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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106360
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】架橋装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 18/00 20060101AFI20240801BHJP
   B63B 27/14 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
E01D18/00 C
B63B27/14 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010581
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 慶太朗
(72)【発明者】
【氏名】石川 勝
(72)【発明者】
【氏名】矢野 翔大
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059BB10
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】波浪などの影響によって瞬時的で不規則な動揺が生じた場合でも架橋部の先端部が洋上施設の上陸目標(即ち、目標設備)から離脱することを回避して作業員の転落を防止し、かつ、小型船舶にも搭載可能な架橋装置または架橋システムを提供する。
【解決手段】架橋装置1は、船舶に設置され、テーブル4を支持するとともに、船舶の動揺に対するテーブル4の傾斜を制御してテーブル4の水平方向に対する角度を一定に保つ動揺補正機構3と、テーブル4側の一端が軸支部5によって軸支持され、他端がテーブル4に対して上向き及び下向きに傾斜動作して目標設備7に掛けられる架橋部2と、テーブル4に設置され、前記架橋部が前記テーブルの上面に対して垂直な回動軸を中心に回動自在となるように軸支部5を支持する架橋部回動機構6と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に設置され、テーブルを支持するとともに、船舶の動揺に対する前記テーブルの傾斜を制御して前記テーブルの水平方向に対する角度を一定に保つ動揺補正機構と、
前記テーブル側の一端が軸支部によって軸支持され、他端が前記テーブルに対して上向き及び下向きに傾斜動作して目標設備に掛けられる架橋部と、
前記テーブルに設置され、前記架橋部が前記テーブルの上面に対して垂直な回動軸を中心に回動自在となるように前記軸支部を支持する架橋部回動機構と、
を有することを特徴とする架橋装置。
【請求項2】
前記架橋部回動機構に設けられ、前記架橋部が前記テーブルに対してスライド自在となるように前記軸支部を支持する架橋部スライド機構を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の架橋装置 。
【請求項3】
前記架橋部が前記架橋部の長手方向に進退自在なアクセス部を有し、
前記アクセス部は、前記他端の先端から突出して前記目標設備に接触する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の架橋装置。
【請求項4】
前記架橋部の前記目標設備からの離脱を検知するセンサーと、
前記センサーが前記離脱を検知した時に、前記架橋部の傾斜が、前記離脱時の傾斜角度よりも下方向に所定角度以上傾斜しないように、または、前記架橋部を上方向に傾斜させるように制御する架橋部傾斜制御機構と、を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の架橋装置。
【請求項5】
前記動揺補正機構の下方、または、前記テーブルと前記架橋部回動機構との間に設置され、前記架橋部の高さを調整する高さ調整機構を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の架橋装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の架橋装置と、
前記目標設備に移動自在に設けられ、前記目標設備の端部から突出して前記架橋部の他端に接触する移動ステージと、を備える、
ことを特徴とする架橋システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、架橋装置に関し、具体的には、船舶から洋上施設または陸上などへと乗り移る際の架橋からの転落を防止する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
波浪環境において船舶から洋上施設へと乗り移る際の橋桁部の動揺を抑制して安定性を保とうとする機構として、6自由度モーションベースにより支持された天板と、この天板の上面から横方向に延長された橋桁部とを備えた可動式桟橋であり、橋桁部が複数の分割体を長手方向に接続して構成され、長手方向に隣接する分割体同士を接続する少なくとも1つの水平回転機構と、長手方向に隣接する分割体同士を接続する少なくとも1つの上下回転機構とを備え、水平回転機構を中心にしてこの水平回転機構を介して接続される分割体を水平方向に回動可能にし、上下回転機構を中心にしてこの上下回転機構を介して接続される分割体を上下方向に回動可能にし、さらに、橋桁部の先端に設けたマグネットを洋上施設に吸着して接続する可動式桟橋が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-137451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の可動式桟橋では、不規則で突発的な波浪が生じた場合、橋桁部の先端が洋上施設に対してマグネットで連結されているために橋桁部の先端部や分割体同士の接続部などを破損するおそれがあり、その場合には、乗り移ろうとしていた作業員が転落したり、橋桁部の先端が洋上施設に衝突したりする、という問題がある。
【0005】
また、特許文献1の稼働式桟橋では、動揺補正機構として6本のアクチュエータを有する「6自由度モーションベース」を使用しており、中大型船に搭載して使用されることを前提としている。しかしながら、洋上施設へのアクセス船としては小型船舶が使用されることが多く、特許文献1に記載の大がかりな装置をそのまま適用することは難しいという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、波浪などの影響によって瞬時的で不規則な動揺が生じた場合でも架橋部の先端部が洋上施設の上陸目標(即ち、目標設備)から離脱することを回避して作業員の転落を防止することが可能であり、かつ、小型船舶にも搭載可能な架橋装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、船舶に設置され、テーブルを支持するとともに、船舶の動揺に対する前記テーブルの傾斜を制御して前記テーブルの水平方向に対する角度を一定に保つ動揺補正機構と、前記テーブル側の一端が軸支部によって軸支持され、他端が前記テーブルに対して上向き及び下向きに傾斜動作して目標設備に掛けられる架橋部と、前記テーブルに設置され、前記架橋部が前記テーブルの上面に対して垂直な回動軸を中心に回動自在となるように前記軸支部を支持する架橋部回動機構と、を有することを特徴とする架橋装置である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の架橋装置において、前記架橋部回動機構に設けられ、前記架橋部が前記テーブルに対してスライド自在となるように前記軸支部を支持する架橋部スライド機構を有する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の架橋装置において、前記架橋部が前記架橋部の長手方向に進退自在なアクセス部を有し、前記アクセス部は、前記他端の先端から突出して前記目標設備に接触する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1または2に記載の架橋装置において、前記架橋部の前記目標設備からの離脱を検知するセンサーと、前記センサーが前記離脱を検知した時に、前記架橋部の傾斜が、前記離脱時の傾斜角度よりも下方向に所定角度以上傾斜しないように、または、前記架橋部を上方向に傾斜させるように制御する架橋部傾斜制御機構と、を有する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1または2に記載の架橋装置において、前記動揺補正機構の下方、または、前記テーブルと前記架橋部回動機構との間に設置され、前記架橋部の高さを調整する高さ調整機構を有する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1または2に記載の架橋装置と、前記目標設備に移動自在に設けられ、前記目標設備の端部から突出して前記架橋部の他端に接触する移動ステージと、を備える、ことを特徴とする架橋システムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、動揺補正機構を備えるので、波浪による横揺れや縦揺れに対してもテーブルの水平方向に対する角度を一定に保つことが可能となる。また、架橋部のテーブル側の一端が軸支部によって軸支持され、架橋部の他端がテーブルに対して上向き及び下向きに傾斜動作するので、不規則で突発的な波浪によって船体が瞬時的に上下方向に不規則に動揺しても、目標設備への安全な乗り移りを確保することが可能となる。また、テーブルに設置された架橋部回動機構によって架橋部がテーブルの上面に対して垂直な回動軸を中心に回動自在となるので、不規則で突発的な波浪によって船体が瞬時的に左右方向に動揺しても、目標設備との位置関係を左右方向で調整することができ、目標設備への安全な乗り移りを確保することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、架橋部スライド機構により架橋部をテーブルに対してスライド自在に移動させることができるので、架橋装置を使用しない時には、架橋部を船体手前側に引き込んでコンパクトに収納することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、架橋部の長手方向に進退自在に設置されたアクセス部が、架橋部の他端の先端から突出するようになっているので、目標設備との位置関係を前後方向で調整し、架橋部が目標設備から離脱することを回避し、船舶から目標設備に乗り移ろうとする作業員の安全を確保することが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、架橋部の目標設備からの離脱を検知するセンサーを有し、センサーが離脱を検知した時には、架橋部の傾斜が所定角度以上、下方向に傾斜しないように、または、架橋部が上向きに傾斜されるように制御するので、より確実に離脱を検知することができるとともに、作業員が架橋部から海中へ転落することを回避することが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、架橋部の高さを調整することができるので、架橋部を上向きに傾斜させただけでは到達不可能または到達困難な高さにある目標設備に対して、容易に乗り移ることが可能となる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、目標設備側に移動ステージが移動自在に設けられており、目標設備の端部から突出して、架橋部の他端に接触するようになっているので、架橋部と目標設備との位置関係を前後方向で調整し、架橋部が目標設備から離脱することを回避し、船舶から目標設備に乗り移ろうとする作業員の安全を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の実施の形態1に係る架橋装置の全体構造を示す(a)斜視図、(b)側面図、(c)平面図である。
図2図1の架橋装置の架橋部を収納した状態を示す(a)斜視図、(b)側面図である。
図3図1の架橋装置の架橋部を目標設備に掛けた状態を示す図((a)と(b))と、図1の架橋装置の架橋部を収納した状態を示す図(c)である。
図4】この発明の実施の形態2に係る架橋装置1Aを目標設備に掛けた状態を示す側面図((a)と(b))である。
図5】この発明の実施の形態3に係る架橋装置1が有する、離脱検知センサーによる架橋部傾斜制御機構9を説明するためのブロック図である。
図6】この発明の実施の形態4に係る架橋装置1Bの全体構造を示す側面図((a)と(b))である。
図7】この発明の実施の形態5に係る架橋装置1を用いた架橋システムを示す側面図((a)と(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。下記の実施の形態では、この発明に係る架橋装置1が小型船舶に搭載される場合を例に挙げて説明する。また、以下の説明では、図中に示すように、3次元直交座標系の各軸に沿う矢印の向きに従って前後、左右、および上下の各向きを定義する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に係る架橋装置1の全体構造を示す斜視図(a)、側面図(b)、及び平面図(c)である。この架橋装置1は、船舶と洋上施設の上陸目標(即ち、目標設備7)との間に架け渡されて、船舶から洋上施設へと作業員が乗り移る際に使用される機序である。洋上施設としては、例えば、海上に設置される洋上風力発電設備、海底鉱物掘削プラットホーム、作業船などが挙げられる。洋上施設の上陸目標、即ち、目標設備7としては、例えば、洋上施設の深さ方向に対して水平に設けられる板状の構造体(床、甲板など)が挙げられる。
【0022】
この実施の形態1に係る架橋装置1は、主に、船舶と目標設備7との間に掛けられる架橋部2と、テーブル4と、船舶に設置され、テーブル4を支持するとともに船舶の動揺に対するテーブル4の傾斜を制御してテーブル4の水平方向に対する角度を一定に保つ動揺補正機構3と、架橋部2のテーブル4側の一端を軸支持し、架橋部2の他端がテーブル4に対して上向き及び下向きに傾斜動作するようにさせる軸支部5と、テーブル4に設置され、架橋部2がテーブル4の上面に対して垂直な回動軸を中心に回動自在となるように軸支部5を支持する架橋部回動機構6と、を有する。
【0023】
架橋部2は、船舶と目標設備7との間に架け渡される通路として機能するものであり、長板状に形成される。架橋部2の上面の左右縁部それぞれには、図1に示すように、手摺が取り付けられていても良い。
【0024】
架橋部2は、一端(即ち、後方側の端部)が、図1(a)及び(b)に示す通り、テーブル4に対して上向き及び下向きに傾斜動作するように軸支部5によって軸支持される。具体的には、図3の(a)に、架橋部2が上向きに傾斜して目標設備7に掛けられた状態を示し、図3の(b)に、架橋部2が下向きに傾斜して目標設備7に掛けられた状態を示す。この機序により、本発明の架橋装置1は、不規則で突発的な波浪によって船体が瞬時的に上下方向に不規則に動揺しても、架橋部2が目標設備7から離脱するのを防ぎ、作業員の安全な乗り移りを確保することが可能となる。
【0025】
架橋部2は、テーブル4に設置され、架橋部2の軸支部5を支持する架橋部回動機構6によって、図1(c)に示す通り、テーブル4の上面に対して垂直な回動軸を中心に回動自在となる。この機序により、本発明の架橋装置1は、不規則で突発的な波浪によって船体が瞬時的に左右方向に不規則に動揺しても、架橋部2が目標設備7との左右方向の位置関関係を調整し、作業員の安全な乗り移りを確保することが可能となる。
【0026】
架橋部2の材料は特に限定されないが、例えばアルミニウムや繊維強化プラスチックが用いられるなどして、軽量に形成されることが好ましい。
【0027】
架橋部2の他端(即ち、前方側の端部であって、目標設備7に掛けられる側の端部)は、目標設備7と接触した際のそれぞれの損傷を防止するため、その前面や下面の前縁部にクッションが取り付けられていても良い。また、後述するセンサーをこのクッションに備え付けても良い。
【0028】
動揺補正機構3は、波浪などの影響による船体の揺れ(特に、傾斜)を補正してテーブル4の水平方向に対する角度を一定に保つための機序である。この実施の形態に用いられる動揺補正機構3は、ローリング(横揺れ)とピッチング(縦揺れ)の動揺を補正できる2軸動揺補正装置である。2軸動揺補正装置は小型な可搬式装置であるため、架橋装置1を小型船舶に設置する場合に好適である。しかしながら、動揺補正機構3は、2軸動揺補正装置に限定されない。動揺補正機構3は、船舶の甲板等の平坦な場所に、ベースフレーム等を介して設置される。
【0029】
テーブル4は、平面視において略矩形の板状の台であり、動揺補正機構3の動作によって板面の傾斜の方向や程度が操作され得るように、動揺補正機構3によって支持される。テーブル4の材料は、特に限定されないが、例えばアルミニウムが採用されるなどして、軽量に形成されることが好ましい。
【0030】
図2は、この実施の形態に係る架橋装置1の架橋部2を収納した状態を示す(a)斜視図と(b)側面図である。架橋部2を収納する際は、架橋部回動機構6に設けられ、テーブル4に対してスライド自在となるように軸支持部5を支持する架橋部スライド機構61により、架橋部2を船体手前側(即ち、架橋装置1の後方)にスライドさせることによって簡単に収納することができる。これにより、架橋装置1を使用しない時には、架橋部2が船首からはみ出さすことなく、コンパクトに収納することができるので(図3(c)参照)、小型船舶に搭載して使用することも可能となる。
【0031】
架橋部スライド機構61は、手動であっても電動であっても良い。また、架橋部2を船体手前側(即ち、架橋装置1の後方)にスライドさせるのは、基本的には架橋装置1を使用しないときなので、使用中は架橋部2が船体手前側(即ち、架橋装置1の後方)にスライドしないようなロック手段を設けても良い。
【0032】
以上説明した通り、実施の形態1に係る架橋装置1によれば、動揺補正機構3を備えるので、波浪による横揺れや縦揺れに対してもテーブル4の水平方向に対する角度を一定に保つことが可能となる。また、動揺補正機構3として2軸動揺補正装置を用いることにより、小型船舶にも容易に設置可能となる。また、架橋部2のテーブル側の一端が軸支部5によって軸支持され、架橋部2の他端がテーブル4に対して上方向及び下向きに傾斜動作するので、不規則で突発的な波浪によって船体が瞬時的に上下方向に不規則に動揺しても、目標設備7への安全な乗り移りを確保することが可能となる。また、テーブル4に設置された架橋部回動機構6によって架橋部2がテーブル4の上面に対して垂直な回動軸を中心に回動自在となるので、目標設備7との位置関係を左右方向で調整することができ、不規則で突発的な波浪によって船体が瞬時的に左右方向に動揺しても、目標設備7への安全な乗り移りを確保することが可能となる。
【0033】
実施の形態1に係る架橋装置1によれば、また、架橋部スライド機構61により架橋部2をテーブル4に対してスライド自在に移動させることができるので、架橋装置1を使用しない時には、架橋部2を船体手前側(即ち、架橋装置1の後方)に引き込んでコンパクトに収納することが可能となる。
【0034】
(実施の形態2)
図4は、この発明の実施の形態2に係る架橋装置1Aを目標設備7に掛けた状態を示す側面図である。図4(a)は、架橋部2の他端が目標設備7と接触している状態を示し、図4(b)は、架橋部2の他端が目標設備7から離れ、アクセス部8が架橋部2の他端から突出して目標設備7と接触している状態を示す。
【0035】
この実施の形態2に係る架橋装置1Aは、架橋部2が架橋部2の長手方向に進退自在なアクセス部8を有し、アクセス部8が架橋部2の他端(即ち、前方側の端部)の先端から突出して目標設備7に接触する点において上記の実施の形態1と構成が異なるものの、その他の構成は上記の実施の形態1と同等であるので、上記の実施の形態1と同等の構成については同一符号を付することでその説明を省略する。
【0036】
実施の形態2では、架橋部2の他端が直接目標設備7に掛けられる(接触する)のではなく、架橋部2に設けられたアクセス部8が架橋部2の他端の先端から突出し、目標設備7に掛けられる(接触する)ことを特徴とする。アクセス部8の構成は、特に限定されないが、図4に示すように、架橋部2上面に設けられた走行レール(不図示)を移動する台車状の構成を有するものであっても良い。他の例としては、架橋部2自体をテレスコピック構造にする構成であっても良い。このような構成とすることにより、不規則な波浪によって架橋装置1Aが設置されている船体が目標設備7から離れてしまった場合でも(図4(b)参照)、アクセス部8が架橋部2の他端の先端から突出して目標設備7と接触するので、架橋部2の離脱を回避し、船舶から目標設備7に乗り移ろうとする作業員の安全を確保することが可能となる。
【0037】
アクセス部8の材料は特に限定されないが、架橋部2と同じ材料、例えばアルミニウムや繊維強化プラスチックが用いられるなどして、軽量に形成されることが好ましい。
【0038】
アクセス部8の目標設備7と接触する方の端部は、目標設備と接触した際の損傷を防止するため、当該端部の前面や下面の前縁部にクッションが取り付けられていても良い。
【0039】
以上説明した通り、実施の形態2に係る架橋装置1Aによれば、上記の実施の形態1に係る架橋装置1と同様の作用効果が得られるとともに、架橋部2の長手方向に進退自在に設置されたアクセス部8が、架橋部の他端の先端から突出するようになっているので、目標設備7との位置関係を前後方向で調整し、架橋部2が目標設備7から離脱することを回避し、船舶から目標設備7に乗り移ろうとする作業員の安全を確保することが可能となる。
【0040】
(実施の形態3)
図5は、この発明の実施の形態3に係る架橋装置1が有する、離脱検知センサーによる架橋部傾斜制御機構9を説明するためのブロック図である。
【0041】
この実施の形態3は、架橋部2の目標設備7からの離脱を検知する離脱検知センサー91を有する点において上記の実施の形態1と構成が異なるものの、その他の構成は上記の実施の形態1と同等であるので、上記の実施の形態1と同等の構成については同一符号を付することでその説明を省略する。
【0042】
実施の形態3では、架橋装置1が架橋部2の目標設備7からの離脱を検知する離脱検知センサー91を有する。そして、離脱検知センサー91が離脱を検知した時に、架橋部傾斜制御機構9により、架橋部2の傾斜が、離脱時の傾斜角度から所定角度以上、下方向に傾斜しないように制御される。また、離脱検知センサー91が離脱を検知した時に、架橋部傾斜制御機構9により、架橋部2を上方向に傾斜させる。これらの機序により、架橋部2の目標設備7からの離脱を検知した時は、架橋部2の傾斜を制御して、作業員が架橋部2から海中へ転落することを回避することが可能となる。
【0043】
架橋部2の目標設備7からの離脱を検知する離脱検知センサー91は特に限定されないが、接触状態を感知できるセンサーであれば良い。このようなセンサーは、さらに、架橋部2の目標設備7に対する押しつけ力を感知する機能を備えていても良い。
【0044】
上記離脱検知センサー91を取り付ける位置は特に限定されないが、例えば、架橋部2の他端の先端に直接取り付けられても良いし、架橋部2の他端の前面や下面の前縁部に備え付けられるクッションに取り付けられても良い。
【0045】
架橋部傾斜制御機構9は、例えば、架橋部2の傾斜角度が変化するように駆動するモータ94と、架橋部2の傾斜角度を計測する傾斜センサー93と、モータ94を制御する制御回路等を備える。制御部92は、離脱検知センサー91によって架橋部2の離脱が検知されると、傾斜センサー93によって架橋部2の離脱時の傾斜角度を測定し、架橋部2の傾斜角度が離脱時の傾斜角度から所定角度以上、下方向に傾斜しないようにモータ94を制御する機序である。
【0046】
また、上記の架橋部傾斜制御機構9は、架橋部2を上方向に傾斜させる機序である。上方向の傾斜角度は特に限定されないが、架橋部2に作業員が存在する場合に作業員が転倒しないような角度で傾斜させることが好ましい。
【0047】
この実施の形態3に用いられる架橋装置1は、架橋部2の傾斜角度が離脱時の傾斜角度から所定角度以上、下方向に傾斜しないように制御する機能と、架橋部2の離脱時に上方向に傾斜させる機能とのどちらか一方を備えていても良いし、両方を備えていても良い。
【0048】
以上説明した通り、実施の形態3に係る架橋装置1によれば、上記の実施の形態1に係る架橋装置1と同様の作用効果が得られるとともに、架橋部2の目標設備7からの離脱を離脱検知センサー91が検知した時には、架橋部2の傾斜が所定角度以上、下方向に傾斜しないように制御されたり、架橋部2が上向きに傾斜されたりするので、離脱時に架橋部2に作業員が存在する場合でも、作業員が架橋部2から海中へ転落することを回避し、目標設備7への乗り移りの安全性を一層確保することが可能となる。
【0049】
(実施の形態4)
図6は、この発明の実施の形態4に係る架橋装置1Bの全体構造を示す側面図である。
【0050】
この実施の形態4に係る架橋装置1Bは、架橋部2の高さを調整する高さ調整機構10を有する点において上記の実施の形態1と構成が異なるものの、その他の構成は上記の実施の形態1と同等であるので、上記の実施の形態1と同等の構成については同一符号を付することでその説明を省略する。
【0051】
高さ調整機構10は、図6(a)に示すように、架橋装置1Bの下、すなわち、動揺補正機構3の底面と高さ調整機構10の上面が接するように設けられても良いし、図6(b)に示すように、架橋装置1Bの架橋部回動機構6とテーブル4との間、すなわち、高さ調整機構10の上面が架橋部回動機構6の底面と接し、高さ調整機構10の底面がテーブル4の上面と接するように設けられても良い。この実施の形態に用いられる高さ調整機構10はパンタグラフジャッキであるが、高さ調整機構10はパンタグラフジャッキに限定されない。
【0052】
高さ調整機構10は、船体の高さ変動値を計測するセンサーを備え、その値に基づきアクチュエータなどで高さを動的に制御することにより、高さが変動する装置であってもよい。
【0053】
以上説明した通り、実施の形態4に係る架橋装置1Bによれば、上記の実施の形態1に係る架橋装置1と同様の作用効果が得られるとともに、架橋部2の高さを調整することができるので、架橋部2を上向きに傾斜させただけでは到達不可能または到達困難な高さにある目標設備7に対して、容易に乗り移ることが可能となる。また、高さ調整機構10として、上述のような高さが変動する装置を用いることにより、高さ方向の動揺へ追従することを可能とする。これにより、動揺補正可能な範囲を拡大することもできる。
【0054】
(実施の形態5)
図7は、この発明の実施の形態5に係る架橋システム12を示す側面図である。図7(a)は、移動ステージ11が目標設備7の端部から突出する前の状態を示し、図7(b)は、移動ステージ11が目標設備7の端部から突出した時の状態を示す。
【0055】
この実施の形態5に係る架橋システム12は、本発明に係る架橋装置1と、目標設備7に移動自在に設けられ、目標設備7の端部から突出して架橋部2の他端に接触する移動ステージ11と、を備える、ことを特徴とする。この実施の形態5は、架橋部2の離脱回避措置を、架橋装置側に講ずるのでなく、アクセス先の目標設備7側に講じている点において、上記の実施の形態2と構成が異なるものの、その他の構成は上記の実施の形態2と同等であるので、上記の実施の形態2と同等の構成については同一符号を付することでその説明を省略する。
【0056】
移動ステージ11は、目標設備7に対して前後方向に移動可能に設けられていれば、その詳細な構成は特に限定されない。例えば、図7(a)に示すように、目標設備7の上面に設けられ、波浪などの影響によって船体が動揺して目標設備7と架橋部2との間の前後方向の距離が開いた場合に、図7(b)に示すように、架橋部2が脱落しない程度に、目標設備7の端部から突出し得る適当な機序が適宜選択され得る。
【0057】
移動ステージ11は、例えば、目標設備7との間に介在して設けられる付勢手段(不図示)により、目標設備7の端部から前方へと張り出すように前向きに付勢されても良い。このような付勢手段は、特に限定されるものではなく、例えば、空圧シリンダなどの空圧アクチュエータ,電動シリンダなどの電動アクチュエータ,または圧縮コイルばねなどのばねが用いられ得る。
【0058】
以上説明した通り、実施の形態5に係る架橋システム12によれば、目標設備7側に移動ステージ11が移動自在に設けられており、目標設備7の端部から突出して架橋部2の他端に接触するようになっているので、架橋部2と目標設備7との位置関係を前後方向で調整し、架橋部2が目標設備7から離脱することを回避し、船舶から目標設備に乗り移ろうとする作業員の安全を確保することが可能となる。
【0059】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では動揺補正機構3として、2軸動揺補正装置が用いられるようにしているが、2軸動揺補正装置に限定されるものではなく、例えば、3つの自由度を有する3軸動揺補正装置、を用いても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 架橋装置(実施の形態1)
2 架橋部
3 動揺補正機構
4 テーブル
5 軸支部
6 架橋部回動機構
61 架橋部スライド機構
7 目標設備
1A 架橋装置(実施の形態2)
8 アクセス部(実施の形態2)
1B 架橋装置(実施の形態4)
9 架橋部傾斜制御機構
91 離脱検知センサー
92 制御部
93 傾斜センサー
94 モータ
10 高さ調整機構(実施の形態4)
11 移動ステージ(実施の形態5)
12 架橋システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7