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▶ 有限会社成島畳店の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010635
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】畳床および畳
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
E04F15/02 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022122219
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】508285905
【氏名又は名称】有限会社成島畳店
(72)【発明者】
【氏名】成島 康夫
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA44
2E220AD01
2E220AD03
2E220AD06
2E220EA02
2E220EA03
2E220GA07X
2E220GA22X
2E220GA25X
2E220GA27X
2E220GB42X
2E220GB47X
2E220GB52X
(57)【要約】
【課題】椅子座式の生活に適した畳にするためにJISには局部圧縮量は4mm以下と定められており、床座式の生活には適していない。
【解決手段】畳床の局部圧縮量が4mmより大きく10mm未満であり、反発弾性率が35%以上とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局部圧縮量が4mmより大きく10mm未満であり、反発弾性率が35%以上であることを特徴とする畳床。
【請求項2】
局部圧縮量が4mmより大きく10mm未満である畳床の上にイ草製の畳表を積層したことを特徴とする畳。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
床座式の生活に適した畳床および畳に関する。
【背景技術】
【0002】
従来日本家屋で使われてきた畳は床座式の生活に適した柔らかいものであった。しかし、生活の洋風化に伴い椅子座式の生活に合わせて硬いものになってきた。これは、畳の上に家具を置き、机や椅子を使った際に畳がへこまなくするためであった。
しかし、そのために座ったり寝転がったりする床座式の生活には適さなくなり、かつ転倒時の安全性も損なうものになっている。
転倒時の安全性に配慮した畳としては、衝撃緩和型畳床がJIS化されたが、局部圧縮量が4mm以下とされており、床座式の生活を考慮したものではないことに変わりはなかった。(非特許文献1参照)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】JISA5917:2018 衝撃緩和型畳床
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
椅子座式の生活に適した畳にするためにJISには局部圧縮量は4mm以下と定められており、床座式の生活には適していない。しかし、床座式の生活に適するように単に柔らかくしたのでは歩行の際に足が沈み込み歩き難くなる。つまり、柔らかさと歩き易さを両立させることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、畳床の局部圧縮量が4mmより大きく10mm未満であり、反発弾性率が35%以上としたものである。
【0006】
局部圧縮量はJISA5917:2018に記載されている方法で測定したものである。
また、反発弾性率はJISK6400-3に記載されている方法に準じて測定したものである。
局部圧縮量は4.5mm以上8.0mm以下であることがより好ましい。
反発弾性係数は40%以上であることがより好ましい。
【0007】
また、第2の解決手段は、畳として局部圧縮量が4mmより大きく10mm未満である畳床の上にイ草製の畳表を積層して畳としたものである。
【発明の効果】
【0008】
畳床の局部圧縮量を4mmより大きく10mm未満の畳床を使用することにより、座ったり寝転がったりした際に膝や肘に痛さを感じない畳を構成することができる。
また、反発弾性率を35%以上とすることにより、歩くときに足に適度な反発力が働き、歩きやすい畳を構成することができる。さらに、座ったり寝転がったりした際に、体圧を良好に分散することができる。
【0009】
本発明の畳床に樹脂製の畳表を積層したのでは歩いた際に足跡が畳表に形成され美観が損なわれるが、イ草製の畳表には足跡が畳表に形成されることがない。
樹脂製の畳表であっても畳床に接着すれば歩いた際に足跡が畳表に形成されないことは知られており、このような対策も当然有効である。
【実施例0010】
比重145Kg/m、厚さ50mmのヤシ繊維板とJISA5905に規定されたタタミボードに準じた厚さ5mmの軟質インシュレーションボードとを縫い合わせることにより畳床とした。
なお、軟質インシュレーションボードは畳床の裏に積層されている。
ヤシ繊維板とはヤシ繊維を成形したものである。ヤシ繊維とは、一般的にココヤシの果実の皮から得られる繊維のことである。畳床用板材に成形するために熱可塑性樹脂繊維と混合して加熱成型することができる。熱可塑性樹脂としては、特にポリエルテルが効果的に用いられる。
ヤシ繊維板は、厚さ5mm以上60mm以下のものが使用でき、密度は80kg/m以上300kg/m以下が好適に使用できる。
この畳床の局部圧縮量は5.5mmであり、反発弾性率は50%であった。
この畳床にイ草製畳表を積層して畳を製造した。この畳は従来の畳に比較して、座ったり寝転んだりした際に膝や肘が痛くないものであった。また、この畳の上を歩いても足跡が畳表に形成されることはなく、かつ、歩きやすいものであった。
JISA5917に定められた方法で測定した畳床の転倒衝突値は294m/sであった。JISA5917では転倒衝突値が490m/s以下の畳床が衝撃緩和型畳床とされている。
【0011】
畳床の構成はこの実施例に限定されるものではなく、ヤシ繊維板や軟質インシュレーションボード、不織布、クッション材等の各種材料の組み合わせ方や、厚さを変えたり積層の順番を変えたりすることが可能である。
畳床は縫うことにより形成することもできるし、各種材料を接着して形成することも可能である。また、それらを併用することも可能である。
【実施例0012】
比重95Kg/m、厚さ50mmのヤシ繊維板とJISA5905に規定されたタタミボードに準じた厚さ5mmの軟質インシュレーションボードとを縫い合わせることにより畳床とした。
なお、軟質インシュレーションボードは畳床の裏に積層されている。
この畳床の局部圧縮量は7mmであり、反発弾性率は44%であった。
この畳床にイ草製畳表を積層して畳を製造した。この畳は従来の畳に比較して、座ったり寝転んだりした際に膝や肘が痛くないものであった。また、この畳の上を歩いても足跡が畳表に形成されることはなく、かつ、歩きやすいものであった。
JISA5917に定められた方法で測定した畳床の転倒衝突値は245m/sであった。
【比較例1】
【0013】
実施例と同じ畳床の上に合成繊維製の畳表を積層した畳を製造した。この畳を歩くと足跡が畳表に形成された。
【比較例2】
【0014】
JISA5914に定められたKT-II型の畳床にイ草製畳表を積層した畳を製造した。
この畳床の局部圧縮量は2mmであり、反発弾性率は16%であった。
また、転倒衝突値は539m/sであった。
この畳は椅子座式の生活様式に適したものであるが、座ったり寝転んだりした際に本発明の畳床を使用した畳に比べて膝や肘が痛く床座式の生活には適していない。
【産業上の利用可能性】
【0015】
現在では生活様式は洋風が主流になっており、それに合わせて硬い畳が普及している。しかし、硬い畳はフローリング等洋風の生活様式に合った床材に取って代わられ市場規模が減少している。
しかし、部分的に床座式の生活をしたいというニーズは大きく、柔らかい畳が求められている。
床座式の生活に適した柔らかい畳により、畳の市場規模を大きくすることが可能となる。