(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106421
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】啼泣原因表示装置、啼泣原因の表示方法および表示プログラム
(51)【国際特許分類】
G10L 15/10 20060101AFI20240801BHJP
G10L 15/22 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G10L15/10 500Z
G10L15/22 460Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010658
(22)【出願日】2023-01-27
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】523030658
【氏名又は名称】株式会社クロスメディスン
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100213425
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 正憲
(74)【代理人】
【識別番号】100221707
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100099977
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 章吾
(74)【代理人】
【識別番号】100104259
【弁理士】
【氏名又は名称】寒川 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100224915
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 茉友
(74)【代理人】
【識別番号】100229116
【弁理士】
【氏名又は名称】日笠 竜斗
(72)【発明者】
【氏名】中井 洸我
(72)【発明者】
【氏名】福本 和生
(72)【発明者】
【氏名】秋光 大地
(72)【発明者】
【氏名】平本 京嗣
(72)【発明者】
【氏名】具 滋仁
(57)【要約】 (修正有)
【課題】啼泣を聞くストレスを緩和するとともに啼泣原因とその対処法を的確に把握させる啼泣原因表示装置、啼泣原因の表示方法および表示プログラムを提供する。
【解決手段】音声信号を解析して乳幼児の啼泣原因を推測する原因推測手段102と、推測された啼泣原因を表示させる表示制御手段103とを備えた啼泣原因表示装置1において、表示制御手段103は、推測された啼泣原因を表示させるにあたり、啼泣原因の表示を含む所定のアニメーションを用いて啼泣原因を表示手段105に表示する。アニメーションには、看者の気持ちを落ち着かせるアニメーションを用い、所定操作により啼泣原因についての対処法も表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳幼児の音声信号を入力する入力手段と、
前記入力手段に入力された音声信号を解析して乳幼児の啼泣原因を推測する原因推測手段と、
前記原因推測手段で推測された啼泣原因を表示手段に表示させる表示制御手段と、を備えた啼泣原因表示装置において、
前記表示制御手段は、推測された啼泣原因を表示させるにあたり、啼泣原因の表示を含んだ所定のアニメーションを前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする啼泣原因表示装置。
【請求項2】
前記原因推測手段は、あらかじめ分類された複数の啼泣原因から1または2以上の啼泣原因を該当可能性の割合とともに推測し、
前記表示制御手段は、推測された啼泣原因を表示させるにあたり、前記啼泣原因の該当可能性の割合に応じて啼泣原因の表示を差別化して表示させる
ことを特徴とする請求項1に記載の啼泣原因表示装置。
【請求項3】
前記啼泣原因の表示は、啼泣原因から乳幼児が欲求していると推定される事項の表示を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の啼泣原因表示装置。
【請求項4】
前記啼泣原因の表示の差別化は、該当可能性に応じて、啼泣原因の表示の大きさを変更する
ことを特徴とする請求項2に記載の啼泣原因表示装置。
【請求項5】
前記啼泣原因の表示の差別化は、該当可能性に応じて、啼泣原因の表示の色彩を変更する
ことを特徴とする請求項2に記載の啼泣原因表示装置。
【請求項6】
前記アニメーションは、看者の気持ちを落ち着かせる程度に緩やかな動きのアニメーションで構成されている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の啼泣原因表示装置。
【請求項7】
啼泣原因ごとに対処法を記憶した記憶手段を有し、
前記表示制御手段は、推測された啼泣原因を表示させるにあたり、表示する啼泣原因に対応する前記対処法を前記記憶手段から読み出して表示手段に表示させる
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の啼泣原因表示装置。
【請求項8】
乳幼児の啼泣原因を表示する方法であって、
端末装置に、
乳幼児の音声信号を入力するステップと、
入力された音声信号を解析して乳幼児の啼泣原因を推測するにあたり、あらかじめ分類された複数の啼泣原因から1または2以上の啼泣原因を該当可能性の割合とともに推測するステップと、
推測された啼泣原因を表示手段に表示するにあたり、啼泣原因を含んだアニメーションを用い、このアニメーションにおいて、前記該当可能性の割合に応じて啼泣原因の表示を差別化して表示するステップと、を実行させる
ことを特徴とする啼泣原因の表示方法。
【請求項9】
乳幼児の啼泣原因を表示するためのプログラムであって、
端末装置に、
乳幼児の音声信号を入力するステップと、
入力された音声信号を解析して乳幼児の啼泣原因を推測するにあたり、あらかじめ分類された複数の啼泣原因から1または2以上の啼泣原因を該当可能性の割合とともに推測するステップと、
推測された啼泣原因を表示手段に表示するにあたり、啼泣原因を含んだアニメーションを用い、このアニメーションにおいて、前記該当可能性の割合に応じて啼泣原因の表示を差別化して表示するステップと、を実行させる
ことを特徴とする啼泣原因の表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は啼泣原因表示装置、啼泣原因の表示方法および表示プログラムに関し、より詳細には、乳幼児の啼泣原因を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の少子高齢化、核家族化の進行に伴い、子育てに関する経験が、家族や近隣住民などで共有されることが少なくなっている。そのため、初めての出産、子育てを経験する親にとって子育ては常に不安が伴う。
【0003】
特に、言葉を発しない乳幼児(新生児を含む。)は、泣くことがコミュニケーションの手段であることが知られているが、子育て経験の浅い親にとって乳幼児がなぜ泣いているのか(たとえば、眠くて泣いているのか、空腹で泣いているのか、不快で泣いているのかなど)を理解することは容易ではない。乳幼児の啼泣は昼夜を問わないことから、有効な対応が取れないまま乳幼児が泣き続けると、泣き声をストレスに感じるようになり、その結果、産後うつや育児ノイローゼに陥るおそれがある。
【0004】
これに対し、近年では乳幼児の泣き声を解析してその心理状態を推測する技術が開発されている。特許文献1はその一例である。特許文献1に示す音声解析システムは、啼泣の音声信号を周波数解析し、その周波数スペクトルから、「眠い」、「空腹」といった啼泣原因を推測するものであり、推測結果を表示手段に表示することで、乳幼児の啼泣原因を第三者が理解できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような音声解析システムでは産後うつや育児ノイローゼの解消には至らなかった。
【0007】
すなわち、近年の音声解析システムは乳幼児の啼泣原因をほぼ正確に推定できるようになってきているが、啼泣原因が解っても、子育て経験の浅い親にはその対処法(いかにすれば泣き止むか)がわからないので、結果として、乳幼児を泣き止ませることができない。そのため、対処法を知らない親たちは、子供が泣くたびに啼泣原因をインターネットで検索するなどの手間をかけて調べなければならかった。
【0008】
その一方で、対処法を調べている間も乳幼児は泣き止まない。そのため、適切な対処法を発見するまでに時間がかかってしまうと、泣き止まない泣き声を聞き続けることがストレスになり、親の精神を昂らせ、精神的な負担となる。そして結果として、親を精神的に追い詰める原因になるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、啼泣を聞くストレスを緩和するとともに啼泣原因とその対処法を的確に把握させることができる啼泣原因表示装置、啼泣原因の表示方法および表示プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る啼泣原因表示装置は、乳幼児の音声信号を入力する入力手段と、上記入力手段に入力された音声信号を解析して乳幼児の啼泣原因を推測する原因推測手段と、上記原因推測手段で推測された啼泣原因を表示手段に表示させる表示制御手段と、を備えた啼泣原因表示装置において、上記表示制御手段は、推測された啼泣原因を表示させるにあたり、啼泣原因の表示を含んだ所定のアニメーションを上記表示手段に表示させることを特徴とする。
【0011】
ここで、「啼泣原因の表示を含んだ所定のアニメーション」とは、啼泣原因の表示とともにアニメーションを表示する場合はもちろんのこと、啼泣原因の表示も含めてすべてをアニメーションで表示する場合を含んでいる。この発明では、推測された啼泣原因を表示手段に表示する際に、啼泣原因の表示を含んだアニメーションを用いて啼泣原因を表示するので、啼泣原因を知ろうとして表示手段を見た者は、少なくともその意識の一部がアニメーションに向けられることになる。その結果、啼泣原因の探求に向けて張りつめていた精神状態が、アニメーションの視聴によって和らぐ。また、泣き声の音による聴覚情報に加え、音に反応して作られるアニメーションによる視覚情報が増えることで、聴いているだけというストレスから解放される。結果として、ストレスが緩和され、精神的な負担の軽減が図られる。
【0012】
そして、本発明に係る啼泣原因表示装置は、その好適な実施態様として、上記原因推測手段は、あらかじめ分類された複数の啼泣原因から1または2以上の啼泣原因を該当可能性の割合とともに推測し、上記表示制御手段は、推測された啼泣原因を表示させるにあたり、前記啼泣原因の該当可能性の割合に応じて啼泣原因の表示を差別化して表示させることを特徴とする。
【0013】
この発明では、啼泣原因の推測にあたり、啼泣原因として該当する可能性のある原因が割合とともに推測されるので、たとえば、空腹80%、不快10%、眠気10%といったように該当可能性に軽重を付して、複数の啼泣原因を候補として挙げることができる。また、啼泣原因の表示に際しては、該当可能性の割合に応じて啼泣原因の表示を差別化して表示するので、たとえば、該当可能性の高い啼泣原因の表示を他より目立つように表示させることができる。これにより、該当可能性の高い啼泣原因を容易に把握することができる。
【0014】
また、本発明は他の実施態様として、上記啼泣原因の表示は、啼泣原因から乳幼児が欲求していると推定される事項の表示を含んでいることを特徴とする。これにより、啼泣原因の表示をみることで、乳幼児の要求が直ちにわかるようになる。
【0015】
また、本発明は他の実施態様として、上記啼泣原因の表示の差別化は、該当可能性に応じて、啼泣原因の表示の大きさを変更することを特徴とする。これにより、たとえば、該当可能性の高い啼泣原因の表示を大きく表示して目立たせることができる。
【0016】
また、他の実施態様として、上記啼泣原因の表示の差別化は、該当可能性に応じて、啼泣原因の表示の色彩を変更することを特徴とする。これにより、たとえば、該当可能性の高い啼泣原因を目立つ色で表示させることができる。
【0017】
さらに、他の実施態様として、上記アニメーションは、看者の気持ちを落ち着かせる程度に緩やかな動きのアニメーションで構成されていることを特徴とする。たとえば、アニメーションとして、自然界のゆらぎを表現する、いわゆる「1/fゆらぎ」を用いたアニメーションを使用する。1/fゆらぎとは自然界の音などに含まれるリズムのことで、1/fゆらぎを感じると、心地よさや癒し、集中力アップなどの効果が期待できるといわれている。このようなアニメーションを用いることにより、表示を見た者の気持ちをリラックスさせることができ、ストレスを感じている者の気持ちを和らげることができる。
【0018】
また、本発明は他の実施態様として、啼泣原因ごとに対処法を記憶した記憶手段を有し、上記表示制御手段は、推測された啼泣原因を表示させるにあたり、表示する啼泣原因に対応する上記対処法を上記記憶手段から読み出して表示手段に表示させることを特徴とする。これにより、啼泣原因を知ろうとして表示手段を見た者は、啼泣原因とともにその対処法を知ることができるので、啼泣に対して適切な対応をとることができ、乳幼児を泣き止ませることができるようになる。
【0019】
そして、本発明に係る啼泣原因の表示方法は、乳幼児の啼泣原因を表示する方法であって、端末装置に、乳幼児の音声信号を入力するステップと、入力された音声信号を解析して乳幼児の啼泣原因を推測するにあたり、あらかじめ分類された複数の啼泣原因から1または2以上の啼泣原因を該当可能性の割合とともに推測するステップと、推測された啼泣原因を表示手段に表示するにあたり、啼泣原因を含んだアニメーションを用い、このアニメーションにおいて、上記該当可能性の割合に応じて啼泣原因の表示を差別化して表示するステップと、を実行させることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る啼泣原因の表示プログラムは、乳幼児の啼泣原因を表示するためのプログラムであって、端末装置に、乳幼児の音声信号を入力するステップと、入力された音声信号を解析して乳幼児の啼泣原因を推測するにあたり、あらかじめ分類された複数の啼泣原因から1または2以上の啼泣原因を該当可能性の割合とともに推測するステップと、推測された啼泣原因を表示手段に表示するにあたり、啼泣原因を含んだアニメーションを用い、このアニメーションにおいて、上記該当可能性の割合に応じて啼泣原因の表示を差別化して表示するステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、啼泣原因ごとにあらかじめ設定されたアニメーションを用いて乳幼児の啼泣原因が表示されるので、啼泣原因を知ろうとして表示手段を見た者の意識がアニメーションにも向けられ、アニメーションを見ることで張りつめていた精神状態が和らげられる。そのため、乳幼児の啼泣によりストレスを感じていた親は、表示手段を見ることでストレスが緩和され、精神的な負担が軽減される。
【0022】
また、泣き声に対してアニメーションを用いることにより、泣き声に対するネガティブな印象や認知を変え、泣きに対するイメージをポジティブに変えることができる。さらには、泣いている様子をアニメーションにすることで周囲の泣いている状況を見せることができ、子育てへの参加を促進させることができる。
【0023】
また、啼泣原因の表示に当たり、該当する可能性のある原因が割合とともに推測され、かつ、該当可能性の割合に応じて差別化してアニメーションがされるので、該当可能性の高い啼泣原因を容易に把握できる。
【0024】
また、推測された啼泣原因を表示する際に、表示する啼泣原因に対応する対処法を表示することで、啼泣に対して適切な対応をとることができ、育児経験の浅い親でも確実に乳幼児を泣き止ませることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る啼泣原因表示装置の概略構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図2】同啼泣原因表示装置における啼泣原因の表示手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】同啼泣原因表示装置の初期画面の一例を示す画面構成図である。
【
図4】同啼泣原因表示装置の録音画面の一例を示す画面構成図である。
【
図5】同啼泣原因表示装置におけるアニメーションを用いた啼泣原因の表示画面の一例を示す画面構成図である。
【
図6】同啼泣原因表示装置における啼泣原因の対処法の表示画面の一例を示す画面構成図である。
【
図7】同啼泣原因表示装置の機能の一部を外部に分散させた構成の一例を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施形態1
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る啼泣原因表示装置1の概略構成を示している。啼泣原因表示装置1は、乳幼児(新生児を含む。)の泣き声を解析して啼泣原因を推測するとともに、推測した啼泣原因を視認可能に表示する装置であって、機能構成として、入力手段101と、原因推測手段102と、表示制御手段103と、記憶手段104と、表示手段105と、操作手段106とを主要部として備えている。
【0027】
啼泣原因表示装置1としては、プログラムをインストールすることができ、かつ、プログラムの実行によって上記機能構成を実現できる装置、たとえば、スマートフォン、タブレット型コンピュータのような携帯可能な電子計算機が好適に用いられるほか、拡張現実に対応したARグラスなどのスマートグラスを用いることもできる。具体的には、この装置としては、図示しないが、マイクロフォンなどの音声入力部と、CPU、ROM、RAMなどを備えた演算部と、フラッシュメモリなどの二次記憶装置を備えた記憶部(内部ストレージ)と、液晶ディスプレイなどの表示装置を備えた表示部と、入力操作を行うための操作部とを有する電子計算機が用いられる。本実施形態では、この啼泣原因表示装置1としてスマートフォンを用いている。
【0028】
入力手段101は、乳幼児の音声信号を入力するための手段である。入力手段101としてはスマートフォンの音声入力部が用いられる。すなわち、スマートフォンに備えられたマイクロフォン、A/D変換回路が入力手段101として用いられる。マイクロフォンに入力される乳幼児の泣き声はマイクロフォンで電気信号に変換されるとともに、A/D変換回路でデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された音声信号は、スマートフォンの演算部によって音声解析などのデータ処理に用いられる。
【0029】
原因推測手段102は、デジタル信号に変換された音声信号(音声データ)を解析して乳幼児の啼泣原因を推測する手段である。この原因推測手段102は、スマートフォンの演算部によって実現される。具体的には、スマートフォンにインストールされたプログラムに従ってスマートフォンの演算部が原因推測手段102として機能する。
【0030】
ここで、原因推測手段102による啼泣原因の推測には公知の手法が用いられる。たとえば、入力された音声信号の周波数スペクトルや入力された音声信号の音量などを用いて啼泣原因が推測される。本実施形態では、あらかじめ分類された複数の啼泣原因から該当する可能性が高い1または2以上の啼泣原因を候補として抽出する方法が用いられる。また、啼泣原因の候補の抽出にあたっては、該当する可能性(該当可能性)の割合もあわせて推測するものとされる。
【0031】
たとえば、あらかじめ分類しておく啼泣原因としては、「眠かった」、「お腹が空いていた」、「甘えていた」、「寂しかった」、「不快だった」、「不安だった」、「怖かった」、「痛かった」、「イライラしていた」、「驚いていた」、「その他」、「分からない」などが例示される。ここで、原因推測手段102で推測可能な啼泣原因は、原因推測手段102における啼泣原因の推測手法との関係で決定される。一般的には、高度な推測手法を用いることにより、より多くの啼泣原因を推測できる。したがって、あらかじめ分類しておく啼泣原因は、原因推測手段102の推測手法との関係で適宜変更可能であり、例示した啼泣原因以外の原因を啼泣原因として分類しておくことも勿論可能である。
【0032】
また、啼泣原因の該当可能性に関連して、原因推測手段102は、該当可能性が高い啼泣原因から順に所定数の啼泣原因を候補として抽出する。抽出する啼泣原因は1つでもよいが、複数の啼泣原因を抽出するように構成するのが好ましい。複数の啼泣原因を抽出することで、最終的な判断はユーザに委ねることができる。最終的な判断をユーザに委ねることで、ユーザである親は、個々の乳幼児の個性に合わせた対応ができるようになる。また結果として、推測漏れを回避できるようになる。本実施形態では、該当可能性が高い啼泣原因から5つの啼泣原因を抽出するようにしている。
【0033】
表示制御手段103は、表示手段105の表示内容を制御する手段であり、本実施形態では、原因推測手段102で推測された啼泣原因などを表示手段105に表示させる制御を実行する。この表示制御手段103は、原因推測手段102と同様、スマートフォンにインストールされたプログラムに従ってスマートフォンの演算部が表示制御手段103として機能する。
【0034】
記憶手段104は、プログラムやデータを記憶する手段である。この記憶手段104としてはスマートフォンの記憶部が用いられる。本実施形態では、この記憶手段104にスマートフォンを啼泣原因表示装置1として機能させるプログラムと当該プログラムで利用するデータが記憶される。なお、このプログラムはあらかじめ記憶手段104にインストールされる。記憶手段104に記憶されるデータには、たとえば、啼泣原因ごとの対処法のデータや、乳幼児の泣き声を録音した音声データなどが含まれる。
【0035】
表示手段105は、原因推測手段102で推測された啼泣原因を表示する手段である。本実施形態では、啼泣原因表示装置1としてスマートフォンを用いていることから、表示手段105にはスマートフォンの表示部が用いられる。すなわち、表示手段105には操作手段106としても機能するタッチパネルが用いられる。
【0036】
次に、このように構成された啼泣原因表示装置1について、啼泣原因とその対処法を表示する手順について、
図2乃至
図6を用いて説明する。
【0037】
(1)スマートフォンを啼泣原因表示装置1として用いる場合、まず、スマートフォンにインストールされているプログラムを起動して、スマートフォンを啼泣原因表示装置1として機能させる(
図2ステップS1参照)。これにより、スマートフォンの表示部(表示手段105)には、啼泣原因表示装置1の初期画面(
図3参照)が表示される。乳幼児が泣き始めたら、プログラムを起動してこの初期画面を表示させる。
【0038】
(2)プログラムが起動すると、次に、乳幼児の泣き声を録音する(
図2ステップS2参照)。録音は、音声認識技術によって乳幼児の泣き声に反応して開始されるか、初期画面に表示される指示に従って行う。たとえば、
図3に示す初期画面の場合、画面下部の「タップ」の指示に従って画面をタップすることで表示手段105に表示される画面が初期画面から録音画面(
図4参照)に遷移するので、録音画面の指示に従って泣き声を録音する。
図4に示す例では、画面下部の「録音を始める」と表示されたアイコンをタップすることで録音が開始される。なお、録音された泣き声の音声データは記憶手段104に記憶される。
【0039】
(3)記憶手段104に泣き声の音声データが記憶されると、原因推測手段102は、記憶手段104に記憶された音声データから啼泣原因を推測する(
図2ステップS3参照)。または、記憶された音声データから対処法を推測する。本実施形態では原因推測手段102は、啼泣原因として該当する可能性が最も高い原因や対処法などを推測する。啼泣原因などの推測は、所定周期で(たとえば、4秒ごとに)判定され、啼泣原因や対処法が判明するごとにアニメーションとして表示される。
【0040】
(4)原因推測手段102による啼泣原因の推測が完了すると、推測された啼泣原因が表示制御手段103によって表示手段105に表示される(
図2ステップS4参照)。表示にあたっては、啼泣原因の表示を含んだアニメーション、すなわち、連続して変化する図形や絵などを用いた動画が表示される。なお、ここで「啼泣原因の表示を含んだアニメーション」とは、啼泣原因の表示とともにアニメーションを表示する場合はもちろんのこと、啼泣原因の表示も含めてすべてをアニメーションで表示する場合を含んでいる。
【0041】
図5はアニメーションを用いた啼泣原因の表示例を示している。
図示例では、「抱っこして」、「お腹が空いた」、「ねむい」、「痛い」、「暑い」の5通りの啼泣原因が抽出・表示されている。そして、これらの啼泣原因の表示にあたり、啼泣原因として最も該当する可能性の高い「お腹が空いた」の表記を最も大きなテキストで表示するようにし、推測された他の啼泣原因は該当可能性の割合に応じて小さく表示している。つまり、本実施形態では、啼泣原因の該当可能性の割合に応じて啼泣原因の表示の大きさを変えるようにし、可能性の高い啼泣原因を最も大きく表示しているので、見間違うことなく可能性の高い啼泣原因を一目で把握できる。
【0042】
なお、この啼泣原因の表示は、該当可能性の割合に応じて差別化して表示するものであれば、上述したテキストの大きさに限らず、たとえば、該当可能性に応じて啼泣原因を表示する色彩を変更するように構成することも可能である。具体的には、たとえば、啼泣原因が「甘えていた」のときはピンク色で表記し、「寂しい」のときは紫色で表記するといったような方法が採用される。また、この場合、たとえば、「甘えていた」と「寂しい」の2つの感情(啼泣原因)が7:3の割合であったときは、ピンク色と紫色が7:3での比率で混ざった色を用いて表記することもできる。このように、該当可能性の割合に応じて啼泣原因の表示を差別化することで、候補として抽出した啼泣原因に優劣をつけて表示することができる。
【0043】
また、使用するアニメーションについて、図示例では、実線で描かれた丸形、四角形、三角形、半円形の図形および鎖線で描かれた丸形の図形が、それぞれ画面の下から上に向かって緩やかな動きで上昇する様子を表現した動画を用いている。この動画は、看者の気持ちを落ち着かせる効果を狙って作られている。具体的には、画面の上端付近に水面(海面)を描くことで、画面の下端付近を水底(海底)に見立てて水中をイメージさせるとともに、上述した丸形、四角形、三角形などの各図を「泡」に見立てて、これらの図形が画面の下部から上部に向かって泡のようにゆらゆらと上昇する動画で構成される。この動画において、啼泣原因の表示(テキスト表示)は、これらの図形とともに水底から水面に向かってゆらゆらと上昇するように表示される。したがって、この動画を見るユーザは、水中またはそこから連想される穏やかなイメージを想起することになり、このイメージによって気持ちが和らげられ、落ち着いた心地となる。
【0044】
なお、使用するアニメーションとしては、看者の気持ちを落ち着かせるものであればよく、上述した「泡」をモチーフとしたアニメーションには限定されない。したがって、「泡」以外のものをモチーフとしたアニメーションであってもよい。緩やかな動きで看者をリラックスさせる動画であれば、たとえば、画面の上から下に動くようなアニメーションや、放射状に広がるように動くアニメーション、さらには、ランダムに動くアニメーションなど様々な動きのアニメーションを採用することができる。また、この緩やかな動きに関しては、常に同じ速度で動く動画であってもよいが、緩急をつけて動くアニメーションであってもよい。たとえば、上述した例では、水底から上昇する図形について、水底付近の速度(図形の出現時の速度)を速くし、水面に近付くに従って速度を緩めていくといったような構成を採用することもできる。さらには、自然界のゆらぎを表現するいわゆる「1/fゆらぎ」を用いたアニメーションを使用することも可能である。「1/fゆらぎ」を利用することで、看者は、「1/fゆらぎ」による心地よさや癒しを感じることとなり、気持ちが落ち着く効果が期待できる。
【0045】
このように、本発明に係る啼泣原因表示装置1では、啼泣原因の表示を含むアニメーションを用いて啼泣原因を表示するので、本装置を使って啼泣原因を知ろうとする場合には必ず表示手段105に映し出されるアニメーションを見ることになる。そして、アニメーションを見ることで、乳幼児の啼泣にストレスを感じている親のストレスが和らぐ。また、泣き声の音による聴覚情報に加え、音に反応して作られるアニメーションによる視覚情報が増えることで、聴いているだけというストレスから解放される。そのため、結果として、乳幼児の啼泣が親に与える精神的な負担が軽減される。また、啼泣原因の表示に当たり、該当可能性の割合に応じて啼泣原因の表示を差別化して表示するので、該当可能性の高い啼泣原因を一目で把握することができる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、アニメーションの使用に際し、啼泣原因の表示そのものもアニメーションにして、丸形や四角形などの図形とともに動くように構成した場合を示したが、啼泣原因の表示はアニメーションを用いずに静止画像で表示してもよい。
【0047】
(5)そして、本実施形態では、啼泣原因の候補が抽出・表示された状態で、表示手段105(操作手段106)で対処法の表示を指示する操作(たとえば、画面のタップ)がなされると、表示制御手段103は、啼泣原因に対応する対処法を表示手段105に表示する(
図2ステップS5参照)。ここで、対処法とは、啼泣を通じて乳幼児が要求している事項のことであり、たとえば、啼泣原因が「お腹が空いた」であれば、その対処法は「ミルクを与える」であり、また、啼泣原因が「抱っこして」であれば、その対処法は「抱っこ」であるといったように、啼泣原因ごとに対する対処法が定められており、これらのデータが記憶手段104に記憶されている。なお、啼泣原因に対する対処法は1つには限らない。たとえば、1つの啼泣原因に対して2つの対処法を設定するなどの構成も採用可能である。これら啼泣原因と対処法の対応付けは記憶手段104に記憶するデータによって行われる。
【0048】
対処法の表示は、たとえば、該当可能性の最も高い啼泣原因についての対処法を記憶手段104から読み出して表示手段105に表示したり、あるいは、ユーザに啼泣原因を選択させ、選択された啼泣原因に対する対処法を記憶手段104から読み出して表示するなどの方法が採用される。また、本実施形態では、対処法の表示は啼泣原因の表示と関連付けられて行われる場合を示しているが、啼泣原因の推測後に啼泣原因の表示を省略して対処法を表示するように構成することも可能である。
【0049】
図6は、表示手段105への対処法の表示例を示している。
図6の表示例は啼泣原因「お腹が空いた」に対する対処法を表示した場合を示している。図示のように、本実施形態では、文字と図形の双方を用いて対処法を表示している。文字を使って「ミルク」と表示することで、「ミルクを与える」という対処法が確実に理解されるようにするとともに、その下に「哺乳瓶」の図形を表示することで、文字を読まなくても直感的に対処法を把握できるようにもしている。
【0050】
このように、本発明に係る啼泣原因表示装置1では、推測された啼泣原因を表示する際に、表示する啼泣原因に対応する対処法も表示するので、本装置を使用する親は、子供の啼泣に対して適切な対応をとることができ、育児経験の浅い親でも乳幼児を泣き止ませることができるようになる。
【0051】
なお、本実施形態に示す啼泣原因表示装置1では、
図6に示すように、対処法を図示した「哺乳瓶」の図形に隣接する位置に矢印のアイコンを設けている。この矢印のアイコンは、画面のスクロールまたは画面の遷移を指示するアイコンであって、このアイコンの指示に従って画面をスクロールまたは遷移させることで、該当確率が次点の啼泣原因(たとえば、「痛い」)の対処法が表示されるようにしている。このように、啼泣原因を選択してその対処法を表示できるようにしたことで、たとえば、第1候補の啼泣原因の対処法で泣き止まない場合に、次点、次々点などの啼泣原因の対処法を表示させ、これらを試すことができる。そのため、第1候補の啼泣原因の対処法で泣き止まない場合でも有効な対処法を速やかに見つけ出すことができる。
【0052】
また、本実施形態に示す啼泣原因表示装置1では、
図6に示すように、対処法を図示した「哺乳瓶」の図形の下に「効いた」ボタンを配置している。この「効いた」ボタンは、表示された対処法を試すことによって泣き止んだ場合に操作するボタンである。このボタンをタップすることで、画面に表示された対処法が有効であったという情報(成否情報)が啼泣原因表示装置1に入力されるようになっている。すなわち、図示例の場合には、「お腹が空いた」との啼泣原因に対して、「ミルクを与える」との対応が有効であったという成否情報が啼泣原因表示装置1に入力される。
【0053】
なお、啼泣原因表示装置1に入力された成否情報は、たとえば、泣き声を採取した乳幼児を特定する情報と紐づけて解析し、その解析結果を原因推測手段102による啼泣原因の推測に反映させることで、より精度の高い啼泣原因表示装置1を提供できるようになる。具体的には、たとえば、「効いた」ボタンがタップされた音声データを教師データとして啼泣原因を機械学習させることで、より精度の高い啼泣原因の推測ができるようになる。なお、「哺乳瓶」の図形の下に配置された「閉じる」ボタンは、対処法の表示画面を閉じるボタンである。
【0054】
実施形態2
次に、本発明に係る啼泣原因表示装置1の第2の実施形態を
図7を参照して説明する。
図7は、啼泣原因表示装置1の機能の一部を外部に分散させた構成の一例を示すシステム構成図である。
【0055】
具体的には、
図7に示す啼泣原因表示装置1は、ネットワークNを介してサーバ2と通信接続されており、実施形態1に示す啼泣原因表示装置1の記憶手段104に記憶させていたプログラムおよびデータの一部をサーバ2に分散させている。
【0056】
ここで、ネットワークNはインターネットやLAN(Local Area Network)などのコンピュータネットワークで構成される。また、サーバ2は、啼泣原因表示装置1とクライアントサーバシステムを構成するサーバコンピュータで構成される。
【0057】
このように構成されるシステムでは、たとえば、啼泣原因表示装置1の入力手段101に入力された音声データをネットワークNを介してサーバ2に送信し、サーバ2において音声信号を解析して乳幼児の啼泣原因とその該当可能性の割合とを推測させ、推測結果を啼泣原因表示装置1に送信することによって、啼泣原因表示装置1の表示手段105に啼泣原因を表示するように構成することができる。また、対処法についても同様にサーバ2に啼泣原因と対応する対処法を記憶させておき、サーバ2から対処法のデータを啼泣原因表示装置1に送信して表示させるように構成することもできる。
【0058】
このように、啼泣原因表示装置1の機能の一部を外部に分散させることにより、啼泣原因表示装置1に記憶するプログラムやデータの容量を少なくすることができる。また、啼泣原因を推測するプログラムをサーバ2側に記憶させることで、啼泣原因の推測手法として複雑かつ高度な推測手法(容量の大きいプログラム)を用いることができるようになり、啼泣原因を言い当てる精度を高めることができる。
【0059】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなくその範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0060】
たとえば、上述した実施形態では、表示手段105に啼泣原因を表示するにあたり、啼泣原因をテキストで表示する場合を示したが、テキスト表示に代えて、またはテキスト表示とともに、啼泣原因ごとに設定される図形や色彩などを用いることも可能である。たとえば、啼泣原因として「ねむい」を表示する場合に「ZZZ」といった表現を用いたり、あるいは、乳幼児が眠っている図形を用いたりすることができる。
【0061】
また、上述した実施形態では、啼泣原因の表示を含むアニメーションとして、丸形、四角形、三角形などの図形を用いたが、このような図形に代えて、またはこれらとともに、啼泣原因から乳幼児が欲求していると推定される事項を表示するように構成することも可能である。たとえば、啼泣原因として「お腹が空いた」と推測されたときに、そこから要求していると推定される「哺乳瓶」の図柄を含んだアニメーションを用いることも可能である。なお、この場合、乳幼児が要求していると推定される事項を表示することで啼泣原因を表示していることにもなるので、これらの表示を啼泣原因の表示に置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 啼泣原因表示装置
2 サーバ
101 入力手段
102 原因推測手段
103 表示制御手段
104 記憶手段
105 表示手段
106 操作手段
N ネットワーク