(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106318
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】装飾被膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/28 20060101AFI20240731BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240731BHJP
E04F 21/16 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D3/00 D
E04F21/16 F
E04F21/16 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219469
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2023010085
(32)【優先日】2023-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023142269
(32)【優先日】2023-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】守本 浩直
(72)【発明者】
【氏名】志和 美咲
(72)【発明者】
【氏名】五呂 遼典
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AC57
4D075AC88
4D075AC91
4D075AE03
4D075BB60Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB02
4D075CB07
4D075CB21
4D075CB23
4D075DA06
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4D075DC01
4D075DC05
4D075EA05
4D075EB22
4D075EC01
4D075EC02
4D075EC11
4D075EC13
(57)【要約】
【課題】
色の濃淡が自然な線状模様を容易かつ効率的に付与することができる装飾被膜の形成方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、装飾被膜の形成方法であって、
被塗面に、被覆材(a)を塗付し、次いで、該被覆材が未乾燥のうちに模様付与具で該被覆材を引きずることにより線状模様を形成する工程、を含み、
上記被覆材(a)が、下記(I)及び(II)の条件を満たすことを特徴とする。
(I)隠蔽率(x)≧70%
(II)[隠蔽率(y)-隠蔽率(z)]≧30%
なお、
上記隠蔽率(x)は、被覆材(a)の形成被膜の隠蔽率、上記隠蔽率(y)は、被覆材(a)を希釈溶媒で100%希釈した被覆材の形成被膜の隠蔽率、上記隠蔽率(z)は、被覆材(a)を希釈溶媒で300%希釈した被覆材の形成被膜の隠蔽率である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾被膜の形成方法であって、
被塗面に、被覆材(a)を塗付し、次いで、該被覆材が未乾燥のうちに模様付与具で該被覆材を引きずることにより線状模様を形成する工程、を含み、
上記被覆材(a)が、下記(I)及び(II)の条件を満たすことを特徴とする装飾被膜の形成方法。
(I)隠蔽率(x)≧70%
(II)[隠蔽率(y)-隠蔽率(z)]≧30%
なお、
上記隠蔽率(x)は、被覆材(a)の形成被膜の隠蔽率、
上記隠蔽率(y)は、被覆材(a)を希釈溶媒で100%希釈した被覆材の形成被膜の隠蔽率、
上記隠蔽率(z)は、被覆材(a)を希釈溶媒で300%希釈した被覆材の形成被膜の隠蔽率であり、
隠蔽率は、被覆材を隠蔽率試験紙にフィルムアプリケータ(隙間75μm)で塗付し、標準状態で24時間乾燥させて得た試験片について、視感反射率を測定した後、下記式によって算出される値である。
<式>
隠蔽率(%)=(黒地上の塗膜の視感反射率)/(白地上の塗膜の視感反射率)×100
【請求項2】
上記模様付与具は、硬度及び/または密度が異なる少なくとも2種以上のスポンジ材が混在するものであることを特徴とする請求項1に記載の装飾被膜の形成方法。
【請求項3】
上記模様付与具は凹凸を有することを特徴とする請求項2に記載の装飾被膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾被膜の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、土木構造物等の壁面に対し、種々の模様を有する装飾被膜を形成することが行われている。このような装飾被膜の一例として、特定の模様付与具を用いることにより模様を形成した装飾被膜が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、塗装された塗膜を半乾きの状態でハケ状物を用いて掻き取り、多数の筋をつける木目模様塗装方法が記載されている。また、特許文献2には、基材上に塗付されたカラー塗膜をブラシでブラッシングして条痕を形成したヘアライン調塗装方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-168191号公報
【特許文献2】特開2001-17909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2のようなハケ状物やブラシ状の模様付与具を用いた場合、均一に塗料が掻き取られるため、規則的で単調な線状模様となるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明者らは、線状模様を形成する被覆材として特定の被覆材を使用し、模様付与具を用いて線状模様を形成する装飾被膜の形成方法を見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.装飾被膜の形成方法であって、
被塗面に、被覆材(a)を塗付し、次いで、該被覆材が未乾燥のうちに模様付与具で該被覆材を引きずることにより線状模様を形成する工程、を含み、
上記被覆材(a)が、下記(I)及び(II)の条件を満たすことを特徴とする装飾被膜の形成方法。
(I)隠蔽率(x)≧70%
(II)[隠蔽率(y)-隠蔽率(z)]≧30%
なお、
上記隠蔽率(x)は、被覆材(a)の形成被膜の隠蔽率、上記隠蔽率(y)は、被覆材(a)を希釈溶媒で100%希釈した被覆材の形成被膜の隠蔽率、上記隠蔽率(z)は、被覆材(a)を希釈溶媒で300%希釈した被覆材の形成被膜の隠蔽率であり、
隠蔽率は、被覆材を隠蔽率試験紙にフィルムアプリケータ(隙間75μm)で塗付し、標準状態で24時間乾燥させて得た試験片について、視感反射率を測定した後、下記式によって算出される値である。
<式>
隠蔽率(%)=(黒地上の塗膜の視感反射率)/(白地上の塗膜の視感反射率)×100
2.上記模様付与具は、硬度及び/または密度が異なる少なくとも2種以上のスポンジ材が混在するものであることを特徴とする1.に記載の装飾被膜の形成方法。
3.上記模様付与具は凹凸を有することを特徴とする2.に記載の装飾被膜の形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、濃淡等が自然な線状模様を形成することができ、美観性に優れた装飾被膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【符号の説明】
【0010】
A:模様付与具
As:接触面
Ae:エッジ部
At:厚み方向
a1~a5:スポンジ材
B:支持部
C:取手部
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
本発明は、装飾被膜の形成方法であって、
被塗面に、被覆材(a)を塗付し、次いで、該被覆材が未乾燥のうちに模様付与具で該被覆材を引きずることにより線状模様を形成する工程、を含み、上記被覆材(a)が、特定の条件を満たすことを特徴とする。
【0013】
<被塗面>
本発明における被塗面は、好ましくは、建築物、土木構造物等の基材表面、特に、内外壁、天井、建具等の表面を構成する基材である。このような基材としては、例えば、石膏ボード、コンクリート、モルタル、磁器タイル、煉瓦、セメント板、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、パーライト板、ALC板、サイディング板、押出成形板、合板、木質板、鋼板、プラスチック板、ガラス板、等が挙げられる。
これら基材の表面は、何らかの表面処理(例えば、シーラー、サーフェーサー、フィラー等)が施されたものでもよく、既に塗膜が形成されたものや、壁紙が貼り付けられたもの、凹凸模様を有するものであってもよい。
【0014】
<被覆材(a)>
本発明における被覆材(a)は、形成被膜の隠蔽率が下記(I)及び(II)の条件を満たすことを特徴とする。
(I)隠蔽率(x)≧70%
(II)[隠蔽率(y)-隠蔽率(z)]≧30%
なお、
上記隠蔽率(x)は、被覆材(a)(無希釈:希釈率0%)の形成被膜の隠蔽率、
上記隠蔽率(y)は、被覆材(a)を希釈溶媒で100%希釈した被覆材の形成被膜の隠蔽率、
上記隠蔽率(z)は、被覆材(a)を希釈溶媒で300%希釈した被覆材の形成被膜の隠蔽率であり、
隠蔽率は、被覆材を隠蔽率試験紙にフィルムアプリケータ(隙間75μm)で塗付し、標準状態で24時間乾燥させて得た試験片について、視感反射率を測定した後、下記式によって算出される値である。
<式>
隠蔽率(%)=(黒地上の塗膜の視感反射率)/(白地上の塗膜の視感反射率)×100
【0015】
具体的に、被覆材(a)は、上記(I)のように、隠蔽率(x)が70%以上(より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上100%以下)であり、上記(II)のように、隠蔽率(y)と隠蔽率(z)の差が30%以上(より好ましくは40%以上、さらに好ましくは45%以上90%以下)であることを特徴とする。
【0016】
被覆材(a)の隠蔽率が上記(I)及び(II)の条件を満たすことにより、被覆材(a)の形成被膜の厚みや濃度によって隠蔽性(透明度)が変化し、隠蔽性の高い部分と低い部分のコントラストが明瞭となる。これにより、被塗面の色彩とあいまって、自然な線状模様を付与することができる。
具体的には、被覆材(a)を塗付し、次工程で該被覆材(a)が未乾燥のうちに模様付与具で該被覆材を引きずることによって、被覆材(a)の残存量が部分的に異なり形成被膜の厚みや濃度が変化した線状模様が形成される。これにより、視認される色が多段階的となり、複数色が混在した自然な線状模様を付与することができる。
【0017】
また、被覆材(a)は、下記(III)及び/または下記(IV)の条件を満たすことが好ましい。具体的に、
(III)隠蔽率(y)≧60%
被覆材(a)は、隠蔽率(y)が60%以上(より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上98%以下)であることが好適である。
(IV)隠蔽率(z)<70%
被覆材(a)は、隠蔽率(z)が70%未満(より好ましくは60%未満、さらに好ましくは5%以上50%未満)であることが好適である。
被覆材(a)の隠蔽率がこのような範囲内であれば、被覆材(a)の形成被膜の厚みによる色彩変化が視認されやすく、本発明の効果をいっそう高めることができる。
【0018】
さらに、被覆材(a)は、下記(V)、(VI)のいずれか1つ以上の条件を満たすことが好ましい。具体的に、
(V)[隠蔽率(x)-隠蔽率(z)]≧30%
被覆材(a)は、隠蔽率(x)と隠蔽率(z)の差が30%以上(より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上90%以下であることが好適である。
(VI)[隠蔽率(x)-隠蔽率(y)]≦25%
被覆材(a)は、隠蔽率(y)と隠蔽率(y)の差が25%以下(より好ましくは20%以下、さらに好ましくは0.5%以上18%以下)であることが好適である。
被覆材(a)の隠蔽率がこのような範囲内であれば、被覆材(a)の形成被膜の厚みや濃度による隠蔽性(透明度)の変化がよりいっそう視認されやすく、隠蔽性の高い部分と低い部分のコントラストがより明瞭となる。これにより、被塗面の色彩とあいまって、よりいっそう自然な線状模様を付与することができる。
【0019】
本発明における被覆材(a)は、上記(I)及び(II)の条件を満たす塗料であればよく、例えば、結合材と顔料(着色顔料、体質顔料)や染料を含むもの等を使用できる。また、被覆材(a)には、公知の添加剤を含むことができる。本発明では、顔料や染料の種類、各構成成分の混合比率等を調整することにより、色、光沢等を設定することができる。
【0020】
具体的に、本発明の被覆材(a)としては、結合材及び顔料(着色顔料、体質顔料)を含む着色塗料が好適である。
【0021】
結合材としては、例えば、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂等、あるいはこれらを複合したもの等が挙げられる。これらは架橋反応性を有するものであってもよく、またその形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。本発明では特に、水分散性樹脂及び/または水溶性樹脂が好適に用いられる。使用可能な樹脂の種類としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。
【0022】
顔料としては、公知の着色顔料、体質顔料等が使用できる。このうち、着色顔料としては、有機顔料、無機顔料の何れも使用することができる。有機顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、モノアゾレッド、ファーストイエロー、パーマネントイエロー、ジスアゾイエロー等のアゾ系顔料、ペリレンレッド等のペリレン系顔料、キナクリドンレッド等のキナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、メチン・アゾメチン系顔料、ベンゾイミダゾロン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、黄色酸化鉄、チタンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化タングステン、アルミニウム顔料、パール顔料等が挙げられる。これら着色顔料の1種または2種以上を用いることにより任意の色相に着色することができる。
【0023】
本発明では、着色顔料として、無機顔料を含むことが好適である。これにより、線状模様を長期にわたり保持することができる。また、無機顔料として、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック等の黒色顔料を含むことにより、線状模様の色の濃淡が得られやすく、よりいっそう自然な線状模様を形成することができ、美観性に優れた装飾被膜を形成することができる。
【0024】
着色顔料の平均粒子径は、好ましくは2μm以下(より好ましくは0.01~1μm)である。なお、着色顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される値である。
【0025】
着色顔料の含有量は、被覆材(a)中の全固形分に対して、好ましくは2~80質量%(より好ましくは3~70質量%、更に好ましくは5~60質量%)である。
【0026】
体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、寒水石、軽微性炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、珪砂、珪石粉、石英粉、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、中空バルーン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0027】
体質顔料の平均粒子径は、特に限定されないが、体質顔料の平均粒子径は、好ましくは50μm未満(より好ましくは0.5~45μm)である。なお、体質顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される値である。
【0028】
本発明では、上記体質顔料の種類、混合比率等を適宜設定することにより、被覆材(a)を所望の光沢度に調整することができる。本発明の被覆材(a)は、例えば、艶有り、艶消し(7分艶、5分艶、3分艶等を含む)のいずれであってもよい。
体質顔料の含有量は、被覆材(a)中の全固形分に対して、好ましくは0~70質量%である。
【0029】
本発明の被覆材(a)は、上記成分以外に、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内において、公知の添加剤、例えば、染料、増粘剤、湿潤剤、凍結防止剤、造膜助剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒、希釈溶媒等を含むものであってもよい。被覆材は、上述の各成分を常法により均一に混合することで製造することができる。
【0030】
本発明の被覆材(a)の固形分は、好ましくは30~95質量%(より好ましくは35~90質量%)である。
【0031】
<模様付与具>
本発明で使用する模様付与具は、線状模様を形成するものである。
具体的な使用方法としては、被塗面に塗付された被覆材(a)が未乾燥のうちに、本発明の模様付与具を被覆材に接触させ、被覆材を引きずるように移動させるものである。これにより、模様付与具の接触面が被覆材(a)を部分的に吸収したり、掻き取り(除去)によって線状模様を付与するものである。
【0032】
模様付与具としては、線状模様を付与できるものであれば特に限定されず、例えば、刷毛、ブラシ、くし、タワシ、スポンジ、各種布類(例えば、綿、ナイロン、ポリエステル、フェルト、ウエス、メッシュ、軍手等)、紙類等が挙げられ、これらを組み合わせて使用することができる。本発明では、特に、スポンジや布類等、被覆材(a)を吸収しながら掻き取ることができるものが好ましい。中でも、
図1に示すような特定のスポンジ材を有する模様付与具を使用することが好適である。
【0033】
図1に、本発明に好適な模様付与具の斜視図を示す。
図2に、
図1の模様付与具の断面図[
図1:X-X’]を示す。
本発明の模様付与具は、硬度及び/または密度が異なる少なくとも2種以上のスポンジ材[
図2:a1~a5]が混在するものであることが好適である。このような特定のスポンジ材を使用することにより、引きずり工程中は、被覆材を吸収するとともに吸収された被覆材の一部が塗付され、被覆材の吸収(掻き取られる)量が均一になりにくい(ランダムな)ため、形成被膜の厚みや掻き取り部分の幅等に変化が生じる。これにより線間隔や色の濃淡等が自然な線状模様を容易かつ効果的に付与することができる。
【0034】
また、本発明の模様付与具は、硬度及び/または密度が異なる少なくとも2種以上のスポンジ材がランダムに混在するため、線状模様を形成する過程において模様付けが不十分な箇所等を局所的に補修(タッチアップ)する場合であっても、補修個所の線状模様と先に形成された線状模様を違和感なく馴染ませることができ、美観性に優れた線状模様を形成することができる。さらに、被塗面が凹凸を有する場合であっても、被塗面の凹凸に沿って被覆材を引きずることができ、美観性に優れた線状模様を形成することができる。
【0035】
スポンジ材としては、被覆材を吸収する(含む)ことができるものであれば特に限定されないが、例えば、ウレタン系、メラミン系、アクリル系、ナイロン系等が挙げられ、これらの硬度、密度のいずれかまたは両方が異なる少なくとも2種以上(好ましくは3種以上)のものを混合して使用する。本発明では、2種以上(好ましくは3種以上)のスポンジ材(好ましくはウレタン系スポンジ材を含む)を組み合わせて使用することが好ましい。
【0036】
各スポンジ材の硬度は、好ましくは10~3000N(より好ましくは20~2000N、さらに好ましくは30~1500N)、密度は、好ましくは1~300kg/m 3(より好ましくは3~200kg/m 3、さらに好ましくは5~150kg/m 3)である。このようなスポンジ材を組み合わせた模様付与具を使用することにより、各スポンジ材において変形具合や被覆材の吸収具合等が異なる状態となり、形成被膜の厚みや掻き取り部分の幅等に変化が生じ、様々な線間隔や色の濃淡等が混在したような自然な線状模様を形成することができる。
ここで言う、「硬度」とは、JIS K6400-2に準じ、試験片の厚さ40%まで圧縮したときの力から測定される硬さ(C法)の値である。また、「密度」とは、JIS K7222に準じ、試験片の質量及び寸法から算出される見掛け密度の値である。
【0037】
上記スポンジ材の個々の外形は特に限定されないが、好ましくは不定形の立体形のものである。また、その個々の大きさは、好ましくは1~30mm(より好ましくは2~20mm)である。本発明では、大きさの異なる複数の吸液材が混在することが好ましい。このような場合、硬度及び/または密度に加え大きさも異なるスポンジ材がランダムに混在するため、本発明の効果を一層高めることができる。なお、ここで言う「大きさ」は、外形の最長軸であり、例えば、一辺が所定寸法の升目を有する篩いにより篩い分けされて測定されるものである。
【0038】
本発明の模様付与具は、上記スポンジ材がブロック状に形成(固定)されたものであることが好ましい。具体的に、本発明の模様付与具は、厚み方向に少なくとも1種のスポンジ材が固定されていればよいが、2種以上が積み重なるように固定されている形態がより好ましい。さらには、
図2のように、厚み方向に複数のスポンジ材がランダムに混在するように積み重なるように固定された態様がいっそう好ましい。このような模様付与具を有することにより、本発明の効果を高めることができる。
【0039】
ブロック状の模様付与具の概形は、特に限定されないが、例えば、直方体形状、立方体形状、三角柱形状、四角柱形状、多角柱形状、円柱形状、半円柱形状、半円球形状等のブロック状が挙げられる。この場合、被覆材と接触する模様付与具の面(以下「接触面」ともいう。[
図1、2:As])の概形は、例えば、三角形、四角形(長方形または正方形)、多角形、円形状、半円形状等となる。模様付与具の接触面の面積は、所望に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは3~500cm
2(より好ましくは5~400cm
2、10~300cm
2)である。また、その高さ(吸液材層の厚み)は、個々の吸液材の大きさにもよるが、好ましくは50mm以下(より好ましくは1~30mm)である。
【0040】
また、接触面の表面形状は、特に限定されず、平滑であっても、凹凸を有するものであってもよいが、本発明では、凹凸形状を有する[
図2、
図3(iii)、(iv)等]ことが好ましい。これにより、線間隔や色の濃淡等がよりいっそう自然な線状模様を付与することができ、本発明の効果を高めることができる。また、模様付与具の接触面に部分的に凹凸を有するものであっても、接触面全面に有するものであってもよい。本発明では、接触面全面に凹凸形状を有することが好ましい。さらに、模様付与具における接触面のエッジ部(稜線上)が除去加工されている[
図3(i)~(iv)等]ことが好ましく、さらには凹凸を有する[
図3(iii)、(iv)等]ことが好ましい。なお、上記接触面の表面及びエッジ部の凹凸形状の大きさは、特に限定されないが、凹部と凸部の高低差が、好ましくは0.3~15mm(より好ましくは0.5~10mm、さらに好ましくは0.8~5mm)である。また、このような範囲を満たす場合、自然な線状模様を容易かつ効率的に付与することができる。
【0041】
上記模様付与具の成型方法としては、特に限定されないが、例えば、
(1)成形型に少なくとも2種以上のスポンジ材を充填して成形する方法、
(2)少なくとも2種以上のスポンジ材を所望の概形を有するブロック状に成形する方法、
等が挙げられる。
上記(1)、上記(2)において、スポンジ材を成形する場合、圧縮成形することが好ましい。これにより、本発明の効果を高めることができる。
【0042】
模様付与具の接触面や、そのエッジ部に凹凸形状を付与する場合、例えば、
上記(1)においては、所望の形状が転写された成形型を使用すればよい。また、上記(2)においては、切除(カッティング)等の除去加工により凹凸加工を施したり、毟り取りや掻き取り等のランダムな除去加工により凹凸形状を施すことができる。本発明では、特に、ランダムな除去加工により凹凸形状を施すことが好ましい。これにより、いっそう自然な線状模様を効率的に付与することができる。さらに、局所的に補修(タッチアップ)する場合であっても、補修個所の線状模様と先に形成された線状模様を違和感なく馴染ませることができ、美観性に優れた線状模様を形成することができる。
【0043】
本発明の模様付与具は、接触面[
図1、2:As]と反対側の面に支持部を有することもできる。例えば、
図4に示すように接触面[
図4:As]と反対側の面に支持部[
図4:B]を取り付ければよい。支持部としては、模様付与具を支持できるものであれはよいが、模様付与具の接触面が、被塗面と接触した際に荷重を付加できる程度に剛性を有するものであればよい。その材質としては、例えば、金属製、合成樹脂製(プラスチック製)、木製、セラミック製、等が使用できる。
【0044】
また、支持部を取り付ける態様としては、例えば、
図4に示すように、模様付与具の接触面[
図4:As]と反対側の面全体を覆うように取り付ける態様、
図5に示すように、模様付与具の接触面[
図4:As]と反対側の面よりも小さく、支持部の端部から模様付与具が延びている態様、等が挙げられる。
本発明では、
図5に示すように、支持部の端部から模様付与具が延びている態様となるように支持部を設けることが好ましく、支持部の端部から模様付与具の端部までの長さ[
図5:L1、L2][
図6:L1~L4]は、好ましくは0.1mm~30mm(より好ましくは1mm~20mm、さらに好ましくは3mm~10mm)である。このような場合、被塗面と接触した際には模様付与具の端部で荷重がやや小さくなる。その結果、被覆材を引きずることにより線状模様を形成する工程において、先に形成された線状模様部の被覆材を過剰に吸収(掻き取り)することがなく、境界部が自然な線状模様を形成することができる。また、被塗面が入隅や出隅等の施工し難い場合であっても、容易に線状模様を形成することができる。
なお、支持部の端部から模様付与具の端部までの長さは上記の範囲内であれば、一定でなくてもよく、例えば、
図6に示すL1~L4は、同じであってもよいし、異なる長さであってもよい。また、
図6では好適な一例として、支持部の端部から4方に模様付与具が延びている態様を示しているが、支持部の端部から模様付与具が延びている態様としては、支持部の端部のうち少なくとも一方の端部より模様付与部が延びている態様であってもよい。
【0045】
さらに、支持部の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm~10cm(より好ましくは0.5mm~5cm)である。このような場合、塗付圧のムラによる模様の偏りを抑制し、美観性に優れた模様を効率的に形成することができる。
【0046】
上記支持部には、取手部[
図4:C][
図5:C]を連結することもできる。取手部の形状、及び材質は上記効果が得られる範囲において特に限定されない。例えば、取手部の形状としては、
図4にはコの字状、
図5には棒状のものを示したが、V字状、半円状等のものも可能である。また、取手部は、支持部に予め連結された状態であっても、着脱可能な状態であってもよく、さらに角度等が変更可能なものであってもよい。その材質は、例えば、金属製、合成樹脂製(プラスチック製)、木製、セラミック製、等が使用できる。
【0047】
<装飾被膜の形成方法>
本発明の装飾被膜の形成方法は、
(工程A)被塗面に、被覆材(a)を塗付する工程、
(工程B)次いで、該被覆材(a)が未乾燥のうちに上記模様付与具で該被覆材(a)を引きずる工程、
を含むことを特徴とする。
【0048】
上記(工程A)において、少なくとも1種の被覆材(a)を塗付する。また、所望の意匠に応じて、2種以上(異色及び/または光沢(艶)が異なる被覆材等)の被覆材(a1、a2、・・・)を塗り分けてもよいし、重ね塗りしてもよい。
【0049】
被覆材(a)を塗付する際の塗付器具としては、例えば、スプレー、コテ、ローラー、ブラシ(刷毛等を含む)、押圧具(叩き具等を含む)等が挙げられる。このうち、ローラーとしては、例えば、繊維質ローラー、多孔質(スポンジ質)ローラー等が挙げられ、押圧具としては、例えば、スポンジ、フェルト、織布、不織布等を有するものが使用できる。
【0050】
上記(工程A)において、被覆材(a)の被塗面への塗付け量は、好ましくは10g/m 2以上500g/m 2以下(好ましくは20g/m 2以上300g/m 2以下)である。このような場合、次工程(工程B)において、線状模様を効率的に付与することができる。
【0051】
上記(工程B)は、上記(工程A)で塗付された被覆材(a)が未乾燥のうちに上記模様付与具で被覆材(a)を引きずる工程である。
本発明において、「被覆材(a)が未乾燥のうち」とは、被覆材(a)が流動状態にあることをいい、具体的には、(工程B)は、被覆材(a)が指触乾燥の状態となる前までに行うものである。被覆材(a)の種類にもよるが、上記(工程A)と(工程B)の工程間隔は、20分以内(より好ましくは15分以内、さらに好ましくは被覆材(a)の塗付直後(10分以内))とすることが好適である。
【0052】
また、上記模様付与具で被覆材(a)を引きずるとは、模様付与具を被覆材(a)に接触させ、被覆材(a)を引きずるように移動させるものである。この場合、被覆材(a)に模様付与具を軽く押し当てるようにして引きずることが好ましい。これにより、模様付与具の接触面が被覆材(a)を部分的に吸収(掻き取り)し、自然な線状模様を形成することができる。
【0053】
上記(工程B)は、被覆材(a)が未乾燥のうちに上記模様付与具で該被覆材を引きずることにより、被覆材を部分的に吸収(掻き取り)して線状模様を形成する工程である。上記(工程B)において、引きずりを行った後の被覆材の残量は、好ましくは5g/m 2以上200g/m 2以下(好ましくは10g/m 2以上100g/m 2以下)である。このような場合、美観性に優れた線状模様を得ることができる。
【0054】
本発明の装飾被膜の形成方法では、意匠性向上の目的で、上記(工程B)の後に、(工程A)と(工程B)を繰返し、線状模様を形成することができる。このような装飾被膜の形成方法としては、例えば、
(工程A)被塗面に、被覆材(a)を塗付する工程、
(工程B)次いで、該被覆材(a)が未乾燥のうちに上記模様付与具で該被覆材(a)を引きずる工程、
(工程A’)上記被覆材(a)が乾燥した後、被覆材(a’)を塗付する工程、
(工程B’)次いで、該被覆材(a’)が未乾燥のうちに上記模様付与具で該被覆材(a’)を引きずる工程、
を含むことが好ましい。
【0055】
上記(工程A’)において、被覆材(a’)を塗付する。この場合、被覆材(a)と被覆材(a’)は、異色及び/または光沢(艶)が異なる被覆材であることが好ましい。これにより、意匠性、美観性をよりいっそう高めることができる。なお、「被覆材(a)が乾燥した後」とは、被覆材(a)が非流動状態(指触乾燥後)であればよい。
【0056】
さらに、本発明の装飾被膜の形成方法では、本発明の効果を阻害しない限り、意匠性向上の目的で、上記(工程A)の前に、着色被膜を形成することができる。このような装飾被膜の形成方法としては、例えば、
(工程P)被塗面に少なくとも1種以上の被覆材(p)を塗付、乾燥して着色被膜(P)を形成する工程、
(工程A)次いで、上記着色被膜(P)上に、被覆材(a)を塗付する工程、
(工程B)次いで、該被覆材(a)が未乾燥のうちに上記模様付与具で該被覆材(a)を引きずる工程、
を含むことが好ましい。
【0057】
上記(工程P)において、少なくとも1種の被覆材(p)を塗付する。被覆材(p)としては、結合材及び顔料(着色顔料、体質顔料)を含む着色塗料が好適である。被覆材(p)の結合剤及び顔料は、上記被覆材(a)と同様のものから選ばれる1種以上を使用することができる。この場合、被覆材(p)と被覆材(a)は、異色及び/または光沢(艶)が異なる被覆材であることが好ましい。これにより、意匠性、美観性をよりいっそう高めることができる。
また、着色被膜(P)は、所望の意匠に応じて、2種以上(異色及び/または光沢(艶)が異なる被覆材等)の被覆材(p1、p2、・・・)を塗り分けたり、重ね塗りして形成したり、凹凸模様を形成してもよい。
【0058】
なお、本発明において、異色とは、被覆材の色差(△E)が3以上(より好ましくは5以上)とすることが好ましい。色差(△E)の上限は特に限定されないが、好ましくは90以下であり、所望の意匠に応じて設定することができる。
また、光沢(艶)が異なるとは、被覆材の光沢度の差が2以上(より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上)とすることが好ましい。光沢度の差の上限は特に限定されないが、好ましくは90以下(より好ましくは60以下)であり、所望の意匠に応じて設定することができる。
【0059】
なお、本発明における色差(△E)は、色彩色差計を用いて測定される値である。具体的には、標準白紙に、すきま250μmのフィルムアプリケータを用いてそれぞれの被覆材(「第1被覆材」、「第2被覆材」とする)を塗り、塗面を水平に置いて標準状態(気温23℃、相対湿度50%。以下同様。)で48時間乾燥したときの被膜のL*値、a*値、b*値(測定点3箇所以上の平均値)より下記式にて算出することができる。
【0060】
また、「光沢度」とは、JIS K5600-4-7「鏡面光沢度」に準じて測定される値である。具体的には、ガラス板の片面に、すきま150μmのフィルムアプリケータを用いて被覆材を塗り、塗面を水平に置いて標準状態で48時間乾燥したときの鏡面光沢度(測定角度60度)を測定することによって得られる値である。
【0061】
本発明の被覆材(p)の固形分は、好ましくは30~95質量%(より好ましくは35~90質量%)である。また、上記着色顔料の含有量は、被覆材(p)中の全固形分に対し全固形分に対し2~80質量%(より好ましくは3~70質量%、更に好ましくは5~60質量%)である。また、体質顔料の含有量は、被覆材(a)中の全固形分に対し全固形分に対して、好ましくは0~70質量%である。
さらに、被覆材(p)は、形成被膜の隠蔽率が70%以上(より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上100%以下)であることが好適である。このような場合、本発明の効果を安定して得ることができる。
【0062】
上記(工程P)において、被覆材(p)を塗付する際の塗付器具としては、例えば、スプレー、コテ、ローラー、ブラシ(刷毛等を含む)、押圧具(叩き具等を含む)等が挙げられる。このうち、ローラーとしては、例えば、繊維質ローラー、多孔質(スポンジ質)ローラー等が挙げられ、押圧具としては、例えば、スポンジ、フェルト、織布、不織布等を有するものが使用できる。
【0063】
上記(工程P)において、被覆材(p)の被塗面への塗付け量は、好ましくは10g/m 2以上500g/m 2以下(好ましくは20g/m 2以上300g/m 2以下)である。
【0064】
さらに、意匠性向上の目的で、上記(工程B)の後に、(工程A)と(工程B)を繰返し、線状模様を形成することができる。このような装飾被膜の形成方法としては、例えば、
(工程P)被塗面に少なくとも1種以上の被覆材(p)を塗付、乾燥して着色被膜(P)を形成する工程、
(工程A)次いで、上記着色被膜(P)上に、被覆材(a)を塗付する工程、
(工程B)次いで、該被覆材(a)が未乾燥のうちに上記模様付与具で該被覆材(a)を引きずる工程、
(工程A’)上記被覆材(a)が乾燥した後、被覆材(a’)を塗付する工程、
(工程B’)次いで、該被覆材(a’)が未乾燥のうちに上記模様付与具で該被覆材(a’)を引きずる工程、
を含むことが好ましい。
【0065】
さらに、本発明の装飾被膜の形成方法では、本発明の効果を阻害しない限り、表面保護、耐候性向上、耐汚染性等の目的で、(工程B)の後、最表面にクリヤー層(保護層)等を形成することもできる。また、本発明において、各工程は常温下(5~40℃)で行うことが好ましい。
【実施例0066】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。なお、本発明は、ここでの実施例に制限されるものではない。
【0067】
被覆材として、以下のものを用意した。
・被覆材1
アクリル樹脂エマルション、顔料(酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、カーボンブラック、体質顔料)を主成分とする淡ベージュ系被覆材(L *値:92.4、a *値:1.1、b *値:6.9、光沢度:2.0、加熱残分(固形分):55質量%、隠蔽率(x):97%、隠蔽率(y):75%、隠蔽率(z):60%)
【0068】
・被覆材2
アクリル樹脂エマルション、顔料(酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、カーボンブラック、体質顔料)を主成分とする薄茶色系被覆材(L *値:53.8、a *値:7.2、b *値:17.3、光沢度:2.0、加熱残分(固形分):55質量%、隠蔽率(x):98%、隠蔽率(y):94%、隠蔽率(z):45%)
【0069】
・被覆材3
アクリル樹脂エマルション、顔料(酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、カーボンブラック、体質顔料)を主成分とする茶色系被覆材(L *値:35.5、a *値:4.2、b *値:9.4、光沢度:2.0、加熱残分(固形分):55質量%、隠蔽率(x):98%、隠蔽率(y):83%、隠蔽率(z):32%)
【0070】
・被覆材4
アクリル樹脂エマルション、顔料(酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、カーボンブラック、体質顔料)を主成分とする黒色系被覆材(L *値:24.5、a *値:0.5、b *値:0.8、光沢度:2.0、加熱残分(固形分):55質量%、隠蔽率(x):99%、隠蔽率(y):94%、隠蔽率(z):46%)
【0071】
・被覆材5
アクリル樹脂エマルション、顔料(酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、カーボンブラック、体質顔料)を主成分とする赤茶色系被覆材(L *値:36.7、a *値:13.1、b *値:9.5、光沢度:2.0、加熱残分(固形分):55質量%、隠蔽率(x):98%、隠蔽率(y):83%、隠蔽率(z):32%)
【0072】
・被覆材6
アクリル樹脂エマルション、顔料(酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、カーボンブラック、体質顔料)を主成分とする薄茶色系被覆材(L *値:65、a *値:7.3、b *値:17.3、光沢度:2.0、加熱残分(固形分):55質量%、隠蔽率(x):99%、隠蔽率(y):93%、隠蔽率(z):50%)
【0073】
・被覆材7
アクリル樹脂エマルション、顔料(酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、カーボンブラック、体質顔料)を主成分とする薄茶色系被覆材(L *値:70.6、a *値:5.6、b *値:17.4、光沢度:2.0、加熱残分(固形分):55質量%、隠蔽率(x):99%、隠蔽率(y):98%、隠蔽率(z):65%)
【0074】
被覆材1~7の形成被膜の隠蔽率(x)、(y)、(z)及び条件(I)~(VI)を表1に示す。
【表1】
【0075】
・模様付与具1
綿を含むメッシュ布(軍手等を丸めたもの)
・模様部付与具2
図4に示すようなスポンジ質材の模様付与具であり、以下のスポンジ質材a1~a5(個々の大きさ:3~20mm)が混在した直方体形状(縦10cm×横15cm×厚み2.5cm、接触部の面積150cm
2)であり、接触面の表面、及びエッジ部に凹凸形状(凹凸の高低差1~5mm)を有する。また、支持部(縦10cm×横15cm×厚み5mm)、取手部はプラスチック製である。
・スポンジ質材a1:硬度45~60N、密度50~100kg/m
3
・スポンジ質材a2:硬度75~110N、密度15~30kg/m
3
・スポンジ質材a3:硬度110~140N、密度15~50kg/m
3
・スポンジ質材a4:硬度110~300N、密度30~85kg/m
3
・スポンジ質材a5:硬度1000~1500N、密度10~20kg/m
3
・模様部付与具3
図5に示すようなスポンジ質材の模様付与具であり、上記スポンジ質材a1~a5(個々の大きさ:3~20mm)が混在した直方体形状(縦10cm×横10cm×厚み2.5cm、接触部の面積100cm
2)であり、接触面の表面、及びエッジ部に凹凸形状(凹凸の高低差1~5mm)を有する。また、支持部( 縦9.5cm×横9.5cm×厚み5mm)、取手部はプラスチック製であり、支持部の端部から模様付与具の端部までの長さ[
図6:L1~L4]は5mmである。
【0076】
(実施例1)
基材(スレート板)に対し、被覆材1を塗付け量150g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)、指触乾燥以上の状態となるように2時間乾燥させ、淡ベージュ系被膜を形成した(工程P)。
上記淡ベージュ系被膜上に、被覆材2を塗付け量120g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)(工程A)、
次いで、(工程A)の直後(10分以内)に、模様付与具1で被覆材2を直線状に引きずり、被覆材2の残量が50g/m 2となるまで被覆材2を掻き取ることにより線状模様を形成した(工程B)。その後、24時間乾燥させ装飾被膜を形成した。なお、塗装及び乾燥は、全て標準状態(温度23℃、相対湿度50%)にて行った。なお、被覆材1と被覆材2との色差は△E:40であった。
以上の方法より、被覆材2の形成被膜の厚みや濃度によって隠蔽性(透明度)が変化し、色の濃淡等が自然な淡ベージュ色~薄茶色の複数色(多数の中間色を含む)の線状模様を有する木目(柾目)調の美観性の高い装飾被膜面が得られた。
【0077】
(実施例2)
基材(スレート板)に対し、被覆材1を塗付け量150g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)、指触乾燥以上の状態となるように2時間乾燥させ、淡ベージュ系被膜を形成した(工程P)。
上記淡ベージュ系被膜上に、被覆材2を塗付け量120g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)(工程A)、
次いで、(工程A)の直後(10分以内)に、模様付与具2で被覆材2を直線状に引きずり、被覆材2の残量が50g/m 2となるまで被覆材2を掻き取ることにより線状模様を形成した(工程B)。その後、24時間乾燥させ装飾被膜を形成した。なお、塗装及び乾燥は、全て標準状態にて行った。なお、被覆材1と被覆材2との色差は△E:40であった。
以上の方法より、被覆材2の形成被膜の厚みや濃度によって隠蔽性(透明度)が変化し、線間隔や線境界部の濃淡が自然であり、隠蔽性の高い部分と低い部分のコントラストを有する淡ベージュ色~薄茶色の複数色(多数の中間色を含む)の線状模様を有する木目(柾目)調の美観性の高い装飾被膜面が得られた。また、模様付与具1を使用した実施例1と比べ、施工が容易であり、よりいっそう美観性に優れた装飾被膜面を得ることができた。
【0078】
(実施例3)
基材(スレート板)に対し、被覆材1を塗付け量150g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)、指触乾燥以上の状態となるように2時間乾燥させ、淡ベージュ系被膜を形成した(工程P)。
上記淡ベージュ系被膜上に、被覆材3を塗付け量120g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)(工程A)、
次いで、(工程A)の直後(10分以内)に、実施例2と同様の模様付与具2で被覆材3を直線状に引きずり、被覆材3の残量が50g/m 2となるまで被覆材3を掻き取ることにより線状模様を形成し(工程B)、24時間乾燥させた。塗装及び乾燥は、全て標準状態にて行った。なお、被覆材1と被覆材3との色差は△E:57であった。
以上の方法より、被覆材3の形成被膜の厚みや濃度によって隠蔽性(透明度)が変化し、線間隔や線境界部の濃淡が自然であり、隠蔽性の高い部分と低い部分のコントラストを有する淡ベージュ色~茶色の複数色(多数の中間色を含む)の線状模様を有する木目(柾目)調の美観性の高い装飾被膜面が得られた。
【0079】
(実施例4)
基材(スレート板)に対し、被覆材1を塗付け量150g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)、指触乾燥以上の状態となるように2時間乾燥させ、淡ベージュ系被膜を形成した(工程P)。
上記淡ベージュ系被膜上に、被覆材2を塗付け量120g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)(工程A)、
次いで、(工程A)の直後(10分以内)に、実施例2と同様の模様付与具2で被覆材2を直線状に引きずり、被覆材2の残量が50g/m 2となるまで被覆材2を掻き取ることにより線線状模様を形成し(工程B)、2時間乾燥させた。
さらに、被覆材2の線状模様面上に、被覆材3を塗付け量120g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)(工程A’)、
次いで、(工程A’)の直後(10分以内)に、実施例2と同様の模様付与具で被覆材3を直線状に引きずり、被覆材3の残量が50g/m 2となるまで被覆材3を掻き取ることにより線状模様を形成し(工程B’)、2時間乾燥させた。なお、被覆材1と被覆材2との色差は△E:40、被覆材1と被覆材3との色差は△E:57、被覆材2と被覆材3との色差は△E:20であった。
以上の方法より、被覆材2、3の形成被膜の厚みや濃度によって隠蔽性(透明度)が変化し、線間隔や線境界部の濃淡が自然であり、隠蔽性の高い部分と低い部分のコントラストが有し、淡ベージュ色~茶色の複数色(多数の中間色を含む)の線状模様を有する木目(柾目)調の美観性の高い装飾被膜面が得られた。
【0080】
(実施例5)
基材(スレート板)に対し、被覆材4を塗付け量150g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)、指触乾燥以上の状態となるように2時間乾燥させ、黒色系被膜を形成した(工程P)。
上記黒色系被膜上に、被覆材5を塗付け量120g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)(工程A)、
次いで、(工程A)の直後(10分以内)に、実施例2と同様の模様付与具2で被覆材5を直線状に引きずり、被覆材5の残量が50g/m 2となるまで被覆材5を掻き取ることにより線状模様を形成し(工程B)、24時間乾燥させた。塗装及び乾燥は、全て標準状態にて行った。なお、被覆材4と被覆材5との色差は△E:20であった。
以上の方法より、被覆材5の形成被膜の厚みや濃度によって隠蔽性(透明度)が変化し、線間隔や線境界部の濃淡が自然であり、隠蔽性の高い部分と低い部分のコントラストを有する黒色~赤茶色の複数色の複数色(多数の中間色を含む)の線状模様を有する木目(柾目)調の美観性の高い装飾被膜面が得られた。
【0081】
(実施例6)
基材(スレート板)に対し、被覆材1を塗付け量150g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)、指触乾燥以上の状態となるように2時間乾燥させ、淡ベージュ系被膜を形成した(工程P)。
上記淡ベージュ系被膜上に、被覆材6を塗付け量120g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)(工程A)、
次いで、(工程A)の直後(10分以内)に、実施例2と同様の模様付与具2で被覆材6を直線状に引きずり、被覆材6の残量が50g/m 2となるまで被覆材6を掻き取ることにより線状模様を形成し(工程B)、24時間乾燥させた。塗装及び乾燥は、全て標準状態にて行った。なお、被覆材1と被覆材6との色差は△E:30であった。
以上の方法より、被覆材6の形成被膜の厚みや濃度によって隠蔽性(透明度)が変化し、線間隔や線境界部の濃淡が自然であり、隠蔽性の高い部分と低い部分のコントラストは実施例2と比較するとやや劣るが、淡ベージュ色~薄茶色の複数色(多数の中間色を含む)の線状模様を有する木目(柾目)調の美観性の高い装飾被膜面が得られた。
【0082】
(実施例7)
基材(スレート板)に対し、被覆材1を塗付け量150g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)、指触乾燥以上の状態となるように2時間乾燥させ、淡ベージュ系被膜を形成した(工程P)。
上記淡ベージュ系被膜上に、被覆材7を塗付け量120g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)(工程A)、
次いで、(工程A)の直後(10分以内)に、実施例2と同様の模様付与具2で被覆材7を直線状に引きずり、被覆材7の残量が50g/m 2となるまで被覆材7を掻き取ることにより線状模様を形成し(工程B)、24時間乾燥させた。塗装及び乾燥は、全て標準状態にて行った。なお、被覆材1と被覆材7との色差は△E:25であった。
以上の方法より、被覆材7の形成被膜の厚みや濃度によって隠蔽性(透明度)が変化し、線間隔や線境界部の濃淡が自然であり、隠蔽性の高い部分と低い部分のコントラストは実施例2、6と比較するとやや劣るが、淡ベージュ色~薄茶色の複数色(多数の中間色を含む)の線状模様を有する木目(柾目)調の美観性の高い装飾被膜面が得られた。
【0083】
(実施例8)
基材(スレート板)に対し、被覆材1を塗付け量150g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)、指触乾燥以上の状態となるように2時間乾燥させ、淡ベージュ系被膜を形成した(工程P)。
上記淡ベージュ系被膜上に、被覆材2を塗付け量120g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)(工程A)、
次いで、(工程A)の直後(10分以内)に、模様付与具3で被覆材2を直線状に引きずり、被覆材2の残量が50g/m 2となるまで被覆材2を掻き取ることにより線状模様を形成した(工程B)。その後、24時間乾燥させ装飾被膜を形成した。なお、塗装及び乾燥は、全て標準状態(温度23℃、相対湿度50%)にて行った。なお、被覆材1と被覆材2との色差は△E:40であった。
以上の方法より、被覆材2の形成被膜の厚みや濃度によって隠蔽性(透明度)が変化し、色の濃淡等が自然な淡ベージュ色~薄茶色の複数色(多数の中間色を含む)の線状模様を有する木目(柾目)調の美観性の高い装飾被膜面が得られた。
【0084】
(比較例1)
基材(スレート板)に対し、被覆材2を塗付け量150g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)、指触乾燥以上の状態となるように2時間乾燥させ、薄茶色系被膜を形成した(工程P)。
上記薄茶色系被膜上に、被覆材1を塗付け量120g/m 2で全面にローラー塗りし(繊維質ローラーを使用)(工程A)、
次いで、(工程A)の直後(10分以内)に、模様付与具1で被覆材1を直線状に引きずり、被覆材1の残量が50g/m 2となるまで被覆材1を掻き取ることにより線状模様を形成した(工程B)。その後、24時間乾燥させ装飾被膜を形成した。なお、塗装及び乾燥は、全て標準状態にて行った。なお、被覆材1と被覆材2との色差は△E:40であった。
以上の方法より形成された被膜面は、被覆材1の形成被膜の厚みや濃度による隠蔽性(透明度)の変化が少なく、薄茶色の線状模様が視認され難く、実施例1と比較して線状模様の色彩に劣るものであった。