(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106339
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】長距離にわたって被試験デバイス(DUT)を試験するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01R 27/28 20060101AFI20240731BHJP
H04B 17/15 20150101ALI20240731BHJP
H04B 17/29 20150101ALI20240731BHJP
H04L 7/06 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
G01R27/28 Z
H04B17/15
H04B17/29
H04L7/06 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024010225
(22)【出願日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】18/101,997
(32)【優先日】2023-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Blu-ray
(71)【出願人】
【識別番号】514046574
【氏名又は名称】キーサイト テクノロジーズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(72)【発明者】
【氏名】キース・フレデリック・アンダーソン
【テーマコード(参考)】
2G028
5K047
【Fターム(参考)】
2G028BE01
2G028CG19
2G028CG24
2G028GL03
2G028KQ07
5K047AA03
5K047BB01
5K047GG10
5K047MM37
5K047MM38
5K047MM45
5K047MM49
(57)【要約】
【課題】方法及びシステムは、長距離にわたってDUTを試験するために第1のVNAと第2のVNAとを同期する。
【解決手段】本方法は、第2のVNAにおいて、第1のVNAからRF信号を受信することと、第2のVNAのRF信号とLO信号とを混合して、IF信号をADCに出力することと、第1のVNA内の第1の基準クロックと第2のVNA内の第2の基準クロックとの間の基準誤差比率を求めることと、基準誤差を所望のLO周波数に適用することによって、LO周波数を補正されたLO周波数に調整することと、RF信号と調整されたLO信号とを混合してIF信号を出力することと、第1の基準クロック又は第2の基準クロックに調整を行うことなく、基準誤差に合わせて補正される補正されたIF信号を出力するように調整されたサンプルレートでIF信号をリサンプリングすることとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数(RF)信号を送信するように構成される第1のベクトルネットワークアナライザ(VNA)であって、ここで、該第1のVNAは、第1の基準信号を提供するように構成される第1の基準クロックを備えるものである、第1のVNAと、
前記第1のVNAから長距離にわたって送信された前記RF信号を受信して測定することで測定されたRF信号を提供するように構成される第2のVNAであって、該第2のVNAは、第2の基準信号を提供するように構成される第2の基準クロックを備え、ここで、前記第2の基準クロックは、前記第1の基準クロックとは独立して動作するものである、第2のVNAと、
前記第2のVNAの局部発振器(LO)信号のLO周波数を調整して前記第1の基準クロックと前記第2の基準クロックとの間の基準誤差比率を求めることと、前記基準誤差比率を使用して前記LO周波数を補正することと、前記補正されたLO周波数の前記LO信号と前記測定されたRF信号とを混合して中間周波数(IF)信号を取得することと、前記第2のVNAの前記IF信号のデジタル化及びリサンプリングを制御して補正されたIF信号を出力することとによって、前記第1の基準クロックと前記第2の基準クロックとの間の基準誤差を補償するようにプログラミングされている処理ユニットと
を備える長距離にわたって被試験デバイス(DUT)を試験するシステム。
【請求項2】
前記第2のVNAは、
前記LO信号を発生させるように構成されるLOと、
前記測定されたRF信号と前記補正されたLO周波数の前記LO信号とを混合して、あるIF周波数の前記IF信号を出力するように構成される混合器と、
前記混合器によって出力された前記IF信号をデジタル化するように構成されるアナログ-デジタル変換器(ADC)と、
前記補正されたIF信号を出力するように調整されたサンプルレートで前記デジタル化されたIF信号をリサンプリングするように構成されるデジタル信号プロセッサ(DSP)と
を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記処理ユニットは、
前記IF周波数が所定の期待されるIF周波数に等しくなるまで、前記LOの前記LO周波数を調整し、前記混合器の前記出力を測定することと、
前記調整されたLO周波数及びIF周波数を減算又は加算し、差又は和を前記RF信号のRF周波数で除算することによって、前記測定されたRF信号の前記RF周波数の周波数誤差比率を計算することであって、ここで、前記基準誤差比率は、前記周波数誤差比率に等しいものであることと
によって、前記第1の基準クロックと前記第2の基準クロックとの間の前記基準誤差比率を求めるようにプログラミングされている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記LOがハイサイドLO混合を行う場合には、前記処理ユニットは、前記LO周波数から前記IF周波数を減算することによって、前記調整されたLO周波数と前記IF周波数との間の前記差を求めるようにプログラミングされ、
前記LOがローサイドLO混合を行う場合には、前記処理ユニットは、前記LO周波数に前記IF周波数を加算することによって、前記調整されたLO周波数と前記IF周波数との前記和を求めるようにプログラミングされているものである、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
長距離にわたって被試験デバイス(DUT)を試験するシステムであって、
(i)無線周波数(RF)周波数のRF信号を発生させるように構成される信号発生器と、第1の基準周波数の第1の基準信号を少なくとも前記信号発生器に提供するように構成される第1の基準クロックとを備える、第1のベクトルネットワークアナライザ(VNA)と、
(ii)第2の局部発振器(LO)周波数を有する第2のLO信号を発生させるように構成される第2のLOと、前記測定されたRF信号と前記第2のLO信号とを混合して、第2の中間周波数(IF)信号を出力するように構成される第2の混合器と、前記第2のIF信号をデジタル化するように構成される第2のアナログ-デジタル変換器(ADC)と、前記デジタル化された第2のIF信号をリサンプリングするように構成されるリサンプラと、第2の基準信号を少なくとも前記第2のLO及び前記第2のADCに提供するように構成される第2の基準クロックであって、該第2の基準クロックは、前記第1の基準クロックとは独立して動作するものである、第2の基準クロックとを備える、前記DUTを介して前記第1のVNAからの前記RF信号を受信して測定するように構成される第2のVNAと、
(iii)前記第1の基準クロックと前記第2の基準クロックとの間の基準誤差比率を求めることと、前記基準誤差比率を所望の第2のLO周波数に適用することによって、前記第2のLOの前記第2のLO周波数を補正された第2のLO周波数に調整することとを行うようにプログラミングされている、処理ユニットと
を備え、
前記第2の混合器は、前記測定されたRF信号と前記補正された第2のLO周波数の前記第2のLO信号とを混合して、前記第2のIF信号を出力するように更に構成され、
前記リサンプラは、前記基準誤差比率に合わせて補正される補正されたものである第2のIF信号を出力するように調整されたサンプルレートで前記デジタル化された第2のIF信号をリサンプリングするように構成され、前記第2のVNAは、前記第1の基準クロック又は前記第2の基準クロックに調整を行うことなく、前記第1の基準信号の第1の基準周波数に等しい第2の基準周波数の前記第2の基準信号を使用するように見えるものである、システム。
【請求項6】
前記第2のLOの前記第2のLO信号の第2のLO周波数を調整することであって、前記第2の混合器は、前記測定されたRF信号と前記第2のLO信号とを混合して、前記第2のIF信号を出力するものであることと、
前記第2のIF信号の第2のIF周波数が所定の期待されるIF周波数に等しくなるまで、前記第2の混合器の前記出力を測定することと、
前記調整された第2のLO周波数と前記第2のIF周波数との間の数学的関係を求め、前記数学的関係を前記RF信号の前記RF周波数で除算することによって、前記測定されたRF信号の前記RF周波数の周波数誤差比率を計算することであって、ここで、前記基準誤差比率は、前記周波数誤差比率に等しいものであることと
によって、前記処理ユニットは、前記第1の基準クロックと前記第2の基準クロックとの間の前記基準誤差比率を求めるようにプログラミングされている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2のLOがハイサイドLO混合を行う場合には、前記処理ユニットは、前記第2のLO周波数から前記第2のIF周波数を減算することによって、前記調整された第2のLO周波数と前記第2のIF周波数との間の前記数学的関係を求めるようにプログラミングされ、
前記第2のLOがローサイドLO混合を行う場合には、前記処理ユニットは、前記第2のLO周波数に前記第2のIF周波数を加算することによって、前記調整された第2のLO周波数と前記第2のIF周波数との間の前記数学的関係を求めるようにプログラミングされているものである、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1のVNAは、
第1のLO周波数を有する第1のLO信号を発生させるように構成される第1のLOと、
前記RF信号と前記第1のLO信号とを混合して、第1のIF信号を出力するように構成される第1の混合器であって、ここで、前記第1のIF信号は第1のIF周波数を有するものである、第1の混合器と、
前記第1のIF信号をデジタル化するように構成される第1のADCと、
前記第1のIF周波数に実質的に等しい第1の数値制御発振器(NCO)周波数を有する第1のNCO信号を発生させるように構成される第1のNCOと、
前記第1のIF信号と前記第1のNCO信号とを混合して、前記RF信号の第1の振幅値及び第1の位相値を出力するように構成される第1のNCO混合器と
を更に備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2のVNAは、
前記第2のIF周波数に実質的に等しい第2のNCO周波数を有する第2のNCO信号を発生させるように構成される第2のNCOと、
前記第2のIF信号と前記第2のNCO信号とを混合して、前記測定されたRF信号の第2の振幅値及び第2の位相値を出力するように構成される第2のNCO混合器と
を更に備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理ユニットは、
前記RF信号の第1のRF周波数及び第2のRF周波数の前記第1の位相値と前記第2の位相値との間の第1の位相の比率及び第2の位相の比率をそれぞれ求めることと、
前記第2の位相の比率から前記第1の位相の比率を減算することによって、位相差を求めることと、
前記求められた位相差の負数を、前記RF信号の前記第1のRF周波数と前記第2のRF周波数との間の差で除算することによって、前記DUTを通る前記RF信号の電気的遅延を求めることと
を行うように更にプログラミングされている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
長距離にわたって被試験デバイス(DUT)を試験するために第1のベクトルネットワークアナライザ(VNA)と第2のVNAとを同期する方法であって、前記第1のVNAは、第1の局部発振器(LO)周波数を有する第1のLO信号を発生させる第1のLOと、第1のアナログ-デジタル変換器(ADC)とを備え、前記第2のVNAは、第2のLO周波数を有する第2のLO信号を発生させる第2のLOと、第2のADCとを備え、前記第1のVNA及び前記第2のVNAは、基準クロック又はトリガ信号を共有しないものであり、
前記第2のVNAにおいて、前記第1のVNAからの無線周波数(RF)信号を受信して測定することであって、ここで、前記RF信号は連続波(CW)信号であることと、
前記第2のVNAの前記測定されたRF信号と前記第2のLO信号とを混合して、第2の中間周波数(IF)信号を前記第2のADCに出力することであって、ここで、前記第2のIF信号は、第2のIF周波数を有するものであることと、
第1の基準クロックと第2の基準クロックとの間の基準誤差比率を求めることであって、ここで、前記第1の基準クロックは、第1の基準信号を少なくとも前記第1のLO及び前記第1のADCに提供するように構成され、前記第2の基準クロックは、第2の基準信号を少なくとも前記第2のLO及び前記第2のADCに提供するように構成されているものであることと、
前記基準誤差比率を所望の第2のLO周波数に適用することによって、前記第2のLOの前記第2のLO周波数を、補正された第2のLO周波数に調整することと、
前記測定されたRF信号と、前記補正された第2のLO周波数の前記第2のLO信号とを混合して、前記第2のIF信号を出力することと、
前記第2のIF信号をデジタル化することと、
前記基準誤差比率に合わせて補正される補正された第2のIF信号を出力するように調整されたサンプルレートで前記デジタル化された第2のIF信号をリサンプリングすることと
を含み、
前記第1の基準クロック又は前記第2の基準クロックに調整を行うことなく、前記第2のVNAは、前記第1の基準信号の第1の基準周波数に等しい第2の基準周波数の前記第2の基準信号を用いて動作するように見えるものである、方法。
【請求項12】
前記第1の基準クロックと前記第2の基準クロックとの間の前記基準誤差比率を求めることは、
前記測定されたRF信号と前記第2のLO周波数の前記第2のLO信号とを混合して、前記第2のIF信号を出力することと、
前記第2のIF周波数が所定の期待されるIF周波数に等しくなるまで、前記第2のLOの前記第2のLO周波数を調整することと、
前記調整された第2のLO周波数と前記第2のIF周波数との間の数学的関係を求め、該数学的関係を前記第1のVNAにおいて発生したままの前記RF信号のRF周波数で除算することによって、前記測定されたRF信号の前記RF周波数の周波数誤差比率を計算することであって、ここで、前記基準誤差比率は、前記周波数誤差比率に等しいものであることと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のVNAから前記第2のVNAまでの前記DUTを通る前記RF信号の電気的遅延を求めることを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記DUTを通る前記RF信号の前記電気的遅延を求めることは、
前記第1のVNAの前記第1のLO信号を前記第1のLO周波数に固定し、前記第2のVNAの前記第2のLO信号を前記補正された第2のLO周波数に固定することと、
前記RF信号を第1のRF周波数に設定し、前記第1のRF周波数の前記RF信号を前記第1のVNAから前記第2のVNAに送信することと、
前記RF信号の前記第1のRF周波数と、前記第1のLO信号の前記第1のLO周波数と、前記第2のLO信号の前記第2のLO周波数とを使用して、前記RF信号の第1の位相を測定することと、
前記RF信号を前記第1のRF周波数とは異なる第2のRF周波数に設定し、前記第2のRF周波数の前記RF信号を前記第1のVNAから前記第2のVNAに送信することと、
前記RF信号の前記第2のRF周波数と、前記第1のLO信号の前記第1のLO周波数と、前記第2のLO信号の前記第2のLO周波数とを使用して、前記RF信号の第2の位相を測定することと、
前記第2の位相から前記第1の位相を減算することによって、位相差を求めることと、
前記求められた位相差の負数を、前記RF信号の前記第2のRF周波数と前記第1のRF周波数との間の差で除算することによって、前記DUTを通る前記RF信号の前記電気的遅延を求めることと
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記DUTを通る前記RF信号の前記電気的遅延を求めることは、
第1のRF周波数及び第2のRF周波数のそれぞれで前記RF信号を前記第1のVNAから前記第2のVNAに送信することと、
前記第1のVNAにおいて前記第1のRF周波数及び前記第2のRF周波数のそれぞれで第1の数値制御発振器(NCO)を使用して、前記第1のLOによって出力される第1のIF信号の第1の位相値を求めることと、
前記第2のVNAにおいて前記第1のRF周波数及び前記第2のRF周波数のそれぞれで第2のNCOを使用して、前記第2のLOによって出力される前記第2のIF信号の第2の位相値を求めることと、
前記第1のRF周波数の前記第2の位相値から前記第1の位相値を減算することによって、前記RF信号の第1の位相を求めることと、
前記RF信号の前記第2のRF周波数の前記第2の位相値から前記第1の位相値を減算することによって、前記RF信号の第2の位相を求めることと、
前記第2の位相から前記第1の位相を減算することによって、位相差を求めることと、
前記求められた位相差の負数を、前記RF信号の前記第2のRF周波数と前記第1のRF周波数との間の差で除算することによって、前記DUTを通る前記RF信号の前記電気的遅延を求めることと
を含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ベクトルネットワークアナライザ(VNA:vector network analyzer)は、典型的には、VNAの試験ポートがともに物理的に近接及び同期している構成において、被試験デバイス(DUT:device under test)の測定を行うために使用される。例えば、試験ポートは、同じ局部発振器(LO:local oscillator)及び基準クロック(reference clock)を共有し、共通のトリガを有する。
【0002】
しかしながら、例えば、アンテナレンジ(antenna range)測定等、長距離にわたってDUTの測定を行うためにVNAを使用するとき、試験ポートを非常に遠隔に、例えば、異なる地理的ロケーションに置かなければならない。したがって、長距離にわたるDUTの測定は、分散VNA(distributed VNA)として協働する2つの1ポートVNAを使用して最も良く行われる。典型的には、分散VNAは、2つの試験ポート間で、局部発振器(LO)信号、基準(クロック)信号、及びトリガという3つの信号を共有することが必要になる。しかしながら、試験ポート間の長距離に起因して、特に2つのVNAの同期のタイミング及び動作に関して、これらの接続を確立するのは困難である。
【発明の概要】
【0003】
例示の実施形態は、以下の詳細な説明が添付図面の図とともに読まれたときに、以下の詳細な説明から最も良く理解される。様々な特徴部が必ずしも一律の縮尺で描かれていないことを強調しておく。実際、寸法は、論述内容を明瞭にするために任意に増減される場合がある。該当する場合及び実際的な場合にはどの箇所においても、同様の参照符号は同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】代表的な実施形態に係る、第1のベクトルネットワークアナライザ(VNA)及び第2のVNAを使用して、長距離にわたって被試験デバイス(DUT)を試験するシステムを示す簡略ブロック図である。
【
図2】代表的な実施形態に係る、第1のVNA及び第2のVNAを使用して、長距離にわたってDUTを通る無線周波数(RF:radio frequency)信号の電気的遅延を測定するシステムを示す簡略ブロック図である。
【
図3】代表的な実施形態に係る、第1のVNA及び第2のVNAを使用して、長距離にわたってDUTを試験するために第1のVNAと第2のVNAとを同期する方法の流れ図である。
【
図4】代表的な実施形態に係る、広範囲にわたってDUTを試験するために、第1のVNA内の第1の基準クロックと第2のVNA内の第2の基準クロックとの間の基準誤差比率(reference error ratio)を求める方法の流れ図である。
【
図5】代表的な実施形態に係る、第1のVNA及び第2のVNAを使用して、広範囲にわたってDUTを通るRF信号の電気的遅延を測定する方法の流れ図である。
【
図6】代表的な実施形態に係る、長距離にわたってDUTを試験するコンピュータシステムの一例を示す簡略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の詳細な説明では、限定ではなく説明を目的として、具体的な詳細を開示する代表的な実施形態が、本教示による一実施形態の十分な理解を提供するために述べられる。既知のシステム、デバイス、材料、動作の方法及び製造の方法の説明は、代表的な実施形態の説明を不明瞭にすることを回避するために省略される場合がある。それでもなお、当業者の認識範囲内にあるシステム、デバイス、材料及び方法は、本教示の範囲内にあり、代表的な実施形態に従って使用することができる。本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態の説明のみを目的とするものであり、限定を意図するものでないことが理解されるべきである。定義された用語は、それらの技術的意味及び科学的意味に加えて、本教示の技術分野において一般に理解され、受け入れられている通りのものである。
【0006】
第1、第2、第3等の用語が、様々な要素又は構成要素を説明するために本明細書において使用される場合があるが、これらの要素又は構成要素は、これらの用語によって限定されるべきでないことが理解されるであろう。これらの用語は、或る要素又は構成要素を別の要素又は構成要素から区別するためにのみ使用される。したがって、以下で論述する第1の要素又は構成要素は、本開示の教示から逸脱することなく第2の要素又は構成要素と呼ぶこともできる。
【0007】
本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態の説明のみを目的とするものであり、限定を意図するものでない。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、用語の単数形(「a」、「an」、及び「the」)は、文脈上明らかにとりたてて指定がなされていない限り、単数形及び複数形の双方を含むことを意図されている。加えて、用語「~備える」、及び/又は「~を含む」、及び/又は同様の用語は、本明細書において使用されるとき、明記された特徴、要素、及び/又は構成要素が存在することを指定するが、1つ以上の他の特徴、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。本明細書において使用される場合、用語「及び/又は」は、列挙された関連項目のうちの1つ以上の全ての組み合わせを含むことを意味する。
【0008】
とりたてて記載がない限り、要素又は構成要素が別の要素又は構成要素に「接続される」、「結合される」、又は「隣接する」と言うとき、これは、その要素又は構成要素をその別の要素又は構成要素に直接的に接続又は結合することもできるし、介在する要素又は構成要素が存在する場合もあることと理解される。すなわち、これらの用語及び同様の用語は、1つ以上の中間にある要素又は構成要素が、2つの要素又は構成要素を接続するために用いられることがある場合を含む。ただし、要素又は構成要素が別の要素又は構成要素に「直接接続される」と言うとき、これは、それらの2つの要素又は構成要素が、中間にある又は介在する要素又は構成要素を伴わずに互いに接続される場合のみを含む。
【0009】
上記を考慮すると、本開示は、したがって、その様々な態様、実施形態及び/又は特定の特徴若しくは部分構成要素のうちの1つ以上を通じて、以下で具体的に言及される利点のうちの1つ以上を引き出すように意図されている。限定することなく説明を目的として、具体的な詳細を開示する例示の実施形態が、本教示による一実施形態の十分な理解を提供するために述べられる。ただし、本明細書に開示される具体的な詳細から外れているが本開示と合致する他の実施形態も、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものである。その上、よく知られた装置及び方法の説明は、例示の実施形態の説明を不明瞭にしないように省略される場合がある。そのような方法及び装置は、本開示の範囲内にある。
【0010】
様々な実施形態は、LO信号、基準信号、又はトリガを2つの試験ポート間で共有しなければならないことはなく、これらの信号の必要性を排除するためにデジタル信号処理を使用して、長距離のDUTを測定する分散VNAを提供する。これにより、分散VNAの構成がより単純になる。
【0011】
代表的な実施形態によれば、長距離にわたってDUTを試験するシステムが提供される。本システムは、無線周波数(RF)信号を送信するように構成されるVNAであって、ここで、第1のVNAは、第1の基準信号を提供するように構成される第1の基準クロックを備えるものである、VNAと、第1のVNAから長距離にわたって送信されたRF信号を受信して測定することで測定されたRF信号を提供するように構成される第2のVNAであって、第2のVNAは、第2の基準信号を提供するように構成される第2の基準クロックを備え、ここで、第2の基準クロックは、第1の基準クロックとは独立して動作するものである、第2のVNAと、第2のVNAの局部発振器(LO)信号のLO周波数を調整して第1の基準クロックと第2の基準クロックとの間の基準誤差比率(reference error ratio)を求めることと、基準誤差比率を使用してLO周波数を補正することと、補正された(すなわち、補正後の)LO周波数のLO信号と測定されたRF信号とを混合して、デジタル化される中間周波数(IF:intermediate frequency)信号を取得することと、第2のVNAのデジタル化された(すなわち、デジタル化後の)IF信号のリサンプリングを制御して補正されたIF信号を出力することとによって、第1の基準クロックと第2の基準クロックとの間の基準誤差を補償するようにプログラミングされている処理ユニットとを備える。
【0012】
代表的な実施形態によれば、長距離にわたってDUTを試験するシステムが提供される。本システムは、第1のVNAと、第2のVNAと、処理ユニットとを備える。第1のVNAは、連続波(CW:continuous wave)信号とすることができるRF周波数のRF信号を発生させるように構成される信号発生器と、第1のLO周波数を有する第1のLO信号を発生させるように構成される第1のLOと、RF信号と第1のLO信号とを混合して、第1の中間周波数(IF)信号を出力するように構成される第1の混合器であって、第1のIF信号は第1のIF周波数を有する、第1の混合器と、第1のIF信号をデジタル化するように構成される第1のADCと、第1の基準信号を信号発生器と、第1のLOと、第1のADCとに提供するように構成される第1の基準クロックとを備える。第2のVNAは、DUTを介して第1のVNAからのRF信号を受信して測定するように構成され、第2のLO周波数を有する第2のLO信号を発生させるように構成される第2のLOと、測定されたRF信号と第2のLO信号とを混合して、第2のIF信号を出力するように構成される第2の混合器と、第2のIF信号をデジタル化するように構成される第2のADCと、デジタル化された第2のIF信号をリサンプリングするように構成されるリサンプラ(resampler)と、第2の基準信号を少なくとも第2のLO及び第2のADCに提供するように構成される第2の基準クロックであって、ここで、第2の基準クロックは、第1の基準クロックとは独立して動作するものである、第2の基準クロックとを備える。処理ユニットは、第1の基準クロックと第2の基準クロックとの間の基準誤差比率を求めることと、基準誤差比率を所望の第2のLO周波数に適用することによって、第2のLOの第2のLO周波数を補正された第2のLO周波数に調整することとを行うようにプログラミングされている。第2の混合器は、測定されたRF信号と補正された第2のLO周波数の第2のLO信号とを混合して、第2のIF信号を出力するように更に構成され、リサンプラは、基準誤差比率に合わせて補正されたものである補正された第2のIF信号を出力するように調整された(すなわち、調整後の)サンプルレートでデジタル化された第2のIF信号をリサンプリングするように構成され、第2のVNAは、第1の基準クロック又は第2の基準クロックに調整を行うことなく、第1の基準信号の第1の基準周波数に等しい第2の基準周波数の第2の基準信号を使用するように見える。
【0013】
別の代表的な実施形態によれば、長距離にわたってDUTを試験するために第1のVNAと第2のVNAとを同期する方法が提供される。ここで、第1のVNAは、第1のLO周波数を有する第1のLO信号を発生させる第1のLOと、第1のADCとを備え、第2のVNAは、第2のLO周波数を有する第2のLO信号を発生させる第2のLOと、第2のADCとを備え、第1のVNA及び第2のVNAは、基準クロック又はトリガ信号を共有しない。本方法は、第2のVNAにおいて、CW信号とすることができる第1のVNAからのRF信号を受信することと、第2のVNAの測定されたRF信号と第2のLO信号とを混合して、第2のIF信号を第2のADCに出力することと、第1の基準クロックと第2の基準クロックとの間の基準誤差比率を求めることであって、第1の基準クロックは、第1の基準信号を少なくとも第1のLO及び第1のADCに提供するように構成され、第2の基準クロックは、第2の基準信号を少なくとも第2のLO及び第2のADCに提供するように構成されているものである基準誤差比率を求めることと、基準誤差比率を所望の第2のLO周波数に適用することによって、第2のLOの第2のLO周波数を、補正された第2のLO周波数に調整することと、測定されたRF信号と、補正された第2のLO周波数の第2のLO信号とを混合して、第2のIF信号を出力することと、第2のIF信号をデジタル化することと、基準誤差比率に合わせて補正されたものである補正された第2のIF信号を出力するように調整されたサンプルレートでデジタル化された第2のIF信号をリサンプリングすることとを含む。第2のVNAは、第1の基準クロック又は第2の基準クロックに調整を行うことなく、第1の基準信号の第1の基準周波数に等しい第2の基準周波数の第2の基準信号を用いて動作するように見える。
【0014】
図1は、代表的な実施形態に係る、長距離にわたってDUTを試験するシステムを示す簡略ブロック図である。
【0015】
図1を参照すると、システム100は、長距離にわたってDUT105を通るRF信号を測定するように構成される第1のVNA110及び第2のVNA120を含む分散VNAを提供する。DUT105は、RF信号を通信するために、第1のVNA110の第1の試験ポート111に接続される第1のアンテナ106と、第2のVNA120の第2の試験ポート121に接続される第2のアンテナ108との一方又は両方を備えることができる。ここで、システム100は、例えば、アンテナ範囲を測定することができる。「長距離」とは、信号喪失を生じるのに十分大きいことで測定雑音をもたらし、第1のVNA110及び第2のVNA120が、LO信号、基準クロック信号、及び共通トリガ信号を正確に共有することを妨げる、第1の試験ポート111と第2の試験ポート121との間の距離を指す。例えば、第1の試験ポート111と第2の試験ポート121との間の距離は、約10メートルを超えると長距離とみなすことができる。第1のVNA110及び第2のVNA120は、1ポートデバイスとして示されているが、第1のVNA110及び第2のVNA120は、本教示の範囲から逸脱することなく、2つ以上の試験ポートを有することができることを理解されたい。同様に、2ポートデバイスとして示されているDUT105は、例えば、アンテナアレイ等のマルチポートデバイス(すなわち、3つ以上のポート)とすることができる。
【0016】
システム100は、第1のVNA110及び第2のVNA120を制御し、それぞれの測定値を組み合わせ、結果を表示するように概して構成されるコンピュータシステム150を更に備える。コンピュータシステム150は、有線及び/又は無線接続(つまり、有線接続又は無線接続あるいはそれらの両方)を介して第1のVNA110及び第2のVNA120のそれぞれと通信することができる。第1のVNA110及び第2のVNA120は、LO信号、基準クロック信号、及びトリガ信号を共有することができないため、後述するように、ファームウェア及びデジタル信号処理を使用してコンピュータシステム150によって同期される。
図1は1つのコンピュータシステム150を示しているが、本教示の範囲から逸脱することなく、他の構成を実施することができることを理解されたい。例えば、システム100は、2つの処理ユニットを備えることができ、第1の処理ユニットは第1のVNA110に接続され、第2の処理ユニットは第2のVNAに接続され、第1の処理ユニット及び第2の処理ユニットは、有線又は無線ローカルエリアネットワーク(LAN)を介して互いに接続される。コンピュータシステム150については、
図3を参照して以下により詳細に記載する。
【0017】
第1のVNA110は、RF周波数のRF信号を発生させるように構成される第1のRF信号発生器112と、第1のLO周波数の第1のLO信号を発生させるように構成される第1のLO113とを備える。第1のRF信号発生器112は、例えば、任意波形発生器(AWG:arbitrary waveform generator)又はダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS:direct digital synthesizer)とすることができる。較正のために、第1のRF信号発生器112によって発生するRF信号は、連続波(CW)信号とすることができ、パイロットトーン(pilot tone)と称される。
【0018】
第1のVNA110は、順方向性結合器(forward directional coupler)114と、第1の混合器115と、第1のアナログ-デジタル変換器(ADC:analog to digital converter)116と、第1のデジタル信号プロセッサ(DSP:digital signal processor)119とを更に備える。順方向性結合器114は、第1のRF信号発生器112によって発生したRF信号を第1の混合器115に結合するように構成され、第1の混合器115は、RF信号を第1のLO113からのLO信号と混合して、第1の中間周波数(IF)周波数を有する第1のIF信号を出力する。第1のADC116は、第1の混合器115によって出力された第1のIF信号をデジタル化し、第1のDSP119は、デジタル化された第1のIF信号の信号処理を行う。処理された第1のIF信号は、例えば、第1のDSP119によってコンピュータシステム150に出力することができる。
【0019】
また、第1のVNA110は、第1の基準信号を発生させるように構成される第1の基準クロック117と、第1のトリガ信号を発生させるように構成される第1のトリガ源118とを備える。第1の基準信号及び第1のトリガ信号は、少なくとも第1のRF信号発生器112及び第1のADC116に提供される。第1のADC116に関して、第1の基準信号は、第1の混合器115によって出力された第1のIF信号をサンプリングする第1のサンプルレートを生み出す。
【0020】
第1のVNA110は、DUT105から受信されたRF信号を別の混合器に結合するように構成される逆方向性結合器(reverse directional coupler)を備えることもでき、この別の混合器は、受信されたRF信号を第1のLO113からのLO信号と混合して、受信されたRF信号に対応するIF信号を出力する。第1のVNA110は、IF信号をデジタル化する別のADCを備えることもできる。しかしながら、本明細書に記載の実施形態は、第1のVNA110から第2のVNA120へのRF信号の送信を伴い、したがって、逆方向性結合器又は追加の混合器及びADCの使用を含まない。したがって、明確化のために、これらの要素は
図1において省略されている。
【0021】
第2のVNA120は、別のRF信号を発生させるように構成される第2のRF信号発生器(図示せず)と、第2のLO周波数の第2のLO信号を発生させるように構成される第2のLO123とを備える。第2のVNA120は、逆方向性結合器124と、第2の混合器125と、第2のADC126と、第2のDSP130とを更に備える。方向性結合器124は、第1のRF信号発生器112によって発生し、第2の試験ポート121を介して受信されたRF信号を第2の混合器125に結合するように構成されている。第2の混合器125は、RF周波数の受信されたRF信号を、第2のLO周波数の第2のLO123からの第2のLO信号と混合して、第2のIF周波数を有する第2のIF信号を出力する。第2のADC126は、第2の混合器125によって出力された第2のIF信号をデジタル化する。
【0022】
また、第2のVNA120は、第2の基準信号を発生させるように構成される第2の基準クロック127と、第2のトリガ信号を発生させるように構成される第2のトリガ源(trigger source)128とを備える。第2の基準信号及び第2のトリガ信号は、少なくとも第2のRF信号発生器及び第2のADC126に提供される。ここで、第2の基準信号は、第2の混合器125によって出力された第2のIF信号をサンプリングする第2のADC126の第2のサンプルレートを生み出す。
【0023】
第2のVNA120は、リサンプラ129を更に備える。リサンプラ129は、後述するように、第1の基準信号と第2の基準信号との間の差からもたらされる基準誤差比率を補正するために、第2のADC126によって出力されたものであるデジタル化された第2のIF信号をリサンプリングするように構成されている。リサンプラ129は、例えば、第2のDSP130によって実施される既知のソフトウェアフィルタ又はアルゴリズムとすることができるが、代替的に、リサンプラ129は、コンピュータシステム150によって実施されてもよい。リサンプラ129に送信されるデータは、第2の基準クロック127からの第2の基準信号によって規定されるレートで、第2のADC126から同期して読み出しされる(clocked out)。第2のDSP130は、リサンプリングされた第2のIF信号の信号処理を行い、例えば、処理された第2のIF信号をコンピュータシステム150に出力することができる。一実施形態において、第2のDSP130は、リサンプラ129を備えることができる。
【0024】
第2のVNA120は、第2のRF信号発生器によって発生したRF信号を別の混合器に結合するように構成される順方向性結合器を備えることもでき、この別の混合器は、発生したRF信号を第2のLO123からのLO信号と混合して、発生したRF信号に対応するIF信号を出力する。第2のVNA120は、IF信号をデジタル化する別のADCを備えることもできる。しかしながら、ここでも、本明細書に記載の実施形態は、第1のVNA110から第2のVNA120へのRF信号の送信を伴うため、順方向性結合器並びに追加の混合器及びADCは使用されない。したがって、明確化のために、これらの要素は
図1において省略されている。
【0025】
更に後述するように、システム100は、第1の基準クロック117又は第2の基準クロック127のいずれも実際に調整することなく、第1のVNA110と第2のVNA120とを同期して、広範囲にわたるDUT105の試験を可能にするように構成されている。試験前の較正期間中、第1のRF信号発生器112は、CW信号(パイロットトーン)を、所定のRF周波数を有するRF信号として発生させる。RF信号は、第1のアンテナ106及び第2のアンテナ108を使用して、第1のVNA110によって第2のVNA120に送信される。DUT105は、較正中に存在しても存在しなくてもよい。DUT105が存在する場合、RF信号は、第1のVNA110から第2のVNA120に送信される際にDUT105を通過する。
【0026】
第1のVNA110によって送信されたRF信号は、第2のVNA120の第2の試験ポート121において受信され、測定されたRF信号として測定される。DUT105が周波数変換デバイスでない場合、又はDUT105が存在しない場合には、測定されたRF信号は、第1のVNA110によって送信されたRF信号と実質的に同じRF周波数であって、このRF周波数に対して周波数誤差(後述する)だけオフセットされたものを有する。DUT105が混合器等の周波数変換デバイスである場合には、測定されたRF信号は、第1のVNA110によって送信されたRF信号の周波数変換後にDUT105によって出力された目標RF信号と実質的に同じRF周波数を有し、測定されたRF信号のRF周波数は、目標RF信号周波数に対して周波数誤差だけオフセットされる。測定されたRF信号は、方向性結合器124によって第2の混合器125に結合される。第2の混合器125は、測定されたRF信号と第2のLO123によって発生した第2のLO信号とを混合し、第2のIF信号を出力する。上述したように、測定されたRF信号はRF周波数を有し、第2のLO信号は第2のLO周波数を有し、得られる第2のIF信号は、RF周波数と第2のLO周波数との間の差によって求められる第2のIF周波数を有する。
【0027】
コンピュータシステム150は、第1の基準クロック117によって提供される第1の基準信号と第2の基準クロック127によって提供される第2の基準信号との間の基準誤差比率を、第2のLO周波数及び第2のIF周波数に基づいて求める。基準誤差比率(Eref)は、第1の基準信号の第1の基準周波数(Ref1)と、第2の基準信号の第2の基準周波数(Ref2)との比として定義される(Eref=Ref1/Ref2)。第1の基準周波数は、第2のVNA120から見て第2の基準周波数とは異なるため、第1の基準信号は、その差の計算においてエラー状態にあると想定される。重要なことに、様々な実施形態によれば、第2の基準クロック127は、第2の基準信号の第2の基準周波数が、第1の基準信号の第1の基準周波数と実際に一致するように調整されない。同様に、第1の基準クロック117は、第1の基準信号の第1の基準周波数が、第2の基準信号の第2の基準周波数と実際に一致するように調整されない。むしろ、第1の基準周波数及び第2の基準周波数が変更されないまま、基準誤差比率は求められ、補正される。第2のVNA120は、第2の基準周波数が実際に第1の基準周波数に設定されているかのように測定する。
【0028】
特に、コンピュータシステム150は、第2の混合器125によって出力された第2のIF信号の第2のIF周波数をモニタリングし、第2のIF周波数が期待されるIF周波数に等しくなるまで、第2のLO123の第2のLO信号の第2のLO周波数を調整する。DUT105が周波数変換デバイスでない場合、又はDUT105が存在しない場合には、期待されるIF周波数は、当業者には明らかであるように、様々なシステム制約に基づいて事前に求められた第1のIF周波数と同じ周波数である。DUT105が周波数変換デバイスである場合には、期待されるIF周波数は、当業者には明らかであるように、DUT105の試験要件及び様々なシステム制約に基づいて事前に求められる。コンピュータシステム150は、その後、調整された第2のLO周波数と第2の(期待される)IF周波数との間の数学的関係(例えば、和又は差)を求め、この数学的関係を、第1のVNA110において第1のRF信号発生器112によって発生したままのRF信号のRF周波数(RF1)で除算することによって、測定されたRF信号のRF周波数における周波数誤差比率(ERF)を計算する。基準誤差比率(Eref)は、計算された周波数誤差比率(ERF)に等しい。
【0029】
すなわち、第2のVNA120は、第1のVNA110からRF信号(RF1)を受信し、対応する測定されたRF信号(RFMEAS)のRF周波数を測定し、これは、周波数誤差比率(ERF)を含み、RFMEAS=ERF*RF1によって示される。第2のLO123及び第2の混合器125がハイサイドLO混合(high-side LO mixing)を行う場合、第2のIF周波数(IF2)は、調整された第2のLO周波数(LO2adj)から測定されたRF信号(RFMEAS)を減算することによって求められる。
IF2=LO2adj-RFMEAS 式(1)
【0030】
測定されたRF信号(RFMEAS)がERF*RF1に等しいため、式(1)を以下のように記述することができる。
ERF*RF1=LO2adj-IF2 式(2)
【0031】
したがって、調整された第2のLO周波数(LO
2adj)と第2のIF周波数(IF
2)との間の数学的関係は、調整された第2のLO周波数(LO
2adj)と第2のIF周波数(IF
2)との間の差であり、RF周波数(RF
1)と周波数誤差比率(E
RF)との積に等しい。周波数誤差比率について式(2)を解くと以下となる。
【数1】
【0032】
同様に、第2のLO123及び第2の混合器125がローサイドLO混合を行う場合には、第2のIF周波数(IF2)は、測定されたRF信号(RFMEAS)から調整された第2のLO周波数(LO2adj)を減算することによって求められる。
IF2=RFMEAS-LO2adj 式(4)
【0033】
測定されたRF信号(RFMEAS)がERF*RF1に等しいため、式(4)を以下のように記述することができる。
ERF*RF1=LO2adj+IF2 式(5)
【0034】
したがって、調整された第2のLO周波数と第2のIF周波数との間の数学的関係は、調整された第2のLO周波数(LO
2adj)に第2のIF周波数(IF
2)を加算することによって求められ、RF周波数(RF
1)と周波数誤差比率(E
RF)との積に等しい。周波数誤差比率について式(5)を解くと以下となる。
【数2】
【0035】
そのため、コンピュータシステム150は、第1の基準周波数(Ref1)又は第2の基準周波数(Ref2)のいずれの値も知る必要なく、第1の基準信号と第2の基準信号との基準誤差比率(Eref)を計算することができる。
【0036】
コンピュータシステム150は、その後、基準誤差比率を使用したスケーリングによって基準誤差(reference error)を補償する、第2のLO123によって発生した第2のLO信号の補正された第2のLO周波数を求める。特に、コンピュータシステム150は、基準誤差比率(Eref)を所望の第2のLO周波数に適用して、補正された第2のLO周波数を求める。DUT105が周波数変換デバイスでない場合、又はDUT105が存在しない場合には、所望の第2のLO周波数は、第1のLO信号の第1のLO周波数と同じ周波数である。DUT105が周波数変換デバイスである場合には、所望の第2のLO周波数は事前に求められ、上述した期待されるIF周波数の値をもたらす。例えば、コンピュータシステム150は、所望の第2のLO周波数(LO2desired)に基準誤差比率(Eref)を乗算して、補正された第2のLO周波数(LO2corrected)を取得することができる。
LO2corrected=LO2desired*Eref 式(7)
【0037】
コンピュータシステム150は、第2のLO123に入力されたLO周波数を制御して、補正された第2のLO周波数の第2のLO信号を発生させる。例えば、第2のLO123は、例えば、フラクショナルN型ループ(fractional-n loop)又はDDSと位相ロックされた電圧制御発振器(VCO:voltage controlled oscillator)とすることができる。
【0038】
第2の混合器125は、測定されたRF信号と、基準誤差比率に合わせて調整されたものである補正された第2のLO周波数の第2のLO信号とを混合し、期待される第2のIF周波数の第2のIF信号を出力する。第2のADC126は、第2の基準信号に応答した第2のサンプルレートで第2のIF信号をデジタル化し、リサンプラ129は、基準誤差比率を補正するように調整されたサンプルレートで第2のADC126によって出力されたデジタル化された第2のIF信号をリサンプリングする。調整されたサンプルレートは、第2の基準周波数(Ref2)と基準誤差比率(Eref)との積である。結果として、第2のVNA120は、第1の基準クロック117又は第2の基準クロック127に調整を行うことなく、第1の基準信号に等しい第2の基準信号を用いて動作するように見える。
【0039】
比較として、従来のシステムは、様々な代替手段によって基準誤差を補正することを試みるものであるが、いずれも第1のVNA及び第2のVNA並びに処理ユニットに加えてハードウェアの使用が必要になる。例えば、光ファイバ又はアンテナを使用して、基準信号を一方のVNAから他方に送信することができる。しかしながら、これには、光ファイバ又はアンテナを追加する費用が必要になる。全地球測位衛星(GPS:global positioning satellite)受信機を、それぞれが同様の基準信号を発生させるように、VNAのそれぞれの中に設置することができる。しかしながら、これには、GPS受信機を両方のVNAサイトに設置する費用が必要になる。或いは、Stickleらに対する米国特許第10,386,444号に記載されているように、基準誤差比率は、第1のVNAの第1の基準信号と第2のVNAの第2の基準信号との商(Ref1/Ref2)として測定することができ、その後、第2のVNAの基準クロックは、第2の基準信号が第1の基準信号に一致するまで調整される。しかしながら、これには、第2のVNA内の基準クロックを調整する能力が必要になり、これには、追加の特殊なハードウェアが必要になる。
【0040】
様々な実施形態において、第1のVNA110と第2のVNA120とが、第1の基準クロック117及び第2の基準クロック127に関して有効に同期されると、DUT105を通るRF信号の遅延を求めることができる。
図2は、代表的な実施形態に係る、長距離にわたってDUTを通るRF信号の電気的遅延を測定するシステムを示す簡略ブロック図である。
【0041】
図2を参照すると、システム100’は、
図1のシステム100と実質的に同じであり、ここでは、第1のVNA110内の第1のDSP119及び第2のVNA120内の第2のDSP130がより詳細に示されている。特に、第1のDSP119は、VNA1複合数値制御発振器(NCO:numerically controlled oscillator)211と第1のホモダイン混合器(homodyne mixer)212とを備え、第2のDSP130は、第2の複合NCO221と第2のホモダイン混合器222とを備える。比較として、第1の混合器115及び第2の混合器125のそれぞれは、ヘテロダイン混合器である。システム100の他の要素はシステム100’内に存在するが、
図2では便宜上示されていない。
【0042】
第1のホモダイン混合器212は、第1のADC116によって出力されたデジタル化された第1のIF信号を、第1の複合NCO211によって発生したVNA1 NCO信号と混合し、第1のRF信号発生器112によって発生したRF信号の振幅及び位相を含む対応するVNA1複合信号を出力するように構成されるデジタル混合器である。VNA1 NCO信号のVNA1 NCO周波数は、DCへのミックスダウンを可能にする第1のIF周波数と同じである。同様に、第2のホモダイン混合器222は、リサンプラ129によって出力されたデジタル化及びリサンプリングされた第2のIF信号を、第2の複合NCO221によって発生したVNA2 NCO信号と混合し、方向性結合器124からの測定されたRF信号の振幅及び位相を含む対応するVNA2複合信号を出力するように構成されるデジタル混合器である。VNA2 NCO信号のVNA2 NCO周波数は、DCへのミックスダウンを可能にする第2のIF周波数と同じである。
【0043】
概して、電気的遅延は、第1のRF信号発生器112によって発生したRF信号を2つの異なるRF周波数に設定し、第1の複合NCO211によって発生した第1のNCO信号及び第2の複合NCO221によって発生した第2のNCO信号のそれぞれを、2つの異なるRF周波数にそれぞれ対応する2つの異なる第1のNCO周波数及び第2のNCO周波数に設定することによって、求められる。第1の複合NCO211及び第2の複合NCO221は、第1の複合信号及び第2の複合信号の2つのセ組を出力する。2つのRF信号の位相の変化は、第1の複合信号及び第2の複合信号の2つの組の位相に基づいて求められ、2つのRF信号の周波数の変化は、2つの異なるRF周波数の間の差である。電気的遅延は、位相の変化と周波数の変化との商である。
【0044】
より詳細には、RF信号の電気的遅延を求めるために、第1のLO113の第1のLO周波数は固定され、第2のLO123の第2のLO周波数は固定され、測定全体を通して固定されたままである。したがって、第1のLO113及び第2のLO123の未知の位相は、測定値からコモンモード除去がされ(common-mode out)る。
【0045】
その後、RF信号のRF周波数は、第1の周波数(RFx)に設定され、第1のNCO信号は、第1のNCO周波数(NCO1x)に設定され、第2のNCO信号は、第1のNCO周波数に等しい第2のNCO周波数(NCO2x)に設定される。第1のNCO周波数及び第2のNCO周波数は、RF信号の第1の周波数に対応して設定される。すなわち、第1の複合NCO211及び第2の複合NCO221は、第1のIF信号及び第2のIF信号をホモダイン検出する(homodyne)ため、第1のNCO周波数及び第2のNCO周波数は、第1のIF周波数及び第2のIF周波数にそれぞれ等しい。これに応答して、第1のホモダイン混合器212は、第1の複合信号の位相値(Ax)を出力し、第2のホモダイン混合器222は、第2の複合信号の位相値(Bx)を出力する。RF信号の第1の位相(Phase1)は、第1の信号の位相値と第2の複合信号の位相値との商(B1x/A1x)として求められる。
【0046】
次に、RF周波数は、第2の周波数(RFy)に設定され、第1のNCO信号は、調整された第1のNCO周波数(NCO1y)に設定され、第2のNCO信号は、調整された第1のNCO周波数に等しい調整された第2のNCO周波数(NCO2y)に設定される。調整された第1のNCO信号及び調整された第2のNCO信号は、上述したように、RF信号の第2の周波数に対応して設定される。これに応答して、第1のホモダイン混合器212は、調整された第1の複合信号の位相値(Ay)を出力し、第2のホモダイン混合器222は、調整された第2の複合信号の位相値(By)を出力する。RF信号の第2の位相(Phase2)は、調整された第2の複合信号の位相値と調整された第1の複合信号の位相値との商(By/Ay)として求められる。
【0047】
周波数の変化は、RF信号の第2の周波数と第1の周波数との間の差として計算される(ΔFreq=RFy-RFx)。位相の変化は、第2の位相と第1の位相との間の差として計算される(ΔPhase=Phase2-Phase1)。その後、電気的遅延は、位相の負の変化を第1の周波数と第2の周波数との間の差で除算したものとして計算される(電気的遅延=-ΔPhase/ΔFreq)。遅延が求められると、RF信号の位相差も同様に、遅延を積分することによって求めることができる。
【0048】
概して、ADCの出力がホモダイン混合器によって測定される度に、典型的には、異なる振幅及び位相が報告される。しかしながら、様々な実施形態によれば、第1のVNA110の第1の複合信号及び第2のVNA120の第2の複合信号を測定するとき、例えば、Andersonらに対する米国特許第9,887,785号(2018年2月6日)に記載されているように、タイムスタンプが使用される。この特許は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。同じ時間を示すタイムスタンプ値が、第1のVNA110及び第2のVNA120の両方の測定値に割り当てられるが、第1の基準クロック117と第2の基準クロック127とが同期されていないため、時間は不揃いである。しかしながら、複数の測定値が同じ誤差を有するため、減算を行って位相差を求める場合、時間差はコモンモード除去される。したがって、第1の複合信号及び第2の複合信号の振幅及び位相は、RF周波数、第1のLO周波数、及び第2のLO周波数のそれぞれが測定期間中に変化しない限りは測定ごとに一定となる。
【0049】
電気的遅延を求める際にRF周波数並びに第1のNCO周波数及び第2のNCO周波数が変化するため、NCO位相は、タイムスタンプが正確になるように各測定期間の開始時にリセットされる。すなわち、第1の複合NCO211及び第2の複合NCO221のそれぞれが測定期間の開始時にリセットされるため、タイムスタンプにより、対応する第1のNCO周波数及び第2のNCO周波数の移動(NCO1x→NCO1y及びNCO2x→NOC2y)が未知の位相誤差を生じないことが確実になる。
【0050】
また、第2のADC126によって出力されたデジタル化された第2のIF信号がリサンプラ129によってリサンプリングされるため、タイムスタンプはリサンプリングされた第2のIF信号に適用される。さらに、電気的遅延を測定する場合、リサンプリングカーネル(resampling kernel)が初期較正中に開始し、稼働したままとなるため、時間は適切に蓄積される。しかしながら、これは、絶対遅延が測定されないため、分散のみを測定する場合には必要ない。
【0051】
図3は、代表的な実施形態に係る、第1のVNA及び第2のVNAを使用して、長距離にわたってDUTを試験するために第1のVNAと第2のVNAとを同期する方法の流れ図である。
図3の方法は、上述した第1のVNA110、第2のVNA120、及びコンピュータシステム150を備えるシステム100によって実施することができる。
【0052】
図3を参照すると、ブロックS311において、第1のVNAのRF信号発生器(例えば、第1のRF信号発生器112)によって発生したRF信号は、第2のVNAにおいて受信及び測定され、測定されたRF信号を提供する。RF信号は、CW信号とすることができ、RF周波数を有する。
【0053】
ブロックS312において、測定されたRF信号と第2のLO信号とが、第2のVNAの第2の混合器(例えば、第2の混合器125)によって混合され、第2のIF信号を第2のADC(例えば、第2のADC126)に出力する。第2のIF信号は第2のIF周波数を有する。
【0054】
ブロックS313において、第1の基準信号と第2の基準信号との間の基準誤差比率が求められる。第1の基準信号は、第1の基準クロック(例えば、第1の基準クロック117)によって発生し、第2の基準信号は、第2の基準クロック(例えば、第2の基準クロック127)によって発生する。第1の基準信号は、少なくとも第1のVNAのRF信号発生器、第1のADC(例えば、第1のADC116)及び第1のLO(例えば、第1のLO113)を駆動し、第2の基準信号は、少なくとも第2のVNAの第2のADC及び第2のLO(例えば、第2のLO123)を駆動する。
【0055】
図4は、代表的な実施形態に係る、ブロックS313によって示される、第1のVNA内の第1の基準クロックと第2のVNA内の第2の基準クロックとの間の基準誤差比率を求める方法の流れ図である。
図4の方法も同様に、上述した第1のVNA110及び第2のVNA120、並びにコンピュータシステム150を備えるシステム100によって実施することができる。
【0056】
図4を参照すると、ブロックS411において、測定されたRF信号と第2のLO周波数の第2のLO信号とが、第2の混合器において混合され、第2のIF信号を出力する。第2のLO周波数は、最初、所定の期待されるIF周波数を目標とするRF周波数をダウンコンバートするために、例えば、第1のLOの第1のLO周波数に等しい所望の第2のLO周波数に設定される。
【0057】
ブロックS412において、第2のLO周波数は、第2のLOにおいて、第2のIF周波数が所定の期待されるIF周波数に等しくなるまで調整される。期待されるIF周波数は、ADC及びDSPがその後の信号処理のために調節される第2のIF信号の周波数である。
【0058】
ブロックS413において、測定されたRF信号のRF周波数の周波数誤差比率が計算される。周波数誤差比率は、調整された第2のLO周波数と第2のIF周波数との間の数学的関係(例えば、差又は和)を求め、この数学的関係を、第1のVNAにおいて発生したままのRF信号のRF周波数で除算することによって、計算することができる。上述したように、第2のLO及び第2の混合器がハイサイドLO混合を行う場合には、調整された第2のLO周波数と第2のIF周波数との間の数学的関係は、第2のLO周波数から第2のIF周波数を減算することによって求められる。第2のLO123及び第2の混合器がローサイドLO混合(low-side LO mixing)を行う場合には、調整された第2のLO周波数と第2のIF周波数との間の数学的関係は、第2のLO周波数に第2のIF周波数を加算することによって求められる。基準誤差比率は、計算された周波数誤差比率に等しい。
【0059】
図3を再び参照すると、ブロックS314において、第2のLO周波数は、ブロックS413において求められた基準誤差比率を所望の第2のLO周波数に適用することによって、第2のLOにおいて補正された第2のLO周波数に調整される。上述したように、DUTが周波数変換デバイスでない場合、又はDUTが存在しない場合には、所望の第2のLO周波数は、第1のLOによって発生した第1のLO信号の第1のLO周波数と同じ周波数である。DUTが周波数変換デバイスである場合には、所望の第2のLO周波数は、期待されるIF周波数の値をもたらす事前に求められた周波数である。
【0060】
ブロックS315において、測定されたRF信号は、補正された第2のLO周波数にプログラミングされた第2のLO信号と混合され、所望の第2のIF周波数に基準誤差比率(ブロックS313にて求められた)を乗算したものに等しい第2のIF周波数の第2のIF信号を出力する。ここでも、DUTが周波数変換デバイスでない場合、又はDUTが存在しない場合には、所望の第2のIF周波数は第1のLO周波数と同じ周波数であり、DUTが周波数変換デバイスである場合には、所望の第2のIF周波数は、その後の信号処理の事前に求められた周波数である。
【0061】
ブロックS316において、第2のIF信号は、第2のADCによってデジタル化(測定)され、その後、「補正された第2のIF信号」と称される、基準誤差比率に合わせて補正されるデジタル化された第2のIF信号を出力するように調整されたサンプルレートでリサンプリングされる。したがって、第2のVNAは、第2の基準クロック(又は第1の基準クロック)に調整を行うことなく、第1の基準信号に等しい第2の基準信号とともに動作するように見える。
【0062】
ブロックS317において、RF信号の電気的遅延が、任意選択的に、後述するように、第1のVNAからDUTを通して第2のVNAに送信されるRF信号について求められる。
【0063】
図5は、代表的な実施形態に係る、第1のVNA及び第2のVNAを使用して、広範囲にわたってDUTを通るRF信号の電気的遅延を求める方法の流れ図である。
図5の方法は、上述した第1のVNA110、第2のVNA120、及びコンピュータシステム150を備えるシステム100、100’によって実施することができる。
【0064】
図5を参照すると、RF信号の電気的遅延を求めることは、ブロックS511において、第1のVNAにおいて第1のLO信号を第1のLO周波数にプログラミングすることと、第2のVNAにおいて第2のLO信号を補正された第2のLO周波数に固定することとを含む。第1のLO周波数及び第2のLO周波数は、設定されると、測定プロセス全体を通して一定のままにとどまる。
【0065】
ブロックS512において、RF信号は、第1のRF信号発生器の第1のRF周波数に設定される。第1のRF周波数のRF信号は、第1のVNAからDUTを通過して第2のVNAに送信される。
【0066】
ブロックS513において、RF信号の第1の位相は、RF信号の第1のRF周波数、第1のLO信号の第1のLO周波数、及び第2のLO信号の第2のLO周波数を使用して測定される。RF信号の第1の位相を測定することは、第1のVNAのRF信号と第1のLO信号とを混合して第1のIF信号を出力することと、第1のIF信号と第1のNCOからの第1のNCO信号とを混合して第1のIF信号の第1の位相値を出力することと、第2のVNAのRF信号と第2のLO信号とを混合して第2のIF信号を出力することと、第2のIF信号と第2のNCOからの第2のNCO信号とを混合して第2のIF信号の第2の位相値を出力することとを含む。第1の位相は、第2の位相値から第1の位相値を減算することによって求められる。
【0067】
ブロックS514において、RF信号は、第1のRF信号発生器の第1のRF周波数とは異なる第2のRF周波数に設定される。第2のRF周波数のRF信号は、第1のVNAからDUTを通過して第2のVNAに送信される。
【0068】
ブロックS515において、RF信号の第2の位相は、RF信号の第2のRF周波数、第1のLO信号の第1のLO周波数、及び第2のLO信号の第2のLO周波数を使用して測定される。RF信号の第1の位相を測定することは、第1のVNAにおいて発生したRF信号と第1のLO信号とを混合して調整された第1のIF信号を出力することと、調整された第1のIF信号と第1のNCO信号とを混合して調整された第1のIF信号の調整された第1の位相値を出力することと、第2のVNAのRF信号と第2のLO信号とを混合して調整された第2のIF信号を出力することと、調整された第2のIF信号と第2のNCO信号とを混合して調整された第2のIF信号の調整された第2の位相値を出力することとを含む。第2の位相は、調整された第2の位相値から調整された第1の位相値を減算することによって求められる。
【0069】
ブロックS516において、第1のRF周波数のRF信号と第2のRF周波数のRF信号との間の位相差が求められる。位相差は、第2の位相から第1の位相を減算することによって求めることができる。
【0070】
ブロックS517において、DUTを通るRF信号の電気的遅延は、求められた位相差の負数(negative:負の数)を、RF信号の第2のRF周波数と第1のRF周波数との間の差で除算することによって求められる。電気的遅延は、長距離にわたってRF信号を通すDUTによって導入される遅延時間である。
【0071】
もちろん、RF信号の電気的遅延は、本教示の範囲から逸脱することなく、他の技法を使用して求めることができる。代替的な実施形態において、電気的遅延は、RF信号を第1のRF信号発生器の第1のRF周波数及び第2のRF周波数に設定することと、RF信号を第1のVNAから第2のVNAに送信するが、NCO周波数は変更しないこととによって求めることができる。ここでも、LO周波数はそれぞれ固定されたままである。特に、第1のRF周波数及び第2のRF周波数は、第1の混合器及び第2の混合器において、RF信号を第1のLO信号及び第2のLO信号とそれぞれ混合しても、第1のIF信号の第1のIF周波数及び第2のIF信号の第2のIF周波数が変化しないように選択される。例えば、第1のRF周波数及び第2のRF周波数は、第1のLO周波数及び第2のLO周波数の上下に同じ量だけオフセットすることができ、これにより、第1のLO及び第2のLOのそれぞれと混合器とは、それぞれ第1のRF周波数及び第2のRF周波数に関して、ハイサイドLO混合からローサイドLO混合に切り替える。
【0072】
そうでなければ、本技法は
図5を参照して上述したものと実質的に同じである。すなわち、RF信号の第1の位相は、第1のVNAのRF信号と第1のLO信号とを混合して第1のIF信号を出力することと、第1のIF信号と第1のNCOからの固定された第1のNCO信号とを混合して第1のIF信号の第1の位相値を出力することと、第2のVNAのRF信号と第2のLO信号とを混合して第2のIF信号を出力することと、第2のIF信号と第2のNCOからの固定された第1のNCO信号とを混合して第2のIF信号の第2の位相値を出力することとによって、RF信号の第1のRF周波数、第1のLO信号の第1のLO周波数、及び第2のLO信号の第2のLO周波数を使用して測定される。第1の位相は、第2の位相値から第1の位相値を減算することによって求められる。
【0073】
同様に、RF信号の第2の位相は、第1のVNAにおいて発生したRF信号と第1のLO信号とを混合して調整された第1のIF信号を出力することと、調整された第1のIF信号と固定された第1のNCO信号とを混合して調整された第1のIF信号の調整された第1の位相値を出力することと、第2のVNAのRF信号と第2のLO信号とを混合して調整された第2のIF信号を出力することと、調整された第2のIF信号と固定された第2のNCO信号とを混合して調整された第2のIF信号の調整された第2の位相値を出力することとによって、RF信号の第2のRF周波数、第1のLO信号の第1のLO周波数、及び第2のLO信号の第2のLO周波数を使用して測定される。第2の位相は、調整された第2の位相値から調整された第1の位相値を減算することによって求められる。
【0074】
第1のRF周波数のRF信号と第2のRF周波数のRF信号との間の位相差は、第2の位相から第1の位相を減算することによって求められる。DUTを通るRF信号の電気的遅延は、求められた位相差の負数を、RF信号の第2のRF周波数と第1のRF周波数との間の差で除算することによって求められる。
【0075】
別の代替的な実施形態において、電気的遅延は、RF信号を変調することと、変調されたRF信号の包絡線の遅延を測定することとによって求めることができる。例えば、第1のVNAにおいて発生したRF信号は、2トーン信号とすることができ、ここで、2つのトーンは、上述したように、遅延を測定するための2つの異なる周波数(例えば、第1のRF周波数RFx及び第2のRF周波数RFy)に対応する。同様に、第1のVNAにおいて発生したRF信号は、3つ以上のトーンを有することができ、遅延は、3つ以上のRF周波数を用いた同様の技法を使用して測定される。
【0076】
別の代替的な実施形態において、電気的遅延は、第1のNCO及び第2のNCOをオンにすることと、それらの位相が測定中にコヒーレントのままとなるように稼働したままにすることとによって求めることができる。
【0077】
図6は、代表的な実施形態に係る、長距離にわたってDUTを試験するコンピュータシステムの一例を示す簡略ブロック図である。
【0078】
図6を参照すると、コンピュータシステム150は、処理ユニット610と、本明細書に記載のプロセスを実施するように処理ユニット610によって実行可能な命令を記憶するメモリ620と、ディスプレイ630と、ユーザインタフェース640と、ネットワークインタフェース650とを備える。処理ユニット610は、1つ以上の処理デバイスの代表であり、例えば
図3~
図5に述べた方法の様々なステップを含む、本明細書の様々な実施形態に記載の機能を行うソフトウェア命令を実行するように構成されている。処理ユニット610は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、配線された論理回路、又はそれらの組合せの任意の組合せを使用して、汎用コンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC:personal computer)、中央処理ユニット(CPU:central processing unit)、デジタル信号プロセッサ(DSP:digital signal processor)、1つ以上のプロセッサ、マイクロプロセッサ若しくはマイクロコントローラ、状態機械、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、又はそれらの組合せによって実装することができる。「プロセッサ」という用語は、特に、プログラム、又は機械実行可能命令を実施できる電子部品を包含する。「プロセッサ(processor)」への言及は、マルチコアプロセッサ、及び/又は、並列プロセッサ(つまり、マルチコアプロセッサ、又は並列プロセッサ、あるいはそれらの両方)のように、2つ以上のプロセッサ又は処理コアを含むものと解釈するものとする。また、プロセッサは、単一コンピュータシステム内のプロセッサの集合体、又は、クラウドベース若しくは他のマルチサイトアプリケーション等、複数のコンピュータシステム間で分散されたプロセッサの集合体を称する場合もある。プログラムは、同じコンピューティングデバイス内にありうる、又は、複数のコンピューティングデバイスにわたって分散しうる1つ以上のプロセッサによって実行されるソフトウェア命令を含む。
【0079】
メモリ620は、主メモリ、及び/又はスタティックメモリ(つまり、主メモリ、又はスタティックメモリ、あるいはそれらの両方)を含んでもよく、かかるメモリは、1つ以上のバスを介して互いに、及び処理ユニット610と通信することができる。メモリ620は、本明細書で記載される方法、及びプロセスのいくつかの、又は、全ての態様を実施するために使用される命令を格納する。メモリ620は、例えば、任意の数、種類、及び、組み合わせのランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)と読み取り専用メモリ(ROM:read-only memory)で実装することができ、ソフトウェアアルゴリズム、及びコンピュータプログラム等の様々な種類の情報を格納することができ、それらは全て処理ユニット610によって実行可能である。様々な種類のROMとRAMには、ディスクドライブ、フラッシュメモリ、電気的にプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM:electrically programmable read-only memory)、電気的に消去可能、且つプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM:electrically erasable and programmable read only memory)、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、テープ、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM:compact disk read only memory)、デジタル多用途ディスク(DVD:digital versatile disk)、フロッピーディスク、blu-rayディスク、ユニバーサルシリアルバス(USB:universal serial bus)ドライブ、又は、当該技術分野で知られている他の任意の形態の記憶媒体等、任意の数、種類、及び組み合わせのコンピュータ可読記憶媒体を含むことができる。
【0080】
メモリ620は、データと実行可能ソフトウェア命令を格納するための有形の記憶媒体であり、ソフトウェア命令が内部に格納されている間は、非一時的である。本明細書で使用する場合、「非一時的(non-transitory)」という用語は、状態の永遠の特性ではなく、或る期間続く状態の特性として解釈されるものとする。「非一時的」という用語は、具体的に言えば、任意の時点で任意の場所に一時的にしか存在しない、搬送波若しくは信号、又は、他の形態の特性等、一時的な特性を否定する。メモリ620は、様々な機能の実行を可能にするソフトウェア命令、及び/又はコンピュータ可読コード(つまり、ソフトウェア命令、又はコンピュータ可読コード、あるいはそれらの両方)を格納することができる。メモリ620は、セキュア及び/又は暗号化されている(つまり、セキュア又は暗号化されている、あるいはそれらの両方である)か、又は、非セキュア及び/又は暗号化されていない(つまり、非セキュア又は暗号化されていない、あるいはそれらの両方である)場合もある。
【0081】
ディスプレイ630は、例えば、コンピュータモニタ、テレビ、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)、フラットパネルディスプレイ、固体ディスプレイ、又は陰極線管(CRT:cathode ray tube)ディスプレイ等のモニタ、又は、電子ホワイトボードとすることができる。また、ディスプレイ630は、ユーザとの間で情報を表示及び受信するためのグラフィカルユーザインタフェース(GUI:graphical user interface)を提供することもある。
【0082】
ユーザインタフェース640は、処理ユニット610及び/又はメモリ620(つまり、処理ユニット610又はメモリ620あるいはそれらの両方)によって出力された情報及びデータをユーザに提供するとともに、ユーザによって入力された情報及びデータを受信する既知のインタフェースを含む。例えば、ユーザインタフェース640により、ユーザは、データの入力及び本明細書に記載のプロセスの態様の制御又は操作が可能になり、また、処理ユニット610は、ユーザの制御又は操作の効果を示すことが可能になる。ユーザインタフェース640は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、ジョイスティック、触覚デバイス、マイクロフォン、ビデオカメラ、タッチパッド、タッチスクリーン、マイクロフォン若しくはビデオカメラによってキャプチャされる音声又はジェスチャ認識、又は、コンピュータシステム150からのユーザフィードバック及びコンピュータシステム150とのインタラクションを可能にする他の任意の周辺装置若しくは制御装置等の1つ以上のユーザデバイスを接続することができる。
【0083】
ネットワークインタフェース650は、ローカルエリアネットワーク(LAN:local area network)、無線LAN、Wifi、イーサネット等のデータ通信ネットワークへの既知の入力/出力接続を含む。ネットワークインタフェース650により、コンピュータシステム150と第1のVNA110及び第2のVNA120のそれぞれとの間の接続が可能になる。ネットワークインタフェース650は、1つ以上のポート、ディスクドライブ、無線アンテナ、又は他のタイプの受信機回路部を更に含むことができる。
【0084】
本発明は、図面及び上述の説明に詳細に図示及び説明されてきたが、そのような説明図及び説明は、例示又は模範とみなされるべきであり、限定とみなされるべきではなく、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、請求項に係る発明を実施する際に、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討により、開示される実施形態に対する他の変形形態を理解し、それを行うことができる。特許請求の範囲において、「を含む(comprising)」という単語は他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「一つの("a"又は"an")」は複数形を排除しない。或る特定の手段が互いに異なる複数の従属請求項に列挙されているだけであれば、それらの手段を組み合わせて有利に使用することができないことは示されていないものとする。
【0085】
本発明の態様は、装置、方法又はコンピュータプログラム製品として具現化することができる。したがって、本発明の態様は、全体がハードウェアの実施形態、全体がソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)、又はソフトウェアの態様及びハードウェアの態様を組み合わせた実施形態の形を取ることができる。これらは全て、本明細書において、「回路」、「モジュール」又は「システム」と総称される場合がある。さらに、本発明の態様は、コンピュータ実行可能コードが具現化された1つ以上のコンピュータ可読媒体に具現化されるコンピュータプログラム製品の形を取ることができる。
【0086】
代表的な実施形態が本明細書に開示されているが、当業者であれば、本教示に従った多くの変形形態が可能であり、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを理解する。本発明は、したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内にあること以外で限定されるべきでない。
【外国語明細書】