IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-外観検査装置及び外観検査方法 図1
  • 特開-外観検査装置及び外観検査方法 図2
  • 特開-外観検査装置及び外観検査方法 図3
  • 特開-外観検査装置及び外観検査方法 図4
  • 特開-外観検査装置及び外観検査方法 図5
  • 特開-外観検査装置及び外観検査方法 図6
  • 特開-外観検査装置及び外観検査方法 図7
  • 特開-外観検査装置及び外観検査方法 図8
  • 特開-外観検査装置及び外観検査方法 図9
  • 特開-外観検査装置及び外観検査方法 図10
  • 特開-外観検査装置及び外観検査方法 図11
  • 特開-外観検査装置及び外観検査方法 図12
  • 特開-外観検査装置及び外観検査方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106364
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】外観検査装置及び外観検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/00 20060101AFI20240801BHJP
   G01N 21/95 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H01S5/00
G01N21/95 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010586
(22)【出願日】2023-01-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】518232168
【氏名又は名称】ダイトロン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北田 啓順
(72)【発明者】
【氏名】立澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
【テーマコード(参考)】
2G051
5F173
【Fターム(参考)】
2G051AA73
2G051AB20
2G051AC15
2G051CA03
2G051CA04
2G051CA07
5F173ZM03
5F173ZP15
5F173ZQ03
5F173ZQ05
(57)【要約】
【課題】複雑な機構を必要とせず、精細な撮像画像に基づいてワークの異常を正確に評価する手段の提供。
【解決手段】
撮像駆動部50は、チップ4の第1側面5及び第2側面6に沿って側面撮像部30を移動させる。側面撮像部30は、撮像駆動部50による移動の前後において、チップ4の第1側面5及び第2側面6をそれぞれ撮像し、第1側面5及び第2側面6の異なる領域にピントが合った複数の評価用画像を生成する。制御部60は、複数の評価用画像のフォーカス領域FR1,FR2,FR3を結合して、第1側面5及び第2側面6の形状が復元された結合画像CI1を生成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの底面を支持する支持面を有した支持部と、
前記ワークの側面における異なる領域にピントが合った複数回の撮像を実行して複数の評価用画像を生成する側面撮像部と、
複数の前記評価用画像に基づいて前記ワークの異常を評価する評価部と、を備えた、外観検査装置。
【請求項2】
前記側面撮像部は、前記支持面と間隔を隔てて配置され、前記ワークの側面を斜め方向から撮像する、請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記側面撮像部と前記支持部とを、前記ワークの側面に沿って相対移動させる撮像駆動部をさらに備え、
前記側面撮像部は、前記相対移動の前後において前記ワークの側面をそれぞれ撮像して、複数の前記評価用画像を生成する、請求項2に記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記ワークの上面を撮像する上面撮像部をさらに備え、
前記撮像駆動部は、前記上面撮像部と前記側面撮像部とを一体に、前記支持部に対して相対移動させ、
前記撮像駆動部は、前記上面撮像部が生成した画像に基づいて前記ワークに対する前記側面撮像部の相対位置又は向きを調整する、請求項3に記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記側面撮像部は、前記評価用画像のための撮像を行う前に、前記ワークの側面全体を撮像して前記側面の全体画像を生成し、当該全体画像から判断される前記ワークのサイズに基づいて、前記評価用画像のための前記側面撮像部による撮像回数、又は当該撮像時における前記側面撮像部と前記支持部との相対位置が決定される、請求項3に記載の外観検査装置。
【請求項6】
前記評価部は、複数の前記評価用画像を、前記相対移動の方向と対応する方向に所定の画素分ずらして結合した結合画像を生成し、当該結合画像に基づいて前記ワークの異常を評価する、請求項3から5のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項7】
前記評価部が複数の前記評価用画像を結合する際の画素のずれ量が、各撮像の間における前記相対移動の量に基づいて決定される、請求項6に記載の外観検査装置。
【請求項8】
前記評価部は、前記結合画像における複数の前記評価用画像が重なる領域の画素の輝度値として、各評価用画像の対応する画素の輝度値の平均値を使用する、請求項6に記載の外観検査装置。
【請求項9】
前記側面撮像部は、異なる焦点距離において前記ワークの側面全体を複数回撮像して複数の前記評価用画像を生成し、
前記評価部は、前記評価用画像に複数の評価領域を設定し、各評価領域について鮮明度が最も高い前記評価用画像をそれぞれ選別し、選別された複数の前記評価用画像の当該評価領域に基づいて前記ワークの異常を評価する、請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項10】
前記評価部は、何れかの評価領域の鮮明度が最も高いものとして選別された複数の前記評価用画像の当該評価領域を結合した結合画像を生成し、当該結合画像に基づいて前記ワークの異常を評価する、請求項9に記載の外観検査装置。
【請求項11】
前記側面撮像部は、前記ワークの第1の側面を撮像する第1撮像装置と、前記ワークの第2の側面を撮像する第2撮像装置と、を有する、請求項1から5、9又は10のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項12】
支持面を有した支持部にワークの底面を支持させるステップと、
側面撮像部に、前記ワークの側面における異なる領域にピントが合った複数回の撮像を実行させて複数の評価用画像を生成させるステップと、
コンピュータである評価部に、複数の前記評価用画像に基づいて前記ワークの異常を評価させるステップと、を含んだ、外観検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの外観検査のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーダイオード等の光学素子の外観検査工程においては、発光面を精細に撮像した画像に基づいて異常の評価を行うことが重要となる。光学素子においては、発光面の状態が光の照射特性に影響するためである。
【0003】
レーザーダイオードの共振器の構成法として、主に、共振器を半導体基板面と平行に構成し、へき開面から光を取り出す端面発光型、又は共振器を半導体基板面と垂直に構成した面発光型が用いられている。このうち、端面発光型のレーザーダイオードは、載置状態における側面が発光面となるため、外観検査においては、発光面である側面を精細に撮像することが求められる。
【0004】
半導体デバイスの外観検査工程は、分割後のチップがダイシングシートに貼着された状態において行われることが多い。この場合、ダイシングシートの上方に設けられたカメラにより、チップが順次撮像される。生成された画像データに画像処理技術が適用されて、チップの異常が評価される。
【0005】
例えば、特許文献1には、チップの側面を撮像するために、カメラが撮像可能な位置まで、シート越しにチップを押し上げる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-141208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ダイシングシート上のチップの側面を正面から撮像するためには、カメラのレンズをチップと同じ高さ位置に配する必要があるが、この場合、ダイシングシートやその支持部材とカメラとの干渉が発生しやすい。また、ダイシングシートには多数のチップが存在しているため、チップの側面を正面から撮像しようとすると、カメラから見て奥側のチップを撮像する際に手前側のチップが障害となる。
【0008】
一方、チップの側面を斜め方向から撮像すると、チップの側面の一部の領域にしかピントを合わせることができず、チップの側面全体を精細に撮像することが難しくなる。
【0009】
特許文献1に開示された発明は、チップをシート越しに押し上げることで正面からの撮像を可能としたものであるが、チップやシートに負荷が掛かるため、意図せずチップがシートから剥離したり、チップ割れの可能性が推認される。また、チップをシート越しに押し上げるための機構が複雑となる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、複雑な機構を必要とせず、精細な撮像画像に基づいてワークの異常を正確に評価する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る外観検査装置は、ワークの底面を支持する支持面を有した支持部と、前記ワークの側面における異なる領域にピントが合った複数回の撮像を実行して複数の評価用画像を生成する側面撮像部と、複数の前記評価用画像に基づいて前記ワークの異常を評価する評価部と、を備えている。
【0012】
なお、上記において、「底面」や「側面」等の表現は便宜的な物に過ぎず、「底面」が必ずしも水平方向に沿っており、「側面」が必ずしも鉛直方向に沿っていることを意味しない。支持部が設置される向きによって、ワークの「底面」又は「側面」が上記の向きとは異なる向きとなることもある。
【0013】
上述したような構成においては、ワークの側面における異なる領域にピントが合った評価用画像が複数生成されるため、評価部は、各々の評価用画像におけるピントが合った領域をそれぞれ評価することで、ワークの側面に対して斜め方向から撮像が行われた場合であっても、ワークの側面全体を精細な画像に基づいて評価することができる。これにより、ワークの異常を正確に評価することが可能となる。また、ワークに外力を加える必要が無いため複雑な機構を必要とせず、外力によってワークに異常が発生するおそれも無い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、複雑な機構を必要とせず、精細な撮像画像に基づいてワークの異常を正確に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る外観検査装置10のうち、側面撮像部30及び上面撮像部40周辺を示した正面図である。
図2図2は、図1におけるチップ4周辺の拡大図である。
図3図3は、外観検査装置10における制御部60と各部との繋がりを示した機能ブロック図である。
図4図4は、チップ4の外観検査の流れを示したフローチャートである。
図5図5は、チップ4の外観検査の中で実行されるチップ4の撮像処理を示したフローチャートである。
図6図6は、チップ4の第1側面5の撮像の様子を側方から示した図である。
図7図7は、チップ4の第1側面5の撮像の様子を正面から示した図である。
図8図8は、複数の評価用画像からフォーカス領域FR1,FR2,FR3をそれぞれ切り出して生成された領域画像RI1,RI2,RI3を示した図である。
図9図9は、結合画像CI1を生成する様子を示した図である。
図10図10は、本発明の第2の実施形態に係る外観検査装置70のうち、側面撮像装置72及び上面撮像装置41周辺を示した正面図である。
図11図11は、図10に対応する平面図であり、チップ4周辺を拡大して示したものである。なお、上面撮像装置41は省略されている。
図12図12は、チップ4の側面を複数回撮像して得られた評価用画像I1~5を示した図である。
図13図13は、結合画像CI2を生成する様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、外観検査装置10が設置された状態において、鉛直方向に沿って上下方向1が定義され、水平方向に沿って前後方向2及び左右方向3がそれぞれ定義されている。また、上下方向1と前後方向2と左右方向3とは、互いに直交している。
【0017】
[1-1.外観検査装置10の概要と全体構成]
図1~3に示される外観検査装置10は、ダイシングシート22の上面に貼着されたチップ4(特許請求の範囲における「ワーク」に相当。)を撮像し、得られた画像に基づいて、チップ4の異常を評価するものである。チップ4は光学素子であり、一般的には端面発光型のレーザーダイオードチップである。
【0018】
外観検査装置10は、シート支持部20(図1)、側面撮像部30、上面撮像部40、撮像駆動部50、及び制御部60(図3)等を備えている。外観検査装置10は、他にも種々の構成要素を有していてもよいが、本発明の課題の解決に無関係の構成要素については省略する。上記各構成要素について、以下でより詳細に説明する。
【0019】
[1-2.シート支持部20]
シート支持部20は、チップ4が貼着されたダイシングシート22を支持するものである。シート支持部20は、ダイシングシート22を直接支持するシートリング21を備えている。シートリング21は2つの枠体21a,21bから成り、2つの枠体21a,21bが上下からダイシングシート22を挟み込むように結合することで、シートリング21の内方にダイシングシート22が張られた状態で支持される。このとき、ダイシングシート22は、水平方向(即ち前後方向2及び左右方向3)に沿った状態となる。シート支持部20は、後述されるシート回転機構51と機械的に結合されている。ここで、ダイシングシート22及びシート支持部20を合わせたものが、特許請求の範囲における「支持部」に相当し、ダイシングシート22の上面が特許請求の範囲における「支持面」に相当するものである。
【0020】
[1-3.側面撮像部30]
側面撮像部30は、チップ4の側面を撮像するものである。側面撮像部30は、チップ4の第1側面5を撮像する第1撮像装置31、及びチップ4の第2側面6を撮像する第2撮像装置32からなる。第1撮像装置31及び第2撮像装置32は、撮像素子としてのCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサーを内蔵した産業用カメラである。なお、第1側面5及び第2側面6は、互いにチップ4の反対側に位置し、チップ4の発光面を成すものである。
【0021】
第1撮像装置31は、右斜め上方からチップ4の第1側面5を撮像可能な位置に配置されている。撮像時には、光軸L1(図2)が右斜め上方からチップ4の第1側面5に入射する。この時の光軸L1の入射角θ1(図2)は調整可能とされている。
【0022】
第2撮像装置32は、撮像状態においてチップ4を跨いで第1撮像装置31と左右対称となるように配置されている。つまり、第2撮像装置32は、左斜め上方からチップ4の第2側面6を撮像可能な位置に配置されている。撮像時には、光軸L2(図2)が左斜め上方からチップ4の第2側面6に入射する。この時の光軸L2の入射角θ2(図2)は調整可能とされている。
【0023】
第1撮像装置31及び第2撮像装置32は、後述される上面撮像装置41と共に撮像ベース57(図1)に結合されて支持されている。
【0024】
[1-4.上面撮像部40]
上面撮像部40は、チップ4の上面を撮像する上面撮像装置41を備える。上面撮像装置41は、撮像素子としてCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサーを内蔵した産業用カメラである。
【0025】
上面撮像装置41は、左右方向3において第1撮像装置31と第2撮像装置32との間に設けられ、撮像ベース57に結合されて支持されている。上面撮像装置41のレンズは下方に向けられており、撮像時にはレンズがチップ4の上面と対向することで、上方からチップ4の上面を撮像可能とされている。
【0026】
[1-5.撮像駆動部50]
撮像駆動部50(図3)は、チップ4の撮像時に、チップ4と側面撮像部30及び上面撮像部40との相対位置及び向きを調整するものである。撮像駆動部50は、シート支持部20を回転させてチップ4の向きを変えるシート回転機構51、及び撮像ベース57を移動させて側面撮像部30及び上面撮像部40の位置を変えるカメラ移動機構52からなる。
【0027】
シート回転機構51は、正方向及び逆方向に回転可能なモータ53を備えている。モータ53の回転駆動力は、ギア・プーリ・ベルト等の複数の機械要素から成る駆動伝達機構(不図示)を介してシート支持部20に伝達される。これにより、シートリング21は、ダイシングシート22及びチップ4と一体に、上下方向1に沿った軸線周りに回転する。例えば、モータ53が正方向に回転した時にシートリング21は上方から見て時計回りに回転し、モータ53が逆方向に回転した時にシートリング21は反時計回りに回転する。
【0028】
カメラ移動機構52は、3つのアクチュエータ54,55,56を備えている。アクチュエータ54,55,56の駆動力は、シート回転機構のものとは別の駆動伝達機構を介して撮像ベース57に伝達される。これにより、撮像ベース57は側面撮像部30及び上面撮像部40と一体に移動する。例えば、アクチュエータ54が駆動することによって撮像ベース57は上下方向1に沿って移動し、アクチュエータ55が駆動することによって撮像ベース57は前後方向2に沿って移動し、アクチュエータ56が駆動することによって撮像ベース57は左右方向3に沿って移動する。
【0029】
[1-6.制御部60]
制御部60(図3)は、外観検査装置10の全体動作を制御するコンピュータである。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)61、メインメモリ62、補助記憶装置としてのEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)63、及びこれらの間でデータ伝送を行うための内部バス64等を最低限の構成として含んでいる。制御部60は、他にも入出力インターフェイスやネットワークインターフェイス等を備えているが、ここでは省略する。EEPROM63には、外観検査装置10の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されている。これらのプログラムが内部バス64を通じてメインメモリ62にロードされ、CPU61によって実行される。その結果生成された制御信号が、外部バス65を通じて外観検査装置10の各部にそれぞれ送信されて、外観検査装置10の全体動作が制御されている。
【0030】
EEPROM63には、シート回転機構51のモータ53、カメラ移動機構のアクチュエータ54,55,56、第1撮像装置31、第2撮像装置32、及び上面撮像装置41の動作を制御するドライバプログラムが記憶されている。また、EEPROM63には、第1撮像装置31、第2撮像装置32、及び上面撮像装置41が生成した画像データを処理するための画像処理プログラムの他、これらの画像データに基づいてチップ4の異常を評価する評価プログラムが記憶されている。また、EEPROM63には、上記の各種プログラムをサブルーチンとしてロードして、チップ4の外観検査に係る全体シーケンスを実行するためのプログラムが記憶されている。
【0031】
ここで、制御部60が、特許請求の範囲における「評価部」に相当するものである。また、側面撮像部30、第1撮像装置31、第2撮像装置32、上面撮像部40、及び撮像駆動部50は、制御部60の制御に基づき、それぞれ特許請求の範囲における「側面撮像部」、「第1撮像装置」、「第2撮像装置」、「上面撮像部」、及び「撮像駆動部」として動作するものである。
【0032】
[1-7.チップ4の外観検査の概要]
チップ4の外観検査の詳細を説明する前に、その概要を説明する。図2に示されるように、第1撮像装置31及び第2撮像装置32の光軸L1,L2は、チップ4の第1側面5及び第2側面6に対して斜めに入射するため、第1側面5及び第2側面6をそれぞれ一度撮像しただけでは、第1側面5及び第2側面6全体にピントが合った評価用画像を得ることは難しい。そのため、本実施形態では、第1撮像装置31及び第2撮像装置32を上下方向1に移動させながら、チップ4の第1側面5及び第2側面6を複数回撮像する。その結果、第1撮像装置31及び第2撮像装置32の移動量に応じて上下に所定画素ずつずれた複数の評価用画像が生成される。複数の評価用画像は、第1側面5及び第2側面6の異なる領域にピントが合った画像であるため、制御部60は、各評価用画像におけるピントが合った領域を組み合わせて、第1側面5及び第2側面6の異常を評価することができる。
【0033】
[1-8.チップ4の外観検査の詳細]
以下、ダイシングシート22上の複数のチップ4の外観検査の詳細を説明する。なお、以下で説明される外観検査装置10の各部の動作は、制御部60がEEPROM63に記憶された各種のプログラムを実行することで制御されている。
【0034】
事前準備として、作業者は、検査対象のチップ4を外観検査装置10にセットする。外観検査工程は、一般的にダイシング装置によるチップ4のダイシング工程に続いて行われる。ダイシングシート22上にはダイシング工程により分割された複数のチップ4が存在している。作業者は、ダイシングシート22が張られたシートリング21をダイシング装置から取り外し、外観検査装置10のシート支持部20に取り付ける(図1の状態)。作業者は、その状態で外観検査装置10を操作することで、制御部60に外観検査シーケンスを実行させる。
【0035】
なお、ダイシング工程と外観検査工程とを連続して実行する場合、ダイシング工程を経たシートリング21がシート支持部20に自動でセットされる構成が採用されてもよい。また、ダイシング装置と外観検査装置10とが一体の装置として構成され、シートリング21を取り外すことなく外観検査工程を実行可能な構成が採用されてもよい。
【0036】
制御部60が実行する外観検査の処理の流れを示すフローチャートが図4に示されている。まず、制御部60がカメラ移動機構52のアクチュエータ54,55,56を駆動することで撮像ベース57が移動を開始する。そして、上面撮像装置41がダイシングシート22の上面全体を撮像可能となるように、撮像ベース57の上下方向1、前後方向2、及び左右方向3の位置が調整される。このときの撮像ベース57の移動先の目標位置として、EEPROM63に記憶された既定の位置情報が使用されてもよい。あるいは、上面撮像装置41がリアルタイムに生成する動画像に基づいて、制御部60が好適な位置を決定してもよい。
【0037】
撮像ベース57の移動の後、ダイシングシート22の上面全体が撮像範囲に収まるように、上面撮像装置41による撮像が行われる(ステップS10)。制御部60は、上面撮像装置41が生成した画像を処理して、ダイシングシート22上に存在するチップ4の個数及び配置を認識する(ステップS20)。この処理には、エッジ認識やパターンマッチング等の既知の画像処理アルゴリズムが使用可能である。
【0038】
続けて、制御部60は、ダイシングシート22上のチップ4の配置に基づいて、全てのチップ4を撮像するための撮像順序を決定する(ステップS30)。撮像順序の決定に際して、制御部60は、全てのチップ4を撮像するために必要な撮像ベース57の総移動量を算出し、撮像ベース57の総移動量が最短となる撮像順序を採用する。あるいは、制御部60は、撮像ベース57の総移動量に加えて、例えばシート回転機構51によるチップ4の向きの変更が必要となる回数、又はシート回転機構51の駆動量といった他の条件を考慮してもよい。そして、それらの条件を複合した上で全てのチップ4を撮像するための所要時間を算出し、この所要時間が最短となる撮像順序を採用してもよい。
【0039】
続けて、制御部60は、最初のチップ4を撮像可能となるように、側面撮像部30及び上面撮像部40とチップ4との相対位置及び向きを調整する(ステップS40)。具体的には、制御部60は、シート回転機構51のモータ53の駆動によってシートリング21を回転させ、チップ4の向きを変更する。また、カメラ移動機構52のアクチュエータ54,55,56の駆動によって撮像ベース57を移動させ、側面撮像部30及び上面撮像部40の位置を変更する。このとき、制御部60は、上面撮像装置41、第1撮像装置31、又は第2撮像装置32がリアルタイムに生成する動画像に基づいて、側面撮像部30及び上面撮像部40とチップ4との相対位置及び向きを調整してもよい。その結果、図2に示されるように、上面撮像装置41がチップ4の真上に位置し、第1撮像装置31及び第2撮像装置32がチップ4を挟んで左右方向3の両側に位置した状態となる。このとき、チップ4の発光面である第1側面5が第1撮像装置31のレンズに向けられ、同じくチップ4の発光面である第2側面6が第2撮像装置32のレンズに向けられている。
【0040】
この状態で、制御部60は、対象のチップ4を撮像するための「撮像処理」のシーケンスを実行する(ステップS50)。撮像処理の詳細を示すフローチャートが図5に示されている。まず、制御部60は、チップ4の第1側面5及び第2側面6の撮像回数、及び各撮像における第1撮像装置31及び第2撮像装置32の上下方向1の撮像位置を決定する(ステップS51)。以下でこの撮像回数と撮像位置について説明する。
【0041】
第1撮像装置31及び第2撮像装置32は、第1側面5及び第2側面6を斜め上方から撮像するため、撮像範囲PR1,PR2,PR3(図7参照)におけるフォーカス領域FR1,FR2,FR3(外観検査に必要な鮮明度が得られる領域。)は横方向よりも縦方向に狭くなる。第1側面5及び第2側面6の撮像回数が少ないと、各撮像の間における撮像ベース57の上下方向1への移動量を大きくする必要があり、各撮像におけるフォーカス領域FR1,FR2,FR3に隙間ができてしまう。複数回の撮像によって第1側面5及び第2側面6の全域をフォーカス領域FR1,FR2,FR3でカバーするためには、チップ4の高さ(上下方向1の寸法)が高いほど、撮像回数を多くすることが望ましい。
【0042】
制御部60は、第1撮像装置31又は第2撮像装置32を制御して第1側面5又は第2側面6の全体を撮像し、第1側面5又は第2側面6の全体画像を生成する。続けて、制御部60は、第1側面5又は第2側面6の全体画像からエッジ検出等の画像処理アルゴリズムを用いて第1側面5又は第2側面6の外縁を認識し、チップ4の高さを算出する。制御部60は、チップ4の高さに基づいて、第1側面5及び第2側面6の撮像回数、及び各撮像における第1側面5及び第2側面6の上下方向1の撮像位置(特許請求の範囲の「相対位置」に相当。)を決定する。あるいは、撮像回数及び撮像位置は、使用するチップ4に応じて作業者によって事前に設定され、EEPROM63に記憶されていてもよい。
【0043】
続けて、制御部60は、チップ4を撮像するための撮像パラメタ等の調整を行う(ステップS52)。具体的には、側面撮像部30及び上面撮像部40とチップ4との相対位置及び向きの微調整や、焦点距離等の各撮像装置の内部設定値の調整を行う。
【0044】
制御部60は、上面撮像装置41にチップ4の上面を撮像させ、チップ4の上面の評価用画像を生成させる(ステップS53)。制御部60は、この評価用画像を、EEPROM63に記憶させる。
【0045】
制御部60は、カメラ移動機構52のアクチュエータ54の駆動により撮像ベース57を上下方向1に移動させ、第1撮像装置31及び第2撮像装置32を第1回目の撮像位置に移動させる(ステップS54)。制御部60は、第1回目の撮像位置において、第1撮像装置31及び第2撮像装置32にチップ4の第1側面5及び第2側面6を撮像させ、第1側面5及び第2側面6の1つ目の評価用画像をそれぞれ生成させる(ステップS55)。制御部60は、これらの評価用画像を、EEPROM63に記憶させる。
【0046】
続けて、制御部60は、第1撮像装置31及び第2撮像装置32を第2回目の撮像位置に移動させ(特許請求の範囲の「相対移動」に相当。)、第1回目の撮像と同様に、第1撮像装置31及び第2撮像装置32に第1側面5及び第2側面6を撮像させ、評価用画像をEEPROM63に記憶させる。
【0047】
制御部60は、各撮像位置における第1側面5及び第2側面6の撮像、及び評価用画像のEEPROM63への記憶が完了したタイミングで、予定された撮像が全て完了しているか否かを確認する。予定された撮像が完了していない場合(ステップS56:NO)、第1撮像装置31及び第2撮像装置32を次の撮像位置に移動させ、第1撮像装置31及び第2撮像装置32に第1側面5及び第2側面6を撮像させ、評価用画像をEEPROM63に記憶させる。予定された撮像が全て完了している場合(ステップS56:YES)、当該チップ4に対する撮像処理を終了する。
【0048】
上述した第1側面5の撮像の様子が図6,7に示されている。なお、第2側面6については、第1側面5と同様であるため省略されている。また、図6,7においては、第1側面5及び第2側面6の撮像回数が3回の例が示されている。図6における光軸L1a,L1b,L1cは、それぞれ第1,2,3回目の撮像位置における第1撮像装置31の光軸L1である。上下方向1において各撮像位置におけるフォーカス領域FR1,FR2,FR3の一部が重複するように、各撮像位置が設定されている。
【0049】
図7に示されるように、フォーカス領域FR1,FR2,FR3は、上下方向1における撮像範囲PR1,PR2,PR3の中央に位置しているが、第1撮像装置31の焦点距離等の設定によって異なる位置にすることもできる。図7(A),(B),(C)は、それぞれ、第1,2,3回目の撮像位置において、チップ4の第1側面5と撮像範囲PR1,PR2,PR3との対応を示している。第1回目の撮像範囲PR1(図7(A))と第2回目の撮像範囲PR2(図7(B))は、各撮像位置の差に対応する高さH1だけずれている。同様に、第2回目の撮像範囲PR2と第3回目の撮像範囲PR3(図7(C))は、各撮像位置の差に対応する高さH2だけずれている。一般的に、H1とH2が等しくなるように撮像位置を設定することが望ましい。
【0050】
撮像処理(ステップS50)のシーケンスを終了後、制御部60は、第1側面5及び第2側面6の複数の評価用画像をそれぞれ結合して、第1側面5及び第2側面6の結合画像CI1(図9)を生成する(ステップS60)。以下、第1側面5の結合画像CI1を生成する手順について説明する。
【0051】
まず、制御部60は、第1側面5の各評価用画像から、フォーカス領域FR1,FR2,FR3に対応する画素領域をそれぞれ切り出し、領域画像RI1,RI2,RI3(図8)を生成する。図8(A),(B),(C)の領域画像RI1,RI2,RI3は、それぞれ、第1,2,3回目の撮像位置での撮像によって生成された評価用画像から、フォーカス領域FR1,FR2,FR3に対応する画素領域を切り出したものである。なお、斜め方向からの撮像のために評価用画像に歪みが発生する場合、撮像角度や他の撮像条件に基づき、評価用画像に写った第1側面5を矩形形状に補正するための射影変換(ホモグラフィ変換)が行われてもよい。
【0052】
続けて、制御部60は、領域画像RI1,RI2,RI3を上下に結合する。このとき、領域画像RI1,RI2,RI3から元の第1側面5の形状が再現されるように、3つの領域画像RI1,RI2,RI3の相対位置を撮像位置に対応させる。例えば、図7のように後の撮像ほど撮像位置が下方に位置している場合、結合画像CI1でも、後の撮像に対応する領域画像RI1,RI2,RI3ほど下方に位置するようにする。また、制御部60は、その際の画素のずれ量を、各撮像位置の高低差、すなわち各撮像の間における撮像ベース57の移動量に基づいて算出する。例えば、第1回目の撮像位置に対応する領域画像RI1と第2回目の撮像位置に対応する領域画像RI2とを結合する際の画素のずれをn1(図9)とした場合、n1は、第1回目の撮像位置と第2回目の撮像位置との差である高さH1と所定の係数aとの積で表すことができ、n1=a×H1と表すことができる。また、第2回目の撮像位置に対応する領域画像RI2と第3回目の撮像位置に対応する領域画像RI3とを結合する際の画素のずれをn2(図9)とした場合、同様に、n2=a×H2と表すことができる。
【0053】
上述したような方法でn1,n2の値を決定すると、上下に隣接する領域画像RI1,RI2,RI3の間で画素が重なる重複領域DE1,DE2が現れる。図9においては、領域画像RI1と領域画像RI2とが重複した重複領域DE1、及び領域画像RI2と領域画像RI3とが重複した重複領域DE2が現れている。この重複領域DE1,DE2においては、重複する2つの領域画像の何れか一方の画素の輝度値を結合画像CI1の対応する画素の輝度値としてもよい。あるいは、重複する2つの領域画像の対応する画素の輝度値を平均した値を結合画像CI1の対応する画素の輝度値としてもよい。
【0054】
上述した処理が、同様に第2側面6の複数の評価用画像に対しても適用され、第1側面5及び第2側面6それぞれについて、結合画像CI1が生成される。制御部60は、結合画像CI1をEEPROM63に記憶させる。なお、複数の評価用画像がそれぞれカラー画像であり、RGB、HSL、又はCMYK等 の複数のカラーチャネルから構成されている場合、制御部60は、上述した結合処理をカラーチャネルごとに行うことで、結合画像CI1をカラー画像として生成してもよい。あるいは、評価用画像のいずれか1つのカラーチャネルのみを使用して結合画像CI1を生成してもよいし、各カラーチャネルの対応する画素の輝度値の平均値から結合画像CI1を生成してもよい。
【0055】
制御部60は、チップ4の上面の評価用画像に基づいてチップ4の上面の異常を評価し、第1側面5及び第2側面6からそれぞれ生成された結合画像CI1に基づいて第1側面5及び第2側面6の異常をそれぞれ評価する(ステップS70)。この異常の一例として、チップ4に付着した異物やチップ4の欠け等がある。制御部60は、例えばルールベースや深層学習を用いた評価アルゴリズムにより、チップ4の異常を評価し、その評価結果をEEPROM63に記憶させる。この評価結果としては、チップ4が製品として許容可能なものであるか否かの判断のみでもよいし、より詳細な評価項目が作成されてもよい。
【0056】
制御部60は、ダイシングシート22の全てのチップ4に対して撮像処理及び評価が完了したか否かを確認し、完了していない場合(ステップS80:No)、次のチップ4に対して撮像処理を行うべく、側面撮像部30及び上面撮像部40と次のチップ4との相対位置及び向きを調整する(ステップS40)。それ以降の処理は、上述した最初のチップ4に対するものと同様であるため、省略する。一方、全てのチップ4に対して撮像処理と評価が完了している場合(ステップS80:Yes)、制御部60は、全てのチップ4についての評価結果を集約した情報を外部に出力する(ステップS90)。例えば、制御部60は、外観検査装置10に設けられた表示画面に評価結果を表示させてもよいし、通信ネットワークを介して外観検査装置10と接続されたコンピュータに評価結果を送信し、当該コンピュータの表示画面に評価結果を表示させてもよい。作業者は、この評価結果を確認し、製品として許容できないチップ4をダイシングシート22から取り除く等の対応を行う。あるいは、チップ4のダイシングシート22からの剥離と併せて、製品として許容可能なチップ4と許容できないチップ4とが装置によって自動で分別される構成が採用されてもよい。
【0057】
[1-9.本実施形態の作用効果]
本実施形態においては、チップ4の第1側面5及び第2側面6における異なる領域にピントが合った複数の評価用画像から結合画像CI1が生成されるため、第1側面5及び第2側面6を斜め方向から撮像する状況においても、制御部60は、結合画像CI1を評価するだけで、第1側面5及び第2側面6全体を精細な画像に基づいて評価することができる。また、チップ4に外力を加える必要が無いため複雑な機構を必要とせず、外力によってチップ4に異常が発生するおそれも無い。
【0058】
また、第1撮像装置31及び第2撮像装置32がカメラ移動機構52によって上下方向1に移動させられて、各撮像位置ごとに撮像が行われるため、第1撮像装置31及び第2撮像装置32の焦点距離を変化することなく、第1側面5及び第2側面6の異なる領域にピントが合った複数の評価用画像を生成することができる。
【0059】
また、第1撮像装置31、第2撮像装置32、及び上面撮像装置が撮像ベース57に支持された状態で、カメラ移動機構52によって一体に移動させられるため、各撮像装置とチップ4との相対位置及び向きの調整を一括に行うことができる。さらに、制御部60は、各撮像装置がリアルタイムに生成する動画像に基づいて、各撮像装置とチップ4との相対位置及び向きの調整を容易に行うことができる。さらに、第1撮像装置31と第2撮像装置32とが左右対称となるように設けられているため、各撮像位置において、チップ4の発光面である第1側面5及び第2側面6を同時に撮像することができ、タクトタイムの短縮を図ることができる。
【0060】
また、第1側面5又は第2側面6の全体画像から算出されたチップ4の高さに基づいて、第1側面5及び第2側面6の撮像回数及び撮像位置が決定されるため、チップ4の高さに応じて適切な撮像回数及び撮像位置を採用することができる。つまり、全高の高いチップ4においては、撮像回数を多くすることで、第1側面5及び第2側面6の全範囲がいずれかの撮像のフォーカス領域FR1,FR2,FR3によってカバーされるように撮像範囲PR1,PR2,PR3を設定することができ、逆に、全高の低いチップ4においては、撮像回数を少なくすることで、タクトタイムの短縮を図ることができる。
【0061】
また、制御部60は、複数の領域画像RI1,RI2,RI3を結合する際の画素のずれ量を、各撮像位置の高低差、すなわち各撮像の間における撮像ベース57の移動量に基づいて容易に算出する。チップ4の側面のように撮像対象が平坦で特徴のない場合、2つの撮像画像の対応点を画像間の相関に基づいて見つけることは困難であるが、本実施形態においては、画像間の相関を使用することなく、各領域画像RI1,RI2,RI3を結合する際の画素のずれ量(相対位置)を容易に決定することができる。
【0062】
また、結合画像CI1の重複領域DE1,DE2について、重複する2つの領域画像の対応する画素の輝度値を平均した値を結合画像CI1の対応する画素の輝度値とすることで、一方の領域画像にのみ存在するノイズを減衰することができる。これにより、撮像時に予期しないノイズが混入した場合にも、ノイズが異常と誤認される可能性を低くすることができる。
【0063】
[1-9.本実施形態の変形例]
上述した実施形態においては、シート回転機構51によってシートリング21の向きが変更可能であり、カメラ移動機構52によって撮像ベース57(側面撮像部30及び上面撮像部40)が上下方向1、前後方向2、及び左右方向3に移動可能であった。しかしながら、シートリング21と撮像ベース57とは、相対的に移動可能かつ向き変更可能であればよく、どちらが移動しどちらが向き変更してもよい。例えば、シートリング21が移動可能に構成され、撮像ベース57が向き変更可能に構成されていてもよい。あるいは、シートリング21又は撮像ベース57の一方が完全に固定され、他方が移動可能かつ向き変更可能に構成されていてもよい。あるいは、シートリング21が平面移動(前後方向2及び左右方向3に沿った移動)及び向き変更可能に構成され、撮像ベース57が上下動可能に構成されていてもよい。
【0064】
また、上述した実施形態は、制御部60が、第1側面5及び第2側面6の複数の評価用画像から結合画像CI1をそれぞれ生成するものであった。しかしながら、制御部60は、結合画像CI1を生成することなく、複数の評価用画像のフォーカス領域FR1,FR2,FR3をそれぞれ評価することで、第1側面5及び第2側面6の異常を評価してもよい。
【0065】
また、上述した実施形態は、第1撮像装置31、第2撮像装置32、及び上面撮像装置41が撮像ベース57によって支持され、カメラ移動機構52によって一体に移動可能な物であった。しかしながら、側面撮像部30は、撮像ベース57によって支持されたさらに多くの撮像装置を備えていてもよく、例えば4つの撮像装置によってチップ4の4側面を同時に撮像可能な物であってもよい。あるいは、側面撮像部30は、第1撮像装置31のみを備えていてもよく、シート回転機構51がチップ4の向きを変更することで、複数回に亘って異なる側面を撮像する物であってもよい。また、チップ4の上面の評価が不要な場合には、上面撮像部40(上面撮像装置41)は省略されてもよく、第1撮像装置31及び第2撮像装置32が生成する画像に基づいて、第1撮像装置31及び第2撮像装置32とチップ4との相対位置及び向きの調整が行われてもよい。
【0066】
[2.第2の実施形態]
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の内容については記載を省略し、異なる点についてのみ記載する。また、第1の実施形態のものと同様の構成要素については同じ参照符号を付すものとする。
【0067】
図10に示されるように、本実施形態における外観検査装置70は、例えばチップ4の搬送過程において、検査台71に一時的に載置されたチップ4を撮像し、その異常を評価する物である。検査台71に同時に載置されるチップ4の数は限られるため、一般に検査台71の外径は第1の実施形態におけるシートリング21よりも小さい。そのため、検査台71に干渉することなく、側面撮像装置72をチップ4と同じ高さ位置に配することができる。チップ4の側面を正面から撮像するため、側面撮像装置72の光軸L3がチップ4と同じ高さに位置して検査台71の上面に沿うように、側面撮像装置72の位置及び向きが調整されている。
【0068】
上面撮像装置41は、チップ4の上面を撮像する物である。側面撮像装置72及び上面撮像装置41は、上下方向1、前後方向2、及び左右方向3に沿って移動可能である。これにより、側面撮像装置72及び上面撮像装置41とチップ4とは相対位置が調整可能とされている。また、検査台71は、上下方向1に沿った軸線周りに回転可能とされている。これにより、側面撮像装置72及び上面撮像装置41とチップ4とは相対的な向きが調整可能とされている。側面撮像装置72及び上面撮像装置を移動させる機構には、第1の実施形態におけるカメラ移動機構52と同様の構成を使用可能である。検査台71を回転させる機構には、第1の実施形態におけるシート回転機構51と同様の構成を使用可能である。チップ4の撮像時、制御部60は、上面撮像装置41及び側面撮像装置72がチップ4を撮像できるように、上面撮像装置41及び側面撮像装置72とチップ4との相対位置及び向きを調整する。以下で、特にチップ4の向きの調整について詳細に説明する。
【0069】
上述したように側面撮像装置72の光軸L3が検査台71の上面に沿うように調整されているため、図10に示されるような側方からの平面視においては、側面撮像装置72の光軸L3とチップ4の側面とは概ね直交する。一方で、図11に破線で示されるように、上方からの平面視においては、側面撮像装置72の光軸L3とチップ4の側面とが為す角θ3は、チップ4が検査台71に載置される向きに応じて都度変化する。制御部60は、検査台71を回転させることで、上方からの平面視においても側面撮像装置72の光軸L3とチップ4の側面とが直交するように(即ち角θ3が90°となるように)、チップ4の向きを調整する。向き調整後のチップ4が図11に実線で表されている。
【0070】
上面撮像装置41及び側面撮像装置72とチップ4との相対位置及び向きの調整後、制御部60は、上面撮像装置41及び側面撮像装置72にチップ4を撮像させ、チップ4の上面及び側面の評価用画像を生成する。その際、制御部60は、側面撮像装置72の撮像範囲を固定した状態で焦点距離を微小ピッチずつ変化させ、チップ4の側面全体を複数回撮像させる。つまり、チップ4の側面については複数の評価用画像を生成する。ここでは、10回の撮像により、10の評価用画像I1~I10(図12参照。ただしI6~I10は省略。)が生成されたものとして説明を行う。
【0071】
図12に示されるように、制御部60は、チップ4の側面を撮像して得られた複数の評価用画像I1~I10それぞれに対して、複数の評価領域ER1,ER2,ER3を設定する。評価領域ER1,ER2,ER3は、評価用画像を横方向に分割するように並んで設定された領域であり、隣接する評価領域ER1,ER2,ER3は一部が重複している。全ての評価用画像I1~I10に対して同じ位置及び範囲に評価領域ER1,ER2,ER3が設定される。各評価領域ER1,ER2,ER3の位置及び範囲をどのように設定するかについては、作業者によって事前に設定され、設定値がEEPROM63に記憶されていてもよいし、側面撮像装置72が生成した画像から判断されるチップ4の側面のサイズに応じて制御部60が決定してもよい。また、本実施形態では評価領域ER1,ER2,ER3が3つである例を説明するが、各評価用画像I1~I10はさらに多くの評価領域に分けられてもよい。
【0072】
続けて、制御部60は、全ての評価用画像I1~I10の各評価領域ER1,ER2,ER3についてそれぞれ鮮明度を評価する。そして、各評価領域ER1,ER2,ER3それぞれについて、全ての評価用画像I1~I10の中で最も鮮明度が高い(ピントが合った)評価用画像を決定する。制御部60は、全ての評価用画像I1~I10の中で最も鮮明度が高い評価領域ER1,ER2,ER3を結合し、結合画像CI2を生成する。この処理の一例を以下に説明する。
【0073】
例えば、鮮明度の評価の結果、評価領域ER1については評価用画像I3、評価領域ER2については評価用画像I7、評価領域ER3については評価用画像I10の鮮明度が最も高かったとする。この場合、制御部60は、評価用画像I3の評価領域ER1と評価用画像I7の評価領域ER2と評価用画像I10の評価領域ER3とをそれぞれ切り出し、これらを対応する相対位置において結合し、結合画像CI2(図13)を生成する。このとき、隣接する評価領域ER1,ER2,ER3が重複する重複領域DE3,DE4においては、重複する2つの評価領域の何れか一方の画素の輝度値を結合画像CI2の対応する画素の輝度値としてもよい。あるいは、重複する2つの評価領域の対応する画素の輝度値を平均した値を結合画像CI2の対応する画素の輝度値としてもよい。結合画像CI2の生成の後、制御部60は、チップ4の上面の評価用画像からチップ4の上面の異常を評価し、結合画像CI2からチップ4の側面の異常を評価する。この評価については第1の実施形態と同様であるため省略する。
【0074】
なお、本実施形態において、結合画像CI2を生成することは必須ではなく、評価領域ER1,ER2,ER3それぞれについて、複数の評価用画像I1~I10の中で最も鮮明度が高いものを使用してチップ4の側面の異常を評価してもよい。また、本実施形態において、第1の実施形態と同様に、チップ4の側面を撮像する撮像装置を複数設けることでチップ4の複数の側面を同時に撮像してもよい。
【0075】
チップ4の側面全体にピントが合った撮像を行うためには、チップ4(検査台71)の向きの調整を正確に行う必要があるが、チップ4の搬送中に限られた時間の中でこれを行うことは困難な場合がある。また、チップ4の側面に欠け等があり平坦でない場合、チップ4の向きを調整してもその側面全体にピントが合った撮像を行うことが困難な場合もある。本実施形態においては、評価領域ER1,ER2,ER3それぞれについて、複数の評価用画像I1~I10の中で最も鮮明度が高いものを使用してチップ4の側面の異常を評価するため、上記のような状況においても、複雑な機構を必要とせず、精細な撮像画像に基づいてワークの異常を正確に評価することが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
4 ・・・チップ(ワーク)
5 ・・・第1側面
6 ・・・第2側面
10 ・・・外観検査装置
20 ・・・シート支持部(支持部)
30 ・・・側面撮像部
31 ・・・第1撮像装置
32 ・・・第2撮像装置
40 ・・・上面撮像部
50 ・・・撮像駆動部
60 ・・・制御部(評価部)
70 ・・・外観検査装置
71 ・・・検査台(支持部)
72 ・・・側面撮像装置
CI1,CI2 ・・・結合画像
ER1,ER2,ER3 ・・・評価領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの底面を支持する支持面を有した支持部と、
前記ワークの側面における異なる領域にピントが合った複数回の撮像を実行して複数の評価用画像を生成する側面撮像部と、
前記側面撮像部と前記支持部とを、前記ワークの側面に沿って相対移動させる撮像駆動部と、
複数の前記評価用画像に基づいて前記ワークの異常を評価する評価部と、を備え
前記側面撮像部は、前記ワークの第1側面を撮像する第1撮像装置、及び前記ワークの第2側面を撮像する第2撮像装置を有し、
前記撮像駆動部は、前記第1撮像装置及び前記第2撮像装置を一体として、前記第1側面及び前記第2側面のいずれにも沿う方向に向けて、前記支持部に対して相対移動させ、
前記第1撮像装置は、前記相対移動の前後において前記第1側面をそれぞれ撮像して、複数の前記評価用画像を生成し、
前記第2撮像装置は、前記相対移動の前後において前記第2側面をそれぞれ撮像して、複数の前記評価用画像を生成する、外観検査装置。
【請求項2】
前記第1撮像装置又は前記第2撮像装置は、前記評価用画像のための撮像を行う前に、前記ワークの前記第1側面又は前記第2側面全体を撮像して前記側面の全体画像を生成し、当該全体画像から判断される前記ワークのサイズに基づいて、前記評価用画像のための前記側面撮像部による撮像回数、又は当該撮像時における前記側面撮像部と前記支持部との相対位置が決定される、請求項に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記第1撮像装置及び前記第2撮像装置は、前記支持面と間隔を隔てて配置され、前記ワークの側面を斜め方向から撮像する、請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記ワークの上面を撮像する上面撮像部をさらに備え、
前記撮像駆動部は、前記上面撮像部と前記側面撮像部とを一体に、前記支持部に対して相対移動させ、
前記撮像駆動部は、前記上面撮像部が生成した画像に基づいて前記ワークに対する前記側面撮像部の相対位置又は向きを調整する、請求項に記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記評価部は、複数の前記評価用画像を、前記相対移動の方向と対応する方向に所定の画素分ずらして結合した結合画像を生成し、当該結合画像に基づいて前記ワークの異常を評価する、請求項からのいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項6】
前記評価部が複数の前記評価用画像を結合する際の画素のずれ量が、各撮像の間における前記相対移動の量に基づいて決定される、請求項に記載の外観検査装置。
【請求項7】
前記評価部は、前記結合画像における複数の前記評価用画像が重なる領域の画素の輝度値として、各評価用画像の対応する画素の輝度値の平均値を使用する、請求項に記載の外観検査装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明に係る外観検査装置は、ワークの底面を支持する支持面を有した支持部と、前記ワークの側面における異なる領域にピントが合った複数回の撮像を実行して複数の評価用画像を生成する側面撮像部と、前記側面撮像部と前記支持部とを、前記ワークの側面に沿って相対移動させる撮像駆動部と、複数の前記評価用画像に基づいて前記ワークの異常を評価する評価部と、を備えている。前記側面撮像部は、前記ワークの第1側面を撮像する第1撮像装置、及び前記ワークの第2側面を撮像する第2撮像装置を有し、前記撮像駆動部は、前記第1撮像装置及び前記第2撮像装置を一体として、前記第1側面及び前記第2側面のいずれにも沿う方向に向けて、前記支持部に対して相対移動させ、前記第1撮像装置は、前記相対移動の前後において前記第1側面をそれぞれ撮像して、複数の前記評価用画像を生成し、前記第2撮像装置は、前記相対移動の前後において前記第2側面をそれぞれ撮像して、複数の前記評価用画像を生成する。