(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106368
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】公正証書遺言作成システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20240801BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010592
(22)【出願日】2023-01-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年9月20日に自社のウェブサイトhttps://www.lastmessage.rip/にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】519434617
【氏名又は名称】株式会社パズルリング
(74)【代理人】
【識別番号】100204098
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 良往
(74)【代理人】
【識別番号】100209211
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 善和
(72)【発明者】
【氏名】山村幸広
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC36
5L050CC36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】遺言者の公正証書遺言情報にかなりのばらつきがあっても、適切に、誤りなく入力し、表示し、確認でき、遺言者自ら公正証書遺言を作成するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】公正証書遺言作成システムにおいて、クラウドサーバ11は、公正証書遺言に必要な情報を遺言者が順次入力できるように細分化した入力画面表示を行い、入力画面表示で、遺言者に入力を促す入力項目表示処理部1121と、既に遺言者が入力して公正証書遺言データベース121に記録・保管した情報を遺言者端末に表示する既存情報表示処理部1122と、遺言者が入力項目の意味を理解し、間違いなく入力ができるように、専門士業者の説明動画が表示される動画表示処理部1113と、を有する入力画面表示処理部112及び遺言者が動画表示手段によってもなお不明な事項がある場合に、専門士業者への問合せをすることができる専門士業連携処理部116を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウドサービスを通じて、遺言者自身が公正証書遺言を作成することができる公正証書遺言作成システムであって、
遺言者の遺言者端末に、前記公正証書遺言を作成するのに必要な情報を取得し、公正証書遺言データベースに記録・保管する入力画面を表示する入力画面表示手段と
前記入力画面表示手段から得られた情報に基づき、クラウドサーバーで遺言者の希望に沿った公正証書遺言案を作成し、前記遺言者端末に出力する公正証書遺言出力手段と
出力された前記公正証書遺言を提出すべき遺言者の近隣の公証役場を表示する公証役場表示手段とを含み
前記入力画面表示手段は前記公正証書遺言に必要な情報を遺言者が入力画面表示に従って順次入力できるように細分化した入力画面表示とし、前記入力画面表示は、
遺言者に入力を促す入力項目表示手段と
既に遺言者が入力して前記公正証書遺言データベースに記録・保管された情報を前記遺言者端末に表示する既存情報表示手段と
遺言者が入力項目の意味を理解し、間違いなく入力ができるように、専門士業者の説明動画が表示される動画表示手段と
遺言者が前記動画表示手段によってもなお不明な事項がある場合に、専門士業者への問合せをすることができる専門士業連携手段を有することを特徴とする公正証書遺言作成システム。
【請求項2】
前記入力項目として、遺言者の本人情報、家系図情報、財産情報、遺言執行者情報、遺言者が指定する家系図情報に含まれない相続人情報、後見情報、寄付情報、生前贈与情報を含むことを特徴とする請求項1記載の公正証書遺言作成システム。
【請求項3】
前記入力画面表示手段は、遺言者により公正証書遺言に必要な情報には大きなばらつきがあるため、前記遺言者端末には当該遺言者に必要な情報のみを動的に表示し、また遺言者の誤入力を防止するため一度に表示する入力項目を限定して表示する動的入力画面制御機能を有することを特徴とする請求項1又は2いずれか1項に記載の公正証書遺言作成システム。
【請求項4】
遺言者は遺された家族に対して自分の想いや言葉を付言事項として前記公正証書データベースに記録・保管し、遺言者の死亡後、相続人全員に配信する付言事項作成手段を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の公正証書遺言作成システム。
【請求項5】
遺言者があらかじめ作成したメッセージや動画を前記公正証書遺言データベースに記録・保管し、遺言者の死亡後、各相続人にそれぞれ個別に、前記メッセージや動画を配信するラストメッセージ管理手段を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の公正証書遺言作成システム。
【請求項6】
相続人や財産価値に変動が生じた場合に、遺言者が前記遺言者端末から修正入力し、新たな公正証書遺言案を作成し、公証人の承認を得て、新たな正式の公正証書遺言を作成し、前記公正証書遺言データベースに記録・保存できることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の公正証書遺言作成システム。
【請求項7】
クラウドサービスを通じて、遺言者自身が公正証書遺言を作成する方法であって、
遺言者の遺言者端末に、前記公正証書遺言を作成するのに必要な情報を取得し、公正証書遺言データベースに記録・保管する入力画面を表示する入力画面表示手順と
前記入力画面表示手順から得られた情報に基づき、クラウドサーバーで遺言者の希望に沿った公正証書遺言案を作成し、前記遺言者端末に出力する公正証書遺言出力手順と
出力された前記公正証書遺言を提出すべき遺言者の近隣の公証役場を表示する公証役場表示手順とを含み
前記入力画面表示手順は前記公正証書遺言に必要な情報を遺言者が入力画面表示に従って順次入力できるように細分化した入力画面表示とし、前記入力画面表示は、
遺言者に入力を促す入力項目表示手順と
既に遺言者が入力して前記公正証書遺言データベースに記録・保管された情報を前記遺言者端末に表示する既存情報表示手順と
遺言者が入力項目の意味を理解し、間違いなく入力ができるように、専門士業者の説明動画が表示される動画表示手順と
遺言者が前記動画表示手順によってもなお不明な事項がある場合に、専門士業者への問合せをすることができる専門士業連携手順を有することを特徴とする公正証書遺言作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公正証書遺言作成システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、遺言書を作成する人は10人に1人程度といわれており、遺言書がないために生じるトラブルも少なくない。遺言書には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3つの種類がある。公正証書遺言は、遺言者本人が公証人と証人2名の面前で遺言の内容が間違いないことを確認したうえで公証人が作成する。自筆証書遺言は、遺言者本人が自筆で遺言内容を書き、日付・署名とともに押印し、遺言者が自分で保管、もしくは法務局で保管してもらう。秘密証書遺言は、遺言者本人が遺言書を作成し封印する。その内容は秘密のまま、公証人と証人2名に提出して認証を得る。遺言者が自分で保管し、公証役場には、遺言書を作ったことが記録される。このうち形式の不備による無効や紛失のリスクが小さいのが公正証書遺言である。公正証書遺言は、一般的に弁護士や司法書士などに相談して遺言書案の作成を依頼し、公証人の確認によって完成する。弁護士や司法書士への相談・依頼に手間・時間・費用がかかることがハードルになる。
【0003】
近年、日本は高齢化社会を迎え、「終活」が言われるようになり、如何に問題なく財産を承継するかの問題意識が高まっており、銀行などがテレビコマーシャルで遺産相続相談サービスを盛んに宣伝している。また、この分野へのデジタル化、IT化の関心が高まっており、各種の技術的提案がなされてきている。特許文献1では、金融機関において、その顧客に対して資産承継の相談支援を行う資産承継支援システムが提案されている。特許文献2では、遺言者のためにデータを整理し、直感的にも数字的にも納得のいく内容にすることができる公正証書遺言作成支援ツールが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-157247号公報
【特許文献2】特開2017-146814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらのシステムは、遺言者自らシステムを操作して、遺言に必要な情報を入力して遺言書を作成するものではなく、ある程度の知識を有する者が、遺言者から依頼を受けて、遺言者と対話して、財産の整理や遺言書の作成をしようとするものである。公正証書遺言に必要な情報は、遺言者によって相当にばらつきがある。相続人が少なく、財産の種類も少ない遺言者の場合、入力すべき情報、表示し確認すべき情報は僅かである。ところが、相続人が多く、財産の種類も多い遺言者の場合、入力すべき情報が多く、また表示し確認すべき情報が莫大になる。本発明の課題は、このように、それぞれの遺言者によって公正証書遺言に必要な情報にかなりのばらつきがあっても、同一の操作によって、適切に、誤りなく、入力し、表示し、確認でき、遺言者自ら公正証書遺言を作成することができるシステム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、クラウドサービスを通じて、遺言者自身が公正証書遺言を作成することができる公正証書遺言作成システムであって、
遺言者の遺言者端末に、前記公正証書遺言を作成するのに必要な情報を取得し、公正証書遺言データベースに記録・保管する入力画面を表示する入力画面表示手段と
前記入力画面表示手段から得られた情報に基づき、クラウドサーバーで遺言者の希望に沿った公正証書遺言案を作成し、前記遺言者端末に出力する公正証書遺言出力手段と
出力された前記公正証書遺言を提出すべき遺言者の近隣の公証役場を表示する公証役場表示手段とを含み
前記入力画面表示手段は前記公正証書遺言に必要な情報を遺言者が入力画面表示に従って順次入力できるように細分化した入力画面表示とし、各前記入力画面表示は、
遺言者に入力を促す入力項目表示手段と
既に遺言者が入力して前記公正証書遺言データベースに記録・保管された情報を前記遺言者端末に表示する既存情報表示手段と
遺言者が入力項目の意味を理解し、間違いなく入力ができるように、専門士業者の説明動画が表示される動画表示手段と
遺言者が前記動画表示手段によってもなお不明な事項がある場合に、専門士業者への問合せをすることができる専門士業連携手段を有する。
【0007】
請求項2の発明では、入力項目として、遺言者の本人情報、家系図情報、財産情報、遺言執行者情報、遺言者が指定する家系図情報に含まれない相続人情報、後見情報、寄付情報、生前贈与情報を含むことができる。
【0008】
請求項3の発明では、入力画面表示手段は、遺言者により公正証書遺言に必要な情報には大きなばらつきがあるため、前記遺言者端末には当該遺言者に必要な情報のみを動的に表示し、また遺言者の誤入力を防止するため一度に表示する入力項目を限定して表示する動的入力画面制御機能を有する。
【0009】
請求項4の発明では、遺言者は遺された家族に対して自分の想いや言葉を付言事項として前記公正証書データベースに記録・保管し、遺言者の死亡後、相続人全員に配信する付言事項作成手段を有する。
【0010】
請求項5の発明では、遺言者があらかじめ作成したメッセージや動画を前記公正証書遺言データベースに記録・保管し、遺言者の死亡後、各相続人にそれぞれ個別に、前記メッセージや動画を配信するラストメッセージ管理手段を有する。
【0011】
請求項6の発明では、相続人や財産価値に変動が生じた場合に、遺言者が前記遺言者端末から修正入力し、新たな公正証書遺言案を作成し、公証人の承認を得て、新たな正式の公正証書遺言を作成し、前記公正証書遺言データベースに記録・保存することができる。
【0012】
請求項7の発明は、クラウドサービスを通じて、遺言者自身が公正証書遺言を作成する方法であって、
遺言者の遺言者端末に、前記公正証書遺言を作成するのに必要な情報を取得し、公正証書遺言データベースに記録・保管する入力画面を表示する入力画面表示手順と
前記入力画面表示手順から得られた情報に基づき、クラウドサーバーで遺言者の希望に沿った公正証書遺言案を作成し、前記遺言者端末に出力する公正証書遺言出力手順と
出力された前記公正証書遺言を提出すべき遺言者の近隣の公証役場を表示する公証役場表示手順とを含み
前記入力画面表示手順は前記公正証書遺言に必要な情報を遺言者が入力画面表示に従って順次入力できるように細分化した入力画面表示とし、各前記入力画面表示は、
遺言者に入力を促す入力項目表示手順と
既に遺言者が入力して前記公正証書遺言データベースに記録・保管された情報を前記遺言者端末に表示する既存情報表示手順と
遺言者が入力項目の意味を理解し、間違いなく入力ができるように、専門士業者の説明動画が表示される動画表示手順と
遺言者が前記動画表示手順によってもなお不明な事項がある場合に、専門士業者への問合せをすることができる専門士業連携手順を有する。
【発明の効果】
【0013】
高齢化社会が進展する現在において、本人の死亡後、本人の意思に沿った遺産の承継がスムーズに行われることが社会的に強く要請されている。本発明は、このような観点から長年の研究によってなされたものであり、弁護士や司法書士への相談・依頼などに、手間・時間・費用がかかるというこれまでのハードルを乗り越えて、遺言者本人が自ら、公正証書遺言を作成できるようにするものである。本発明によれば、それぞれの遺言者の公正証書遺言に必要な情報にかなりのばらつきがあっても、それぞれの遺言者は同一の操作によって、適切に、誤りなく、入力し、表示し、確認して、それぞれの遺言者の希望に沿った公正証書遺言を自ら作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の公正証書遺言作成システム1のハードウェア構成を模式的に示している。
【
図2】クラウドサーバー10のソフトウェア構成を模式的に示している。
【
図3】本公正証書遺言システム1が有する機能の主なものを示している。
【
図4】公正証書遺言の作成手順を示す図であって、(a)は、全体の手順を示す図であり、(b)は、基本情報項目の確認ステップS1の詳細手順を示し、(c)は、誰に残したいかステップS2の詳細手順を示す。
【
図5】全体の作業ステップを表わすメニューの画面例である。
【
図6】基本情報項目の確認ステップS1の作業ステップを表わすメニューの画面例である。
【
図7】誰に残したいかステップS2の作業ステップを表わすメニューの画面例である。
【
図8】家系図作成ステップS12の未入力状態の入力画面例である。
【
図9】家系図作成ステップS12の既に配偶者と子1名が入力されて、子を追加入力する状態の入力画面例である。
【
図10】入力項目数を極力抑えた入力画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図に基づいて説明する。
図1は、本発明の公正証書遺言作成システム1のハードウェア構成を模式的に示している。クラウドサーバー10は、インターネット60上にあるサーバーであって、制御部11、記憶部12、通信部13を有している。遺言者端末20は、
図1では1台しか図示していないが、本公正証書遺言作成サービスを受ける遺言者のパソコン、タブレット、スマートフォンなどの端末であって、複数台存在する。その各々の遺言者端末20は、制御部21、記憶部22、通信部23、操作部24、表示部25を有している。専門士業者端末30は、遺言者から、相談を受ける弁護士、司法書士、税理士など専門士業者が操作する端末であって、遺言者端末20と同様のハードウェア構成を持つパソコン、タブレット、スマートフォンなどの端末であって、複数台存在する。公証役場端末40は、公正証書遺言の最終確認をし、公正証書遺言を保管する公証役場の端末であって、遺言者端末20と同様のハードウェア構成を持つパソコン、タブレット、スマートフォンなどの端末であって、複数台存在する。相続者端末50は、相続者が操作する端末であって、遺言者端末20と同様のハードウェア構成を持つパソコン、タブレット、スマートフォンなどの端末であって、複数台存在する。
【0016】
図2は、クラウドサーバー10のソフトウェア構成を模式的に示している。クラウドサーバー制御部11のソフトウェアは、ログイン管理処理部111、入力画面表示処理部112、付言事項作成処理部113、公正証書遺言出力処理部114、公証役場表示処理部115、専門士業連携処理部116、ラストメッセージ管理処理部117から構成されている。入力画面表示処理部112は、更に、入力項目表示処理部1121、既存情報表示処理部1122、動画表示処理部1113を有している。また、クラウドサーバー記憶部12は、公正証書遺言データベース121、解説動画データベース122及びプログラムファイル123から構成されている。また、遺言者端末20、専門士業者端末30、公証役場端末40、相続者端末50のソフトウェアとしては、特にアプリケーションプログラムは必要なくブラウザーが搭載されていればよい。
【0017】
図3は、本公正証書遺言システム1が有する機能の主なものを示しており、ログイン管理手段M1、入力画面表示手段M2、付言事項作成手段M3、公正証書遺言出力手段M4、公証役場表示手段M5、専門士業連携手段M6、ラストメッセージ管理手段M7を有している。入力画面表示手段M2は、更に、入力項目表示手段M21、既存情報表示手段M22、動画表示手段M23がある。
【0018】
ログイン管理手段M1は、遺言者からID及びパスワードを取得し、遺言者の本公正証書遺言システム1へのアクセスを許可する。まず、ログイン管理処理部111は遺言者端末20へID及びパスワード入力画面を表示する。遺言者が遺言者端末20にID及びパスワードを入力して、遺言者端末20から本公正証書遺言システム1へのアクセス要求があると、ログイン管理処理部111は、公正証書遺言データベース121に、既にID及びパスワードが存在するかどうかチェックし、既にID及びパスワードが存在する場合は、本公正証書遺言システム1へのアクセスを許可する。ID及びパスワードが存在しない場合は、新規アカウント作成画面を遺言者端末20に送信し、遺言者端末20に表示する。
【0019】
入力画面表示手段M2は、公正証書遺言を作成するのに必要な情報を取得する。
本公正証書遺言システム1の目的は、公正証書遺言の専門的知識を有しない遺言者でも、公正証書遺言の作成に必要な情報を適切に、誤りなく入力し、公正証書遺言を作成できることにある。そのための入力画面表示手段M2のマンマシンインタフェイスの使い勝手が重要になる。公正証書遺言に必要な情報は、遺言者によって非常にばらつきがある。相続人が少なく、財産の種類も少ない遺言者の場合、入力すべき情報、表示し確認すべき情報は僅かである。ところが、相続人が多く、財産の種類も多い遺言者の場合、入力すべき情報が多く、また表示し確認すべき情報が膨大になる。本公正証書遺言作成システム1では、それぞれの遺言者に必要な公正証書遺言情報にばらつきがあっても、同一の操作によって、適切に、誤りなく、入力し、表示し、確認できることが要求される。そのために入力画面表示手段M2は、各入力画面表示の動的画面制御を行う。公正証書遺言の作成に必要な情報を細分化し、これをグループ化し、最終的に一度に入力する項目を5項目程度に抑え、その各画面を動的画面制御して、入力、確認、修正のため必要な情報のみ遺言者端末20に表示する。動的画面制御の具体的な説明は「実施例」で詳述する。
【0020】
入力画面表示手段M2は、入力項目表示手段M21、既存情報表示手段M22、動画表示手段M23を有し、これらの手段と連携し、遺言者端末20の入力画面表示を動的に制御して、遺言者が公正証書遺言の作成に必要な情報を適切に、誤りなく入力できるようにしている。
【0021】
入力項目表示手段M21は、遺言者に公正証書遺言に必要な情報の入力を促すための入力項目を表示する。入力項目表示処理部1121は、最小単位の入力項目の表示画面を遺言者端末20に表示する。遺言者が遺言者端末20に表示された入力画面に入力すると、入力項目表示処理部1121は、入力された情報をチェックし、公正証書遺言データーベ-ス121に記録・保存する。
【0022】
既存情報表示手段M22は、遺言者が既に入力した、またはその入力したデータに基づいて計算した情報を遺言者端末20に表示する。既存情報表示処理部1122は、公正証書遺言データベース121に記録・保存された情報に基づき、また必要に応じて、各相続人の相続財産、遺留分の計算などをして、動的な画面を構成し、遺言者端末20に動的画面表示する。
【0023】
動画表示手段M23は、遺言者が誤りなく入力できるように、専門士業者の説明動画を表示する。動画表示処理部1113は、遺言者が遺言者端末20に表示された入力項目の内容が不明な場合、入力画面に表示された動画アイコンをクリックすると、指定された動画を、解説動画データベース122から、遺言者端末20の動画表示エリアに説明動画を表示する。このとき、動画表示処理部1113は、遺言者の停止、再生などの操作に応じた動画表示の制御をする。
【0024】
付言事項作成手段M3は、遺言者が遺された家族に対して自分の思いや言葉を付言事項として残す。付言事項作成処理部113は、遺言者端末20に、例文と共に付言事項入力画面を表示し、遺言者が入力したメッセージを公正証書遺言データベース121に記録・保管する。遺言者の死亡後、付言事項は、全相続人が読むことができる。
【0025】
公正証書遺言出力手段M4は、遺言者の希望に沿った公正証書遺言案を作成し、遺言者端末20に出力する。公正証書遺言出力処理部114は、遺言者の公正証書遺言出力選択により、これまで、公正証書遺言データベース121に記録されている公正証書遺言情報に基づき、公正証書遺言案を作成し、遺言者端末20に公正証書遺言案を表示する。遺言者はこれをプリント又はPDFにて出力することができる。
【0026】
公証役場表示手段M5は、遺言者が公正証書遺言案を提出すべき遺言者の近隣の公証役場を表示する。公正証書遺言案は最終的に、公証役場の公証人の公証を受けて、正式な公正証書遺言となる。このため、公証役場の連絡先、送付先情報が必要になる。遺言者が公証役場の連絡先、送付先を選択すると、公証役場表示処理部115は、公正証書遺言データベース121に記録されている全国の公証役場情報から、遺言者の住所に最も近い公証役場を抽出し、遺言者端末20に表示する。また、都道府県別の公証役場情報も表示できる。遺言者は公正証書遺言出力手段M4により作成した公正証書遺言案を提出する公証役場に連絡し、2人の証人と公証人の承認を得て、正式な公正証書遺言を作成し、公証役場に保管してもらう。同時にその写しをアップロードすると公正証書遺言出力処理部114は、タイムスタンプを付して、正式な公正証書遺言として公正証書データベース121に記録・保管する。
なお、正式な公正証書遺言を作成した後、財産や相続人などの変更を要する事態に至った場合でも、変更が必要な情報を変更するだけで、簡単に新たな公正証書遺言案を作成でき、公証人の証人を得て、新たな公正証書遺言を作成し、公正証書遺言データベース121に記録・保管することができる。
【0027】
専門士業連携手段M6は、遺言者が入力すべき情報などが不明な場合に、弁護士、司法書士、税理士など専門士業者に相談できる機能を有している。専門士業連携処理部116は、遺言者が遺言者端末20に表示されている専門士業者相談アイコンをクリックすると、公正証書遺言データベース121に相談員として登録されている弁護士、司法書士、税理士の情報を遺言者端末20に表示する。遺言者は希望の専門士業者とTV会議システム、メール、電話などで相談することが可能である。その際、遺言者の遺言端末20と指定された専門士業者の専門士業者端末30とで画面を共有して相談することもでき、遺言者が希望する公正証書遺言案を正しく作成することができる。
【0028】
ラストメッセージ管理手段M7は、遺言者のメッセージや動画を管理し、遺言者の死亡後、遺言者の意思に沿って、遺言者が指定したそれぞれの相続人に個別にその情報を提供する。ラストメッセージ管理処理部117は、遺言者が遺言者端末20から入力したメッセージや動画を指定された相続人ごとに公正証書遺言データベース121に記録・保存する。このため相続人ごとに異なったメッセージや動画を残すことができる。各相続人は遺言者の死亡後、相続人端末50から、メッセージや動画を見ることができ、メッセージや動画を相続人端末50に保存することができる。
【実施例0029】
上述した、各手段を用いた具体的な公正証書遺言の作成手順について、説明する。
図4(a)は、遺言者が公正証書遺言作成システム1を利用して、公正証書遺言を作成する手順を示している。また、
図5はその作業ステップを表わすメニューの画面例である。基本情報項目の確認ステップS1では、遺言者は入力画面表示手段M2により遺言者端末20に表示された画面に基づき、遺言者の情報、執行人、財産などの基本情報について、入力及び確認作業を行う。入力または変更された情報は公正証書遺言データベース121に記録・保存される。
【0030】
誰に残したいかステップS2では、遺言者は入力画面表示手段M2により、遺言者端末20に表示された画面に基づき、財産の配分、遺留分の確認、税金などの情報の入力及び確認作業を行う。入力または変更された情報は公正証書遺言データベース121に記録・保存される。
【0031】
付言事項作成ステップS3では、遺言者は付言事項作成手段M3により、遺言者端末20に表示された入力画面に、メッセージを入力することにより、残された家族などに対して自分の思いや言葉を残すことができる。付言事項は公正証書遺言データベース121に記録・保存され、遺言者の死亡後、相続人端末50から相続人全員が読むことができる。なお、個別の相続人にそれぞれ個別のメッセージや想いを伝えたい場合はラストメッセージ管理手段M7を利用して、個別のメッセージや動画を残すことができる。
【0032】
遺言者ノートの確認ステップS4では、公正証書遺言出力手段M4により、公正証書遺言データベース121にステップS1からステップS3により記録・保存された情報を抽出し、演算して、公正証書遺言案として、遺言者端末20に出力され、これまでに決めた内容をすべて確認することができる。また、その内容を公正証書遺言案としてファイル出力・印刷することができる。遺言者が情報の変更を希望する場合は、該当するステップに戻り、該当項目を修正すればよく、簡単に修正可能である。なお、公証人とのやり取りの前に、
図5の遺言・相続カンタン相談のアイコンをクリックすると、専門士業連携手段M6により、専門士業者と相談でき、より正確な公正証書遺言案を作成することができる。
【0033】
公証人への連絡・送付ステップS5では、遺言者は公証役場表示手段M5により表示された近隣の公証役場もしくは都道府県単位で表示された公証役場から、遺言者が希望する公証役場に公正証書遺言案を送り、公正証書遺言の作成を依頼する。公証人とのやり取りステップS6では、遺言者は公証人と連絡を取り合い、公正証書遺言を完成させる。現在は、まだ、公証役場端末40とのオンライン連携はできていないが、将来、オンライン連携ができれば、より簡単に公正証書遺言を作成できる。
【0034】
完成・登記ステップS7では、遺言者と公証人とのやりとりが終わり、公証人から送られてきた公正証書遺言に遺言者が確認し、後日、証人2名と共に公証役場に出向き公証人の立ち合いのもと、公正証書遺言に印鑑を押して提出すれば、正式な公正証書遺言ができあがる。正式な公正証書遺言は公証役場に保管される。また、遺言者は遺言者端末20から公証を受けた公正証書遺言の写しを入力画面表示手段M2によりアップロードし、公正証書遺言データベース121に記録・保存する。
【0035】
図4(b)は、基本情報項目の確認ステップS1の詳細手順を示している。
図6はその作業ステップを表わすメニューの画面例である。自分のことステップS11では、入力画面表示手段M2により、遺言者本人の情報を入力する。遺言者本人の情報は、氏名、生年月日、郵便番号、住所、本籍である。家系図作成ステップS12では、動的な入力画面表示手段M2により、配偶者、子など相続人の家系図を作成する。家系図作成に必要な情報は、配偶者、子、孫、親、祖父母、兄弟姉妹、甥・姪、離婚歴再婚歴、その他の人であり、その入力項目は氏名、生年月日、郵便番号、住所、生存(選択)である。静的入力画面でこれらの情報を入力するには、何枚もの入力画面を用意する必要があり、また、その遺言者には不必要な入力項目も表示されてしまうので、遺言者の入力負担が多く、誤入力が多くなる。そこで、入力画面表示手段M2は動的画面制御を採用している。
【0036】
ここで、
図8~
図11を用いて、入力画面表示手段M2の家系図作成における動的画面制御の実施例を説明する。
図8は、まだ入力をしていない状態の入力画面表示で、入力できる情報、すなわち配偶者、子、孫、親、祖父母、兄弟姉妹、甥・姪、その他の人を表示している。
図9は、既に配偶者と子1名が入力されて、子を追加入力する状態を示している。遺言者が「子を追加する」アイコンをクリックすると、入力画面表示手段M2は子の入力画面を表示する。
図10は、この入力画面例であり、入力項目は、指定する子の氏名、生年月日、郵便番号、住所、生存(選択)に限定されて表示されているので、誤入力が少なく、遺言者の負担も少なくなる。入力が完了して保存をクリックすると子の情報が追加されて表示され、次の子の情報が追加できるようになる。したがって、入力項目はあくまでも氏名、生年月日、郵便番号、住所、生存(選択)に限定できる。また、子供が多い場合でも、表示欄が追加されるだけである。既に入力した情報を修正したい場合は、修正したい表示欄をクリックすると、
図11に示すように、ポップアップしてその情報が表示され、修正、削除が簡単に行うことができる。また削除した場合、その情報が表示欄から消去されて、生きている情報のみ表示する。この動的画面制御によって、相続人の少ない遺言者や相続人の多い遺言者にも適切な入力を促すことができる。
【0037】
遺言執行者の決定ステップS13では、入力画面表示手段M2により、遺言執行者の指定を行う。遺言執行者の指定は、家系図作成で入力した家族または家族以外の第三者をプルダウンで選択する。家族以外の第三者の場合は、まだ、情報が公正証書遺言データベース121に記録・保存されていないので、入力画面表示手段M2により、入力画面が表示される。指定する遺言執行者の情報として、氏名、生年月日、職業もしくは続柄、郵便番号、住所がある。
【0038】
自分の財産ステップS14では、入力画面表示手段M2により、財産情報を入力する。財産情報としては、預金、株式・仮想通貨、土地、建物、土地借地権、死亡保険、死亡退職金、ペット、自動車・バイクなどがある。預金の入力項目は、銀行名、支店名、種別、口座番号、金額、備考である。株式・仮想通貨の入力項目は、種類を普通株式/仮想通貨をプルダウンで選択、証券会社/取引所、支店名、口座番号、登記名/通貨名、株数/通貨数、金額である。土地の入力項目は、所在、地番、地目(プルダウンで宅地他22種類を選択)、地積、評価額、備考で、路線価を調べるためのリンクがある。建物の入力項目は、所在、家屋番号、種類、構造、床面積1階(m
2)、床面積2階(m
2)、床面積3階以上すべて(m
2)、評価額、借地権があるY/N選択、備考である。土地借地権の入力項目は、所在、地番、貸主、現在の用途、収益、備考である。死亡保険の入力項目は保険名、保険会社名、契約者、受取人、被保険者、金額、保険証券番号、契約日、備考である。死亡退職金の入力項目は、社名、会社住所、会社電話番号、金額、備考である。ペットの入力項目は、名前、年齢、マイクロチップ番号、保険証券番号、かかりつけ医情報として、名前、住所、電話番号、備考である。自動車・バイクなどの入力項目は、登録番号、車種、車名、型番、車体番号、評価額、備考である。その他の入力項目は、名称など、評価額、備考である。このように財産情報は多岐にわたるが、入力画面表示手段M2の動的画面表示により、簡単に入力できる。
図12は財産情報入力表示画面の例である。
【0039】
基本情報をすべて確認ステップS15は、入力画面表示手段M2により、遺言者端末20にステップS11からステップS14で入力した情報が家系図と財産に区分して表示され、遺言者は入力した全ての情報を確認することができる。
【0040】
図4(C)は、誰に残したいかステップS2の詳細手順を示している。また、
図7はその作業ステップを表わすメニューの画面例である。法定相続人の確認ステップS21では、入力画面表示手段M2により、公正証書遺言データベース121に記録・保存されたすべての相続人を遺言者端末20に表示する。このとき、法定相続人には法定相続人であることが分かるようにチェックを付けて表示される。遺言者は、誰に残すか、残さなければならないかを確認する。
【0041】
家系図以外に残す先を選ぶステップS22では、寄付や家系図以外の人へ相続させたい場合にその相続人を入力することができる。入力項目は、寄付先名称、団体名など、金額、備考である。遺留分の確認ステップS23では、法律で定められている最低限相続できる遺留分の確認とその遺留分を減額するための生前贈与の入力ができる。入力画面表示手段M2により、公正証書遺言データベース121に記録・保存された法定相続人とその遺留分が遺言者端末20に表示される。遺言者は各相続人の遺留分を確認でき、生前贈与があった場合は、その相続人を指定して、遺留分から減額する生前贈与額を入力することができる。入力項目は、生前贈与した金額である。相続税についての確認ステップS24は、配偶者控除や宅地の特例による控除を計算できる。
【0042】
遺産の分割ステップS25は、全ての財産について誰にどれだけ配分するかを指定する。入力画面表示手段M2により、公正証書遺言データベース121に記録・保存された相続人とその遺留分が遺言者端末20に表示される。遺言者は、遺言者端末20に表示された相続人をクリックして特定すると、その相続人に対する財産分割画面が表示される。財産分割画面では、分割すべき財産がプルダウンで指定でき、その財産に対して、全部、金額、割合の指定ができる。
【0043】
手伝いが必要な相続人ステップS26では、子・親・配偶者に判断能力が欠如していると思われる場合、または、自分以外は未成年の子のみが残る場合に後見人を指名する。入力画面表示手段M2により、公正証書遺言データベース121に記録・保存された相続人を抽出し、手伝いが必要な人を家族、登録した家族からプルダウンで選択可能に指定できる。また、後見人も家族、登録した家族からプルダウンで選択可能に指定できる。後見人が家族、登録した家族以外の第三者場合は、氏名、生年月日、職業もしくは続柄、郵便番号、住所を入力する。
【0044】
本発明の適用範囲は上述した実施形態及び実施例に限定されない。本発明の趣旨に沿ったシステム及び方法に広く適用することができる。