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特開2024-106341共押出された環境に優しい発泡多層フィルム及びこれを用いたアイスパック
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  • 特開-共押出された環境に優しい発泡多層フィルム及びこれを用いたアイスパック 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106341
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】共押出された環境に優しい発泡多層フィルム及びこれを用いたアイスパック
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240731BHJP
   B29C 48/10 20190101ALI20240731BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20240731BHJP
   B29C 48/32 20190101ALI20240731BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240731BHJP
   B29C 44/24 20060101ALI20240731BHJP
   B29C 67/20 20060101ALI20240731BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B29C48/10
B29C48/21
B29C48/32
B29C44/00 E
B29C44/24
B29C67/20 B
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010321
(22)【出願日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2023-0010436
(32)【優先日】2023-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】524036549
【氏名又は名称】コリア プリパク カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Korea Prepac Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】33, Byeolmang-ro 269beon-gil, Danwon-gu, Ansan-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェ ビョンヒャン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ギヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ グァンス
(72)【発明者】
【氏名】キム ソクジュン
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4F207
4F214
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB71
3E086BB85
3E086CA40
4F100AK03C
4F100AK05A
4F100AK06B
4F100AK22B
4F100AK22H
4F100AK63B
4F100AK63H
4F100AL05A
4F100AL05B
4F100AL05C
4F100AL09C
4F100AT00
4F100BA03
4F100CA01B
4F100CA01H
4F100DJ02B
4F100EH202
4F100GB17
4F100GB23
4F100JA04
4F100JA06
4F100JJ02
4F100JK10
4F100JL16
4F207AA03
4F207AA04
4F207AA05
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4F207AB16
4F207AB19
4F207AG01
4F207AG03
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4F214AA45
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4F214AB16
4F214AB19
4F214AG01
4F214AG03
4F214AG20
4F214AH54
4F214AJ08
4F214AR06
4F214AR15
4F214AR17
4F214UA11
4F214UA32
4F214UB02
4F214UB26
4F214UC02
4F214UG03
4F214UG07
4F214UG22
4F214UN04
4F214UP65
4F214UP88
(57)【要約】      (修正有)
【課題】環境に優しい共押出発泡多層フィルム及びこれを用いたアイスパックを提供する。
【解決手段】表面層110、発泡層120及び内面層130で構成された無延伸ポリエチレン発泡多層フィルムであって、前記表面層は、密度が0.948~0.968g/cmの範囲である高密度ポリエチレン樹脂を単独で使用するか、または、密度が異なる他のポリエチレン樹脂と混合して使用し、前記発泡層は、発泡剤が添加された低密度ポリエチレン樹脂を単独で使用するか、または、前記低密度ポリエチレン樹脂に線状低密度ポリエチレンもしくは酢酸ビニルを混合して使用し、前記内面層は、密度が0.860~0.900g/cmであるポリオレフィンエラストマーに対して、密度が0.915~0.925g/cmである低密度又は線状低密度ポリエチレンを混合して使用し、一回のブロー共押出工程を経て製造した、発泡多層フィルムを提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層(110)、発泡層(120)及び内面層(130)で構成された無延伸ポリエチレン発泡多層フィルムであって、
前記表面層は、密度が0.948~0.968g/cmの範囲である高密度ポリエチレン樹脂90重量比に対して、密度が0.920~0.940g/cmの範囲である他のポリエチレン樹脂を10重量比で混合するか、または、前記範囲である高密度ポリエチレン樹脂80重量比に対して、密度が0.920~0.940g/cmの範囲である他のポリエチレン樹脂を20重量比で混合することを特徴とし、
前記発泡層は、発泡剤が添加された低密度ポリエチレン樹脂を単独で使用するか、または、前記低密度ポリエチレン樹脂90~50重量部に線状低密度ポリエチレンもしくは酢酸ビニルを10~50重量部混合して使用し、これらの溶融指数は0.2~8g/10minの範囲であることを特徴とし、
前記内面層は、密度が0.860~0.900g/cmであるポリオレフィンエラストマー又は0.880~0.910g/cmである超低密度ポリエチレン70~100重量比に対して、密度が0.915~0.925g/cmである低密度又は線状低密度ポリエチレンを0~30重量比で混合することを特徴とし、
前記表面層は、高密度ポリエチレンのMFRが25~60であり、MIが0.5~1.5g/10minであり、ビカット軟化点が125~129℃であることを特徴とし、
前記発泡層の発泡率は、20%~200%の比率を有することを特徴とし、
前記発泡剤は、炭酸水素ナトリウムとアゾジカルボンアミドを1:1で混合して、ハンファソリューション社製のLDPE 5321で予め30%濃縮したマスターバッチにした発泡剤、及び窒素ガス発泡剤のいずれか1つを選択して使用し、
前記内面層は、熱縫合温度が100~110℃である樹脂を選択することを特徴とし、
一回のブロー共押出工程を経て製造されたことを特徴とする、発泡多層フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の無延伸ポリエチレン発泡多層フィルムを含む、アイスパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共押出された環境に優しい発泡多層フィルム及びこれを用いたアイスパックに関する。より詳細には、表面層110、発泡層120及び内面層130で構成された無延伸ポリエチレン発泡多層フィルムが、発泡技術を用いた一回の共押出工程のみで製造されたことを特徴としており、これを用いたアイスパックに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、コロナウイルス(COVID-19)の影響により運送業がさらに活発になるにつれ、迅速な配送を必要とする食物に対する需要が増加した。さらに、オンライン食品市場の売上げが増えながら、生鮮食品を夜明けに配送する流通業界間の競争が激しくなっており、特に、配送過程で食品の変質を解決できる案が主な課題である。
【0003】
食物は、早く腐敗し得るため、低温で保管して鮮度を維持させなければならない。一般に、運送時に、冷凍又は冷蔵保管が可能な手段としてドライアイスやアイスパックを使用する。
【0004】
アイスパック(ice pack)は、比熱が高い冷媒と水を混合した後、凍らせて使用することによって、アイスパックの吸熱作用を通じて周辺を低温に維持させることができる。このようなアイスパックは、前記ドライアイスとは異なって、取り扱い及び保管が容易であるので、広く使用されている。
【0005】
既存のアイスパックは、ほとんど、石油化学製品で構成されており、主にナイロン/ポリエチレンや不織布(PP、PE)/ポリエチレンなどの材質が多く使用されている。
【0006】
前記ナイロン/ポリエチレン材質の場合、耐衝撃性及び強靭性に優れた延伸ナイロンフィルムと、袋成形性に優れたポリエチレンフィルムとを貼り合わせた、2種以上のマルチ(multi)素材からなっているので、リサイクルが不可能であるため、全量焼却するか、または埋め立てるしかなく、これは、深刻な環境汚染の原因となる。
【0007】
また、ポリエチレン/ポリエチレン材質の場合、外層と内層がいずれもポリエチレンである単一素材であるので、リサイクルの観点では優れているが、耐衝撃性、強靭性などを維持するためには、フィルムの外層は、無延伸フィルムではなく、1軸又は2軸に延伸されたポリエチレン延伸フィルムを使用して貼り合わせる必要があった(特許文献1及び2参照)。ポリエチレン延伸フィルムの加工は、特定の機械のみ可能であるので、設備投資費が過剰にかかり、生産費が非常に高い。また、装備の特性又は延伸比によって物性が大きく変わるため、均一な延伸フィルムを製造し難いという点もある。
【0008】
また、無延伸ポリエチレン発泡多層シートの場合、2つの積層シートは、別途にドライラミネーションして積層するか、またはTダイを介して出るポリエチレン溶融体で積層して貼り合わせて製造することができるが(特許文献3参照)、ただ一つの工程で内部に発泡層を追加するには多少問題があった。
【0009】
多層フィルムを加工する技術として、ブロー共押出方法が提示されてはいるが、これは、化学的に異なる材料を組み合わせる場合である(特許文献4参照)。
【0010】
また、紙でできたアイスパックなどが開発されているが、保冷パックの機能と効果、そして今後の再利用などを考慮すると、まだ積極的に適用されてはいない実情である。すなわち、前記のような材質のアイスパックは、外部衝撃に対する緩衝効果が劣り、水分に対する耐久性が非常に弱いという問題がある(特許文献5参照)。
【0011】
また、アイスパックの内部には、ジェル状の架橋構造を有する高吸水性樹脂と水からなる混合物を充填して凍らせたものを冷媒として使用する場合もあり、これを廃棄する過程で、ジェル状の溶けた冷媒をそのまま捨てるようになり、下水溝が詰まってしまうため、これもまた深刻な水質汚染の原因となる。
【0012】
これに対する代案として、最近、プラスチック包装材の中に水を満たし、これを凍らせた氷を冷媒として使用したアイスパック製品が主に使用されている。しかし、衝撃を受けて包装材が破損すると、冷媒である氷が鋭くて尖った形状に割れるため、落下時に氷の破片により穿孔が発生するなど、多くの問題が発生することがある。そのため、氷を冷媒としたアイスパック用包装材は、優れた耐衝撃性又は落下耐破損性の特性が要求される。
【0013】
そのため、冷媒である氷による低温保冷性が良く、包装材の耐衝撃性、落下耐破損性特性及び袋成形性に優れ、単一素材による使用後のリサイクルが可能な、環境に優しい発泡多層フィルム及びこれを用いるアイスパックの開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国登録特許第10-2261130号(登録日2021.05.31.)
【特許文献2】韓国登録特許第10-2240271号(登録日2021.04.08.)
【特許文献3】韓国登録特許第10-2473886号(登録日2022.11.30.)
【特許文献4】韓国公開特許第10-2015-0106964号(公開日2015.09.22.)
【特許文献5】韓国公開特許第10-2021-0122924号(公開日2021.10.13.)
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】イ・ジョンイル、“共押出多層BLOWNフィルムの製造方法及び動向”、包装情報、1994.10.,p55~61.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、氷を冷媒とした包装材の耐衝撃性及び保冷性のために無延伸ポリエチレンフィルムのみで構成されるアイスパック用発泡多層フィルムを提供しようとする。
【0017】
また、ポリエチレンの単一素材のみで構成されているので、使用後のリサイクルに何の問題もない環境に優しいアイスパック包装材を提供しようとする。
【0018】
また、既存のアイスパック用発泡多層シートを製造する際に必要な多数の個別の工程段階を単純化しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、表面層110、発泡層120及び内面層130で構成された無延伸ポリエチレン発泡多層フィルムであって、前記表面層は、密度が0.948~0.968g/cmの範囲である高密度ポリエチレン樹脂を単独で使用するか、または、前記範囲である高密度ポリエチレン樹脂80重量比に対して、密度が0.920~0.940g/cmの範囲である他のポリエチレン樹脂を20重量比で混合することを特徴とし、前記発泡層は、発泡剤が添加された低密度ポリエチレン樹脂を単独で使用するか、または、前記低密度ポリエチレン樹脂90~50重量部に線状低密度ポリエチレンもしくは酢酸ビニルを10~50重量部混合して使用し、これらの溶融指数は0.2~8g/10minの範囲であることを特徴とし、前記内面層は、密度が0.860~0.900g/cmであるポリオレフィンエラストマー又は0.880~0.910g/cmである超低密度ポリエチレン70~100重量比に対して、密度が0.915~0.925g/cmである低密度又は線状低密度ポリエチレンを0~30重量比で混合することを特徴とし、一回のブロー共押出工程を経て製造されたことを特徴とする、発泡多層フィルムを提供する。
【0020】
前記表面層は、高密度ポリエチレンのMFRが25~60であり、MIが0.5~1.5g/10minであり、ビカット軟化点が125~129℃であることを特徴とする。
【0021】
前記発泡層の発泡率は、20%~200%の比率を有することを特徴とする。
【0022】
前記内面層は、熱縫合温度が125℃未満である樹脂を選択することを特徴とする。
【0023】
前記無延伸ポリエチレン発泡多層フィルムを含むアイスパックを提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、発泡層120を含む発泡多層フィルムを用いることによって、アイスパック包装材の落下耐破損性及び保冷効果がいずれも優れるという特性を示した。
【0025】
また、包装材の材質の構成が全てポリエチレンのみで構成された単一素材であるので、多層に貼り合わせる過程で収縮率が変わる問題もなく、使用後のリサイクル性に優れた環境に優しいアイスパックとして有用に使用され得る。
【0026】
特に無延伸ポリエチレンフィルムを使用するので、特別な延伸装置を必要とせず、延伸フィルムの製造工程、低温熱縫合が可能な発泡フィルムをそれぞれ製造してTダイコーティング又はドライラミネーションする3つの段階の工程を経ずに、一回のブローフィルム押出工程により3層の発泡多層フィルムを製造する。したがって、押出工程時に発生する炭素排出量において、既存の3回の工程が1回の工程に減ることによって、排出量が約1/3のレベルに低減する効果はもちろん、全体のフィルム製造工程上、生産費用が節減される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の発泡多層フィルムを製造する共押出工程を示す図である。
図2】本発明の一実施例に係る発泡多層フィルムの片側の断面を拡大した図である。
図3】従来技術の一実施例に係る発泡多層フィルムの片側の断面を拡大した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参照に過ぎず、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な異なる形態で具現可能である。
【0029】
従来のアイスパックは、ほとんど、合成樹脂で構成されたフィルムを袋加工した後、前記袋内に水などを注入し、フィルムを封止して製造される。
【0030】
一般に、ポリエチレン樹脂は、安価であり、機械的特性、衛生適合性、耐水蒸気透過性に優れ、成形品の外観が良好であるなどの特徴を有するので、各種包装材料やブロー成形物などに広く使用されている。しかし、水や氷などのような内容物を入れて製品として活用する場合、低温下で落下衝撃強度が不十分で破壊される場合があるため、これの改良が要求され、素材を変更したり、多層フィルムに構造設計したりすることもある。
【0031】
外・内層がポリエチレンの単一素材で製造された包装材であるとしても、超耐衝撃性のために、外層を1軸又は2軸に延伸されたポリエチレン延伸フィルムを使用する場合、内層である無延伸ポリエチレンフィルムと共にドライラミネーション(Dry lamination)する過程でフィルムの収縮率が大きく変わり、これにより、フィルムがねじれたり、曲がる現象(curl)が現れ得る。
【0032】
そのため、本発明者は、多層フィルムに使用される樹脂を全て無延伸ポリエチレンを選択し、ブロー共押出機を用いて、3層積層されたフィルムを一回の工程のみで製造するものの(図1参照)、表面層110は、耐熱性に優れた層とし、発泡層120は、低温耐衝撃性及び保冷効果のために中間層とし、内面層130は、低温熱縫合を可能にする層として、本発明を完成するようになった。
【0033】
図1から分かるように、3個の押出機を用いて表面層、発泡層、内面層を環状に押出し、その内部に空気が移送されて膨張し、膨張した円筒状の多層フィルムがニップローラを経て巻き取られる。
【0034】
また、本発明の環境に優しいアイスパック10は、無延伸ポリエチレン発泡多層フィルムで構成されることを特徴とする。図2は、本発明の一実施例に係る発泡多層フィルムの片側の断面を拡大した図である。
【0035】
前記表面層110は、熱安定性が高い高密度無延伸ポリエチレンであり、内面層130は、低温熱縫合が可能な低密度無延伸ポリオレフィン系エラストマーであり、発泡層120は、発泡剤が添加された低密度無延伸ポリエチレンであって、中間層に導入して、3層構造に積層する。
【0036】
このとき、前記多層フィルムは、無延伸フィルムで製造することが特徴であるので、追加でフィルム延伸工程を経る必要がなく、これによって、本発明は、ブローフィルム(blown film)多層押出機を通じて、一回の工程で多層フィルムを製造した。
【0037】
一般に多層フィルムを作る方法にはコーティング(Coating)法、ラミネーション(Lamination)法、及び共押出法などがあり、特に共押出法は、複数個の原料を押出機で溶融した後、溶融された原料をダイ内で合わせられるようにし、複数層のフィルムを同時に押出して多層フィルムを作る方法である。前記共押出多層フィルムは、互いに異なる複数個の原料を使用する製品であるため、高度な技術と長年の経験やノウハウが共に必要である。
【0038】
製造方式によってはブロー(Blown)方式とキャスティング(Casting)方式に分類することができ、ブローフィルムが、キャスティングフィルムに比べて厚さの偏差、透明性などで欠点を有してはいるが、分子配向が縦方向(MD)と横方向(TD)に可能であるので、強度に優れ、伸度、厚さなどを容易に変更できるという利点があり、加工中に溶剤を使用しないため、臭気の問題もないので、特に機能性包装材の分野では非常に有用な点がある。
【0039】
そして、PE共押出フィルムは、キャスティング設備で生産する場合はあまりなく、ほとんどブロー(Blown)設備で生産するところ、このような設備は、韓国内で製作され、品質も優れている。最近は、新しい自動厚み調節装置または冷却方式などを開発して、ブロー方式の欠点も解決されている。
【0040】
特にブローフィルム製造技術では、そのフィルムが1種類の材料からなっている場合には問題が発見されないが、複数種類の樹脂材料を層形状に押出して多層フィルムを製造する場合には、樹脂の種類に対応して、これらの融点、軟化点及び結晶化温度が異なるため、従来技術で示す冷却技術では、フィルムの樹脂材料間の変形による応力が生じ、その樹脂フィルムにカール(曲げ)が発生する。すなわち、冷却速度が不適正であると、樹脂材料の結晶化が進行して、ヘイズ(haze)が生じ、商品としてその品質面で問題が残るため、前記条件を慎重に考慮して共押出工程を行う必要がある。また、多層フィルムにおいて、中間層に発泡層を成形するので、発泡層の樹脂材料も重要であるが、外層と内層の樹脂の特性も特別である必要がある。
【0041】
そのため、本発明は、発泡層が中間層に含まれた3層の多層構造を一回のブロー工程で製造することができる工程と、これに適した最適の材料の開発に技術的意義を置いている。特に、無延伸フィルムで製造することが、アイスパックのような包装材では重要である。
【0042】
本発明の発泡多層フィルムの層構成は、表面層/発泡層/内面層の3層で構成されており、発泡前と発泡後の厚さを比較すると、以下のように差が発生する。
【0043】
前記フィルムが発泡される前の厚さの比は、通常、1:2:1であり、フィルムの全厚が140μmである場合、各層別の厚さを計算すると、それぞれ35μm、70μm、35μmとなる。ところで、発泡は中間層でのみ起こるので、発泡層のフィルムの厚さが増加するものであるので、発泡後のフィルムの厚さが200μmになるようにする場合、発泡層の発泡比率は約1.9~2.0倍のレベルとなる。結局、発泡後の3層のフィルムの各層別の厚さの比は1:3.7:1のレベルであって、発泡層のフィルムの厚さが約130μmのレベルに大きく増加する。
【0044】
従来特許(韓国登録特許第10-2473886号)では、耐熱層の役割をする表面層シートを40μmに製造し、発泡層/内層がある内面層シートの厚さを140μmに製造した後、2つのシートをTダイコーティングして貼り合わせるときの厚さが20μmとなり、結局、全厚は200μmとなった。このとき、発泡層が含まれた内面層シートは、発泡前に100μmから発泡後に140μmになるものであり、発泡はやはり中間層でのみ起こるので、結局、発泡層の厚さは約90μm程度となる。そうであれば、本発明における発泡層の厚さは、従来特許よりも約1.4倍の厚さを有する。
【0045】
したがって、発泡層の厚さが厚くなるため、最終的にフィルムを熱縫合してアイスパックを製造する際に、既存の特許よりも厚くなった発泡層により、さらに熱縫合が難しくなり、円滑な熱縫合のためには、さらに高い熱で熱縫合しなければならないという問題が発生する。これは、発泡層の外面から熱を加えると、発泡層を通って内面層に熱が伝達されてこそ、内面層が熱縫合されるためである。結局、表面層の耐熱特性が強化されなければ、熱縫合過程で表面層が溶けたり、表面が歪む問題が発生するということである。
【0046】
すなわち、前記問題点を解決するためには、使用する樹脂の耐熱性などを、以下のように差別化する必要がある。
【0047】
フィルムの外層:表面層110
前記アイスパックの表面層に使用される樹脂は、耐熱安定性が高い高密度ポリエチレンを選択したところ、熱縫合時にフィルムがねじれたり、溶けたりしないようにして、熱縫合を行うときに高速で縫合(接着)できるようにした。前記表面層を耐熱層ともいう。
【0048】
したがって、本発明では、特定の分子構造を有する高密度ポリエチレンを選定して使用することによって、前記問題点を解決することができた。
【0049】
表面層に使用される樹脂は、密度が0.948~0.968g/cmの範囲である高密度ポリエチレン樹脂を単独で使用するか、または前記範囲である高密度ポリエチレン樹脂80重量比に対して、密度が0.920~0.940g/cmの範囲である他のポリエチレン樹脂を20重量比の範囲内で混合することを特徴とする。
【0050】
密度が0.920~0.940g/cmのポリエチレン樹脂を混合して使用することは、一般に高密度ポリエチレンを単独で使用する場合、フィルムの表面でシワが発生する場合が時々あるため、密度が低い前記ポリエチレン樹脂を少量混合すれば、このような問題が解決される。
【0051】
したがって、好ましくは、高密度ポリエチレンを単独で使用することが最も良いが、押出機の特性によってフィルムの表面にシワが発生する場合には、密度が低いポリエチレン樹脂を5~20の重量比で混合することが良い。
【0052】
また、前記の高密度ポリエチレンは、分子量分布度が狭いものを好む。これは、通常、MFR(Melt flow ratio、MI21.6kg/MI2.16kgの比)で表すことができ、フィルム用高密度ポリエチレンのMFRは、一般に30~160程度の範囲を有しており、通常のフィルム用に最も多く適用されるMFRは、130~160のレベルである。しかし、本発明では、MFRが25~60であるものが好まれ、さらに好ましくは、MFRが25~35のレベルであるものが良い。
【0053】
すなわち、MFRが広い高密度ポリエチレンは、MFRが広い分、低分子量体が増加するという意味であり、できるだけMFRが小さくてこそ、低分子量体が少ない。したがって、たとえ高密度であるとしても耐熱性が弱いため、低分子量体が少ないポリエチレンであるほど、耐熱性が上昇するためである。
【0054】
また、ブローフィルム用に適用するためには、高密度ポリエチレンのMI(melt index)も重要である。MIが低いほど、フィルム用に優れているが、本発明に適したMIは、0.5~1.5g/10minのレベルである。0.5以下のMIを有する高密度ポリエチレンを使用する場合は、フィルムの表面にゲルが発生するため、良好なフィルムを製造することができず、1.5以上のMIを有する製品を使用する場合は、耐熱性が弱くなるため不適である。
【0055】
また、高密度ポリエチレンの耐熱性を示すことができるビカット(VICAT)軟化点(プラスチックに熱を加えて軟化し始める温度をいう、ASTM D1525)も重要な要素の一つである。通常のフィルム用高密度ポリエチレンのビカット軟化点は123~129℃程度であるが、本発明に適するためには、ビカット軟化点が125~129℃である樹脂が好まれる。併せて、結晶化温度も117~122℃の範囲にある樹脂が好ましい。
【0056】
したがって、分子量分布度が広いか、または結晶化温度が多少低い製品は、3層の多層フィルムにした後、フィルムを熱縫合する際に、耐熱性が低下して、フィルムの外層が溶けて付くなどの熱縫合不良が発生することがある。
【0057】
フィルムの中間層:発泡層120
アイスパックフィルムの中間層は発泡層120であって、保冷効果及び低温耐衝撃性を向上させるのに主な目的がある。
【0058】
発泡層120は、発泡剤が添加された低密度ポリエチレン樹脂を用いてブローフィルム押出成形機で製造されるところ、このような場合、フィルムの成形が容易でないため、前記樹脂のメルトインデックス(MI)を適切に考慮する必要がある。一般に、発泡過程を経ると、発泡セルにより空き空間が発生し、これらの分布状態によって機械的強度に大きな影響を及ぼすようになるため、樹脂の物性のうち流れ性を主要要素として考慮する必要がある。したがって、前記使用樹脂の溶融指数(MI)は、0.2~8g/10minの範囲が好ましい。
【0059】
使用樹脂は、低密度ポリエチレン単独が好ましいが、必要に応じて、低密度ポリエチレン樹脂90~50重量部に、線状低密度ポリエチレンまたはエチレン酢酸ビニルなどを10~50重量部混合することもできる。
【0060】
ブロー成形性を向上させるために、必要に応じて、一般にポリエチレン系樹脂に使用されている熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、耐放射線剤、結晶造核剤、無機充填剤、滑剤、可塑剤、有機過酸化物、中和剤、架橋剤、顔料、染料などの各種添加剤、及び機械物性を改良するためのエラストマーなどの副原料を添加することができる。
【0061】
発泡層120の発泡率は20%~200%の比率を有し、発泡率は、無機又は有機発泡剤やガス発泡剤を使用して調整することができる。発泡率が200%以上である場合、保冷効果及び低温耐衝撃性は良くなるが、発泡層が厚くなり、フィルムの熱縫合時に発泡層から内層の熱縫合層にまで熱伝達が十分でないため、熱縫合不良が発生することがある。発泡率が20%未満である場合は、保冷効果及び低温耐衝撃性が不十分となる。前記発泡率は、100%~200%であることが最も好ましい。
【0062】
具体的な発泡剤の例としては、有機又は無機熱分解型発泡剤、窒素、二酸化炭素、プロパン、ブタンなどの気体を使用することができる。発泡剤は、使用樹脂にそのまま添加してもよいが、予め樹脂成分に添加したマスターバッチとして添加して分散性を高めることもできる。
【0063】
発泡助剤として、タルク、シリカ、酸化チタン、ステアリン酸、フタル酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、エチレングリコール、グリセリン、エタノールアミン、尿素、尿素誘導体、メラミン、2アルカリ性亜リン酸鉛、3アルカリ性硫酸鉛、酸化亜鉛などを配合することができる。
【0064】
特に、発泡層120を含む多層フィルムを製造するためには、前記の成分比率はもとより、製造条件も非常に重要であるが、ここでは、特に制限しない。
【0065】
フィルムの内層:内面層130
フィルムの内面層130は、アイスパックのフィルムの内部に氷のような冷媒を充填し、封止で接合する際に容易に熱接着され得るように、比較的低温にて高速で熱縫合を可能にすることが重要である。これを熱縫合層ともいう。
【0066】
内面層に使用する樹脂の熱縫合温度は125℃未満であることが好適である。好ましくは、熱縫合温度が90~110℃である樹脂を選定することが最も良い。
【0067】
前記特性のためのポリエチレン樹脂は、密度が0.860~0.900g/cmであるポリオレフィンエラストマー、0.880~0.910g/cmである超低密度ポリエチレン、0.915~0.925g/cmである低密度ポリエチレン、及び0.915~0.925g/cmである線状低密度ポリエチレンからなる群から選択された1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0068】
本発明を前記従来特許と比較すると、発泡層の厚さが厚くなるため、これによって、低温熱縫合性能がさらに優れてこそ、本発明を成功裏に製造することができる。すなわち、一回のブロー共押出工程のみで発泡多層フィルムを製造するためには、結局、各層に使用される無延伸ポリエチレン樹脂の特性が差別化されなければならない。
【0069】
本発明に適するためには、密度が0.860~0.900g/cmであるポリオレフィンエラストマー又は0.880~0.910g/cmである超低密度ポリエチレン70~100重量比に対して、密度が0.915~0.925g/cmである低密度又は線状低密度ポリエチレンを0~30重量比で混合することが良い。それ以外の混合比では、十分な低温熱縫合性が現れないため、不良又は熱縫合速度が遅くなるという問題がある。
【0070】
以下、本発明を下記の実施例及び比較例を中心に説明すると、次の通りである。
【0071】
[実施例1]
アイスパックのフィルムは、3層のブロー共押出機を活用した。アイスパックのフィルムの表面層110の樹脂は、ハンファソリューション社製の3390(MI:1.0、密度:0.952g/cm)とロッテ社製のUL912A(MI:1.2、密度:0.920g/cm)を、それぞれ90:10の含量比で混合使用した。
【0072】
アイスパックの中間層である発泡層に使用された樹脂は、ハンファソリューション社製のLDPE 5302(MI:0.3、密度0.922g/cm)であり、発泡剤は、炭酸水素ナトリウムとアゾジカルボンアミドを1:1で混合して、ハンファソリューション社製のLDPE 5321で予め30%濃縮したマスターバッチを作った後、発泡層120に3%混合した。
【0073】
アイスパックの内面層130に使用される樹脂は、低温で熱縫合性が発現されなければならないため、SK社製のSupreme 891(MI:1.0、密度0.885g/cm)とハンファソリューション社製の4200D(MI:1.6、密度0.920g/cm)を80:20の重量比で混合使用した。
【0074】
フィルム加工する際には、3層フィルムの全厚が、発泡前には140μmであったが、発泡後には200μmになるように調節し、発泡後、3層のフィルムにおいて中間に位置した発泡層120の厚さは、約130μmのレベルに大きく増加した。
【0075】
前記発泡3層フィルムで製造されたアイスパック袋フィルムの落下耐破損性及び保冷効果を測定し、その結果を表3に示した。
【0076】
[実施例2]
アイスパックの3層フィルムの製造時に、中間層の発泡層に使用される発泡剤の種類をガス発泡剤として窒素を使用した以外は、層別の使用樹脂及びその含量比を含む加工条件は実施例1と同様にした。
【0077】
[実施例3]
アイスパックの表面層110の樹脂は、SK社製の8300(MI:0.7、密度:0.963g/cm)とロッテ社製のUL912A(MI:1.2、密度:0.920g/cm)をそれぞれ80:20の含量比で混合使用し、アイスパックの内面層130の樹脂として、SK社製のSupreme 891(MI:1.0、密度0.885g/cm)とハンファソリューション社製の4200D(MI:1.6、密度0.920g/cm)を70:30の重量比で混合使用した以外は、実施例1と同様にした。
【0078】
[実施例4]
アイスパックの3層フィルムの表面層の樹脂は、実施例3と同様に使用し、中間層の発泡剤は、実施例2と同様に窒素発泡剤を使用した。それ以外は実施例1と同様にした。
【0079】
[比較例1]
アイスパックのフィルムは、実施例1と同様に3層のブロー共押出機を活用した。アイスパックの表面層110の樹脂は、ハンファトータル社製のC440A(MI:2.1、密度:0.968g/cm)とロッテ社製のUL912A(MI:1.2、密度:0.920g/cm)を、それぞれ80:20の含量比で混合使用した。
【0080】
アイスパックの中間層である発泡層120に使用された樹脂は、ハンファソリューション社製のLDPE 5302(MI:0.3、密度0.922g/cm)であり、発泡剤は、炭酸水素ナトリウムとアゾジカルボンアミドを1:1で混合して、ハンファソリューション社製のLDPE 5321で予め30%濃縮したマスターバッチを作った後、発泡層120に3%混合した。
【0081】
アイスパックの内面層130に使用される樹脂は、SK社製の891(MI:1.0、密度0.885g/cm)とハンファソリューション社製の4200D(MI:1.6、密度0.920g/cm)を70:30の重量比で混合使用した。
【0082】
[比較例2]
アイスパックのフィルムは、実施例1と同様に3層のブロー共押出機を活用した。アイスパックの表面層110の樹脂は、ハンファトータル社製のF920A(MI:1.0、密度:0.956g/cm)とロッテ社製のUL912A(MI:1.2、密度:0.920g/cm)を、それぞれ90:10の含量比で混合使用した。
【0083】
アイスパックの中間層である発泡層120に使用された樹脂は、ハンファソリューション社製のLDPE 5302(MI:0.3、密度0.922g/cm)であり、発泡剤は、炭酸水素ナトリウムとアゾジカルボンアミドを1:1で混合して、ハンファソリューション社製のLDPE 5321で予め30%濃縮したマスターバッチを作った後、発泡層120に3%混合した。
【0084】
アイスパックの内面層130に使用される樹脂は、LG社製のLF100A(MI:1.2、密度0.903g/cm)とハンファソリューション社製の4200D(MI:1.6、密度0.920g/cm)を60:40の重量比で混合使用した。
【0085】
[比較例3]
アイスパックの層構成を、2つのフィルムを製造した後、貼り合わせて、アイスパック袋フィルムを製造した。前記2つのフィルムとは、図3に示したように、表面層シート210と内面層シート220の2つのフィルムをそれぞれ作り、貼り合わせて製造した多層フィルムを意味する(韓国登録特許第10-2473886号の実施例1参照)。
【0086】
表面層シート210は、ポリエチレン無延伸フィルムであって、2層のブロー押出機を活用した。前記表面層シートにおいて、図3の外層A(211)の樹脂は、ハンファトータル社製のC440A(MI:2.1、密度:0.968g/cm)とロッテ社製のUL912A(MI:1.2、密度:0.920g/cm)を、それぞれ50:50の含量比で混合使用し、図3の内層A(212)の樹脂は、ハンファトータル社製のC440Aとロッテ社製のUL912Aを、それぞれ20:80の含量(重量)比で混合使用した。このとき、表面層シートの厚さは、合わせて30μmとした。
【0087】
内面層シート220も、ポリエチレン無延伸発泡フィルムであって、2層のブロー押出機を活用した。図3の内面層シートの発泡層221に使用された樹脂は、ハンファソリューション社製のLDPE 5302(MI:0.3、密度0.922g/cm)であり、発泡剤は、炭酸水素ナトリウムとアゾジカルボンアミドを1:1で混合して、ハンファソリューション社製のLDPE5321で予め30%濃縮したマスターバッチを作った後、発泡層221に3%混合した。このとき、無延伸発泡層221の厚さは、発泡前は100μmであったが、発泡後には140μmとなるように調節した。
【0088】
特に、内面層シートの内層B(222)は、相対的に低温で熱縫合性が発現されなければならないため、SK社製のSupreme 891(MI:1.0、密度0.885g/cm)とハンファソリューション社製の4200D(MI:1.6、密度0.920g/cm)を50:50の含量比で混合使用した。
【0089】
発泡前の内面層シートの厚さの比は、発泡層221/内層B(222)=2/1(厚さで計算すると、67μm/33μm)であった。発泡は、発泡層でのみ起こった後、発泡層/内層B=3.2/1(厚さで計算すると、107μm/33μm)となった。発泡前は67μmであったが、発泡後には107μmとなった。
【0090】
製造された2つのシート、すなわち、アイスパックの表面層シートと内面層シート(発泡層を含む)の無延伸フィルムを、Tダイコーティングして貼り合わせて多層シートを製造した。Tダイコーティングする際に使用した樹脂は、ハンファソリューション社製のLDPE 950(MI:7.5、密度0.919g/cm)を使用し、160~180℃の条件下で押出しながら貼り合わせた。3回の工程を経た最終的なアイスパック用フィルムの厚さは、総200μmとなるようにした(表面層シート40μm、内面層シート140μm、貼り合わせ20μm)。
【0091】
[比較例4]
アイスパック包装フィルムとして現在市販されている製品を比較例4として選定した。どのような方法で製造したかは明らかではないが、発泡層221を含む包装材ではないことを目で確認した。配達専門業者である“Coupang”で使用するPEの単一素材からなっているアイスパックを入手し、アイスパックを常温で長時間放置して水が完全に溶けた後、実施例1と同様の方法で耐破損性及び保冷効果を測定し、その結果を表4に示した。
【0092】
前記実施例及び比較例で使用された樹脂の種類、混合比及び物性に対しては、表3にまとめた。
【0093】
評価1.熱縫合の結果
熱縫合の結果は、熱縫合開始温度及び熱縫合強度を測定して比較した。測定方法は、ASTM F88法を基準として、熱縫合時の圧力を2kgf/cmとし、1.5秒間熱縫合した後、シーリング強度が2kgf以上を示すときの熱縫合温度を熱縫合開始温度として示した。熱縫合強度は、熱縫合後、シーリング強度が最終的に安定化されるときの強度で測定した。また、熱縫合後、熱縫合面の外観を比較して、表面がきれいであるか否か、または熱によってフィルムの表面が溶けたか否かなどの外観を比較評価した。
【0094】
前記実施例及び比較例の多層フィルムで製造されたアイスパック袋フィルムの熱縫合開始温度、熱縫合強度、及び熱縫合後の外観特性は表3に示した。
【0095】
実施例の場合は熱縫合開始温度が105~110℃であるのに対し、比較例の場合は120℃以上と相対的に高く、熱縫合後の外観は、比較例3を除いては、残りの比較例は、表面が溶けて付く不良を示している。
【0096】
評価2.落下耐破損性
落下耐破損性は、低温耐衝撃性及び穿孔抵抗特性を同時に示すことができる。前記アイスパックの表面層フィルム及び内面層フィルムをドライラミネーションして積層し、貼り合わせた後、横150mm、縦200mmの大きさの袋を作り、水を300g充填し、熱縫合した後、これを十分に凍らせてアイスパックサンプルを製造する。その後、2mの高さから自由落下させ、破損率を4等級で比較測定した。試料は、10個ずつ製造し、これを落下させて破損率の平均を測定した。下記の表1は、破損率の数値を基準として4等級に区分したものである。
【0097】
【表1】
【0098】
前記実施例及び比較例の多層フィルムで封止して製造されたアイスパックの落下耐破損性を測定し、その結果を表4に示した。
【0099】
評価3.保冷効果
保冷効果は、落下耐破損性の評価を行うときと同じ方法でアイスパックを作り、これに水300gを充填し、熱縫合する。十分に水が凍ったとき、アイスパックを常温25℃で2時間、4時間室内に放置した後、開封し、生成された水の重量を測定して比較した。下記の表2は、溶けた水の量を基準として4等級に区分したものである。
【0100】
【表2】
【0101】
前記実施例及び比較例の多層フィルムで封止して製造されたアイスパックの保冷効果を測定し、その結果を表4に示した。
【0102】
【表3】
【0103】
前記評価2及び3によって総合的に調べた結果、全般的に本発明の実施例は、比較例と比較して、落下耐破損性及び保冷効果に多少差があることが分かる。
【0104】
特に比較例1及び2は、実施例のように一回のブロー共押出工程により3層フィルムを製造したが、外層(耐熱層)と内層(熱縫合層)の樹脂特性及び混合比を異ならせた結果、熱縫合特性が低下し、アイスパックへの適用が難しかった。すなわち、落下耐破損性及び保冷効果は、評価を行うこともできない程度であった。
【0105】
しかし、比較例3は、実施例1~4とは異なって、表面層シートと内面層発泡シートをそれぞれ製造した後、2つのシートを貼り合わせてアイスパックを製造した場合であるため、熱縫合後の表面が良好であり、商品に適用するのに問題がなかった。但し、3回の工程を行わなければならないため、同じ厚さで製造する際に、フィルムの原価費用は3倍以上高くならざるをえない。
【0106】
全般的に比較例1及び2を除いては、実施例の落下耐破損性及び保冷効果は優秀又は良好な方であるが、表4からも分かるように、製造原価が高く、炭素排出量が多いという欠点がある。特に比較例3の場合、2時間又は4時間後、溶けた水の量を数値上で比較してみると、たとえ‘優秀’等級と表示したが、実施例に比べては水の量が多少多いため、保冷効果が多少不十分であると見られるところ、これは、上述したように、最終的なアイスパックの厚さが同一である場合、発泡層の厚さが相対的に薄いため、保冷効果が多少劣るものと考えられる。
【0107】
【表4】
【0108】
本発明の発泡多層フィルムは、表面層、発泡層及び内面層を同時に3層構造で一回の共押出工程を経て製造されたもので、厚さが向上した発泡層220を中間層に導入することができるので、既存の工程よりも製造原価が安く、炭素排出量が相対的に少ないだけでなく、優れた落下耐破損性及び保冷効果を示すので、環境に優しいアイスパックのような包装材の用途に非常に適している。
【符号の説明】
【0109】
10 アイスパック
110 表面層
120 発泡層
130 内面層
20 アイスパック
210 表面層シート
220 内面層シート
221 発泡層
図1
図2
図3