフィラメントFが走行しながら接触する第1給油面52aと、第2糸Y2を構成する複数のフィラメントFが走行しながら接触する第2給油面52bと、を有している。第1給油面52aは水平方向である所定の第1幅方向D1に広がりつつ上下に延びる面となっており、第2給油面52bは水平方向である所定の第2幅方向D2に広がりつつ上下に延びる面となっている。上下方向から見たときに、第1幅方向D1と仮想分割面Xとが平行且つ第1給油面52aが仮想分割面Xと向かい合う向きのときの、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度を0度とした場合において、上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度が+45度から-45度の範囲内である。上下方向から見たときに、第2幅方向D2と仮想分割面Xとが平行且つ第2給油面52bが仮想分割面Xと向かい合う向きのときの、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度を0度とした場合において、上下方向から見たときに、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度が+45度から-45度の範囲内である。第1給油面52aの中心位置と第2給油面52bの中心位置との間の水平方向における距離が、第1吐出口群26Aの重心位置と第2吐出口群26Bの重心位置との間の水平方向における距離よりも小さい。
【0045】
ここで、本実施形態の給油ユニット5とは異なり、例えば、給油ユニットは
図6に示すように配置されることも考えられる、なお、以下、
図6に示す構成の給油ユニットを、給油ユニット105と称する。また、本実施形態の構成と同様の構成については同じ符号を用いる。具体的には、給油ユニット105は、2つの給油ガイド151として、第1給油ガイド151a及び第2給油ガイド151bを有する。第1給油ガイド151aは、第1糸Y1を構成する複数のフィラメントFが接触する第1給油面152aを有する。また、第2給油ガイド151bは、第2糸Y2を構成する複数のフィラメントFが接触する第2給油面152bを有する。第1給油面152aは、水平方向である所定の第1幅方向D11に広がりつつ上下に延びる面となっている。上下方向から見たときに、仮想分割面Xが第1幅方向D11に対してなす角度は+90度である。「第1幅方向D11が仮想分割面Xに対してなす角度が+90度」とは、上下方向から見たときに、第1幅方向D11の延びる方向が、仮想分割面Xを基準として時計回りに90度傾いた方向であることを意味する。すなわち、上下方向から見たときに、仮想分割面Xと第1幅方向D11とは直交している。さらに、第1給油面152aは前方を向いている。第2給油面152bは、水平方向である所定の第2幅方向D12に広がりつつ上下に延びる面となっている。上下方向から見たときに、仮想分割面Xが第2幅方向D12に対してなす角度は-90度である。「第2幅方向D12が仮想分割面Xに対してなす角度が-90度」とは、上下方向から見たときに、第2幅方向D12の延びる方向が、仮想分割面Xを基準として反時計回りに90度傾いた方向であることを意味する。すなわち、上下方向から見たときに、仮想分割面Xと第2幅方向D12とは直交している。さらに、第2給油面152bは前方を向いている。
【0046】
上記のような給油ユニット105では、円形の口金24の第1吐出口群26Aから紡出されて、略半円状に並んで走行する複数のフィラメントFが最も広がる方向(仮想分割面Xの水平に延びる方向すなわち前後方向)が、第1給油面152aの第1幅方向D11と大きな角度で交差する(
図6参照)。同様に、円形の口金24の第2吐出口群26Bから紡出されて、略半円状に並んで走行する複数のフィラメントFが最も広がる方向(仮想分割面Xの水平に延びる方向すなわち前後方向)が、第2給油面152bの第2幅方向D12と大きな角度で交差する(
図6参照)。この場合、次のような問題がある。
図6に示すように、走行する複数のフィラメントFは、広がった状態で第1給油面152aに接触することができず、多くのフィラメントFが多重に重なった状態で第1給油面152aに接触する。言い換えれば、多くのフィラメントFは、フィラメントF同士が重なることによって第1給油面152aに直接接触することができない。第1給油面152aに直接接触できないフィラメントFには、油剤吐出孔(不図示)から吐出されて第1給油面152aを流れる油剤が適切に付与されない。特に、上下方向から見たときに、仮想分割面Xの延びる方向と第1給油面152aの第1幅方向D11とのなす角度が大きければ大きいほど、より多くのフィラメントFが重なった状態で第1給油面152aに接触することになる。以上のことは、第2給油面152bについても同様である。このように、第1給油面152a及び第2給油面152bに直接接触できないことによって油剤が適切に付与されないフィラメントFの数が多いほど、複数のフィラメントFからなる糸Y(第1糸Y1及び第2糸Y2)の品質も悪化する。
【0047】
この点、本実施形態の構成によれば、上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度、及び、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度がいずれも+45度から-45度の範囲内である。このため、上下方向から見たときに、第1吐出口群26Aから紡出される複数のフィラメントFの最も広がる方向(すなわち前後方向)と、第1給油52aの第1幅方向D1とが交差する角度をできるだけ小さくすることができる。同様に、第2吐出口群26Bから紡出される複数のフィラメントFの最も広がる方向(すなわち前後方向)と、第2給油面52bの第2幅方向D2とが交差する角度をできるだけ小さくすることができる。これにより、各給油面に対して、各吐出口群から紡出される複数のフィラメントFをできるだけ広げた状態で接触させることができる。これにより、フィラメントF同士の重なりを減らすことができ、できるだけ多くのフィラメントFを各給油面に直接接触させることができる。よって、複数のフィラメントFに対して効率良く油剤を付与することができる。
【0048】
さらに、本実施形態によれば、上下方向から見たときに、第1幅方向D1と仮想分割面Xとが平行且つ第1給油面52aが仮想分割面Xと向かい合う向きのときの、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度を0度とした場合において、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度が+45度から-45度の範囲内である。また、上下方向から見たときに、第2幅方向D2と仮想分割面Xとが平行且つ第2給油面52bが仮想分割面Xと向かい合う向きのときの、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度を0度とした場合において、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度が+45度から-45度の範囲内である。言い換えれば、第1給油面52aと第2給油面52bとが対向配置されており、すなわち2つの給油面52a、52bの間には別の部材が存在していない。このため、第1給油面52aと第2給油面52bとをなるべく近づけることができる。そして、互いに近づけた2つの給油面52a、52bについて、第1給油面52aの中心位置と第2給油面52bの中心位置との間の水平方向における距離は、第1吐出口群26Aの重心位置と第2吐出口群26Bの重心位置との間の水平方向における距離よりも小さい。このため、第1吐出口群26Aから紡出された複数のフィラメントFの束と第2吐出口群26Bから紡出された複数のフィラメントFの束とは、各給油面52a、52bに向かって集束する。言い換えれば、第1給油面52aと接触する複数のフィラメントF及び第2給油面52bと接触する複数のフィラメントFは内側に絞られることになる。これにより、1つの口金24と給油ユニット5の間において、第1吐出口群26Aから紡出された複数のフィラメントFの束と、第2吐出口群26Bから紡出された複数のフィラメントFの束との間に形成される空間の大きさを小さくできる。よって、冷却装置4からの冷却風が上記空間に入り込むことによって引き起こされる気流の乱れを抑制でき、各フィラメントFへの冷却作用を均一化できる。したがって、複数のフィラメントFを適切に冷却することができ、その結果、複数のフィラメントFから構成される2本の糸Y(第1糸Y1及び第2糸Y2)の品質確保につながる。
【0049】
また、本実施形態の紡糸生産設備1では、上下方向から見たときに、第1幅方向D1が、仮想分割面Xに対してなす角度と、第2幅方向D2が、仮想分割面Xに対してなす角度とが同じである。これによれば、第1吐出口群26Aから紡出される複数のフィラメントFの第1給油面52aに対する広がり具合と、第2吐出口群26Bから紡出される複数のフィラメントFの第2給油面52bに対する広がり具合とを揃えることができる。これにより、2つの吐出口群から紡出される複数のフィラメントFについて、各給油面からの油剤付与効率を均一にすることができる。よって、1つの口金24の2つの吐出口群から紡出される2本の糸Y(第1糸Y1及び第2糸Y2)の品質を均一にすることができる。
【0050】
また、本実施形態の紡糸生産設備1では、上下方向から見たときに、第1吐出口群26Aと第2吐出口群26Bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されており、第1給油面52aと第2給油面52bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されている。1つの口金24の2つの吐出口群から紡出された複数のフィラメントFは、紡糸装置2と給油ユニット5との間に配置された冷却装置4から供給される冷却風によって冷却される。本実施形態によれば、第1吐出口群26Aから紡出された複数のフィラメントFの第1給油面52aに至るまでの経路と、第2吐出口群26Bから紡出された複数のフィラメントFの第2給油面52bに至るまでの経路とが、仮想分割面Xを境にして面対称となる。このため、第1吐出口群26Aから紡出された複数のフィラメントFと、第2吐出口群26Bから紡出された複数のフィラメントFとは、紡糸装置2と給油ユニット5の間に配置される冷却装置4からの冷却風が吹きつけられる経路長が同じとなる。これにより、1つの口金24の2つの吐出口群から紡出される複数のフィラメントFから構成される2本の糸Y(第1糸Y1及び第2糸Y2)の品質を均一にすることができる。
【0051】
また、本実施形態の紡糸生産設備1では、給油ユニット5は第1給油面52aが形成された第1給油ガイド51aと、第2給油面52bが形成された第2給油ガイド51bとを有する。第1糸Y1及び第2糸Y2が走行する糸走行方向において、給油ユニット5よりも下流側には、第1糸Y1及び第2糸Y2を引き取るためのゴデットローラ8、9が配置されている。第1給油ガイド51aは、ゴデットローラ8、9によって第1糸Y1が引き取られるときの規制位置と、第1給油ガイド51aに第1糸Y1が掛けられるときの糸掛位置との間で切り替え可能である。第2給油ガイド51bは、ゴデットローラ8、9によって第2糸Y2が引き取られるときの規制位置と、第2給油ガイド51bに第2糸Y2が掛けられるときの糸掛位置との間で切り替え可能である。そして、糸掛位置にある第1給油ガイド51aと糸掛位置にある第2給油ガイド51bとの間の距離は、規制位置にある第1給油ガイド51aと規制位置にある第2給油ガイド51bとの間の距離よりも大きい。糸掛位置にある第1給油ガイドと糸掛位置にある第2給油ガイドとの間の距離は、規制位置にある第1給油ガイドと規制位置にある第2給油ガイドとの間の距離よりも大きい。このため、第1給油ガイド及び第2給油ガイドを糸掛位置に切り換えることで、各給油ガイドに糸を掛けることが容易となる。
【0052】
また、本実施形態の紡糸生産設備1では、冷却装置4は、走行する複数のフィラメントFの全周にわたって冷却風を吹き付ける環状冷却装置である。環状冷却装置によって複数のフィラメントFの全周にわたって冷却風を吹き付ける場合、1つの口金24とその下方にある2つの給油ガイド51との間を走行する複数のフィラメント群同士の間に形成される空間には、より多くの冷却風が入り込みやすい。よって、空間内での気流の乱れも発生しやすい。本実施形態によれば、環状冷却装置を備える構成において、冷却装置4からの冷却風が空間に入り込むことによって引き起こされる気流の乱れを効果的に抑制することができる。よって、複数のフィラメントFをより適切に冷却することができる。
【0053】
(変形例)
以下に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0054】
上記実施形態では、上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度は0度である。しかしながら、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度は0度でなくてもよく、+45度から-45度の範囲内であればよい。+45度及び-45度の定義は上述した通りである。第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度についても同様である。
【0055】
上記実施形態では、上下方向から見たときに、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度と、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度とが同じである。しかしながら、第1幅方向D1が仮想分割面Xに対してなす角度と、第2幅方向D2が仮想分割面Xに対してなす角度とは異なっていてもよい。
【0056】
上記実施形態では、上下方向から見たときに、第1吐出口群26Aと第2吐出口群26Bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されている。しかしながら、例えば、第1吐出口群26Aを構成する吐出口の数と、第2吐出口群26Bを構成する吐出口の数が異なっており、上下方向から見たときに、第1吐出口群26Aと第2吐出口群26Bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されていなくてもよい。
【0057】
上記実施形態では、上下方向から見たときに、第1給油面52aと第2給油面52bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されている。しかしながら、上下方向から見たときに、第1給油面52aと第2給油面52bとは、仮想分割面Xの延びる方向を軸として線対称となるように配置されていなくてもよい。
【0058】
上記実施形態では、複数の糸道規制ガイド6の下方には、複数の溝(不図示)が左右方向に沿って等間隔に形成された櫛歯状の櫛歯ガイド7が配置されている。しかしながら、複数の糸道規制ガイド6の下方に配置されるガイドは櫛歯状のガイドでなくてもよい。例えば、U字ガイドのように、1つのガイド部材に糸Yをガイドする糸走行部が1つ設けられたガイド等を採用することも可能である。
【0059】
上記実施形態では、紡糸ビーム21は平面視で左右方向を長辺とする長方形形状である。しかしながら、紡糸ビーム21は、例えば、平面視で円形であってもよい。この場合、円形の紡糸ビーム21に沿って複数の紡糸パック22が配置されている。
【0060】
上記実施形態では、各給油ガイド51は、規制位置と糸掛位置との間で切り替え可能である。しかしながら、各給油ガイド51は、規制位置に固定されるものであってもよい。
【0061】
上記実施形態では、冷却装置4は環状冷却装置である。しかしながら、冷却装置4は、走行する複数のフィラメントFの全周のうちの一部に冷却風を吹き付ける装置でもよい。
【0062】
上記実施形態では、口金24は、下方から見たときに略円形の形状である。しかしながら、口金24は、円形でなくてもよい。例えば、多角形の形状であってもよい。
【0063】
上記実施形態では、第1吐出口群26Aは、前後方向に沿って並んだ吐出口26の列を複数含んでいる。しかしながら、第1吐出口群26Aは、前後方向に沿って並んだ吐出口26の列を1つだけ含んでいてもよい。同様に、上記実施形態では、第2吐出口群26Aは、前後方向に沿って並んだ吐出口26の列を複数含んでいる。しかしながら、第2吐出口群26Aは、前後方向に沿って並んだ吐出口26の列を1つだけ含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 紡糸生産設備
2 紡糸装置
4 冷却装置
5 給油ユニット
8 ゴデットローラ(引取ローラ)
9 ゴデットローラ(引取ローラ)
24 口金
26 吐出口
26A 第1吐出口群
26B 第2吐出口群
51 給油ガイド
51a 第1給油ガイド
51b 第2給油ガイド
52a 第1給油面
52b 第2給油面
D1 第1幅方向
D2 第2幅方向
F フィラメント
X 仮想分割面
Y 糸
Y1 第1糸
Y2 第2糸