(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106322
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】自動車の車輪アセンブリ
(51)【国際特許分類】
F16C 33/58 20060101AFI20240731BHJP
F16C 19/18 20060101ALI20240731BHJP
F16C 33/41 20060101ALI20240731BHJP
F16C 43/08 20060101ALI20240731BHJP
B60B 35/14 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
F16C33/58
F16C19/18
F16C33/41
F16C43/08
B60B35/14 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024004999
(22)【出願日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】2300717
(32)【優先日】2023-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】507018894
【氏名又は名称】エヌテエヌ ユロップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンドレ バウドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント ポウロイ ソラリ
【テーマコード(参考)】
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J117HA03
3J701AA02
3J701AA16
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701AA72
3J701BA24
3J701BA44
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA56
3J701BA69
3J701DA20
3J701EA02
3J701FA15
3J701FA31
3J701FA53
3J701GA03
3J701XB03
3J701XB13
3J701XB14
3J701XB26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】軸方向のコンパクトさ、大きなペイロード、および良好なキャンバ剛性を組み合わせる自動車の駆動輪アセンブリの構造を提供する。
【解決手段】自動車の駆動輪アセンブリ(10)が、2つの外側レースウェイ(22、24)を備える固定サブアセンブリ(12)と、ホイールハブ(30)、2つの内側レースウェイ(56、62)、および2つのピッチ平面PP1およびPP2に配置された2列の転動体(16、18)を備える回転サブアセンブリ(14)と、を備える。内側レースウェイの一方は、大きな直径の外周を有するベアリング界面(87)に沿ってホイールハブ(30)のショルダ(86)に当接する転がり軸受リング(36)上に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・共通の回転軸(100)上に中心を有する第1の環状の外側レースウェイ(22)および第2の環状の外側レースウェイ(24)を備える固定サブアセンブリ(12)と、
・前記回転軸(100)を中心にして前記固定サブアセンブリ(12)に対して回転することができる回転サブアセンブリ(14)であって、前記回転サブアセンブリ(14)は、ホイールハブ(30)を備え、前記ホイールハブは、ホイールリムまたはブレーキディスクを取り付けるためのインターフェースが設けられたフランジ(38)を備え、前記取り付けフランジ(38)は、軸方向において前記ホイールリムまたは前記ブレーキディスクの分解の方向(200)に面する前記ホイールリムまたは前記ブレーキディスクの取り付け面(42)を形成し、前記分解の方向(200)は、前記回転軸(100)と平行であり、前記回転サブアセンブリ(14)は、伝動ボウル(32)および少なくとも1つの内側転がり軸受リング(36)を備え、前記内側転がり軸受リング(36)は、前記ホイールハブの締まりばめ表面(52)へと締まりばめされ、前記内側転がり軸受リング(36)は、軸方向において前記取り外し方向とは反対の方向に面し、環状の接触界面(61)において前記伝動ボウル(32)に当接する接触面を有し、前記内側転がり軸受リング(36)は、軸方向において前記取り外し方向(200)に面し、直径DCEを有する外周を有するベアリング界面(87)に沿って前記ホイールハブ(30)のショルダ(86)に当接する端面(57)を有し、前記回転サブアセンブリ(14)は、前記第1の外側レースウェイ(22)に対向して位置する第1の内側レースウェイ(56)と、前記第2の外側レースウェイ(24)に対向して位置して前記内側転がり軸受リング(36)上に形成された第2の内側レースウェイ(62)とをさらに備える、回転サブアセンブリ(14)と、
・ボール直径DB1を有しており、前記第1の外側レースウェイ(22)および前記第1の内側レースウェイ(56)を転動することができるボール(16)の第1の列と、ボール直径DB2を有しており、前記第2の外側レースウェイ(24)および前記第2の内側レースウェイ(62)を転動することができるボール(18)の第2の列とを形成するボール(16、18)であって、前記第1のボール列のボール(16)の中心は、第1のピッチ平面(PP1)に位置した直径DP1のピッチ円上に位置し、前記第2のボール列のボール(18)の中心は、第2のピッチ平面(PP2)に位置した直径DP2のピッチ円上に位置し、前記第1のピッチ平面(PP1)は、前記第2のピッチ平面(PP2)から前記取り外し方向(200)に非ゼロの距離Lに位置し、前記端面(57)は、軸方向において前記第1のピッチ平面(PP1)と前記第2のピッチ平面(PP2)との間に位置する、ボール(16、18)と
を備える、自動車の駆動輪アセンブリ(10)であって、
前記内側転がり軸受リング(36)の前記端面(57)は、前記第1のピッチ平面(PP1)から、前記第1のボール列のボール(16)のボール直径DB1の半分よりも大きい距離に位置し、かつ
【数1】
であり、好ましくは
【数2】
であることを特徴とする、駆動輪アセンブリ(10)。
【請求項2】
【数3】
であり、好ましくは
【数4】
である、ことを特徴とする、請求項1に記載の駆動輪アセンブリ(10)。
【請求項3】
・前記内側転がり軸受リング(36)の前記端面(57)は、前記第1のピッチ平面(PP1)よりも前記第2のピッチ平面(PP2)により近く、かつ/または
・前記内側転がり軸受リング(36)の前記端面(57)は、前記第2のピッチ平面(PP2)から、前記第2のボール列のボール(18)のボール直径DB2の半分よりも小さい距離に位置する、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の駆動輪アセンブリ(10)。
【請求項4】
【数5】
であり、かつ/または
【数6】
であり、かつ/または
【数7】
である、ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の駆動輪アセンブリ(10)。
【請求項5】
【数8】
である、ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の駆動輪アセンブリ(10)。
【請求項6】
・前記内側転がり軸受リング(36)と前記伝動ボウル(32)との間の前記環状の接触界面(61)は、少なくとも一部、好ましくは全部が、前記第1のピッチ平面(PP1)の反対側の前記第2のピッチ平面(PP2)の一方の側に位置し、かつ/または
・前記回転軸(100)への正射影において、前記内側転がり軸受リング(36)と前記伝動ボウル(32)との間の前記環状の接触界面(61)の少なくとも一部が、前記内側転がり軸受リング(36)と前記ショルダ(86)との間のベアリング界面(87)から、前記第2のボール列のボール(18)のボール直径DB2よりも小さい距離に位置し、かつ/または
・前記回転軸(100)への正射影において、前記内側転がり軸受リング(36)と前記伝動ボウル(32)との間の前記環状の接触界面(61)の少なくとも一部が、前記内側転がり軸受リング(36)と前記ショルダ(86)との間のベアリング界面(87)から、前記第2のボール列のボール(18)のボール直径DB2よりも大きい距離に位置し、かつ/または
・前記内側転がり軸受リング(36)と前記伝動ボウル(32)との間の前記環状の接触界面(61)の少なくとも一部が、前記第2のピッチ平面(PP2)から、前記第2のボール列のボール(18)のボール直径DB2の半分よりも大きい距離に位置し、かつ/または
・前記第1のピッチ平面(PP1)への正射影において、前記内側転がり軸受リング(36)と前記伝動ボウル(32)との間の前記環状の接触界面(61)の少なくとも一部が、前記内側転がり軸受リング(36)の前記端面(57)と前記ショルダ(86)との間の前記ベアリング界面(87)の少なくとも一部と重なり、かつ/または
・前記第1のピッチ平面(PP1)への正射影において、前記内側転がり軸受リング(36)と前記伝動ボウル(32)との間の前記環状の接触界面(61)の少なくとも一部が、前記第2の内側レースウェイ(62)と、前記内側転がり軸受リング(36)の前記端面(57)と前記ショルダ(86)との間の前記ベアリング界面(87)の外周との間に位置し、かつ/または
・前記第1のピッチ平面(PP1)への正射影において、前記内側転がり軸受リング(36)と前記伝動ボウル(32)との間の前記環状の接触界面(61)と、前記第2の内側レースウェイ(62)とが、離間しており、かつ/または
・前記第1のピッチ平面(PP1)への正射影において、前記内側転がり軸受リング(36)と前記伝動ボウル(32)との間の前記環状の接触界面(61)と、前記第2の内側レースウェイ(62)とが、前記ボール直径DB2の半分よりも大きい互いの距離にある、
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の駆動輪アセンブリ(10)。
【請求項7】
前記伝動ボウル(32)は、前記ホイールハブ(30)の円柱形のボア(49)にぴったりとはまり込み、少なくとも部分的に前記第1のピッチ平面(PP1)と前記第2のピッチ平面(PP2)との間に位置し、好ましくは前記回転軸(100)に垂直かつ前記ショルダ(86)に接する平面との交わりを有する円柱形のベアリング面(462)を有する、ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の駆動輪アセンブリ(10)。
【請求項8】
・前記ホイールハブ(30)の前記締まりばめ表面(52)は、少なくとも部分的に前記第1のピッチ平面(PP1)と前記第2のピッチ平面(PP2)との間に延在し、かつ/または
・前記ホイールハブ(30)の前記締まりばめ表面(52)は、前記第1のピッチ平面(PP1)の反対側の前記第2のピッチ平面(PP2)の一方の側から部分的に延在し、かつ/または
・前記ホイールハブの前記締まりばめ表面(52)は、
【数9】
であるような直径DFを有し、かつ/または
・前記ホイールハブの前記締まりばめ表面(52)は、
【数10】
であるような直径DFを有する、
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の駆動輪アセンブリ(10)。
【請求項9】
前記端面(57)と前記ショルダ(86)との間の前記ベアリング界面(87)は、平坦である、ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の駆動輪アセンブリ(10)。
【請求項10】
・前記ホイールハブ(30)は、中実な一体部品であって、好ましくは金属製または2材料からなり、または
・前記ホイールハブ(30)は、前記フランジ(38)および前記締まりばめ表面(52)を形成する少なくとも1つの中実な一体部品と、前記中実な部品に締まりばめされ、前記第1の内側レースウェイ(56)および前記ショルダ(86)を形成する追加の内側転がり軸受リングとを備える、
ことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の駆動輪アセンブリ(10)。
【請求項11】
前記第1の内側レースウェイ(56)は、軸方向において包囲的である、ことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の駆動輪アセンブリ(10)。
【請求項12】
DB1>DB2である、ことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の駆動輪アセンブリ(10)。
【請求項13】
前記ボール(16)の第1の列は、弾性変形可能な開放リングを構成するケージ(70)によって案内されて回転する、ことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の駆動輪アセンブリ(10)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の駆動輪アセンブリを取り付ける方法であって、
前記内側転がり軸受リング(36)を前記ホイールハブ(30)に締まりばめする前に、開放型の弾性変形可能なリングを構成するベアリングケージ(70)が、前記可動サブアセンブリの前記ショルダ(86)を通過するときに前記ベアリングケージ(70)を拡げることにより、前記第1の内側レースウェイ(56)に面して配置され、前記第1のボール列のボール(16)は、前記ベアリングケージ(70)の配置前または前記ベアリングケージ(70)の配置後のいずれかに、前記ベアリングケージ(70)のセル内に配置される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車輪アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の駆動輪アセンブリは、車両に取り付けられると、一般に、車両のサスペンション要素に固定されるように意図され、回転軸を定める第1の外側レースウェイおよび第2の外側レースウェイを備える固定サブアセンブリ、回転軸を中心にして固定部材に対して回転することができ、ホイールハブと、伝動ボウルと、第1の外側レースウェイに対向して位置する第1の内側レースウェイと、第2の外側レースウェイに対向して位置する第2の内側レースウェイとを備える回転サブアセンブリ、および第1の外側レースウェイと第1の内側レースウェイとの間の第1の転動体列と、第2の外側レースウェイと第2の内側レースウェイとの間の第2の転動体列とを形成する転動体を備える。ホイールハブは、ホイールリムおよびブレーキディスクのための取り付けインターフェースを有する。したがって、アセンブリは、典型的には、車両の内側から外側へと回転軸に沿って配置された技術的機能の積み重ね、すなわちトルクの伝達、車両のサスペンションへの取り付け、回転の案内、制動、およびローリングを有し、これにより、軸方向、すなわち車両の座標系における横方向に、大きなサイズが必要になる。
【0003】
第2の内側レースウェイ用の内側転がり軸受リングを伝動ボウルに締まりばめすることにより、車両の内側に位置する転動体列のピッチ直径を増大させつつ、2つの転動体列の間の所与の距離において、軸方向のサイズの縮小を可能にすることが、仏国特許出願公開第3,052,104号明細書に提案されている。ペイロードおよびキャンバ剛性が、2つの転動体列の間の距離および転動体列のピッチ直径の増加関数である限りにおいて、この構造は、軸方向の寸法の縮小とペイロードおよびキャンバ剛性に関する良好な性能とを両立させるための解決策を提供する。
【0004】
電動車両およびハイブリッド車両のパワートレインは、燃焼エンジンのパワートレインと比べ、駆動輪において車両の幅方向に嵩張ることが明らかになっており、これは、横方向の駆動シャフトの短縮につながる。この短縮は、伝動ジョイントにおける角度の増大につながるため、望ましくない。この状況において、横方向の伝達シャフトに利用することができる空間をわずかでも増加させることを可能にする何らかの手段が望まれる。したがって、とくにはペイロードおよび剛性に関して性能を犠牲にすることなく、駆動ホイールアセンブリを軸方向においてコンパクトにすることが、ますます必要とされる。
【0005】
この目的のために、国際公開第2021/148675号が、軸方向におけるコンパクトさと、大きなペイロードと、良好なキャンバ剛性とを組み合わせる自動車の駆動輪アセンブリを提案しており、この駆動輪アセンブリは、2つの同軸な環状の外側レースウェイを備える固定サブアセンブリと、内側レースウェイが形成されたホイールハブを備える回転サブアセンブリと、伝動ボウルと、第2の内側レースウェイが形成された少なくとも1つの内側転がり軸受リングとを備える。転動体が、アセンブリを完成させ、内側および外側レースウェイ上を転動して固定サブアセンブリに対する回転サブアセンブリの回転を案内する互いに離間した2つの転動体列を形成する。内側リングは、ホイールハブに締まりばめされ、ホイールハブに形成されたショルダおよび伝動ボウルに形成されたショルダに軸方向に当接して締め付けられる。ホイールハブ上の内側リングのベアリングショルダは、ホイールハブに形成された内側レースウェイの底部の直近に配置される。この配置は、軸方向のコンパクトさに貢献し、内側リングのベアリングショルダとホイールハブとの間に比較的小さい軸方向接触面を必要とする。伝動ボウル、ホイールハブ、および内側リングを組み立てるときに生じる張力が、界面に大きな接触圧力を引き起こし、接触腐食および/または摩耗のリスクを増加させる。これは、使用時に、ホイールハブに形成された内側レースウェイが、ショルダと内側リングとの間の界面において生じた金属粒子に曝される危険性をもたらし、この危険性は、内側転がり軸受リングとホイールハブのショルダとの間の界面が、ホイールハブに形成された内側レースウェイに直接現れる場合にさらに大きくなる。したがって、このアセンブリは、特定の使用事例において、その寿命を制限しかねない損傷を被る可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仏国特許出願公開第3,052,104号明細書
【特許文献2】国際公開第2021/148675号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ベアリングのうちの1つについての接触および/または摩耗の腐食による汚染の危険性を抑えつつ、軸方向のコンパクトさ、大きなペイロード、および良好なキャンバ剛性を組み合わせる自動車の駆動輪アセンブリの構造を提案することを目的とする。
【0008】
この目的のために、本発明の第1の態様によれば、
・共通の回転軸上に中心を有する第1の環状の外側レースウェイおよび第2の環状の外側レースウェイを備える固定サブアセンブリと、
・回転軸を中心にして固定サブアセンブリに対して回転することができる回転サブアセンブリであって、回転サブアセンブリは、ホイールハブを備え、ホイールハブは、ホイールリムまたはブレーキディスクを取り付けるためのインターフェースが設けられたフランジを備え、取り付けフランジは、軸方向においてホイールリムまたはブレーキディスクの分解の方向に面するホイールリムまたはブレーキディスクの取り付け面を形成し、分解の方向は、回転軸と平行であり、回転サブアセンブリは、伝動ボウルおよび少なくとも1つの内側転がり軸受リングを備え、内側転がり軸受リングは、ホイールハブの締まりばめ表面へと締まりばめされ、内側転がり軸受リングは、軸方向において取り外し方向とは反対の方向に面し、環状の接触界面において伝動ボウルに当接する接触面を有し、内側転がり軸受リングは、軸方向において取り外し方向に面し、直径DCEを有する外周を有するベアリング界面に沿ってホイールハブのショルダに当接する端面を有し、回転サブアセンブリは、第1の外側レースウェイに対向して位置する第1の内側レースウェイと、第2の外側レースウェイに対向して位置して内側転がり軸受リング上に形成された第2の内側レースウェイとをさらに備える、回転サブアセンブリと、
・ボール直径DB1を有しており、第1の外側レースウェイおよび第1の内側レースウェイを転動することができるボールの第1の列と、ボール直径DB2を有しており、第2の外側レースウェイおよび第2の内側レースウェイを転動することができるボールの第2の列とを形成するボールであって、第1のボール列のボールの中心は、第1のピッチ平面に位置した直径DP1のピッチ円上に位置し、第2のボール列のボールの中心は、第2のピッチ平面に位置した直径DP2のピッチ円上に位置し、第1のピッチ平面は、第2のピッチ平面から取り外し方向に非ゼロの距離Lに位置し、端面は、軸方向において第1のピッチ平面と第2のピッチ平面との間に位置する、ボールと
を備える、自動車の駆動輪アセンブリが提案される。
本発明によれば、内側転がり軸受リングの端面は、第1のピッチ平面から、第1のボール列のボールのボール直径DB1の半分よりも大きい距離に位置する。加えて、以下の不等式が満たされる。
【数1】
【0009】
【0010】
ここで、直径DCEは、ホイールハブのショルダと内側転がり軸受リングとの間の有効な接触において観察される最大直径であり、回転軸に垂直な平面において測定される。
【0011】
本発明によれば、生じ得る接触腐食によって第1列のボールならびに第1の内側および外側レースウェイにおいて引き起こされる汚染を抑えるために、内側転がり軸受リングとホイールハブのショルダとの間の界面を第1の内側レースウェイから軸方向に離して配置し、ショルダを第1の内側レースウェイの底部に対して高くすることが提案される。
【0012】
実際に、第2のボール列のピッチ直径DP2は、第1のボール列のピッチ直径DP1よりも大きい。好ましくは、以下のとおりである。
【数3】
【0013】
したがって、内側転がり軸受リングとホイールハブのショルダとの間のベアリング界面を、第2のボール列の半径方向内側に配置することが可能である。したがって、一実施形態によれば、以下のとおりである。
【数4】
【0014】
【0015】
一実施形態によれば、以下のサイズ設定点のうちの1つ以上が満たされる。
・内側転がり軸受リングの端面は、第1のピッチ平面よりも第2のピッチ平面により近く、かつ/または
・内側転がり軸受リングの端面は、第2のピッチ平面から、第2のボール列のボールのボール直径DB2の半分よりも小さい距離に位置する。
【0016】
著しい軸方向のコンパクトさを可能にするために、2つのピッチ平面は、互いに近接している。好ましくは、以下の不等式のうちの1つ以上が観察される。
【数6】
【数7】
【数8】
【0017】
内側転がり軸受リングに充分な剛性を保持するために、以下が提供されることが好ましい。
【数9】
【0018】
内側転がり軸受リングと伝動ボウルとの接触界面の位置は、内側転がり軸受リングとホイールハブのショルダとのベアリング界面、および内側レースウェイに対して、内側転がり軸受リングの応力を均一にするように選択される。この目的のために、以下の構成のうちの1つ以上を提供することができる。
・内側転がり軸受リングと伝動ボウルとの間の環状の接触界面は、少なくとも一部、好ましくは全部が、第1のピッチ平面の反対側の第2のピッチ平面の一方の側に位置し、かつ/または
・回転軸への正射影において、内側転がり軸受リングと伝動ボウルとの間の環状の接触界面の少なくとも一部が、内側転がり軸受リングとショルダとの間のベアリング界面から、第2のボール列のボールのボール直径DB2よりも小さい距離に位置し、かつ/または
・回転軸への正射影において、内側転がり軸受リングと伝動ボウルとの間の環状の接触界面の少なくとも一部が、内側転がり軸受リングとショルダとの間のベアリング界面から、第2のボール列のボールのボール直径DB2よりも大きい距離に位置し、かつ/または
・内側転がり軸受リングと伝動ボウルとの間の環状の接触界面の少なくとも一部が、第2のピッチ平面から、第2のボール列のボールのボール直径DB2の半分よりも大きい距離に位置し、かつ/または
・第1のピッチ平面への正射影において、内側転がり軸受リングと伝動ボウルとの間の環状の接触界面の少なくとも一部が、内側転がり軸受リングの端面とショルダとの間のベアリング界面の少なくとも一部と重なり、かつ/または
・第1のピッチ平面への正射影において、内側転がり軸受リングと伝動ボウルとの間の環状の接触界面の少なくとも一部が、第2の内側レースウェイと、内側転がり軸受リングの端面とショルダとの間のベアリング界面の外周との間に位置し、かつ/または
・第1のピッチ平面への正射影において、内側転がり軸受リングと伝動ボウルとの間の環状の接触界面と、第2の内側レースウェイとが、離間しており、かつ/または
・第1のピッチ平面への正射影において、内側転がり軸受リングと伝動ボウルとの間の環状の接触界面と、第2の内側レースウェイとが、ボール直径DB2の半分よりも大きい互いの距離にある。
【0019】
一実施形態によれば、伝動ボウルは、ホイールハブのスプライン付きの管状部分にすきまばめ、中間ばめ、または締まりばめされ、スプライン接触界面を形成するスプライン付きの端部を備え、回転サブアセンブリは、好ましくは、伝動ボウルに取り付けられ、軸方向において分解の方向に向けられたホイールハブの当接面に直接または間接的に当接する軸方向保持要素を少なくとも備える。好ましくは、スプライン接触界面は、ホイールハブの非破壊での分解を可能にする。軸方向保持要素は、とくには、回転軸に平行な伝動ボウルに形成されたねじ穴にねじ込まれたねじの頭部、または伝動ボウルに形成されたねじ部にねじ込まれたナットで構成されてよい。また、2つの部品間の軸方向の干渉を確実にする伝動ボウルまたはホイールハブの一端の冷間変形であってもよい。より一般的には、伝動ボウルの端部は、ホイールハブの相補的な形状の管状部分にすきまばめ、中間ばめ、または締まりばめされ、非円形断面による接触界面を形成する非円形の基部を有する任意の円柱形を有することができ、回転サブアセンブリは、好ましくは、伝動ボウルに取り付けられ、軸方向において分解の方向に向けられたホイールハブの当接面に直接または間接的に当接する少なくとも1つの軸方向保持要素を備える。好ましくは、ホイールハブのスプライン付きの管状部分の一部は、第1の内側レースウェイの少なくとも一部によって囲まれる。好ましくは、ホイールハブのスプライン付きの管状部分の一部は、取り付けフランジによって囲まれる。
【0020】
一実施形態によれば、伝動ボウルは、ホイールハブの円柱形のボアにぴったりとはまり込み、少なくとも部分的に第1のピッチ平面と第2のピッチ平面との間に位置し、好ましくは回転軸に垂直かつショルダに接する平面との交わりを有する円柱形のベアリング面を有する。はめ込まれたアセンブリを、内側転がり軸受リングとホイールハブとの間の締まりばめにおいて伝達される半径方向力の一部を吸収するために使用することができる。
【0021】
ホイールハブの締まりばめ表面は、転がり軸受リングに作用する半径方向力を吸収するように意図される。好ましくは、
・ホイールハブの締まりばめ表面は、少なくとも部分的に第1のピッチ平面と第2のピッチ平面との間に延在し、かつ/または
・ホイールハブの締まりばめ表面は、第1のピッチ平面の反対側の第2のピッチ平面の一方の側から部分的に延在し、かつ/または
・ホイールハブの締まりばめ表面は、
【数10】
であるような直径DFを有し、かつ/または
・ホイールハブの締まりばめ表面は、
【数11】
であるような直径DFを有する。
【0022】
上記の提案による直径DFの下限は、軸方向のコンパクトさの点で好ましい大きな締まりばめ直径を有するという要望を反映している。
【0023】
一実施形態によれば、ベアリング面とショルダとの間のベアリング界面は、平坦である。別の実施形態によれば、環状の接触界面は、フレア状であり、好ましくは円錐台形状である。
【0024】
好ましくは、ハブは、中実な一体部品であって、好ましくは金属製または2材料からなり、例えば鋼/アルミニウムまたは鋼/複合材料の組み合わせからなる。あるいは、ホイールハブは、フランジおよび締まりばめ表面を形成する少なくとも1つの中実な一体部品と、第1の内側レースウェイおよびショルダを形成する中実部品に締まりばめされる追加の内側転がり軸受リングとを備える。
【0025】
実際には、第1の内側レースウェイは、レースウェイの軸方向における両端の間の軸方向における中間位置にレースウェイの底部が位置するという意味で、軸方向において包囲的である。
【0026】
好ましくは、DB1>DB2である。想定される構成においては、実際に、第1のボール列のピッチ直径DP1が第2のボール列のピッチ直径DP2よりも小さく、したがって第2列のボールの数は第1列のボールの数よりも多いため、第2列のボールの直径を小さくすることにより、転がり軸受リングへの曲げ応力を増加させることなく、かつ容量を損失することなく、固定サブアセンブリの外径を小さくすることが可能になる。実際には、アセンブリの寿命は、主に第1のボール列によって決定される。
【0027】
実際には、ショルダは、シールまたはベアリングケージなどのより小さい直径の閉じた環状要素の軸方向挿入に対して障害物を構成する可能性がある。したがって、一実施形態によれば、第1列のボールは、弾性的に変形可能な開放リングを構成するケージによって案内されて回転し、これにより、ケージをショルダから離れるように移動させることによってベアリングケージを取り付けることができる。あるいは、直径DCEよりも大きい内径を有する開閉可能なベアリングケージを設けることができる。
【0028】
転がり軸受リングは、好ましくは、例えば鋼製の中実な金属部品である。
【0029】
実際には、駆動輪アセンブリは、伝動ナットおよび転動伝動体をさらに備え、転動伝動体は、伝動ボウルのキャビティ内および伝動ナット上に形成された転動トラックによって案内される。転動伝動体および伝動ボウルが、伝動ジョイントを形成する。
【0030】
一実施形態によれば、ホイールハブは、半径方向において回転軸とは反対側を向き、取り外しの方向に取り付け面に対して軸方向に突出するブレーキディスクまたはホイールリムをセンタリングするためのセンタリングベアリングをさらに備える。センタリングベアリングは、例えば円柱形であってよく、あるいは異なる直径の2つの円柱形部分を備えてもよく、取り付け面に最も近い部分が、好ましくは最も遠い部分よりも大きい直径を有し、ブレーキディスクをセンタリングする機能を有する。センタリングベアリングについて、他の形状も考えられる。さらに、センタリングベアリングは不連続であってもよく、環状の溝または回転軸に平行な溝を備えることができる。
【0031】
フランジの取り付け面は、平坦であっても、例えば放射状、環状、またはらせん状の条痕、スプライン、または溝、ならびに/あるいは取り付け、合理化、または排水のための開口を備えてもよい。
【0032】
必要に応じ、回転サブアセンブリは、取り付け面上のブレーキディスクベアリング、ブレーキディスク上のホイールリムベアリング、およびホイールリムおよびブレーキディスクを取り付けフランジに取り付けるための要素をさらに備える。
【0033】
一実施形態によれば、第1のボール列のボールと第1の内側レースウェイおよび第1の外側レースウェイとの接触点が、第1のボール列に対して第2のボール列の反対側に位置する第1の頂点を有する第1の接触円錐上に位置し、第2のボール列のボールと第2の内側レースウェイおよび第2の外側レースウェイとの接触点は、第2のボール列に対して第1のボール列の反対側に位置する第2の頂点を有する第2の接触円錐上に位置する。
【0034】
実際には、固定サブアセンブリは、第1の外側レースウェイおよび第2の外側レースウェイに対して半径方向に延びる取り付けクランプを備えることができる。取り付けクランプは、固定サブアセンブリを車両のサスペンション部材に取り付けるように意図される。この目的のために、取り付けクランプには、好ましくは、サスペンション部材への取り付け要素のためのボアを備えることができる取り付けインターフェースが設けられる。
【0035】
外側レースウェイは、好ましくは、各々のレースウェイの軸方向における両端の間の軸方向における中間位置にレースウェイの底部が位置するという意味で、軸方向において包囲的である。
【0036】
一実施形態によれば、固定サブアセンブリは、第1の外側レースウェイおよび第2の外側レースウェイを形成し、好ましくは取り付けクランプも形成する一体の中実な金属製の外側リングを備える。あるいは、一方および/または他方の外側レースウェイを、取り付けクランプを形成するスリーブ内に締まりばめされた転がり軸受リング内に設けることができる。
【0037】
好ましくは、伝動ボウルは、中実な一体の金属部品である。
【0038】
さらに、本発明は、上述のアセンブリを取り付けるための方法に関し、この方法によれば、内側転がり軸受リングをホイールハブに締まりばめする前に、開放型の弾性変形可能なリングを構成するベアリングケージが、可動サブアセンブリのショルダを通過するときにベアリングケージを拡げることにより、第1の内側レースウェイに面して配置され、第1のボール列のボールは、ベアリングケージの配置前またはベアリングケージの配置後のいずれかに、ベアリングケージのセル内に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して以下の開示を理解することで明らかになるであろう。
【0040】
【
図1】本発明の第1の実施形態による自動車駆動輪アセンブリの縦断面図である。
【0041】
【
図2】
図1によるアセンブリを取り付けるステップを示している。
【0042】
よりわかりやすくするために、同一または類似の要素は、すべての図において同一の参照符号によって識別される。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1が、自動車のサスペンション部材(図示せず)に固定されるように意図され、回転軸100を定める固定サブアセンブリ12と、固定サブアセンブリ12の内側で回転軸100を中心にして回転することができる回転サブアセンブリ14と、回転サブアセンブリ14と固定サブアセンブリ12との間の案内ボール16、18とを備える自動車駆動輪アセンブリ10を示している。
【0044】
ここで、固定サブアセンブリ12は、一体型の中実な金属製の外側リング20によって構成され、外側リング20上に、回転軸100を定める同軸な第1の外側レースウェイ22および第2の外側レースウェイ24が形成されている。外側リングは、半径方向外側へと延びる少なくとも1つの取り付けクランプ26をさらに備え、取り付けクランプ26を取り付け要素(図示せず)を介してサスペンション部材に取り付けるための孔(この図には図示せず)が形成される。
【0045】
回転サブアセンブリ14は、ホイールハブ30と、伝動ボウル32と、内側転がり軸受リング36とを備える。
【0046】
ホイールハブ30は、好ましくは、駆動輪リムおよびブレーキディスクを取り付けるためのフランジ38を備える中実な一体型の金属部品である。フランジ38は、ブレーキディスクを支持する面42を有し、リムおよびブレーキディスクの取り付け要素の挿入を可能にする取り付け孔43を備える。
【0047】
さらに、ホイールハブ30は、平坦なベアリング面42に対して、ホイールリムおよびブレーキディスクの分解の方向200へと軸方向に突出するセンタリングスカート44を有し、センタリングスカート44は、好ましくは段差を有する半径方向外側を向いたセンタリングベアリング45を有し、センタリングベアリング45は、組み立て時にホイールリムをセンタリングするための第1の円柱形部分と、ブレーキディスクをセンタリングするための同一またはより大きい直径の第2の円柱形部分とを備える。センタリングベアリング45は、必ずしも組み立て後もリムおよびブレーキディスクと接触したままであるようには意図されていない。
【0048】
伝動ボウル32は、中実な一体型の金属部品であり、中実な突出端部分46と、等速ジョイントのキャビティ50を境界付けるフレア状の中間部48とを有する。
【0049】
この実施形態において、キャビティ50は、転動体(図示せず)を、各々が回転軸100を含む平面内に位置する凹状の軌道に沿って、例えば円弧状に案内するために、伝動ジョイントナット(図示せず)上に形成された相補的な転動軌道に対向して位置する転動軌道41を備える。既知のやり方で、このアセンブリは、外側リング20が、車体に対する外側リング20の運動について1つ以上の自由度を保証するサスペンション要素によって支持されることに鑑み、動作時に、伝動シャフトが外側リング20によって定まる回転軸100に完璧に整列したままではないにもかかわらず、伝動シャフトに固定されたナットとホイールハブ30に固定された伝動ボウル32との間の運動およびトルクの伝達を可能にする伝動ジョイントを形成する。
【0050】
伝動ボウル32の突出部分46は、ホイールハブ30のスプライン付きの管状キャビティ47内にすきまばめ、中間ばめ、または締まりばめされ、スプライン接触界面を形成するスプライン部461を備える。このスプライン部461とフレア状の中央部分48との間において、突出部分46は、ホイールハブ30の円柱形のボア49内にぴったりと取り付けられ、あるいは不確かなすき間を伴って取り付けられる円柱形のベアリング面462を形成する。
【0051】
さらに、
図1は、突出部分46のねじ山付きの端部463にねじ込まれ、ホイールハブ30の端部ショルダ84に当接するナット88によって実現される伝動ボウル32とホイールハブ30とを取り付けるための手段を示している。
【0052】
適切であれば、伝動ボウル32のキャビティ50を、アセンブリを軽量化し、突出部分46の軸方向の剛性を低減し、とくには時間が経ってもナット88の締め付け張力をより良好に維持することを目的として、突出部分46へと延びる随意によるボア51によって延長することができる。
【0053】
第1の内側レースウェイ56が、ホイールハブ30上に、第1の外側レースウェイ22に対向して形成される。
【0054】
内側転がり軸受リング36は、平坦な端部横断面57をやはり平坦なホイールハブ30のショルダ86に軸方向に当接させてベアリング界面87を形成しつつ、ホイールハブ30の円柱形の締まりばめ表面52に締まりばめされる。この横断端面57の反対側に、軸受リングは、第1の内側レースウェイ56の軸方向反対側に位置し、ホイールハブ30に対して軸方向に突出し、伝動ボウル32に形成されたショルダ60に当接して接触界面61を形成する環状の横断当接面58を有する。この実施形態において、環状の横断当接面58およびショルダ60は、円錐台の形状であるが、代案においては平坦であってもよい。第2の内側レースウェイ62が、内側転がり軸受リング36上に、第2の外側レースウェイ24に対向して形成される。ボール16、18は、一方では、第1の外側レースウェイ22および第1の内側レースウェイ56上を転動する第1列のボール16を形成し、他方では、第2の外側レースウェイ24および第2の内側レースウェイ62上を転動する第2列のボール18を形成する。第1のベアリングケージ70が、第1のボール列のボール16の案内を確実にし、第2のベアリングケージ72が、第2のボール列のボール18の案内を確実にする。既知のやり方で、ベアリングケージは、ボール16、18を収容し、同じ列の隣接するボール間のいかなる直接接触も回避するようにセルを境界付ける。シール74が、固定サブアセンブリ12の外側リング20上に締まりばめされ、ホイールハブ30上に締まりばめされたジョイントシート76にスライド可能に接触する。シールペーストの隅肉または固定シール78を、随意により、ショルダ86と端面57との間の界面の外周において、ホイールハブ30および内側転がり軸受リング36に当接させて配置してもよい。
【0055】
本明細書の残りの部分において、
図1に示されるアセンブリの特定の注目すべき寸法特性に焦点を当てるが、それらはいくつかの事前の定義を必要とする。すなわち、以下が示される。
・PP1は、第1のボール列のボール16の中心の軌道を構成するピッチ円が位置するピッチ平面である(以下では、第1のピッチ平面としても知られる)。
・PP2は、第2のボール列のボール18の中心の軌道を構成するピッチ円が位置するピッチ平面である(以下では、第2のピッチ平面としても知られる)。
・Lは、第1のピッチ平面PP1と第2のピッチ平面PP2との間の距離である。
・DP1は、第1のボール列のボール16の中心を通るピッチ円の直径である。
・DP2は、第2のボール列のボール18の中心を通るピッチ円の直径である。
・DB1は、第1のボール列のボールを構成するボール16の直径である。
・DB2は、第2のボール列のボールを構成するボール18の直径である。
・DCEは、横断端面57とショルダ86との間のベアリング界面の外周の直径である。実際には、この直径は、横断端面57の外径またはショルダ86の外径のいずれか小さい方に等しい。
・DFは、内側転がり軸受リング36における締まりばめ表面52の直径である。
【0056】
外側転がり軸受リング20に形成された外側レースウェイ22、24は、各々がそれぞれのレースウェイ22、24の軸方向両端の間の中間位置に位置するレースウェイ底部64、66を有するという意味で、軸方向において包囲的である。第1のボール列のボール16は、好ましくは、第2のボール列のボール18よりも大きく、レースウェイ22、24、56、62は、いわゆる「O」タイプの斜め接触ボールの列を2つ有する転がり軸受を構成するように配置される。換言すると、第1列のボール16と関連するレースウェイ22、56との間の接触点が、ボール16の第1の列に対してボール18の第2の列の反対側に位置する第1の頂点を有する第1の接触円錐上に位置する一方で、第2列のボール18と関連するレースウェイ24、62との間の接触点は、ボール18の第2の列に対してボール16の第1の列の反対側に位置する第2の頂点を有する第2の接触円錐上に位置する。
【0057】
ボール16の第1の列のピッチ円とボールの第2の列のピッチ円とを含む円錐を観察することも可能であり、その開口角度θは、以下の比によって特徴付けられる。
【数12】
【0058】
実際に、開口角度θは、60°~120°の間であり、以下の式によって表される。
【数13】
【0059】
この場合、開口角度θは、アセンブリ10の良好な半径方向のコンパクトさのために、好ましくは90°以下であり、これは以下の式によって表される。
【数14】
【0060】
さらに、2つのピッチ平面PP1およびPP2は、良好な軸方向のコンパクトさのために互いに近付けられるが、回転軸100を含む平面(例えば、
図1の平面)へと投影されるボール16、18の2つの列の間の軸上の重なりは見られず、これは、以下の二重不等式に変換される。
【数15】
【0061】
好ましくは、回転軸に垂直な平面(例えば、第1のピッチ平面PP1)へと投影されるボール16、18の列の重なりも回避され、これは以下の不等式をもたらす。
【数16】
【0062】
構造的脆弱性の出現を回避するために、第1列の外側レースウェイ66の下方には、以下の不等式によって充分な材料の厚さが確保される。
【数17】
【0063】
注目すべきことに、内側転がり軸受リング36の端面57は、軸方向において第1のピッチ平面PP1と第2のピッチ平面PP2との間に、第1のピッチ平面PP1から第1のボール列のボール16のボール直径DB1の半分よりも大きい距離に配置され、これにより、端面57とショルダ86との間の接触腐食に起因する汚染物質の移動のリスクを制限することができる。好ましくは、端面57は、第1のピッチ平面PP1よりも第2のピッチ平面PP2に近い。好ましくは、端面57は、第2のピッチ平面PP2からの距離が、第2のボール列のボール18のボール直径DB2の半分よりも小さくなるように配置される。
【0064】
さらに、端面57とショルダ86との間のベアリング界面87の外周は、第1の内側レースウェイ56のレースウェイ底部80よりも回転軸100から遠い。この半径方向の離間は、内側リング36の締まりばめ直径DFの下方に充分に大きな材料断面を維持し、したがってハブ30の良好な構造強度を保証しつつ、ベアリング界面87における圧力を低減し、したがって接触腐食を制限するように、充分に大きなベアリング界面87を確保する。実際には、以下の不等式が満たされる。
【数18】
または
【数19】
【0065】
第1列のボール16の容易な取り付けを可能にするために、端面57とショルダ86との間のベアリング界面87の外周DCEは、好ましくは、第1列のボール16のピッチ直径DP1未満に保たれるべきであり、これは以下の不等式に反映される。
【数20】
【0066】
より一般的には、内側転がり軸受リング36に対して高い曲げ剛性を保証するために、好ましくは、例えば平面PP1への正射影など、回転軸100に垂直な平面への正射影において、第2列のボール18と、端面57とショルダ86との間のベアリング界面との間に重なりが存在せず、これは以下の不等式をもたらす。
【数21】
【0067】
好ましくは、以下の不等式が満たされる。
【数22】
【0068】
内側転がり軸受リング36と伝動ボウル32との接触界面61について、内側転がり軸受リング36とホイールハブ30のショルダ86とのベアリング界面87に対する配置、および内側転がり軸受リング36の第2の内側レースウェイ62に対する配置は、内側転がり軸受リング36内の応力を均一にするために、可能な限り慎重に選択される。
【0069】
この目的のために、好ましくは、内側転がり軸受リング36と伝動ボウル32との間の環状の接触界面61は、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、第1のピッチ平面PP1とは反対側の第2のピッチ平面PP2の一方の側に配置される。回転軸100を含む平面への正投影において、内側転がり軸受リング36と伝動ボウル32との間の環状の接触界面61の別の部分は、好ましくは、内側転がり軸受リング36とショルダ86との間のベアリング界面から、第2のボール列のボール18のボール直径DB2よりも大きい距離に配置される。最後に、内側転がり軸受リング36と伝動ボウル32との間の環状の接触界面61の少なくとも一部は、好ましくは、第2のピッチ平面PP2から、第2のボール列のボール18のボール直径DB2の半分よりも大きく、好ましくは2/3よりも大きい距離に配置される。
【0070】
さらに、第1のピッチ平面PP1への正射影において観察されるように、内側転がり軸受リング36と伝動ボウル32との間の環状の接触界面61の少なくとも一部は、好ましくは、内側転がり軸受リング36の端面57とショルダ86との間のベアリング界面87の少なくとも一部と重なり合う。やはり第1のピッチ平面PP1への正射影において観察されるように、内側転がり軸受リング36と伝動ボウル32との間の環状の接触界面61の少なくとも一部は、好ましくは、第2の内側レースウェイ62と、内側転がり軸受リング36の端面57とショルダ86との間のベアリング界面87と、の間に位置する。最後に、第1のピッチ平面PP1への正投影において見たとき、第2の内側レースウェイ62と、内側転がり軸受リング36と伝動ボウル32との間の環状の接触界面61とが、交わっていない。
【0071】
伝動ボウル32の突出部分46の円柱形のベアリング面462およびホイールハブ30に対応する円柱形のボア49は、少なくとも部分的に、第1のピッチ平面PP1と第2のピッチ平面PP2との間に位置し、好ましくは、回転軸100に垂直かつショルダ86に接する平面との交わりを有する。この配置により、円柱形のベアリング面462は、締まりばめ表面52におけるホイールハブ30の変形の限定に関与することができる。
【0072】
内側転がり軸受リング36に加わる半径方向力の大部分は、好ましくは第1のピッチ平面PP1と第2のピッチ平面PP2との間に少なくとも部分的に延在するホイールハブ30の締まりばめ表面52に伝達される。必要に応じて、ホイールハブ30の締まりばめ表面52は、第1のピッチ平面PP1とは反対側の第2のピッチ平面PP2の一方の側から部分的に延在する。好ましくは、ホイールハブ30の締まりばめ表面52は、第1の内側レースウェイ56よりも回転軸100に近く、これは以下の不等式をもたらす。
【数23】
【0073】
好ましくは、以下の不等式が満たされる。
【数24】
【0074】
注目すべきことに、第1のベアリングケージ70は、
図2に示されるように、開放リングであり、弾性的に変形可能であって、ショルダ86の通過を可能にする。アセンブリ10の取り付け時に、ベアリングケージ70は、
図2に示されるように、可動サブアセンブリのショルダ86を通過するときにベアリングケージ70を拡げることによって第1の内側レースウェイ56に面して配置され、第1のボール列のボール16は、ベアリングケージ70を配置する前、またはベアリングケージ70を配置した後に、ベアリングケージ70のセル内に配置され、これらはすべて、一体型の外側リング20を組み立てる前、かつ内側転がり軸受リング36をホイールハブ30に締まりばめする前に行われる。
【0075】
当然ながら、図に示して上述した例は、限定の目的で提供されているのではなく、例示のために提供されているにすぎない。
【0076】
第1の実施形態の一変形例において、ホイールハブ30は、フランジ38および締まりばめ表面52を形成する中実な一体部品と、第1の内側レースウェイ56およびショルダ86を形成する中実部品に締まりばめされる追加の内側転がり軸受リングとによる少なくとも2つの部品であってよい。
【0077】
別の変形例においては、2つのボール列のボール16、18が、同じ直径を有してもよく、一方の列または両方の列が、ボールの代わりに円錐ころを受け入れることができる。
【0078】
一変形例として、固定サブアセンブリを、車両のサスペンション要素に取り付けられるクランプ26と、このクランプに締まりばめされる2つの同軸な外側転がり軸受リングとを含むいくつかの部品にて提供することが可能である。
【0079】
伝動ジョイントは、任意の適切なタイプの定速ジョイント、とくには転動軌道41によって制御されるRzeppa定速ジョイントであってよいが、例えばジョイントケージによって制御されるRzeppaジョイント、またはクロストラックジョイントなど、定速ジョイントの他の変種も可能である。したがって、転動軌道41は、必ずしも円形である必要はなく、凹状である必要さえなく、直線状の軌道も可能である。
【0080】
本出願の本文を通して、「固定サブアセンブリ」は、可動サブアセンブリの回転のための固定座標系を構成するサブアセンブリを指すために使用されている。当業者であれば、車両の車体と固定サブアセンブリとの間に介在するサスペンションの幾何学的形状に応じて、このサブアセンブリ自体も車両の車体に対して運動する必要があることを理解できるであろう。
【外国語明細書】