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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106325
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ブロックポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/00 20060101AFI20240731BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20240731BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240731BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
C08G81/00
C08L53/00
C08L101/00
C08F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007279
(22)【出願日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2023010052
(32)【優先日】2023-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 友平
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 里穂
【テーマコード(参考)】
4J002
4J031
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002BP022
4J002BP032
4J002FD010
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD130
4J002FD160
4J002FD180
4J002GA01
4J002GK00
4J002GM00
4J002GQ00
4J031AA12
4J031AA49
4J031AA53
4J031AB01
4J031AC03
4J031AD01
4J031AE03
4J031AE04
4J031AE11
4J031AE15
4J031AF02
4J031AF14
4J031AF18
4J031AF23
4J031AF30
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100CA04
4J100HA51
4J100HA57
4J100HA61
4J100HC34
4J100HC84
4J100HD16
4J100HE05
4J100HE14
4J100HE32
4J100HG31
4J100JA11
4J100JA28
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】本発明は、色相に優れるブロックポリマーを提供することを目的とする。
【解決手段】炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の分子末端に(メタ)アクリル酸(エステル)(γ0)が付加した変性ポリオレフィン(Aγ0)由来のブロックと、親水性ポリマー(B)由来のブロックとを構成単位とするブロックポリマー(X);ブロックポリマー(X)と、熱可塑性樹脂(E)とを含有してなる熱可塑性樹脂組成物(Y)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の分子末端に(メタ)アクリル酸(エステル)(γ0)が付加した変性ポリオレフィン(Aγ0)由来のブロックと、親水性ポリマー(B)由来のブロックとを構成単位とするブロックポリマー(X)。
【請求項2】
前記炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)が、炭素数1,000当たり0.5~20個の炭素-炭素二重結合を有する請求項1記載のブロックポリマー(X)。
【請求項3】
前記親水性ポリマー(B)が、ポリエーテル(B1)である請求項1記載のブロックポリマー(X)。
【請求項4】
前記変性ポリオレフィン(Aγ0)と親水性ポリマー(B)との重量比[(Aγ0)/(B)]が10/90~80/20である請求項1記載のブロックポリマー(X)。
【請求項5】
数平均分子量が、5,000~200,000である請求項1記載のブロックポリマー(X)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか記載のブロックポリマー(X)と、熱可塑性樹脂(E)とを含有してなる熱可塑性樹脂組成物(Y)。
【請求項7】
前記ブロックポリマー(X)と、熱可塑性樹脂(E)との重量比[(X)/(E)]が、0.1/99.9~40/60である請求項6記載の熱可塑性樹脂組成物(Y)。
【請求項8】
請求項6記載の熱可塑性樹脂組成物(Y)を成形してなる成形品(Z)。
【請求項9】
炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の分子末端に(メタ)アクリル酸(エステル)(γ0)が付加した変性ポリオレフィン(Aγ0)と、親水性ポリマー(B)とを反応する工程を含む請求項1~5のいずれか記載のブロックポリマー(X)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は成形性、剛性、電気絶縁性等に優れ、また安価であることから、フィルム、繊維、その他さまざまな形状の成形品として幅広く汎用的に使用されている。また、ポリオレフィン樹脂向けに種々の改質剤の開発が行われており、例えば、ブロックポリマーを帯電防止剤として使用することが提案されている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-278985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術であっても、ポリマーが黄色~茶色の色相を有する傾向があり、これが成形品の色相に影響するため、その改良が求められていた。本発明は、色相に優れるブロックポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の分子末端に(メタ)アクリル酸(エステル)(γ0)が付加した変性ポリオレフィン(Aγ0)由来のブロックと、親水性ポリマー(B)由来のブロックとを構成単位とするブロックポリマー(X)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のブロックポリマー(X)は以下の効果を奏する。
(1)色相に優れる。
(2)熱可塑性樹脂組成物(Y)の成形性に優れる。
(3)熱可塑性樹脂組成物(Y)の成形品(Z)に、帯電防止性、ヒートシール性を与える。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)>
本発明における炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)を構成する単量体としては、例えば、エチレン、α-オレフィン(炭素数3~8)が挙げられる。
前記α-オレフィン(炭素数3~8)は炭素数3~8のα-オレフィンであり、前記α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン及び1-オクテン等が挙げられる。
なお、α-オレフィンを構成する単量体は1種を単独でも、2種以上を併用してもよいが、2種が好ましい。
上記単量体のうち、改質特性および工業上の観点から、好ましいのは、エチレン、及び直鎖のα-オレフィン(炭素数3~8)であり、さらに好ましいのは、エチレン、及び直鎖のα-オレフィン(炭素数3~6)であり、とくに好ましいのはエチレン、及びプロピレンである。
【0008】
炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の構成単量体が、エチレンとα-オレフィン(炭素数3~8)とである場合、エチレンとα-オレフィンとの重量比[エチレン/α-オレフィン(炭素数3~8)]は、好ましくは0.5/99.5~15/85であり、さらに好ましくは1/99~5/95である。
【0009】
前記ポリオレフィン(A)は、エチレン、α-オレフィン(炭素数3~8)以外にその他の単量体を構成単量体としてもよい。
その場合、(A)を構成する全単量体の重量に基づいて、その他の単量体の重量は、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
上記その他の単量体としては、例えば、α-オレフィン以外の炭素数4~30の不飽和単量体(例えば、2-ブテン等のオレフィン並びにスチレン、アクリロニトリル、アクリルアミド及び酢酸ビニル等のビニル単量体等)及び炭素数[Cと略記することがある]9~30のα-オレフィン(1-デセン、1-ドデセン等)等が挙げられる。
【0010】
炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の数平均分子量(Mn)は、帯電防止性および(X)の生産性の観点から、好ましくは800~50,000であり、さらに好ましくは1,500~40,000、とくに好ましくは2,000~30,000である。
【0011】
本発明における数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)により求められる値であり、測定条件は以下のとおりである。
装置:高温ゲルパーミエイションクロマトグラフ[「AllianceGPCV2000」、Waters(株)製]
検出装置:屈折率検出器
溶媒:オルトジクロロベンゼン
基準物質:ポリスチレンサンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel10μm、MIXED-B2本直列[ポリマーラボラトリーズ(株)製]
カラム温度:135℃
【0012】
炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)において、炭素数1,000個当たりの炭素-炭素二重結合数[(A)の分子末端及び分子鎖中の炭素-炭素二重結合数]は、後述の(メタ)アクリル酸(エステル)(γ0)との反応性及び生産性の観点から、好ましくは0.5~20個であり、更に好ましくは1~18個、特に好ましくは2~15個である。最も好ましくは4~8個である。
ポリオレフィン(A)の炭素数1,000個当たりの炭素-炭素二重結合の数はポリオレフィン(A)の分子量、重量比[エチレン/α-オレフィン(炭素数3~8)]によって調整することができる。
ポリオレフィン(A)の分子量が小さくなると、炭素数1,000個当たりの炭素-炭素二重結合の数は多くなり、重量比[エチレン/α-オレフィン(炭素数3~8)]が大きくなると炭素数1,000個当たりの炭素-炭素二重結合の数は少なくなる。
ここにおいて、該二重結合数は、(A)のH-NMR(核磁気共鳴)分光法のスペクトルから求めることができる。
すなわち、該スペクトル中のピークを帰属し、(A)の4.5~6ppmにおける二重結合由来の積分値及び(A)由来の積分値から、(A)の炭素-炭素二重結合数と(A)の炭素数の相対値を求め、(A)の炭素1,000個当たりの該分子末端及び分子鎖中の炭素-炭素二重結合数を算出する。後述の実施例における炭素-炭素二重結合数は該方法に従った。
【0013】
本発明における炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の製造方法は、例えば、Mnが60,000を超える高分子量ポリオレフィン(A0)を熱減成する方法が挙げられる。
高分子量ポリオレフィン(A0)のMnは、ポリオレフィン(A)の生産性の観点から好ましくはMnが60,000~400,000、さらに好ましくはMnが80,000~250,000である。
【0014】
熱減成法には、前記高分子量ポリオレフィン(A0)を(1)有機過酸化物不存在下、例えば300~450℃、好ましくは350~400℃で0.5~10時間、好ましくは1~2時間、熱減成する方法、及び(2)有機過酸化物[例えば2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン]存在下、180~300℃で0.5~10時間、熱減成する方法等が含まれる。
これらのうち工業的な観点及び後述の変性ポリオレフィン(X)の生産性の観点から、好ましくは分子末端及び/又は分子鎖中の二重結合数のより多いものが得やすい(1)の方法である。
【0015】
上記(A)を構成する単量体組成は、高分子量ポリオレフィン(A0)の構成単量体組成がそのまま維持される傾向がある。すなわち、(A)の構成がエチレンとα-オレフィン(炭素数3~8)である場合、(A)の構成単量体の重量比[エチレン/α-オレフィン(炭素数3~8)]は、高分子量ポリオレフィン(A0)の構成単量体の重量比[エチレン/α-オレフィン(炭素数3~8)]が、そのまま維持される傾向がある。
また、熱減成温度が高い、熱減成時間が長いほど、炭素数1,000個当たりの二重結合数は、大となる傾向がある。
更に、(A0)のMnが小、熱減成温度が高い、熱減成時間が長いほど、(A)のMnは小となる傾向がある。
【0016】
<(メタ)アクリル酸(エステル)(γ0)>
本発明における(メタ)アクリル酸(エステル)(γ0)としては、例えば、(メタ)アクリル酸(γ01)、(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1~12)(γ02)、および(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(アルキルの炭素数1~12)(γ03)が挙げられる。
なお、(メタ)アクリル酸(エステル)は、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル及び/又はメタアクリル酸エステルを意味する。
【0017】
(メタ)アクリル酸(γ01)としては、アクリル酸、メタアクリル酸が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1~12、好ましくは炭素数1~6)(γ02)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(アルキルの炭素数1~12、好ましくは炭素数2~4)(γ03)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシドデシルが挙げられる。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸(エステル)(γ0)のうち、(X)、(Aγ0)の生産性の観点から、好ましいのは(γ01)及び(γ02)、さらに好ましいのは(γ02)である。
【0019】
<変性ポリオレフィン(Aγ0)>
本発明の変性ポリオレフィン(Aγ0)は、炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の分子末端に(メタ)アクリル酸(エステル)(γ0)が付加したものである。好ましくは、(A)の末端の二重結合と(メタ)アクリル酸(エステル)(γ0)とが反応して付加したものである。
【0020】
変性ポリオレフィン(Aγ0)において、前記ポリオレフィン(A)と(メタ)アクリル酸(エステル)(γ0)との重量比[(A)/(γ0)]は、(X)の生産性の観点から、好ましくは70/30~99.9/0.1であり、さらに好ましくは80/20~98/2である。
上記重量比[(A)/(γ0)]は、変性ポリオレフィン(Aγ0)を、H-NMR、13C-NMR測定し、解析することにより算出できる。
【0021】
変性ポリオレフィン(Aγ0)の数平均分子量(Mn)は、(X)の生産性の観点から、好ましくは1,000~50,000、さらに好ましくは1,700~40,000、とくに好ましくは2,200~30,000である。
変性ポリオレフィン(Aγ0)の数平均分子量(Mn)は、(A)のMnと重量、(B)の種類と重量で調整できる。
【0022】
変性ポリオレフィン(Aγ0)は、例えば、以下の方法で製造できる。
(i)反応容器に、(A)と(γ0)とを仕込み、必要により溶媒(g)(例えば、トルエン及びキシレン等)を加えて付加反応する。
(ii)反応容器に、(A)と(γ0)とを仕込み、必要により溶媒(g)(例えば、トルエン及びキシレン等)を加えて、ルイス酸触媒(ca)の存在下で付加反応する。
上記(i)、(ii)において、付加反応の反応温度は、好ましくは120℃~160℃、さらに好ましくは140~180℃であり、反応時間は5~10時間であることが好ましい。
上記(i)、(ii)のうち、反応性および色相の観点から、好ましいのは(ii)である。
【0023】
上記ルイス酸触媒(ca)としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのアルキルアルミニウムクロライド、アルミニウムトリクロライドが挙げられる。
上記ルイス酸触媒(ca)のうち、反応性および色相の観点から、好ましいのはジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのアルキルアルミニウムクロライド、アルミニウムトリクロライドである。
【0024】
変性ポリオレフィン(Aγ0)は、前記ポリオレフィン(A)の分子末端に存在する二重結合に(メタ)アクリル酸(エステル)(γ0)が付加した構造を有するが、好ましくは(A)の分子末端に存在する二重結合のうち、70重量%以上に(γ0)が付加したもの、また、付加した(γ0)のうち、90重量%以上がポリオレフィン(A)の分子末端に存在する二重結合に付加することが好ましい。
変性ポリオレフィン(A)の分子末端に存在する二重結合のうち、(メタ)アクリル酸エステル(γ0)が付加している割合は、H―NMRによって測定することができる。
【0025】
<親水性ポリマー(B)>
本発明における親水性ポリマー(B)としては、特許第3488163号に記載の親水性ポリマーが挙げられ、具体的には、ポリエーテル(B1)、ポリエーテル含有親水性ポリマー(B2)等が挙げられる。帯電防止性および成形性の観点から、好ましいのはポリエーテル(B1)である。
なお、本発明における親水性ポリマー(B)は、好ましくは1×1011Ω・cm以下の体積固有抵抗値を有するポリマーである。
【0026】
ポリエーテル(B1)としては、ポリエーテルジオール(B1-1)、ポリエーテルジアミン(B1-2)及びこれらの変性物(B1-3)が挙げられる。
ポリエーテルジオール(B-1)としては、ジオール(B0)にアルキレンオキサイド(以下AOと略記する。)を付加反応させることにより得られるものが挙げられ、具体的には一般式(1)で表されるものが挙げられる。
H-(OR-O-E-O-(RO)-H (1)
一般式(1)におけるEは、ジオール(B0)からすべての水酸基を除いた残基である。
一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数2~12のアルキレン基、スチレン基及びクロロメチル基からなる群から選ばれる一種である。これらのなかでは炭素数2~4のアルキレン基が好ましい。炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、1,2-若しくは1,3-プロピレン基並びに1,2-、1,3-、1,4-若しくは2,3-ブチレン基等が挙げられる。
一般式(1)におけるa及びbは、(OR)及び(RO)の平均付加モル数であり、それぞれ独立に1~300であり、好ましくは2~250、更に好ましくは10~100である。
一般式(1)におけるa、bがそれぞれ2以上の場合のR、Rは、同一でも異なっていてもよく、(OR、(RO)部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0027】
ジオール(B0)としては、炭素数2~12の脂肪族2価アルコール、炭素数5~12の脂環式2価アルコール、炭素数6~18の芳香族2価アルコール、及び、3級アミノ基含有ジオール等が挙げられる。
【0028】
炭素数2~12の脂肪族2価アルコールとしては、エチレングリコール(以下EGと略記する。)、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
炭素数5~12の脂環式2価アルコールとしては、1,4-ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び1,5-ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘプタン等が挙げられる。
炭素数6~18の芳香族2価アルコールとしては、単環芳香族2価アルコール(キシリレンジオール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン及びウルシオール等)及び多環芳香族2価アルコール(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’-ジヒドロキシジフェニル-2,2-ブタン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシナフタレン及びビナフトール等)等が挙げられる。
【0029】
3級アミノ基含有ジオールとしては、炭素数1~12の脂肪族又は脂環式1級アミン(メチルアミン、エチルアミン、シクロプロピルアミン、1-プロピルアミン、2-プロピルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン及びドデシルアミン等)のビスヒドロキシアルキル化物及び炭素数6~12の芳香族1級アミン(アニリン及びベンジルアミン等)のビスヒドロキシアルキル化物等が挙げられる。
これらのうち、ビスヒドロキシアルキル化物との反応性の観点からジオール(B0)として好ましいのは、炭素数2~12の脂肪族2価アルコール及び炭素数6~18の芳香族2価アルコールであり、更に好ましいのはEG及びビスフェノールAである。
【0030】
ポリエーテルジオール(B1-1)は、ジオール(B0)にAOを付加反応させることにより製造することができる。
AOとしては、炭素数2~4のAO[エチレンオキサイド(以下EOと略記する。)、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド、1,2-、1,3-、1,4-又は2,3-ブチレンオキサイド、及びこれらの2種以上の併用系が用いられるが、必要により他のAO[炭素数5~12のα-オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド及びエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)等]を少しの割合(AOの全重量に基づいて30重量%以下)で併用することもできる。
2種以上のAOを併用するときの結合形式は、ランダム結合、ブロック結合のいずれでもよい。AOとして好ましいのは、EO単独及びEOと他のAOとの併用である。
【0031】
AOの付加反応は、公知の方法、例えばアルカリ触媒の存在下、100~200℃の温度で行うことができる。
一般式(1)で表されるポリエーテルジオール(B1-1)の重量に基づく、(OR及び(RO)の含有率は、好ましくは5~99.8重量%であり、更に好ましくは8~99.6重量%、特に好ましくは10~98重量%である。
一般式(1)における(OR及び(RO)の重量に基づくオキシエチレン基の含有率は、好ましくは5~100重量%であり、更に好ましくは10~100重量%、特に好ましくは50~100重量%、最も好ましくは60~100重量%である。
ポリエーテルジオール(B1-1)としては、帯電防止性の観点から、ビスフェノールAのEO付加物、及び、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0032】
ポリエーテルジアミン(B1-2)としては、一般式(2)で表されるものが挙げられる。
N-R-(OR-O-E-O-(RO)-R-NH (2)
一般式(2)におけるEは、ジオール(B0)からすべての水酸基を除いた残基である。
ジオール(B0)としては、上記ポリエーテルジオール(B1-1)について例示したものと同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
一般式(2)におけるR、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数2~4のアルキレン基、炭素数5~12のアルキレン基、スチレン基及びクロロメチル基からなる群から選ばれる一種であり、R、R、R及びRは炭素数2~4のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2のアルキレン基であることがさらに好ましい。炭素数2~4のアルキレン基としては、一般式(1)におけるR及びRとして例示したものと同様のものが挙げられる。
一般式(2)におけるc及びdは、(OR)及び(RO)の平均付加モル数であり、それぞれ独立に1~300であり、好ましくは2~250、更に好ましくは10~100である。
一般式(2)におけるc、dがそれぞれ2以上の場合のR、Rは、同一でも異なっていてもよく、(OR、(RO)部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0033】
ポリエーテルジアミン(B1-2)は、ポリエーテルジオール(B1-1)が有するすべての水酸基を、アルキルアミノ基に変換することにより得ることができる。例えばポリエーテルジオール(B1-1)とアクリロニトリルとを反応させ、得られたシアノエチル化物を水素添加することにより製造することができる。
ポリエーテルジアミン(B1-2)としては、帯電防止性の観点から、ポリエチレングリコールの両末端をアルキルアミノ基に変換したものが好ましく、さらに好ましくは、ポリエチレングリコールの両末端をエチルアミノ基で変換したものがさらに好ましい。
【0034】
変性物(B1-3)としては、ポリエーテルジオール(B1-1)又はポリエーテルジアミン(B1-2)のアミノカルボン酸変性物(末端アミノ基)、イソシアネート変性物(末端イソシアネート基)及びエポキシ変性物(末端エポキシ基)等が挙げられる。
アミノカルボン酸変性物は、ポリエーテルジオール(B1-1)又はポリエーテルジアミン(B1-2)と、アミノカルボン酸又はラクタムとを反応させることにより得ることができる。
イソシアネート変性物は、ポリエーテルジオール(B1-1)又はポリエーテルジアミン(B1-2)と、ポリイソシアネートとを反応させるか、ポリエーテルジアミン(B1-2)とホスゲンとを反応させることにより得ることができる。
エポキシ変性物は、ポリエーテルジオール(B1-1)又はポリエーテルジアミン(B1-2)と、ジエポキシド(ジグリシジルエーテル、ジグリシジルエステル及び脂環式ジエポキシド等のエポキシ樹脂:エポキシ当量85~600)とを反応させるか、ポリエーテルジオール(B1-1)とエピハロヒドリン(エピクロロヒドリン等)とを反応させることにより得ることができる。
変性物(B1-3)としては、成形品の機械物性及び帯電防止性の観点から、ポリエーテルジオール(B1-1)のアミノカルボン酸変性物が好ましく、ポリエチレングリコールのアミノカルボン酸変性物がさらに好ましい。
【0035】
親水性ポリマー(B)のMnは、耐熱性及び変性ポリオレフィン(Aγ0)との反応性の観点から、好ましくは150~20,000であり、更に好ましくは300~18,000、特に好ましくは1,000~15,000、最も好ましくは1,200~8,000である。
【0036】
<ブロックポリマー(X)>
本発明のブロックポリマー(X)は、前記炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の分子末端に(メタ)アクリル酸(エステル)(γ0)が付加した変性ポリオレフィン(Aγ0)由来のブロックと、親水性ポリマー(B)由来のブロックとを構成単位とする。
上記ブロックポリマー(X)は、後述の熱可塑性樹脂用改質剤として有用であり、とりわけ熱可塑性樹脂用帯電防止剤として有用である。
【0037】
ブロックポリマー(X)を構成する変性ポリオレフィン(Aγ0)由来のブロックと、親水性ポリマー(B)由来のブロックの重量比[(Aγ0)/(B)]は、帯電防止性及び耐水性の観点から、好ましくは10/90~80/20であり、更に好ましくは20/80~75/25であり、特に好ましくは30/70~70/30である。
【0038】
ブロックポリマー(X)のMnは、後述する成形品(Z)の機械的強度(機械物性)及び帯電防止性の観点から、好ましくは5,000~200,000、さらに好ましくは7,000~100,000、とくに好ましくは10,000~60,000である。
【0039】
上記ブロックポリマー(X)のMnは、変性ポリオレフィン(Aγ0)の種類、(Aγ0)のMn、及びブロックポリマー(X)の重量に対する(Aγ0)の重量割合、並びに親水性ポリマー(B)の種類、(B)のMn、ブロックポリマー(X)の重量に対する(B)の重量割合、及び反応条件により、適宜調整可能である。
【0040】
本発明のブロックポリマー(X)は、炭素-炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の分子末端に(メタ)アクリル酸(エステル)(γ0)が付加した変性ポリオレフィン(Aγ0)と、親水性ポリマー(B)とを反応する工程によって製造することができる。具体的には、以下の方法によって製造できる。
(i)反応容器に、変性ポリオレフィン(Aγ0)と親水性ポリマー(B)と、必要により触媒(ca2)(例えば、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド)とを仕込み、減圧下、反応を行い、ブロックポリマーを得る。
(ii)反応容器に、変性ポリオレフィン(Aγ0)と親水性ポリマー(B)と、必要により触媒(ca2)(例えば、酢酸ジルコニウム)とを仕込み、減圧下、反応を行い、ブロックポリマーを得る。
上記(i)、(ii)において、変性ポリオレフィン(Aγ0)と親水性ポリマー(B)との反応温度としては、好ましくは190~250℃であり、さらに好ましくは190~220℃であり、反応時間としては、好ましくは5~10時間であり、更に好ましくは5~8時間であり、反応時の圧力としては、好ましくは1.3kPa以下であり、更に好ましくは0.13kPa以下である。
【0041】
上記のうち、(γ0)が(γ02)、(γ03)の場合、好ましいのは(i)であり、(γ0)が(γ01)の場合、好ましいのは(ii)である。
例えば、(Aγ0)が有する(γ0)が(γ02)であって、親水性ポリマー(B)がポリエーテルジオール(B1-1)の場合、上記(ii)での反応はエステル交換反応であり、ブロックポリマー(X)は、(A)-(B)型、(A)-(B)-(A)型、(B)-(A)-(B)型、[(A)-(B)]n型の構造を有する。
なお、nは、ブロックポリマー(X)のMn及びH-NMR分析により求めることができる。
ブロックポリマーの構造としては、ブロックポリマー(X)のMnの観点から、[(A)-(B)]n型であることが好ましい。
【0042】
変性ポリオレフィン(Aγ0)が(メタ)アクリル酸エステル(γ0)変性であることにより、従来よりも低温で変性ポリオレフィン(Aγ0)を製造することができるため、本願発明のブロックポリマー(X)は色相に優れていることが推定される。
【0043】
<熱可塑性樹脂組成物(Y)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物(Y)は、ブロックポリマー(X)と後述の熱可塑性樹脂(E)とを含有してなる。
前記ブロックポリマー(X)と熱可塑性樹脂(E)との重量比[(X)/(E)]は、改質特性および工業上の観点から、好ましくは0.1/99.9~40/60、さらに好ましくは1/99~25/75、とくに好ましくは3/97~15/85である。
【0044】
上記熱可塑性樹脂(E)には、上記(X)以外のもの、例えば、ポリオレフィン樹脂[ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等]、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂が含まれる。
上記熱可塑性樹脂(E)のうち、成型時の基材樹脂との相溶性の観点から、好ましいのはポリオレフィン樹脂である。
【0045】
熱可塑性樹脂(E)のMnは、成形品(Z)の機械的強度及び上記ブロックポリマー(X)との相溶性の観点から好ましくは10,000~500,000、より好ましくは20,000~400,000、さらに好ましくは80,000~300,000である。
【0046】
熱可塑性樹脂組成物(Y)には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により、さらに前記(X)、(E)以外に、着色剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、充填剤、およびエステル交換防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のその他の添加剤(F)を含有させることができる。添加剤(F)はそれぞれ1種または2種以上併用のいずれでもよい。
【0047】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(Y)は、ブロックポリマー(X)、熱可塑性樹脂(E)、必要によりその他の添加剤(F)を溶融混合することにより得ることができる。
溶融混合する方法としては、一般的にはペレット状又は粉体状にした各成分を、適切な混合機(ヘンシェルミキサー等)で混合した後、押出機で溶融混合してペレット化する方法が適用できる。
溶融混合時の各成分の添加順序には特に制限はないが、例えば、
[1](X)、(E)、必要により(F)を一括投入して溶融混合する方法;
[2](X)、(E)の一部をあらかじめ溶融混合して(X)の高濃度組成物(マスターバッチ樹脂組成物)を作製した後、残りの(E)並びに必要に応じて(F)を溶融混合する方法(マスターバッチ法又はマスターペレット法);等が挙げられる。
[2]の方法におけるマスターバッチ樹脂組成物中の(X)の濃度は、好ましくは40~80重量%であり、更に好ましくは50~70重量%である。
[1]及び[2]の方法のうち、(X)を樹脂組成物に効率的に分散しやすいという観点から、[2]の方法が好ましい。
【0048】
<成形品(Z)>
本発明の成形品(Z)は、本発明の熱可塑性樹脂組成物(Y)を成形して得られる。成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法及びインフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて単層成形、多層成形又は発泡成形等の手段も取り入れた任意の方法で成形できる。
【実施例0049】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において部は重量部を示す。
【0050】
<製造例1>[変性ポリオレフィン(Aγ0-1)の製造]
反応容器に、プロピレン98重量%、エチレン2重量%を構成単位とするポリオレフィン[商品名「サンアロマーPZA20A」、サンアロマー(株)製、Mn100,000、以下同じ。]100部を仕込み、液相に窒素を通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら370℃で90分間の条件で、熱減成を行い、炭素-炭素二重結合を炭素数1,000あたり7.2個有するポリオレフィン(A-1)[Mn:3,500]を得た。
次に、ステンレス製オートクレーブに、ポリオレフィン(A-1)100部、キシレン30部、アクリル酸ブチル13.2部およびエチルアルミニウムジクロライド17重量%ヘキサン溶液1.5部を仕込んだ後、窒素ガス通気下、撹拌しながら150℃で20時間反応を行った。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)で未反応のアクリル酸ブチルおよびキシレンを留去して、変性ポリオレフィン(Aγ0-1)を得た。
なお、(Aγ0-1)の数平均分子量は3,700であった。
【0051】
<製造例2>[変性ポリオレフィン(Aγ0-2)の製造]
反応容器に、プロピレン96重量%、エチレン4重量%を構成単位とするポリオレフィン[商品名「ウィンテックWFX6」、日本ポリプロ(株)製、Mn150,000、以下同じ。]100部を仕込み、液相に窒素を通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら370℃で100分間の条件で、熱減成を行い、炭素-炭素二重結合を炭素数1,000あたり6.5個有するポリオレフィン(A-2)[Mn:4,000]を得た。
次に、ステンレス製オートクレーブに、ポリオレフィン(A-2)100部、キシレン30部、アクリル酸メチル7.7部およびエチルアルミニウムジクロライド17重量%ヘキサン溶液1.5部を仕込んだ後、窒素ガス通気下、撹拌しながら150℃で20時間反応を行った。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)で未反応のアクリル酸メチルおよびキシレンを留去して、変性ポリオレフィン(Aγ0-2)を得た。
なお、(Aγ0-2)の数平均分子量は4,200であった。
【0052】
<製造例3>[変性ポリオレフィン(Aγ0-3)の製造]
反応容器に、プロピレン87重量%、エチレン13重量%を構成単位とするポリオレフィン[商品名「Vistamaxx6502」、エクソンモービル製、Mn200,000、以下同じ。]100部を仕込み、液相に窒素を通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら370℃で100分間の条件で、熱減成を行い、炭素-炭素二重結合を炭素数1,000あたり7.3個有するポリオレフィン(A-3)[Mn:2,700]を得た。
次に、ステンレス製オートクレーブに、ポリオレフィン(A-3)100部、キシレン30部、アクリル酸メチル9.0部およびエチルアルミニウムジクロライド17重量%ヘキサン溶液1.5部を仕込んだ後、窒素ガス通気下、撹拌しながら150℃で20時間反応を行った。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)で未反応のアクリル酸メチルおよびキシレンを留去して、変性ポリオレフィン(Aγ0-3)を得た。
なお、(Aγ0-3)の数平均分子量は2,900であった。
【0053】
<製造例4>[変性ポリオレフィン(Aγ0-4)の製造]
反応容器に、プロピレン98重量%、エチレン2重量%を構成単位とするポリオレフィン[商品名「サンアロマーPZA20A」、サンアロマー(株)製、Mn100,000、以下同じ。]100部を仕込み、液相に窒素を通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら370℃で80分間の条件で、熱減成を行い、炭素-炭素二重結合を炭素数1,000あたり4.6個有するポリオレフィン(A-4)[Mn:4,400]を得た。
次に、ステンレス製オートクレーブに、ポリオレフィン(A-4)100部、キシレン30部、アクリル酸メチル9.0部およびエチルアルミニウムジクロライド17重量%ヘキサン溶液1.5部を仕込んだ後、窒素ガス通気下、撹拌しながら150℃で20時間反応を行った。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)で未反応のアクリル酸メチルおよびキシレンを留去して、変性ポリオレフィン(Aγ0-4)を得た。
なお、(Aγ0-4)の数平均分子量は4,600であった。
【0054】
<比較製造例1>[ポリオレフィン(比Aγ0-1)の製造]
反応容器に、プロピレン98重量%、エチレン2重量%を構成単位とするポリオレフィン[商品名「サンアロマーPZA20A」、サンアロマー(株)製、Mn100,000、以下同じ。]100部を仕込み、液相に窒素を通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら370℃で90分間の条件で、熱減成を行い、炭素-炭素二重結合を炭素数1,000あたり7.2個有するポリオレフィン(比A-1)[Mn:3,500]を得た。
次に、ステンレス製オートクレーブに、ポリオレフィン(比A-1)100部、キシレン30部および無水マレイン酸10.1部を仕込んだ後、窒素ガス通気下、撹拌しながら200℃で10時間反応を行った。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)で未反応の無水マレイン酸およびキシレンを留去した。
次いで12-アミノドデカン酸33.2部を仕込み、200℃で1時間反応を行い、変性ポリオレフィン(比Aγ0-1)を得た。
なお、(比Aγ0-1)の酸価は20.9mgKOH/g、数平均分子量は4,800であった。
【0055】
<製造例3>[カチオン性ポリマー(B-3)の製造]
ステンレス製オートクレーブにN-メチルジエタノールアミン41部、アジピン酸49部および酢酸ジルコニル0.3部を仕込み、窒素置換後、2時間かけて220℃まで昇温し、1時間かけて0.13kPaまで減圧してポリエステル化反応させた。反応終了後、50℃まで冷却し、メタノール100部を加えて溶解した。撹拌しながら反応容器中の温度を120℃に保ち、炭酸ジメチル31部を3時間かけて徐々に滴下し、同温度で6時間熟成させた。室温まで冷却後、60重量%ヘキサフルオロリン酸水溶液100部を加え、室温で1時間撹拌した。次いでメタノールを減圧留去し、4級アンモニウム基を1分子当たり平均12個有するカチオン性ポリマー(B-3)(水酸基価30.1mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/g、体積固有抵抗値1×105Ω・cm)を得た。
【0056】
<製造例4>[アニオン性ポリマー(B-4)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、ポリエチレングリコール(PEG、Mn300)67部、5-スルホイソフタル酸ジメチルエステルのナトリウム塩49部およびジブチルスズオキシド0.2部を仕込み、0.67kPaの減圧下で190℃まで昇温し、メタノールを留去しながら6時間エステル交換反応させ、1分子内にスルホン酸ナトリウム塩基を平均5個有するアニオン性ポリマー(B-4)(水酸基価29.6mgKOH/g、酸価0.4mgKOH/g、体積固有抵抗値2×106Ω・cm)を得た。
【0057】
<実施例1>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、変性ポリオレフィン(Aγ0-1)171.9部、ポリエチレングリコール(B-1)(PEG、Mn:3,000)126.3部、酸化防止剤[商品名「イルガノックス1010」、BASFジャパン(株)製]0.3部、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド1.5部を投入し、撹拌しながら220℃、0.13kPa以下の減圧下で6時間重合させて、粘稠なポリマーを得た。このポリマ-をベルト上にストランド状で取り出し、ペレット化することによって、ブロックポリマー(X-1)(Mn:27,000)を得た。
得られたブロックポリマー(X-1)について、後述の<評価方法>に従って、評価した。結果を表1に示す。
【0058】
<実施例2~7及び比較例1>
表1の使用原料(部)に従った以外は、実施例1と同様にして、各ブロックポリマー(X)を得た。結果を表1に示す。
【0059】
<評価方法>
(1)ブロックポリマーの外観黄色度(YI)
JISK7373に準拠して、試験片(100×100×2mm)について、測色色差計[ND-300A、日本電色工業(株)製]を用いてYIを測定し、以下の<評価基準>で評価した。
【0060】
<評価基準>
◎:YIが10未満
○:YIが10以上15未満
△:YIが15以上30未満
×:YIが30以上
【0061】
<実施例8~21及び比較例2~3>
表2に示す配合組成(部)に従って、配合成分をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機を備えたインフレーション成形機を用いて、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練し、各樹脂組成物(Y)を得た後、200℃で温調したダイから押出し成形して得たフィルムを引取速度が10m/min、ブロー比が2.0で空冷した後、巻き取り機により巻き取ることで、厚みが80μmの各成形品(Z)を得た。得られた各成形品(Z)について、後述の<評価方法>に従って、評価した。結果を表2に示す。
【0062】
<評価方法>
(1)成形性
上記のフィルムの作製におけるフィルムの成形性を、以下の<評価基準>で評価した。
<評価基準>
○:押出しがスムーズであり、かつ成形品(Z)の厚みが均一
×:押出しがスムーズではない、又は、成形品(Z)の厚みが不均一
【0063】
(2)ヒートシール強度
1.5mm巾に裁断したフィルムのうち筒状に成形されたフィルムの内側を重ね合わせ、そのT字剥離強度を、シール温度:130℃[(Z-1)~(Z-5)、(Z-11)~(Z-14)及び(比Z-1)使用時]又は160℃[(Z-6)~(Z-10)、(比Z-2)の場合]、シール圧力:0.2MPa、シール時間:1.0秒でヒートシールを行い、引張試験機にて100mm/分の引張速度、23℃、湿度50%RHの雰囲気下でヒートシール強度を測定し、以下の<評価基準>で評価した。
【0064】
<評価基準>
◎:ヒートシール強度が20N/1.5cm以上
○:ヒートシール強度が10N/1.5cm以上、20N/1.5cm未満
×:ヒートシール強度が10N/1.5cm未満
【0065】
(3)帯電防止性[ASTMD257(1984年)に準拠]
表面固有抵抗値(単位はΩ)で評価。フィルムから切り出した試験片(100×100mm)を用い、該試験片を23℃、湿度50%RHの条件で48時間静置後、超絶縁計[型番「R8340A」、アドバンテスト(株)製]により同条件の雰囲気下で測定した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
表1~2の結果から、本発明のブロックポリマー(X)は、比較のものと比べて、色相に優れる。また、熱可塑性樹脂組成物(Y)の成形性に優れ、熱可塑性樹脂組成物(Y)の成形品(Z)に、帯電防止性、ヒートシール性を与えることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のブロックポリマー(X)は、熱可塑性樹脂用改質剤として有用であり、とりわけ熱可塑性樹脂用帯電防止剤として有用である。