(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106350
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】墓石の土台部分
(51)【国際特許分類】
E04H 13/00 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
E04H13/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024069339
(22)【出願日】2024-04-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】524155998
【氏名又は名称】合同会社 山と水
(74)【代理人】
【識別番号】100207251
【弁理士】
【氏名又は名称】矢島 弘文
(72)【発明者】
【氏名】小川 真弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 晃平
(57)【要約】
【課題】墓石の土台部分に貯水手段を備えることで、特別な墓石を必要とせず、光の反射を利用してよりデザイン性を高めた墓所を、低コストで実現できる墓石の土台部分を提供する。
【解決手段】敷地を囲む塀部11と、塀部11で囲まれた敷地を覆って敷地上に位置する土台基礎部12と、を備えた墓石の土台部分1。塀部の内側側面111と土台基礎部の上面121に囲まれた空間以内の空間であって当該空間に水Wを貯めるための貯水手段13を備えた貯水空間を有する。当該貯水空間は、少なくとも墓石Tの前方に位置し、少なくとも墓石の略全体を、貯めた水の上面に映すためのものである。さらに、土台基礎部12には、土台基礎部の上面121に位置して墓石Tの台座となる台座部14を備え、台座部14の上面面積は、墓石の最下部底面の面積以下である。
【選択図】
図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷地を囲む塀部と、前記塀部で囲まれた前記敷地を覆って前記敷地上に位置する土台基礎部と、を備えた墓石の土台部分であって、
前記塀部の内側側面と前記土台基礎部の上面に囲まれた空間以内の空間であって、当該空間に水を貯めるための貯水手段を備えた貯水空間を有し、
前記貯水空間は、少なくとも墓石の前方に位置し、少なくとも墓石の略全体を、貯めた水の上面に映すためのものである、
ことを特徴とする墓石の土台部分。
【請求項2】
請求項1に記載の墓石の土台部分であって、さらに、
前記土台基礎部に、前記土台基礎部の上面に位置して墓石の台座となる台座部を備え、
前記台座部の上面面積は、墓石の最下部底面の面積以下である、
ことを特徴とする墓石の土台部分。
【請求項3】
請求項1に記載の墓石の土台部分であって、さらに、
前記貯水空間の内側表面は略黒色の色彩である、
ことを特徴とする墓石の土台部分。
【請求項4】
請求項2に記載の墓石の土台部分であって、さらに、
前記貯水空間の内側表面は略黒色の色彩である、
ことを特徴とする墓石の土台部分。
【請求項5】
請求項4に記載の墓石の土台部分であって、さらに、
前記台座部の少なくとも前面の側面は略黒色の色彩である、
ことを特徴とする墓石の土台部分。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の墓石の土台部分であって、さらに、
前記貯水手段は、前記貯水空間の内側表面に、薄い形状の防水シートを覆って備えることによるものである、
ことを特徴とする墓石の土台部分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の反射を利用しデザイン性を高めた墓所を実現する墓石の土台部分に関する。
【背景技術】
【0002】
光の反射(本明細書において反射とは、正反射(鏡面反射)のことを示す)を利用することでデザイン性を高めた墓所(墓石)として、銘板の鏡面処理された反射面に、門に反射面の上方にて反射面に対向するように貫通形成された貫通穴から光の像(例えば上方の空)が現れるように構成した墓石(例えば、特許文献1参照)などがあった。
また一般製品には、墓石の土台部分の上面を鏡面加工した黒御影石等の石貼として、墓石とその反射した像とが壮麗な雰囲気を醸し出すようにしてデザイン性を高めた墓所(例えば、非特許文献1参照)などがあった。
しかし特許文献1等においては、墓石自体の加工や、墓石自体を特別な墓石に変更する必要があった。
また、非特許文献1等においては、高価な黒御影石等を必要として高コストになるという問題があった。また特に漆黒の鏡面加工した黒御影石は反射光が鮮明となるが、その分ほこりや汚れ、キズが目立ち、そのためのメンテナンスに手間とコストがかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】”遠賀霊園普通A区画6[m2]にて、インド産M10(黒御影石)の豪華な和型墓石を建立。外柵改修で全面石貼りへ、お手入れしやすいお墓”、[online]、[令和5年9月1日検索]、共同石材株式会社、インターネット<URL:https://www.kyodosekizai.jp/1355/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこれらの問題点に鑑み、墓石の土台部分に貯水手段を備えることで、特別な墓石を必要とせず、光の反射を利用してよりデザイン性を高めた墓所を、低コストで実現できる墓石の土台部分を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明による墓石の土台部分は、敷地を囲む塀部と、塀部で囲まれた敷地を覆って敷地上に位置する土台基礎部と、塀部の内側側面と土台基礎部の上面に囲まれた空間以内の空間であって、当該空間に水を貯めるための貯水手段を備えた貯水空間を有し、貯水空間は、少なくとも墓石の前方に位置し、少なくとも墓石の略全体を、貯めた水の上面に映すためのものである、ことを特徴とする。
第2の発明による墓石の土台部分は、第1の発明による墓石の土台部分であって、さらに、土台基礎部に、土台基礎部の上面に位置して墓石の台座となる台座部を備え、台座部の上面面積は、墓石の最下部底面の面積以下である、ことを特徴とする。
第3の発明による墓石の土台部分は、第1の発明による墓石の土台部分であって、さらに、貯水空間の内側表面は略黒色の色彩である、ことを特徴とする。
第4の発明による墓石の土台部分は、第2の発明による墓石の土台部分であって、さらに、貯水空間の内側表面は略黒色の色彩である、ことを特徴とする。
第5の発明による墓石の土台部分は、第4の発明による墓石の土台部分であって、さらに、台座部の少なくとも前面の側面は略黒色の色彩である、ことを特徴とする。
第6の発明による墓石の土台部分は、第1の発明から第5の発明のいずれかによる墓石の土台部分であって、さらに、貯水手段は、貯水空間の内側表面に、薄い形状の防水シートを覆って備えることによるものである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の墓石の土台部分は、貯水手段を備えており、墓石の土台部分やその一部(すなわち貯水空間)に水を貯えることで墓石を水面に映し墓石が水面に浮いているかのような印象を観察者に与え、墓所全体として壮麗でデザイン性の高い墓所を実現する。これにより、特別な墓石を必要とせず、かつ、反射に黒御影石等の高価な石を必須としないため、光の反射を利用してよりデザイン性を高めた墓所を低コストで実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施例における墓石の土台部分を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施例における墓石の土台部分の使用例として、墓石の土台部分に墓石を設置した場合を示す斜視図である。
【
図3】第1の実施例における墓石の土台部分の使用例として、墓石を設置しかつ貯水空間に水を貯めた場合を示す斜視図である。
【
図4】第1の実施例における、
図1の三面図を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。
【
図5】第1の実施例における、
図4(b)のB-B‘断面図であって、(a)は水を貯めていない場合、(b)は使用例として貯水空間に水を貯めた場合を示す。
【
図6】第2の実施例における墓石の土台部分を示す斜視図である。
【
図7】第2の実施例における墓石の土台部分の使用例として、墓石の土台部分に墓石を設置した場合を示す斜視図である。
【
図8】第2の実施例における墓石の土台部分の使用例として、墓石を設置しかつ貯水空間に水を貯めた場合を示す斜視図である。
【
図9】第2の実施例における、
図6の三面図を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。
【
図10】第2の実施例における、
図9(b)のB-B‘断面図であって、(a)は水を貯めていない場合、(b)は使用例として貯水空間に水を貯めた場合を示す。
【
図11】第3の実施例における墓石の土台部分を示す斜視図である。
【
図12】第3の実施例における墓石の土台部分の使用例として、墓石の土台部分に墓石を設置した場合を示す斜視図である。
【
図13】第3の実施例における墓石の土台部分の使用例として、墓石を設置しかつ貯水空間に水を貯めた場合を示す斜視図である。
【
図14】第3の実施例における、
図11の三面図を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。
【
図15】第3の実施例における、
図14(b)のB-B‘断面図であって、(a)は水を貯めていない場合、(b)は使用例として貯水空間に水を貯めた場合を示す。
【
図16】第4の実施例における墓石の土台部分を示す斜視図である。
【
図17】第4の実施例における墓石の土台部分の使用例として、墓石の土台部分に墓石を設置した場合を示す斜視図である。
【
図18】第4の実施例における墓石の土台部分の使用例として、墓石を設置しかつ貯水空間に水を貯めた場合を示す斜視図である。
【
図19】第4の実施例における、
図16の三面図を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。
【
図20】第4の実施例における、
図19(b)のB-B‘断面図であって、(a)は水を貯めていない場合、(b)は使用例として貯水空間に水を貯めた場合を示す。
【
図21】第5の実施例における墓石の土台部分を示す斜視図である。
【
図22】第5の実施例における墓石の土台部分の使用例として、墓石の土台部分に墓石を設置した場合を示す斜視図である。
【
図23】第5の実施例における墓石の土台部分の使用例として、墓石を設置しかつ貯水空間に水を貯めた場合を示す斜視図である。
【
図24】第5の実施例における
図23に対し、実際には見えない水底の淵と水中の台座部を、説明のために破線により示して追加した図である
【
図25】第5の実施例における、
図21の三面図を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。
【
図26】第4の実施例における、
図25(b)のB-B‘断面図であって、(a)は水を貯めていない場合、(b)は使用例として貯水空間に水を貯めた場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明による墓石の土台部分の実施例を説明する。
本発明において「貯水手段」とは、物品の形状、構造又は組み合わせによる、貯水のための手段、のことであると定義する。
本発明において「略全体」とは、完全な全体である必要はなく、全体の一部が欠けているような場合も許容される、といった意味合いである。
本発明において「貯めた水の上面に映す」とは、観察者が見た角度において、貯めた水の上面に(少なくとも墓石の略全体が)映って見える、といった意味合いである。
本発明において「内側表面」とは、内側底面と内側側面の部分のことであると定義する。
本発明において「略黒色」とは、光を可視領域でほぼ一様に吸収し、観察者に暗い感じを与える色であり、定量的には、各色相(色相を有さない無彩色と色相を有する有彩色とを含む)における明度が2以下でかつ彩度が1以下の色のことである(色の三属性(色の三要素)で表した場合:以下同様)と定義する。
ここで「ほぼ一様に吸収」には、「ほぼ一様」と「ほぼ吸収」との意味合いを有する。
「ほぼ吸収」とは、光が完全に吸収されるかそれに近い色である必要はなく、数値的には明度が2以下(のレベルの吸収率:以下同様)の色であれば良いということである。それは、明度が2以下であれば、後述する、光を物体面で吸収し水面反射を強くする機能を有するのに十分なためである。また、明度が2以下であれば後述する、影の影響(明度低下の影響)がほとんどないためである。
「ほぼ一様」とは、明度が2以下の条件のもとでは色みがあってかつ数値的に彩度が1以下のものは許容されるということである。それは、明度が2以下でありさえすれば、色みがあっても彩度が1以下の場合には、後述する、光を物体面で吸収して水面反射を強くする機能に影響をほとんど及ぼさないためである。また、色みがあっても彩度が1以下であれば後述する、影の影響(彩度低下の影響)がほとんどないためである。
【実施例0010】
図1から
図5を用いて、本実施例に係る墓石の土台部分1について説明する。
図1は、本実施例に係る墓石の土台部分1を示す斜視図である。
図2は、使用例として、
図1による墓石の土台部分1に墓石Tを設置した場合を示す斜視図である。
図3は、使用例として、
図2に対してさらに、貯水空間に水Wを貯めた場合を示す斜視図である。
図4は、
図1の三面図を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。
図5は、
図4(b)のB-B‘断面図であって、(a)は水を貯めていない場合、(b)は使用例として貯水空間に水を貯めた場合を示す。
図5(b)において墓石Tは簡単のため示されていない。
【0011】
[墓石の土台部分の構成と機能]
図1から
図4に示すように、本実施例による墓石の土台部分1は、敷地を囲む塀部11と、塀部11で囲まれた敷地を覆って敷地上に位置する土台基礎部12と、を備える。
また、塀部の内側側面111と土台基礎部の上面121に囲まれた空間以内の空間であって、当該空間に水Wを貯めるための貯水手段13を備えた貯水空間を有する。
貯水空間は、少なくとも墓石Tの前方に位置し、少なくとも墓石の略全体を、貯めた水の上面に映すためのものである。
本実施例における貯水空間は、
図1に灰色で示した塀部の内側側面111と土台基礎部の上面121、に囲まれた空間である。
また、
図5に示す様に、本実施例における貯水手段13は、貯水空間の内側表面、すなわち、塀部の内側側面111と土台基礎部の上面121に、薄い形状の防水シート13aを覆って備えることによるものである。
【0012】
本実施例による墓石の土台部分1は、貯水手段13(13a)を有することで、
図3および
図6に示す使用例の様に塀部の内側側面111と土台基礎部の上面121とで囲まれた空間すなわち貯水空間に水Wを貯めることを可能とする機能、さらにはそれにより水面反射を可能とする機能を有する。
上記水面反射の機能を最大限に発揮させるため、台座部14の底面には墓石Tに関するもの以外は極力置かない方が望ましい。だだし、
図4等では図示しないが、墓所全体のデザイン性を高めるために、例えば花(造花・生花を含む蓮の花など)等を、墓石Tの水面反射を妨げないような位置(例えば墓石に向かって左右の塀部の付近)に、例えば台座部14の底面に水面に向かって設定しても良い。これらの花等は、水面から出ていても水中に位置するものであっても良い。
貯水空間は、例えば
図5(a)の灰色で示された空間であって、その上面のみが水面反射を得るために開放され、その他の面は閉ざされた空間である。水Wは
図5(b)に示す様に、貯水空間の高さ一杯まで貯めないことが、振動等による水漏れを防止するために望ましい。
本実施例における貯水空間は、貯水空間として採用可能な空間のうち、最大限の空間を採用している。しかし本発明による貯水空間は、このような最大限の空間に限定されるものではなく、後述する貯水槽方式や囲い込み方式のように、本実施例による貯水空間よりも狭い空間であっても良い。
本実施例における塀部11は、敷地を四角く囲むものが示されているが、四角く囲むのが一般的であるためにこの様に示されているに過ぎない。本発明において、囲む形状については四角に限定されるものではなく、四角以外の多角形や円形であっても良い。また、塀部11の各角も丸みを帯びたものであっても良い。また本実施例においては
図4(a)に示される塀部11の断面形状は略長方形としているが、本発明においては略長方形に限定されるものではなく、例えば塀部上面が丸みを帯びた形状としても良い。
また、
図2、3等(以下の、実施例2から5における
図2、3に相当する斜視図も同様)に示される墓石Tは、使用例として示したものであって本発明を構成するものではないため破線で示されている。また
図2、3等により、本発明の墓石の土台部分の凡その大きさが墓石と比較して示される。
さらに
図1から
図4等(以下の、実施例2から5における
図1から4に相当する図も同様)の塀部11の正面位置に示される階段部Sは、塀部11の一部を構成するものであって、実用上必要となるものではあるが、本発明を構成するものではないため破線で示されている。但し、階段部Sの最上部(最上段)の上面は、貯水手段13を実現するために、他の塀部の上面112と同じ程度の高さにあることが望ましい。
ここで、階段部Sは墓石Tの正面側にあって、観察者が例えば階段部Sの下段や中段に登って参拝するためのスペースを想定している。ここで、図に示す段数は一例に過ぎず、何段であっても良い。
また
図1から4等(以下の、実施例2から5における
図1から4に相当する図も同様)の塀部11の各辺を繋ぐ継ぎ目Jは塀部11の一部を構成するもので、各辺を繋いで塀部11を構成する方が実用的であるため示したもので、本発明を構成するものではないため破線で示されている。
【0013】
図1から
図4等の階段部Sに相当する破線部分の形状の別例としては、最上段が、塀部11の前方辺の貯水側側面よりも貯水方向側すなわち墓石方向側に突き出した、いわゆる円形バルコニーの様な形状(今後「バルコニー形状」と略す)になっていても良い。バルコニー形状は、
図1から
図4等で見られるところの中段の参拝スペースが、貯水方向側に延長された形状であるともいえる。バルコニー形状の場合、墓石Tとバルコニー形状部分との間隔は、当該間の水面に少なくとも墓石の略全体が映る程度の距離を有することが望ましい。
また、バルコニー形状の場合、バルコニー形状の部分の面積は、単にいわゆる三具足や五具足等の仏具を置く程度の狭い面積であっても良いし、人間が入れるような広い面積のものであっても良い。また、人間が入れるような広い面積を有し、かつ、仏具を置く程度の狭い面積を追加で有するものであっても良い。
図1から
図4等の階段部Sに相当する破線部分の形状の更なる別例としては、バルコニー形状であるか否かにかかわらず、階段状ではない形状(すなわち
図1から
図4等で示すところの下段や中段がないもの)であっても良い。階段状ではない形状の場合、下段と最上段のみであって、下段の上面が塀部11の底面位置と一致する、すなわち、下段が地面に埋め込まれたものであっても良い。階段状ではない形状の場合は、いわゆるバリアフリーの形状といえ、バリアフリーの機能を有することになる。
バルコニー形状、かつ、階段状ではない形状の場合、バルコニー形状の部分の面積を車いすが入れる程度のスペースとしても良い。
【0014】
[貯水手段について]
本実施例による貯水手段13は、一旦貯めた水の漏水を防水シート13aにより防止することで貯水状態を維持する手段である。
しかし、本発明による貯水手段は、本実施例による手段(以降、防水シート方式と記載する)に限定されるものではなく、防水シート方式以外に例えば以下の方式であっても良い。
なお、貯水した水が墓石の納骨室へ入らないようにするのは当然行うべき措置であり、一般的な手段によるものとしてここでは触れない。
【0015】
<給水方式>
垂れ流し給水方式:常に水道や川から墓石の土台部に給水し墓石の土台部の継ぎ目等から常に(故意に)排水することで、常に一定量が墓石の土台部に貯められる手段である。
循環給水方式:墓石の土台部の継ぎ目等から常に(故意に)排水し、排水分を常に循環ポンプ等で元に戻すことで、常に一定量が墓石の土台部に貯められる手段である。
適宜給水方式:墓石の土台部の継ぎ目等から排水される等で減少した水量を水道等から自動的または手動で適宜給水する手段である。
<漏水を防止する他の方式>
墓石の土台部自体による方式:塀部と土台基礎部を一体化したり墓石の土台部の材質自体が漏水しないものとする事により墓石の土台部自体が漏水を生じないものとする手段である。
貯水槽方式:所定の高さの貯水槽を貯水すべき空間位置に備える手段である。すなわち防水シート方式の防水シートの代わりに貯水槽を用いたものである。なお、貯水槽方式の場合、貯水槽の底面面積は土台基礎部の上面面積よりも小さいものであっても良い。すなわち、塀部の内側側面と土台基礎部の上面に囲まれた空間よりも狭い上面面積を有する貯水空間を貯水槽により作成するものであっても良い。
貯水槽方式を採用した場合、貯水槽自体が貯水手段である。また、貯水槽は少なくとも墓石の前方に位置して、少なくとも墓石の略全体が貯めた水の上面(貯水槽の水面)に映る程の上面面積を有するものであれば良い。
囲い込み方式:塀部よりも内側にあって、土台基礎部の上面に設定した新たな塀部(周辺を全て新たな塀部としても、一部に既存の塀部を使用したものとしても良い)により囲い込みを行うことで水を貯め、貯水空間を作成する方式である。この方式においては、防水シート方式等の他の漏水防止方式との併用が必要になる場合がある。
囲い込み方式を採用した場合、その囲い込みは少なくとも墓石の前方に位置して、少なくとも墓石の略全体が貯めた水の上面に映る程度の上面面積を有するものであれば良い。
簡易漏水防止方式:継ぎ目部分に止水剤、防水剤、パッキン、シーリングテープを設けることで簡易に漏水を防止する手段である。
【0016】
ここで、本発明における貯水手段は、これらの方式同士または防水シート方式とを組み合わせたものであっても良い。
【0017】
なお、防水シート方式および防水シート方式に限らず場合によっては他の方式でも、各貯水手段に付属して排水口が必要となる場合がある。例えば、雨水等により所望水位よりも水嵩が増加した場合の排水口(例えば、継ぎ目等において所望水位位置やそれ以上の位置に設置する)である。また、貯めた水が濁った場合に排水するための排水口(例えば、継ぎ目等において基礎部上面位置に設置する)である。後者は通常時は蓋等で排水を止める。本実施例では簡単のためこれらの排水口については図示を省略する。
また、
図5(以下の、実施例2から5における
図5に相当する図も同様)で示される通り、本実施例においては塀部11と土台基礎部12との関係は、土台基礎部12の外周辺の側面に塀部11の下部を付ける構成となっている。しかし本発明はこの様な構成に限定するものではなく、漏水防止の策を実施するため、または、給水方式での排水を実施するため、塀部11と土台基礎部12とを一体化したり、土台基礎部12の外周辺の上面に塀部11を載せる構成としても良い。
【0018】
ここで、排水口を応用し、貯水手段において水時計の機能を有するものが別例として考えらえる。水時計の機能とは、例えば貯水槽方式において貯水槽の中心に排水口を設け、排水口から徐々に水を排水することで塀部に設けたメモリ等や水が流れ落ちた現象自体により経過時間を図れるようにするものである。
特に貯水槽方式において上記水時計機能を実現する場合、貯水槽の水を貯めた側の底の面の色に関わらず、貯水槽の底全体の素材を透明な素材とすることで、排水口から水が流れ落ちるのを観測者が観測できるようにしてデザイン性を高めても良い。
【0019】
[墓石の土台部分の使用例と効果]
墓石の土台部分1の使用例として、先ず、
図2に示す様に、墓石Tを墓石の土台部分1の土台基礎部の上面112に設置する。
次に、
図2の状態から、
図3に示す様に、塀部の内側側面111と土台基礎部の上面121とで囲まれた空間すなわち貯水空間に水を貯める。
【0020】
墓石Tは、貯めた水Wによる水面反射の機能、または貯めた水Wの水底(貯めた水Wより下方の、塀部の内側側面111部分と土台基礎部の上面121部分のことをいう;以下同様)の反射により、その像が周りの風景(草木や空・雲等;以下同様)と共に逆さに映る効果を有する。さらに墓石Tが、そのような反射して逆さに映った像により水面に浮いているかのような印象を観察者に与えるといった効果を有する。
前記、墓石Tが反射像として周りの風景と共に映る効果と、水面に浮いているかのような印象を観察者に与える効果により、さらに、実像である墓石Tと墓石の土台部分1と併せて見た場合に、観察者に、これら全体すなわち墓所が、壮麗かつ幻想的なものであるとの心象を与え、デザイン性の高い墓所を実現できるといった効果を有する(以下の実施例2から5も同様)。
また、特別な墓石を必要とせず、かつ、反射に黒御影石等の高価な石を必須としないため、光の反射を利用してよりデザイン性を高めた低コストの墓所を実現できるという効果を有する(以下の実施例2から5も同様)。
さらに、貯水槽方式や囲い込み方式を採用した場合においては、既存の土台基礎部に設定するのみであるため、既存の土台基礎部に対する大掛かりな加工を必要しないか全く手を加える必要が無いため、さらに低コストで光の反射を利用したデザイン性を高めた墓所を実現できるという効果を有する(以下の実施例2から5も同様)。さらにこれらの方式において、貯水空間を墓石の前方位置のみに設定する場合には、貯水空間に墓石本体が存在しないため、貯水による墓石の納骨室への漏水防止を施す必要が無く、さらに低コストで光の反射を利用したデザイン性を高めた墓所を実現できるという効果を有する(以下の実施例2から5も同様)。