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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106414
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】緩衝部材
(51)【国際特許分類】
   E04C 2/36 20060101AFI20240801BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20240801BHJP
   E04C 2/34 20060101ALI20240801BHJP
   E04B 1/98 20060101ALI20240801BHJP
   B65D 81/03 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
E04C2/36 C
E06B5/00 C
E04C2/34 C
E04B1/98
B65D81/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010648
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000143307
【氏名又は名称】株式会社荒井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】石渡 莉奈
(72)【発明者】
【氏名】長塚 和彦
【テーマコード(参考)】
2E001
2E162
2E239
3E066
【Fターム(参考)】
2E001DH37
2E001FA32
2E001GA87
2E001HD11
2E001LA19
2E162CD19
2E239AB07
3E066AA22
3E066BA01
3E066CA01
3E066DA03
3E066KA09
3E066LA04
3E066NA29
3E066NA30
(57)【要約】
【課題】粘着テープや水などの媒体を用いることなく簡単に窓や壁に貼り付けることができ、衝撃を効果的に吸収緩和し、吸音性や断熱性にもすぐれ、さらに装飾性を高めて、快適で安全な室内に供するための緩衝部材を提供することである。
【解決手段】緩衝部材は、弾性材料からなる緩衝部材であって、平面視で多角形の筒状に形成された複数のセル2の集合体からなるハニカム構造体1と、少なくとも一つのセル2の底面2bと一体に形成される吸着部7と、を含み、その吸着部7は、吸着対象物と真空吸着される曲面を有する吸着面部8と、吸着面部8をセルの空洞部2aの底面2cから支持する円柱状の脚部9と、で構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料からなる緩衝部材であって、
平面視で多角形の筒状に形成され空洞部を有する複数のセルの集合体からなるハニカム構造体と、
少なくとも一つの前記セルの空洞部の底面と一体に形成される吸着部と、を含み、
前記吸着部は、
吸着対象物と真空吸着される曲面を有する吸着面部と、
前記吸着面部を前記セルの空洞部の底面から支持する円柱状の脚部と、で構成されていることを特徴とする緩衝部材。
【請求項2】
前記吸着面部の先端は、前記セルの側壁の先端よりも所定の長さ突出しており、
前記吸着面部が吸着対象物に吸着されると、前記ハニカム構造体が吸着対象物に密着された吸着状態となり、前記空洞部が密閉された空気室として機能することを特徴とする請求項1に記載の緩衝部材。
【請求項3】
前記吸着面部の内周面には、円環状の凹みが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝部材。
【請求項4】
前記セルの底面は、
対向する前記セルの側壁同士の中間点を連結する補強支持部と、
前記補強支持部を含み、前記セルの底面全域を覆う薄膜底部と、を含んで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の緩衝部材。
【請求項5】
少なくとも前記ハニカム構造体は、透明または半透明の弾性材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の緩衝部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓や壁等に貼り付けて使用する緩衝部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば住宅用の緩衝部材については、従来から多数の凹みを有するキャップフィルムを真空成形により形成し、これに平坦なバックフィルムを貼り合わせて多数の密閉された気泡を形成した二層構成の気泡シート等が使用されている。また、気泡シートには、防音や緩衝部材以外にも、冬季に窓ガラスに貼って暖房エネルギーの損失を少なくするなどの、断熱機能としての用途もある。このような窓ガラスへの貼り付けに粘着テープを使うと、貼り付けと使用後の剥離が必要となるとともに、剥がした後に窓ガラス上に粘着テープの粘着跡が残ることの課題が発生する。
【0003】
そこで、特許文献1では、そのような課題を解決すべく、従来のように粘着テープなどの手段を必要とせず、水を塗布した上に気泡シートを貼り付けるだけで、その気泡のもつ吸盤効果で十分耐久性のある密着が確保できるとしている。また、剥離する場合は容易に剥がれ、従来起りがちであったガラス面上への粘着跡も残らない気泡シートとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-71361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の場合、水を塗布した上に気泡シートを貼り付けることは空中に漂う花粉やほこりも付着させて不衛生となること、気泡シートの吸着対象物の面が鏡面でない場合には吸着が十分ではない場合があること、水を全ての気泡部分に塗布することの方法は作業時間がかかるということなどの多々問題がある。
さらに、それらの気泡シートは、その用途が窓ガラスなどに吸着させて防音・断熱・緩衝機能を目的としているものの、一方、家庭の内装として重要な対象である窓ガラスであるにもかかわらず装飾性という美的観点においては十分に考慮されていなかった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、粘着テープや水などの媒体を用いることなく簡単に窓や壁に貼り付けることができ、衝撃を効果的に吸収緩和し、吸音性や断熱性にもすぐれ、さらに装飾性を高めて、快適で安全な室内に供するための緩衝部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、第1の発明は、弾性材料からなる緩衝部材であって、
平面視で多角形の筒状に形成され空洞部を有する複数のセルの集合体からなるハニカム構造体と、
少なくとも一つの前記セルの空洞部の底面と一体に形成される吸着部と、を含み、
前記吸着部は、
吸着対象物と真空吸着される曲面を有する吸着面部と、
前記吸着面部を前記セルの空洞部の底面から支持する円柱状の脚部と、で構成されていることを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記吸着面部の先端は、前記セルの側壁の先端よりも所定の長さ突出しており、前記吸着面部が吸着対象物に吸着されると、前記ハニカム構造体が吸着対象物に密着された吸着状態となり、前記空洞部が密閉された空気室として機能することを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明または第2の発明において、前記吸着面部の内周面には、円環状の凹みが形成されていることを特徴とする。
第4の発明は、第1の発明または第2の発明において、前記セルの底面は、
対向する前記セルの側壁同士の中間点を連結する補強支持部と、
前記補強支持部を含み、前記セルの底面全域を覆う薄膜底部と、を含んで構成されていることを特徴とする。
第5の発明は、第1の発明または第2の発明において、少なくとも前記ハニカム構造体は、透明または半透明の弾性材料からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粘着テープや水などの媒体を用いることなく簡単に窓や壁に貼り付けることができ、衝撃を効果的に吸収緩和し、吸音性や断熱性にもすぐれ、さらに装飾性を高めて、快適で安全な室内に供するための緩衝部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係る緩衝部材の斜視図である。
図2図1の緩衝部材を部分的に拡大して示す平面図である。
図3】(a)は、図2のA-A断面図で、(b)は、他の実施形態の図2のA-A断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る緩衝部材の斜視図である。
図5図4の緩衝部材を部分的に拡大して示す平面図である。
図6】(a)は、図5のB-B断面図で、(b)は、他の実施形態の図5のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の緩衝部材は、平面視で多角形の筒状に形成され空洞部を有する複数のセルの集合体からなるハニカム構造体と、少なくとも一つのセルの空洞部の底面と一体に形成される吸着部とを含み、その吸着部は、吸着対象物と真空吸着される曲面を有する吸着面部と、その吸着面部をセルの空洞部の底面から支持する円柱状の脚部と、で構成されている。以下、本実施形態について説明する。
【0011】
[ハニカム構造体]
本発明のハニカム構造体は、平面視で正六角形の筒状に形成された複数のセルの集合体からなる、いわゆる蜂の巣状のハニカム構造体を一例として採用している。なお、平面視で正六角形の筒状に形成された複数のセルの集合体からなるものに限らず、平面視で三角形状や四角形状などの多角形状の筒状に形成された複数のセルの集合体をも含むものとする。
ここでハニカム構造体は、透明または半透明の弾性材料からなり、その材料としては、シリコーンゴムが好適に用いられる。
【0012】
本発明の緩衝部材は、図1に示すように、正六角形および正六角形柱からなるセル2が隙間なく並んだハニカム構造体1のセル2の空洞部2aに、壁面や窓ガラス等の吸着対象面に吸着させる吸着部7が備えられている。
ここで、ハニカム構造体1を用いているのは、衝撃を受けたときに、その衝撃は隣接する他の面に分散し、また、軽量で強度が高いからである。また、ハニカム構造体1の側壁3だけの状態は空隙率が高く、そのぶん全体の容量を減らすことができて軽量化を図ることができ、当該吸着対象面から自重による落下が避けられる。
このようなハニカム構造の特性を生かすことにより衝撃壁を厚くすることなく、セル空洞部2aによる緩衝効果が期待できる。
【0013】
また、ハニカム構造体1は、平面視で正六角形の筒状に形成されたセル2を、同一平面上で複数個並設して一体成形してなる平面集合体である。なお、ハニカム構造体1は、少なくとも三面以上の複数の側壁を有し、平面視で多角形の筒状に形成された複数のセル2の集合体からなるものであれば全て本発明の範囲内であって適宜設計変更可能である。
【0014】
また、図2に示すように、1つのセル2は、平面視で正六角形の筒状を構成する6個の側壁3を備え、セル2同士が隣り合っていない側壁3b(3)の厚みは、セル2同士が隣り合っている側壁3a(3)の厚みよりも薄く成形されている。具体的には、セル2同士が隣り合っていない側壁3b(3)の厚みは、側壁3a(3)の厚みの1/2である。
【0015】
また、図2に示すように、1個のセル2のセルサイズ(相対向する側壁3の内面間の幅)は、利用用途や耐用強度によって選定される。すなわち、セルサイズが小さいほどせん断強さが高くなるため、撓み量が少なくなる。
また、各セル2は一面側(図1において上面側)が開口され、その反対側の底面2bは薄膜底部5によって覆われるように閉塞されている。
【0016】
本実施形態のハニカム構造体1を構成するセル2の数は、一例として、図1に示すような縦5個×横5の計25個で、これらを所定方向に並設して一体成形している。このハニカム構造体1は、1個で使用する形態も可能であるが、例えば、所定数のハニカム構造体1を用意し、それぞれのハニカム構造体1における各セル2同士が隣り合っていない側壁3b(3)同士を、同一平面上で当接させて繋ぎ合せることで、縦5個×横5の計25個に限定されることなく、ハニカム構造体1の全体面積(平面集合の面積)を利用用途に応じた任意の大きさにすることができる。
この場合、繋ぎ合わせた部分の側壁3b(3)同士が隣り合うこととなるため、繋ぎ合わせた側壁3b(3)同士の厚みは、セル2同士が隣り合っている側壁3a(3)の厚みとなる。
【0017】
このように、複数個のハニカム構造体1を繋ぎ合わせる場合には、例えば、シリコーン接着剤を使うことができる。なお、ハニカム構造体1の成形材料に応じた接着剤が本発明の範囲内で適宜選択される。本実施形態では、成形材料として、シリコーンゴムを採用しているため、複数個のハニカム構造体1を繋ぎ合わせて大面積となっても、同面積の金属製のハニカム構造体と対比して軽量にすることができる。
【0018】
また、ハニカム構造体1は、図1及び図2に示すように、セル2の底面2bは、対向する側壁3、3同士の中間点を連結する補強支持部4と、その補強支持部4を含み、セル2の底面全域を覆う薄膜底部5と、を含んで構成されている。詳細に説明すると、セル2の底面2bには、相対向する側壁3、3(3a、3b又は3a、3a又は3b、3b)のそれぞれの中間点3c、3cにわたって架け渡され、セル2の中央点6で交差する3本の補強支持部4と、補強支持部4を含みセル2の底面2b全域を覆う薄膜底部5と、を備えている。すなわち、ハニカム構造体2のセル2は、一方の面のみが開口し、その反対側の底面2bは、補強支持部4と薄膜底部5とによって閉塞された空洞部2aを備えている。
【0019】
補強支持部4は、図1及び図2に示すように、所定の厚みを持ったリブ形状をなし、各補強支持部4は全て同一形状としている。従って、各補強支持部4の中央点6における交差角度は60度である。
また、このように構成されていることから、隣り合うセル2の補強支持部4はそれぞれが同一線上に位置することとなる。
【0020】
本実施形態において補強支持部4は、各セル2における平面視で正六角形のそれぞれの角部(正六角の各頂点)同士にわたって架け渡されているのではなく、相対向する側壁3a(3)の中間点3cと側壁3b(3)の中間点3cとにわたって架け渡すこととしたため、各セル2の水平方向(各補強支持部4の延設方向)の強度を補強している。これにより、ハニカム構造体1が変形、座屈しても元の状態に戻りやすくなり、変化・復元性が良いものとなる。
【0021】
薄膜底部5は、補強支持部4を含み、セル2の底面2b全域を、所定の厚みの薄膜で覆うように成形されている。これにより、薄膜底部5上に形成されている補強支持部4と相俟って、ハニカム構造体1を構成する各セル2の強度アップと復元性も向上させることができる。
【0022】
薄膜底部5は、セル2と一体のシリコーンゴムを素材とし、弾力性に富み一般の有機系ゴムと比べて曲げたり、伸ばしたり、縮めたりと大きく変形させることができる。このような性質は、曲面形状の内面部材(衝撃吸収部材)にも利用することができる。
【0023】
また、シリコーンゴムは、透明性に優れているため顔料による着色が容易である。例えば、白色、桃色、赤色、黄色、青色など各種の色に着色することで、色鮮やかなハニカム構造体が提供できる。さらに、色の異なる複数個のハニカム構造体を繋ぎ合わせることにより、一段と色鮮やかな緩衝部材となる。
【0024】
このような緩衝部材を家屋などの壁や窓に貼り付けることにより、緩衝部材は室内における装飾部材として機能する。この場合、ハニカム構造体1の幾何学的模様(セル2の六角形状や補強支持部4の交差形状)が底面2b側から透けて見えることで視覚的に美しい印象を与え、特に本実施形態ではハニカム構造体1は透明または半透明のシリコーンゴムからなることで前記幾何学的模様が明確に認識できるため、より高い装飾効果が得られるものである。
そして、子供などが誤って室内の壁に衝突したとしても、その衝撃を効果的に吸収緩和することができ、安全な室内空間を提供し得る。さらに、ハニカム構造体の特徴として吸音性や遮熱性も有しているため、防音壁や断熱壁としても利用可能である。
【0025】
[吸着部]
次に、本発明の緩衝部材の吸着部の実施形態について説明する。吸着部は、ハニカム構造体と一体のシリコーンゴムからなり、吸着対象物に対し押圧による空気抜きにより真空吸着される曲面を有する吸着面部と、吸着面部をセルの底面から支持する円柱状の脚部と、で構成されている。なお、この吸着部は、全てのセルに設ける必要は無く、図1で示すように、数個のセルに1つの割合で設ければよい。
吸着面部8の先端は、セル2の側壁の先端よりも所定の長さ突出しており、吸着面部8が吸着対象物に吸着されると、ハニカム構造体1が吸着対象物に密着された吸着状態となり、空洞部2aが密閉された空気室10として機能する。すなわち、空気室10を形成するための密閉部材を必要としない合理的なものとなっている。
このような空気室10は、吸着面部8と、ハニカム構造体1の壁面3と吸着対象物とで密閉された有限空間である。また、空気室10は、吸着部7の数だけ複数備えられており個々に独立している。
【0026】
吸着部7は、図1及び図3に示すように、広口で浅底となるように湾曲した、いわゆる吸盤形状の吸着面部8と、当該吸着面部8を支える円柱状の脚部9から構成され、いわゆるクープグラスの形状をしている。
【0027】
吸着面部8は、図3(a)に示すように、断面視で切頭円錐形状のいわゆる吸盤形状に形成され、セル2の正六角形の筒状を構成する6個の側壁3の先端3dから吸着面部8の先端8bとの長さが符号h1だけ突出している。また、空洞部2aの側壁内側と吸着面部8の先端8bとが符号h0の距離だけ離れている。すなわち、吸着面部8の先端外周円の径Qはセル2の正六角形の筒状の径Pよりも符号h0(h0=(径P―径Q)/2)だけ小さく、吸着面部8が吸着対象物に密着された吸着状態において、セル2の径P内に収まるようにされている。
このように、吸着面部8が符号h1だけ突出しているのは、吸着面部8が吸着対象面に吸着されると、ハニカム構造体1の側壁3が吸着対象物に密着された吸着状態となり、空洞部2aが密閉され、自然の空気が充満した空気室10を有する。そして、空気室10は同じ大きさ及び形状を備え、それらの各容積も同一である
【0028】
すなわち、セル2の空洞部2aの底面2cから吸着面部8に対し指などによって押されたとき、セル2の側壁3の先端3dと吸着面部8の先端8bと同じ高さ位置となるように、符号h1の長さ分だけ吸着変形する部分8cを有している。すなわち、吸着面部8の先端8が拡径して吸着変形する部分8cがセル2の空洞部2a内へ符号h1だけ下がり、吸着変形する部分8cが空洞部2a側に変形する(図3(a)において、符号81aの矢印方向に変形し、2点鎖線の仮想線で形成された吸着面部81を参照。)。これにより、ハニカム構造体1の壁面3の先端3dと吸着対象物とが密着され吸着状態となる。
これにより、吸着面部81の先端8bが側壁3との間に隙間が無くなり密閉空間の空気室10が形成される。
【0029】
そして、セル2の側壁3aによって仕切られ独立していることから、空洞部2aと外気との開放部分が無くなって外気と遮断されて空気の対流を制限し、熱の不良導体である空気によって充満された空気室10が形成されることによりハニカム構造体1の特徴を生かした防音や断熱機能を有する緩衝部材としても利用可能である。
【0030】
また、本実施形態において、セル2の空洞部2aの底面2cから吸着面部8に対し指などによって押されたとき、吸着変形する部分8cが、セル2の側壁3の先端3dと吸着面部8の先端8bと同じ高さ位置となるように、符号h1の長さ分だけ吸着変形するようにしているが、吸着変形する部分8cがセル2の側壁3の先端3dと吸着対象面との密着が不十分で隙間が生じると密閉されず空気室10を形成できず好ましくない。一方、吸着面部8を強く押された場合、吸着変形する部分8cが十分に変形してセル2の側壁3の先端3dが圧迫されるもののセル2の側壁3の先端3dと吸着対象面との密着が復元力によって十分に密閉された空気室10が形成される。
【0031】
また、吸着面部8の湾曲している肉厚は、浅底面から先端8bに向かって、徐々に薄くなるように形成されている。このように肉厚を連続して次第に薄くすることにより吸着面部の柔軟性を増して、さらに吸着対象面に対する吸着力が増すことになる。
【0032】
次に、吸着面部8が、吸着対象面に接触した状態で、使用者がハニカム構造体1のセル2の薄膜底部5の外側からセル2の開口方向へ加圧してから離すと、吸着対象面との間の空気が抜けていて真空状態なっていることから、復元力が発生し吸着する。つまり、吸着面部8が吸着対象面の壁にくっついて吸着しているときは、吸着対象と吸着面部8で囲まれた領域が真空状態なので外側から気圧がかかって吸着している状態となる。
【0033】
吸着面部8の材料は、本実施形態では、ハニカム構造体1と一体のシリコーンゴムである。このようなシリコーンゴムによる吸着面8部は、吸着対象部材との間に気泡ができ難いことから吸着性が良く、密着性を有する用途には適している。
例えば、吸着面部8を利用し壁面や窓ガラス等の吸着対象面に貼り付けた場合に、シリコーンゴムによる吸着面部8と吸着対象部面とが隙間無く密着状態(空気が抜け、入らない状態)になるため、吸着対象面との摩擦抵抗か高くなる。従って、吸着対象面上からずり落ちてしまうような事態を未然に防ぐことができる。
【0034】
このように、ハニカム構造体1のセル2の幾つかに吸着面部8を設けることで、吸着対象面に接触した状態がより強固とし、吸着対象面との吸着剥離を防止するには、吸着面部8の吸着のための真空圧を十分高めておくことが必要である。それとともに、部分的に弾性変形できるような弾性材料による柔軟性を保持させておくことによって、セル2の側壁3とともに吸着面部8も追随して撓むからハニカム構造体1が吸着対象面から剥離するのを確実に防止することができる。
【0035】
また、例えば、図に示してないが、緩衝や防音・断熱を要する内装部材の内部や二層構造のガラス板の内部に本発明のハニカム構造体1を挿入・吸着させることができる。すなわちハニカム構造体1の薄膜底部5側は、既に説明のとおり、薄いシリコーン材でいずれも吸着対象面と隙間無く密着状態(空気が抜け気泡がない状態)になるとともに、吸着面部8側も吸着対象面と吸着することが可能とされる。これにより、薄膜底部5側と吸着面部8側の両側に吸着対象面を当接した二層構造の緩衝及びさらに防音・断熱機能の優れた効果を奏する緩衝部材を提供できる。
【0036】
吸着面部8側の他の実施形態として、図3(b)に示す。図3(a)と異なる部分は、吸着面部8の内周面側の湾曲した中腹部分に、さらに凹み8aを円環状に設けている点にある。この凹み8aは断面視で曲面状の凹状となる一方、その凹みによる肉厚だけ吸着面部8の外面側の湾曲した中腹部分に凸状の盛り上りが形成されている。本実施形態の円環状の凹み8aは、半円形状であるが、これに限定されず、例えば、くの字形状やその他の凹み形状であってもよい。
【0037】
このような円環状の凹み8aは、セル2の空洞部2aの底面2cから吸着面部8に対し指などによって押されて吸着面部8内の空気抜けするときに撓み、吸着面部8がセル2の空洞部2a内の薄膜底部5側へ吸着変形の部分8cの符号h2の分だけ下がることを許容する厚みと柔軟性及び復元性を有している。すなわち、このような凹み8aを設けることで、吸着面部8内の空気が入る容積が大きくなって真空引きできる量が多くなるとともに、吸着面部8も追随して撓み易くなり、シリコーンゴムによる吸着面部8の撓みの復元力も大きくなる。さらに吸着対象面に対し隙間無く密着状態(空気が抜け、入らない状態)になったときに吸着対象面との摩擦抵抗か高くなるため、吸着対象面上からずり落ちてしまうような事態をさらに防ぐことができる。
このような円環状の凹み8aは吸着面部8が大きい場合、例えば、吸着対象物が大きい場合には、ハニカム構造体1のセル2の空洞部2aの開口を広くする場合にさらに上述の効果を奏することができる。
【0038】
また、吸着面部8は、図3(b)に示すように、吸着面部8の先端8bとの長さが符号h2だけ側壁3の先端3dから突出している。この突出部分は、図3(a)に示す符号h1の長さに比べ、少し長い符号h2となる吸着変形の部分8cである。このように、吸着変形の部分8cと併せて円環状の凹み8aを設けることにより、さらに撓みが大きくなって、セル2の側壁3の先端3dと吸着面部8の先端8bと同じ位置合わせが可能となる。
【0039】
すなわち、図3(b)において、セル2の空洞部2aの底面2cから吸着面部8に対し指などによって押されたとき、セル2の側壁3の先端3dと吸着面部8の先端8bと同じ高さ位置合わせになる符号h2の長さ分だけ吸着変形する部分8cを有している。すなわち、吸着面部8の先端8が拡径して吸着変形する部分8cがセル2の空洞部2a内へ符号h2だけ下がり、吸着変形する部分8cが空洞部2a側に変形する(図3(b)において、符号81aの矢印方向に変形し、2点鎖線の仮想線で形成された吸着面部81を参照。)。これにより、ハニカム構造体1の壁面3の先端3dが吸着対象物に密着された吸着状態となる吸着状態となると、吸着面部81の先端8bdが側壁3との間に隙間が生じたとしても空洞部2aの外気との開放部分が無くなり密閉空間の空気室10が形成される。
【0040】
また、本実施形態において、セル2の空洞部2aの底面2cから吸着面部8に対し指などによって押されたとき、円環状の凹み8aが先に撓みつつ吸着変形する部分8cが、セル2の側壁3の先端3dと吸着面部8の先端8bと同じ高さ位置となるように、符号h2の長さ分だけ吸着変形するようにしているが、吸着変形する部分8cがセル2の側壁3の先端3dと吸着対象面との密着が不十分で隙間が生じると密閉されず空気室10を形成できず好ましくない。一方、吸着面部8を強く押された場合、円環状の凹み8aが撓みつつ吸着変形する部分8cが十分に変形してセル2の側壁3の先端3dが圧迫されるものの復元力によってセル2の側壁3の先端3dと吸着対象面との密着が十分となって密閉された空気室10が形成される。
【0041】
このような空気が充満された空気室10が形成されることにより外気と遮断され、ハニカム構造体の特徴を生かした防音や断熱機能を有する緩衝部材として利用可能である。
【0042】
次に、吸着面部8を支える円柱状の脚部9の実施形態について説明する。
脚部9は、図2及び図3に示すように、セル2の底部の中央点6(補強支持部4の交差点)から突出した円柱によって吸着面部8の浅底の裏面中央部を支持している。また、この脚部9の高さ(長さ)は、中央点6を基点とし浅底の裏面中央部までで、セル2の側壁3の高さの略2/3である。円柱の径Sは、側壁3の厚みの略2倍とし、吸着面部8の撓みがあったときに脚部9が撓みや折れ曲がらないように形成されている。
【0043】
このような脚部9は、ハニカム構造体1と一体に成形され、また吸着面部8とも一体に成形される。また、吸着面部8を別部材とし脚部9の円柱と接着して繋ぎ合わせるようにしてもよい。この場合、接着にはシリコーン接着剤を使うことができる。
【0044】
以上の如く構成される吸着部7を有することにより、本発明の緩衝部材は、従来のように粘着テープや水などの媒体を用いることなく、ワンタッチで簡単に窓や壁などの吸着対象物に貼り付けることができるものである
【0045】
前述した実施形態では、脚部9が吸着面部8と一体に形成されていることから、仮に、吸着面部8と相対する吸着対象面に傷等の凹凸面があった場合、吸着面部8の真空引きが上手くできずにハニカム構造体1が吸着対象面から剥離し易くなるおそれが生じる。すなわち、吸着対象面と吸着面部8に隙間があった場合、吸着対象面から吸着面部8の剥離を防止するための真空圧を十分高めておくことができない。
【0046】
そこで、吸着対象面の傷等の凹凸面の発生箇所を避けて、吸着面部8の真空引きが上手くできるように、吸着面部8を設ける位置をセル2のどこでも自由自在に変えることができるようにしている。また、吸着面部8の数もハニカム構造体1のセル2の数の範囲内であれば自由に増減可能となる。
【0047】
また、吸着面部8が装着されるセル位置を変えることで、吸着面部8が劣化或いは損傷して吸着が十分でなくなった場合であっても、別のセル位置に変更して吸着面部8を用意すれば良く、ハニカム構造体1全体を取り換える必要がない。
【0048】
先ず、図6(a)に示す脚部9は、雄脚部9b、この雄脚部9bの差し込みにより嵌合が生じる筒状内周の嵌合筒部9a1を有する雌脚部9a(径をUで示す。)とからなる。この雄脚部9aは、その嵌合筒部9a1に向けて延伸する円柱9b1をセル中央点6から突設する。雌脚部9aには円柱9b1(径をTで示す。)を係入させる嵌合領域が嵌合筒部9a1の内周面に形成される。この嵌合領域は、雌脚部9aの凹部である円錐台形状と雄脚部9bの凸部である円錐台形状で、両者の円錐台形状は略同一形状で略同じ大きさとしている。
【0049】
そして、雌脚部9aの凹部である円錐台形状と雄脚部9bの凸部である円錐台形状との嵌合は、弾性材料であるシリコーン材の弾性変形を利用して行われ、円柱9b1の円錐台形状の頭部傾斜面が嵌合筒部9a1を外方へ押し広げつつ嵌合筒部9a1の奥先の突き当て部9a2まで中へと進入する。そして、嵌合状態とするため係止部9b2で止まり当接し、手段嵌合筒部9a1の内周面が外方に押圧することにより、相互に抜けないように嵌合される。
【0050】
これにより、雄脚部9bの凸部である円錐台形状と雌脚部9aの凹部である円錐台形状との接触面が相互に当接・密着され、ハニカム構造体1のセル2内に脚部9が確実にセットされることができる。また、図4及び図5に示すように、ハニカム構造体1のセル2内に脚部9がセットされていないセル2には雄脚部9bのみが突出して設けられ、このようなセットされていないセル2に自在に雌脚部9aを嵌合することができる(脚部9と吸着部7とがハニカム構造体1と一体成形されている緩衝部材を示す図2には雄脚部9bが表示されていないのが分かる)。これにより、雄脚部9bと雌脚部9aとの密着は、接着剤で接着していないので、セル2内の吸着面部8の取替が自在である。
【0051】
次に、図6(b)は、図6(a)と異なり、脚部9は、吸着面部8に雄脚部9cを有し、セル中央点6から雌脚部9dが突設している。ハニカム構造体1のセル2内において、雄脚部9cと雌脚部9dとが着脱可能にされているという点では同じである。
【0052】
この脚部9は、雄脚部9c、この雄脚部9cの差し込みにより嵌合が生じる筒状内周の嵌合筒部9d1を有する雌脚部9d(径をWで示す。)とからなる。この雄脚部9cは、その嵌合筒部9d1に向けて延伸する円柱9c1を吸着面部8から突設する。雌脚部9dには円柱9c1(径をVで示す。)を係入させる嵌合領域が嵌合筒部9d1の内周面に形成される。この嵌合領域は、雌脚部9cの凸部である円錐台形状と雄脚部9dの凹部である円錐台形状で、両者の円錐台形状は略同一形状で略同じ大きさとしている。
【0053】
そして、雌脚部9cの凸部である円錐台形状と雄脚部9dの凹部である円錐台形状との嵌合は、弾性材料であるシリコーン材の弾性変形を利用して行われ、円柱9c1の台形状の頭部傾斜面が嵌合筒部9d1を外方へ押し広げつつ嵌合筒部9d1の奥先の突き当て部9d2まで中へと進入する。そして、嵌合状態とするため係止部9d3で止まり当接し、嵌合筒部9a1の内周面が外方に押圧することにより、相互に抜けないように嵌合される。
【0054】
これにより、雌脚部9cの凸部である円錐台形状と雄脚部9dの凹部である円錐台形状とが密着され、図3に示すように、ハニカム構造体1のセル2内に脚部9が確実にセットされることができる。ハニカム構造体1のセル2内に脚部9がセットされていないセル2には雌脚部9dのみが設けられ、セットされていないセル2には自在に雄脚部9cを嵌合することができる。これにより、雄脚部9cと雌脚部9dとの間が密着されているだけで、接着剤で接着していないので、セル2内の吸着面部8の取替が自在である。
【0055】
なお、以上の実施形態ではハニカム構造体1と吸着部7の材料を同じシリコーンゴムとした例について説明したが、ハニカム構造体1に対し吸着面部8が着脱可能なように分離して成形される場合には、吸着面部8はより吸着に適した他の材料、例えば、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ポリウレタンゴム、天然ゴムなどで成形してもよい。
また、吸着面部8はハニカム構造体1とは別の色としてもよい。このように、色を変えることによりカラーフルな緩衝部材を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の緩衝部材は、防音部材、断熱部材及び装飾部材としても広く利用ができる。
【符号の説明】
【0057】
1 ハニカム構造体
2 セル
2a 空洞部
2b セルの底面
2c 空洞部の底面
3 側壁
4 補強支持部
5 薄膜底部
6 セル中央点
7 吸着部
8 吸着面部
9 脚部
10 空気室
図1
図2
図3
図4
図5
図6