(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106357
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】音響監視システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20240801BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240801BHJP
G08B 13/16 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
G08B13/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010573
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】仲條 真布
(72)【発明者】
【氏名】山川 一平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠
【テーマコード(参考)】
5C084
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
5C084AA02
5C084AA16
5C084BB04
5C084DD02
5C084EE01
5C084HH12
5C084HH13
5C086AA22
5C086CA09
5C086CB26
5C086DA08
5C086DA14
5C086DA40
5C086FA18
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA25
5C087BB74
5C087DD03
5C087DD20
5C087EE07
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG11
5C087GG17
5C087GG66
(57)【要約】
【課題】プライバシーの保護を図った上で、音信号に基づいて監視対象エリアの状態推定を実行する機能を備えた音響監視システムを得る。
【解決手段】監視対象エリアで発生する音響情報を収音するマイクと、音信号を記憶する記憶部と、音響情報に含まれている会話内容以外の情報を非音声情報として抽出し、非音声情報と収音時刻とを関連付けたデータを音信号として生成して記憶部に記憶させ、音信号に基づいて監視対象エリアの状態推定を実行し、状態推定結果を知らせる発報処理を実行する制御部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象エリアで発生する音響情報を収音するマイクと、
音信号を記憶する記憶部と、
前記音響情報に含まれている会話内容以外の情報を非音声情報として抽出し、前記非音声情報と収音時刻とを関連付けたデータを前記音信号として生成して前記記憶部に記憶させ、前記音信号に基づいて前記監視対象エリアの状態推定を実行し、状態推定結果を知らせる発報処理を実行する制御部と
を備える音響監視システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記記憶部に記憶された前記音信号に基づいて、前記監視対象エリアに居住している居住者に起因した生活音情報を収集し、
収集した前記生活音情報に基づいて前記居住者の生活リズムを推定することで前記状態推定を実行する
請求項1に記載の音響監視システム。
【請求項3】
前記制御部は、あらかじめ設定された侵入者警戒時間帯において、前記記憶部に記憶された前記音信号の音圧レベルの大きさから侵入者の有無を推定することで前記状態推定を実行する
請求項1に記載の音響監視システム。
【請求項4】
前記マイクは、複数の異なる箇所に設置された複数のマイクで構成され、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記複数のマイクに関するそれぞれの音信号の音圧レベルの遷移状態から音発生源の位置および移動方向を推定することで前記状態推定を実行する
請求項1に記載の音響監視システム。
【請求項5】
前記制御部は、火災が発生したことを知らせる火災信号を受信した場合には、前記火災信号の受信時刻前のあらかじめ設定された時間幅において前記記憶部に記憶されている前記音信号に基づいて、前記監視対象エリアにおける人の存在を推定することで前記状態推定を実行する
請求項1に記載の音響監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視対象エリアで発生する音響情報に基づいて監視対象エリアの状態推定を行う音響監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災発生が検知されたときに収音手段により収集された音信号に人の音声を示す信号が含まれているか否かを判別することによって、逃げ遅れた人がいるか否かを判定し、判定結果を表示する火災報知設備がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に係る火災報知設備によれば、各火災感知器の状態情報と各収音手段の音信号を同一の信号線で収集することができる。さらに、火災時に逃げ遅れた人がいることを火災受信機に表示できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、音信号に人の音声を示す信号が含まれているか否かを判別することで、逃げ遅れた人がいるか否かを判定している。しかしながら、設置環境によっては、プライバシー保護の観点から、会話内容を特定できる信号を収集する設備の設置までは制限される場合も考えられる。
【0006】
一方、音信号は、逃げ遅れの判定ばかりでなく、例えば、高齢者施設、病院などの各部屋における在室者の転倒時、異常事態発生時、などに有効活用することが期待される。
【0007】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、プライバシーの保護を図った上で、音信号に基づいて監視対象エリアの状態推定を実行する機能を備えた音響監視システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る音響監視システムは、監視対象エリアで発生する音響情報を収音するマイクと、音信号を記憶する記憶部と、音響情報に含まれている会話内容以外の情報を非音声情報として抽出し、非音声情報と収音時刻とを関連付けたデータを音信号として生成して記憶部に記憶させ、音信号に基づいて監視対象エリアの状態推定を実行し、状態推定結果を知らせる発報処理を実行する制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、プライバシーの保護を図った上で、音信号に基づいて監視対象エリアの状態推定を実行する機能を備えた音響監視システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る音響監視システムの全体構成を示した説明図である。
【
図2】本開示の実施の形態1における実施例1に対応した音響監視システムの説明図である。
【
図3】本開示の実施の形態1における実施例2に対応した音響監視システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の音響監視システムの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る音響監視システムは、非音声情報に基づいて監視対象エリアの状態を推定し、推定結果を知らせる機能を備えていることを技術的特徴としている。この結果、プライバシーの保護を図った上で、種々の用途において、音信号に基づいて監視対象エリアの状態推定を実行することができる顕著な効果を実現できる。
【0012】
実施の形態1.
本開示に係る音響監視システムは、プライバシー保護を考慮して、会話内容までは記録しない音信号に基づいて、監視対象エリアにおいて、在席状態の推定、生活リズムの推定、侵入者の有無の推定など、種々の用途に適用可能であり、
図1~
図3を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本開示の実施の形態1に係る音響監視システムの全体構成を示した説明図である。本実施の形態1に係る音響監視システムは、マイク10、制御部20、および記憶部30を備えて構成されている。
【0014】
マイク10は、監視対象エリア1で発生する音響情報を収音する。ここで、監視対象エリア1の具体例としては、高齢者施設、病院、学校、ビルなどに含まれるエリアが挙げられる。マイク10は、監視対象とする各居室や各部屋の内または外など、監視対象の室内の音響を収音可能な位置に設けられる。
【0015】
制御部20は、監視対象エリア1で発生した音響情報をマイク10を介して収音する。収音した音響情報に対して音の周波数分析等による公知の音源分離技術を用いて、収音した音声を人の声と環境音とに分離する解析処理を行うことで、人の声や会話などが含まれる音を音声情報として、物音や生活音などの環境音を非音声情報として、それぞれ分類および抽出することが可能である。
【0016】
すなわち、本実施の形態1に係る制御部20は、プライバシー保護を考慮して、会話内容を特定するための音声認識処理は実行せず、人の行動に起因して発生する会話内容以外の物音や生活音情報を非音声情報として抽出する。
【0017】
制御部20は、抽出した非音声情報と、非音声情報を含む音響情報の収音時刻とを関連付けたデータを音信号として生成して、記憶部30に記憶させる。ここでいう収音時刻とは、会話内容以外の物音などの生活音が発生した発生時刻を示し、その生活音を収音した時刻のことである。記憶部30には音信号だけでなく音声情報を含む音響情報も記憶させることが可能である。
【0018】
さらに、制御部20は、音信号に基づいて監視対象エリア1の状態推定を実行し、状態推定結果を知らせる発報処理を実行する。また、記憶部30に音信号を蓄積することで、同様の音信号が所定回数蓄積されたとき、監視対象エリアの状態推定パターンとして記憶してもよい。
【0019】
具体的には、制御部20は、記憶部30に記憶された音信号に基づいて、決まった時間帯において、ベッドや布団の物音がする、食器や食事音がする、シャワーやトイレの水の音がする、など、決まった時刻と決まった物音の組合せから状態推定パターンを生成し、記憶部30に記憶させることもできる。
【0020】
次に、種々の監視対象エリアにおいて制御部20により実行される状態推定の具体例について、実施例に即して詳細に説明する。
【0021】
<実施例1:居住者の生活リズムを推定することで状態推定を実行するケース>
実施例1では、高齢者施設を例に、各居室内における居住者の生活リズムを、音響情報に基づいて推定することで、状態推定を行うケースについて説明する。
【0022】
高齢者施設では、居住している高齢者が居室内で転倒することがあり、転倒を未然に防止する、あるいは転倒したことを早期に発見することが重要となる。転倒を未然に防止する、あるいは転倒したことを早期に発見するためには、担当者による定期的な巡回、夜間の見回りなどが行われている。
【0023】
例えば、転倒事故が起こるケースとしては、寝起きのタイミング、就寝前のタイミング、一人でトイレに行くタイミングなど、それぞれの居住者の生活リズムに直結したタイミングで発生することがある。
【0024】
そこで、実施例1において、制御部20は、監視対象エリア1である居室ごとに収集した音響情報と収音時刻から生成した音信号に基づいて、監視対象エリア1の状態推定、例えば、各居住者の寝起きのタイミング、就寝前のタイミング、トイレに行くタイミングなどを生活リズムとして推定し、転倒が発生しやすいタイミングを状態推定結果として報知する。
【0025】
また、制御部20は、状態推定パターンを生成した場合は、状態推定パターンに合わない音響情報を収音した場合に注意を促す報知をしてもよい。例えば、制御部20は、夜の11時にトイレに行く生活リズムのある居住者の生活行動パターンを音響情報から推定できている際に、記憶部30に記憶されていないその音響情報とは異なる音信号を検出した場合には、居住者に転倒などの事故が発生したものと判断し、報知することができる。
【0026】
この結果、高齢者施設の担当者など、管理者は、各居住者の生活リズムに合わせて、転倒が発生しやすいタイミングに合わせて巡回を行うことで、適切なサポート、監視を行うことができる。また、普段と異なる状態推定パターンが発生した場合、管理者が注意を向けることができるので、転倒事故を未然に防ぐ、あるいは転倒事故が発生した場合にも早期に発見することができる。
【0027】
図2は、本開示の実施の形態1における実施例1に対応した音響監視システムの説明図である。
図2では、高齢者施設の8つの居室A~Hに対して、それぞれ、ドアの外側にマイク10が設置されている。ここで、8つの居室A~Hは、それぞれ、監視対象エリア1(1)~1(8)に相当する。
【0028】
監視カメラではなくマイク10を使用することで、各居住者に対して、監視されているという不安感を与えることを低減させることができる。また、マイク10を居室の外側に設置するので、人の音声や会話内容までは収音されず、人の行動に起因して発生する生活音が中心に収音されるので、各居住者のプライバシー保護を図ることもできる。
【0029】
制御部20は、マイク10を介して収音した居室A~Gのそれぞれの音響情報に含まれている会話内容以外の情報を非音声情報として抽出し、非音声情報と収音時刻とを関連付けたデータを音信号として生成して、記憶部30に記憶させる。
【0030】
次に、制御部20は、記憶部30に記憶された居室ごとの音信号に基づいて、監視対象エリアである各居室の居住者に起因した生活音情報を収集する。具体的には、制御部20は、記憶部30に記憶された居室ごとの音信号に基づいて、窓、カーテンを開け閉めする音、寝静まっている音、入浴する音、トイレの水を流す音などに分類分けし、発生時刻と関連付けて収集することで、生活音情報を収集する。
【0031】
次に、制御部20は、収集した生活音情報に基づいて、居住者ごとの生活リズムを推定することで状態推定を実行する。具体的には、制御部20は、収集した生活音情報から、居住者ごとに、起床、就寝、昼寝、入浴、トイレなどのタイミングを生活リズムとして推定する。
【0032】
なお、制御部20は、より多くの日にちにわたって収集した音響情報に基づいて生活リズムを推定することで、居住者ごとの生活リズムの推定精度を向上させることができる。
【0033】
そして、制御部20は、居住者ごとの生活リズムの推定結果を高齢者施設の担当者に知らせる発報処理を行う。この結果、高齢者施設の担当者は、居住者ごとの生活リズムの推定結果に基づいて、適切なタイミングで居住者をサポートしたり、巡回したりすることができ、転倒事故の未然防止、および転倒事故の早期発見を図り、高齢者を適切に見守ることができる。
【0034】
なお、上述した実施例1においては、担当者が、生活リズムの推定結果に基づいて、転倒防止を図るためのサポート、巡回を行う場合を例示したが、生活リズムの推定結果の利用は、この例に限定されるものではない。
【0035】
担当者は、例えば、生活リズムの推定結果に基づいて、居住者ごとに薬を飲むタイミング、食事をするタイミングなどを把握することもでき、居住者に合わせたサポート業務、誤嚥の防止などに有効活用することができる。
【0036】
また、上述した実施例1においては、高齢者施設を対象に説明したが、病院など、その他の施設を対象とすることも可能である。
【0037】
<実施例2:侵入者の有無を推定することで状態推定を実行するケース>
実施例2では、学校を例に、校舎内への侵入者の有無を、音響情報に基づいて推定することで、状態推定を行うケースについて説明する。
【0038】
学校、ビルなどの施設では、夜間等に不審者の侵入などの異常事態が発生していないかを、担当者が巡回警備する場合がある。
【0039】
そこで、実施例2において、制御部20は、校舎内で収集した音響情報に基づいて、侵入者の足音、ドアなどの開閉音、ガラスが割れる音などの発生状況を推定し、不審な音が推定された際に、侵入者がいることを状態推定結果として報知する。
【0040】
この結果、巡回警備の省人化、効率化を図り、学校、ビルなどの施設を夜間等に見守り、異常事態が発生した場合にも早期に対応することができる。
【0041】
図3は、本開示の実施の形態1における実施例2に対応した音響監視システムの説明図である。
図3では、小学校における5つの教室1~5、教員室、音楽室、廊下の適切な位置に対して、マイク11~14が設置されている。ここで、5つの教室1~5は監視対象エリア1(1)~1(5)に相当し、教員室は監視対象エリア1(6)に相当し、音楽室は監視対象エリア1(7)に相当し、廊下は監視対象エリア1(8)に相当する。
【0042】
図3では、監視対象エリア1(1)~1(5)に5つのマイク11が配置され、教員室は監視対象エリア1(6)にマイク12が配置され、監視対象エリア1(7)にマイク13が設置され、監視対象エリア1(8)に4つのマイク14が設置されている場合を例示している。
【0043】
なお、
図3では、制御部20および記憶部30の記載を省略している。
【0044】
制御部20は、あらかじめ設定された侵入者警戒時間帯において、記憶部30に記憶された音信号の音圧レベルの大きさから、侵入者の有無を推定することで状態推定を実行する。
【0045】
すなわち、制御部20は、侵入者警戒時間帯において、あらかじめ設定した音圧レベル以上の音信号が検出された場合には、設定値以上の音圧レベルの音信号の解析を行い、例えば人の騒ぎ声などの音声情報か、または、例えば侵入者の足音、ドアなどの開閉音、ガラスが割れる音などの非音声情報かを抽出し、収音した音信号がどちらの情報かを示したうえで管理者へ注意を促す報知を行うことができる。
【0046】
これにより、本来は生じない音が発生していると推定し、異常事態が発生したおそれがあると判断することができる。
【0047】
そして、制御部20は、異常事態が発生したおそれがあることを知らせる発報処理を行う。この結果、学校、ビルなどの施設における警備担当者は、異常事態が発生したおそれがあることを迅速に把握でき、即座に適切な対応を取ることができ、夜間等に異常事態が発生した際にも迅速に対応できるように、施設を見守ることができる。
【0048】
<実施例3:音発生源の位置および移動方向を推定することで状態推定を実行するケース>
先の実施例2では、記憶部30に記憶された音信号の音圧レベルの大きさから、侵入者の有無を推定する場合について説明した。これに対して、実施例3では、複数のマイクにより収音された音響情報を利用して、音発生原に相当する侵入者の位置、および侵入者の移動方向を推定する場合について説明する。
【0049】
先の
図3では、複数の異なる箇所にマイク11~14が設置されている。そこで、制御部20は、記憶部30に記憶された複数のマイク11~14に関するそれぞれの音信号の音圧レベルの遷移状態から、音発生源の位置および移動方向を推定することで状態推定を実行することができる。
【0050】
例えば、制御部20は、複数のマイク11~14に関するそれぞれの音信号の音圧レベルのうち、最も高い音圧レベルの音信号を収集したマイクの位置に不審者がいると推定する。また、制御部20は、最も高い音圧レベルの音信号を収集したマイクの位置が、時間経過とともに遷移していく状態から、侵入者の移動方向を推定できる。
【0051】
そして、制御部20は、推定できた不審者の位置および移動方向を知らせる発報処理を行う。この結果、学校、ビルなどの施設における警備担当者は、侵入者による異常事態が発生したおそれがあることを、位置および移動方向に基づいて迅速に把握でき、即座に適切な対応を取ることができる。
【0052】
特に、実施例3によれば、警備担当者は、侵入者がいると思われる位置および移動方向を状態推定結果として知ることができ、侵入者から施設を適切に守るための適切な対応が取りやすくなる。
【0053】
なお、上述した実施例3においては、
図3に適用する場合について説明したが、
図2など、その他の監視対象エリアに対しても適用可能である。例えば、
図2に示した高齢者施設に適用する場合には、侵入者の位置、移動方向を推定する以外にも、高齢者が夜中に徘徊した場合の位置、移動方向を迅速に推定して発報することができる。
【0054】
すなわち、適用する監視対象エリアの特性に応じて、音発生源の位置および移動方向を迅速に推定し、推定結果に基づいて適切な対応を行うことが可能となる。
【0055】
<実施例4:人の存在を推定することで状態推定を実行するケース>
従来技術として説明した特許文献1には、火災が発生したことを知らせる火災信号が発生した際に、各収音手段から得られた音信号に人の音声を示す信号が含まれているか否かを判別することによって、逃げ遅れた人がいるか否かを判定する技術が開示されている。
【0056】
しかしながら、火災信号が発生した後には、非常放送の音、警報ベルの音、各防災機器が動作する音などが発生し、逃げ遅れた人の音声を示す信号を正確に抽出できないおそれがある。そこで、実施例4に係る音響監視システムでは、火災信号が発生する直前に収集された音信号から、監視対象エリアに人が存在したか否かを推定する技術について説明する。
【0057】
なお、実施例4に係る音響監視システムは、火災を監視し信号を発することで火災を報知する火災システムと接続するものとして記載するが、火災システムと接続させずとも実施可能である。例えば、収音した音響情報から火災を知らせる警報音を抽出し、警報音の発生直前の音信号を解析および抽出し、音声情報が抽出されたときは監視対象エリアに人が存在したと推定する方法などが考えられる。
【0058】
制御部20は、火災システムからの火災信号を受信できる受信機能をさらに設け、火災システムから火災信号が発生する前から、音信号を記憶部30に記憶させておく。例えば、制御部20は、あらかじめ設定された時間幅で、記憶部30に記憶させる音データを順次更新することができる。
【0059】
あらかじめ設定された時間幅の具体例としては、10分間などが挙げられる。この場合には、制御部20は、火災信号の受信時刻前の直近10分間において記憶部30に記憶されている音信号を参照することができる。
【0060】
そして、制御部20は、直近10分間による音信号の中に、人の行動に起因して発生する音が含まれている場合には、火災信号を受信する前の直近10分間に監視対象エリア内に人が存在したことを推定することで状態推定を実行する。
【0061】
人の行動に起因して発生する音としては、実施例1で説明した生活音、実施例2、3で説明した音発生源などが挙げられる。
【0062】
このようにして、制御部20は、火災信号の受信時刻前のあらかじめ設定された時間幅において、監視対象エリア内における人の存在を推定することができる。火災信号の受信時刻前において推定処理を行うことで、火災信号が発生した後に発生する、非常放送の音、警報ベルの音、各防災機器が動作する音などが、推定精度に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0063】
また、制御部20は、人の音声を抽出するのではなく、人の行動に起因して発生する音を抽出し、人の存在を推定している。従って、音声が発生していない状況、あるいは音声が正確に認識できない状況においても、人の存在を推定することができる。
【0064】
さらに、制御部20は、監視対象エリア内に人が存在することが推定できた場合には、対応するマイクの位置に基づいて、人が存在すると推定される概略の位置情報を知らせる発報処理を行うことができる。
【0065】
従って、火災信号が受信された時点において、迅速に監視対象領域内における人の有無を推定でき、適切な救助活動、避難誘導活動の一助とすることができる。
【0066】
以上のように、実施の形態1に係る音響監視システムによれば、監視対象エリアで発生した非音声信号に基づいて、監視対象エリアの状態推定を実行する機能を備えている。そして、実施例1~実施例4で詳細に説明したように、実施の形態1に係る音響監視システムによれば、種々の用途において、状態推定に基づく発報処理を行うことができる。
【0067】
この結果、プライバシー保護を図った上で、監視対象エリアを、その用途に応じて、音信号に基づいて適切に見守ることのできる音響監視システムを実現することができる。特に、以下のような用途において、有効に活用できることが期待される。
【0068】
・居住者の生活リズムを推定することにより、転倒防止、在室確認等が実施できる。
・夜間等の警備において音発生源を推定することにより、侵入者、窓ガラスの破損などの異常事態を監視できる。
・火災発生時に関しては、火災信号受信前の人の存在を推定することにより、迅速に、救助活動、避難誘導作業の助けとなる情報を発報することができる。
【0069】
すなわち、本実施の形態1に係る音響監視システムは、防犯、防災、居住者の見守りなど、種々の用途において、必要な状態推定に伴う適切な発報処理を行うことができる。また、本実施の形態1に係る音響監視システムは、システム単独としても機能するが、システム構成が複雑でないため、自動火災報知設備などの既存の設備に対して容易に後付けすることができるメリットもある。
【符号の説明】
【0070】
1 監視対象エリア、10~14 マイク、20 制御部、30 記憶部。